JP4099968B2 - プロトン伝導体及び燃料電池、並びにプロトン伝導体の製造方法 - Google Patents

プロトン伝導体及び燃料電池、並びにプロトン伝導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン伝導体及び燃料電池、並びにプロトン伝導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大気汚染等の環境問題の観点から、燃料電池に対して大いに関心が集められている。大気汚染を出来る限り減らすために、自動車の排ガス対策が重要になっており、その対策の一つとして電気自動車が使用されているが、充電設備や走行距離などの問題で普及にいたっていない。これに対しては、燃料電池を使用した自動車が最も将来性があると期待され、より一層の高効率化、小型化の検討が必要とされている。
【0003】
このような自動車用動力源や携帯器具の電源に固体電解質を用いた燃料電池の研究が盛んに行われている。こうした固体電解質としては、ポリパーフルオロスルホン酸(デュポン社製のナフィオンなど)やポリモリブデン酸類などのプロトン伝導体が知られている。
【0004】
これらの高分子固体電解質は、湿潤状態に置かれると、常温付近で高いプロトン伝導性を示す。即ち、ポリパーフルオロスルホン酸を例にとると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合(水素結合)してプロトン化した水、つまりオキソニウムイオン(H3+)を生成し、このオキソニウムイオンの形態をとってプロトンが高分子マトリックス内を移動することができるので、この種のマトリックス材料は常温下でプロトン伝導効果を示す。
【0005】
しかしながら、この高分子固体電解質は、プロトン伝導が加湿状態でのみ発現するため、使用中において継続的に充分な湿潤状態に置かれることが必要である。従って、燃料電池等のシステムの構成には、加湿装置や各種の付随装置が要求され、装置の規模が大型化したり、システム構築のコストアップが避けられない。しかも、低温においては水の凍結が生じ、また高温においては水の蒸発によりプロトン伝導度が低下するという問題点がある。
【0006】
また、燃料電池の高効率化、小型化のためには、高分子固体電解質型の燃料電池では、プロトン伝導体薄膜はより薄く作製しなければならず、プロトン伝導体そのものの高機能化が一段と望まれている。一般に、上記した如き高分子固体電解質は、主鎖と側鎖をフッ素化して疎水性を持たせ、側鎖の先端にSO3H基のような、プロトン伝導に寄与する官能基を有する一次元ポリマーが用いられているが、このような一次元ポリマーは、導電性を向上させるために酸官能基の導入量を増やしすぎると、水に著しく膨潤し、もしくは可溶化してしまう。
【0007】
【発明に至る経過】
そこで、本出願人は、フラレノール及び硫酸水素エステル化フラレノールがプロトン伝導性を示すことを見出し、特願平11−204038号及び特願2000−058116号において新規なプロトン伝導体を提起した。この先願発明によるプロトン伝導体は、常温を含む広い温度域で用いることができ、その下限温度も特に高くはなく、しかも移動媒体としての水分を必要としないという、雰囲気依存性の小さなプロトン伝導体である。
【0008】
図18(A)及び(B)には、フラーレン分子C60やC70を示すが、先願発明では、これらのフラーレン分子を構成する炭素原子に、図19(A)のように複数の水酸基を付加した構造を持った化合物であるポリ水酸化フラーレン(通称「フラレノール(Fullerenol)」や、図19(B)のようにフラレノールの水酸基がスルホン基と置き換わった化合物であるポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルによって、プロトン伝導部を形成している(なお、図19中、○はフラーレン分子を簡略に示したものである)。
【0009】
このようなフラレノール又はその硫酸水素エステルは、フラーレン1分子中にOH基又はOSO3H基からなるプロトン解離性の基が多数導入されているため、水分が存在しなくてもプロトン伝導性を呈し、しかもプロトン伝導体としてプロトン移送サイトの体積当たりの数密度が多くなる。この場合、プロトン伝導性は、フラレノールよりも、スルホン基をフラーレン分子の構成炭素原子に導入した図19(B)のポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルの方が顕著となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フラレノール誘導体であるこうしたポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルは無加湿の条件下でも高いプロトン伝導性を示すが、水が存在する条件下では高温(特に85℃以上)で硫酸エステル部分が加水分解し易いことが分った。このため、水の存在下(これは、電池反応の結果として酸素極側に生成する水分も同様である。)、高温で使用すると、プロトン伝導度が低下し易いという問題点があることが判明した。
【0011】
本発明の目的は、水が存在していても、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で分解せず、また化学的にも安定であって長時間安定に高いプロトン伝導性を示すプロトン伝導体と、これを用いた燃料電池、並びにそのプロトン伝導体の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、三次元架橋構造をとることが可能であって酸官能基の導入量を増加しても水に対して可溶化することがなく、さらに高温における流動性も抑制され、耐熱性の向上が期待されるプロトン伝導体と、これを用いた燃料電池、並びにそのプロトン伝導体の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、酸性基を有する有機残基と、他の置換基 1 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなるプロトン伝導体であって、
一般式(I):
(Z 1 q −C m −(Y−X) p
但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 1 は他の置換基であって重合可能な活性基、m はフラーレン分子を形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置 換基数である。)
