JP7021023B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法に関する。
近年、通常の高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂よりも、極めて低分子量のポリフェニレンエーテル樹脂が他樹脂の改質や、電子材料用途に対して有効であることが期待されており、性能の良い低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂及び、その効率的な製造方法が望まれている。
フェノール性化合物を酸化重合させてポリフェニレンエーテル樹脂を製造し、ポリフェニレンエーテル樹脂を重合溶液中から分離させる際に、分離溶媒中に1000以下の低分子量体が5~10質量%存在し、ポリフェニレンエーテル樹脂の回収率を低下させるという問題がある。かかる問題を解決するために、例えば、特許文献1に開示の方法では、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造において、分離後の濾液中に溶解している低分子量ポリフェニレンエーテルを回収し、ハロゲン化水素処理した後に再度、酸化重合に用いる方法が開示されている。
また、フェノール性化合物を酸化重合させて低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を製造した重合溶液より効率的に回収するために、例えば、特許文献2に開示の方法では、重合溶液とポリフェニレンエーテルの貧溶媒とを混合してポリフェニレンエーテル樹脂を析出する方法において、槽内温度を-80~20℃に制御している。
特開昭62-172021号公報 特開2003-313290号公報
しかしながら、特許文献2に記載の技術に基づき製造する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂は、槽内温度を極端に低く制御する必要があるため、析出槽の温度管理に必要な設備が過大化する傾向があった。このように、低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を重合溶液より、安定的に析出し、かつ設備の過大化という問題を回避でき、経済性に優れる低分子量ポリフェニレンエーテルを製造する方法は、知られていないのが現状である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の回収率を向上しつつ、経済的に優れる低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の分離溶媒中に溶解する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を効率的に回収することで、経済的に優れる低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法とすることができるとの着想に思い至り、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[2]
前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上90質量%未満である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[3]
前記残溶液と前記混合相とを混合する際の質量比率(混合相/残溶液)が、20~100である、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[4]
前記混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)が0.5~2.0である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[5]
製造された前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の重量平均分子量が500~4000である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
本発明によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の分離溶媒中に溶解する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を効率的に回収することで、経済的に優れる低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを実現できる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、
ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする。
当該製造方法によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の分離溶媒中に溶解する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂をポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)として効率的に回収することで、経済的に優れる低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法とすることができる。
まず、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂を説明する。
<ポリフェニレンエーテル樹脂>
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体である。
Figure 0007021023000001
・・・(1)
[上記式(1)において、R1、R4は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、及び炭化水素オキシ基からなる群より選ばれるいずれかを表し、R2、R3は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、及びフェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。]
上記R1、R2、R3、R4における低級アルキル基、R1、R4におけるアミノアルキル基におけるアルキル基、R2、R3におけるヒドロキシアルキル基、R2、R3におけるハロゲン化アルキル基の炭素数としては、例えば、1~6等が挙げられる。
また、上記R1、R4における炭化水素オキシ基における炭化水素としては、例えば、炭素数1~6の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。
また、上記R2、R3におけるハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、フッ素等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、特に限定されないが、具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルが、原料が安価であり、入手が容易であるという観点から、好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂の共重合体は、少なくともフェニレンエーテル単位を、単量体単位として含む共重合体である。ポリフェニレンエーテル樹脂の共重合体としては、特に限定されないが、具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体等が挙げられる。この中でも、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が、原料が安価であり、入手が容易であるという観点から、好ましい。
後述の混合溶液生成工程において濾別されるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の還元粘度(ηsp/c)としては、0.3~1.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.3~0.8dL/g、更に好ましくは0.3~0.6dL/gである。上記還元粘度が0.3dL/g以上であることにより、ポリフェニレンエーテル樹脂本来の機械強度が得られる傾向にある。また、上記還元粘度が1.0dL/g以下であることにより、フェニレンエーテル重合時の過度の分子量上昇を抑制する効果が得られる傾向にあり、重合槽の周辺機器の能力を適切に制御でき、得られたポリフェニレンエーテル樹脂の後処理が容易であり、加工性も良好となる傾向にある。
