JP4176536B2 - 低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低分子量ポリフェニレンエーテルを連続的かつ効率的に製造する方法、およびこの方法で得られる低分子量ポリフェニレンエーテルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテルは加工性・生産性に優れ、溶融射出成形法や溶融押出成形法などの成形方法により所望の形状の製品・部品を効率よく生産できるため、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野、食品・包装分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられている。
ポリフェニレンエーテルを連続的に得る製法に関しては、媒体としてフェノール類は溶解するがポリフェニレンエーテルは溶解しない液体を用い、完全混合型重合槽で均一な溶液状態で重合させ、ついで生成ポリフェニレンエーテルの粒子を析出させる連続重合方法(例えば、特許文献1 参照)などが報告されている。この方法は、樹脂として実用的な分子量のポリフェニレンエーテル(実施例で得られるポリフェニレンエーテルの、25℃・0.5%クロロホルム溶液中で測定した還元粘度は0.44〜0.77)を連続的に得ることができ、工業的な意義は大なるものが認められる。
【0003】
最近、通常の高分子量ポリフェニレンエーテルよりも、きわめて低分子量のポリフェニレンエーテルが他の樹脂の改質や、電子材料用途に対して有効であることが期待されており、性能の良い極低分子量のポリフェニレンエーテル及びその効率的な製造方法が望まれている。一般にポリフェニレンエーテルを製造において低分子量体が生成するような状況の場合には、副生成物の選択率が高くなることや、収率が低下することが知られている。比較的低分子量のポリフェニレンエーテルの製造方法として、2,4,6−トリメチルフェノールを加えることでその添加量に応じ得られるポリフェニレンエーテルの分子量を変化させる製法(例えば、特許文献2 参照)が提案されており、また同明細書中には、溶媒としてポリフェニレンエーテルの良溶媒(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)とポリフェニレンエーテルの貧溶媒(例えばケトン、エーテル、アルコール)の混合溶媒を用い、良溶媒/貧溶媒の比を変えることにより種々の分子量のポリマーが得られる旨の提案がされている。しかしこの方法は不正確で要求する分子量のポリマーを得る方法としては適当なものではないと述べられている。
【0004】
また、同様にポリフェニレンエーテルの良溶媒として芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒として脂肪族炭化水素(例えばn−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン等)の混合溶媒中で実施された方法が開示されている(例えば、特許文献3 参照)。しかしこの方法においては、実施例中でも明白なように還元粘度が0.1dl/g以下となるような領域の極低分子量域に至っては収率が低下するという問題が発生している。また同公報明細書中並びに比較例中には生成水やアミン類が反応系内に均一に存在した状態で反応を進めると、オリゴポリフェニレンエーテルが粒子を不均一状態に生じた場合に反応容器などに付着しやすくなる欠点があると記載されており、満足のいくものではなかった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭49−28919号公報
【特許文献2】
米国特許第3440217号明細書
【特許文献3】
特公昭50−6520号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明における課題は、低分子量ポリフェニレンエーテルを反応器へのスケールの発生や収率の低下を抑制し効率よく安定に製造する連続重合法の提供と、この方法により得られるポリフェニレンエーテルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことにポリフェニレンエーテルの重合率を制御した重合溶液に貧溶媒を後添加し、更に重合率を高める重合方法を採ることで、極低分子量なポリフェニレンエーテルまでも効率よく安定に製造できることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明は、フェノール類を触媒と酸素含有ガスの存在下で重合して得られる、30℃において0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.04〜0.40dl/gである低分子量ポリフェニレンエーテルを製造するにあたり、少なくとも2槽からなる重合槽を用い、第一の重合槽においてフェノール類の重合率を40%以上に高めた後、第二またはそれ以降の重合槽において重合を完結させる方法であって、重合溶媒に占めるポリフェニレンエーテルの良溶媒の含有量が、40重量%以下であり、かつ該フェノール類の重合率を40%以上に高めた後に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を該フェノール類に対し5重量%以上添加することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法である。
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、フェノール類を触媒と酸素含有ガスの存在下で重合して得られる、30℃において0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.04〜0.40dl/gである低分子量ポリフェニレンエーテルを製造する方法である。
ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液とし、この溶液をウベローデ粘度管を用いて30℃において測定することにより得られる。
本発明に用いられるフェノール類は下記一般式(3)で表される化合物である。
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R6,R7,R8は各々独立の置換基を表し、R6はアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R7,R8はR6について定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い)
【0011】