で表されるプロトン伝導体に係り、またこのプロトン伝導体からなるプロトン伝導部が、水素極と酸素極との間に配されている燃料電池に係るものである。以下、これらを本発明の第1のプロトン伝導体及び燃料電池と称する。
【0014】
本発明の第1のプロトン伝導体及び燃料電池によれば、プロトン伝導体において、スルホン酸基等のプロトン解離性の酸性基を有する有機残基がフラーレン分子 m に結合しているので、常温常湿(又は無加湿)の条件下でも、前記酸性基によって移送サイトが多くて高いプロトン伝導性を示すと共に、この酸性基をフラーレン分子 m に結合する有機残基は加水分解等の分解を受け難いために、水が存在していても酸性基が分解を生じることなしにフラーレン分子 m に保持され、高いプロトン伝導性を長時間保持することができる。
【0015】
しかも、フラーレン分子 m に結合した前記置換基 1 、特に重合可能な活性基の存在によって、この置換基を介してフラーレン分子を重合体中に結合させる(特に三次元架橋構造を形成する)ことが可能となる。こうした重合体化によって、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で分解が生起せず、高温における流動性が抑制され、化学的にも安定であり、また、前記酸性基の導入量を増加させても水に対して不溶な三次元架橋構造をとることが可能となり、燃料電池の稼動時に存在若しくは生成する水に対して溶け出すことがなく、従って、長時間安定して高いプロトン伝導性を示すようになる。
本発明の第1のプロトン伝導体を製造するに際し、前記酸性基Xがスルホン酸基である場合には、
還元剤の存在下でフラーレン分子C m にスルトンを反応させる第1工程と、
この反応生成物中のフラーレン分子C m に前記他の置換基Z 1 を置換導入する第2工程
を含む、プロトン伝導体の製造方法を採用するのがよい
【0016】
本発明はまた、酸性基を有する有機残基Yと、他の置換基又は有機残基 2 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなる下記一般式( II )で表される単量体成分を有し、前記他の置換基又は有機残基 2 を介して前記フラーレン分子 m が重合体中に結合してなるプロトン伝導体を提供し、またこのプロトン伝導体からなるプロトン伝導部が、水素極と酸素極との間に配されている燃料電池を提供するものである。以下、これらを本発明の第2のプロトン伝導体及び燃料電池と称する。
一般式( II ):
−(Z 2 q −C m −(Y−X) p
但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 2 は複数のフラーレン分子C m を結合する他の置 換基又は有機残基であって重合可能な活性基に由来する基、mはフラーレン分子を 形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置換基数である。)
【0017】
本発明の第2のプロトン伝導体及び燃料電池によれば、プロトン伝導体において、スルホン酸基等のプロトン解離性の酸性基を有する有機残基がフラーレン分子 m に結合しているので、本発明の第1のプロトン伝導体及び燃料電池と同様に、常温常湿(又は無加湿)の条件下でも、前記酸性基によって移送サイトが多くて高いプロトン伝導性を示すと共に、この酸性基をフラーレン分子 m に結合する有機残基は加水分解等の分解を受け難いために、水が存在していても酸性基が分解を生じることなしにフラーレン分子 m に保持され、高いプロトン伝導性を長時間保持することができる。
【0018】
しかも、フラーレン分子 m に結合した前記他の置換基又は有機残基 2 を介してフラーレン分子 m が重合体中に結合している(特に三次元架橋構造を形成している)ので、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で分解が生起せず、高温における流動性が抑制され、化学的にも安定であり、また、前記酸性基の導入量を増加させても水に対して不溶な三次元架橋構造をとることが可能となり、燃料電池の稼動時に存在若しくは生成する水に対して溶け出すことがなく、従って、長時間安定して高いプロトン伝導性を示すものとなる。
本発明の第2のプロトン伝導体を製造するに際し、前記酸性基Xがスルホン酸基である場合には、
還元剤の存在下でフラーレン分子C m にスルトンを反応させる第1工程と、
この反応生成物中のフラーレン分子C m に前記他の置換基又は有機残基Z 2 となる活性 基を置換導入する第2工程と、
この置換導入後に、前記他の置換基又は有機残基Z 2 を介して複数のフラーレン分子 m を結合させる第3工程と
を含む、プロトン伝導体の製造方法を採用するのがよい
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の第1及び第2のプロトン伝導体及び燃料電池において、前記有機残基Y又はZ 2 は、炭素数が1〜20であるのがよく、N、O、P、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、前記有機残基がフラーレン1分子に対し2〜14個結合し、前記他の置換基又は有機残基Z 1 又はZ 2 がフラーレン1分子に対し1個以上結合しているのがよい。
【0020】
また、前記酸性基が、スルホン酸基、カルボキシル基又はリン酸基等のプロトン解離性の基であるのがよい。
【0021】
また、前記他の置換基 1 又はZ 2 が、C、N、O、P、S、F、Cl、Br、I等のヘテロ原子を含む官能基、又はスルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、リン酸基等の、活性水素を有する重合可能な活性置換基であるのがよい。
【0022】
そして、前記他の置換基 2 がポリイソシアネート等の架橋剤によって架橋されたり、前記有機残基 2 によって前記フラーレン分子が架橋されるのがよい。
【0023】
また、前記フラーレン分子は、具体的には、球状炭素分子Cm(m=36、60、70、76、78、80、82、84等の、球状分子を形成しうる自然数)からなっている。
【0024】
なお、本発明の第1及び第2のプロトン伝導体の製造方法において、具体的には、前記第1工程での前記還元剤としてアルカリ金属塩を用い、前記第2工程によって得られた生成物をイオン交換処理し、また前記第3工程において、前記他の置換基又は有機残基Z 2 によって前記複数のフラーレン分子C m を、架橋剤を介して或いは架橋剤なしで結合させる。
【0025】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に説明する。
【0026】
