JP7021023B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]
ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[2]
前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上90質量%未満である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[3]
前記残溶液と前記混合相とを混合する際の質量比率(混合相/残溶液)が、20~100である、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[4]
前記混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)が0.5~2.0である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[5]
製造された前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の重量平均分子量が500~4000である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、
ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする。
当該製造方法によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の分離溶媒中に溶解する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂をポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)として効率的に回収することで、経済的に優れる低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法とすることができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体である。
[上記式(1)において、R1、R4は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、及び炭化水素オキシ基からなる群より選ばれるいずれかを表し、R2、R3は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、及びフェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。]
また、上記R1、R4における炭化水素オキシ基における炭化水素としては、例えば、炭素数1~6の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。
また、上記R2、R3におけるハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、フッ素等が挙げられる。
還元粘度の制御方法について言えば、触媒量と空気通気量の増加と反応時間を長くすることにより、還元粘度が高くなる傾向にあり、逆に、触媒量と空気通気量を下げて反応時間を短くすることにより還元粘度が低くなる傾向にある。
一方、重量平均分子量の下限として好ましくは500以上、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1000以上である。重量平均分子量を800以上にすることで、低分子量ポリフェニレンエーテルの生産性が向上する傾向にあり、電気特性を向上させることに寄与し得る。
なお、重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテル樹脂溶液は、分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂がポリフェニレンエーテルの良溶媒に溶解した溶液であれば特に限定されないが、例えばポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の反応溶液を用いることができる。反応溶液の製造方法としては、特に限定されず、一般的に用いられる公知の方法を用いることができ、例えば、フェノール性化合物、溶媒、触媒、必要に応じてその他の材料を含む重合溶液を調製して反応器中に収容し、反応器中で重合溶液に酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を酸化重合する方法等が挙げられる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法における重合工程で用いられるフェノール性化合物は、下記式(2)で表される化合物である。
[上記式(2)において、R5、R7は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、及び炭化水素オキシ基からなる群より選ばれるいずれかを表し、R6、R8は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、及びフェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。]
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法で用いられる溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができ、低分子量のフェノール性化合物を溶解し、触媒の一部又は全部を溶解する良溶媒を用いることができる。良溶媒としては、芳香族溶媒が好ましい。
水と相溶する性質を持つ貧溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール等の炭素数1~10のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数1~10のケトンが挙げられる。また、貧溶媒としては、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル;ジメチルホルムアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等も挙げられる。
これらの溶媒は、1種以上、必要であればさらに2種以上を混合して使用することができる。
触媒は、フェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを含む重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を効率的に酸化重合し、ポリフェニレンエーテルを製造するために有効な酸化触媒である。
[上記式(3)において、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素ではなく、R5は、炭素数2~5の、直鎖状若しくはメチル分岐を持つアルキレン基である。]
ジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、通常使用される銅原子のモル量に対して0.5倍モル量以上とすることができ、上限は特に限定されない。
これらの3級モノアミンは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
3級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、フェノール性化合物100モルに対して0.1~15モルであることが好ましい。
2級モノアミン化合物の使用量は特に限定されないが、一般的にフェノール性化合物100モルに対し0.05~15モルの範囲である。
本実施形態の低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合溶液が含みうるその他の材料としては、以下に限定されないが、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩化合物、ポリエチレングリコール基含有アルキルアミン、及びポリエチレングリコール基含有アルキルアンモニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記その他の材料の含有量としては、重合反応の効率の向上を図る観点から、重合反応溶液100質量%に対して0.1質量%を超えない範囲で含有されることが好ましい。
[上記式(5)において、R5は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R6は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、R7は、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表す。]
[上記式(6)において、R8、R9は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R10は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、R11は、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、Xは、対となる陰イオンである。]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、混合溶液生成工程を有しており、当該混合溶液生成工程は、上記ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して混合溶液を得る工程である。
