JP4132851B2 - フッ素および過酸化水素を含む排水の処理方法 - Google Patents

フッ素および過酸化水素を含む排水の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素および過酸化水素を含む排水から、フッ素が低減された処理水を生じさせる排水処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場などからの排水の水質については厳しい制限がなされているが、その規制は年々厳しくなる傾向にある。電子産業(特に半導体関連)から排出される排水中には、近年厳しい排水基準が設定されたフッ素が含まれている場合が多い。このため、排水からフッ素を効率良く除去することが求められており、フッ素を除去する従来技術の1つとして晶析除去法が知られている。
【0003】
フッ素の晶析除去法としては、フッ素を含む排水に、水酸化カルシウム(Ca(OH))、塩化カルシウム(CaCl)、炭酸カルシウム(CaCO)をはじめとするカルシウム化合物を添加し、式(I)に示されるように、難溶性のフッ化カルシウムを生じさせることを基本とする。
Ca2++2F→ CaF↓ (I)
特願昭59−63884号(特開昭60−206485号)には、フッ素とカルシウムを含有する種晶を充填した反応槽にフッ素含有排水をカルシウム剤と共に導入して、種晶上にフッ化カルシウムを析出させる、いわゆるフッ化カルシウム晶析法が開示されている。この晶析法においては、一般的に、反応槽の底部から排水を導入し、種晶を流動化させながら上向流で通水して処理を行い、必要に応じて反応槽からの流出水を循環している。この方法によると、フッ素含有量が低減された処理水を得ることができるだけでなく、析出するフッ化カルシウムをペレットとして比較的高純度で回収でき、用途に応じてこれを再利用することも可能である。
上述の様な晶析反応は、晶析反応槽を備えた、従来の、公知の晶析反応装置を用いて行うことができる。そして、晶析反応においては、晶析反応槽内でのカルシウムとフッ素の存在割合が、フッ化カルシウムの溶解度における過飽和条件の、液中に核が存在しなければ晶析反応を生じない準安定域に制御されることが要求される。
【0004】
電子産業(特に半導体関連)においては、洗浄剤として、フッ素だけでなく過酸化水素が使用される場合も多く、このような系から排出される排水中には、フッ素と過酸化水素の両方が含まれる場合がある。フッ素と過酸化水素を含む排水を晶析処理してフッ素を除去する技術については、現時点まで何ら知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
発明者は、フッ素と過酸化水素を含む排水を晶析処理してフッ素を除去する方法について検討を行った。このとき、従来のフッ素の晶析除去方法に使用される装置および条件を用いると、排水中の過酸化水素の濃度が高濃度(500〜5000mg/L)になれば、晶析反応槽内で過酸化水素が自然分解して酸素の気泡が発生し、かかる気泡の発生により、晶析処理により得られる処理水中に溶存するフッ素イオン濃度が上昇し、さらに、処理水中へフッ化カルシウムの微細粒子およびペレットが流出するという問題が生じた。
理論に拘束されるのは望むものではないが、上述のような、過酸化水素が存在する場合のフッ素イオン濃度の上昇の原因としては、ペレットに付着した気泡によりペレットと液との接触面積が減少して接触効率が低下すること、また晶析反応槽内の流動状態が気泡の上昇により変化して反応効率が低下することが考えられる。また、微細粒子およびペレットの流出は、これらに気泡が付着して浮力が増したこと、および気泡の上昇による槽内の流動状態の乱れによるものと考えられる。
さらに、上述のような処理水質の悪化に加え、過酸化水素を含有する排水は酸化力が強いため、晶析反応装置の接液部の部品の劣化が激しく、部品の交換費用がかさむという問題も生じた。
【0006】
本発明は、フッ素および過酸化水素を含む排水からフッ素を除去するという新たな技術において生じる、処理水質の悪化、処理装置の腐蝕という、今までにない新たな課題を解決するためになされたものであって、フッ素および過酸化水素を含む排水から、高純度のフッ化カルシウムを回収すると共に、フッ素が低減された処理水を得ることができる排水処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は請求項1として、フッ素および過酸化水素を含む排水を過酸化水素分解手段と接触させて、該排水中に含まれる過酸化水素を分解処理し、過酸化水素が低減された1次処理水を生じさせ次いで、該1次処理水とカルシウム含有液とを流動床式晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させることにより、フッ素が低減された最終処理水を生じさせる、排水処理方法であって、過酸化水素分解手段が、還元剤または過酸化水素分解酵素である、排水処理方法を提供する。