図1に例示するように、一般式(I)で表される本発明のプロトン伝導体としてのフラーレン誘導体は、有機残基(−Y−又は−R1−)を介してスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等のプロトン解離性の酸性置換基(X)、例えばスルホン酸基(−SO3H)が、また活性置換基(−Z:上述した−Z 1 )、例えば水酸基が、フラーレン分子C60にそれぞれ放射状に化学的に結合した一般式(1)で表されるフラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸である。このプロトン伝導体は、上記した理由から、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で高いプロトン伝導度(以下、イオン伝導度又はイオン伝導率と記すことがある。)を示し、水が存在していても加水分解されない化学的にも安定なプロトン伝導性(以下、イオン伝導性と記すことがある。)化合物である。
【0027】
一般式(I)及び(1)において、p(置換基数)は、p≧1であって特に制限はないが、好ましくは2〜14であり、例えば2〜6である。このpが少ないと、イオン伝導率が低くなる傾向にあり、またpが多い場合には、Z又はOH基の数qが減って架橋性が乏しくなる。また、q(置換基数)は1以上、例えば2〜4であり、これが少ないと、架橋性が乏しくなり、また多いと、pが減ってイオン伝導性が低下し易い。これらのp、qが多すぎる化合物は立体障害が生じるので、合成が困難である。
【0028】
また、一般式(I)及び(1)中のY及びR1は、炭素数1〜20の全ての有機残基を表す。この炭素数が1〜2の化合物は、溶媒に対する溶解が困難であり、例えばイオン交換時の溶媒溶解性が乏しくなり、また炭素数が5以上の化合物は、合成が困難となる傾向があり、酸性基密度が低下するので、炭素数が1〜4、特に3又は4が好ましい。そして、炭素数が20を超えると、有機残基がバルキーであって酸性基によるイオン伝導性に悪影響がある。
【0029】
このY及びR1を例示すると、鎖状又は分岐状のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、プロピレン基)、芳香族基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)が挙げられる。このこのY及びR1は、N、O、P、Sのようなヘテロ原子を含んでいてもよい(例えば、オキシ基、カルボニル基、チオ基、チオカルボキシル基、スルフィニル基、スルホン基、イミノ基、アゾ基、ホスホン基などを挙げることができる)。
【0030】
また、一般式(I)及び(1)中の活性置換基Zは、無置換体であってよく、N、O、P、S、F、Cl、Br、Iのようなヘテロ原子を含む官能基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、フッ素基、クロロ基、メトキシ基、メチルチオ基などが挙げられる。
【0031】
また、Zが活性置換基(例えば、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、リン酸基のような置換基のように活性水素を有する活性官能基)であり、これと架橋剤(ポリイソシアネート系、ジハロゲン系、ジオール系、ジチオール系、エポキシ系、ジアジド系、ジカルボン酸系など)とにより三次元架橋ポリマー化され、水に対して不溶体になることができる。
【0032】
図1に示す化合物(フラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸)を合成する反応は、例えば図2に示すように、導入したいアルキルスルホン酸基の数に応じて、フラーレンに対し2〜30当量の還元剤(例えばアルカリ金属ナフタレニド)及びスルホン化剤(例えばアルキルスルトン)を用いる。この反応では、R1を介して導入された例えばSO3Naを有するフラーレンのNaOH、(R24NOHによる処理及びイオン交換により、−SO3Naをスルホン酸基とし、かつフラーレン分子にOH基を導入する。良好なイオン伝導性を実現するために、好ましくは15〜30当量の還元剤及びスルホン化剤を必要とする。このうち、10当量未満の場合は、導入されるスルホン酸基の数(p)が少なくなり、またpが15を超えると、目的物は殆ど得られず、これ以上の過剰の反応剤は、製造コストの観点からも不必要である。
【0033】
還元剤としては、後述の実施例に示すようなアルカリ金属ナフタレニド(アルカリ金属は、Li、Na等、以下、同様)、アルカリ金属ジターシャルビフェニル等の還元試薬を用いてよく、これ以外にも、電極から供給する電子の還元作用を用いる電気化学的方法を採用してもよい。
【0034】
一般式(1)の化合物は、重量平均で15%程度の水分子を結晶水として強固に取り込んでいることがあり、この結晶水は100℃程度の高温かつ10-6Torrの高真空下においても脱離しない。即ち、この化合物は、これらの結晶水とスルホン酸基からなるプロトン伝導チャネルをバルク固体として形成するため、常温を含む広い温度範囲にわたって高いイオン伝導性を具現するものである。この化合物は、乾燥環境下でも良好なイオン伝導性を示すが、加湿条件下では、水の存在によってさらに高いイオン伝導を実現することができる。
【0035】
図3に一般式(II)で表される化合物は、本発明の他のプロトン伝導体として、フラーレン分子を重合体(ポリマー)中に結合してなるものである。この化合物は、上記の一般式(1)の化合物と同様に、重合体の単量体成分を構成するフラーレン分子に有機残基(−Y−又は−R1−)を結合しているので、上記したと同様の理由から、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で高いプロトン伝導度(イオン伝導度を示し、水が存在していても加水分解されない化学的にも安定なプロトン伝導性(イオン伝導性化合物である。なお、この化合物における上記有機残基(−Y−又は−R1−)は、上記したものと同じである。
【0036】
そして、一般式(II)及び(2)の化合物は、重合体として、フラーレン分子が置換基又は有機残基(R3 :上述したZ 2 )を介してポリマー鎖に結合されているが、その基は上記した一般式(I)中のZと同様の活性置換基に由来するものであって架橋剤(ポリイソシアネート系、ジハロゲン系、ジオール系、ジチオール系、エポキシ系、ジアジド系、ジカルボン酸系など)により三次元架橋ポリマー化され、水に対して不溶体になっている。ポリイソシアネート(OCN−R4−NCO)を用いる場合を一般式(2)に示す。
【0037】
