JP4108141B2 - オレフィン重合用触媒およびオレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、新規な遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒およびそれを用いるオレフィンの重合方法に関する。
【0002】
【背景技術】
オレフィン重合用触媒としては、いわゆるカミンスキー触媒がよく知られている。この触媒は非常に重合活性が高く、分子量分布が狭い重合体が得られるという特徴がある。このようなカミンスキー触媒に用いられる遷移金属化合物としては、例えばビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭58-19309号公報参照)や、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭61-130314号公報参照)などが知られている。また重合に用いる遷移金属化合物が異なると、オレフィン重合活性や得られたポリオレフィンの性状が大きく異なることも知られている。さらに最近新しいオレフィン重合用触媒としてジイミン構造の配位子を持った遷移金属化合物(国際公開特許第9623010号参照)が提案されている。
【0003】
ところで一般にポリオレフィンは、機械的特性などに優れているため、各種成形体用など種々の分野に用いられているが、近年ポリオレフィンに対する物性の要求が多様化しており、様々な性状のポリオレフィンが望まれている。また生産性の向上も課題である。
【0004】
このような状況のもと、オレフィン重合活性に優れ、しかも優れた性状を有するポリオレフィンを製造しうるようなオレフィン重合用触媒の出現が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、新規な遷移金属化合物からなり、優れたオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒を提供することを目的とするとともに、この触媒を用いるオレフィンの重合方法を提供することを目的としている。
【0006】
【発明の開示】
本発明の1の態様に係るオレフィン重合用触媒は、下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)と、(B-1)有機アルミニウム化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)からなる。
【0007】
【化9】
(式中、Mは、周期表第8、9族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜3の整数を示し、
Qは、窒素原子または置換基R2を有する炭素原子を示し、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R1〜R 5 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
上記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)は、Qが置換基R2を有する炭素原子であるときには、下記一般式(I-a)で表される。
【0008】
【化10】
(式中、M、m、A、R1〜R 5 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、m、A、R1〜R 5 、nおよびXと同義である。)
また上記一般式(I-a)において、Aが置換基R6を有する窒素原子であり、R6が、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-a)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-a)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-a)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0009】
また、上記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物(A-1)は、R3とR4とが結合して芳香環を形成しているときには、下記一般式(I-b)で表される。
【0010】
【化11】
(式中、M、m、A、R1、R2、R5 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、m、A、R1、R2、R5 、nおよびXと同義であり、
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R 5 と同義であり、
R1、R2 、R 5 およびR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
また上記一般式(I-b)において、Aが置換基R6を有する窒素原子であり、R6が、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-b)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-b)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-b)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0011】
さらに上記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)は、Qが窒素原子であり、R3とR4とが結合して芳香環を形成しているときには、下記一般式(I-c)で表される。
【0012】
【化12】
(式中、M、m、A、R1、R5 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、m、A、R1、R5 、nおよびXと同義であり、
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R 5 と同義であり、
R1 、R 5 およびR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
また上記一般式(I-c)において、Aが置換基R6を有する窒素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-c)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-c)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(I-c)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係るオレフィン重合用触媒は、下記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)と、(B-1)有機アルミニウム化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)からなる
【0014】
【化13】
(式中、Mは、周期表第4族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜2の整数を示し、
Qは、窒素原子または置換基R2を有する炭素原子を示し、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
上記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)は、Qが置換基R2を有する炭素原子であるときには、下記一般式(II-a)で表される。
【0015】
【化14】
(式中、M、m、A、R1〜R4 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中のM、m、A、R1〜R4 、nおよびXと同義である。)
また上記一般式(II-a)において、Aが置換基R6を有する窒素原子であり、R6が、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-a)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-a)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-a)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0016】
また上記一般式(II-a)で表される遷移金属化合物(A-2)は、R3とR4とが結合して芳香環を形成し、Mが周期表第4、8族の遷移金属原子であるときには、下記一般式(II-b)で表される。
【0017】
【化15】
(式中、m、R1、R2 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中のm、R1、R2 、nおよびXと同義であり、
Mは、周期表第4族の遷移金属原子を示し、
Aはmが1のときはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、mが2以上のときにはA同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、かつ少なくとも1個のAはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子であり、
R 6 〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4と同義であり、
R1、R2およびR6〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
上記一般式(II-b)で表される遷移金属化合物(A-2)としては、一般式(II-b)において、Mがチタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属原子である化合物が好ましい。また上記一般式(II-b)において、Aが置換基R6を有する窒素原子であり、R6が、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-b)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-b)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-b)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0019】
さらに上記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)は、Qが窒素原子であり、R3とR4とが結合して芳香環を形成し、Mが周期表第4、8族の遷移金属原子であるときには、下記一般式(II-c)で表される。
【0020】
【化16】
(式中、m、R1 、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中、m、R1 、nおよびXと同義であり、
Mは、周期表第4族の遷移金属原子を示し、Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R7〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4 と同義であり、
R1またはR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
また上記一般式(II-c)において、Aが置換基R6を有する窒素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-c)において、Aが酸素原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-c)において、Aがイオウ原子である化合物であることも好ましく、上記一般式(II-c)において、Aがセレン原子である化合物であることも好ましい。
【0021】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)、および化合物(B)に加えてさらに担体(C)を含むことができる。
【0022】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の1の態様に係るオレフィン重合用触媒は、下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)からなる。
【0023】
【化17】
ここで上記一般式(I)中のN……MおよびA……Mにおいて、……は、配位結合をしているか、結合していない状態を表すが、少なくとも一方が配位結合であることが好ましい。
【0024】
なお配位結合をしていることは、NMR、IR、X線結晶構造解析などによって確認することができる。
上記一般式(I)中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる。)を示し、具体的には、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、バラジウムなどを示す。これらのうちではスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどの第3〜5、8〜10族の金属原子であることが好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどの第4、5、8〜10族の金属原子であることがより好ましく、特に鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどの第8〜10属の金属原子であることが好ましい。
【0025】
mは、1〜3、好ましくは1〜2の整数を示す。
Qは、窒素原子(-N=)または置換基R2を有する炭素原子(-C(R2)=)を示す。
【0026】
Aは、酸素原子(-O-)、イオウ原子(-S-)、セレン原子(-Se-)または置換基R6を有する窒素原子(-N(R6)-)を示す。
R1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0027】
ここでR1〜R6としては、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基またはヒドロキシ基を好ましい基として挙げられる。
【0028】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル、アリル(allyl)、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール(aryl)基;トリル、iso-プロピルフェニル、t-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-t-ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0029】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、水素原子がハロゲンで置換されている炭化水素基としては例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0030】
また、上記炭化水素基は、水素原子が他の炭化水素基で置換されていてもよく、水素原子が他の炭化水素基で置換されている炭化水素基としては、例えばベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0031】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を有していてもよい。
【0032】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0033】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物;フラン、ピランなどの含酸素化合物;チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0034】
R1〜R6として示される酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記炭化水素基に含まれてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0035】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などが挙げられ、具体的には、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。これらの中では、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルなどが好ましい。特にトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルが好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシなどが挙げられる。
【0036】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
次に上記で説明したR1〜R6の例について、より具体的に説明する。
【0037】
酸素含有基のうち、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシなどが、アリーロキシ基としては、フェノキシ、2,6-ジメチルフェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシなどが、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが、エステル基としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、p-クロロフェノキシカルボニルなどが好ましく例示される。
【0038】
窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノなどが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
【0039】
イオウ含有基のうち、アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ等が、アリールチオ基としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナフチルチオ等が、チオエステル基としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルなどが、スルホンエステル基としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルなどが、スルホンアミド基としては、フェニルスルホンアミド、N-メチルスルホンアミド、N-メチル-p-トルエンスルホンアミドなどが好ましく挙げられる。