本発明は請求項2として、排水中の過酸化水素の分解処理がpH4〜10で行われる、請求項1記載の排水処理方法を提供する。
本発明は請求項3として、排水中の過酸化水素の分解処理がpH7〜10で行われ、カルシウム含有液がカルシウムの中性塩を含む、請求項1または2記載の排水処理方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、フッ素および過酸化水素を含む排水を過酸化水素分解手段と接触させて、該排水中に含まれる過酸化水素を分解処理し、過酸化水素が低減された1次処理水を生じさせ、次いで、該1次処理水とカルシウム含有液とを晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させることにより、フッ素が低減された最終処理水を生じさせる排水処理方法に関する。
本発明の排水処理方法においては、まず、第1の工程として、過酸化水素分解処理が行われる。該過酸化水素分解処理工程においては、排水を過酸化水素分解手段と接触させることにより、該排水中に含まれる過酸化水素が分解される。
【0009】
過酸化水素分解手段としては、フッ素および過酸化水素を含む排水と接触することにより、該排水中の過酸化水素を分解できる手段であれば任意の手段が可能であり、好ましくは、活性炭触媒、金属触媒、還元剤または過酸化水素分解酵素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属触媒としては、白金、パラジウム、金、銀をはじめとする金属、酸化マンガン(IV)、酸化コバルト(III)をはじめとする金属酸化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。還元剤は、過酸化水素を還元することができる化合物であり、例えば、亜硫酸、亜硫酸水素ナトリウムをはじめとする亜硫酸の塩などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、過酸化水素分解酵素としては、カタラーゼ(EC 1.11.1.6)、ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら過酸化水素分解手段は単独で使用されても良いし、複数の該手段が使用されても良い。
【0010】
過酸化水素分解手段と排水との接触は、本発明の目的に反しない限りは任意の態様で行うことができ、例えば、反応槽内で排水に過酸化水素分解手段を添加する態様、過酸化水素分解手段が充填された反応塔、カラム等に排水を通水させる態様等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、活性炭触媒、金属触媒が使用される場合には、これら触媒が担体上に担持される態様であっても良く、過酸化水素分解酵素が使用される場合には、酵素が担体に固定された固定化酵素として使用される態様であっても良い。また、還元剤、酵素は、排水に溶解される態様であっても良い。
上述のような過酸化水素分解手段を用いる過酸化水素分解処理においては、処理される排水のpHの低下に伴い、過酸化水素の分解速度も低下する。このため、排水中の過酸化水素の分解処理は、排水のpHを4〜10の範囲にして行われるのが好ましく、より好ましくは、pH7〜10である。
【0011】
過酸化水素分解処理工程において、処理される排水のpHを上述のような所定の範囲に維持するためにpHの調整が必要となる場合には、pH調整剤を該排水に添加することによりpHの調整を行うことができる。pH調整剤としては、排水のpHを変動させることができる任意の酸、またはアルカリを含んでいれば良く、酸またはアルカリの種類は本発明の目的に反しない限りは特に限定されるものではない。好ましくは、pH調整剤に使用される酸としては、塩酸等が挙げられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0012】