或いは、R3はフラーレン分子を直接架橋させるものであってよく、炭素数〜20の全ての有機残基を含み、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基)や、N、O、P、Sのようなヘテロ原子を含んでもかまわない。例えば、オキシ基、カルボニル基、チオ基、チオカルボキシル基、スルフィニル基、スルホン基、イミノ基、アゾ基、ホスホン基などを挙げることができる。
【0038】
また、上記の架橋骨格に、C、N、O、P、Sのようなヘテロ原子を含む置換基を有してもかまわない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、アリール基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メルカプト基、メチルチオ基、チオアセチル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、スルホン酸基、メシル基、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、フェニルアゾ基、リン酸基などを挙げることができる。
【0039】
また、一般式(II)及び(2)において、p及びqは上記したものと同じであるが、r(重合度)は3以上であるのが好ましい。
【0040】
図3に示す化合物(フラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸のポリマー)の合成反応を例えば図4に示す。途中までの反応は図2のものと同様に行うが、得られたフラーレンポリヒドロキシルアルキルスルホン酸を下記構造のポリイソシアネートと反応させてウレタンポリマー化することができる。
【0041】
【化1】
ポリイソシアネート:
Figure 0004099968
【0042】
上記した一般式(I)及び(II)の本発明の化合物はいずれも、プロトン伝導体として、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で高いイオン伝導性を示し、また化学的にも安定なイオン伝導性化合物である。特に、一般式(II)の化合物は、フラーレン分子が重合体中に結合されているので、その架橋構造によって耐水性が向上し、長時間安定して高いプロトン伝導性を示すものである。
【0043】
図5(A)には、上記フラーレン誘導体(例えばフラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸又はそのウレタンポリマー)をプロトン伝導体として用いた燃料電池の一具体例を示す。この燃料電池は、触媒2a及び3aをそれぞれ密着若しくは分散させた互いに対向した端子8及び9付きの負極(燃料極又は水素極)2及び正極(酸素極)3を有し、これらの両極間にプロトン伝導部1が挟着されている。
【0044】
使用時には、負極2側では導入口12から水素が供給され、排出口13(これは設けないこともある。)から排出される。燃料(H2)14が流路15を通過する間にプロトンを発生し、図5(B)に示すように、このプロトンはプロトン伝導部1で発生したプロトンとともに正極3側へ移動し、そこで導入口16から流路17に供給されて排気口18へ向かう酸素(又は空気)19と反応し、これにより所望の起電力が取り出される。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0046】
実施例1
<フラーレンポリプロピルスルホン酸の合成>
【0047】
【化2】
Figure 0004099968
【0048】
この合成は、文献(Y.Chi, J.B.Bhonsle, T.Canteenwala, J.-P.Hung, J.Shiea, B.-J.Chen and L.Y.Chiang, Chem.Lett.,1998,465.)を参考にして行った。フラーレンの粉末2gのジメトキシエタン溶液に、予め調製しておいたナトリウムナフタレニドのジメトキシエタン溶液を30当量加え、室温にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した。しかる後、反応溶媒を氷浴で冷やし、1,3−プロパンスルトンを30当量加えた後、50℃で4時間撹拌した。
【0049】
メタノールを加えて反応を止め、濾過して沈澱物を集めた。得られた沈澱物をメタノールで充分洗浄した。
【0050】
こうして得られた粉末を純水に溶かし、イオン交換カラムに通してスルホン酸化し、エバポレーターで水を除去した後に、真空乾燥した。
【0051】
このようにして得られた黒色の粉末のFT−IR(図6)及びTOF−MS(図7)測定を行ったところ、フラーレンポリプロピルスルホン酸であることが確認された(図7中のpは、導入されたプロピルスルホン酸基の数を表している)。
【0052】
次に、このフラーレンポリプロピルスルホン酸の粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0053】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて1×10-3Scm-1、50℃にて7×10-3Scm-1、85℃にて1×10-2Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて1×10-2Scm-1であった。
【0054】
<フラーレンポリヒドロキシプロピルスルホン酸の合成>
【化3】
Figure 0004099968
【0055】
上記したイオン交換前の沈澱物(フラーレンポリプロピルスルホン酸ナトリウム)1gを水酸化ナトリウム水溶液(1g/1ml)20mlに加えて溶かし、ここにテトラターシャルブチルアンモニウムヒドロキシドを3滴加え、2時間撹拌し、さらに30mlの水を加え、12時間撹拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノールを加えると、沈澱物が析出した。これをろ過し、固体成分をさらにメタノールで3回洗った後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒は水)を用いて、水酸化ナトリウムを完全に除去した。
【0056】
得られた粉末を純水に溶解し、イオン交換カラムに通し、エバポレーターで水を除去した後に、40℃で12時間乾燥した。このようにして得られた黒色の粉末のFT−IR(図8)測定を行ったところ、フラーレンポリヒドロキシプロピルスルホン酸であることが確認された。
【0057】