【0040】
R1〜R6は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0041】
上記一般式(I)において、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
また、mが2以上のときは、一の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていていもよい。この場合R1〜R6のいずれかで示される基同士が連結することにより形成される結合基は、その主鎖が3個以上の原子で形成されることが好ましい。
【0042】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示す。
【0043】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
なお、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜30の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0045】
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。
酸素含有基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
イオウ含有基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
窒素含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイトなどのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
ケイ素含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0050】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0051】
スズ含有基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0052】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
上記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)は、Qが置換基R2を有する炭素原子であるときには、下記一般式(I-a)で表される。
【0055】
【化18】
(式中、M、m、A、R1〜R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、m、A、R1〜R6、nおよびXと同義である。)
上記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物(A-1)は、R1〜R6のうちの2つ以上の基が結合して環構造を形成していてもよく、R1〜R6のうちの2つ以上の基、例えばR3およびR4が結合して芳香環を形成している化合物としては、下記一般式(I-b)で表される化合物がある。
【0056】
【化19】
式中、M、m、A、R1、R2、R5、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、m、A、R1、R2、R5、R6、nおよびXと同義である。
【0057】
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R6と同義である。
R1、R2およびR5〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR1、R2およびR5〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1、R2およびR5〜R10のうちの1個の基が連結されていてもよい。
【0058】
前記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物(A-1)において、mが2であり、一の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されている化合物としては、例えば下記一般式(I-a’)で表される化合物がある。
【0059】
【化20】
式中、M、A、R1〜R6、nおよびXは、そえぞれ上記一般式(I)中のM、A、R1〜R6、nおよびXと同義である。
【0060】
A’は、Aと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6’を有する窒素原子を示す。
R1’〜R6’は、互いに同一でも異なっていてもよく、R1〜R6と同義である。
【0061】
R1’〜R6’のうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基は互いに連結して脂肪族環、芳香族環または窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよい。
【0062】
Yは、R1〜R6から選ばれる少なくとも1以上の基と、R1’〜R6’から選ばれる少なくとも1以上の基とから形成される結合基または単結合である。結合基は特に制限されるものではないが、好ましくは主鎖が原子3個以上、より好ましくは4個以上20個以下、特に好ましくは4個以上10個以下で構成された構造を有する。なお、この結合基は置換基を有していてもよい。
【0063】
Yで示される結合基として具体的には、酸素、イオウ、炭素、窒素、リン、ケイ素、セレン、スズ、ホウ素などの中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む基が挙げられ、具体的には-O-、-S-、-Se-などのカルコゲン原子含有基;-NH-、-N(CH3)2-、-PH-、-P(CH3)2-などの窒素またはリン原子含有基;-CH2-、-CH2-CH2-、-C(CH3)2-などの炭素原子数が1〜20の炭化水素基;ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどの炭素原子数が6〜20の環状不飽和炭化水素残基;ピリジン、キノリン、チオフェン、フランなどのヘテロ原子を含む炭素原子数が3〜20のヘテロ環式化合物残基;-SiH2-、-Si(CH3)2-などのケイ素原子含有基、-SnH2-、-Sn(CH3)2-などのスズ原子含有基;-BH-、-B(CH3)-、-BF-などのホウ素原子含有基などが挙げられる。
【0064】
また、本発明において、オレフィン重合用触媒として使用できる例として、
下記一般式(L)で表される化合物と、MXk(MおよびXは、それぞれ前記一般式(I)中のMおよびXと同義であり、kはMの価数を満たす数である。)とを反応させて得られる化合物がある。
【0065】
【化21】
(式中、AおよびR1〜R6は、それぞれ上記一般式(I)中のAおよびR1〜R6と同義である。)
MXkの好ましい例としては、TiCl3、TiCl4、TiBr3、TiBr4、Ti(ベンジル)4、Ti(NiMe2)4、ZrCl4、Zr(NiMe2)4、Zr(ベンジル)4、ZrBr4、HfCl4、HfBr4、VCl4、VCl5、VBr4、VBr5、Ti(acac)3、およびこれらとTHF(テトラヒドロフラン)、アセトニトリル、ジエチルエーテルなどとの錯体などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0066】
以下に、前記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは上記一般式(I-a)中のMと同義である。
【0067】
Xは、上記一般式(I-a)中のXと同義であり、例えばCl、Br等のハロゲン、またはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていてもよい。
【0068】
nは、上記一般式(I-a)中のnと同義であり、金属Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。金属がTi(IV)の場合は、n=2となり、Zr(IV)の場合は、n=2となり、Hf(IV)の場合は、n=2となる。
【0069】
また、化合物の例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
まず上記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物において、R1〜R6のうちの2つ以上の基が結合して環構造を形成している化合物のうち、R3およびR4が結合して環を形成している例である下記一般式(I-b)で示される化合物の好ましい具体例を示す。
【0070】
一般式(I-b)において、Aが酸素原子である場合の具体例としては、次のような化合物を示すことができる。
【0071】
【化22】
【0072】
【化23】
上記例において、Mおよびnはそれぞれ上記一般式(I-b)中のおよびnと同義であるり、適宜選択することにより具体的化合物が得られる。
【0073】
例えば、下記式において
【0074】
【化24】
Xが塩素の場合、Mの選択によって次のような具体例となる。
【0075】
【化25】
また、Xが臭素の場合、Mの選択によって次のような具体例となる。
【0076】
【化26】
よって、上記で示した具体的一般式、および後で示す具体的一般式から、Mおよびnを選ぶことにより、具体的化合物は容易に選択できる。
【0077】
次に、一般式(I-b)において、Aがイオウ原子である場合の具体例を示す。
【0078】
【化27】
【0079】
【化28】
さらに一般式(I-b)において、Aが置換基R6を有する窒素原子である場合の具体的化合物はつぎのとおりである。
【0080】
【化29】
【0081】
【化30】
また、一般式(I-b)において、R1およびR2が結合して芳香環を形成している例を挙げれば、以下のような化合物がある。
【0082】
【化31】
その他の上記一般式(I-a)で表される化合物の例を示す。
【0083】
【化32】
【0084】
【化33】
【0085】
【化34】
【0086】
【化35】
一般式(I-a)において、mが2以上である一般式で表される化合物の具体例として以下の化合物が挙げられる。
【0087】
【化36】
【0088】
【化37】
【0089】
【化38】
【0090】
【化39】
前記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、一の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されている化合物としては、下記のような例が挙げられる。
【0091】
【化40】
本発明では、一般式(I-a)で表される化合物が、さらにイオン結合または共有結合で結ばれた配位子相当基を有する化合物、例えば下記一般式(I-a”)で表される化合物であってもよい。
【0092】
【化41】
式(I-a”)中、M、A、R1〜R6およびXは、それぞれ前記一般式(I)中のM、A、R1〜R6およびXと同義であり、A’はAと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6’を有する窒素原子を示す。
【0093】
一般式(I-a”)で表される化合物の例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0094】
【化42】
上記一般式(I-a)で表される遷移金属化合物は、特に限定されることなく、例えば以下のようにして製造することができる。
【0095】
下記一般式(L)で表される化合物と、
【0096】
【化43】
(式中、AおよびR1〜R6は、それぞれ上記一般式(I)中のAおよびR1〜R6と同義である。)
MXk(MおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のXと同義であり、kはMの価数を満たす数である。)とを反応させる。
【0097】
MXkの好ましい例として、TiCl3、TiCl4、TiBr3、TiBr4、Ti(ベンジル)4、Ti(NiMe2)4、ZrCl4、Zr(NiMe2)4、Zr(ベンジル)4、ZrBr4、HfCl4、HfBr4、VCl4、VCl5、VBr4、VBr5、Ti(acac)3、およびこれらとTHF、アセトニトリル、ジエチルエーテルなどとの錯体などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0098】
一般式(I-a)で表される遷移金属化合物の製造方法について、さらに具体的な例を以下に紹介する。
まずアシルアセトン類化合物、チオアシルアセトン類化合物を、式R1-NH2の第1級アミン類化合物(R1は上記一般式(I-a)中のR1と同義である。)、例えばアニリン類化合物もしくはアルキルアミン類化合物と反応させることにより遷移金属化合物を構成する配位子となる化合物(配位子前駆体)を得る。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、この種の反応に通常使用されるものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましい。
【0099】
【化44】
次いで、得られた溶液を室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌し、A部に置換基を導入することで対応する配位子前駆体が良好な収率で得られる。
【0100】
また、一般式(I-a)中のA部に置換基を導入したo-アシルフエノール類、o-アシルチオフエノール類、o-アシルアニリン類を、式R1−NH2の第1級アミン類化合物(R1は、上記一般式(I-a)中のR1と同義である。)、例えばアニリン類化合物もしくはアルキルアミン類化合物と反応させることにより得ることもできる。
【0101】
配位子前駆体を合成する際、触媒として、蟻酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。また、脱水剤として、モレキュラシーブス、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンシュタークにより脱水を行うと、反応進行に効果的である。
【0102】
次に、こうして得られた配位子前駆体を遷移金属M含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と混合し、−78℃から室温、好ましくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、この種の反応に通常使用されるものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。
【0103】
さらに、合成した適移金属化合物中の金属Mを、常法により別の適移金属と交換することも可能である。また、例えばR1〜R6の何れかがHである場合には、合成の任意の段階においてH以外の置換基を導入することができる。
【0104】
また上記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)は、Qが窒素原子であり、R3とR4とが結合して芳香環を形成しているときには、下記一般式(I-c)で表される。
【0105】
【化45】
式中、M、m、A、R1、R5、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中の、M、m、A、R1、R5、R6、nおよびXと同義である。なおN……M、A……Mはともに配位していることを示す。
【0106】
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R6と同義である。
R1およびR5〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0107】
mが2以上のときは、R1同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR1およびR5〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1およびR5〜R10のうちの1個の基とが連結されていてもよい。
【0108】
前記一般式(I-c)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、一の配位子に含まれるR1およびR5〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1およびR5〜R10のうちの1個の基とが連結されている化合物は、例えば下記一般式(I-c’)で表される化合物である。
【0109】
【化46】
式(I-c’)中、M、A、R1、R5〜R10およびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、A、R1、R5〜R10およびXと同義であり、R1’およびR5’〜R10’は、それぞれR1およびR5〜R10と同義である。
【0110】
A’は、Aと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子または結合基R6’を有する窒素原子を示す。
Yは、R1およびR5〜R10から選ばれる少なくとも1つ以上の基と、R1’およびR5’〜R10’から選ばれる少なくとも1つ以上の基とを結合する結合基または単結合であり、上記一般式(I-a’)中のYと同義である。
【0111】
以下に、上記一般式(I-c)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
お、下記具体例においてMは、上記一般式(I-c)中のMと同義である。
【0112】
Xは、上記一般式(I-c)中のXと同義であり、例えばCl、Br等のハロゲン、またはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0113】
nは、上記一般式(I-c)中のnと同義であり、金属Mの価数により決定される。1種の配位子が金属に配位している場合、2価金属ではn=2、3価金属ではn=3、4価金属ではn=4、5価金属ではn=5である。例えば、金属MがTi(IV)ではn=4、Zr(IV)ではn=4、Hf(IV)ではn=4、Co(II)ではn=2、Fe(II)ではn=2、Rh(II)ではn=2、Ni(II)ではn=2、Pd(II)ではn=2である。
【0114】
【化47】
【0115】
【化48】
【0116】
【化49】
【0117】
【化50】
【0118】
【化51】
【0119】
【化52】
【0120】
【化53】
【0121】
【化54】
【0122】
【化55】
【0123】
【化56】