一般式(3)で表されるような一価フェノール類としては、例えば、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール等が挙げられる。
【0012】
本発明に於いてこれらの一価フェノール性化合物の中でも2,6−ジメチルフェノールは工業上非常に重要であり好ましく用いられる。並びに好ましくはこれらの一価フェノール性化合物は一種類でも用いられるし、いくつか組み合わせて用いても良い。例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールを組み合わせて用いる方法などである。このような混合の一価フェノール類を用いる場合には2,6−ジメチルフェノールとの比が1:99から99:1の重量比である混合一価フェノール類を用いることができる。
また使用するフェノール類の中に、少量のm−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていても全くかまわない。
またフェノール類として下記一般式(2)で表される二価フェノール化合物を含有させることは好ましい。
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、Q1、Q2は各々同一または異なる置換基を表し、水素、アルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基,置換アルコキシ基またはハロゲンを表し、Xは脂肪族炭化水素残基及びそれらの置換誘導体、酸素、イオウまたはスルホニル基を表し、Q2,Xの結合位置はフェノール水酸基に対してオルソ位またはパラ位を表す)
【0015】
一般式(2)で表されるような二価フェノール性化合物は該当する一価フェノール性化合物とケトン類またはジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応等により工業的に有利に製造できる。例えばホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等の汎用のケトン化合物と、一価フェノール性化合物の反応により得られる化合物群がある。例えば、下記一般式(2−a)、(2−b)、(2−c)の各々の構造に挙げる化合物群がある。
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
(一般式(2−a)、(2−b)、(2−c)の式中、Q1、Q2は各々同一または異なる置換基を表し、水素、アルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基,置換アルコキシ基またはハロゲンを表し、Xは脂肪族炭化水素残基及びそれらの置換誘導体、酸素、イオウまたはスルホニル基を表す)
【0020】
上記一般式の構造を持つもので代表的なものは、Q1とQ2がメチル基でXがイソプロピリデンである化合物、Q1とQ2がメチル基でXがメチレンである化合物、Q1とQ2がメチル基でXがチオである化合物、Q1とQ2がメチル基でXがシクロヘキシリデンである化合物等であるがこれらの例に限定されないことはいうまでもない。
これらの二価フェノール性化合物は一種類でも用いられるし、いくつか組み合わせて用いても良い。
一般式(2)で表される二価フェノール性化合物を含有させる場合には、一般式(3)記載の一価フェノール類に対する一般式(2)の二価フェノール性化合物の量は特に制限されないが、一価フェノール類に対して0.1〜30モル%とするのが好ましい。
【0021】
本発明の連続重合方法において重合溶液中のフェノール類の濃度は特に限定されないが、全重合溶液中において10〜50重量%とすると沈殿析出重合の特徴が発揮され好ましい。
本発明で用いられる触媒は、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることができる公知の触媒系が全て使用できる。一般的に知られている触媒系は酸化還元能を有する遷移金属イオンとこの金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば銅化合物とアミンからなる触媒系、マンガン化合物とアミンからなる触媒系、コバルト化合物とアミンからなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミンを加えることもある。
本発明で好適に使用される触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物および一般式(1)で表されるジアミン化合物からなる触媒である。
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1から6の直鎖状または分岐状アルキル基で、全てが同時に水素ではない。R5は炭素数2から5の直鎖状またはメチル分岐を持つアルキレン基である)
【0024】
ここで述べられた触媒成分の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては第一銅化合物、第二銅化合物またはそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲンまたは酸から使用時に合成しても良い。しばしば用いられる方法は先に例示の酸化第一銅とハロゲン化水素(またはハロゲン化水素の溶液)を混合して作成する方法である。
【0025】
ハロゲン化合物としては例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
これらの化合物の使用量は特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、使用されるフェノールの100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0026】
次に触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する。例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−n−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−i−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−n−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−i−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−t−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。本発明にとって好ましいジアミン化合物は2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2または3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対して0.01モルから10モルの範囲で用いられる。