次に、このフラーレンポリヒドロキシプロピルスルホン酸の粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0058】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて7×10-3Scm-1、50℃にて8×10-3Scm-1、85℃にて9×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて9×10-3Scm-1であった。
【0059】
実施例2
<フラーレンポリブチルスルホン酸の合成>
【0060】
【化4】
Figure 0004099968
【0061】
この合成も、文献(Y.Chi, J.B.Bhonsle, T.Canteenwala, J.-P.Hung, J.Shiea, B.-J.Chen and L.Y.Chiang, Chem.Lett.,1998,465.)を参考にして行った。フラーレンの粉末2gのジメトキシエタン溶液に、予め調製しておいたナトリウムナフタレニドのジメトキシエタン溶液を20当量加え、室温にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した。反応溶液を氷浴で冷やし、1,4−ブタンスルトンを30当量加えた後、50℃で4時間撹拌した。
【0062】
メタノールを加えて反応を止め、濾過して沈澱物を集めた。更に、濾液を濃縮してメタノールを加え、再沈澱させ、濾過して沈澱物を集めた。得られた沈澱物をメタノールで充分洗浄した。
【0063】
こうして得られた粉末を純水に溶かし、イオン交換カラムに通し、エバポレーターで水を除去した後に、真空乾燥した。
【0064】
このようにして得られた黒色の粉末のFT−IR(図9)及びTOF−MS(図10)測定を行ったところ、フラーレンポリブチルスルホン酸であることが確認された(図10中のpは、導入されたブチルスルホン酸基の数を表している)。
【0065】
次に、このフラーレンポリブチルスルホン酸の粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0066】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて1×10-3Scm-1、50℃にて7×10-3Scm-1、85℃にて1×10-2Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて1×10-2Scm-1であった。
【0067】
<フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸の合成>
【0068】
【化5】
Figure 0004099968
【0069】
上記したイオン交換前の沈澱物(フラーレンポリブチルスルホン酸ナトリウム)1gを水酸化ナトリウム水溶液(1g/1ml)20mlに加えて溶かし、ここにテトラターシャルブチルアンモニウムヒドロキシドを3滴加え、2時間撹拌し、さらに30mlの水を加え、12時間撹拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノールを加えると、沈澱物が析出した。これをろ過し、固体成分をさらにメタノールで3回洗った後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒は水)を用いて、水酸化ナトリウムを完全に除去した。
【0070】
得られた粉末を純水に溶解し、イオン交換カラムに通し、エバポレーターで水を除去した後に、40℃で12時間乾燥した。このようにして得られた黒色の粉末のFT−IR(図11)測定を行ったところ、フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸であることが確認された。
【0071】
次に、このフラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸の粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0072】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて5×10-3Scm-1、50℃にて7×10-3Scm-1、85℃にて9×10-3Scm1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて8×10-3Scm-1であった。
【0073】
なお、本実施例において、上記のフラーレンポリブチルスルホン酸の合成条件を下記の表1に示すように種々に変えた以外は上記と同様にして、目的物を得た。
【0074】
【表1】
Figure 0004099968
【0075】
これらの結果から、合成条件で得られた目的物のTOF−MSスペクトルを図12〜図16にそれぞれ示すが、これらの結果を図10の結果と併せて考察すると、加えるナトリウムナフタレニド及び1,4−ブタンスルトンの当量を増やした方が置換基数は増えること、温度は室温より高いのがよいが、50℃が最も適していること、反応溶媒はジメトキシエタンより極性が高いテトラヒドロフランが適していることがそれぞれ分る。
【0076】
実施例3
<フラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸の合成>
【0077】
【化6】
Figure 0004099968
【0078】
フラレノール2g(フラレノールの合成は、Long Y.Chiang, Lee-Yih Wang, John W.Swirczewski, Stuart Soled, and Steve Cameron, J.Org. Chem. 1994,59,3960のとおりに実施した。)と、水素化ナトリウム4.0gとに、脱水したテトラヒドロフランを溶媒として100ml加え、窒素下60℃で2時間撹拌した。その後、テトラヒドロフラン50mlに溶解した1,4−ブタンスルトンを滴下し、更に窒素下、60℃で20時間反応させた。
【0079】
メタノールを加えて反応を終了させ、濾過にて沈澱物を回収した。その沈澱物をメタノール、ヘキサンを用いて十分洗浄し、12時間真空乾燥した。
【0080】
得られた粉末を純水に溶解し、イオン交換カラムに通し、エバポレーターで水を除去した後に、40℃で12時間、真空乾燥した。
【0081】
このようにして得られた黒色の粉末のFT−IR(図17)測定を行ったところ、フラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸であることが確認された。元素分析により、オキシブチルスルホン酸基の導入量(p)はフラーレン1分子に対して平均4であった。
【0082】
