JP3948576B2 - ポリフェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は重合反応活性の高いポリフェニレンエーテルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェノール性化合物を酸化重合させることでポリフェニレンエーテルを製造する際に用いられる重合触媒としては、特公昭36−18692号公報で提案されて以来、銅化合物と各種アミンとの組み合わせが多数提案されてきた。即ち、銅化合物の種類及びこれと共働するハロゲン化物の提案、またアミンに関しても1級アミンか2級アミンか3級アミンかという選択や、モノアミンかジアミンかポリアミンか等の種々の提案がなされてきた。
【0003】
例えば、古くは米国特許第3306875号明細書、同3344116号明細書及び、同3432466号明細書では銅化合物とN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン等のテトラアルキルタイプのジアミンの触媒系を用いる方法や、特公昭52−17075号公報、特公昭52−17076号公報では銅化合物とテトラアルキルタイプのジアミン及びヨウ素化合物との組み合わせも提案されている。
【0004】
また特公昭59−53012号公報、特公昭59−23332号公報では銅化合物とN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン及びN−メチルピロリジン等の3級アミンの組み合わせや前記3級アミンとN−ジ−n−ブチルアミン等の2級モノアミンとの組み合わせからなる方法等が提案されてきた。更に特開昭64−33131号公報には銅化合物と2級脂肪族アミンまたは2級脂肪族アミンと特殊な構造を持つアニリン類とN,N,N’,N’−テトラメチル1,3−ジアミノ(置換または非置換)プロパン及び臭素化合物もしくは塩素化合物を用いることにより耐水性の改良された高活性な方法が開示されている。
【0005】
これらの方法では溶媒には特に注意を払うことなく使用されてきた。例えば芳香族炭化水素類や芳香族炭化水素とアルコールの混合溶媒がしばしば使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
重合に使用されたこれらの溶媒をポリフェニレンエーテルと分離した後、そのまま重合へリサイクル使用を行おうとすると重合反応活性の低下が大きいという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の従来技術の問題点を解決し、溶媒をリサイクル使用する方法において重合反応活性が向上された工業的に有益なポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、驚くべきことに、フェノール性化合物を触媒とアルコールを含む溶媒を用いて酸化重合させてポリフェニレンエーテルを製造する際、重合終了後の工程でポリフェニレンエーテルと溶媒を分離した後、該溶媒を重合にリサイクル使用する方法において、該リサイクル溶媒1kg当たりに含まれるアルデヒドまたはケトン化合物の量が1wt%以下および有機酸化合物の量が0.2wt%以下であるようにすることによって重合反応活性が高く、高効率でのポリフェニレンエーテルの製造が可能となることを見いだし本発明に至った。好ましくは本発明において使用する触媒が、
(a)銅化合物、
(b)下記式(1)
【0009】
【化2】
【0010】
の構造を持つジアミン化合物、
からなる触媒を用いる場合には本発明は有効に作用する。また上記触媒に更に第2級脂肪族アミン、N−炭化水素置換アニリン、N−(置換または非置換フェニル)アルカノールアミンから選ばれた少なくとも1種類のモノアミンを加える場合、臭素化合物もしくは塩素化合物を加える場合、スルホン酸またはその塩を加える場合、第3級モノアミンを加える場合は更に好ましく本発明が作用する。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明においては、フェノール性化合物を触媒とアルコールを含む溶媒を用いて酸化重合させてポリフェニレンエーテルを製造する際、重合終了後の工程でポリフェニレンエーテルと溶媒を分離した後、該溶媒を重合にリサイクル使用する方法において、該リサイクル溶媒1kg当たりに含まれるアルデヒドまたはケトン化合物の量が1wt%以下および有機酸化合物の量が0.2wt%以下であるようにする事が必要である。
【0013】
本発明でいうアルコールを含む溶媒とは、アルコールを含む混合溶媒を指す。アルコールについてはアルコールである限り特に限定されないがメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、アリルアルコール等が例示される。好ましくは炭素数が6以下のアルコールである。アルコールは1種類でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。アルコール以外の溶媒成分としては、本発明の範囲にある限り特に制限はなく、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−、m−、p−の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等が例示される。これらアルコール以外の溶媒成分は単独でも用い得るし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0014】
上記アルコールを含む溶媒をリサイクル使用する場合に本発明では該リサイクル溶媒中のアルデヒドまたはケトン化合物、有機酸化合物の量が重要である。
【0015】
ここで述べられたアルデヒドまたはケトン化合物とはその化合物の骨格内にカルボニル構造を有するものである。従って、一般にはカルボニル化合物と称される。これらの例としては例えば、メタナール(ホルムアルデヒド)、エタナール(アセトアルデヒド)、プロパナール(プロピオンアルデヒド)、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、2−メチルプロパナール、2−メチルプロペナール、2−ブテナール、2−メチル−2−ブテナール、ベンズアルデヒド、プロパノン(アセトン)、ブタノン(メチルエチルケトン)、3−ペンタノン(エチルケトン)、2−ペンタノン(メチルn−プロピルケトン)、3−メチル−2−ブタノン(メチルイソプロピルケトン)、2−ヘキサノン(メチルブチルケトン)、3−ヘキサノン(エチルプロピルケトン)、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらのカルボニル化合物はリサイクル溶媒1kg中の濃度が1wt%以下である必要がある。
【0016】