後述の析出工程において得られるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の還元粘度(ηsp/c)としては、0.04~0.20dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.18dL/g、更に好ましくは0.06~0.16dL/gである。上記還元粘度が0.04dL/gであることにより、好ましくない酸化体を殆ど含まない傾向にある。また、上記還元粘度が0.20dL/g以下であることにより、流動性に優れ、電子基盤材料や封止剤等に好適に使用できる。
なお、還元粘度は、0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて30℃の温度条件で測定した値とする。具体的には、還元粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
還元粘度の制御方法について言えば、触媒量と空気通気量の増加と反応時間を長くすることにより、還元粘度が高くなる傾向にあり、逆に、触媒量と空気通気量を下げて反応時間を短くすることにより還元粘度が低くなる傾向にある。
上記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の分子量としては、重量平均分子量4000以下であることが好ましく、より好ましくは3700以下、更に好ましくは3400以下である。重量平均分子量4000以下にすることで、低分子量ポリフェニレンエーテルの溶融温度を低下させ、取り扱いが向上する傾向にある。
一方、重量平均分子量の下限として好ましくは500以上、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1000以上である。重量平均分子量を800以上にすることで、低分子量ポリフェニレンエーテルの生産性が向上する傾向にあり、電気特性を向上させることに寄与し得る。
なお、重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、例えば、後述する残溶液中に溶解しているポリフェニレンエーテルの濃度・混合溶液に添加する水の重量比率・溶媒組成等を制御することにより、重量平均分子量を上述の分子量に制御することができる。
<ポリフェニレンエーテル樹脂溶液及びその調製>
本実施形態におけるポリフェニレンエーテル樹脂溶液は、分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂がポリフェニレンエーテルの良溶媒に溶解した溶液であれば特に限定されないが、例えばポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の反応溶液を用いることができる。反応溶液の製造方法としては、特に限定されず、一般的に用いられる公知の方法を用いることができ、例えば、フェノール性化合物、溶媒、触媒、必要に応じてその他の材料を含む重合溶液を調製して反応器中に収容し、反応器中で重合溶液に酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を酸化重合する方法等が挙げられる。
<<フェノール性化合物>>
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法における重合工程で用いられるフェノール性化合物は、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 0007021023000002
・・・(2)
[上記式(2)において、R5、R7は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、及び炭化水素オキシ基からなる群より選ばれるいずれかを表し、R6、R8は、それぞれ独立して、水素原子、第一級又は第二級の低級アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、及びフェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。]
フェノール性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-イソプロピルフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ビス-(4-フルオロフェニル)フェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、重合溶液として使用することができる芳香族溶媒が少量のフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,4-ジメチルフェノール、2-エチルフェノール等を不純物として含んでいても、フェノール性化合物の一部として重合反応により消費されてポリフェニレンエーテル内に組み込まれるので、実質上差し支えない。
これらの中でも、フェノール性化合物としては、2,6-ジメチルフェノール、又は2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの混合物であることが好ましく、2,6-ジメチルフェノールがより好ましい。
<<溶媒>>
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法で用いられる溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができ、低分子量のフェノール性化合物を溶解し、触媒の一部又は全部を溶解する良溶媒を用いることができる。良溶媒としては、芳香族溶媒が好ましい。
このような芳香族溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;ニトロベンゼン等のニトロ化合物等が挙げられる。この中でも、芳香族溶媒は、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、トルエンがより好ましい。
必要に応じて、良溶媒には、水と相溶する性質を持つ貧溶媒を混在させることができる。
水と相溶する性質を持つ貧溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール等の炭素数1~10のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数1~10のケトンが挙げられる。また、貧溶媒としては、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル;ジメチルホルムアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等も挙げられる。
これらの溶媒は、1種以上、必要であればさらに2種以上を混合して使用することができる。
本実施形態で用いる良溶媒としては、実質的に水と相溶しないものを好ましく用いることができる。実質的に水と相溶しないものとしては、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
また、本実施形態における重合の形態は、フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と後述の貧溶媒との比率の選択によって変化する。具体的には、良溶媒の比率を大きくすることで溶液重合法になり、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに、重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法になる。本実施形態における重合の形態は、特に限定されず、必要に応じて芳香族溶媒に添加する貧溶媒の量を調整して、所望とする重合形態を適宜選択することができる。
<<触媒>>
触媒は、フェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを含む重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を効率的に酸化重合し、ポリフェニレンエーテルを製造するために有効な酸化触媒である。
かかる触媒としては、特に限定されないが、具体的には、銅化合物と、臭素化合物と、ジアミン化合物、3級モノアミン化合物、及び2級モノアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことものが好ましく、銅化合物と、臭素化合物と、ジアミン化合物、3級モノアミン化合物、及び2級モノアミン化合物とを必須成分として含有するものがより好ましい。