次に、このフラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸の粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0083】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて6×10-4Scm-1、50℃にて4×10-3Scm-1、85℃にて8×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて8×10-3Scm-1であった。
【0084】
実施例4
<フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸のウレタンポリマー化>
【0085】
【化7】
Figure 0004099968
【0086】
フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸の粉末0.3gを秤量し、純水0.4gに十分に溶解させた後、ポリイソシアネート:アクアネート200(日本ポリウレタン(株)製)0.15gを添加し、遠心撹拌機で3分撹拌してペーストを作成した。
【0087】
このペーストを20μm厚のポリテトラフルオロエチレン(デュポン社製商品名:テフロン:以下、同様)シート上で、150μmギャップのドクターブレードを用いて塗布し、塗布後のシートを80℃の環境下で48時間乾燥させた後、テフロンシートより塗膜を剥離して、フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸のウレタンポリマー化フィルムを得た。膜厚は26μmであった。
【0088】
得られたフィルムを直径15mmに打ち抜き、複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて5×10-4Scm-1、50℃にて2×10-3Scm-1、85℃にて6×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて6×10-3Scm-1であった。
【0089】
実施例5
<フラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸のウレタンポリマー化>
【0090】
【化8】
Figure 0004099968
【0091】
フラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸の粉末0.3gを秤量し、純水0.4gに十分に溶解させた後、ポリイソシアネート:アクアネート200(日本ポリウレタン(株)製)0.15gを添加し、遠心撹拌機で3分撹拌してペーストを作成した。
【0092】
このペーストを20μm厚のテフロンシート上で、150μmギャップのドクターブレードを用いて塗布し、塗布後のシートを80℃の環境下で48時間乾燥させた後、テフロンシートより塗膜を剥離して、フラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸のウレタンポリマー化フィルムを得た。膜厚は26μmであった。
【0093】
得られたフィルムを直径15mmに打ち抜き、複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて5×10-4Scm-1、50℃にて3×10-3Scm-1、85℃にて6×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて7×10-3Scm-1であった。
【0094】
実施例6
<フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸のポリビニルアルコールのウレタン架橋ポリマー化>
【0095】
【化9】
Figure 0004099968
【0096】
フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸の粉末0.3gを秤量し、純水0.4gに十分に溶解させた後、ポリビニルアルコール(PVA)0.05g、ポリイソシアネート:アクアネート200(日本ポリウレタン(株)製)0.10gを添加し、遠心撹拌機で3分撹拌してペーストを作成した。
【0097】
このペーストを20μm厚のテフロンシート上に、150μmギャップのドクターブレードを用いて塗布し、塗布後のシートを80℃の環境下で48時間乾燥させた後、テフロンシートより塗膜を剥離して、フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸のPVAウレタン架橋フィルムを得た。膜厚は28μmであった。
【0098】
得られたフィルムを直径15mmに打ち抜き、複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて4×10-4Scm-1、50℃にて1×10-3Scm-1、85℃にて5×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて5×10-3Scm-1であった。
【0099】
実施例7
<フラーレンポリブチルスルホン酸ポリアミンのウレア架橋ポリマー化>
【0100】
【化10】
Figure 0004099968
【0101】
フラーレンポリブチルスルホン酸ポリアミンの粉末0.3gを秤量し、純水0.4gに十分に溶解させた後、ポリイソシアネート:アクアネート200(日本ポリウレタン(株)製)0.15gを添加し、遠心撹拌機で3分撹拌してペーストを作成した。
【0102】
このペーストを20μm厚のテフロンシート上で、150μmギャップのドクターブレードを用いて塗布し、塗布後のシートを80℃の環境下で48時間乾燥させた後、テフロンシートより塗膜を剥離して、フラーレンポリブチルスルホン酸ポリアミンのウレア架橋フィルムを得た。膜厚は27μmであった。
【0103】
得られたフィルムを直径15mmに打ち抜き、複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度60%の雰囲気にて測定すると、20℃にて5×10-4Scm-1、50℃にて1×10-3Scm-1、85℃にて5×10-3Scm-1であった。同試料を湿度100%の雰囲気にて測定すると、85℃にて5×10-3Scm-1であった。
【0104】
実施例8
<フラーレンポリブチルスルホン酸のクロスカップリングポリマーの合成>
【0105】
【化11】
Figure 0004099968
【0106】