一般式(I-c)で表される遷移金属化合物は、特に限定されることなく、例えば以下のようにして製造することができる。
【0124】
一般式(I-c)で表される遷移金属化合物は、例えば遷移金属化合物を構成する配位子となる化合物(配位子前駆体)と、遷移金属M含有化合物と反応させることで合成することができる。
【0125】
配位子前駆体は、例えば一般式(I-c)においてAが酸素原子である場合は、フェノール類またはフェノール類誘導体化合物を、Aがイオウ原子である場合は、チオフェノール類またはチオフェノール類誘導体化合物を、AがR6を有する窒素原子である場合は、アニリンまたはアニリン誘導体化合物を、それぞれ式R1-NH2の第1級アミン類化合物(R1は、上記一般式(I-c)中のR1と同義である。)例えばアニリン類化合物もしくはアルキルアミン類化合物から合成したジアゾニウム化合物と反応させることにより得られる。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に普通のものを使用できるが、なかでも水溶媒が好ましい。次いで、得られた溶液を0℃から還流下で、約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。
【0126】
また、ジアゾニウム化合物は、水中で、第1級アミン類化合物を亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アルキル等と、及び塩酸等の強酸と反応させることにより得られるが、合成法はこれらに限定されるものではない。
【0127】
【化57】
次に、こうして得られた配位子を遷移金属M含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させてフェノキサイド塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温下で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に普通のものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、フェノキサイド塩を調製する際に使用する塩基としては、n-ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基が好ましいが、この限りではない。反応する配位子の数は、遷移金属M含有化合物と配位子との仕込み比を変えることにより調整することができる。
【0128】
また、化合物の性質によっては、フェノキサイド塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。例えば、下記式の化合物は遷移金属ハロゲン化物と直接反応させて調製する。
【0129】
【化58】
さらに、合成した遷移金属化合物中の金属Mを、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えばR1およびR5〜R10の何れかがHである場合には、合成の任意の段階において、H以外の置換基を導入することができる。
【0130】
次に本発明の他の態様に係るオレフィン重合用触媒について説明する。
本発明の他の態様に係るオレフィン重合用触媒は、下記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)からなる。
【0131】
【化59】
ここでN……Mは、通常配位していることを示すが、本発明においては配位していないものも含む。
【0132】
式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、具体的には、スカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、ロジウム、イットリウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、ニッケル、パラジウムなどを示す。これらのうちではスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウムなどの第3〜9族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であることが好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ロジウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの第3〜5および9族の金属原子であることがより好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムなどの第4または5族の金属原子であることがさらに好ましく、特にチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの第4族の金属原子であることが好ましい。
【0133】
mは、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の整数を示す。
Qは、窒素原子(-N=)または置換基R2を有する炭素原子(-C(R2)=)を示す。
【0134】
Aは、酸素原子(-O-)、イオウ原子(-S-)、セレン原子(-Se-)または置換基R6を有する窒素原子(-N(R6)-)を示す。
R1〜R4およびR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R6同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR1〜R4およびR6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R4およびR6のうちの1個の基とが連結されていてもよい。
【0135】
R1〜R4およびR6として具体的には、上記一般式(I)中のR1〜R6と同様の原子または基が挙げられる。
Aが置換基R6を有する窒素原子である場合には、R6は、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であることが好ましい。
【0136】
また、Aが酸素原子、イオウ原子またはセレン原子である場合には、R4は水素、ハロゲン以外の置換基であることが好ましい。すなわち、R4は炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基が好ましい。特にR4は、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、アミノ基、イミド基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基であることが好ましい。
【0137】
Aが酸素原子、イオウ原子またはセレン原子である場合には、R4として好ましい炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、チオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;および、これらの基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基などの置換基がさらに置換した基などが好ましく挙げられる。
【0138】
Aが酸素原子、イオウ原子またはセレン原子である場合には、R4として好ましい炭化水素置換シリル基としては、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。特に好ましくは、トリメチルシリル、トリエチルフェニル、ジフェニルメチルシリル、イソフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。
【0139】
Aが酸素原子、イオウ原子またはセレン原子である場合には、R4としては特に、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の分岐状アルキル基、およびこれらの基の水素原子を炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基で置換した基(クミル基など)、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、または炭化水素置換シリル基であることも好ましい。
【0140】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
なお、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0141】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示す。
【0142】
Xとして具体的には、上記一般式(I)中のXと同様の原子または基が挙げられる。
上記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)は、Qが置換基R2を有する炭素原子であるときには、下記一般式(II-a)で表される。
【0143】
【化60】
式中、M、m、A、R1〜R4、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中のM、m、A、R1〜R4、R6、nおよびXと同義である。
【0144】
上記一般式(II-a)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、R1〜R4、R6で示される基のうち2個の基が連結されている化合物は、例えば下記一般式(II-a’)で表される化合物である。
【0145】
【化61】
式(II-a’)中、M、A、R1〜R4、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(I)中のM、A、R1〜R4、R6、nおよびXと同義であり、R1’〜R4’およびR6’はそれぞれR1〜R4およびR6と同じである。
【0146】
A’は、Aと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示す。
Yは、R1〜R4、R6から選ばれる少なくとも1つ以上の基と、R1’〜R4’、R6’から選ばれる少なくとも1つ以上の基とを結合する結合基または単結合であり、上記一般式(I-a’)中のYと同義である。
【0147】
以下に、上記一般式(II-a’)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは上記一般式(II-a)中のMと同義である。
【0148】
Xは、上記一般式(II-a)中のXと同義であり、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0149】
nは、上記一般式(II-a)中のnと同義であり、金属Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。例えば金属がTi(IV)の場合はn=2であり、Zr(IV)の場合はn=2であり、Hf(IV)の場合はn=2である。
【0150】
なお、上記例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0151】
【化62】
【0152】
【化63】
【0153】
【化64】
【0154】
【化65】
【0155】
【化66】
【0156】
【化67】
【0157】
【化68】
一般式(II-a)で表される遷移金属化合物は、特に限定されることなく、例えば以下のようにして製造することができる。
【0158】
遷移金属化合物を構成する配位子となる化合物(配位子前駆体)である、β-ジケトン類、β-ケトエスチル類化合物(チオケトン類、チオケトエステル類を含む)、アセチルアセトン類化合物は、市販または文献公知の方法で入手できる。
【0159】
配位子前駆体は、アセチルアセトン類化合物などの上記化合物を、式R1−NH2の第1級アミン類化合物(R1は上記一般式(II-a)中のR1と同義である。)例えばアニリン類化合物もしくはアルキルアミン類化合物と反応させることにより得られる。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に普通のものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましい。次いで、得られた溶液を室温から還流条件で約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。
【0160】
配位子化合物を合成する際、触媒として蟻酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。また、脱水剤として、モレキュラシーブス、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンシュタークにより脱水を行うと、反応進行に効果的である。
【0161】
次に、こうして得られた配位子を遷移金属M含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させて塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温下で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に普通のものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、フェノキサイド塩を調製する際に使用する塩基としては、n-ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基が好ましいが、この限りではない。
【0162】
また、化合物の性質によっては、塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。
さらに、合成した遷移金属化合物中の金属Mを、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えばR1〜R5の何れかがHである場合には、合成の任意の段階において、H以外の置換基を導入することができる。
【0163】
上記一般式(II-a)で表される遷移金属化合物は、R1〜R4およびR6のうちの2つ以上の基が結合して環構造を形成していてもよく、R1〜R4およびR6のうちの2つ以上の基、例えばR3およびR4が結合して芳香環を形成している化合物としては、下記一般式(II-b)で表される化合物がある。
【0164】
【化69】
なお、式(II-b)中の、N……Mの表記は一般には、配位していることを示すものであるが、MとNとが配位しても配位していなくても良い。
【0165】
式中、M、m、R1、R2、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中のM、m、R1、R2、R6、nおよびXと同義である。
Aはmが1のときはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、mが2以上のときにはA同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、かつ少なくとも1個のAはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子である。
【0166】
上記一般式(II-b)で表される化合物においては、mが2以上のときにはA同士は互いに同一であり、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子であることが好ましい。
【0167】
R7〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4およびR6と同義である。
R1、R2およびR6〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR1、R2およびR6〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1、R2およびR6〜R10のうちの1個の基とが連結されていてもよい。
【0168】
前記一般式(II-b)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、R1、R2およびR7〜R10(Aが-N(R6)-のときはR1、R2およびR6〜R10)で示される基のうち2個の基が連結されている化合物は、例えば下記一般式(II-b’)で表される化合物である。
【0169】
【化70】
式中、M、R1、R2、R6〜R10、nおよびXは、それぞれ前記一般式(II-b)のM、R1、R2、R6〜R10、nおよびXと同義である。
【0170】
Aはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示す。
A’はAと同一でも異なっていてもよく、酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6’を有する窒素原子を示す。
【0171】
R1’、R2’およびR6’〜R10’は、互いに同一でも異なっていてもよく、R1、R2およびR6〜R10と同義である。これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪族環、芳香族環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよい。
【0172】
Yは、R1、R2およびR6〜R10から選ばれる少なくとも1つ以上の基と、R1’、R2’およびR6’〜R10’から選ばれる少なくとも1つ以上の基とを結合する結合基または単結合であり、上記一般式(I-a’)中のYと同義である。
【0173】
以下に、上記一般式(II-b)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
Mは、上記一般式(II-b)中のMと同義であり、例えばSc(III)、Ti(III)(IV)、Zr(III)(IV)、Hf(IV)、V(IV)、Nb(V)、Ta(V)、Co(II)(III)、Ni(II)、Rh(II)(III)(IV)、Pd(II)(VI)を示すが、これらに限定されるものではない。これらのなかでは、Ti(IV)、Zr(IV)またはHf(IV)である化合物が好ましい。
【0174】
Xは、上記一般式(II-b)中のXと同義であり、例えばCl、Br等のハロゲン基、またはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0175】
nは、上記一般式(II-b)中のnと同義であり、金属原子Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属原子Mに結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。例えばMがTi(IV)の場合はn=2であり、Zr(IV)の場合はn=2であり、Hf(IV)の場合はn=2である。
【0176】
【化71】
【0177】
