JP2005050628A - イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイス - Google Patents

イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】 水分の補給が不要であり、乾燥雰囲気中や比較的広い温度領域でも使用することができ、しかもプロトン伝導率の向上を図ることができるイオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスを提供すること。
【解決手段】 フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を有する、イオン伝導体。前記誘導体と;この誘導体とは異なりかつ前記イオン伝搬性の基を有する前記物質と;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法。第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、前記イオン伝導体が、上記した本発明のイオン伝導体からなる、電気化学デバイス。
【選択図】 図1

Description

本発明は、イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスに関するものである。
燃料電池は、その高効率性やクリーンであることなどの理由から、次世代の環境配慮型電気エネルギー発生装置として注目され、各方面で盛んに開発が進められている。
燃料電池は、使用温度や使用条件がプロトン伝導体の性質に強く影響を与えるために、使用されるプロトン伝導体の種類によって燃料電池自体を大別することができる。このように、使用するプロトン伝導体の特性が燃料電池性能に大きく影響することから、プロトン伝導体の性能向上が燃料電池の性能を向上する上で大きな鍵となる。
一般に、常温〜100℃未満の温度範囲では、固体高分子フィルムからなるプロトン伝導性高分子膜が用いられている(例えば、後記の特許文献1参照。)。具体的には、パーフルオロスルホン酸樹脂であるデュポン社製の商品名ナフィオン(登録商標)(Nafion)やゴア社の商品名ゴア膜(登録商標)などが代表的であり、それらの改良も進められている。
これらの高分子材料は、湿潤状態に置かれると、常温付近で高いプロトン伝導性を示す。即ち、パーフルオロスルホン酸樹脂を例に挙げると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合(水素結合)してプロトン化した水、即ちオキソニウムイオン(H3+)を生成し、このオキソニウムイオンの形態をとってプロトンが高分子マトリックス内をスムーズに移動することができるので、この種のマトリックス材料は常温下でもかなり高いプロトン伝導効果を発揮できる。
特開平3−208260号公報(3頁右下欄1〜16行目、図1)
しかしながら、上記のようなオキソニウムイオンによってプロトン伝導を行うプロトン伝導性高分子膜は、晒される雰囲気の乾燥状態や温度によって膜中の水分量が大きく影響を受ける。例えば、乾燥雰囲気中では、高分子膜中の水分量が減少し、このため膜のプロトン伝導度は急激に減少してしまう。また、温度の上昇によっても上記と同様に、膜中の水分量は蒸気圧の上昇と共に減少し、加湿によって水分量を補給しない限り、プロトン伝導性が低下していく傾向にある。
上記のように、オキソニウムイオンを利用してプロトン移動を行うプロトン伝導性高分子膜は、水分量が減少すると水分子の移動が困難になり、プロトン伝導性が大きく低下することから、水分の補給が必要となる。このため、システムの構成には、加湿装置や各種の付随装置が要求され、装置の規模が大型化したり、システム構築のコスト上昇が避けられない。また、作動温度も、高分子膜中に含まれる水分の凍結や沸騰を防ぐため、温度範囲が広くないという問題がある。これらのことが、プロトン伝導性高分子膜の使用を難しいものとしており、実用化の妨げとなっている。
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、水分の補給が不要であり、乾燥雰囲気中や比較的広い温度領域でも使用することができ、しかもプロトン伝導率の向上を図ることができるイオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスを提供することにある。
即ち、本発明は、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を有する、イオン伝導体に係るものである。
また、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法に係るものである。
さらに、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を乾式混合する工程と、前記乾式混合物を溶融して均一溶融物を得る工程と、この均一溶融物を冷却する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法に係るものである。