【0027】
本発明において触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物または2級モノアミン化合物をそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて含ませることは好ましい。
3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含めた脂肪族3級アミンである。例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
【0028】
2級モノアミン化合物の例として、第2級脂肪族アミンとしては例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−iso−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−iso−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。芳香族を含む2級モノアミン化合物の例としては、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられるがこれらの例には限定されない。これらの2級モノアミン化合物は単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対し15モル以下の範囲が好ましい。
【0029】
本発明には従来より活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについて何ら制限されない。例えば、Aliquat336やCapriquatの商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドである。使用量は重合反応混合物の全量に対して0.1wt%を超えない範囲が好ましい。
本発明の重合における酸素含有ガスは純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。重合反応中の系内圧力は常圧で充分であるが必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0030】
重合の温度は特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応の選択性が低下することがあるので、0〜80℃、好ましくは10〜70℃の範囲である。
本発明の重合溶媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの重合に用いられる各種溶媒が使用可能である。ポリフェニレンエーテルの良溶媒・貧溶媒が使用可能である。
【0031】
ポリフェニレンエーテルの良溶媒とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶媒である。このような溶媒を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−、m−、p−の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物が挙げられる。また若干の貧溶媒性を持ってはいるものの良溶媒に分類されるものとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等が例示される。これらの良溶媒は、単独でも用いられるし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
ポリフェニレンエーテルの貧溶媒とは、ポリフェニレンエーテルを全く溶解しないか、わずかに溶解できる溶媒である。例えば、エーテル類、ケトン類、アルコール類である。中でも炭素数が1個から10個までのアルコールが好ましい。このような貧溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール等を挙げることができ、このような貧溶媒に、更に水が含まれていても良い。これらの貧溶媒は、単独でも用いられるし、2種以上を組み合わせて用いても良く、貧溶媒の特徴を損なわない範囲において良溶媒を含有しても構わない。
【0033】
本発明において重合溶媒中の各種溶媒の比率は特に限定されないが、重合溶媒に占める良溶媒の含有量が40重量%以下であることが好ましい。
本発明では、少なくとも2槽からなる重合槽を用いる。第一の重合槽においてフェノール類の重合率を40%以上に高め、第二またはそれ以降の重合槽において重合を完結させる。なお、重合を完結させた時のフェノール類の重合率は特に限定されないが、90%以上に高めることが好ましい。
フェノール類の重合率は以下に示す方法により得ることができる。
ポリフェニレンエーテルの重合は一般に公知の通り、一価フェノール類2モルと酸素1モルから酸化カップリング反応により得られる。よってフェノール類の重合率は反応に供給する酸素量と反応に寄与せずに排出される酸素量、および反応に供したフェノール類の量より求めることができる。
【0034】
本発明の特徴は、第一の重合槽においてフェノール類の重合率を40%以上に高めた後に、貧溶媒をフェノール類に対し5重量%以上添加することであり、それにより低分子量のポリフェニレンエーテルを製造するのに重要な解決課題である沈殿析出が促進されるとともに、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる副生成物の生成量も低減することができる。添加する貧溶媒の量は、重合率を40%以上に高めたフェノール類に対し5重量%以上である。貧溶媒の後添加により、重合後期における重合生成水による触媒の失活を抑えると共に、重合溶液中の低分子量ポリフェニレンエーテルの沈殿析出をも容易となる。本発明の特徴を損なわない範囲であれば、貧溶媒は任意の割合で重合初期から重合溶媒中に含有されていても何ら問題はない。
【0035】
第一の重合槽における重合の形態については制限されない。沈殿重合および溶液重合のいずれもが可能である。
重合溶媒に溶解させたフェノール類および触媒を第一の重合槽に連続的に供給し、且つ貧溶媒を第一の重合槽に連続的に供給することにより、沈殿重合とすることができる。また、重合溶媒に溶解させたフェノール類および触媒を第一の重合槽に連続的に供給し、且つ貧溶媒を第二またはそれ以降の重合槽に連続的に供給することにより、溶液重合とすることができる。この場合第二またはそれ以降の重合槽においては沈殿重合となる。