使用される過酸化水素分解手段の量、濃度、排水との接触の態様、接触時間などをはじめとする条件は、処理されるべき排水中の過酸化水素濃度、1次処理水に望まれる過酸化水素レベル、後段の晶析反応条件等に応じて適宜設定可能である。過酸化水素分解処理工程における過酸化水素の分解は、後段での晶析反応において、過酸化水素が悪影響を及ぼさない程度まで行われれば良く、排水中に含まれる過酸化水素の全てが分解される必要はない。該過酸化水素分解処理工程により得られる1次処理水中の過酸化水素濃度は、好ましくは、100mg/L以下であり、より好ましくは、10mg/L以下である。
【0013】
本発明の排水処理方法で処理される排水は、フッ素および過酸化水素を含むものであれば、如何なる由来の排水であっても良く、例えば、半導体関連産業をはじめとする電子産業などから排出される排水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、排水はフッ素および過酸化水素以外の元素を含んでいても良く、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、Cd、Hg、Sn、Pb、Teをはじめとする重金属元素、および/またはリンを含んでいても良い。
【0014】
排水中に含まれるフッ素は晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態で排水中に存在することが可能である。排水中に溶解しているという観点から、フッ素はイオン化した状態であるのが好ましい。ここで、イオン化した状態とは、フッ素イオン(F)をはじめとする元素がそのままイオン化したもの、また、フッ素を含む化合物がイオン化したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。排水中に含まれるフッ素については、フッ素イオンの形態で存在するのが好ましい。
本発明の方法で処理可能な排水中のフッ素濃度は、5000mg/L以下、好ましくは、2000mg/L以下、より好ましくは、1000mg/L以下である。
また、本発明の方法で処理可能な、排水中の過酸化水素濃度は、10000mg/L以下、好ましくは、5000mg/L以下、より好ましくは、1000mg/L以下である。
【0015】
本発明の排水処理方法においては、第2の工程として、該1次処理水とカルシウム含有液とを晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させることにより、フッ素が低減された最終処理水を生じさせる晶析処理が行われる。該晶析処理工程においては、過酸化水素分解処理により得られた1次処理水中のフッ素が晶析反応により晶析除去される。
該晶析処理工程に使用される晶析反応槽、種晶をはじめとする晶析反応装置、また、晶析条件等については、フッ素の晶析除去に使用される公知の、任意の装置、条件を適用することが可能である。
【0016】
晶析処理工程において使用されるカルシウム含有液としては、カルシウムを含んでおり、フッ素を晶析除去できる液であれば、任意のカルシウム化合物を含む液を使用することがでる。また、カルシウム含有液を構成する液体媒体としては、本発明の目的に反しない限りは任意の物質が可能であり、好ましくは水である。カルシウム含有液においてカルシウムの供給源となるカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カルシウム含有液は、これらカルシウム化合物の1種類から調製されるものであっても良いし、2以上の化合物から調製されるものであっても良い。カルシウム含有液は、カルシウムが完全に液体媒体中に溶解された溶液状態であっても良いし、カルシウム化合物の全部または一部が固体として残存するスラリーの状態でも良い。カルシウム含有液中のカルシウムの濃度は、排水中のフッ素および共存元素の濃度、晶析反応槽の処理能力、循環される処理水量等に応じて適宜設定される。
【0017】
排水中のフッ素が、フッ酸(HF)として存在する場合には、該フッ酸は弱酸であるため、カルシウム含有液にカルシウムの中性塩が含まれる場合には、晶析反応により得られる最終処理水のpHは低下する。すなわち、例えば、カルシウムの中性塩が塩化カルシウムである場合、2HF+CaCl→CaF+2HClなる反応が起こり、この反応により生成されるHClは強酸であるため、かかる晶析反応により最終処理水のpHは低下する。