本発明において、上記の「イオン解離性の基」とは、プロトン等の(以下、同様)イオンが電離により離脱し得る基を意味し、また「イオンの解離」とは、電離によりイオンが基から離れることを意味する。さらに、上記の「イオン伝搬性の基」は、前記イオン解離性の基によるイオンの解離を促進すると共に、解離したイオンを受け取り、更にこの受け取ったイオンを、近接する前記イオン解離性の基又は他の前記イオン伝搬性の基に供給することができる。即ち、解離したイオンを、このイオン伝搬性の基を経由させることによって、イオンの移動を円滑にすることができる。
また、本発明は、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、前記イオン伝導体が、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を有する、電気化学デバイスに係るものである。
本発明のイオン伝導体及びその製造方法によれば、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と、この誘導体とは異なりかつ前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とを有するので、乾燥雰囲気中や、常温を含む広い温度領域(例えば約160℃〜−40℃の範囲)においても使用することができ、緻密でガス遮断性にも優れている。また、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質により、乾燥雰囲気中においてもイオンの解離が促進されると共に、解離したイオンが前記イオン伝搬性の基を経由して円滑に移動することが可能となるので、高いイオン伝導性を示す。但し、水分が存在していても差支えない。
本発明の電気化学デバイスによれば、前記第1極と前記第2極との間に挟持された前記イオン伝導体が、上記したような優れた特性を有する本発明のイオン伝導体からなるので、上述したと同様の効果が奏せられる。従って、従来例のような加湿装置等は不要となり、デバイス自体の小型化及び簡素化を実現することができる。
本発明に基づくイオン伝導体は、前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とが混合されていることが好ましい。
また、後述するように、前記イオン解離性の基としてプロトン(H+)解離性の基が用いられ、プロトン伝導体として機能することができる。
図1は、本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導メカニズムの一例を説明する模式図である。なお、図1では、前記炭素材料として前記フラーレン分子(例えばC60)を用い、また前記イオン解離性の基として−SO3Hで表される前記プロトン解離性の基を用い、更に前記イオン伝搬性の基を有する前記物質としてイミダゾールを用いた場合について説明する。
図1に示すように、前記プロトン解離性の基(例えば−SO3H)を有する前記フラーレン分子は、乾燥雰囲気中や、常温を含む広い温度領域(例えば約160℃〜−40℃の範囲)においてもプロトン(H+)を解離することができ、解離されたプロトンは、前記フラーレン分子の前記プロトン解離性の基を移動する。そして、前記フラーレン分子に近接するイミダゾールのN原子が、上記の解離されたプロトンを受け取ると、プロトン解離性を有するイミダゾリウムカチオンが生成する。このプロトン解離性を有するイミダゾリウムカチオンから放出されたプロトンは、他方の前記フラーレン分子の前記プロトン解離性の基に移動し、更に前記フラーレン分子の前記プロトン解離性の基の間を移動する。このような、プロトンの解離及びその移動を繰り返すことによって、プロトンの伝導が行われる。
本発明に基づくイオン伝導体は、前記フラーレン分子に前記プロトン解離性の基(例えば−SO3H)が結合してなる前記誘導体と、前記イミダゾールとを有するので、乾燥雰囲気中や、広い温度領域においても使用することができる。また、前記イミダゾールを有することにより、乾燥雰囲気中においてもプロトンの解離が促進されると共に、解離したプロトンが、前記イミダゾールを経由して円滑に移動することができるので、高いプロトン伝導性を示す。
ここで、本発明に基づくイオン伝導体は、前記炭素物質に、前記イオン解離性の基及び前記イオン伝搬性の基が結合されていてもよく、この場合も上記したと同様の優れたイオン伝導性能を有している。
母体となる前記炭素物質としては、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いるが、前記イオン解離性の基を導入した後に、イオン伝導性が電子伝導性よりも大であることが重要である。