【0036】
中でも、第1の重合槽における重合初期の重合形態が溶液重合であり、貧溶媒を添加した後の重合後期における重合形態を沈殿析出重合とすることが、低分子量ポリフェニレンエーテルの収率を向上させる上で好ましい。これにより、重合を完結させた重合溶液において、沈殿析出したポリフェニレンエーテルに対し重合溶媒に溶解するフェノール類帰属の化合物の含有量を8重量%未満に低減させることも容易に達成可能となる。
重合率を高める目的で第三またはそれ以降の重合槽を併設することも重要な役割を果たすことが多い。このような重合形態を採ることにより、従来技術では困難であった収率の低下が抑制され、さらに副生成物の生成量および重合槽壁、攪拌軸、送液配管等へのポリマー付着が著しく抑制された、工業的に極めて有利な低分子量のポリフェニレンエーテルの連続重合方法となる。
【0037】
重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生成物を処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。上記の様に触媒である金属イオンが実質的に失活されている状態であれば、該混合物を加熱するだけで脱色される。また既知の還元剤を必要量添加する方法でも可能である。既知の還元剤はハイドロキノン、亜二チオン酸ナトリウム等が挙げられる。その後、触媒の洗浄除去を目的として、重合に用いた貧溶媒を主成分とする溶液を用いて繰り返し洗浄を実施することが好ましい。その後、各種乾燥機を用いた乾燥工程において乾燥するという操作でポリフェニレンエーテルが回収できる。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるべきではない。
なお、測定は以下の方法に従って行った。
(1)フェノール類の重合率の測定方法
重合に供するフェノール類の重量より、理論上重合に必要な酸素体積(リットル)を下式により求めた。
理論酸素量=フェノール類の重量/フェノール類の分子量×22.4/2
重合に要した酸素体積は下式により求めた。
重合に要した酸素量=(重合に供した酸素量)―(排出ガス中の酸素量)
重合率は、上述した理論酸素量および重合に要した酸素量を用い、下式より求めた。
重合率(%)=重合に要した酸素量/理論酸素量×100
【0039】
(2)副生成物の生成量の測定方法
重合溶液を用いて、ポリフェニレンエーテル濃度が100ppmのクロロホルム溶液を作成し、このクロロホルム溶液をSIMADZU製紫外可視分光光度計UV−2450を用いて、420nmの吸光度を測定し、下式により求めた数値を副生成物の生成量とした。
副生成物の生成量(%)=3.56×吸光度
【0040】
(3)ロスポリマー量の測定方法
重合溶液をガラスフィルターを用いて濾別し、析出沈殿しているポリフェニレンエーテルと濾液を分取した。そして、沈殿析出しているポリフェニレンエーテルの乾燥重量に対し、濾液を蒸発乾固して得られた重合溶媒に溶解しているフェノール類帰属の化合物重量の割合を100分率で表した。
(4)ηsp/cの測定方法
ポリフェニレンエーテルを0.5g/dlのクロロホルム溶液として、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)を求めた。単位はdl/gである。
【0041】
【実施例1】
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器、重合槽側面に第二重合槽へのオーバーフローラインを備えた1.6リットルのジャケット付き第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.432gの塩化第二銅2水和物、1.90gの35%塩酸、1.65gのジ−n−ブチルアミン、19.79gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1058.6gのn−ブタノールを入れた。同様に、反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器、重合槽側面に洗浄槽へのオーバーフローラインを備えた4.0リットルのジャケット付き第二重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2700.0gのブタノール、300gのメタノールを入れた。また、プランジャーポンプにより第一重合槽に送液できるライン、攪拌タービン翼及び槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた6.0リットルの第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.296gの塩化第二銅2水和物、5.70gの35%塩酸、4.95gのジ−n−ブチルアミン、59.37gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、3175.8gのn−ブタノール、900.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。さらに、プランジャーポンプにより第一重合槽および第二重合槽の何れにも送液できるライン、攪拌タービン翼及び槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた2.0リットルの第二原料タンクに100ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1200gのメタノールを入れた。尚、第一原料タンクおよび第二原料タンクへの仕込み液は重合に供することで減量するため、その都度上記液組成のものを追加添加した。
【0042】
次いで激しく攪拌した第一重合槽へ、第一原料タンクより18.43g/分の流量で重合溶液を供給するのと同時に、第一重合槽へ238ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。更に、第一重合槽より第二重合槽へのオーバーフローが開始されると同時に、第二原料タンクより第二重合槽へ1.57g/分の流量でメタノールを添加し、更に257ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入させた。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し39.2重量%となる。重合温度は第一重合槽および第二重合槽ともに40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。その後30時間重合を継続することで、第一重合槽および第二重合槽における重合は安定状態となる。この時の第一重合槽の重合率を測定すると50%、第二重合槽の重合率は46%であり、重合率96%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その後さらに40時間重合を継続し完了した。この間、第二重合槽の重合溶液は、槽底部に窒素ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器、重合槽側面に払い出しのためのオーバーフローラインを備えた4.0リットルのジャケット付き洗浄槽に連続的に供給されており、500ml/分の窒素が導入されている。洗浄槽温度は50℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。