【化72】
【0178】
【化73】
【0179】
【化74】
【0180】
【化75】
【0181】
【化76】
【0182】
【化77】
【0183】
【化78】
【0184】
【化79】
【0185】
【化80】
【0186】
【化81】
【0187】
【化82】
【0188】
【化83】
【0189】
【化84】
【0190】
【化85】
【0191】
【化86】
【0192】
【化87】
【0193】
【化88】
【0194】
【化89】
【0195】
【化90】
【0196】
【化91】
【0197】
【化92】
【0198】
【化93】
【0199】
【化94】
【0200】
【化95】
【0201】
【化96】
【0202】
【化97】
より具体的には、例えば以下のような化合物を例示できる。
【0203】
【化98】
【0204】
【化99】
また、以下のような化合物も例示できる。なお、M、Xおよびnは、それぞれ式(II-b)中のM、Xおよびnと同義である。
【0205】
【化100】
【0206】
【化101】
なお、上記例示中、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0207】
ここに上記一般式(II-b)で表される遷移金属化合物の一般的な合成法を示すが、これらの方法に限定されるものではない。
上記一般式(II-b)で表される遷移金属化合物は、チオサリチリデン配位子、アニリノ配位子などの配位子を形成する化合物(配位子前駆体)と金属化合物とを反応させることにより合成することができる。
【0208】
チオサリチリデン配位子を形成する化合物は、例えばチオサリチルアルデヒド類化合物と、アニリン類化合物またはアミン類化合物とを反応させることで得られる。
【0209】
配位子前駆体は、上記も含むo-アシルベンゼンチオールと、アニリン類またはアミン類化合物とを反応させることで得られる。
【0210】
【化102】
具体的には、例えばチオサリチルアルデヒド類化合物またはo-アシルベンゼンチオールと、窒素部が無置換のアニリン類化合物または1級アミン類化合物を溶媒に溶解し、この溶液を、室温ないし還流条件で1〜48時間程度攪拌することで得られる。ここで用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましものとして例示できるが、この限りではない。また触媒としては、蟻酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いることができる。反応中、ディーンシュタークを用いて系内の水を除くことは、反応の進行に効果的である。脱水剤としては、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等を用いることができる。
【0211】
なお、ここで用いてもよいo-アシルベンゼンチオールは、例えばo-アシルフェノールのOH基をジメチルチオカーバメートでチオカーバメート化した後、熱等で酸素原子とイオウ原子の変換反応を行うことが得ることができる。
【0212】
また、アニリノ配位子は、o-ホルムアニリン類化合物とアニリン類化合物またはアミン類化合物とを反応させることにより得られる。配位子前駆体は、上記も含むo-アシルアニリンとアニリン酸またはアミン類とを反応させることで得ることができる。具体的には、例えば窒素部が無置換のo-ホルムアニリン類化合物または窒素部が無置換のo-アシルアニリンと、窒素部が無置換のアニリン類化合物または1級アミン類化合物を用い、上記と同様の方法で合成することができる。
【0213】
なおここで用いてもよいo-アシルアニリンは、例えばo-アミノ安息香酸類化合物のカルボン酸基を還元することで得られる。また、アントラニル類化合物の、N-アルキル化反応を行うことでも、対応するN-アルキル-o-アシルアニリン類化合物を得ることができる。
【0214】
【化103】
上記のようにして得られた配位子前駆体と金属化合物とを反応させることにより、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、配位子化合物を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させてチオフェノキサイド塩またはアニリノ塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温下混合し、−78℃ないし室温、または還流条件下で1時間ないし24時間程度攪拌することにより遷移金属化合物が得られる。
【0215】
ここで用いられる溶媒としては、エーテル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒、トルエンなどの炭化水素溶媒が好ましいものとして例示できるが、この限りではない。塩基としては、n-ブチルリチウム等のリチウム塩;水素化ナトリウムなどのナトリウム塩;ピリジン、トリエチルアミン等の含窒素化合物などが好ましいものとして例示できるが、この限りではない。
【0216】
なお、遷移金属化合物によっては、チオフェノキサイド塩やアニリノ塩を調製することなく、配位子化合物と金属化合物とを直接反応させることにより対応する化合物を合成することもできる。
【0217】
得られた遷移金属化合物は、270MHz1H-NMR(日本電子 GSH-270)、FI−IR(SHIMADZU FT-IR8200D)、FD-質量分析(日本電子 SX-102A)、金属含有量分析(乾式灰化・希硝酸溶媒後、ICP法により分析:SHIMADZU ICPS-8000)、炭素、水素、窒素含有量分析(ヘラウス社CHNO型)などを用いて構造が決定される。
【0218】
また上記一般式(II)で表される遷移金属化合物(A-2)としては、Qが窒素原子であり、R3とR4とが結合して芳香環を形成しているときには、下記一般式(II-c)で表される。
【0219】
【化104】
なお、式中、N……Mは配位していることを示すが、この化合物においては配位していないものも含まれる。
【0220】
式中、M、m、A、R1、R6、nおよびXは、それぞれ上記一般式(II)中のM、m、A、R1、R6、nおよびXと同義である。
R7〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4およびR6と同義である。
【0221】
R1またはR6〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
mが2以上のときは、R1同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR1およびR6〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1およびR6〜R10のうちの1個の基が連結されていてもよい。
【0222】
前記一般式(II-c)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、一つの配位子に含まれるR1およびR6〜R10のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1およびR6〜R10のうちの1個の基とが連結されている化合物は、例えば下記一般式(II-c’)で表される化合物である。
【0223】
【化105】
式(II-c’)中、M、A、R1、R6〜R10およびXは、それぞれ前記一般式(II-c)中のM、A、R1、R6〜R10およびXと同義であり、R1’およびR6’〜R10’は、R1、R6〜R10と同義である。
【0224】
A’は、Aと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示す。
R1、R6〜R10、R1’およびR6’〜R10’は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0225】
Yは、R1およびR6〜R10から選ばれる少なくとも1つ以上の基と、R1’およびR6’〜R10’から選ばれる少なくとも1つ以上の基とを結合する結合基または単結合であり、上記一般式(I-a’)中のYと同義である。
【0226】
以下に、上記一般式(II-c)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは、上記一般式(II-c)中のMと同義である。
【0227】
Xは、上記一般式(II-c)中のXと同義であり、例えばCl、Br等のハロゲン、またはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても異なっていても良い。
【0228】
nは、上記一般式(II-c)中のnと同義であり、金属Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。例えば金属がTi(IV)の場合はn=2であり、Zr(IV)の場合はn=2であり、Hf(IV)の場合はn=2である。
【0229】
なお、下記例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0230】
【化106】
【0231】
【化107】
【0232】
【化108】
【0233】
【化109】
【0234】
【化110】
【0235】
【化111】
【0236】
【化112】
【0237】
【化113】
【0238】
【化114】
【0239】
【化115】
【0240】
【化116】
【0241】
【化117】
【0242】
【化118】
【0243】
【化119】
【0244】
【化120】
【0245】
【化121】
【0246】
【化122】
一般式(II-c)で表される遷移金属化合物は、特に限定されることなく、例えば前記一般式(I-c)で表される遷移金属化合物と同様にして製造することができる。
【0247】
また、化合物の性質によっては、フェノキサイド塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。例えば、下記式の化合物と塩基とを反応させて塩を生成させた後、遷移金属ハロゲン化物と反応させて調製する。
【0248】
【化123】
以上のような遷移金属化合物(A-1)、(A-2)は、1種単独または2種以上組み合わせてオレフィン重合用触媒として用いられる。また、上記遷移金属化合物(A-1)、(A-2)以外の遷移金属化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0249】
他の遷移金属化合物として、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、イオウ、ホウ素またはリンを含有する配位子を含むからなる公知の遷移金属化合物が挙げられる。
【0250】
他の遷移金属化合物
上記遷移金属化合物(A-1)、(A-2)以外の遷移金属化合物として具体的には、例えば下記のような遷移金属化合物が用いられる。
(1)下記式で表される遷移金属イミド化合物:
【0251】
【化124】
式中、Mは、周期表第8〜10族の遷移金属原子を示し、好ましくはニッケル、パラジウムまたは白金である。
【0252】
R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよい炭素数1〜50の炭化水素基、炭素数1〜50のハロゲン化炭化水素基、炭化水素置換シリル基または窒素、酸素、リン、イオウおよびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換基で置換された炭化水素基を示す。
【0253】
R21〜R24で表される基は、これらのうちの2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して環を形成していてもよい。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、qは、0〜4の整数である。qが2以上の場合には、Xで示される複数の基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
(2)下記式で表される遷移金属アミド化合物:
【0254】
【化125】
式中、Mは、周期表第3〜6族の遷移金属原子を示し、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであることが好ましい。
【0255】
R’およびR”は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜50の炭化水素基、炭素数1〜50のハロゲン化炭化水素基、炭化水素置換シリル基、または、窒素、酸素、リン、硫黄およびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する置換基を示す。
【0256】
Aは、周期表第13〜16族の原子を示し、具体的には、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、セレン、スズなどが挙げられ、炭素またはケイ素であることが好ましい。
【0257】
mは、0〜2の整数であり、nは、1〜5の整数である。nが2以上の場合には、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。
Eは、炭素、水素、酸素、ハロゲン、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する置換基である。mが2の場合、2個のEは、互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは互いに連結して環を形成していてもよい。
【0258】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、pは、0〜4の整数である。pが2以上の場合には、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0259】
これらのうち、Xはハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基またはスルホネート基であることが好ましい。
(3)下記式で表される遷移金属ジフェノキシ化合物:
【0260】
【化126】
式中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
lおよびmはそれぞれ0または1の整数であり、
AおよびA’は炭素原子数1〜50の炭化水素基、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素、または、酸素、硫黄またはケイ素を含有する置換基を持つ炭化水素基、または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基であり、AとA’は同一でも異なっていてもよい。
【0261】
Bは、炭素原子数0〜50の炭化水素基、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基、R1R2Zで表される基、酸素原子またはイオウ原子であり、ここで、R1およびR2は炭素原子数1〜20の炭化水素基または少なくとも1個のヘテロ原子を含む炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Zは炭素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子またはケイ素原子を示す。
【0262】
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは互いに結合して環を形成していてもよい。
(4)下記式で表される少なくとも1個のヘテロ原子を含むシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物:
【0263】
【化127】
式中、Mは周期表3〜11族の遷移金属原子を示す。
【0264】
Xは、周期表第13、14または15族の原子を示し、Xのうちの少なくとも1つは炭素以外の元素である。
Rは、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基置換シリル基、または窒素、酸素、リン、イオウおよびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換基で置換された炭化水素基を示し、2個以上のRが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0265】
aは、0または1であり、bは、1〜4の整数であり、bが2以上の場合、各[((R)a)5-X5]基は同一でも異なっていてもよく、さらにR同士が架橋していてもよい。
【0266】
cは、Mの価数を満たす数である。
Yは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示す。cが2以上の場合は、Yで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
(5)式RB(Pz)3MXnで表される遷移金属化合物:
式中、Mは周期律表3〜11族遷移金属化合物を示し、Rは水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、Pzはピラゾリル基または置換ピラゾリル基を示す。
【0267】
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは互いに結合して環を形成してもよい。
(6)下記式で示される遷移金属化合物:
【0268】
【化128】
式中、Y1およびY3は、互いに同一であっても異なっていてもよい周期表第15族の元素であり、Y2は周期律表第16族の元素である。
R21〜R28は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基またはケイ素含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
(7)下記式で表される化合物と周期表第8〜10族の遷移金属原子との化合物:
【0269】
【化129】
式中、R31〜R34は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0270】
(8)下記式で示される遷移金属化合物:
【0271】
【化130】
式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、0〜3の整数であり、nは、0または1の整数であり、pは、1〜3の整数であり、qは、Mの価数を満たす数である。
【0272】
R41〜R48は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0273】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、qが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またはXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0274】
