JP4108395B2 - ポリフェニレンエーテル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンエーテルに関し、詳しくはオルソクレゾール1.0重量部から7.5重量部と2,6−ジメチルフェノール100重量部からなるモノマーを、触媒と酸素含有ガスを用いて酸化重合させ得られるポリフェニレンエーテルであって、該触媒の構成成分として、銅化合物−ハロゲン化合物および一般式(1)
【0002】
【化2】
【0003】
で表されるジアミン化合物からなる触媒を用い、かつ標準ポリスチレンを検量線として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定された換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.8以上8.0以下であり、溶融流動特性に優れるポリフェニレンエーテルに関する。
【0004】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテルは、優れた機械特性、耐熱特性、電気特性などを有するエンジニアリングプラスチックであるが、溶融時の流動特性が悪く、成形加工性に問題があり、通常はポリスチレンに代表される他の樹脂との組成物として利用されている。しかしながら、ポリフェニレンエーテルの組成比を大きくする必要があり、昨今の高い製品性能要求のもとでは、ポリフェニレンエーテルそのものの溶融時の流動性を改良する事が必要となっている。
【0005】
この問題に対し、重合反応後に副生成物のジフェノキノンをポリフェニレンエーテルに取り込み分子量分布を調節する方法としては、特開平5−331280号公報で提案されている。また、ポリフェニレンエーテル重合反応後の固有粘度の異なる溶液を混合し、沈殿化する方法としては、特開2000−281780号公報で提案されている。また、固有粘度の異なる2種類のポリフェニレンエーテル樹脂をブレンドする方法としては、特許第2648887号公報で提案されている。更には、組成物の押出混合製造時に、固有粘度の低いポリフェニレンエーテルを同時に添加する方法としては、特開平4−342761号公報で提案されている。
【0006】
また、オルソクレゾールと2,6−ジメチルフェノールの重合反応によって流動特性を向上させる方法として、特開昭52−144097号公報,または特開昭52−144098号公報で提案されているが、重合反応時にポリフェニレンエーテルが架橋してしまう問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来技術の分子量分布をコントロールする事や、固有粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドすることは現実には操作が極めて複雑なプロセスを伴うこと、また、流動性を確保するためには極端に粘度の低いポリフェニレンエーテル(固有粘度0.25以下)を製造しなければならない。また、重合方法によっては、重合反応時にポリフェニレンエーテルが架橋してしまい、組成物の流動特性を低下させる等の、問題点を有していた。これらの様に、ポリフェニレンエーテル組成物の流動性向上のために、従来は特殊な方法を用いてポリフェニレンエーテル樹脂の分子量分布を制御するという、極めて複雑な手段でしか達成されていないのが現状である。
上記の方法は特殊な方法を用いているため、工業レベルにおいて簡単に分子量分布を広くする方法が望まれている。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)オルソクレゾール1.0重量部から7.5重量部と2,6−ジメチルフェノール100重量部からなるモノマーを触媒と酸素含有ガスを用いて酸化重合させ得られるポリフェニレンエーテルであって、該触媒の構成成分として、銅化合物−ハロゲン化合物および一般式(1)
【0009】
【化3】
【0010】
で表されるジアミン化合物からなる触媒を用い、かつ標準ポリスチレンを検量線として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定された換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.8以上8.0以下であることを特徴とするポリフェニレンエーテルである。
【0011】
(2)2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールが含まれているモノマーを用いることで得られる上記1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
(3)2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールを加えることで得られたモノマーを用いることで得られる上記1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
(4)触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物および/または2級モノアミン化合物を含む上記1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
(5)上記1に記載のポリフェニレンエーテルを用いた樹脂組成物。
【0012】
また、重合反応時に驚くべきことにポリフェニレンエーテルが架橋しなくなることを見いだした。
2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールが含まれているモノマーを用いることで本発明が良好に作用する。また2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールを加えることでも良好に本発明は作用する。
また好ましくは、触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物並びに2級モノアミン化合物をそれぞれ単独で、又はこれらを組み合わせて選ばれた触媒を用いるとより一層本発明は有効である。
【0013】
