JP7102202B2 - ポリフェニレンエーテル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特に低分子量のポリフェニレンエーテルは、高分子量のポリフェニレンエーテルと比較して、加熱加工時の分子量の増加に伴い、溶剤への溶解性やガラス転移温度が顕著に変化してしまう傾向があるため、加熱加工時の操作や物性予測が困難となることが少なくない。また、低分子量のポリフェニレンエーテルでは、加熱加工時に臭気が発生することがあり、そのような臭気が作業性の悪化にもなり、加熱加工時の作業性の向上が望まれていた。
[1]
重量平均分子量(Mw)が2500~6000であり、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0~2.0であり、
下記一般式(1)及び一般式(2)で表される末端基の合計数が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニット100個あたり0.8個以下であり、
前記ポリフェニレンエーテルについて、下記の加熱条件での加熱の前後で測定した重量平均分子量の差は1000以下である、
(加熱条件)加熱温度:230℃、加熱時間:10分、加熱圧力:10MPa
ことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル。
(式(1)中、R1~R3は、各々独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン基、アリール基、及び置換アリール基からなる群より選択され、R4、R5、は水素であり、R6は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基,アリール基、及び置換アリール基からなる群より選択される。)
(式(2)中、R1~R5は、一般式(1)について定義したものと同じであり、R7、R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基からなる群より選択されるが、同時に水素であることはない。)
[2]
前記一般式(1)及び前記一般式(2)で表される末端基の合計数が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニット100個あたり0.01個以上である、上記[1]に記載のポリフェニレンエーテル。
[3]
分子量が13000以上の高分子量成分の含有量が8.0質量%以下であり、分子量が500未満の低分子量成分の含有量が3.0質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル。
[4]
前記一般式(2)で表される末端基を実質的に有さない、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
[5]
分子鎖中に一般式(3)で表される二価フェノール化合物に由来する構造単位を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
(式(3)中、R9、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群より選択され、Xは、単結合、2価のヘテロ原子、及び炭素数1~12の2価の炭化水素基からなる群より選択される。)
[6]
残存窒素量が300質量ppm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
[7]
カラーインデックス(C.I)値が1.0以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
[8]
総揮発分が0.5質量%未満である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
ポリフェニレンエーテルの重合工程において、
重合溶剤として、炭素数が1~10個のアルコール溶剤を少なくとも一種類使用し、
重合触媒として、第1級アミン及び第2級モノアミンを実質的に含有しないアミン化合物を使用する
ことを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、重量平均分子量(Mw)が2500~6000であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0~2.0であり、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される末端基の合計数が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニット100個あたりに対して0.8個以下である。これにより、ポリフェニレンエーテルの優れた高周波特性、難燃性、耐熱性を活かしつつ、さらに低分子量化して汎用溶剤等への溶解性を高めたポリフェニレンエーテルを得ることができ、また、当該低分子量化したポリフェニレンエーテルについて、加熱加工時の作業性や物性予測を向上させることができる。
前記式(4)中、R13、R14、R15、及びR16で示されるアルキル基は、置換可能な位置で1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
なお、上記フェノール化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、使用するフェノール化合物には、製造の際の副産物として含まれ得る、少量のm-クレゾール、p-クレゾール、2,4-ジメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
上記式(3)で表されるような二価のフェノール化合物は、対応する一価のフェノール化合物と、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等)、又はジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応や、対応する一価のフェノール化合物同士の反応等により、工業的に有利に製造できる。
