JP5099805B2 - 分子量分布のピークを2個有するポリフェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents
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そこで、2つの分子量のポリフェニレンエーテルをそれぞれバッチ式で重合し、分離精製後のポリフェニレンエーテルを単純ブレンドすることにより、2種類の分子量のポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物を得ている(例えば、特許文献1参照)。この方法から得られるポリフェニレンエーテルは成形時の流動性に優れると記載されているが、2種類の特定の溶液粘度を持つポリフェニレンエーテルを別々に製造することから生産性を考慮に入れた場合得策ではない
また、完全バッチ重合によって得られたポリフェニレンエーテルの溶液を、重合後加熱処理することによってGPCで2つのピークトップを持つポリフェニレンエーテルを得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)が、副生物のジフェノキノンを多く生成するプロセスであり、かつ重合後に加熱処置する必要があり、この製造方法も生産性を考えた場合得策ではない。
一方、分子量分布のピークを2個有する多種類のポリフェニレンエーテルを造り分ける場合においては、バッチ重合方式が有用であり、広い範囲において分子量の設計が可能な効率的なポリフェニレンエーテルの製造方法が望まれている。
即ち、本発明は、
1.混合フェノール化合物(A)を触媒と酸素含有ガスの存在下で重合してポリフェニレンエーテルを得る製造方法において、重合終結時における重合溶液の形態が沈殿析出重合であり、重合に用いられる成分(A)が、式(1)で表されるフェノール化合物(B)99.7〜50wt%及び、式(2)で表されるフェノール化合物(C)0.3〜50wt%からなり、前記成分(A)が反応器中に全量存在する状態で重合反応を開始し、該ポリフェニレンエーテルが分子量1000以上の成分中に分子量分布のピークを2個有することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法、
3.該触媒の構成成分として、銅化合物、ハロゲン化合物及び一般式(3)で表されるジアミン化合物からなる触媒を用いる上記1又は2いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
5.成分(C)の(2)式中のR9が、メチル基であることを特徴とする上記1〜4いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
6.成分(C)が、2,4,6−トリメチルフェノールであることを特徴とする上記1〜5いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
7.成分(B)が、2,6−ジメチルフェノールおよび2,3,6−トリメチルフェノールを含むことを特徴とする上記1〜6いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
8.成分(B)が、2,6−ジメチルフェノールであることを特徴とする上記1〜6いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
9.上記1〜8のいずれかに記載された方法で製造されることを特徴とするポリフェニレンエーテル、
である。
本発明に用いられる(B)フェノール化合物は下記一般式(1)で表される化合物である。
本発明に用いられる(C)フェノール化合物は下記一般式(2)で表される化合物である。
1. 混合フェノール化合物(A)をフェノール化合物(B)とフェノール化合物(C)の混合物として作製したものを、重合反応初期から全て使用する方法
2. 混合フェノール化合物(A)をフェノール化合物(B)とフェノール化合物(C)の混合物として作製したものの一部を、重合反応初期から使用し、残りの混合フェノール化合物(A)を重合反応の途中に徐々に加える方法。
3. フェノール化合物(B)を重合反応初期から使用し、重合反応初期から使用していないフェノール化合物(B)と重合反応初期から使用していないフェノール化合物(C)からなる混合フェノール化合物(A)を重合反応の途中に徐々に加える方法。
4. フェノール化合物(C)を重合反応初期から使用し、重合反応初期から使用していないフェノール化合物(B)と重合反応初期から使用していないフェノール化合物(C)からなる混合フェノール化合物(A)を重合反応の途中に徐々に加える方法。
本発明で用いられる触媒は、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることができる公知の触媒系が全て使用できる。一般的に知られている触媒系は酸化還元能を有する遷移金属イオンとこの金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば銅化合物とアミンからなる触媒系、マンガン化合物とアミンからなる触媒系、コバルト化合物とアミンからなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミンを加えることもある。
本発明で好適に使用される触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物および一般式(3)で表されるジアミン化合物からなる触媒である。
次に触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する.例えばN、N、N‘、N’‐テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーt−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。
本発明において触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物または2級モノアミン化合物をそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて含ませることは好ましい。
3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含めた脂肪族3級アミンである。例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
重合の温度は特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応の選択性が低下することがあるので、0〜80℃、好ましくは10〜70℃の範囲である。
ポリフェニレンエーテルの良溶媒とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶媒である。このような溶媒を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−、m−、p−の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物が挙げられる。また若干の貧溶媒性を持ってはいるものの良溶媒に分類されるものとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等が例示される。これらの良溶媒は、単独でも用いられるし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
しばしば用いられる溶媒の例としてはトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素単独溶媒や、これにメタノール、エタノール等のアルコール類を含有させた混合溶媒である。
フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒の比率を変化させ、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法になる。
重合反応終了後の後処理方法については特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させる。その後重合終結時の重合溶液の形状がスラリーであるため、触媒の洗浄除去を目的として、重合に用いたポリフェニレンエーテルの溶解能が低い溶媒を主成分とする溶液を用いて繰り返し洗浄を実施することがより好ましい。その後、各種乾燥機を用いた乾燥工程において乾燥するという操作でポリフェニレンエーテルが回収できる。