触媒の成分として用いる銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、第一銅化合物、第二銅化合物、又はそれらの混合物を使用することができる。第一銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、酸化第一銅、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等が挙げられる。また、第二銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等が挙げられる。これらの中で好ましい化合物は、第一銅、第二銅化合物については、酸化第一銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。また、これらの銅塩は、酸化銅、炭酸銅炭酸塩、及び水酸化銅等と、これらに対応するハロゲン又は酸とから、使用時に合成してもよい。例えば、酸化第一銅と臭化水素(の溶液)とを混合することにより、臭化第一銅が得られる。銅化合物として好ましいものは第一銅化合物である。これらの銅化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の成分として用いる臭素化合物としては、特に限定されないが、具体的には、臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。また、これらの臭素化合物は、水溶液や適当な溶媒を用いた溶液にした状態で使用してもよい。これらの臭素化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した銅化合物と臭素化合物との好ましい組み合わせは、酸化第一銅と臭化水素との水溶液である。これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、銅原子のモル量に対して臭素原子のモル量で2~10倍モル量が好ましい。また、フェノール性化合物100モルに対する銅原子の割合が0.02~0.6モルであることが好ましい。
触媒の成分として用いるジアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、下記式(3)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
Figure 0007021023000003
・・・(3)
[上記式(3)において、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素ではなく、R5は、炭素数2~5の、直鎖状若しくはメチル分岐を持つアルキレン基である。]
式(3)で表されるジアミン化合物の中でも、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミンが好ましい。
これらのジアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、通常使用される銅原子のモル量に対して0.5倍モル量以上とすることができ、上限は特に限定されない。
触媒の成分として用いる3級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、脂環式3級アミンを含む脂肪族3級アミン等が挙げられる。3級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、N-ブチル-ジメチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
これらの3級モノアミンは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
3級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、フェノール性化合物100モルに対して0.1~15モルであることが好ましい。
触媒の成分として用いる2級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-i-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジベンジルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N(置換又は非置換フェニル)アルカノールアミン、N-炭化水素置換アニリン等が挙げられる。
前記N(置換又は非置換フェニル)アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、具体的には、N-フェニルメタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルプロパノールアミン、N-(m-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(2’,6’-ジメチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-クロロフェニル)エタノールアミン等が挙げられる。
前記N-炭化水素置換アニリンとしては、特に限定されないが、具体的には、N-エチルアニリン、N-ブチルアニリン、N-メチル-2-メチルアニリン、N-メチル-2,6-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
これらの2級モノアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
2級モノアミン化合物の使用量は特に限定されないが、一般的にフェノール性化合物100モルに対し0.05~15モルの範囲である。
<<その他の材料>>
本実施形態の低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合溶液が含みうるその他の材料としては、以下に限定されないが、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩化合物、ポリエチレングリコール基含有アルキルアミン、及びポリエチレングリコール基含有アルキルアンモニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記その他の材料の含有量としては、重合反応の効率の向上を図る観点から、重合反応溶液100質量%に対して0.1質量%を超えない範囲で含有されることが好ましい。
その他の材料の具体例としては、下記式(4)、(5)、又は(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007021023000004
・・・(4)
[上記式(4)において、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、Xは、対となる陰イオンである。]
Figure 0007021023000005
・・・(5)
[上記式(5)において、R5は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R6は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、R7は、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表す。]
Figure 0007021023000006
・・・(6)
[上記式(6)において、R8、R9は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R10は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、R11は、-(CH2CH2O)n-H[nは1~40の整数]で表される基を表し、Xは、対となる陰イオンである。]
上記式(4)及び(6)において、Xは、好ましくは、Cl-及びBr-からなる群より選ばれる陰イオンである。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、上記その他の材料としては、より具体的には、Aliquat336(ヘンケル社製)やCapriquat(株式会社同仁化学研究所製)の商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられる。