本発明において、オルソクレゾール1.0重量部から7.5重量部と2,6−ジメチルフェノール100重量部からなるモノマーを、触媒と酸素含有ガスを用いて酸化重合させ得られるポリフェニレンエーテルであって、2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールが含まれている場合、もしくは2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールを加えることが好ましい。2,6−ジメチルフェノールとオルソクレゾールからなるモノマーを重合時に適用する好ましい手法としては以下の方法がある。
【0014】
a.上記モノマーを混合物として作成したものを、重合反応の初めから全て使用する方法。
b.上記モノマーを混合物として作成したものの一部を重合反応の初めから使用し、残りの部分を重合反応の途中に、徐々に加える方法。
c.上記モノマーのうち、オルソクレゾール全てと2,6−ジメチルフェノールの一部を予め混合物として作成し、これを重合反応の初めから使用し、残りの2,6−ジメチルフェノールを重合反応の途中に、徐々に加える方法。
【0015】
d.上記モノマーのうち、オルソクレゾールの一部と2,6−ジメチルフェノールの全てを予め混合物として作成し、これを重合反応の初めから使用し、残りのオルソクレゾールを重合反応の途中に、徐々に加える方法。
e.2,6―ジメチルフェノールを重合反応の始めから使用し、オルソクレゾールを重合反応の途中に徐々に加える方法。
f.オルソクレゾールを重合反応の始めから使用し、2,6―ジメチルフェノールを重合反応の途中に徐々に加える方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、銅−アミン触媒存在下でモノマーを酸化重合させてポリフェニレンエーテルを製造する方法において、所望の分子量分布にさせるために、オルソクレゾール1.0重量部から7.5重量部と2,6−ジメチルフェノール100重量部からなるモノマーを触媒と酸素含有ガスを用いて酸化重合させることで本発明の作用をより一層有効ならしめる。
【0017】
即ち、本発明はオルソクレゾールと2,6−ジメチルフェノールからなるモノマーは、所望の分子量分布に到達させることができ、更に到達分子量が安定で分子量分布が広いポリフェニレンエーテルが製造できる。
本発明に用いられるモノマーには2,6−ジメチルフェノールとオルソクレゾール以外に、下記式(2)で表される構造の化合物を本発明の効果が損なわれない範囲で含むことが出来る。
【0018】
【化4】
【0019】
該化合物の例としては、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が挙げられる。
【0020】
本発明のモノマーは重合溶媒に溶解または、溶解せずに全て添加して重合してもよく、更に分割あるいは連続的に添加しながら重合しても良い。
本発明に使用できる触媒は、銅−アミン触媒から成っており、本発明範囲の種々の銅−アミン触媒が使用される。
本発明で使用されうる触媒は、(a)銅化合物、(b)ハロゲン化合物、(c)下記式(1)
【0021】
【化5】
【0022】
で表されるジアミン化合物から成る触媒である。本発明で好ましく使用される触媒系は上記(a),(b),(c)に、更に触媒の構成成分として(d)第3級モノアミン化合物、(e)第2級モノアミン化合物の各成分からなる触媒である。(d)、及び(e)はそれぞれ単独、またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明で使用できる銅化合物としては第一銅化合物、第二銅化合物またはそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は第一銅,第二銅化合物については塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は酸化物、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲンまたは酸から使用時に合成しても良い。モノマーの100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.001モルから0.6モルの範囲である。
【0024】
本発明に使用される(b)のハロゲン化合物の種類は、従来知られている塩素化合物、臭素化合物などが好適に使用できる。例えば塩化水素、臭化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良いが、通常モノマー100モルに対して0.001モルから10モルの範囲で用いられる。
【0025】
本発明に使用される(c)のジアミンの種類も(1)で表される構造であれば特に限定されない。ジアミン化合物の例を列挙する。例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミンである、
【0026】
また、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−n−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−i−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−n−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−i−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−t−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパンである。
【0027】
また、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。本発明にとって好ましいジアミン化合物は2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2または3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常モノマー100モルに対して0.01モルから10モルの範囲で用いられる。
【0028】
この触媒成分には本発明にとって好ましい構成成分として次の成分を加えることができる。即ち、前記銅化合物、ハロゲン化合物、ジアミン化合物からなる必須の触媒構成成分に、更に(d)の第3級モノアミン化合物並びに(e)の第2級モノアミン化合物をそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて使用することである。