式(3-a)、式(3-b)、式(3-c)中、Xは、単結合、2価のヘテロ原子、及び炭素数1~12の2価の炭化水素基からなる群から選択される。
多価フェノール化合物としては、例えば、分子内に3個以上9個未満のフェノール性水酸基を有し、その内の少なくとも1個のフェノール性水酸基の2,6位にアルキル基またはアルキレン基を有する化合物が挙げられる。
また、多価フェノール化合物における2,6位のアルキル基またはアルキレン基としてはメチル基が好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例における測定方法により測定した値とする。
重量平均分子量(Mw)の制御方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、重合時間やモノマー追添時間を調整したり、重合をスラリー重合法により行う場合には、より貧溶媒性の高い溶剤の割合を高めて重量平均分子量(Mw)が小さくなるように制御することができる。
数平均分子量に対する重量平均分子量の比の下限値は、1.0以上であれば特に制限されるものではなく、例えば1.3としてもよい。
なお、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、一般に、分子量分布とも称される。
数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)の制御方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフェニレンエーテルの製造における重合を、スラリー重合法で行うか、溶液重合法で行うか等により制御することができる。
上述するように、ポリフェニレンエーテルは、一般に、加熱加工により分子量が上昇するため、加熱の前後の重量平均分子量の差は、加熱後の重量平均分子量の値から加熱前の重量平均分子量の値を差し引くことで求めることができる。しかし、測定誤差などが生じ得るため、大きい方の重量平均分子量の値から小さい方の重量平均分子量の値を差し引いて求めればよい。
なお、前記加熱条件での加熱は、例えば、圧縮成形機等を用いて行うことができる。ここで、加熱時間は、圧縮成形機等の装置の温度が230℃に達してからの加熱時間とする。加熱圧力は、ゲージ圧であり、ポリフェニレンエーテルに加わる圧力が10MPaであればよい。
なお、分子量13,000以上の高分子量成分の含有量の下限値は、特に限定されず、0質量%以上であればよく、より低いこと、すなわち、0質量%に近い程が好ましい。
なお、分子量500未満の低分子量成分の含有量の下限値は、特に限定されず、0質量%以上であればよく、より低いこと、すなわち、0質量%に近い程が好ましい。
なお、ポリフェニレンエーテルのポリスチレン換算分子量、並びに高分子量成分及び低分子量成分の含有量は、より具体的には、後述の実施例記載の方法で求めることができる。
また、R1~R3は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、より好ましくはR1及びR3が水素であり、R2がアルキル基である。R6は、アルキル基又は置換アルキル基であることが好ましく、より好ましくはアルキル基である。
また、R7、R8は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、より好ましくはアルキル基である。
前記式(1)(2)中、R1~R3及びR6~R8において置換アルキル基、置換アルケニル基又は置換アリール基が選択可能であるところ、ここでいう置換とは、各基において置換可能な位置で1又は2以上の置換基で置換されていてもよいことを意味する。
具体的には、末端基の合計数を所定の範囲とすることにより、加熱加工時に当該末端が反応してポリフェニレンエーテルの分子量が上昇するのを抑制することができる。それゆえに、溶剤への溶解性やガラス転移温度の変化を抑制することができ、加熱加工時の作業性や物性予測を向上させることができる。
また、特に一般式(2)で表される末端基のアミノ基は、加熱加工時に脱離することにより、加熱加工時の臭気となり作業性の悪化につながり得る。それゆえに、末端基の合計数、特に一般式(2)で表される末端基の数を所定の範囲とすることにより、加熱加工時の臭気を抑えることができ、加熱加工時の作業性を向上させることができる。
ポリフェニレンエーテル末端のアルコキシ基が置換したユニット(一般式(1))及びアミノ基が置換したユニット(一般式(2))の割合は、後述する実施例に記載の方法で1H-NMR等によって算出される。
残存窒素量は、加熱加工時の臭気の原因となることから、ポリフェニレンエーテル中に300質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは250質量ppm以下であり、さらに好ましくは200質量ppm以下である。
なお、総揮発分は、具体的には、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
なお、C.I値は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
なお、前記平均粒径は、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒子径の粒度分布の累積曲線から求めた中央累積値(メジアン径)とする。より具体的には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、特に限定されるものではないが、ポリフェニレンエーテルの重合工程において、重合溶剤として、炭素数が1~10個のアルコール溶剤を少なくとも一種類使用し、重合触媒として、第1級アミン及び第2級モノアミンを実質的に含有しないアミン化合物を使用することが好ましい。当該製造方法により、加熱加工時の作業性や物性予測を向上させた低分子量のポリフェニレンエーテルを得ることができる。