既に述べたように、過酸化水素分解処理工程においては、分解処理対象である排水のpHがアルカリ性であれば、過酸化水素の分解反応が促進されるので、分解効率という点から有利である。また、晶析処理により得られる最終処理水は種々の用途に用いることができるが、純水製造用の原水として使用される場合をはじめとして、最終処理水が中性であることが望まれる場合が多い。よって、カルシウム含有液のカルシウム源としてカルシウムの中性塩を含む場合、好ましくは、カルシウム源がカルシウムの中性塩のみからなる場合には、過酸化水素分解処理時の排水のpHがアルカリ性である時に(すなわち、1次処理水が中性からアルカリ性、好ましくは、pH7〜10であるとき)、晶析処理後得られる最終処理水のpHが中性付近となるという利点がある。
カルシウム含有液に含まれるカルシウムの中性塩の態様としては、カルシウムが完全に液体媒体中に溶解され、カルシウムイオンと、強酸の陰イオンが存在する溶液状態であっても良いし、該カルシウムの中性塩の全部または一部が固体として残存するスラリーの状態でも良い。また、カルシウムの中性塩を含むカルシウム含有液の調製方法としては、カルシウムの中性塩を水等の溶媒に添加することにより調整しても良いし、中性塩以外の態様のカルシウムを溶媒に添加し、その後、強酸の陰イオンが添加される態様でも良い。
【0018】
図1および図2に本発明の排水処理方法に使用可能な排水処理装置の態様を示し、これに基づいて、本発明を詳述する。本発明の排水処理方法に使用可能な排水処理装置は、過酸化水素の分解を行う過酸化水素分解装置とフッ素を晶析除去する晶析反応装置との2つの部分から構成される。図1には、過酸化水素分解装置が、過酸化水素分解手段4が充填された過酸化水素分解塔3に排水を通過させる態様のものを示し、図2には、過酸化水素分解槽6内で、排水に過酸化水素分解手段が添加、分解処理され、それが引き続いて晶析処理される態様を示す。例えば、図1の態様は、過酸化水素分解手段が担体に担持された金属触媒、活性炭触媒、または固定化酵素等が使用される場合に有利に適用される。また、図2の態様は、水溶性の還元剤、酵素などが使用される場合に有利に適用される。
【0019】
図1の態様においては、フッ素および過酸化水素を含む排水はpH調整槽1に貯留され、該pH調整槽1に供給されるpH調整剤によってpHの調整が行われる。pH調整槽1は、好ましくは、図1に示されるように、pHをモニターするためのpHメーターを有している。pHが調整された排水は、pH調整槽1から排水供給ライン2を介して過酸化水素分解塔3に移送される。該過酸化水素分解塔3の1態様としては、図1に示されるように、内部に過酸化水素分解手段4が充填されており、排水が該過酸化水素分解手段4上を通過することにより、排水中の過酸化水素が分解され、過酸化水素が低減された1次処理水が該過酸化水素分解塔3から排出される。
【0020】
図2の態様においては、過酸化水素分解槽6にフッ素および過酸化水素を含む排水、並びに過酸化水素分解手段が供給され、必要な場合には、pH調整剤が添加されることにより該槽内のpHが調整され、該排水中の過酸化水素が分解、低減された1次処理水が生成される。
図1および図2の態様においては、pH調整槽1、過酸化水素分解塔3および過酸化水素分解槽6は1つであるが、これらは複数であっても良い。また、過酸化水素分解塔3および過酸化水素分解槽6を1つの系に組み合わせて使用することも可能である。また、本発明の排水処理方法において使用される、pH調整槽1、過酸化水素分解塔3および過酸化水素分解槽6の大きさ、形状などは特に限定されるものではない。
【0021】
図1および図2のいずれの態様においても、1次処理水は、1次処理水排出ライン5を介して、晶析反応装置の晶析反応槽11に移送される。晶析反応装置は排水中のフッ素が低減された最終処理水を排出する晶析反応槽11と、カルシウム含有液を晶析反応槽11に供給するカルシウム含有液供給ライン13とを具備し、1次処理水排出ライン5が晶析反応槽11に連結されており、さらに、任意に、該晶析反応槽11から排出される処理水の少なくとも一部を晶析反応槽11に返送する処理水循環手段とを具備する。晶析反応槽11の内部には晶析処理前に種晶が充填され、該種晶の表面上に、排水に含まれるフッ素と、カルシウムとの反応物であるフッ化カルシウムを析出させてフッ化カルシウムペレット12を形成させることにより、フッ素濃度が低下した最終処理水を排出させる。晶析反応槽11は前記機能を有するものであれば、長さ、内径、形状などについては、任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。
【0022】