上記ポリフェニレンエーテル樹脂溶液は、上記ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法による重合反応を経て反応が停止された状態であることが好ましく、重合反応の停止方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適用でき、例えば、塩酸や酢酸等の酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ニトリロトリ酢酸又はその塩等を触媒失活剤として反応液に加えることで、触媒を失活させる方法等が挙げられる。
製造したポリフェニレンエーテル樹脂は、酸化重合停止の後、生成したポリフェニレンエーテル樹脂を分離して、メタノール等のポリフェニレンエーテル樹脂を溶解しない貧溶媒で洗浄し、その後、各種乾燥機を用いて乾燥処理を施すことにより、ポリフェニレンエーテル樹脂を回収することが好ましい。
[[混合溶液生成工程]]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、混合溶液生成工程を有しており、当該混合溶液生成工程は、上記ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して混合溶液を得る工程である。
ここで、ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別するにあたっては、トルエン等のポリフェニレンエーテル樹脂を溶解する良溶媒を含むポリフェニレンエーテル樹脂溶液に、メタノール等のポリフェニレンエーテル樹脂を溶解しない貧溶媒を添加させることにより、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)が析出したスラリー液を得て、濾別を行うことができる。
なお、良溶媒及び貧溶媒としては、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法で用いられる溶媒として前述したものが挙げられる。
この工程で使用される良溶媒と貧溶媒との質量比率(貧溶媒/良溶媒)は、0.3~2.0としてよく、0.5~2.0であることが好ましい。
また、濾別して得られる混合溶液には、上記ポリフェニレンエーテル樹脂溶液からのポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の濾別を複数回行った場合には、初回の溶液だけでなく複数回の濾別により得られる溶液の全てを混合させることもできる。
なお、混合溶液は、主に、良溶媒及び貧溶媒を含有しており、混合溶液中に、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含有している。
[[分離工程]]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、分離工程を有しており、当該分離工程は、混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相(以下、単に「混合相」とも称す)とに液液分離する工程である。
ここで、混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)は、溶媒回収の観点から、ポリフェニレンエーテルの良溶媒とポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水との混合液中において、0.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは1.0~2.0であり、さらに好ましくは1.5~2.0である。
なお、後述の析出工程における混合相においても、混合相中の水の質量比率が、上記混合溶液に添加する水と混合溶液との質量比率と同様の範囲であることが好ましい。
また、良溶媒相は、主に良溶媒を含有しており、主に良溶媒相中に本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られるポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)が含有されている。
上記のようにして分離された、良溶媒相と、貧溶媒及び水の混合相とは、静置するだけでも分離できるが、遠心分離機等を用いて機械的に分離しても構わない。
[[残溶液生成工程]]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、残溶液生成工程を有しており、残溶液生成工程は、液液分離を行った後、当該良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程である。
良溶媒相の濃縮(残溶液の生成)は、特に限定されないが、得られた良溶媒相を、例えば、蒸留、ペーバーパレーション法(膜分離)または超高回転の遠心分離することにより、良溶媒相から良溶媒を少なくとも一部除去することで行うことができる。良溶媒相を濃縮して残溶液とすることにより、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)析出工程において、効率的にポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させやすくすることができる。
また、必要に応じて混合相も、同様な方法で混合相から貧溶媒を回収することができる。なお、低コスト化の観点から蒸留により濃縮することが好ましい。
前記残溶液は、残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上90質量%未満であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上80質量%未満であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%未満である。
前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上であると、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程において、析出槽内でポリフェニレンエーテル樹脂の分散性を適度に低くし、微粉化を防止でき好ましい。残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が90質量%未満であると、後述のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程において、析出槽内でのポリフェニレンエーテル樹脂の分散性が向上し、分散不良によりポリフェニレンエーテルが壁面、撹拌軸、バッフル等に付着し、スケールとなることを防止できる。さらに、液粘性が適度に低くなりポンプ等の周辺機器の設備費が多大になることを防止することができ好ましい。また、前記残溶液中のポリフェニレンエーテルの濃度を上記範囲とすることにより、析出させて得られるポリフェニレンエーテル樹脂(b)の分子量を適度の範囲とすることができる。
なお、良溶媒相から回収した良溶媒には少量の貧溶媒の含有は許容され、例えば回収した良溶媒をそのままポリフェニレンエーテルの重合溶液の溶媒として用いることもできる。
なお、残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
[[析出工程]]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の析出工程を有しており、当該析出工程は、残溶液と混合相とを混合して、低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を析出させる工程である。
前記残溶液を、前記混合相と混合することにより、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化し、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含むスラリー液を得ることができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の固形化には、多量の混合相が必要となるところ、混合相を用いて残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化させるので、低コスト化することができる。