ここで、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法では、重合工程において、重合溶剤としてアルコール溶剤を用いることが好ましいところ、当該重合工程においてアルコール溶剤を用いることにより、得られたポリフェニレンエーテル中に溶剤が残留しにくく揮発成分を低減することができる。それゆえに、ポリフェニレンエーテルの加熱加工時の臭気を抑制し、加熱加工時の作業性を向上させることができる。
なお、ポリフェニレンエーテルの重合工程において、重合溶剤として、アルコール溶剤に替えて、例えば、ポリフェニレンエーテルと親和性が比較的高い芳香族炭化水素を用いた場合には、得られたポリフェニレンエーテル中の溶剤を十分に除去することが困難であり、残留揮発成分が高くなることがある。また、比較的高い芳香族炭化水素を用いた場合には、重合生成物が溶液状態で得られるポリフェニレンエーテル中に数量体(オリゴマー)が多く含まれる傾向があり、ポリフェニレンエーテルの加熱加工時に物性が低下する虞がある。
ここで、ポリフェニレンエーテルの良溶剤とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶剤であり、このような溶剤を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼンのようなニトロ化合物等が挙げられる。また、若干の貧溶剤性を持ってはいるものの良溶剤に分類されるものとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等が例示される。
なお、ポリフェニレンエーテルの貧溶剤とは、ポリフェニレンエーテルを全く溶解しないか、わずかに溶解できる溶剤であり、例えば、エーテル類、ケトン類等である。
これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、使用されるフェノール化合物100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
本実施形態において、重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて、触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生成物を除去処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。上記の様に触媒である金属イオンが実質的に失活されている状態であれば、該混合物を加熱するだけで脱色される。また既知の還元剤を必要量添加する方法でも可能である。既知の還元剤としては、ハイドロキノン、亜二チオン酸ナトリウム等が挙げられる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、析出後の前記ポリフェニレンエーテルを、触媒や高沸点溶剤の除去を目的に、重合に用いた主成分の貧溶剤(アルコール溶剤を含む)で洗浄してもよい。
この洗浄工程では、例えば、析出工程において得られたスラリーを固液分離することで、溶剤と湿潤ポリフェニレンエーテルとに分離し、湿潤ポリフェニレンエーテルを貧溶剤で洗浄しながら、固液分離し、その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを乾燥させる。
続いて、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、洗浄後の前記ポリフェニレンエーテルを、乾燥させる。乾燥処理は、湿潤ポリフェニレンエーテルが融着しない程度の高温で行うことが可能である。
まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンとエチルベンゼンにより検量線を作成し、この検量線を利用して、得られたポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定を行った。
標準ポリスチレンとしては、分子量が、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550のものを用いた。
カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用した。溶剤は、クロロホルムを使用し、溶剤の流量は1.0mL/分、カラムの温度は40℃として測定した。測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
(加熱条件)加熱温度:230℃、加熱時間:10分、加熱圧力:10MPa
加熱前後の重量平均分子量(Mw)の差が小さい程、加熱加工による分子量増加が抑制されており、加熱加工時の作業性及び物性予測が向上していることを意味する。
窒素測定装置(三菱アナリテック製TN-110)を用い、実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテル中の残存窒素量を測定した。
なお、測定に使用する試料は、加熱温度:230℃、加熱時間:10分、加熱圧力:10MPaの加熱条件で前処理した実施例および比較例のポリフェニレンエーテル10mgを精秤して用いた。窒素測定装置の加熱温度は、INLET部800℃、CATALYST部900℃とした。
残存窒素量が少ない程、加熱加工時の臭気の原因となる不純物(アミン成分など)の含有量が少なく、ポリフェニレンエーテルが高純度であることを意味する。
(3-1)加熱脱着装置(Gestel社製TDU)及びGC/MS(Agilent社製GC―7890B、JEOL社製JMS-Q1050GC)による揮発成分の同定
ガラスウールを詰めた試料管に実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテルを約10mg入れ、加熱脱着装置にて280℃、10分間加熱し、一般式(1)及び一般式(2)で表される末端構造部分を分解し、発生した揮発分を-100℃でトラップして濃縮した。試料の加熱終了後、冷却トラップ及び濃縮した揮発分を300℃まで急速昇温し、ガス成分として脱着させて、GC/MSにて測定を行った。得られたクロマトグラムを解析し、揮発成分を同定した。