フラーレンポリブチルスルホン酸ナトリウムの粉末1gのジメトキシエタン溶液に、予め調製しておいたナトリウムナフタレニドのジメトキシエタン溶液を5当量加え、室温にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した後、1,12−ジブロモドデカンを4当量加え、さらに室温にて窒素雰囲気下で12時間撹拌した。
【0107】
メタノールを加えて反応を止め、濾過して沈澱物を集めた。これによって得られた沈澱物を塩酸処理して、目的の化合物を得た。得られた化合物は水に対して不溶性であった。
【0108】
次に、このフラーレンポリブチルスルホン酸のクロスカップリングポリマーの粉末80mgを測りとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方向に、約5トン/cm2でプレスした。
【0109】
こうして作成したペレットを用いて複素インピーダンスプロットを作成し、イオン伝導度を測定した。同試料を湿度90%の雰囲気にて測定すると、20℃にて1.6×10-4Scm-1、50℃にて7×10-3Scm-1、85℃にて7×10-3Scm-1、95℃にて1×10-2Scm-1であった。
【0110】
【発明の効果】
本発明は、上述したように、プロトン伝導体において、スルホン酸基等のプロトン解離性の酸性基を有する2価の有機残基がフラーレン分子 m に結合しているので、常温常湿(又は無加湿)の条件下でも、前記酸性基によって移送サイトが多くて高いプロトン伝導性を示すと共に、この酸性基をフラーレン分子 m に結合する有機残基は加水分解等の分解を受け難いために、水が存在していても酸性基が分解を生じることなしにフラーレン分子 m に保持され、高いプロトン伝導性を長時間保持することができる。
【0111】
しかも、フラーレン分子 m に結合した前記他の置換基又は有機残基Z 1 又はZ 2 の存在によって、この他の置換基又は有機残基を介してフラーレン分子 m を重合体中に結合させる(特に三次元架橋構造を形成する)ことが可能となるか、或いは結合させているので、こうした重合体化によって、常温を含む広い温度範囲(少なくとも0℃〜130℃)で分解が生起せず、高温における流動性が抑制され、化学的にも安定であり、また、前記酸性基の導入量を増加させても水に対して不溶な三次元架橋構造をとることが可能となり、燃料電池の稼動時に存在若しくは生成する水に対して溶け出すことがなく、従って、長時間安定して高いプロトン伝導性を示すことになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づくフラーレン誘導体、例えばフラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸の化学構造を示す概略図である。
【図2】同、フラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸の合成スキームを示す概略図である。
【図3】本発明に基づく他のフラーレン誘導体のポリマー、例えばフラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸のウレタンポリマーの化学構造を示す概略図である。
【図4】同、フラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸のウレタンポリマーの合成スキームを示す概略図である。
【図5】本発明に基づく例えばフラーレンポリヒドロキシアルキルスルホン酸又はそのポリマーをプロトン伝導体として用いた一実施の形態による燃料電池の概略断面図(A)と動作原理図(B)である。
【図6】本発明の実施例で得られたフラーレンポリプロピルスルホン酸のFT−IRの測定結果を示すスペクトル図である。
【図7】同、フラーレンポリプロピルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図8】同、フラーレンポリヒドロキシプロピルスルホン酸のFT−IRの測定結果を示すスペクトル図である。
【図9】本発明の他の実施例で得られたフラーレンポリブチルスルホン酸のFT−IRの測定結果を示すスペクトル図である。
【図10】同、フラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図11】同、フラーレンポリヒドロキシブチルスルホン酸のFT−IRの測定結果を示すスペクトル図である。
【図12】同、他のフラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図13】同、他のフラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図14】同、他のフラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図15】同、他のフラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図16】同、更に他のフラーレンポリブチルスルホン酸のTOF−MSの測定結果を示すスペクトル図である。
【図17】本発明の更に他の実施例で得られたフラーレンポリヒドロキシオキシブチルスルホン酸のFT−IRの測定結果を示すスペクトル図である。
【図18】フラーレン分子の構造図である。
【図19】フラーレン誘導体の一例であるポリ水酸化フラーレン(A)とその硫酸水素エステル(B)をプロトン伝導体に用いる例の概略図である。
【符号の説明】
1…プロトン伝導部、2…第1極(水素極)、2a…触媒、
3…第2極(酸素極)、3a…触媒、14…水素、19…酸素(又は空気)

Claims (20)

  1. 酸性基を有する有機残基と、他の置換基 1 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなるプロトン伝導体であって、
    一般式(I):
    (Z 1 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 1 は他の置換基であって重合可能な活性基、m はフラーレン分子を形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置 換基数である。)
    で表されるプロトン伝導体
  2. 酸性基を有する有機残基と、他の置換基又は有機残基 2 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなる下記一般式( II )で表される単量体成分を有し、前記他の置換基又は有機残基 2 を介して前記フラーレン分子 m が重合体中に結合してなるプロトン伝導体。
    一般式( II ):
