JP2565026B2 - フッ素含有有機性廃水の処理方法 - Google Patents

フッ素含有有機性廃水の処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フッ素及び有機物を含
む廃水の処理方法に係り、特に、包括固定化微生物を用
いてフッ素含有有機性廃水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、工業技術の高度化に伴って電子工
業分野では、フッ酸とメタノール等を含有する有機性廃
水が排出される。特に、半導体製造業では、工程で使用
されたメタノール、イソプロパノール等の溶剤とフッ酸
とが含まれる廃水が多量に排出される。
【0003】従来、この種の廃水については、フッ酸を
凝集沈澱処理し、有機物を生物処理する方法が用いられ
ていた。フッ酸の凝集沈澱処理には、消石灰を用い、次
式によりフッ化カルシウムとして沈澱除去した。 2F- +Ca(OH)2 →CaF2
【0004】また、有機物の生物処理には、活性汚泥
法、接触酸化法等が用いられていた。しかしながら、こ
れらの方法では、BODの除去率が79〜84%と低い
という欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術の欠点を解消し、高いフッ素除去率を達成するととも
に、BOD除去率を著しく向上しうるフッ素含有有機性
廃水の処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、カルシウム
沈澱法によりフッ素を沈澱除去した後の上澄液には、過
剰のカルシウムイオンが存在し、これが固定化微生物ペ
レットの細孔に付着すると、目詰まりを起こし、BOD
除去活性が低下するが、液のpHを 6.5〜7.0 に調整する
と、カルシウムはイオン化しやすく、ペレットの細孔に
付着しないことを見出した。本発明はかかる知見に基づ
いて完成したものである。
【0007】すなわち、本発明によるフッ素含有有機性
廃水の処理方法は、フッ素含有有機性廃水に水溶性カル
シウム化合物を添加してフッ化カルシウムを凝集沈澱さ
せ、上澄液のpHを 6.5〜7.0 に調整した後、固定化微生
物ペレットと接触させて曝気処理してBOD成分を除去
し、次いで凝集剤を添加し、ペレットから漏出した微生
物及び残存フッ素化合物を共沈させることを特徴とす
る。
【0008】本発明においては、まず、廃水中に含まれ
るフッ素をカルシウム沈澱法により除去する。水溶性カ
ルシウム化合物としては、カルシウム沈澱法に通常使用
される任意の水溶性カルシウム化合物を使用することが
でき、例えば水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどが
挙げられる。カルシウム化合物の添加量は、廃水に含ま
れるフッ素の濃度によって異なるが、水酸化カルシウム
を用いる場合には、一般に、廃水のpHが9〜12になる
程度に水酸化カルシウムを添加する。これによりフッ化
カルシウムを凝集沈澱させる。
【0009】この凝集沈澱後の上澄液には、余剰のカル
シウム化合物が多量に含まれ、一般に、カルシウムイオ
ンが200〜500mg/l の濃度で存在する。このよう
な上澄液をそのまま固定化微生物ペレットと接触させて
生物処理に付すと、固定化微生物ペレットの細孔にカル
シウムが付着し、目詰まりが起こり、有機物が透過せ
ず、BODの除去活性が低下してしまう。
【0010】しかし、本発明の方法において、予め上澄
液のpHを 6.5〜7.0 に調整した後、固定化微生物ペレッ
トと接触させると、このpH範囲ではカルシウムがイオン
化しやすく、ペレットの細孔に付着せず、細孔の目詰ま
りが起こらず、したがって、BODの除去活性が高く維
持される。
【0011】使用する微生物の種類は、処理対象の廃水
の性質に応じて適宜選定することができる。例えば、電
子工業分野で排出されるメタノール、イソプロパノール
等の溶剤とフッ酸とを含む廃水を処理する場合には、主
成分である低級アルコールを分解する分子量10万以上
のデヒドロゲナーゼ等の酵素を多量に分泌する微生物、
例えば、メチロモナス属菌(Methylomonas sp.) 、サッ
カロミセス科( Saccharomycetaceae) の菌、スポロボロ
ミセス科 (Sporobolomycetaceae)、クリプトコックス科
( Cryptococcaceae)等の酵母が好適であり、これらの微
生物を多く含んでいる活性汚泥が最適である。
【0012】本発明においては、上記のような微生物を
固定化材料で包括固定して用いる。固定化材料として
は、分画分子量が67000以下の細孔を持ち、BOD
成分の分解に関与するデヒドロゲナーゼ等の酵素をペレ
ット内部に保持でき、材料からのBOD成分の溶出がな
いポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン
グリコール、ポリアクリルアミドなどを使用することが
好ましい。このようにBOD成分の分解に関与するデヒ
ドロゲナーゼ等の酵素をペレット内部に保持できるた
め、固定化微生物の活性が著しく高くなる。ゲルの分画
分子量は、ゲルを構成する高分子物質の種類、その分子
量及び特にゲル濃度に関係し、ポリエチレングリコール
ゲル、ポリアクリルアミドゲル及びポリビニルアルコー
ルゲルでは、ゲル濃度9〜18%で牛血清アルブミン、
ミオグロビン等がゲル内部に透過し、分画分子量が67
000以下であるものが得られる。
【0013】上記のように、廃水中の低級アルコールを
分解するデヒドロゲナーゼ等の酵素を多量に分泌する微
生物を、分画分子量が67000以下の細孔を持つ固定
化材料で包括固定化することにより、固定化担体内部で
菌体外酵素、例えば、デヒドロゲナーゼ等の保持量を多