ここで、ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別するにあたっては、トルエン等のポリフェニレンエーテル樹脂を溶解する良溶媒を含むポリフェニレンエーテル樹脂溶液に、メタノール等のポリフェニレンエーテル樹脂を溶解しない貧溶媒を添加させることにより、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)が析出したスラリー液を得て、濾別を行うことができる。
なお、良溶媒及び貧溶媒としては、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法で用いられる溶媒として前述したものが挙げられる。
この工程で使用される良溶媒と貧溶媒との質量比率(貧溶媒/良溶媒)は、0.3~2.0としてよく、0.5~2.0であることが好ましい。
また、濾別して得られる混合溶液には、上記ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からのポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の濾別を複数回行った場合には、初回の溶液だけでなく複数回の濾別により得られる溶液の全てを混合させることもできる。
なお、混合溶液は、主に、良溶媒及び貧溶媒を含有しており、混合溶液中に、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含有している。
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、分離工程を有しており、当該分離工程は、混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相(以下、単に「混合相」とも称す)とに液液分離する工程である。
ここで、混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)は、溶媒回収の観点から、ポリフェニレンエーテルの良溶媒とポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水との混合液中において、0.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは1.0~2.0であり、さらに好ましくは1.5~2.0である。
なお、後述の析出工程における混合相においても、混合相中の水の質量比率が、上記混合溶液に添加する水と混合溶液との質量比率と同様の範囲であることが好ましい。
また、良溶媒相は、主に良溶媒を含有しており、主に良溶媒相中に本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)が含有されている。
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、残溶液生成工程を有しており、残溶液生成工程は、液液分離を行った後、当該良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程である。
良溶媒相の濃縮(残溶液の生成)は、特に限定されないが、得られた良溶媒相を、例えば、蒸留、ペーバーパレーション法(膜分離)または超高回転の遠心分離することにより、良溶媒相から良溶媒を少なくとも一部除去することで行うことができる。良溶媒相を濃縮して残溶液とすることにより、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)析出工程において、効率的にポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させやすくすることができる。
また、必要に応じて混合相も、同様な方法で混合相から貧溶媒を回収することができる。なお、低コスト化の観点から蒸留により濃縮することが好ましい。
前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上であると、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程において、析出槽内でポリフェニレンエーテル樹脂の分散性を適度に低くし、微粉化を防止でき好ましい。残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が90質量%未満であると、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程において、析出槽内でのポリフェニレンエーテル樹脂の分散性が向上し、分散不良によりポリフェニレンエーテルが壁面、撹拌軸、バッフル等に付着し、スケールとなることを防止できる。さらに、液粘性が適度に低くなりポンプ等の周辺機器の設備費が多大になることを防止することができ好ましい。また、前記残溶液中のポリフェニレンエーテルの濃度を上記範囲とすることにより、析出させて得られるポリフェニレンエーテル樹脂(b)の分子量を適度の範囲とすることができる。
なお、良溶媒相から回収した良溶媒には少量の貧溶媒の含有は許容され、例えば回収した良溶媒をそのままポリフェニレンエーテルの重合溶液の溶媒として用いることもできる。
なお、残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程を有しており、当該析出工程は、残溶液と混合相とを混合して、低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を析出させる工程である。
前記残溶液を、前記混合相と混合することにより、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化し、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含むスラリー液を得ることができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の固形化には、多量の混合相が必要となるところ、混合相を用いて残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化させるので、低コスト化することができる。
前記残溶液と前記混合相とを混合する際においては、前記残溶液と前記混合相との質量比率(混合相/残溶液)が、20~100であることが好ましく、より好ましくは30~80であり、さらに好ましくは50~80である。前記残溶液と前記混合相の質量比率が、混合相/残溶液で20以上であることにより、安定的にポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化することができ、前記残溶液と前記混合相の質量比率が、混合相/残溶液で100以下であることにより、後述の固液分離工程での設備費が多大になることを防止することができる。
なお、良溶媒及び貧溶媒としては、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法で用いられる溶媒として前述したものが挙げられる。
析出工程において用いられる析出槽としては、析出槽内部に傾斜パドル翼、スクリュー翼、及びリボン翼から選ばれる少なくとも一段の撹拌翼を備えたものが好ましい。また、混合性を高める観点から、少なくとも一枚のバッフルを備え、撹拌翼は下方吐出であることが好ましい。
残溶液の温度の60℃以上であると、析出槽内での残溶液の分散性が向上し、分散不良の残溶液が壁面、撹拌軸、バッフル等に付着し、スケールとなることを防止できる。また、残溶液の粘性が適度に低くなりポンプ等の周辺機器の設備費が多大になることを防止することができ好ましい。残溶液の温度が100℃以下であると、析出槽内で残溶液の分散性を適度に低くし、微粉化を防止できるため好ましい。
本実施形態の製造方法では、析出したポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含むスラリー液(懸濁液)を、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子と濾液とに分離する固液分離工程を有することができる。
固液分離工程では、析出工程において得られたスラリー液を固液分離して、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を得てよく、このとき、スラリー液に貧溶媒又は、上記混合相を追加して、スラリー液を適宜希釈してもよい。また、析出工程において得られたスラリー液を固液分離して得られた湿潤状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を貧溶媒又は、上記混合相で1回又は複数回洗浄して、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を得てもよい。
前述のスラリー液の希釈や前述の湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の洗浄に用いることができるポリフェニレンエーテルの貧溶媒としては、析出工程において用いることができるものが挙げられる。