【0029】
第3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含めた脂肪族3級アミンである。例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は特に限定されないが、通常モノマー100モルに対して0.1モルから10モルの範囲で用いられる。
【0030】
第2級モノアミン化合物の例として、第2級脂肪族アミンとしては例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−iso−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−iso−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0031】
芳香族を含む2級モノアミン化合物の例としては、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられるがこれらの例には限定されない。
【0032】
本発明方法において用いる溶媒は被酸化物であるフェノール性化合物と比較して酸化されにくく、かつ反応過程の中間に生成すると考えられる各種ラジカルに対して反応性をほとんど有しないものである限り特に制限はないが、低分子量のフェノール性化合物を溶解し、触媒混合物の一部または全部を溶解するものが好ましい。このような溶媒の例としては例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンの様なハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンの様なニトロ化合物等を挙げることができ、これらは重合体の良溶媒として使用できる。
【0033】
またメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシドの様なスルホキシド類、更には水を挙げることができる。溶媒の1種以上、必要であれば更に混合して使用することができる。
【0034】
しばしば用いられる溶媒の例としてはトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素単独溶媒や、これにメタノール、エタノール等のアルコール類を含有させた混合溶媒である。
フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒の比率を選ぶことによって溶液重合法にもなるし、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法にもなる。
【0035】
本発明はバッチ重合法、連続重合法、溶液重合法、沈殿重合法等の重合方法に適用できる。もちろん、本発明は溶媒を使わないバルク重合法、超臨界での炭酸ガスを溶媒として用いる重合法においても有効である。
重合反応系に、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の中性塩、ゼオライト等も添加することができる。
重合反応温度については、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると触媒が失活することもあるので、0〜80℃、好ましくは10〜70℃の範囲で行われることが好ましい。
【0036】
本発明の酸化重合における酸素は純酸素の他、窒素等の不活性ガスと任意の割合で混合したもの及び空気等が使用できる。反応中の系内圧力は常圧で充分であるが必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させた後、生成した重合体を分離してメタノール等の該重合体を溶解しない溶媒で洗浄後、乾燥するという簡単な操作でポリフェニレンエーテルが回収できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に、モノマーとしてオルソクレゾールと2,6−ジメチルフェノールを使用した実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるべきではない。
重合実施例における、一般的手順を以下に述べる。
反応器底部に酸素ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼、還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付きSUS製反応器に、触媒各成分とトルエンの一部を加える。その後酸素をスパージャーより導入し、この時点を重合開始時間とする。直ちに残り(または全量)のモノマーをトルエンに溶かした溶液をポンプで30分かけて反応器に追添する。重合開始時間から90分間重合反応する。重合終了後の反応混合物にEDTA・3カリウム塩の水溶液を加え攪拌後、等容のメタノールを加えてポリマーを沈殿させる。沈殿させたポリマーは濾過後メタノールで3度洗浄し、145℃で1時間真空乾燥させる。乾燥させたポリマーの分子量分布を測定する。
【0038】
尚、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量分布の測定は以下の条件によって行った。ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下GPCという)昭和電工(株)製System21で標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し測定する。標準ポリスチレンの分子量は550、1300、2960、9680、28600、65900、172000、629000、1960000、3900000のものを用いる。カラムは昭和電工(株)製リニアカラムK−805Lを2本直列につないで使用する。また、溶媒はクロロホルム、溶媒の流量は1.00ml/min、カラムの温度は40℃で測定する。検出部のUVの波長は標準ポリスチレンが254nm、ポリフェニレンエーテル樹脂が283nmで測定する。
【0039】
次に、組成物実施例における、一般的手順を以下に述べる。