Yは、ボラータベンゼン環を架橋する基であり、炭素、ケイ素またはゲルマニウムを示す。
Aは、周期表第14、15または16族の元素を示す。
(9)前記(4)以外のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物。
(10)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする化合物。
【0275】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)から形成されるが、必要に応じて、
(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A-1)または(A-2)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含んでいてもよい。
【0276】
次に、(B)成分の各化合物について説明する。
(B-1)有機金属化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0277】
(B-1a)一般式 Ra mAl(ORb)nHpXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0278】
(B-1b)一般式 M2AlRa 4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0279】
(B-1c)一般式 RaRbM3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される2族または12族金属のジアルキル化合物。
【0280】
前記の(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。
一般式 Ra mAl(ORb)3-m
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは、好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra mAlX3-m
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra mAlH3-m
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra mAl(ORb)nXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0281】
(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として、より具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0282】
Ra 2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどが挙げられる。
【0283】
また(B-1a)に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物も挙げられる。このような化合物として、具体的には、
(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などが挙げられる。
【0284】
前記(B-1b)に属する化合物としては、
LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などが挙げられる。
またその他にも、(B-1)有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを使用することもできる。
【0285】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
【0286】
(B-1)有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記のような(B-1)有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0287】
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0288】
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0289】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0290】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0291】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物(例えば、塩素化物、臭素化物など)などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0292】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわちベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0293】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、下記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
【0294】
【化131】
式中、R20は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
【0295】
R21は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
前記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸と、
【0296】
【化132】
(式中、R20は上記と同じ基を示す。)
有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0297】
前記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。
【0298】
これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
上記のような(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0299】
(B-3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で必要に応じて用いられる遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)は、前記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)と反応してイオン対を形成する化合物である。従って、少なくとも前記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)と接触させてイオン対を形成するものは、この化合物に含まれる。
【0300】
このような化合物としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などが挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物もあげることができる。
【0301】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えば、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0302】
イオン性化合物としては、例えば下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0303】
【化133】
式中、R22としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0304】
R23〜R26は、互いに同一でも異なっていてもよい有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0305】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0306】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0307】
R22としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0308】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩なども挙げられる。
【0309】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0310】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0311】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VII)または(VIII)で表されるホウ素化合物なども挙げられる。
【0312】
【化134】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【0313】
【化135】
ボラン化合物として具体的には、例えば
デカボラン(14);
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0314】
カルボラン化合物として具体的には、例えば
4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
【0315】
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0316】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素もしくは錫からなる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、これらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩、およびイソポリ化合物を使用できるが、この限りではない。
【0317】
ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物としては、上記の化合物の中の1種に限らず、2種以上用いることができる。
上記のような(B-3)イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0318】
上記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)を触媒とする場合、高い重合活性でオレフィン重合体が得られ、また分子量は高いものとなる。助触媒成分としてメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を併用すると、オレフィン類に対して非常に高い重合活性を示す。また助触媒成分としてトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(B-3)を用いると、良好な活性で非常に分子量の高いオレフィン重合体が得られる。
【0319】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)およびイオン化イオン性化合物(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とともに、必要に応じて後述するような担体(C)を用いることもできる。
【0320】
(C)担体
本発明で必要に応じて用いられる(C)担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0321】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。
【0322】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支ない。
【0323】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0324】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0325】
本発明で担体として用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で担体として用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0326】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0327】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0328】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
【0329】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0330】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。
【0331】
これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0332】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0333】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0334】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびびそれらの変成体を例示することができる。
【0335】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A-1)または(A-2)、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)およびイオン化イオン性化合物(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、さらに必要に応じて後述するような特定の有機化合物(D)を含むこともできる。
【0336】
(D)有機化合物成分
本発明では有機化合物成分(D)は必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0337】
アルコール類およびフェノール性化合物としては、通常、R31-OHで表されるものが使用され(ここで、R31は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示す。)、アルコール類としては、R31がハロゲン化炭化水素のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素数1〜20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0338】
カルボン酸としては、通常、R32-COOHで表されるものが使用される。R32は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0339】
リン化合物としては、P-O-H結合を有するリン酸類、P-OR、P=O結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
スルホン酸塩としては、下記一般式(IX)で表されるものが使用される。
【0340】
【化136】
式中、Mは周期表1〜14族の元素である。
【0341】
R33は水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0342】
mは1〜7の整数であり、nは1≦n≦7である。
第1図および第2図に、本発明に係るオレフィン重合触媒の調製工程を示す。
次に、オレフィン重合方法について説明する。
【0343】
本発明に係るオレフィン重合方法は、上記の触媒の存在下にオレフィンを(共)重合させることからなる。
重合の際、各成分の使用法、添加方法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
【0344】
(1)遷移金属化合物(A-1)または(A-2)(以下単に「成分(A)」という。)を重合器に添加する方法。
(2)成分(A)と、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)およびイオン化イオン性化合物(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(以下単に「成分(B)」という。)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)と成分(B)とを予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
(4)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、およぴ成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(5)成分(A)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0345】
(6)成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した触媒を重合器に添加する方法。
(7)成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(8)成分(B)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(9)成分(B)を担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(10)成分(A)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0346】
(11)成分(A)を担体(C)に担持した成分、成分(B)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(12)成分(A)、成分(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(13)成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分、およぴ成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(14)成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(15)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0347】