前記残溶液と前記混合相とを混合する際においては、前記残溶液と前記混合相との質量比率(混合相/残溶液)が、20~100であることが好ましく、より好ましくは30~80であり、さらに好ましくは50~80である。前記残溶液と前記混合相の質量比率が、混合相/残溶液で20以上であることにより、安定的にポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を固形化することができ、前記残溶液と前記混合相の質量比率が、混合相/残溶液で100以下であることにより、後述の固液分離工程での設備費が多大になることを防止することができる。
なお、良溶媒及び貧溶媒としては、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法で用いられる溶媒として前述したものが挙げられる。
上記析出工程では撹拌機を有する析出槽を用いてよい。
析出工程において用いられる析出槽としては、析出槽内部に傾斜パドル翼、スクリュー翼、及びリボン翼から選ばれる少なくとも一段の撹拌翼を備えたものが好ましい。また、混合性を高める観点から、少なくとも一枚のバッフルを備え、撹拌翼は下方吐出であることが好ましい。
析出槽に添加する直前のポリフェニレンエーテルの良溶媒相より良溶媒を蒸留回収した残溶液の温度としては、60~100℃であることが好ましい。残溶液の温度は、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、65℃以上であることがより好ましい。
残溶液の温度の60℃以上であると、析出槽内での残溶液の分散性が向上し、分散不良の残溶液が壁面、撹拌軸、バッフル等に付着し、スケールとなることを防止できる。また、残溶液の粘性が適度に低くなりポンプ等の周辺機器の設備費が多大になることを防止することができ好ましい。残溶液の温度が100℃以下であると、析出槽内で残溶液の分散性を適度に低くし、微粉化を防止できるため好ましい。
[[固液分離工程]]
本実施形態の製造方法では、析出したポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を含むスラリー液(懸濁液)を、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子と濾液とに分離する固液分離工程を有することができる。
固液分離工程では、析出工程において得られたスラリー液を固液分離して、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を得てよく、このとき、スラリー液に貧溶媒又は、上記混合相を追加して、スラリー液を適宜希釈してもよい。また、析出工程において得られたスラリー液を固液分離して得られた湿潤状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を貧溶媒又は、上記混合相で1回又は複数回洗浄して、湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の粒子を得てもよい。
前述のスラリー液の希釈や前述の湿潤ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の洗浄に用いることができるポリフェニレンエーテルの貧溶媒としては、析出工程において用いることができるものが挙げられる。
固液分離の際に使用する装置としては、特に限定されるものではないが、遠心分離機(振動型、スクリュー型、デカンタ型、バスケット型等)、真空濾過機(ドラム型フィルター、ベルトフィルター、ロータリーバキュームフィルター、ヤングフィルター、ヌッチェ等)、フィルタープレス、ロールプレス等を用いることが可能である。
固液分離の際の減圧濾過時間としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス製の真空濾過機を用いる場合では、10~30秒であることが好ましく、15~25秒であることがさらに好ましい。
上記乾燥処理の温度としては、例えば、60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上である。また、メルト現象が起こりにくい、という観点から、160℃以下であることが好ましい。なお、上記乾燥処理は、不活性ガスを封入しながら行うことが好ましい。
乾燥処理の温度が60℃未満であると、得られたポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)中の芳香族炭化水素の含有量を1.5質量%未満とすることができないおそれがある。
ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を高効率で得るためには、乾燥温度を高くする方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法、乾燥機中に不活性ガスを循環させる方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を高くし、不活性ガスを循環させる方法が製造効率の観点から好ましい。
上記乾燥処理において、乾燥温度を高くし、不活性ガスを循環させる場合、乾燥機中の酸素濃度を0~5体積%以下とすることにより、粉塵爆発のおそれが低減される。
上記乾燥処理に用いる不活性ガスとしては、特に限定されないが、窒素、ヘリウム、アルゴン等が使用できる。代表的な不活性ガスは、窒素である。
以下、本実施形態について、具体的な実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例に適用した、物性及び特性等の測定方法を下記に示す。
(1)還元粘度
ポリフェニレンエーテル樹脂の0.5g/dLのクロロホルム溶液を調製し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。
(2)重量平均分子量
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンにより検量線を作成し、この検量線を利用して測定を行った。
標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550にエチルベンゼンを加えたものを用いた。カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用し、溶媒は、クロロホルムを使用し、溶媒の流量は1.0mL/min、カラムの温度は40℃として測定した。
測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
(3)残溶液中のポリフェニレンエーテル濃度
120℃、0.1mmHgの条件下で3時間減圧乾燥させた残溶液の重量を、当該乾燥前の残溶液の重量から減算することで、ポリフェニレンエーテル濃度を求めた。
〔製造例1〕
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.01gの酸化第二銅、0.605gの47質量%臭化水素水溶液、0.242gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、1.172gのジ-n-ブチルアミン、3.567gのブチルジメチルアミン、456.3gのトルエン、18gの2,6-ジメチルフェノール、及び41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。
次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入を始め重合を開始したと同時にトルエン60g及び2,6-ジメチルフェノール60gからなる混合液を30分かけて滴下した。乾燥空気を150分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合終結時の内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の11.0質量%水溶液を60g添加した。次いで、70℃で120分間、重合混合物を撹拌した後、10分間静置分離し、水層側の水溶液を排出した。次に、純水(1回目)を60g重合反応液(油層側)に添加し、20分間攪拌した後、10分間静置分離し、水層側を排出した。ついで、純水(2回目)を60g重合反応液(油層側)に添加し、20分間攪拌した後、10分間静置分離し、水層側を排出した。
重合反応液(油層側)を室温に戻し、メタノールを500g加えてポリフェニレンエーテル樹脂が析出したスラリー液を得た。その後、前記スラリー液を、ガラスフィルターにより濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得、また、再度、その湿潤ポリフェニレンエーテルにメタノールを250g加えて濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た(2度の濾過により得られた濾別溶媒を混合溶液とした)。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、150℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の一部を用いて、上記「(1)~(2)」の方法に従って測定した。