なお測定は以下の方法に従って行なった。
(1)分子量の測定方法
昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21で標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し測定する。標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550のものを用いる。カラムは昭和電工(株)製K−805Lを2本直列につないで使用する。また、溶媒はクロロホルム、溶媒の流量は1.0ml/min、カラムの温度は40℃で測定する。ポリフェニレンエーテルの0.1重量%クロロホルム溶液を作製して測定する。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254mn、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmである。
上記分子量測定による分子量分布を、横軸は分子量値(ポリスチレン換算値)の乗用対数値、横軸に微分分子量分布値とし、分子量分布チャートとして描写し、2個の分子量分布のピークの確認を行なう。
なお、高分子量側のピークにおける分子量値をM3・微分分子量分布値をT3とし、低分子量側のピークにおける分子量値をM1・微分分子量分布値をT1とし、M1とM3の間の最も低いピークにおける分子量値をM2・微分分子量分布値をT2とする。2個の分子量分布のピークをもつとはT1>T2かつT3>T2を満たし、同時にM3−M1>5000を満たすことを言う。
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.6リットルのジャケット付き第1重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.136gの塩化第二銅2水和物、0.582gの35%塩酸、5.192gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、3.916gのジ−n−ブチルアミン、158gのn−ブタノール、158gのメタノール、474gのキシレン、150gの2,6−ジメチルフェノール、18.75gの2,4,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ137ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始め、240分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。
原料の供給及び酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の10%水溶液を7.5g添加し30分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルにメタノールをふりかけ洗浄し湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定を行なった。結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
2,4、6−トリメチルフェノールを12.5gとした以外は実施例1と同様に行ない、結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
[実施例3]
2、6−ジメチルフェノールを150g、2,3,6−トリメチルフェノールを15g、2、4、6−トリメチルフェノールを15gとした以外は実施例1と同様に行ない結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
2、6−ジメチルフェノールを150g、2,3,6−トリメチルフェノールを50g、2、4、6−トリメチルフェノールを15gとした以外は実施例1と同様に行ない結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
[実施例5]
2、6−ジメチルフェノールを140g、2,3,6−トリメチルフェノールを20g、2、4、6−トリメチルフェノールを43gとした以外は実施例1と同様に行ない結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
[実施例6]
2、6−ジメチルフェノールを150g、2,3,6−トリメチルフェノールを48.5g、2、4、6−トリメチルフェノールを1.5gとした以外は実施例1と同様に行ない結果を表1に示した。得られたポリフェニレンエーテルの分子量分布は2個のピークを有した。なお、T1及びT2の値は、T3を100とした時の値である。
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.8リットルのジャケット付き第1重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.206gの酸化第二銅、1.550gの47%臭化水素水、0.500gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、2.404gのジ−n−ブチルアミン、828gのトルエン、160gの2,6−ジメチルフェノール、20gの2,4,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ146ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始め、240分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。
原料の供給及び酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の10%水溶液を7.7g添加し30分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
ポリマーはメタノールを添加して沈殿させ濾過したその後、濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルにメタノールをふりかけ洗浄し湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定を行なった。結果を表1に示した。
分子量分布は1個のピークを有するのみであり、ピークの分子量値をM3に示した。
2,4、6−トリメチルフェノールを13.3gとした以外は比較例1と同様に行ない、結果を表1に示した。分子量分布は1個のピークを有するのみであり、ピークの分子量値をM3に示した。
Claims (9)
- 混合フェノール化合物(A)を触媒と酸素含有ガスの存在下で重合してポリフェニレンエーテルを得る製造方法において、重合終結時における重合溶液の形態が沈殿析出重合であり、重合に用いられる成分(A)が、式(1)で表されるフェノール化合物(B)99.7〜50wt%及び式(2)で表されるフェノール化合物(C)0.3〜50wt%からなり、前記成分(A)が反応器中に全量存在する状態で重合反応を開始し、該ポリフェニレンエーテルが分子量1000以上の成分中に分子量分布のピークを2個有することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 成分(C)の(2)式中のR5、R6、R9が、アルキル基であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 該触媒の構成成分として、さらに3級モノアミン化合物並びに2級モノアミン化合物から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 成分(C)の(2)式中のR9が、メチル基であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 成分(C)が、2,4,6−トリメチルフェノールであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 成分(B)が、2,6−ジメチルフェノールおよび2,3,6−トリメチルフェノールを含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 成分(B)が、2,6−ジメチルフェノールであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載された方法で製造されることを特徴とするポリフェニレンエーテル。
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