    −(Z 2 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 2 は複数のフラーレン分子C m を結合する他の置 換基又は有機残基であって重合可能な活性基に由来する基、mはフラーレン分子を 形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置換基数である。)
  3. 前記有機残基Y又はZ 2 の炭素数が1〜20である、請求項1又は2に記載したプロトン伝導体。
  4. 前記有機残基がフラーレン1分子に対して2〜14個結合し、前記他の置換基又は有機残基Z 1 又はZ 2 がフラーレン1分子に対して1個以上結合している、請求項1又は2に記載したプロトン伝導体。
  5. 前記酸性基が、スルホン酸基、カルボキシル基又はリン酸基等のプロトン解離性の基である、請求項1又は2に記載したプロトン伝導体。
  6. 前記他の置換基 1 又はZ 2 が、ヘテロ原子を含む官能基、又は活性水素を有する活性置換基である、請求項1又は2に記載したプロトン伝導体。
  7. 前記他の置換基 2 が架橋剤によって架橋され、或いは、前記有機残基Z 2 によって前記フラーレン分子が架橋されている、請求項2に記載したプロトン伝導体。
  8. 前記フラーレン分子が球状炭素分子Cm(m=36、60、70、76、78、80、82、84等の、球状分子を形成しうる自然数)からなる、請求項1又は2に記載したプロトン伝導体。
  9. 酸性基を有する有機残基と、他の置換基 1 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなるプロトン伝導体であって
    一般式(I):
    (Z 1 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 1 は他の置換基であって重合可能な活性基、m はフラーレン分子を形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置 換基数である。)
    で表されるプロトン伝導体からなるプロトン伝導部が、水素極と酸素極との間に配されている燃料電池
  10. 酸性基を有する有機残基と、他の置換基又は有機残基 2 とがフラーレン分子 m にそれぞれ結合してなる下記一般式( II )で表される単量体成分を有し、前記他の置換基又は有機残基 2 を介して前記フラーレン分子 m が重合体中に結合してなるプロトン伝導体からなるプロトン伝導部が、水素極と酸素極との間に配されている燃料電池
    一般式( II ):
    −(Z 2 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 2 は複数のフラーレン分子C m を結合する他の置 換基又は有機残基であって重合可能な活性基に由来する基、mはフラーレン分子を 形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置換基数である。)
  11. 前記有機残基Y又はZ 2 の炭素数が1〜20である、請求項又は10に記載した燃料電池
  12. 前記有機残基がフラーレン1分子に対して2〜14個結合し、前記他の置換基又は有機残基Z 1 又はZ 2 がフラーレン1分子に対して1個以上結合している、請求項又は10に記載した燃料電池
  13. 前記酸性基が、スルホン酸基、カルボキシル基又はリン酸基等のプロトン解離性の基である、請求項又は10に記載した燃料電池
  14. 前記他の置換基 1 又はZ 2 が、ヘテロ原子を含む官能基、又は活性水素を有する活性置換基である、請求項又は10に記載した燃料電池
  15. 前記他の置換基 2 が架橋剤によって架橋され、或いは、前記有機残基Z 2 によって前記フラーレン分子が架橋されている、請求項10に記載した燃料電池
  16. 前記フラーレン分子が球状炭素分子Cm(m=36、60、70、76、78、80、82、84等の、球状分子を形成しうる自然数)からなる、請求項又は10に記載した燃料電池
  17. 酸性基Xを有する有機残基Yと、他の置換基Z 1 とがフラーレン分子C m にそれぞれ結合してなるプロトン伝導体であって、
    一般式(I):
    (Z 1 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 1 は他の置換基であって重合可能な活性基、m はフラーレン分子を形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置 換基数である。)
    で表されるプロトン伝導体を製造するに際し、前記酸性基Xがスルホン酸基である場合には、
    還元剤の存在下でフラーレン分子C m にスルトンを反応させる第1工程と、
    この反応生成物中のフラーレン分子C m に前記他の置換基Z 1 を置換導入する第2工程
    を含む、プロトン伝導体の製造方法。
  18. 酸性基Xを有する有機残基Yと、他の置換基又は有機残基Z 2 とがフラーレン分子C m にそれぞれ結合してなる下記一般式( II )で表される単量体成分を有し、前記他の置換基又は有機残基Z 2 を介して前記フラーレン分子C m が重合体中に結合してなるプロトン伝導体を製造するに際し、前記酸性基Xがスルホン酸基である場合には、
    還元剤の存在下でフラーレン分子C m にスルトンを反応させる第1工程と、
    この反応生成物中のフラーレン分子C m に前記他の置換基又は有機残基Z 2 となる活性 基を置換導入する第2工程と、
    この置換導入後に、前記他の置換基又は有機残基Z 2 を介して複数のフラーレン分子 m を結合させる第3工程と
    を含む、プロトン伝導体の製造方法。
    一般式( II ):
    −(Z 2 q −C m −(Y−X) p
    但し、C m はフラーレン分子、Yはフッ素原子を含まない2価の有機残基、Xは プロトン解離性の1価の酸性基、Z 2 は複数のフラーレン分子C m を結合する他の置 換基又は有機残基であって重合可能な活性基に由来する基、mはフラーレン分子を 形成しうる自然数、p及びqはフラーレン分子C m に対する置換基数である。)
  19. 前記第1工程での前記還元剤としてアルカリ金属塩を用い、前記第2工程によって得られた生成物をイオン交換処理する、請求項17又は18に記載したプロトン伝導体の製造方法。
  20. 前記第3工程において、前記他の置換基又は有機残基Z 2 によって前記複数のフラーレン分子C m を、架橋剤を介して或いは架橋剤なしで結合させる、請求項18に記載したプロトン伝導体の製造方法。
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