【0043】
原料の供給および酸素含有ガスの通気をやめ、洗浄槽に溜め込まれた重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の10%水溶液を添加し30分間重合混合物を攪拌した後、洗浄槽温度を80℃まで高めポリフェニレンエーテルが白色となるまで攪拌を継続した。その後50℃まで洗浄槽温度を下げた後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルを50%の水を含むメタノール洗浄溶媒に投入し、60℃で攪拌を行った。続いて再び濾過し、濾残に50%の水を含むメタノールをふりかけ洗浄し湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで110℃で真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
重合完了間際の第二重合槽の重合溶液を用いて、副生成物の生成量およびロスポリマー量の測定を行った。重合完了後、第二重合槽の重合溶液を全量抜き出し、槽壁へのポリマー付着厚みを目視で確認した。また、乾燥ポリフェニレンエーテルを用いてηsp/cの測定を行った。結果を表1に示した。
【0044】
【実施例2】
洗浄槽の窒素ガス導入の為のスパージャーより、100ml/分の速度で酸素を導入し、第三重合槽として用いた以外は実施例1に準じて重合を実施した。重合温度は第三重合槽も40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。30時間重合を継続した後、第一重合槽の重合率を測定すると50%、第二重合槽の重合率は46%、第三重合槽の重合率は2%であり、重合率98%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽および第三重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。重合終了後、第三重合槽に溜め込まれている重合混合物は実施例1に準じて洗浄を実施した。重合完了間際の第三重合槽の重合溶液を用いて、副生成物の生成量およびロスポリマー量の測定を行った。重合完了後、第二重合槽の重合溶液を全量抜き出し、槽壁へのポリマー付着厚みを目視で確認した。また、乾燥ポリフェニレンエーテルを用いてηsp/cの測定を行った。結果を表1に示した。
【0045】
【実施例3】
激しく攪拌した第一重合槽へ、第一原料タンクより18.43g/分の流量で重合溶液を供給するのと同時に、第一重合槽へ367ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入し、更に、第一重合槽におけるフェノール類の重合率を40%以上に高めた後、第二原料タンクより第一重合槽へ1.57g/分の流量でメタノールを添加した以外は、実施例1に準じて重合を実施した。その後30時間重合を継続した後、第一重合槽の重合率を測定すると76%、第二重合槽の重合率は21%であり、重合率97%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽および第二重合槽の重合形態は何れも沈殿析出重合である。その後さらに40時間重合を継続し完了した。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0046】
【実施例4】
第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.432gの塩化第二銅2水和物、1.90gの35%塩酸、1.65gのジ−n−ブチルアミン、19.79gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、117.6gのキシレン、941.0gのn−ブタノールを入れた。第ニ重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、300gのキシレン、2400gのブタノール、300gのメタノールを入れた。第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.296gの塩化第二銅2水和物、5.70gの35%塩酸、4.95gのジ−n−ブチルアミン、59.37gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、352.9gのキシレン、2822.9gのn−ブタノール、900.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。その他の仕込み操作は実施例1に準ずる。
【0047】
重合は実施例1に準じて開始した。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し39.2重量%であり、重合溶媒に占める良溶媒であるキシレンの含有量は10重量%である。その後30時間重合を継続させた時の第一重合槽の重合率を測定すると61%、第二重合槽の重合率は37%であり、重合率98%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その後さらに110時間重合を継続し完了した
その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0048】
【実施例5】