乾燥処理の温度が60℃未満であると、得られたポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)中の芳香族炭化水素の含有量を1.5質量%未満とすることができないおそれがある。
ポリフェニレンエーテル樹脂の0.5g/dLのクロロホルム溶液を調製し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンにより検量線を作成し、この検量線を利用して測定を行った。
標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550にエチルベンゼンを加えたものを用いた。カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用し、溶媒は、クロロホルムを使用し、溶媒の流量は1.0mL/min、カラムの温度は40℃として測定した。
測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
120℃、0.1mmHgの条件下で3時間減圧乾燥させた残溶液の重量を、当該乾燥前の残溶液の重量から減算することで、ポリフェニレンエーテル濃度を求めた。
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.01gの酸化第二銅、0.605gの47質量%臭化水素水溶液、0.242gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、1.172gのジ-n-ブチルアミン、3.567gのブチルジメチルアミン、456.3gのトルエン、18gの2,6-ジメチルフェノール、及び41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。
次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入を始め重合を開始したと同時にトルエン60g及び2,6-ジメチルフェノール60gからなる混合液を30分かけて滴下した。乾燥空気を150分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合終結時の内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の11.0質量%水溶液を60g添加した。次いで、70℃で120分間、重合混合物を撹拌した後、10分間静置分離し、水層側の水溶液を排出した。次に、純水(1回目)を60g重合反応液(油層側)に添加し、20分間攪拌した後、10分間静置分離し、水層側を排出した。ついで、純水(2回目)を60g重合反応液(油層側)に添加し、20分間攪拌した後、10分間静置分離し、水層側を排出した。
重合反応液(油層側)を室温に戻し、メタノールを500g加えてポリフェニレンエーテル樹脂が析出したスラリー液を得た。その後、前記スラリー液を、ガラスフィルターにより濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得、また、再度、その湿潤ポリフェニレンエーテルにメタノールを250g加えて濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た(2度の濾過により得られた濾別溶媒を混合溶液とした)。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、150℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の一部を用いて、上記「(1)~(2)」の方法に従って測定した。
還元粘度は、0.531dL/gであった。
乾燥空気を120分間通気して重合混合物を得たこと以外は、製造例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の一部を用いて、上記「(1)~(2)」の方法に従って測定した。
還元粘度は、0.433dL/gであった。
分離槽底部に撹拌タービン翼及びバッフルを備え、分離槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1リットルのジャケット付き抽出槽に、0.1L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、製造例1にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300g、水600gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて80分間加熱処理し、濃縮を行った。その後、前記500mLなす型フラスコより濃縮された残溶液の一部を用いて上記「(3)」の方法の濃度測定に使用し、前記混合相を150g加えてポリフェニレンエーテル樹脂が析出したスラリー液を得た。
そして、前記スラリー液をガラスフィルターにより濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、120℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の一部を用いて、上記「(2)」の方法に従って重量平均分子量を測定した。
実施例1の詳細及び結果を表1に示す。
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて100分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例2の詳細及び結果を表1に示す。
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例3の詳細及び結果を表1に示す。
製造例1にてガラスフィルターで濾過した濾別溶媒300g、水450gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例4の詳細及び結果を表1に示す。
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて150分間加熱処理したこと以外は、実施例4と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例5の詳細及び結果を表1に示す。
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて60分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例6の詳細及び結果を表1に示す。
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて加熱処理しなかったこと以外は、実施例1と同様に作業を行ったが、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)が析出しなくスラリー液を得ることが出来なかった。
比較例1の詳細及び結果を表1に示す。
製造例1にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300g、水200gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例7の詳細及び結果を表1に示す。
製造例2にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300gを用いたこと以外は、実施例4と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例8の詳細及び結果を表1に示す。
本発明の低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られる低分子量ポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、自動車用部品、耐熱部品、電子機器用部品、工業用部品、被覆剤、絶縁性被膜等の材料として、産業上の利用可能性を有している。
Claims (5)
- ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。 - 前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上90質量%未満である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
- 前記残溶液と前記混合相とを混合する際の質量比率(混合相/残溶液)が、20~100である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
- 前記混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)が0.5~2.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
- 製造された前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の重量平均分子量が500~4000である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
Priority Applications (1)
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