還元粘度は、0.531dL/gであった。
〔製造例2〕
乾燥空気を120分間通気して重合混合物を得たこと以外は、製造例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)の一部を用いて、上記「(1)~(2)」の方法に従って測定した。
還元粘度は、0.433dL/gであった。
〔実施例1〕
分離槽底部に撹拌タービン翼及びバッフルを備え、分離槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1リットルのジャケット付き抽出槽に、0.1L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、製造例1にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300g、水600gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて80分間加熱処理し、濃縮を行った。その後、前記500mLなす型フラスコより濃縮された残溶液の一部を用いて上記「(3)」の方法の濃度測定に使用し、前記混合相を150g加えてポリフェニレンエーテル樹脂が析出したスラリー液を得た。
そして、前記スラリー液をガラスフィルターにより濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、120℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
得られた乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の一部を用いて、上記「(2)」の方法に従って重量平均分子量を測定した。
実施例1の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例2〕
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて100分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例2の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例3〕
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例3の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例4〕
製造例1にてガラスフィルターで濾過した濾別溶媒300g、水450gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例4の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例5〕
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて150分間加熱処理したこと以外は、実施例4と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例5の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例6〕
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて60分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例6の詳細及び結果を表1に示す。
〔比較例1〕
500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて加熱処理しなかったこと以外は、実施例1と同様に作業を行ったが、ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)が析出しなくスラリー液を得ることが出来なかった。
比較例1の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例7〕
製造例1にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300g、水200gを入れ、トルエンを含む良溶媒相と、メタノールと水を含む混合相に10分間静置分離し、混合相側を排出した。続けて、500mLなす型フラスコに、良溶媒相を100gサンプリングし、ロータリーエバポレーターにて120分間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例7の詳細及び結果を表1に示す。
〔実施例8〕
製造例2にてガラスフィルターで濾過した混合溶液300gを用いたこと以外は、実施例4と同様にして乾燥状態のポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を得た。
実施例8の詳細及び結果を表1に示す。
Figure 0007021023000007
本発明によれば、高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の分離溶媒中に溶解している低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を効率的に回収し、製造することができる。
本発明の低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法により得られる低分子量ポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、自動車用部品、耐熱部品、電子機器用部品、工業用部品、被覆剤、絶縁性被膜等の材料として、産業上の利用可能性を有している。

Claims (5)

  1. ポリフェニレンエーテルの良溶媒に分子量分布を有するポリフェニレンエーテル樹脂が溶解した溶液に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を添加して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を析出させて、スラリー液を得る工程と、
    前記スラリー液から前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(a)を濾別して、混合溶液を得る工程と、
    前記混合溶液に水を添加して、ポリフェニレンエーテルの良溶媒を含む良溶媒相と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒及び水を含む混合相とに液液分離する工程と、
    前記液液分離を行った後、前記良溶媒相を濃縮して、残溶液を得る工程と、
    前記残溶液と前記混合相とを混合して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)を析出させる工程と、
    を備えることを特徴とする、ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
  2. 前記残溶液中のポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が50質量%以上90質量%未満である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
  3. 前記残溶液と前記混合相とを混合する際の質量比率(混合相/残溶液)が、20~100である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
  4. 前記混合溶液に水を添加する際に、前記水と前記混合溶液との質量比率(水/混合溶液)が0.5~2.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
  5. 製造された前記ポリフェニレンエーテル樹脂の一部(b)の重量平均分子量が500~4000である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
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