前記炭素物質としての前記フラーレン分子は、球状クラスター分子であれば特に限定しないが、通常はC36、C60(図2(A)参照)、C70(図2(B)参照)、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96などから選ばれるフラーレン分子の単体、若しくはこれらの2種類以上の混合物が好ましく用いられる。
これらのフラーレン分子は、1985年に炭素のレーザアブレーションによるクラスタービームの質量分析スペクトル中に発見された(Kroto, H.W.; Heath, J.R.; O'Brien, S.C.; Curl, R.F.; Smalley, R.E. Nature 1985. 318, 162.)。実際にその製造方法が確立されるのは更に5年後のことで、1990年に炭素電極のアーク放電法による製造法が見出され、それ以来、前記フラーレンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。
例えば、前記フラーレン分子に前記イオン解離性の基を結合させてなる前記誘導体を、多数凝集させた時、それがバルクとして示すイオン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の前記イオン解離性の基に由来するイオンが移動に直接関わるため、乾燥雰囲気下においても、継続的に使用することができる。
また、前記フラーレン分子は特に求電子性の性質を持ち、このことが酸性度の高い前記イオン解離性の基としての前記プロトン解離性の基において、水素イオンの電離の促進に大きく寄与していると考えられ、優れたイオン伝導性を示す。また、一つのフラーレン分子中にかなり多くの前記イオン解離性の基を結合させることができるため、伝導に関与する水素イオンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなるので、実質的な伝導率を発現する。
本発明に基づくイオン伝導体を構成する前記誘導体は、その殆どが、前記フラーレン分子の炭素原子で構成されているため、重量が軽く、変質もし難く、また汚染物質も含まれていない。前記フラーレン分子の製造コストも急激に低下しつつある。資源的、環境的、経済的にみて、前記フラーレン分子は他のどの材料にもまして、理想に近い炭素系材料であると考えられている。
本発明においては、前記フラーレン分子を母体とする前記誘導体に代えて、例えば炭素系電極のアーク放電法によりカーボン粉末からなるクラスターを得、このカーボン粉末に前記イオン解離性の基を結合させてなるクラスター誘導体を用いることができる。
ここで、前記クラスターとは通常は、数個から数百個の原子が結合又は凝集して形成されている集合体のことであり、この凝集(集合)体によってイオン伝導性能が向上すると同時に、化学的性質を保持して膜強度が十分となり、層を形成し易い。また、このクラスターは炭素を主成分とするものであって、炭素原子が、炭素−炭素間結合の種類は問わず数個から数百個結合して形成されている集合体のことである。但し、必ずしも100%炭素クラスターのみで構成されているとは限らず、他原子の混在もあり得る。このような場合も含めて、炭素原子が多数を占める集合体を炭素クラスターと呼ぶこととする。
この本発明に基づくイオン伝導体は、母体としての前記炭素クラスターに前記イオン解離性の基を結合させたものを主成分とするので、乾燥状態でもイオンが解離し易く、イオン伝導性を始め、前記したフラーレン誘導体からなるイオン伝導体と類似した効果を奏することができる。しかも、前記炭素クラスターの範ちゅうには後述するように多種類の炭素質が含まれるので、炭素質原料の選択幅が広いという効果も奏することができる。
この場合、母体として前記炭素クラスターを用いるのは、良好なイオン伝導性を付与するためには、大量の前記イオン解離性の基を結合させることが必要であり、これは炭素クラスターによって可能になるからである。しかし、そうすると、固体状のイオン伝導体の酸性度が著しく大きくなるが、炭素クラスターは他の通常の炭素質と違って酸化劣化し難く、耐久性に優れており、構成原子間が密に結合し合っているために、酸性度が大であっても原子間の結合がくずれることはなく(即ち、化学的に変化し難いため)、膜構造を維持することができる。
このような構成のイオン伝導体も、乾燥状態でも高いイオン伝導性を発揮することができ、図3〜図6に示すような各種のものがあり、イオン伝導体の原料としての選択の幅が広いものである。
まず、図3に示すものは、炭素原子が多数個集合してなる、球体又は長球、又はこれらに類似する閉じた面構造を有する種々の炭素クラスターである(但し、分子状のフラーレンも併せて示す)。それに対して、それらの球構造の一部が欠損した炭素クラスターを図4に種々示す。この場合は、構造中に開放端を有する点が特徴的であり、このような構造体は、アーク放電によるフラーレンの製造過程で副生成物として数多く見られるものである。炭素クラスターの大部分の炭素原子がSP3結合していると、図5に示すようなダイヤモンドの構造を持つ種々のクラスターとなる。