(3-2)1H-NMR(JEOL製500MHz)による末端構造解析
実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、1H-NMR測定を行った。(3-1)に記載の加熱脱着GC/MSで同定された揮発成分が結合した一般式(1)及び一般式(2)で表される末端基構造を、得られたNMRスペクトル中のピークに帰属させ、末端基構造を同定した。ポリフェニレンエーテルのフェニレンエーテル単位構造100ユニットあたりの一般式(1)及び一般式(2)で表される末端基の数を、ポリフェニレンエーテル主鎖芳香環3,5位に起因するピーク(6.2~6.7ppm)、一般式(1)で表されるポリフェニレンエーテル末端の酸素原子が置換したメチレン基に起因するピーク(R4,R5のピーク)、一般式(2)で表されるポリフェニレンエーテル末端の窒素原子が置換したメチレン基に起因するピーク(R4,R5のピーク)、それぞれの面積比から算出した。
なお、実施例及び比較例のように、一般式(1)及び一般式(2)で表される末端構造が2,6-ジメチルフェノール由来となっている場合、一般式(1)のR6および一般式(2)のR7、R8によって、一般式(1)で表されるポリフェニレンエーテル末端の酸素原子が置換したメチレン基に起因するピーク(R4,R5のピーク)、一般式(2)で表されるポリフェニレンエーテル末端の窒素原子が置換したメチレン基に起因するピーク(R4,R5のピーク)は次のようになる。
R6=メチル基 : R4、R5のピーク=4.55ppm
R6=エチル基 : R4、R5のピーク=4.80ppm
R7、R8=n-ブチル基 : R4、R5のピーク=3.62ppm
R7、R8=n-オクチル基 : R4、R5のピーク=3.62ppm
ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC(PerkinElmer製―Pyrisl)を用いて測定した。窒素雰囲気中、毎分40℃の昇温速度で室温から280℃まで加熱後、50℃まで毎分40℃で降温し、その後、毎分40℃の昇温速度でガラス転移温度を測定した。
加熱した後のポリフェニレンエーテルについても、上記と同様にしてガラス転移温度を求め、加熱前後のガラス転移温度の差を求めた。
170℃、0.1mmHgの条件で2時間減圧乾燥させたポリフェニレンエーテルの重量を、当該乾燥前のポリフェニレンエーテルの重量から減算することで、総揮発分を定量した。定量した総揮発分の重量から、下記式により、総揮発分(質量%)を求めた。
総揮発分(質量%)=
(総揮発分の重量/乾燥前のポリフェニレンエーテルの重量)×100
総揮発分の含有量が少ない程、加熱加工時の臭気の原因となる不純物(溶剤、アミンなど)の含有量が少なく、ポリフェニレンエーテルが高純度であることを意味する。
ポリフェニレンエーテル0.5gの10mLクロロホルム溶液を作製し、紫外可視吸光光度計(日立製作所:U-3210型)を用いて、その溶液の480nmでの吸光度(セル長1cmの吸光度測定用セルを使用)を測定し、その測光値を濃度(0.05g/mL)で割ってカラーインデックスと定義した。カラーインデックス値が小さい程、ポリフェニレンエーテルの色調に優れることを意味している。
ポリフェニレンエーテルを5.0mg秤量した。そして、この秤量したポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させた。調整した溶液2.0mLに対して、2質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液を150μL添加した後、UV分光光度計(日立製作所:U-3210型)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した(セル長1cmの吸光度測定用セルを使用)。そして、その測定結果に基づき、吸光度から得られる擬似分子量を、下記式により求めた。また、上記(1)に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めた数平均分子量を用いて、ポリフェニレンエーテル1分子当たりの末端水酸基数を算出した。
吸光度から得られる擬似分子量(g/mol)=[((ε×5)/(25×Abs)]
ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。
ポリフェニレンエーテル1分子当たりの末端水酸基数(個/分子)=
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めた数平均分子量)/(吸光度から得られる擬似分子量)
レーザー回析散乱法の粒度分布計である、島津製作所製レーザー回析散乱式粒度分布測定装置を使用して、湿式法(メタノール溶媒)で、得られたポリフェニレンエーテル粉体の体積平均粒子径を測定した。体積平均粒子径の粒径分布の累積曲線から、中央累積値にあたる粒子の径(メジアン径)を平均粒径(μm)とした。
なお、比較例4~6のポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル重合溶液からのトルエン溶剤の留去をエバポレーターを用いて行っていることから塊として得られ、上記の平均粒径の測定方法では測定できなかった為、測定しなかった。
実施例1から7及び比較例1から7で得られたポリフェニレンエーテルを用いて、メチルエチルケトンに対する溶解性を評価した。試験方法は、次の様に実施した。まず、100gのメチルエチルケトンを丸底フラスコに入れ、20℃でマグネチックスターラーを用いて緩く攪拌を行った。ここへ、各例のポリフェニレンエーテルを20g一気に添加した。混合物は初め濁るがやがて清澄になる。一気に添加してから、清澄になるまで要する時間(溶解時間)を測定した。また、溶解時のフラスコ内部の様子を観測した。
実施例1から7及び比較例1から3、7の溶解時間は、共に約1分であり、フラスコ内壁への付着は観測されなかった。比較例4から6の溶解時間は20分であり、フラスコ内壁にポリフェニレンエーテルの顆粒状の固まりが出来て付着し、それがなかなか溶けなかった。