晶析反応槽11に充填される種晶の充填量は、フッ素を晶析反応により除去できるのであれば特に限定されるものではなく、フッ素濃度、カルシウム濃度、また、晶析反応装置の運転条件等に応じて適宜設定される。晶析反応装置においては、晶析反応槽11内に上向流を形成し、該上向流によってペレット12が流動するような流動床の晶析反応槽11が好ましいので、種晶は流動可能な量で晶析反応槽11に充填されるのが好ましい。
種晶は、本発明の目的に反しない限りは、任意の材質が可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物からなる粒子、並びに、晶析反応による析出物であるフッ化カルシウムからなる粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。種晶上で晶析反応が起こりやすいという点、また、生成するペレット12から、より純粋なフッ化カルシウムを回収できるという観点から、フッ化カルシウム(蛍石)が種晶として使用されるのが好ましい。種晶の形状、粒径は、晶析反応槽11内での流速、晶析対象成分の濃度等に応じて適宜設定され、本発明の目的に反しない限りは特に限定されるものではない。
【0023】
1次処理水排出ライン5およびカルシウム含有液供給ライン13は晶析反応槽11の任意の部分に接続することができる。本発明の晶析反応装置においては、晶析反応槽11内に上向流を形成すると、効率的に晶析反応を行うことができるという観点から、1次処理水排出ライン5およびカルシウム含有液供給ライン13は晶析反応槽11の底部に接続されるのが好ましい。また、図1および図2の態様においては、1次処理水排出ライン5およびカルシウム含有液供給ライン13はそれぞれ1つであるが、これに限定されるものではなく、これらが複数設けられていても良い。
【0024】
晶析反応槽11は、晶析反応により、フッ素が低減された最終処理水を該晶析反応槽11の外部に排出する。最終処理水は、晶析反応槽11における液体の流れに従って任意の部分から排出される。晶析反応槽11内で上向流が形成される場合には、晶析反応槽11の上部から最終処理水が排出される。図1の態様では、晶析反応槽11の上部から排出される最終処理水は、最終処理水排出ライン14を通って最終的に系外に排出される。
図1および図2の晶析処理装置は、晶析反応槽11から排出される最終処理水の少なくとも一部を該晶析反応槽11に返送する処理水循環手段を有する。処理水循環手段としては、最終処理水の少なくとも一部を晶析反応槽11に返送できるものであれば任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。図1および図2の態様においては、処理水循環手段として、最終処理水排出ライン14から分岐し、晶析反応槽11に連結された処理水循環ライン15が設けられており、該処理水循環ライン15には最終処理水移送のためのポンプが介装されている。処理水循環手段は、最終処理水を晶析反応槽11に循環させることにより、晶析反応槽11内に供給された排水を希釈すると共に、カルシウム含有液と排水を混合し、さらに、晶析反応槽11内で所定の流れ、特に上向流を形成させるものである。よって、晶析反応槽11内で上向流が形成される場合には、図1または図2のように、処理水循環ライン15は晶析反応槽11の底部に接続されるような態様が好ましい。
以下、実施例で本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
実施例1〜3
排水処理装置として、過酸化水素分解手段が充填された過酸化水素分解塔と、晶析反応槽を具備する図1の態様の装置を使用して、フッ素および過酸化水素を含む排水からのフッ素の除去試験を行った。
フッ化ナトリウムをフッ素濃度で500mgF/L、および過酸化水素を300〜5000mg/Lとなるように精製水に溶解したものを模擬排水とした。模擬排水は、容量20LのpH調整槽で、水酸化ナトリウムを用いてpH8に調整された。内径75mm×高さ1500mmの過酸化水素分解塔に、過酸化水素分解手段として、二酸化マンガン担持触媒(オルキャットM、オルガノ株式会社製)4.0Lを充填して使用した。pHが調整された模擬排水を流量19.6L/時間で、該過酸化水素分解塔に通水し、得られた1次処理水を晶析反応槽に導入した。晶析反応槽としては、内径50mm×高さ2500mmの円柱型アクリルカラムに、種晶として蛍石(98.0%フッ化カルシウム含有)を充填量1000mLで充填したものを使用した。カルシウム含有液として、10%塩化カルシウムを0.46L/時間で、晶析反応槽に供給した。また、晶析処理により得られる最終処理水を、流量58.9L/時間で晶析反応槽に循環させた。