大部分の炭素原子がSP2結合しているクラスターは、グラファイトの平面構造を持つか、あるいはフラーレンやナノチューブの全体又は一部の構造を有する。このうち、グラファイトの構造を有するものは、クラスターに電子伝導性を持つものが多いため、イオン伝導体の母体としては好ましくない。
それに対し、フラーレンやナノチューブのSP2結合は、一部にSP3結合の要素を含んでいるため、電子伝導性をもたないものが多く、イオン伝導体の母体として好ましい。
また、前記誘導体が、前記炭素物質同士の化学的又は物理的な結合体又は架橋体からなっていてもよい。例えば、図6は、クラスター同士が結合した場合を種々示すものであり、このような構造体でも、本発明に適用できる。
この炭素クラスター誘導体はそのまま、バインダーなしで膜状やペレットなどの形状に加圧成形することができる。本発明において、母体である炭素クラスターは長軸の長さが100nm以下のもの、とくに100Å以下のものが好ましく、それに導入する前記基の数は2以上が望ましい。
さらに前記炭素クラスターとして、籠状構造体(前記フラーレン分子など)又は少なくとも一部に開放端をもつ構造体が好ましい。このような欠陥構造のフラーレンは、前記フラーレン分子の反応性を持つと同時に、加えて欠陥部すなわち開放部は更に高い反応性を持つ。従って、前記イオン解離性の基の導入が促進され、より高い基導入率が得られ、高いイオン伝導性が得られる。また、前記フラーレン分子に比べて大量に合成することが可能となり、非常に安価に生産できる。
他方、本発明に基づくイオン伝導体の母体として、前記筒状又は線状炭素の構造体を用いることが好ましい。前記筒状炭素の構造体としては、チューブ状、例えば直径が数nm以下、代表的には1〜2nmのカーボンナノチューブであることが好ましい。また、前記線状炭素の構造体としては、ファイバー状の形状、例えば直径が数nm以上、巨大なものでは直径が1μmにも達するカーボンファイバーであることが好ましい。
前記カーボンナノチューブ又は前記カーボンファイバーは、構造上電子を放出し易く、表面積を非常に大きくすることができるので、一層プロトン伝搬効率の向上を図ることができる。
図7(A)の斜視図及び同図(B)の一部断面図に示すような多層カーボンナノチューブのグラフェン構造(円筒状構造)は、欠陥のない高品質なカーボンナノチューブであり、これは電子放出材料として非常に高性能であることが知られている。図7(C)の斜視図に示すような構造を有する前記カーボンファイバーも本発明に好適に用いられる。
ここで好適に使用可能な前記カーボンナノチューブ又は前記カーボンファイバーは、アーク放電法又は化学的気相成長法(熱CVD法)により製造することが可能である。
一方、本発明に基づくイオン伝導体において、前記イオン解離性の基が、−SO3M、−PO(OM)2、−SO2NMSO2−、−SO2NM2、−COOM、=CPO(OM)2及び=C(SO3M)2(但し、Mは陽イオンとなる基、例えば活性水素基である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明に基づくイオン伝導体は、少なくとも前記イオン解離性の基を有する官能基が前記炭素物質に結合しており、前記官能基が−A−SO3M、−A−PO(OM)2、−A−SO2NMSO2−R0、−A−SO2NM2及び−A−COOM[但し、Aは−O−、−R−、−O−R−、−R−O−、−O−R−O−又は−R−O−R'−であり(R及びR'は互いに同一であっても異なっていてもよいCxHy又はCxFyHz(1≦x≦20、1≦y≦40、0≦z≦39)で表されるアルキル部位又はフッ化アルキル部位である。)、Mは陽イオンとなる基(例えば活性水素基)、R0は−CF3又は−CH3である。]からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
さらに、前記イオン解離性の基と共に、電子吸引基、例えばニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素など)などを炭素クラスターに導入してもよい。具体的には、−NO2、−CN、−F、−Cl、−COOR、−CHO、−COR、−CF3、−SO3CF3などである(ここでRはアルキル基を表わす)。このように電子吸引基が併存していると、その電子吸引効果のために、前記イオン解離性の基からプロトン等のイオンが解離し易くなり、この解離されたイオンが、前記イオン解離性の基及び前記イオン伝搬性の基を介して一層移動し易くなる。
炭素クラスターに導入する前記イオン解離性の基の数は、炭素クラスターを構成する炭素数の範囲内で任意でよいが、望ましくは5個以上とするのがよい。なお、例えば前記フラーレン分子の場合、フラーレンのπ電子性を残し、有効な電子吸引性を出すためには、前記イオン解離性の基の数は、フラーレンを構成する炭素数の半分以下であることが好ましい。