フラスコ内壁への付着が観測されず、また、溶解時間が短い程、溶解性に優れることを意味する。
実施例1から7及び比較例1から7で得られたポリフェニレンエーテルについて、パラフィン系オイル(ダイアナプロセスオイルPW380、出光興産株式会社製)に対する分散安定性を評価した。試験方法は次の様に実施した。まず、10gのパラフィン系オイルを50mLの蓋付きサンプル管に入れ、ここに各例のポリフェニレンエーテルを3g添加した。ポリフェニレンエーテルがパラフィン系オイル全体に分散するようによく振り混ぜ、均一に分散させた。その後、一日放置し、ポリフェニレンエーテルのパラフィン系オイル中での分散状態を観察した。
結果は下記基準により評価した。
○:パラフィン系オイル全体へ分散した状態を維持しており、高粘度液体中での分散安定性に優れことを意味する。
×:パラフィン系オイル全体へ分散した状態を維持しておらず、高粘度液体中での分散安定性が不十分であることを意味する。
実施例1から7及び比較例1から7で得られたポリフェニレンエーテルについて、縦10cm、横20cmの金型を用い、圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所)により下記条件にて加熱プレス処理を実施し、作業時の臭気を官能評価した。溶剤やアミン等の臭気を感じないことは、加熱加工時の作業性の向上を意味する。
(加熱条件)加熱温度:230℃、加熱時間:10分、加熱圧力:10MPa
結果は下記基準により評価した。
○:溶剤やアミン等の臭気を感じない。
×:溶剤やアミン等の臭気を感じる。
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、0.2512gの塩化第二銅2水和物、1.1062gの35%塩酸、9.5937gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、71.0gのn-ブタノール及び638.0gのメタノール、180.0gの2,6-ジメチルフェノール(表中「2,6-キシレノール」と記す)を入れた。使用した溶剤の組成重量比はn-ブタノール:メタノール=10:90であった。次いで激しく攪拌しながら反応器へ180mL/分の速度で酸素をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は45℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。重合液は次第にスラリーの様態を呈した。
酸素を導入し始めてから120分後、酸素含有ガスの通気をやめ、この重合混合物に1.30gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を溶かした50%水溶液を添加し、次いで1.62gのハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで、45℃で1時間反応させた。反応終了後、濾過して、メタノール洗浄液(b)と、洗浄されるポリフェニレンエーテル(a)との質量比(b/a)が4となる量の洗浄液(b)で3回洗浄し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで120℃で1時間、真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用した溶剤を213.0gのn-ブタノール及び496.0gのメタノールとし、使用した溶剤の組成重量比をn-ブタノール:メタノール=30:70とした以外は、実施例1の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用した溶剤を352.0gのn-ブタノール及び352.0gのメタノールとし、使用した溶剤の組成重量比をn-ブタノール:メタノール=50:50とした以外は、実施例1の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したフェノール性化合物を151.7gの2,6-ジメチルフェノール、28.25gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(表中「ビスフェノール」と記す)とした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したフェノール性化合物を122.8gの2,6-ジメチルフェノール、57.17gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したアミンを1.5gのジブチルアミン(表中で「DBA」と記す)、9.59gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンとした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したアミンを0.2gのジブチルアミン、9.59gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンとした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したアミンを5.71gのジブチルアミン、9.59gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンとした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したアミンを5.71gのジブチルアミン、9.59gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンとした以外は、実施例3の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