更にここで述べられた有機酸化合物とはその化合物の骨格内にカルボキシル基を持つ化合物若しくはカルボキシレート塩を指す。これらの例としては例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、プロペン酸(アクリル酸)、酪酸、吉草酸、α−メチル酪酸、α,β−ジメチル吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸やこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの有機酸化合物はリサイクル溶媒1kg中の濃度が0.2wt%以下である必要がある。
【0017】
本発明が好ましく作用する触媒は次のようなものである。
【0018】
(a)銅化合物、
(b)下記式(1)
【0019】
【化3】
【0020】
の構造を持つジアミン化合物、
からなる触媒である。
【0021】
ここで述べられた触媒成分(a)の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては第一銅化合物、第二銅化合物またはそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は第一銅、第二銅化合物については塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は酸化物、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲンまたは酸から使用時に合成しても良い。銅化合物の使用量は特に限定されないが、後述するジアミン化合物と組み合わされた場合、通常フェノール性化合物100モルに対して銅として0.005モルから0.5モル、好ましくは0.01から0.3モルの範囲で用いられる。このことは銅化合物が極めて低濃度で使用され得ることを示しており、このような活性の高い触媒を用いる場合に本発明は有効に作用される。
【0022】
次に触媒成分(b)のジアミン化合物の例を列挙する。例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−n−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−i−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−n−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−i−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。本発明にとって好ましいジアミン化合物は2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2または3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常フェノール性化合物100モルに対して0.01モルから10モルの範囲で用いられる。
【0023】
この触媒成分には本発明にとって更に好ましい実施形態として次の成分を加えることができる。即ち、(イ)上記触媒に更に第2級脂肪族アミン、N−炭化水素置換アニリン、N−(置換または非置換フェニル)アルカノールアミンから選ばれた少なくとも1種類のモノアミンを加える場合、(ロ)臭素化合物もしくは塩素化合物を加える場合、(ハ)スルホン酸またはその塩を加える場合、(ニ)第3級モノアミンを加える場合である。(a),(b)から成る触媒へ(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)それぞれは単独に加えても良いし2種以上用いて加えても良い。即ち、[(a),(b)]+(イ)、[(a),(b)]+(ロ)、
[(a),(b)]+(ハ)、[(a),(b)]+(ニ)、[(a),(b)]+(イ)+(ロ)、[(a),(b)]+(イ)+(ハ)、[(a),(b)]+(イ)+(ニ)、[(a),(b)]+(ロ)+(ハ)、[(a),(b)]+(ロ)+(ニ)、[(a),(b)]+(ハ)+(ニ)、[(a),(b)]+(イ)+(ロ)+(ハ)、[(a),(b)]+(イ)+(ロ)+(ニ)、[(a),(b)]+(ロ)+(ハ)+(ニ)、[(a),(b)]+(イ)+(ロ)+(ハ)+(ニ)、の各種の組み合わせがある。
【0024】
(イ)の例として第2級脂肪族アミンとしては例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。N−(置換または非置換フェニル)アルカノールアミンとしては例えば、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン等が挙げられる。N−炭化水素置換アニリンとしては例えば、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられるがこれらの例には限定されない。これらのモノアミン化合物は(イ)成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。使用量は特に限定されないがフェノール性化合物100モルに対し0.05モルから15モルの範囲であり好ましくは0.1から10モルの範囲である。
【0025】
(ロ)の臭素化合物若しくは塩素化合物としては特に限定されず、従来知られている臭素化合物または塩素化合物がいずれも使用できる。例えば臭化水素、塩化水素、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、臭化塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。これらの臭素化合物若しくは塩素化合物は(ロ)成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。使用量は特に限定されないが使用される銅1モルに対し0.5モルから20モルの範囲であり好ましくは1から10モル程度用いられる。
【0026】
(ハ)のスルホン酸またはその塩としては例えば、ベンゼンスルホン酸、2−メチルスルホン酸、3−メチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2,6−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸(2−メシチレンスルホン酸)、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等の酸やそれに対応する塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらのスルホン酸またはその塩は(ハ)成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。使用量は特に限定されないが使用される銅1モルに対し0.5モルから20モルの範囲であり好ましくは1から10モル程度用いられる。