(16)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)、成分(D)を任意め順序で重合器に添加する方法。
(17)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、およぴ成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(18)成分(A)を担体(C)に担持した成分、成分(B)、および成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(19)成分(A)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(20)成分(A)と成分(B)と成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
【0348】
(21)成分(A)と成分(B)と成分(D)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(22)成分(A)と成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加する方法。
(23)成分(A)と成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、およぴ成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0349】
上記の担体(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分はオレフィンが予備重合されていてもよい。
本発明に係るオレフィンの重合方法では、上記のようなオレフィン重合触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。
【0350】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0351】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルとなるような量で用いられる。本発明では、成分(A)を、比較的薄い濃度で用いた場合であっても、高い重合活性でオレフィンを重合することができる。
【0352】
成分(B-1)は、成分(B-1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
【0353】
成分(B-2)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
【0354】
成分(B-3)は、成分(B-3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0355】
成分(D)は、成分(B)に対して、成分(B-1)の場合、モル比〔(D)/(B-1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B-2)の場合、成分(D)と成分(B-2)中のアルミニウム原子とのモル比〔(D)/(B-2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B-3)の場合、モル比〔(D)/(B-3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0356】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常、−50〜200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0357】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0358】
このようなオレフィン重合触媒により重合することができるオレフィンとしては、炭素原子数が2〜20のα-オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;
炭素原子数が3〜20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン;
極性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸などの(α,β-)不飽和カルボン酸を含む不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルなどの(α,β-)不飽和カルボン酸エステルを含む不飽和カルボン酸エステル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルなどが挙げられる。
【0359】
さらにビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを用いることもできる。
このジエンまたはポリエンとしては、炭素原子数4〜30、好ましくは4〜20で二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物である。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン;
さらに芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;および
3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルステレンなどが挙げられる。
【0360】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を示し、また分子量分布の狭い重合体を得ることができる。さらに、2種以上のオレフィンを共重合したときに、組成分布が狭いオレフィン共重合体を得ることができる。
【0361】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、α-オレフィンと極性モノマーとの共重合に用いることもできる。ここで用いられるα-オレフィンとしては、上記と同様の炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられ、極性モノマーとしては上記と同様のものが挙げられる。
【0362】
さらに、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、α-オレフィンと共役ジエンとの共重合に用いることもできる。
ここで用いられるα-オレフィンとしては、上記と同様の炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。なかでもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0363】
また共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数が4〜30、好ましくは4〜20の脂肪族共役ジエンが挙げられる。
【0364】
これらの共役ジエンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
本発明では、α-オレフィンと共役ジエンとを共重合させるに際して、さらに非共役ジエンまたはポリエンを用いることができ、非共役ジエンまたはポリエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン等を挙げることができる。
【0365】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0366】
なお合成例で得られた化合物の構造は、270MHz1H−NMR(日本電子GSH-270型)、FT−IR(SHIMADZU FTIR-8200D型)、FD-質量分析(日本電子SX-102A型)、金属含有量分析(乾式灰化・希硝酸溶解後ICP法により分析、機器:SHIMADZU ICPS-8000型)、炭素、水素、窒素含有量分析(ヘラウス社CHNO型)等を用いて決定した。また、極限粘度[η]は、135℃デカリン中で測定した。
【0367】
合成例1
〈式(L1)で表される化合物の合成〉
100mlの反応器で、アニリン1.0g(10.7mmol)、濃塩酸3.3g(32.2mmol)、及び水5.4mlを激しく混ぜて溶液にし、これを0℃に氷冷した。純度98.5%の亜硝酸ナトリウム0.75g(10.7mmol)を水2.6mlに溶解し、撹拌しながら、温度が5℃以下に保たれるようにこれをゆっくり加えた。滴下終了後、さらに0℃で1時間撹拌することで、塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液が調製された。別の100mlの反応器に、2,4-ジ-t-ブチルフェノール2.22g(10.7mmol)をテトラヒドロフラン3mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム2.22g(53mmol)を水22mlに溶解した水溶液を加え、これを0℃に氷冷した後、上記で調製した塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液を撹拌しながらゆっくり滴下し、さらに0℃で1.5時間撹拌を続けた。反応液を室温まで昇温した後、ジエチルエーテル30mlを加えて2層分離した。次に、油相を希塩酸洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水した。この溶液の溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製して、エンジ色固体の下記式(L1)で表される化合物2.56gを得た(収率77%)。
【0368】
【化137】
FD-質量分析 :(M+)310
1H-NMR(CDCl3):1.38(s,9H)1.47(s,9H)7.40-7.95(m,7H)
13.71(s,1H)
【0369】
〈式(a-1)で表される化合物の合成〉
次に、充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L1)で表される化合物1.07g(3.45mmol)とジエチルエーテル21mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム2.25ml(1.61mmol/ml(n-ヘキサン溶液)、3.45mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で3時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン溶液3.40ml(0.5mmol/ml(ヘプタン溶液)、1.70mmol)とジエチルエーテル21mlの混合溶液に徐々に滴下した。
【0370】
滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で8時間攪拌した後、この反応液をグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。濾液を減圧濃縮し、析出した固体をペンタン2mlに溶解し、−20℃で静置して結晶を析出させ、これを減圧乾燥させることにより下記式(a-1)で示される赤黒色結晶の化合物0.80g(1.01mmol、収率59%)を得た。
【0371】
【化138】
FD-質量分析 :(M+)736
1H-NMR(CDCl3):1.31(s,18H)1.49(s,18H)7.00-7.95(m,14H)
元素分析 :Ti6.7%(計算値6.5%)
【0372】
合成例2
〈式(b-1)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、化合物(L1)1.07g(3.45mmol)とジエチルエーテル21mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム2.25ml(1.61mmol/ml(n-ヘキサン溶液)、3.45mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で3時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム0.40g(1.71mmol)/ジエチルエーテル21ml混合溶液に徐々に滴下した。
【0373】
滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で8時間攪拌した後、この反応液をグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。濾液を減圧濃縮し、析出した固体をペンタン2mlに溶解し、−20℃で静置して結晶を析出させ、これを減圧乾燥させることにより下記式(b-1)で示される赤黒色結晶の化合物1.30g(1.66mmol、収率97%)を得た。
【0374】
【化139】
FD-質量分析 :(M+)780
1H-NMR(CDCl3):1.37(s,18H)1.47(s,18H)6.75-7.95(m,14H)
元素分析 :Zr 11.4%(計算値11.7%)
【0375】
合成例3
〈式(L2)で表される化合物の合成〉
アニリン2.0g(21.6mmol)と2-t-ブチル-4-メチルフェノール3.6g(21.5mmol)を原料として用い、合成例1の式(Ll)で表される化合物の合成と同様の方法で、下記式(L2)で表される化合物の朱色固体4.98g(18.6mmol)が得られた(収率86%)。
【0376】
【化140】
FD-質量分析 :(M+)268
1H-NMR(CDCl3):1.46(s,9H)2.37(s,3H)7.15-7.95(m,7H)
13.62(s,1H)
【0377】
〈式(a-2)で表される化合物の合成〉
式(L2)で表される化合物1.02g(3.82mmol)を用い、合成例1の式(a-1)で表される化合物の場合と同様の方法で、下記式(a-2)で表される化合物のこげ茶色粉末0.34g(0.52mmol、収率27%)を得た。
【0378】
【化141】
FD-質量分析 :(M+)653
1H-NMR(CDCl3):1.46(s,18H)2.30-2.40(m,6H)7.00-7.90(m,14H)
元素分析 :Ti 7.3%(計算値7.3%)
【0379】
合成例4
〈式(b-2)で表される化合物の合成〉
式(L2)で表される化合物1.02g(3.8mmol)を用い、合成例2の式(b-1)で表される化合物の場合と同様な方法で、下記式(b-2)で表される化合物の赤茶色結晶0.22g(0.32mmol、収率17%)を得た。
【0380】
【化142】
FD-質量分析 :(M+)696
1H-NMR(CDCl3):1.47(s,18H)2.38(s,6H)6.95-7.90(m,14H)
元素分析 :Zr 13.2%(計算値13.1%)
【0381】
合成例5
〈式(L3)で表される化合物の合成〉
2,6-ジイソプロピルアニリン1.77g(10.0mmol)と2,4-ジメチルフェニル-トリメチルシリルエーテル1.94g(10.0mmol)を原料として用い、合成例1の式(L1)で表される化合物の合成の場合と同様な方法で、下記式(L3)で表される化合物の濃赤色固体1.83g(5.3mmol)が得られた(収率53%)。
【0382】
【化143】
FD-質量分析 :(M+)346
1H-NMR(CDCl3):0.03(s,9H)1.15(d,12H)2.36(s,3H)2.50(s,3H)
2.79(dq,2H)7.05-7.95(m,5H)
【0383】
〈式(c-3)で表される化合物の合成〉
充分にアルゴン置換した100mlの反応器に二塩化コバルト0.47g(3.6mmol)とTHF15mlを仕込み、室温下、式(L3)で表される化合物1.21g(3.5mmol)のTHF10ml溶液を添加すると黄沈が析出した。これをさらに1時間攪拌後グラスフィルターで沈殿をろ別し、得られた固体をジエチルエーテル・塩化メチレン溶液で再沈し、さらにヘキサン50mlで洗浄後、減圧乾燥させることにより下記式(c-3)で示される化合物の茶色の粉末1.13g(収率68%)を得た。
【0384】
【化144】
FD-質量分析:(M+)476
元素分析 :Co 12.5%(計算値12.4%)
【0385】
実施例1
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、前記合成例1で得られた式(a-1)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.10g得た。
重合活性は42kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は19.7dl/gであった。
【0386】
実施例2
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25mmol、引き続き式(a-1)で表される化合物を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.006mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃にて10時間減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.39g得た。
重合活性は155kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は25.9dl/gであった。
【0387】
実施例3
式(b-1)で表される化合物を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.07g得た。重合活性は29kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は9.5dl/gであった。
【0388】
実施例4
式(b-1)で表される化合物を用い、実施例2と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.32g得た。重合活性は128kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は11.2dl/gであった。
【0389】
実施例5
式(a-2)で表される化合物を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.10g得た。重合活性は40kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は16.9dl/gであった。
【0390】
実施例6