前記炭素クラスターに前記イオン解離性の基を導入するには、例えば、先ず炭素系電極のアーク放電によって炭素クラスターを合成し、続いてこの炭素クラスターを酸処理するか(硫酸などを用いる)、さらに加水分解等の処理を行うか、またはスルホン化又はリン酸エステル化等を適宜行えばよい。これによって、目的生成物である炭素クラスター誘導体(前記イオン解離性の基を有する炭素クラスター)を容易に得ることができる。
例えば、炭素クラスターであるフラーレンに前記イオン解離性の基を導入したフラーレン誘導体を多数凝集させた時、それがバルクまたはフラーレン誘導体の集合体として示すイオン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の前記イオン解離性の基(例えばOSO3H基)に由来するプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要はなく、外部からの水分の補給、とりわけ外気より水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はない。一つのフラーレン分子中にはかなり多くの前記イオン解離性の基を導入することができるため、伝導に関与する水素イオンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなる。これが、本発明に基づくイオン伝導体が実効的な伝導率を発現する理由である。
以上のように、前記イオン解離性の基を有する炭素クラスターは、それ自体でも酸の官能基の空間的密度が高いといった構造的性質や、母体である炭素クラスター(例えばフラーレン)の電子的性質などによりプロトン等のイオンが解離し、各サイト間をホッピングし易い構造が実現できるため、乾燥状態であってもプロトン等のイオンの伝導が実現される。
しかしながら、イオン伝導率はこれだけでは不十分であり、その改良が望まれる。そこで、本発明者が更なる検討を行った結果、上述したような前記誘導体に所定量の新たな成分、具体的には前記イオン伝搬性の基を有する前記物質を第2の成分として加えることにより、プロトン等のイオンの解離が促進され、イオン伝導体中の伝導プロトン密度が飛躍的に増加し、プロトン等のイオン伝導率が大幅に上昇することを初めて見出した。
前記イオン伝搬性の基を有する前記物質としては、N原子を構成元素として含有する化合物が好適であり、ある程度大きな分子又はポリマーであってもよい。
具体的な前記N原子含有化合物としては、図8に構造式を示すような、イミダゾール、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、フェニルイミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラジン及びピペラジンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物、又はそれらの構造を有するポリマーを用いることができ、また図8(j)に示すようなポリ[4−ビニルイミダゾール]のようなポリマーなどを用いてもよい。勿論、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
前記イオン伝搬性の基を有する前記物質として、水よりも蒸気圧の低いものを用いることにより、イオンの解離が促進されると共に、イオンが前記イオン伝搬性の基を経由して円滑に移動することができ、更に高い温度領域で使用できるなど、種々の利点を得ることができる。従って、前記物質としては、ある程度高い沸点を持つものが好ましい。ここで、要求される沸点は、例えばイオン伝導体を何度の環境温度下で使用するかによって決まり、室温で使用するならば室温以上(例えば水を使って室温領域で使用することも可能である。)、100℃近辺で使用するならばそれ以上ということになる。安定性をも考慮すると、上記沸点は使用温度より十分に高い温度、例えばプラス50℃程度に設定することが好ましい。
前記イオン伝搬性の基を有する前記物質の混入量は、前記イオン解離性の基の数と密接に関係している。実際には、前記イオン解離性の基と、前記イオン伝搬性の基との比(前記イオン伝搬性の基/前記イオン解離性の基)が、モル比で20以下、好ましくは0.1〜20、より好ましくは1.2〜20、更に好ましくは1.5〜10となるように、前記誘導体と前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とを混入したときに顕著に効果を発揮することができる。
上記モル比率が20を越える場合、イオン伝導体全体に対する前記イオン解離性の基の密度が減少したり、あるいは前記イオン伝搬性の基を有する前記物質の占有する体積などが大きくなり過ぎたりして、かえってプロトン等のイオン伝導率が低下する悪影響が出始める恐れがある。逆に、上記モル比率が0.1未満であると、前記物質に由来する前記イオン伝搬性の基の数が前記イオン解離性の基の数の10分の1未満ということになり、前記イオン解離性の基からのイオンの解離が不十分となり易く、また前記誘導体と前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とが均一に混ざり難くなるため、本発明に基づくイオン伝導体が本来有する上述したようなイオン伝導性を十分に発揮できないことがある。