【0027】
(ニ)の第3級モノアミンとしては、脂環式3級アミンを含めた脂肪族3級アミンである。例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは(ニ)成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は特に限定されないが、通常フェノール性化合物100モルに対して0.1モルから10モルの範囲で用いられる。
【0028】
本発明方法に用いるフェノール性化合物は下記式(2)で表される構造を持つ化合物である。
【0029】
【化4】
【0030】
該化合物の例としては例えば、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール等が挙げられる。これらの化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。また少量のフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール等を含んでいても実質上差し支えない。これらのフェノール性化合物の中で特に2,6−ジメチルフェノールは工業上重要である。
【0031】
重合形式については本発明に記載された条件に適う溶媒を用いている限り制限はなく、バッチ重合法、連続重合法いずれの方法にも適用できる。また、フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒の比率を選ぶことによって溶液重合法にもなるし、反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法にもなる。
【0032】
重合反応系に溶媒間の相分離性改善や活性向上等の目的で界面活性剤を加えることができる。アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム等の中性塩、ゼオライト等も添加することができる。
【0033】
重合反応温度については、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応の選択性が低下することがあるので、0〜80℃、好ましくは10〜70℃の範囲である。
【0034】
本発明の酸化重合における酸素は純酸素の他、窒素等の不活性ガスと任意の割合で混合したもの及び空気等が使用できる。重合反応中の系内圧力は常圧で充分であるが必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0035】
重合終了後の後処理方法はリサイクルされた溶媒について本発明に記載された条件に適う方法であれば特に制限はない。例えば沈殿重合法であれば重合終了時にポリフェニレンエーテルは粒子が析出しているので、通常次のようにして行われる。重合終了後、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩やニトリロポリ酢酸等のキレート剤若しくはこの水溶液を加えて触媒を失活させた後、生成した重合体を分離して、メタノール等のポリフェニレンエーテルを溶解しない溶媒を加えて洗浄後、乾燥させることでポリフェニレンエーテルが回収される。沈殿重合法では特許番号第2007004号に記載されている如き方法は好ましい方法である。重合に使用された溶媒、洗浄に使用された溶媒はポリフェニレンエーテルと分離された後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリ性化合物若しくはこの水溶液を加える。この混合物からリサイクル溶媒が回収される。溶液重合法であれば、重合終了時にはポリフェニレンエーテル溶液のとなっているので、例えば次のようにして行われる。重合終了後、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩やニトリロポリ酢酸等のキレート剤等の水溶液を加えて触媒を水相に抽出失活させた後、ポリフェニレンエーテルを含む有機相をとり(水相は蒸留に使用される)、メタノール等のポリフェニレンエーテルを溶解しない溶媒を加えて生成した重合体を分離して、更にメタノール等のポリフェニレンエーテルを溶解しない溶媒で洗浄後、乾燥させることでポリフェニレンエーテルが回収される。重合に使用された溶媒、洗浄に使用された溶媒はポリフェニレンエーテルと分離された後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリ性化合物若しくはこの水溶液を加える。この混合物からリサイクル溶媒が回収される。
【0036】
上記混合物からリサイクル溶媒の回収操作は通常次のような方法で行われる。該混合物は一般的に複数の揮発性成分と不揮発性成分を含んでいる。これらは蒸留操作によってリサイクル溶媒とされるが、混合物中に不揮発成分が含まれている場合には、該混合物を予め減圧留去、加熱等の蒸発操作を行い、揮発性成分を回収した後、蒸留操作を行うことが好ましい。揮発性成分が複数の成分からなる場合には各溶媒の沸点に応じた温度にて分留することができる。
【0037】
上記の回収方法は一例であり、本発明の範囲内になるようなリサイクル溶媒を得ることができる方法であれば特に制限はない。
【0038】
回収されたリサイクル溶媒は望みの重合に適する溶媒組成に混合される。該リサイクル溶媒中のアルデヒド、ケトン化合物および、あるいは有機化合物の量が本発明の範囲内であればそのまま重合溶媒として使用可能であるが、回収利用の頻度が増え、本発明の範囲外となった場合には、再度蒸留を繰り返すか、あるいは本発明の範囲内の新たな溶媒を加えて、溶媒全体を本発明の範囲内に収めることにより、本発明の製造方法を実施することができる。
【0039】
なお、回収されたリサイクル溶媒の組成とこれに含まれるアミン類はガスクロマトグラフィー分析(島津製作所株式会社製 GC−9A カラム:キャピラリー、検出器:FID検出器)によって定量し、アルデヒド、ケトン化合物の量は、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを用いて誘導化した後、液体クロマトグラフィー分析(日本ウォーターズ株式会社製 ポンプ:Waters616、カラム:Waterssymmetry C18、検出器:Waters996フォトダイオードアレイ検出器)を行って定量化する。また、有機化合物の量はイオンクロマトグラフィー分析(日本ウォーターズ株式会社製 ポンプ:Waters510、カラム:TSKgel IC−アニオン−PWXL peek、検出器:Waters431電気伝導度検出器)により定量化しておくことが必要である。
【0040】
【発明の実施の形態】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