式(a-2)で表される化合物を用い、実施例2と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.70g得た。重合活性は280kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は26.3dl/gであった。
【0391】
実施例7
式(b-2)で表される化合物を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.06g得た。重合活性は24kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は9.7dl/gであった。
【0392】
実施例8
式(b-2)で表される化合物を用い、実施例2と同様の条件で重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.50g得た。重合活性は200kg/mol-Zr・hrであり、極限粘度[η]は5.6dl/gであった。
【0393】
実施例9
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレープにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25mmol、引続き式(c-3)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、250℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃にて10時間減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.03g得た。重合活性は12kg/mol-Co・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は3.9dl/gであった。
【0394】
合成例6
〈式(L4)で表される化合物の合成〉
充分に窒素置換した100mlの反応器にエタノール10ml、アニリン0.61g(6.52mmol)および1-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-1,3-ブタンジオン0.95g(5.43mmol)を装入し、モレキュラーシーブス3Aを5g、及び、酢酸1ml加えた後、80℃に加熱し、3時間攪拌を続けた。この反応液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムで精製することにより。式(L4)で表される化合物の灰白色結晶を0.60g(1.53mmol、収率47%)得た。
【0395】
【化145】
FD-質量分析 :(M+)391
1H-NMR(CDCl3):1.2-1.4(m,18H)1.59(s,1H)2.09(s,3H)
2.90(dt,1H)3.11(dt,2H)5.38(s,1H)
7.00(s,2H)7.1-7.5(m,5H)
【0396】
〈式(a-4)で表される化合物の合成〉
次に充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L4)で表される化合物0.31g(0.85mmol)とジエチルエーテル10mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム0.53ml(1.61mmol/ml-nヘキサン溶液、0.85mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で3時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン溶液0.84ml(0.5mmol/ml-ヘプタン溶液、0.42mmol)とテトラヒドロフラン6mlの混合溶液に徐々に滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で8時間攪拌した後、この反応液の溶媒を減圧留去し、濾物を塩化メチレン10mlに溶解する。不溶物をグラスフィルターで除去し、濾液を減圧濃縮した後、析出した固体をヘキサンで再結晶させ、これを減圧乾燥させることにより下記式(a-4)で示される化合物の黒茶色粉末を0.17g(0.20mmol、収率48%)得た。
【0397】
【化146】
FD-質量分析:(M+)842
元素分析 :Ti 6.0%
【0398】
合成例7
〈式(b-4)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L4)で表される化合物0.49g(1.35mmol)とジエチルエーテル12mlテトラヒドロフラン18mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム0.84ml(1.61mmol/ml-nヘキサン溶液、1.35mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で3時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム・THF錯体0.25g(0.67mmol)/10mlテトラヒドロフラン混合溶液に徐々に滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で8時間攪拌した後、この反応液の溶媒を減圧留去し、濾物を塩化メチレン10mlに溶解する。不溶物をグラスフィルターで除去し、濾液を減圧濃縮した後、析出した固体をヘキサンで再結晶させ、これを減圧乾燥させることにより下記式(b-4)で表される化合物の黄色粉末を0.36g(0.41mmol、収率61%)得た。
【0399】
【化147】
FD-質量分析:(M+)887
元素分析 :Zr 10.5%
【0400】
合成例8
〈式(L5)で表される化合物の合成〉
充分に窒素置換した100mlの反応器にエタノール10ml、アニリン0.61g(6.52mmol)および1-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-ブタンジオン1.11g(5.43mmol)を装入し、モレキュラーシーブス3Aを5g、及び、酢酸1ml加えた後、80℃に加熱し、3時間攪拌を続けた。この反応液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムで精製することにより。下記式(L5)で表される化合物の橙色オイルを1.29g(4.62mmol、収率85%)得た。
【0401】
【化148】
FD-質量分析:(M+)279
【0402】
〈式(b-5)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L5)で表される化合物0.67g(2.40mmol)とジエチルエーテル10mlテトラヒドロフラン5mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム1.61ml(1.55mmol/ml-nヘキサン溶液、2.50mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で3時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム0.25g(0.67mmol)/10mlテトラヒドロフラン混合溶液に徐々に滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で8時間攪拌した後、この反応液の溶媒を減圧留去し、濾物を塩化メチレン10mlに溶解する。不溶物をグラスフィルターで除去し、濾液を減圧濃縮した後、析出した固体をヘキサンで再結晶させ、これを減圧乾燥させることにより下記式(b-5)で表される化合物の黄色粉末を0.47g(0.65mmol、収率54%)得た。
【0403】
【化149】
FD-質量分析 :(M+)718
1H-NMR(CDCl3):2.00-2.50(m,24H)5.20-5.60(m,2H),
6.75-6.95(m,4H)7.10-7.50(m,10H)
元素分析 :Zr 12.5%
【0404】
実施例10
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、前記合成例6で得られた式(a-4)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.10g得た。
重合活性は40kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は6.5dl/gであった。
【0405】
実施例11
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25mmol、引続き式(a-4)で表される化合物を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.006mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃にて10時間減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.30g得た。
重合活性は120kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は4.1dl/gであった。
【0406】
実施例12
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引続き、前記合成例7で得られた式(b-4)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.60g得た。
重合活性は60kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は6.8dl/gであった。
【0407】
実施例13
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25mmol、引続き式(b-4)で表される化合物を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.006mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃にて10時間減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.30g得た。
重合活性は120kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は6.8dl/gであった。
【0408】
実施例14
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25mmol、引続き式(b-5)で表される化合物を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.006mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃にて10時間減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.20g得た。
重合活性は80kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は7.5dl/gであった。
【0409】
合成例9
〈式(L6)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥し、アルゴン置換した500mlの反応器に2,2’-iminodibenzoic acid 2.3g(8.94mmol)、THF50mlを加え、−20℃に冷却した。同温度で撹拌しながらビス(1-メチルピペラジン-4-イル)アルミニウムヒドリドのTHF溶液(0.3M)を90ml滴下した後、昇温し、還流条件下で24時間反応させた。反応液を室温まで放冷した後、ジエチルエーテル100mlを加え、更に氷冷しながら水150mlをゆっくり加えた。分相した油層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離操作によって2,2’-iminodibenzaldehyde 673mgを得た。引き続き、充分に乾燥し、アルゴン置換した100mlの反応器に2、2’-iminodibenzaldehyde 650mg(2.89mmol)、2,6-ジメチルアニリン699mg(5.77mmol)、脱水メタノール50ml、酢酸0.2mlを加え、室温で12時間反応させた。反応液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離操作によって下記式(L6)で表される化合物237mg(収率6.1%)を得た。
【0410】
【化150】
1H-NMR(CDCl3,δ):2.21(s,12H)4.96(s,1H)6.73-7.74(m,14H)
8.21(2H)
【0411】
〈式(d-6)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に式(L6)で表される化合物200mg(0.46mmol)、THF20mlを加え、−78℃に冷却し撹拌した。これにn-ブチルリチウムヘキサン−THF溶液(0.16M)2.9mlを滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、1時間撹拌を続け、リチウム塩溶液を調整した。充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に塩化第一鉄58.7mg(0.46mmol)、THF20mlを加え、室温で2時間撹拌した後、−78℃に冷却し、先のリチウム塩溶液を滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温し、同温度で3時間撹拌した後、これをグラスフィルターでろ過した。濾液を5mlに濃縮し、n-ペンタン5mlを加え、生じた沈殿物を濾過した後、更に10mlのn-ペンタンで洗浄し減圧下で乾燥し、下記式(d-6)で表される化合物203mgを得た(収率85%)。
【0412】
【化151】
FD-質量分析:(M+)521
【0413】
参考例1
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、式(d-6)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターでろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.01g得た。重合活性は4kg/mol-Fe・hrであった。
【0414】
合成例10
〈式(a-6)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に式(L6)で表される化合物100mg(0.23mmol)、THF20mlを加え、−78℃に冷却し撹拌した。これにn-ブチルリチウムヘキサン-THF溶液(0.16M)1.5mlを滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、1時間撹拌を続け、リチウム塩溶液を調整した。充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に四塩化チタン43.6mg(0.23mmol)、THF20mlを加え、室温で2時間撹拌した後、−78℃に冷却し、先のリチウム塩溶液を滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温し、同温度で3時間撹拌した後、これをグラスフィルターでろ過した。ろ液を5mlに濃縮し、n-ペンタン5mlを加え、生じた沈殿物をろ過した後、更に10mlのn-ペンタンで洗浄し減圧下で乾燥し、下記式(a-6)で表される化合物83mgを得た(収率62%)。
FD-質量分析:(M+)584
【0415】
【化152】
参考例2
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、式(a-6)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターでろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.05g得た。重合活性は21kg/mol-Ti・hrであった。
【0416】
合成例11
〈式(b-6)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に式(L6)で表される化合物200mg(0.23mmol)、THF20mlを加え、−78℃に冷却し撹拌した。これにn-ブチルリチウムヘキサン-THF溶液(0.16M)1.5mlを滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、1時間撹拌を続け、リチウム塩溶液を調整した。充分に乾燥し、アルゴン置換した30mlの反応器に四塩化ジルコニウム53.6mg(0.23mmol)、THF20mlを加え、室温で2時間撹拌した後、−78℃に冷却し、先のリチウム塩溶液を滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温し、同温度で3時間撹拌した後、これをグラスフィルターでろ過した。ろ液を5mlに濃縮し、n-ペンタン5mlを加え、生じた沈殿物をろ過した後、更に10mlのn-ペンタンで洗浄し減圧下で乾燥し、式(b-6)で表される化合物53mgを得た(収率37%)。
FD-質量分析:(M+)626
【0417】
【化153】
参考例3
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、式(d-6)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターでろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.12g得た。重合活性は42kg/mol-Zr・hrであった。
【0418】
合成例12
〈式(L7)で表される化合物の合成〉
アルゴン中、0.94mmol/mlのフェニルリチウム溶液(36ml:33.8mmol)と、塩化亜鉛(4.63g:34mmol)から調製したフェニル塩化亜鉛のTHF溶液(100ml)に、室温下アントラニル(2.0g:16.8mmol)/THF10ml溶液に滴下した。12時間撹拌した後、6Nの塩酸5ml、続いて10%NA2CO3水溶液50mlで反応を止めた。有機相を分離し、溶媒留去、カラム精製を行うことにより対応するホルミル体が黄色結晶で2.20g(11.2mmol)得られた(収率67%)。
【0419】
上述で得られたホルミル体0.79g(4.0mmol)とシクロヘキシルアミン1.0g(10.0mmol)で溶解し、室温で12時間撹拌を行った。混合液を減圧乾燥し、余分なシクロヘキシルアミンを除くことで式(L7)で表される化合物が黄色オイルで1.13g(4.0mmol)得られた(収率100%)。