本発明のイオン伝導体の製造方法は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と;この誘導体とは異なりかつ前記イオン伝搬性の基を有する前記物質と;を乾式混合する工程と、前記乾式混合物を溶融して均一溶融物を得る工程と、この均一溶融物を冷却する工程とを有する。これにより、上述したような優れたイオン伝導特性を有する本発明に基づくイオン伝導体を得ることができる。
例えば、前記溶融では、まず前記イミダゾール等の前記イオン伝搬性の基を有する前記物質が約90℃以上の温度で溶融し始める。この後、温度上昇に伴って溶融した前記イミダゾール等の前記物質が前記フラーレン誘導体等の前記誘導体を覆い、更に前記誘導体も溶融し始める。これにより、前記誘導体と前記物質との前記均一溶融物を得ることができる。
また、本発明のイオン伝導体の製造方法は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と;この誘導体とは異なりかつ前記イオン伝搬性の基を有する前記物質と;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する。
本発明において、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質として、前記N原子含有化合物のポリマーが用いられる場合、前記N原子含有化合物の融点が高くなるため、上記した乾式混合及び溶融による製造方法では上述したような優れたイオン伝導特性を有する本発明に基づくイオン伝導体を得るのは難しい。これに対し、上記の溶媒を用いての溶解による製造方法によれば、前記誘導体と、前記N原子含有化合物とが、均一に混合され、上述したような優れたイオン伝導特性を有するイオン伝導体を得ることができる。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、アセトニトリル、ピリジン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の窒素化合物、硫黄化合物、又は水等の無機溶媒を用いることができる。
本発明に基づくイオン伝導体は、そのまま所望の形状、例えばペレットや薄膜に加圧成形したり、濾過による成形を行うことができる。この際、バインダーは不必要であり、このことは、プロトン等のイオンの伝導性を高める上でも、イオン伝導体の軽量化を達成する上でも有効である。特に、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質として高分子材料を用いた場合には、これがバインダーとしての機能も果たし、良好な成膜性、成形性が付与される。勿論、バインダーとして第3の成分を加えることも可能である。第3の成分として使用可能な高分子材料としては、プロトン等のイオンの伝導性をできるだけ阻害せず、成膜性を有するものなら、特に限定はしない。通常は電子伝導性をもたず、良好な安定性を有するものが用いられる。具体例としては、ポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどを挙げることができる。
本発明に基づくイオン伝導体及びその製造方法によれば、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と、この誘導体とは異なりかつ前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とを有するので、乾燥雰囲気中や、常温を含む広い温度領域(例えば約160℃〜−40℃の範囲)においても使用することができ、緻密でガス遮断性にも優れている。また、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質により、乾燥雰囲気中においてもイオンの解離が促進されると共に、解離したイオンが前記イオン伝搬性の基を経由して円滑に移動することが可能となるので、高いイオン伝導性を示す。
また、本発明のイオン伝導体は、各種の電気化学デバイスに好適に使用できる。即ち、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなる基本的構造体において、そのプロトン伝導体に本発明に基づくイオン伝導体を好ましく適用することができる。
更に具体的に言うと、前記第1極及び/又は前記第2極が、ガス電極である電気化学デバイスとか、前記第1極及び/又は前記第2極に活物質性電極を用いる電気化学デバイスなどに対し、本発明に基づくイオン伝導体を好ましく適用することが可能である。
以下、本発明に基づくイオン伝導体を、前記第1極に燃料が供給されかつ前記第2極に酸素が供給されてなる燃料電池に適用した例について説明する。