重合活性は得られたポリフェニレンエーテルの粘度を測定することによって行った。なお、ポリフェニレンエーテルの粘度(ηsp/c)とは重合体を0.5g/100mlのクロロホルム溶液とし30℃においてウベローデ粘度計を用いて測定された値である。
【0042】
【実施例1】
<1回目の重合操作>
メタノール134.6gに塩化第二銅・2水和物0.209gを溶かした溶液と、キシレン403.8gとn−ブタノール134.6gの混合溶媒にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン7.99gを溶かした溶液とを混ぜ合わせた。この溶液とキシレン1211.3g、n−ブタノール403.8g、メタノール403.8gの混合溶媒に2,6−ジメチルフェノール300.0gを溶かした溶液とを混ぜ合わせた。この時点での混合物を原料液と呼ぶ。原料液は全部で3000gであり、原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:n−ブタノール:メタノール=60:20:20である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.05モル%であり、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して2.5モル%である。原料液をジャケット付セパラブルタイプガラス製反応器に入れ、攪拌下、反応器底部より酸素を供給しながら30℃で重合を行った。重合終了後、反応混合物はスラリーを含む黄白色の液体に変化していた。この反応混合物に1.7gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール900gに溶かした液を加え、1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。濾液はリサイクル使用を行うために、次の溶媒回収操作に用いた。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.49であった。
【0043】
<溶媒回収操作>
濾液に濃水酸化カリウム水溶液を加え、液のpHを12.5にした。ロータリーエバポレータを用いて、残物が実質的に不揮発性成分のみになるまで溶媒を留去させた。続いて蒸留を行った。即ち、エバポレータ留出液をフラスコに入れ、分留管、留出側にコックのついた分留ヘッド、冷却器、受器を取り付けた。フラスコを油浴で加熱し最初は留出コックを閉めきり還流状態にしておきその後、留出コックをわずかに開けて液を留出させた。ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、留出液はメタノールを主成分とする液に、またフラスコ残液はキシレン、ブタノールを主成分とする液に分けられたことが判った。これらの溶媒を用いて、2回目の重合操作を行った。
【0044】
<2回目の重合操作>
溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。また回収操作におけるロスがあるため原料液の全量は2000gで実施した。即ち原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:n−ブタノール:メタノール=60:20:20である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.05モル%であり、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して2.5モル%である。2回目の重合終了後、反応混合物はスラリーを含む黄白色の液体に変化していた。この反応混合物に1.2gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール600gに溶かした液を加え、1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は一回目の重合と同じく0.49であった。
【0045】
【実施例2】
実施例1で触媒(c)成分としてジ−n−ブチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.48で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.48であった。
【0046】
【実施例3】
実施例1で触媒(c)成分としてHClを使用される銅の7.2倍モル量加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.50で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.50であった。
【0047】
【実施例4】
実施例1で触媒(c)成分としてp−トルエンスルホン酸を使用される銅の7.2倍モル量加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.52で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.52であった。
【0048】
【実施例5】
実施例1で触媒(c)成分としてHClを使用される銅の7.2倍モル量、及びジ−n−ブチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.58で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.58であった。
【0049】
【実施例6】
実施例1で触媒(c)成分としてHClを使用される銅の7.2倍モル量、及びN−エチルアニリンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.65で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.65であった。
【0050】
【実施例7】
実施例1で触媒成分(a)としての銅化合物種を塩化第二銅の代わりに臭化第二銅(銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.05モル%である)とし、触媒(c)成分としてHBrを使用される銅の7.2倍モル量、及びジ−n−ブチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.58で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.58であった。
【0051】
【実施例8】