(A)成分(ポリフェニレンエーテル樹脂)、(B)成分(ハイインパクトポリスチレン樹脂:エー・アンド・エム スチレン(株)製H9405)、(C)成分(一般的ポリスチレン:エー・アンド・エム スチレン(株)製GP685)、(D)成分(添加剤:酸化亜鉛と硫化亜鉛とハイインパクトポリスチレンからなるブレンド品)を表1に示した組成で、ベントポート付き二軸押出機ZSK−25(WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて押出温度320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量12kg/時間の条件にて溶融混練しペレットとして得た。
このペレットを用いて240℃に設定した東芝のスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で射出成形圧力を測定した。
【0040】
【比較例1】
一般的手順で述べた反応器の内部を窒素で充分置換した後、酸化第一銅0.8374gと47wt%臭化水素水溶液5.0371gを混合して入れ、ここにN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン2.0173g、ジ−n−ブチルアミン9.7664g、ブチルジメチルアミン24.7706g、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド1.0g及びトルエン3656.5712gを加えた。反応器に酸素及び、窒素の混合ガスを導入し反応温度40℃にて、直ちに、プランジャー式ポンプで、650gの2,6−ジメチルフェノールを650gのトルエンに溶かした溶液を30分かけて加えた。90分間重合反応を行った。
【0041】
重合終了後の反応混合物にEDTA・3カリウム塩の1.83重量%水溶液を500g加え70℃で150分間攪拌後、等容のメタノールを加えてポリマーを沈殿させた。沈殿させたポリマーは濾過後メタノールで3度洗浄し、145℃で1時間真空乾燥させた。乾燥させたポリマーのGPCを測定し、換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を求めた。ここでは、Mw/Mn=2.69であった。
【0042】
【比較例2】
比較例1においてプランジャー式ポンプで、650gの2,6−ジメチルフェノールを650gのトルエンに溶かした溶液を20分かけて加えた以外は、全て比較例1の条件で行った。
ここではMw/Mn=2.75であった。
ここで得られたポリフェニレンエーテルを用いて、表1に示す組成物を作成し評価した。
【0043】
【比較例3】
比較例1においてプランジャー式ポンプで、650gの2,6−ジメチルフェノールを650gのトルエンに溶かした溶液を40分かけて加えた以外は、全て比較例1の条件で行った。ここではMw/Mn=2.65であった。
モノマーとして2,6−ジメチルフェノールのみを用いた、一般手順による重合方法では、ポリフェニレンエーテルの分子量分布が最大で比較例2のMw/Mn=2.75であって、分子量分布が広がり難い結果であった。
【0044】
【実施例1】
比較例1において、プランジャー式ポンプで、643.5gの2,6−ジメチルフェノールと6.5gのオルソクレゾールを650gのトルエンに溶かした溶液を30分かけて加え重合時間を110分とした以外は比較例1の条件で実施した。ここでは、Mw/Mn=3.02であった。
重合反応時のポリフェニレンエーテルのゲル化は無かった。
ここで得られたポリフェニレンエーテルを用いて、表1に示す組成物を作成し評価した。
【0045】
【実施例2】
実施例1においてプランジャー式ポンプで、631gの2,6−ジメチルフェノールと19gのオルソクレゾールを650gのトルエンに溶かした溶液を30分かけて加え重合時間を120分とした以外は、全て実施例1の条件で行った。ここではMw/Mn=4.07であった。
重合反応時のポリフェニレンエーテルのゲル化は無かった。
ここで得られたポリフェニレンエーテルを用いて、表1に示す組成物を作成し評価した。
【0046】
【実施例3】
実施例1においてプランジャー式ポンプで、619gの2,6−ジメチルフェノールと31gのオルソクレゾールを650gのトルエンに溶かした溶液を30分かけて加え重合時間を130分とした以外は、全て実施例1の条件で行った。ここではMw/Mn=5.30であった。
重合反応時のポリフェニレンエーテルのゲル化は無かった。
ここで得られたポリフェニレンエーテルを用いて、表1に示す組成物を作成し評価した。
【0047】
【実施例4】
実施例1においてプランジャー式ポンプで、605gの2,6−ジメチルフェノールと45gのオルソクレゾールを650gのトルエンに溶かした溶液を30分かけて加え重合時間を140分とした以外は、全て実施例1の条件で行った。ここではMw/Mn=8.00であった。
重合反応時のポリフェニレンエーテルのゲル化は無かった。
ここで得られたポリフェニレンエーテルを用いて、表1に示す組成物を作成し評価した。
実施例1〜4及び、比較例2で得られたポリフェニレンエーテルを組成物の射出成形圧力を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本発明で、従来には製造され得なかった分子量分布が広く、更に流動特性に優れ、かつ他樹脂との混合にきわめて容易なポリフェニレンエーテルを提供することができる。この方法によって、ポリフェニレンエーテルの優れた機械特性、耐熱特性、電気特性を生かした組成物を提供することが可能となった。また、この配合方法で生産性の向上の効果を持つといえる。
Claims (5)
- 2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールが含まれているモノマーを用いることで得られる請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 2,6−ジメチルフェノールにオルソクレゾールを加えることで得られたモノマーを用いることで得られる請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物および/または2級モノアミン化合物を含む請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 請求項1に記載のポリフェニレンエーテルを用いた樹脂組成物。
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