使用したアミンを4.68gのジブチルアミン、7.85gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンとした以外は、実施例5の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた45リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した2.51gの酸化第一銅及び18.96gの47%臭化水素の混合物と、29.39gのジ-n-ブチルアミン、6.05gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、84.0gのジメチル-n-ブチルアミン、及び12909gのトルエン、1950gの2,6-ジメチルフェノールを入れた。次いで激しく攪拌しながら反応器へ20.5NL/分(2,6-ジメチルフェノール1.0kgに対して10.5NL)の速度で空気をスパージャーより導入を始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから65分後、空気の通気をやめ、この重合溶液に31.8gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を1500gの水溶液として添加し、70℃に温めた。70℃にて2時間保温し触媒抽出と副生したジフェノキノン除去処理を行った後、混合液をシャープレス社製遠心分離機に移し、ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水性相とに分離した。得られたポリフェニレンエーテル溶液をジャケット付き濃縮槽に移し、ポリフェニレンエーテル溶液中の固形分が55質量%になるまでトルエンを留去させて濃縮した。次いで、230℃に設定したオイルバスとロータリーエバポレーターを用いて更にトルエンを留去し、固形分を乾固させてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
なお、トルエンを加熱除去する工程で、ポリフェニレンエーテル末端に結合したアミンが脱離していることを1H-NMRにより確認した。
触媒を2.51gの酸化第一銅、18.96gの47%臭化水素の混合物と、35.5gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、84.0gのジメチル-n-ブチルアミンとした以外は、比較例4の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
なお、トルエンを加熱除去する工程で、ポリフェニレンエーテル末端に結合したアミンが脱離していることを1H-NMRにより確認した。
使用したフェノール性化合物を1,326gの2,6-ジメチルフェノール、624gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとした以外は、比較例4の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
なお、トルエンを加熱除去する工程で、ポリフェニレンエーテル末端に結合したアミンが脱離していることを1H-NMRにより確認した。
酸素を導入し始めてから止めるまでの時間を600分とした以外は、実施例2の方法と同様にしてポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
Claims (8)
- 重量平均分子量(Mw)が2500~6000であり、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0~2.0であり、
下記一般式(1)及び一般式(2)で表される末端基の合計数が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニット100個あたり0.8個以下である、ポリフェニレンエーテルであって、
前記ポリフェニレンエーテルについて、下記の加熱条件:
(加熱条件)加熱温度:230℃、加熱時間:10分、加熱圧力:10MPa
での加熱の前後で測定した重量平均分子量の差は1000以下であるポリフェニレンエーテルを製造する、ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
前記ポリフェニレンエーテルの重合工程において、
重合溶剤として、炭素数が1~10個のアルコール溶剤を少なくとも一種類使用し、且つ、前記ポリフェニレンエーテルの良溶剤が、前記重合溶剤100質量%中において5質量%以下であり、
重合触媒として、第1級アミン及び第2級モノアミンを実質的に含有しないアミン化合物を使用する、ことを特徴とする、ポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、前記一般式(1)及び前記一般式(2)で表される末端基の合計数が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニット100個あたり0.01個以上である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、分子量が13000以上の高分子量成分の含有量が8.0質量%以下であり、分子量が500未満の低分子量成分の含有量が3.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、前記一般式(2)で表される末端基を実質的に有さない、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、残存窒素量が300質量ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、カラーインデックス(C.I)値が1.0以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 前記ポリフェニレンエーテルは、総揮発分が0.5質量%未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
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