実施例1で触媒(c)成分としてHClを使用される銅の7.2倍モル量、及びp−トルエンスルホン酸ナトリウムを使用される銅の10倍モル量加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作、溶媒回収操作、2回目の重合操作を行った。2回目の重合操作前に溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン量はその分減らして行った。1回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.54で2回目の重合操作で得られたポリフェニレンエーテルの粘度も同じく0.54であった。
【0052】
【実施例9】
<1回目の重合操作>
実施例1で溶媒としてキシレン:メタノール=90:10重量比の溶媒を用い、触媒(a)成分としての銅化合物種を塩化第二銅の代わりに臭化第二銅(銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.12モル%である)とし、触媒(b)成分としてのジアミン化合物をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンの代わりにN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン(N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.24モル%である)とし、触媒(c)成分としてHBrを使用される銅の7.7倍モル量、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドを使用される銅の0.52倍モル量、ジ−n−ブチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%、ブチルジメチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して2.3モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作を行った。即ち原料液は全部で3000gであり、原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:メタノール=90:10である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.12モル%であり、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.24モル%であり、HBrは使用される銅の7.7倍モル量であり、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドは使用される銅の0.52倍モル量であり、ジ−n−ブチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%であり、ブチルジメチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して2.3モル%である。重合終了後、反応混合物はわずかに濁ったオレンジ色の液体に変化していた。この反応混合物に4.0gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール2000gに溶かした液を加え、重合体を沈殿させた。このまま1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。濾液はリサイクル使用を行うために、次の溶媒回収操作に用いた。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.55であった。
【0053】
<溶媒回収操作>
濾液に濃水酸化カリウム水溶液を加え、液のpHを12.5にした。ロータリーエバポレータを用いて、残物が実質的に不揮発性成分のみになるまで溶媒を留去させた。続いて蒸留を行った。即ち、エバポレータ留出液をフラスコに入れ、分留管、留出側にコックのついた分留ヘッド、冷却器、受器を取り付けた。フラスコを油浴で加熱し最初は留出コックを閉めきり還流状態にしておきその後、留出コックをわずかに開けて液を留出させた。ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、留出液はメタノールを主成分とする液に、またフラスコ残液はキシレンを主成分とする液に分けられたことが判った。これらの溶媒を用いて、2回目の重合操作を行った。
【0054】
<2回目の重合操作>
溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にブチルジメチルアミンとN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるブチルジメチルアミンとN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン量はその分減らして行った。また回収操作におけるロスがあるため原料液の全量は2000gで実施した。即ち原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:メタノール=90:10である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.12モル%であり、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.24モル%であり、HBrは使用される銅の7.7倍モル量であり、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドは使用される銅の0.52倍モル量であり、ジ−n−ブチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.95モル%であり、ブチルジメチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して2.3モル%である。2回目の重合終了後、反応混合物はやや濁ったオレンジ色の液体に変化していた。この反応混合物に2.7gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール1400gに溶かした液を加え、重合体を沈殿させた。このまま1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は1回目の重合と同じく0.55であった。
【0055】
【実施例10】
<1回目の重合操作>