【0420】
【化154】
1H-NMR(CDCl3):1.2-2.0(m,10H)3.19(dt,1H)6.7-7.4(m,9H)
8.43(s,1H)11.47(brs,1H)
【0421】
〈式(a-7)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L7)で表される化合物0.56g(2.0mmol)とジエチルエーテル10mlを仕込み、−78℃に冷却撹拌した。これにn-ブチルリチウム1.24ml(1.61Nヘキサン溶液、2.0mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくり室温まで昇温し、リチウム塩を調製した。この溶液を−78℃に冷却した0.5Nの四塩化チタン/デカン溶液2.0mlとジエチルエーテルの混合溶液に滴下した。この溶液を室温まで昇温し12時間撹拌した後、反応液を濾過、塩化メチレンで洗浄し、濾液を溶媒留去した。得られた固体をジエチルエーテル/ヘキサンで再沈させることで下記式(a-7)で表される化合物の赤茶色粉末が0.21g得られた(収率31%)。
【0422】
【化155】
1H-NMR(CDCl3):0.9-2.4(m,20H)3.3-3.6(m,2H)6.8-7.8(m,18H)
8.60(brs,2H)
【0423】
合成例13
〈式(b-7)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、式(L7)で表される化合物0.56g(2.0mmol)とジエチルエーテル5mlを仕込み、−78℃に冷却撹拌した。これにn-ブチルリチウム1.24ml(1.61Nヘキサン溶液、2.0mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくり室温まで昇温し、リチウム塩を調製した。この溶液を−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム/2THF錯体0.38g(1.0mmol)のTHF溶液に滴下した。この溶液を室温まで昇温し12時間撹拌した後、溶媒留去、得られた固体を塩化メチレンで洗浄及び濾過した。濾液を溶媒留去し、得られた固体をヘキサンリスラリーすることで下記式(b-7)で表される化合物のオレンジ色粉末が0.37g得られた(収率52%)。
【0424】
【化156】
1H-NMR(CDCl3):1.0-2.0(m,20H)3.7-3.98(m,2H)6.8-7.5(m,18H)
8.1-8.3(m,2H)
FD-MS(M+):716
【0425】
実施例18
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25ミリモル、引き続き、式(a-7)で表される化合物を0.005ミリモル加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を0.09g得た。
重合活性は40kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は11.0dl/gであった。
【0426】
実施例19
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25ミリモル、引続き式(a-7)で表される化合物を0.005ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.006ミリモル加え重合を開始した。
【0427】
常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で15分間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を0.15g得た。
重合活性は120kg/mol-Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は30.2dl/gであった。
【0428】
実施例20
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25ミリモル、引続き式(b-7)で表される化合物を0.005ミリモル加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を0.08g得た。
重合活性は30kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は16.9dl/gであった。
【0429】
実施例21
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25ミリモル、引続き式(b-7)で表される化合物を0.005ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.006ミリモル加え重合を開始した。
【0430】
常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で20分間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を0.33g得た。
重合活性は200kg/mol-Zr・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は9.44dl/gであった。
【0431】
合成例14
〈式(L8)で表される化合物の合成〉
窒素置換した50mlの反応器に水素化ナトリウム1.32g(60%in oil;33.0mmol)とDMF10mlを仕込み、氷冷下、3-t-ブチルサリチルアルデヒド5.63g(30.0mmol)のDMF5ml溶液をゆっくり滴下した。室温で30分撹拌後、ジメチルチオカルバモイルクロリド4.82g(39.0mmol)のDMF溶液を滴下した。この混合液を一晩室温で撹拌した後、水処理し、カラム精製することで5.39gの黄色固体を得た。
【0432】
上記黄色固体4.50gを窒素下130℃で熱処理することで、酸素原子と硫黄原子の交換反応が進行した。得られた固体をカラム精製した。これをエタノール30mlに溶解し、0.1mlの酢酸存在下、アニリン0.90g(9.68mmol)と室温で5.5時間反応させ、カラム精製することで、下記式(L8)で表される化合物の白色結晶が0.21g(0.62mmol)得られた(収率13%)。
【0433】
【化157】
1H-NMR(CDCl3):1.40(s,9H)3.01(s,3H)3.22(s,3H)
6.6-8.0(m,8H)8.38(s,1H)
【0434】
〈式(b-8)で表される化合物の合成〉
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、四塩化ジルコニウム/2THF錯体0.04g(0.11mmol)をTHF溶液5mlに溶解し、−78℃に冷却した。これに式(L8)で表される化合物0.11g(0.22mmol)のTHF5ml溶液を滴下した後、この溶液を室温まで昇温し、そのまま4日間撹拌した。溶媒留去、得られた固体を塩化メチレンで洗浄及び濾過した。ろ液を溶媒留去し、得られた固体をヘキサンリスラリーすることで式(b-8)で表される化合物の黄色粉末が得られた。
【0435】
【化158】
FD-MS(M+):698
【0436】
実施例22
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25ミリモル、引続き式(b-8)で表される化合物を0.005ミリモル加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.35g得た。
重合活性は140kg/mol-Zr・hであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は4.2dl/gであった。
【0437】
実施例23
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムを0.25ミリモル、引続き式(b-8)で表される化合物を0.005ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.006ミリモル加え重合を開始した。
【0438】
常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を0.30g得た。
重合活性は60kg/mol-Zr・hであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は9.2dl/gであった。
【0439】
合成例15
〈式(L9)で表される化合物の合成〉
充分に窒素置換した100mlの反応器に、エタノール10ml、2,6-ジメチルアニリン0.61g(5.00mmol)及び、1-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-1,3-ブタンジオン0.95g(3.3mmol)を装入し、モレキュラーシブス3Aを5g、及び酢酸1ml加えた後80℃に加熱し、3時間撹拌を続けた。この反応液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムで精製することで灰白色結晶の化合物を得た。この化合物をジエチルエーテルに溶解し、ジアゾメタンと反応させることで式(L9)で表される化合物を0.60g(1.48mmol)得た(収率43%)。
【0440】
【化159】
1H-NMR(CDCl3):1.2-1.4(m,18H)1.62(s,1H)2.11(s,3H)
2.30(s,3H)2.35(s,3H)2.92(dt,1H)
3.14(dt,2H)3.76(s,3H)5.40(s,1H)
7.00(s,2H)7.3-7.5(m,3H)
【0441】
〈式(c-9)で表される化合物の合成〉
充分にアルゴン置換した100mlの反応器に二塩化コバルト0.19g(1.50mmol)とTHF15mlを仕込み、室温下、化合物L9;0.60g(1.48mmol)のTHF10ml溶液を添加し1時間撹拌を行った。沈殿を濾別し、得られた固体を塩化メチレン・ジエチルエーテルで洗浄することで式(c-9)で表される茶色の粉末0.18gを得た(収率:23%)。
【0442】
【化160】
FD-MS(M+):535
【0443】
実施例24
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレープにトルエン250mlを装入し、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させる。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、式(c-9)で表される化合物を0.005mmol加え重合を開始する。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で60分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過するとポリエチレンが得られる。
【0444】
合成例10
〈式(L10)で表される化合物の合成〉
充分に窒素置換した200mlの反応器に、エタノール100ml、2,6-ジメチルアニリン5.32g(30.0mmol)及び、3-t-ブチルサリチルアルデヒド3.75g(20.0mmol)を装入し、酢酸0.5ml加えた後室温14時間撹拌を続けた。この反応液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムで精製することで黄色オイルの化合物を得た。この化合物をメタノールに溶解し、ジメチル硫酸と反応させることで式(L10)で表される化合物を5.95g(16.9mmol)得た(収率85%)。
【0445】
【化161】
1H-NMR(CDCl3):1.18(d,12H)1.49(s,9H)3.01(dt,1H)
3.95(s,3H)6.9-7.5(m,6H)8.29(s,1H)
【0446】
〈式(d-10)で表される化合物の合成〉
充分にアルゴン置換した100mlの反応器に二塩化鉄0.25g(2.0mmol)とTHF15mlを仕込み、室温下、式(L10)で表される化合物0.70g(2.0mmol)のTHF10ml溶液を添加し1時間撹拌を行った。沈殿を濾別し、得られた固体を塩化メチレン・ジエチルエーテルで洗浄することで式(c-9)で表される化合物の茶色の粉末0.09gを得た(収率:9%)。
【0447】
【化162】
FD-MS(M+):478
【0448】
実施例25
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレープにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させる。その後、トリイソプチルアルミニウム(TIBA)を0.25mmol、引続き式(d-10)で表される化合物を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.006mmol加え重合を開始する。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で1時間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止する。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過すると、ポリエチレンが得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製工程の一例を示す説明図である。
Claims (10)
- 下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A-1)と、
(B-1)有機アルミニウム化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)
からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒;
mは、1〜3の整数を示し、
Qは、窒素原子または置換基R2を有する炭素原子を示し、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R1〜R 5 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。) - 遷移金属化合物(A-1)が、上記一般式(I-a)においてR3とR4とが結合して芳香環を形成している、下記一般式(I-b)で表される遷移金属化合物である請求の範囲第2項に記載のオレフィン重合用触媒;
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R 5 と同義であり、
R1、R2 、R 5 およびR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。) - 遷移金属化合物(A-1)が、上記一般式(I)においてQが窒素原子であり、R3とR4とが結合して芳香環を形成している、下記一般式(I-c)で表される遷移金属化合物である請求の範囲第1項に記載のオレフィン重合用触媒;
R7〜R10は、上記一般式(I)中のR1〜R 5 と同義であり、
R1 、R 5 およびR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。) - 下記一般式(II)で表わされる遷移金属化合物(A-2)と、
(B-1)有機アルミニウム化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A-2)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)
からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒;
mは、1〜2の整数を示し、
Qは、窒素原子または置換基R2を有する炭素原子を示し、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R1〜R4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または炭化水素置換シリル基を示し、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。) - 下記一般式(II-b)で表わされる遷移金属化合物(A-2)と、
(B-1)有機アルミニウム化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)
からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒;
Mは、周期表第4族の遷移金属原子を示し、
Aはmが1のときはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、mが2以上のときにはA同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子、イオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子を示し、かつ少なくとも1個のAはイオウ原子、セレン原子または置換基R6を有する窒素原子であり、
R 6 〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4 と同義であり、
R1、R2およびR6〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R2同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。) - 下記一般式(II-c)で表される遷移金属化合物(A-2)と、
(B-1)有機アルミニウム化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)
からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒;
Mは、周期表第4族の遷移金属原子を示し、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
R7〜R10は、上記一般式(II)中のR1〜R4 と同義であり、
R1またはR 7 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R1同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。) - さらに担体(C)を含むことを特徴とする請求の範囲第1〜8項のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求の範囲第1ないし9項のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することを特徴とするオレフィンの重合方法。
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