第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.432gの塩化第二銅2水和物、1.90gの35%塩酸、1.65gのジ−n−ブチルアミン、19.79gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、235.2gのキシレン、764.5gのブタノール、58.8gのメタノールを入れた。第ニ重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、600gのキシレン、1950.0gのn−ブタノール、450gのメタノールを入れた。第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.296gの塩化第二銅2水和物、5.70gの35%塩酸、4.95gのジ−n−ブチルアミン、59.37gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、705.7gのキシレン、2293.6gのn−ブタノール、176.4gのメタノール、900.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。その他の仕込み操作は実施例1に準ずる。
【0049】
重合は実施例1に準じて開始した。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し39.2重量%であり、重合溶媒に占める良溶媒であるキシレンの含有量は20重量%である。その後30時間重合を継続させた時の第一重合槽の重合率を測定すると59%、第二重合槽の重合率は39%であり、重合率98%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0050】
【実施例6】
第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.432gの塩化第二銅2水和物、1.90gの35%塩酸、19.79gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、58.8gのキシレン、529.3gのn−ブタノールを入れた。第ニ重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、150gのキシレン、1350.0gのブタノール、1500gのメタノールを入れた。第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.296gの塩化第二銅2水和物、5.70gの35%塩酸、4.95gのジ−n−ブチルアミン、59.37gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、176.4gのキシレン、1587.9gのn−ブタノール、900.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。その他の仕込み操作は実施例1に準ずる。
【0051】
次いで激しく攪拌した第一重合槽へ、第一原料タンクより12.16g/分の流量で重合溶液を供給するのと同時に、第一重合槽へ238ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。更に、第一重合槽より第二重合槽へのオーバーフローが開始されると同時に、第ニ原料タンクより第二重合槽へ7.84g/分の流量でメタノールを添加し、更に257ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し162.7重量%であり、重合溶媒に占める良溶媒であるキシレンの含有量は5重量%である。その後30時間重合を継続させた時の第一重合槽の重合率を測定すると59%、第二重合槽の重合率は39%であり、重合率98%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合であった。
【0052】
得られた重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の10%水溶液を添加し、50℃に温めた。次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで、50℃での保温を続けた。終了後、濾過して、濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルを50%の水を含むメタノール洗浄溶媒に投入し、60℃で攪拌を行った。続いて再び濾過し、濾残に50%の水を含むメタノールをふりかけ洗浄し湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで110℃で真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0053】
【実施例7】
第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.667gの塩化第二銅2水和物、2.95gの35%塩酸、25.53gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、891.8gのn−ブタノール、49.5gのメタノールを入れた。第ニ重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2700gのn−ブタノール、300gのメタノールを入れた。第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.00gの塩化第二銅2水和物、8.85gの35%塩酸、76.6gのN,N,N‘,N’−テトラメチルプロパンジアミン、2675.3gのn−ブタノール、148.6gのメタノール、1440gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。その他の仕込み操作は実施例1に準ずる。
【0054】
次いで激しく攪拌した第一重合槽へ、第一原料タンクより12.09g/分の流量で重合溶液を供給するのと同時に、第一重合槽へ238ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。更に、第一重合槽より第二重合槽へのオーバーフローが開始されると同時に、第ニ原料タンクより第二重合槽へ0.413g/分の流量でメタノールを添加し、更に257ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し10.3重量%である。その後30時間重合を継続させた時の第一重合槽の重合率を測定すると42%、第二重合槽の重合率は54%であり、重合率96%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0055】
【比較例3】