実施例1で溶媒としてキシレン:メタノール=70:30重量比の溶媒を用い、触媒(a)成分としての銅化合物種を塩化第二銅の代わりに臭化第二銅(銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.27モル%である)とし、触媒(b)成分としてのジアミン化合物をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンの代わりにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.42モル%である)とし、触媒(c)成分としてジ−n−ブチルアミンを2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して9.2モル%加えた以外は実施例1と同様に1回目の重合操作を行った。即ち原料液は全部で3000gであり、原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:メタノール=70:30である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.27モル%であり、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.24モル%であり、ジ−n−ブチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して9.2モル%である。重合終了後、反応混合物はスラリーを含む黄白色の液体に変化していた。この反応混合物に3.0gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール1000gに溶かした液を加え、1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。濾液はリサイクル使用を行うために、次の溶媒回収操作に用いた。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.45であった。
【0056】
<溶媒回収操作>
濾液に濃水酸化カリウム水溶液を加え、液のpHを12.5にした。ロータリーエバポレータを用いて、残物が実質的に不揮発性成分のみになるまで溶媒を留去させた。続いて蒸留を行った。即ち、エバポレータ留出液をフラスコに入れ、分留管、留出側にコックのついた分留ヘッド、冷却器、受器を取り付けた。フラスコを油浴で加熱し最初は留出コックを閉めきり還流状態にしておきその後、留出コックをわずかに開けて液を留出させた。ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、留出液はメタノールを主成分とする液に、またフラスコ残液はキシレンを主成分とする液に分けられたことが判った。これらの溶媒を用いて、2回目の重合操作を行った。
【0057】
<2回目の重合操作>
溶媒回収操作で分けられた溶媒の一部を用いて、一回目の重合操作と同じ溶媒組成にして、アルデヒド及びケトンと有機酸の分析を行ったところ、アルデヒド及びケトンは1wt%以下であり、有機酸は検出限界(約2ppm)以下であった。残りの溶媒を用いて一回目の重合と同じ触媒を用いて重合を行った。但し回収された溶媒中にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとジ−n−ブチルアミンが検出されたので、触媒調製の際には新たに加えるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとジ−n−ブチルアミン量はその分減らして行った。また回収操作におけるロスがあるため原料液の全量は2000gで実施した。即ち原料液内の2,6−ジメチルフェノールの濃度は10wt%であり、溶媒の重量比組成はキシレン:メタノール=70:30である。また銅は2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.27モル%であり、N,N,N’,N’−テトラメチル−エチレンジアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して0.42モル%であり、ジ−n−ブチルアミンは2,6−ジメチルフェノールのモル数に対して9.2モル%である。2回目の重合終了後、反応混合物はスラリーを含む黄白色の液体に変化していた。この反応混合物に2.0gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩をメタノール700gに溶かした液を加え、1時間保温下攪拌した。その後この混合物は濾過された。溶媒をまだ含むポリフェニレンエーテルは更にメタノールが加えられ、洗浄され、濾過され、更に140℃で減圧乾燥された。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は一回目の重合と同じく0.45であった。
【0058】
【比較例1】
リサイクル溶媒中にケトン化合物が1wt%を越えて含まれれる場合のモデル対照実験として、溶媒としてキシレン:アセトン:イソプロパノール=60:20:20重量比の溶媒を用い、実施例5と同じ触媒を用いて実施例5と同様に一回目の重合を行った。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は0.29にすぎなかった。
【0059】
【比較例2】
リサイクル溶媒中に有機酸化合物が0.2wt%を越えて含まれれる場合のモデル対照実験として、溶媒としてキシレン:ブタノール:メタノール=60:20:20重量比の溶媒にギ酸が0.23wt%、酪酸が0.08wt%の合計0.31wt%含まれるようにして、実施例5と同じ触媒を用いて実施例5と同様に一回目の重合を行った。しかしポリフェニレンエーテルは得られなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明による方法においては、ポリフェニレンエーテルを製造する際に重合溶媒をリサイクル使用する方法において、該リサイクル溶媒中に含まれるアルデヒドまたはケトン及び有機酸化合物の量が制限されていることにより、リサイクル使用時の重合反応活性の低下を抑制し、高効率なポリフェニレンエーテルの製造方法を提供できるという効果がある。
Claims (4)
- 触媒に更に(c)成分として、
(イ)第2級脂肪族アミン、N−炭化水素置換アニリン、N−(置換または非置換フェニル)アルカノールアミンから選ばれた少なくとも1種類のモノアミン、
(ロ)臭素化合物もしくは塩素化合物、
(ハ)スルホン酸またはその塩、
(ニ)第3級モノアミン
の4成分から選ばれた少なくとも1種類以上を加える請求項1記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。 - ポリフェニレンエーテルを分離した後、該溶媒にアルカリを加え、この混合物からリサイクル溶媒を回収使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
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