くし、アルコールの分解を促進することができる。この
場合、酵素の触媒反応が主な反応であり、酵素を補う微
生物の増殖反応が若干起こる。その際、微生物が産生す
る多糖類、エンドトキシン等のBOD成分は分子量が大
きく、担体外に流出せず、微生物細胞自体も担体外にほ
とんど流出しないため、処理水のTOCは著しく低下す
る。
【0014】上記のように、固定化微生物ペレットと接
触させて曝気処理を行った際に微生物の漏出は極めて少
ないが、漏出した微生物と残存フッ素を共沈させるた
め、次に、凝集剤を添加する。ここで、凝集剤として
は、硫酸アルミニウム、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、アル
ミン酸ナトリウム、アンモニウム明ばん等の無機凝集剤
あるいは様々な高分子物質からなる有機凝集剤を使用す
ることができる。
【0015】次に、図面に基づいて本発明を説明する。
図1は、本発明の方法を実施する装置の系統図である。
この装置において、本発明の方法を実施するには、フッ
素含有有機性廃水を凝集沈澱槽1に導入し、ここで水酸
化カルシウムを添加することによりフッ素イオンをフッ
化カルシウムの形で沈澱させ、除去する。次いで、pH調
整槽2内でpH 6.5〜7.0に調整した後、曝気槽3で固定
化微生物ペレットと接触させつつ曝気処理し、BOD成
分を除去する。上記のような処理により固定化微生物ペ
レットは常に高い活性を保持するので、廃水中の大部分
のフッ素及びBOD成分は除去されるが、さらに、凝集
沈澱槽4で凝集剤を添加し、固定化微生物ペレットから
漏出した微生物と残存フッ素を共沈させる。これにより
極めて高い処理水質が得られる。
【0016】なお、本発明の方法は、微生物の種類や固
定化材料を適切に選択することにより、フッ素と低級ア
ルコールを含む廃水ばかりでなく、フッ素と任意の有機
物質を含む廃水の処理に適用することができる。
【0017】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を詳述する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】実施例1 T社から排出されるBOD240〜310mg/l を用い
て処理実験を行った。メチロモナス属菌を多く含む活性
汚泥2重量%、ポリエチレングリコールジメタクリレー
ト8重量%、アクリルアミド5重量%、N,N,N’,
N’−テトラメチルエチレンジアミン 0.5重量%及び過
硫酸カリウム 0.25重量%を用いてゲルを形成させ、3
mm角の立方体の形状の固定化微生物ペレットを製造し
た。
【0019】上記廃水に予め水酸化カルシウムを添加し
て凝集沈澱を行い、フッ素濃度8〜37mg/l 、BOD
240〜310mg/l の廃水を得た。曝気槽3には固定
化微生物ペレットを10容量%の充填率で投入し、曝気
処理し、さらに、硫酸アルミニウムを600mg/l の量
で添加し、微生物及び残存フッ素とを共沈させた後、得
られた処理水のBOD濃度を図2に示す。従来法として
接触酸化法を行った結果を図2に示す。接触酸化法は網
状パイプを充填率50%で充填して微生物を付着させ、
網状パイプの下部から曝気したものである。図2から明
らかなとおり、本発明の方法によれば、容積負荷を著し
く高くすることができ、従来法に比べて優れている。
【0020】本発明の方法によるBOD容積負荷とBO
D除去率との関係を示すグラフを図3に、従来法の接触
酸化法によるBOD容積負荷とBOD除去率との関係を
示すグラフを図4に示す。図3及び図4から明らかなと
おり、従来法ではBOD除去率は79〜84%であった
が、本発明の方法によればBOD除去率は92〜99%
と高く、卓越した結果が得られた。
【0021】また、本発明の方法において、pHを 6.5〜
7.0に調整しない場合は、固定化微生物ペレットにカル
シウムのスケールが付着し、固定化微生物ペレットの活
性が低下した。
【0022】
【発明の効果】本発明の方法によれば、固定化微生物ペ
レットの細孔へのカルシウムの付着が防止され、微生物
の活性が常に高く保持されるため、フッ素含有有機性廃
水を効率よく処理でき、フッ素を充分に除去し、かつ高
いBOD除去率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する装置の系統図である。
【図2】実施例1で実施した本発明の方法及び従来法に
おけるBOD容積負荷と処理水のBOD濃度との関係を
示すグラフである。
【図3】実施例1で実施した本発明の方法におけるBO
D容積負荷とBOD除去率との関係を示すグラフであ
る。
【図4】実施例1で実施した従来法におけるBOD容積
負荷とBOD除去率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1及び4 凝集沈澱槽 2 pH調整槽 3 曝気槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C02F 9/00 503 C02F 9/00 503C 504 504A

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ素含有有機性廃水に水溶性カルシウ
    ム化合物を添加してフッ化カルシウムを凝集沈澱させ、
    上澄液のpHを 6.5〜7.0 に調整した後、固定化微生物ペ
    レットと接触させて曝気処理してBOD成分を除去し、
    次いで凝集剤を添加し、ペレットから漏出した微生物及
    び残存フッ素化合物を共沈させることを特徴とするフッ
    素含有有機性廃水の処理方法。
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