第一重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.432gの塩化第二銅2水和物、1.90gの35%塩酸、19.79gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、470.5gのキシレン、352.9gのn−ブタノール、176.4gのメタノールを入れた。第ニ重合槽に1000ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1200gのキシレン、900gのn−ブタノール、900gのメタノールを入れた。第一原料タンクに500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.296gの塩化第二銅2水和物、5.70gの35%塩酸、59.37gのN,N,N‘,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1411.5gのキシレン、1058.6gのn−ブタノール、529.3gのメタノール、900gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、攪拌により液を混合させた。その他の仕込み操作は実施例1に準ずる。
【0056】
次いで激しく攪拌した第一重合槽へ、第一原料タンクより17.65g/分の流量で重合溶液を供給するのと同時に、第一重合槽へ275ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。更に、第一重合槽より第二重合槽へのオーバーフローが開始されると同時に、第ニ原料タンクより第二重合槽へ2.36g/分の流量でメタノールを添加し、更に183ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入を始めた。この時の貧溶媒であるメタノールの添加量は、2,6−ジメチルフェノールに対し59.0重量%である。その後30時間重合を継続させた時の第一重合槽の重合率を測定すると75%、第二重合槽の重合率は23%であり、重合率98%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られている。また、第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0057】
【実施例9】
使用したフェノール性化合物を2.5モル%の2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む2,6−ジメチルフェノールを用いた以外は実施例1に準じて重合を実施した。重合を30時間継続した後、第一重合槽の重合率を測定すると50%、第二重合槽の重合率は46%であり、重合率96%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られた。第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その後さらに70時間重合を継続し完了した。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0058】
【比較例1】
第一重合槽へ128ml/分の速度で酸素をスパージャーより導入した以外は実施例1に準じて重合を実施した。重合を30時間継続した後、第一重合槽の重合率を測定すると35%、第二重合槽の重合率は54%であり、重合率89%のポリフェニレンエーテルが連続的に得られた。第一重合槽の重合形態は溶液重合であり、第二重合槽の重合形態は沈殿析出重合である。その他の操作および各測定は実施例1と同様に行い結果を表1に示した。
【0059】
【比較例2】
第二重合槽へのメタノール添加を実施せずに、実施例1に準じて重合を実施した。重合を開始後3時間程で、第二重合槽内でポリマーが固着し攪拌が停止したため、重合を続けることが不可能となった。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法を採ることにより、重合副生成物の生成量およびロスポリマー、槽壁へのポリマー付着が低減可能になり、且つ極低分子量のポリフェニレンエーテルを得ることが可能となる。
【0062】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いて、フェノール類を触媒と酸素含有ガスの存在下で低分子量のポリフェニレンエーテルを製造することにより、反応器へのスケールの発生や収率の低下を抑制した連続重合法を提供することができ、そのことによって極低分子量なポリフェニレンエーテルまでも効率よく安定に製造できる。
Claims (8)
- フェノール類を触媒と酸素含有ガスの存在下で重合して得られる、30℃において0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.04〜0.40dl/gである低分子量ポリフェニレンエーテルを製造するにあたり、少なくとも2槽からなる重合槽を用い、第一の重合槽においてフェノール類の重合率を40%以上に高めた後、第二またはそれ以降の重合槽において重合を完結させる方法であって、
重合溶媒に占めるポリフェニレンエーテルの良溶媒の含有量が、40重量%以下であり、かつ該フェノール類の重合率を40%以上に高めた後に、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒を該フェノール類に対し5重量%以上添加することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法。 - 重合溶媒に溶解させたフェノール類および触媒を第一の重合槽に連続的に供給し、且つ、該フェノール類に対し5重量%以上の貧溶媒を第一の重合槽に連続的に供給する請求項1記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 重合溶媒に溶解させたフェノール類および触媒を第一の重合槽に連続的に供給し、且つ、フェノール類に対し5重量%以上の貧溶媒を第二またはそれ以降の重合槽に連続的に供給する請求項1記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 貧溶媒を添加する前の重合初期における重合形態が溶液重合であり、貧溶媒を添加した後の重合後期における重合形態が沈殿析出重合である請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 重合を完結させたポリフェニレンエーテルの重合溶液において、沈殿析出したポリフェニレンエーテルに対し、重合溶媒に溶解するフェノール類帰属の化合物の含有量が8重量%未満である請求項4記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
- 貧溶媒が炭素数にして1個から10個までのアルコールを主成分とする少なくとも1種の溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
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