排水処理開始から、5時間後の最終処理水について、最終処理水中のペレットおよび微細粒子の流出量を確認するために、最終処理水中の浮遊物質(SS)の量を測定した。また、最終処理水を0.2μmフィルターでろ過処理して得られるろ過水中のフッ素含有量を溶解性フッ素(溶解性F)含有量とした。さらに、最終処理水に酸を添加し、SS分を酸で溶解した後に、該溶解液中のフッ素濃度を測定して、トータルフッ素(トータルF)含有量とした。なお、フッ素濃度の測定は、ランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法に基づいて行われた。測定結果を表1に示す。
【0026】
実施例4〜6
過酸化水素分解手段として亜硫酸水素ナトリウムを使用し、排水処理装置として図2に示される、過酸化水素分解槽を有する態様の装置を用いた以外は、実施例1〜3と同様にして、フッ素の除去試験を行った。なお、亜硫酸水素ナトリウムの使用量は、1次処理水中の酸化還元電位(ORP)が0〜50mVで、残留する過酸化水素が約10mg/L以下となるような量に調節した。測定結果を表1に示す。
【0027】
比較例1〜3
比較例1〜3として、図1の態様において過酸化水素分解塔を通過させず、過酸化水素の除去を行わなかった以外は、実施例1〜3と同様にフッ素の除去試験を行った。測定結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0004132851
【0029】
比較例1〜3の結果から、排水中の過酸化水素が増加するにつれて、晶析処理後の最終処理水中の溶解性フッ素、SS、トータルフッ素のいずれもが増加した。このことから、排水中に過酸化水素が含まれている場合には、通常のフッ素の晶析処理方法を用いたのでは、フッ素の除去が達成できないことが明らかとなった。
これに対して、実施例1〜6の結果から明らかなように、晶析処理前に過酸化水素を低減させる本発明の排水処理方法では、高度にフッ素が除去された最終処理水を回収することが可能であり、この場合の最終処理水中のSSも顕著に低減されていた。また、得られた最終処理水のpHは、ほぼ中性であった。
【0030】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明は、フッ素および過酸化水素を含む排水から、フッ素を除去する際に生じる、溶解性フッ素濃度の増大および浮遊物質(SS)による処理水質の悪化を防止し、顕著にフッ素が低減された良好な処理水の回収を可能にするという有利な効果を有する。また、排水中の過酸化水素分解処理をpH7〜10で行い、晶析処理をカルシウムの中性塩を含むカルシウム含有液を用いて行うことにより、ほぼ中性の、フッ素が顕著に低減された処理水を得ることを可能にするという有利な効果を有する。さらに、晶析反応装置の接液部の部品の劣化を防止することを可能にするという有利な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の排水処理方法に使用可能な排水処理装置の1態様を示す概略図である。
【図2】 図2は、本発明の排水処理方法に使用可能な排水処理装置の他の態様を示す概略図である。
【符号の説明】
1 pH調整槽
2 排水供給ライン
3 過酸化水素分解塔
4 過酸化水素分解手段
5 1次処理水排出ライン
6 過酸化水素分解槽
11 晶析反応槽
12 ペレット
13 カルシウム含有液供給ライン
14 最終処理水排出ライン
15 処理水循環ライン

Claims (3)

  1. フッ素および過酸化水素を含む排水を過酸化水素分解手段と接触させて、該排水中に含まれる過酸化水素を分解処理し、過酸化水素が低減された1次処理水を生じさせ次いで、該1次処理水とカルシウム含有液とを流動床式晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させることにより、フッ素が低減された最終処理水を生じさせる、排水処理方法であって、過酸化水素分解手段が、還元剤または過酸化水素分解酵素である、排水処理方法
  2. 排水中の過酸化水素の分解処理がpH4〜10で行われる、請求項記載の排水処理方法。
  3. 排水中の過酸化水素の分解処理がpH7〜10で行われ、カルシウム含有液がカルシウムの中性塩を含む、請求項1または2記載の排水処理方法。
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