その燃料電池のプロトン伝導のメカニズムは図9の模式図に示すようになり、プロトン伝導部1は第1極(例えば水素極)2と第2極(例えば酸素極)3との間に挟持され、解離したプロトン(H+)は図面矢印方向に沿って第1極2側から第2極3側へと移動する。
図10には、前記プロトン伝導部に本発明に基づくイオン伝導体を用いた燃料電池の一具体例を示す。この燃料電池は、触媒2a及び3aをそれぞれ密着又は分散させた互いに対向する、端子8及び9付きの負極(燃料極又は水素極)2及び正極(酸素極)3を有し、これらの両極間にプロトン伝導部1が挟着されている。使用時には、負極2側では導入口12から水素が供給され、排出口13(これは設けないこともある。)から排出される。燃料(H2)14が流路15を通過する間にプロトンを発生し、このプロトンはプロトン伝導部1で発生したプロトンとともに正極3側へ移動し、そこで導入口16から流路17に供給されて廃棄口18へ向かう酸素(空気)19と反応し、これにより所望の起電力が取り出される。
かかる構成の燃料電池は、プロトン伝導部1に本発明に基づくイオン伝導体が用いられているので、上述したと同様の効果が奏せられる。従って、加湿装置等は不要となり、デバイス自体の小型化及び簡素化を図ることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
<リン酸系フラーレン誘導体(C60=C(PO(OH)222)の合成>
まず、リン酸系フラーレン誘導体の前駆体C60=(C(PO(OEt)222の合成は文献(Cheng, F; Yang, X; Zhu, H; and Song, Y “Tetrahedron Letters 41(2000) page 3947-3950”)を参考にして行った。1g(1.39mmol)のC60を600ml脱水トルエンに溶解した後、706mg(2.78mmol)ヨウ素と4gNaIを加え、攪拌をしながら0.676ml(2.78mmol)のメチレンジホスホ酸テトラエチル(tetraethyl methylene diphosphonate)を加えた。アルゴンガス雰囲気下、室温で24時間攪拌した後、ろ過し、沈殿物を多量のCHCl3で洗浄した。得られた溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した後、多量のアルコールで洗浄した。この洗浄した沈殿物を乾燥したところ、リン酸系フラーレン誘導体の前駆体C60=(C(PO(OEt)222が得られた。
次いで、上記に得られたリン酸系フラーレン誘導体の前駆体C60=(C(PO(OEt)222を1g秤取り、50mlの1M NaOH溶液中100℃で1時間から30時間攪拌し、加水分解した。得られた溶液をプロトンイオン交換したところ、リン酸系フラーレン誘導体C60=(C(PO(OH)222が得られた。
上記に得られたリン酸系フラーレン誘導体の粉末を乾燥させた後、このリン酸系フラーレン誘導体と所定量のイミダゾール(和光純薬工業社製)とを、PO(OH)2基とイミダゾールとのモル比が1:3になるように混合し、100℃で加熱溶融して均一溶融物を得た後、室温まで冷却した。この混合物を直径4mmの円形のペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。その結果、この粉末はバインダー樹脂等を一切含まないにもかかわらず、成形性に優れており、容易にペレット化することができた。
そして、この成形したペレットを用い、交流インピーダンス法によって伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記に作製したペレット両面を直径4mmの金板で挟み、これに10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅100mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。なお、測定は乾燥雰囲気下で行った。
図11は、サンプルの室温(25℃)におけるコールコールプロットである。図11に示すように、非常にきれいな単一の半円状円弧を見ることができる。これは、ペレット内部においてなんらかの荷電粒子の伝導挙動が存在していることを示している。さらに、低周波数領域においては、インピーダンスの虚数部分の急激な上昇が観測された。これは、徐々に直流電圧に近づくに伴って金電極との間で荷電粒子のブロッキングが生じていることを示しており、当然、金電極側における荷電粒子は電子であるから、ペレット内部の荷電粒子は電子やホールではなく、それ以外の荷電粒子、すなわちイオン(プロトン)であることがわかる。
図11のコールコールプロットの高周波数側に見られる円弧のX軸切片から、このイオン伝導率を求めることができる。図12は、リン酸系フラーレン誘導体のみのイオン伝導率と、リン酸系フラーレン誘導体+イミダゾール(PO(OH)2基:イミダゾール=1:3(モル比))からなる本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導率との温度依存性を比較して示すものである。
図12から明らかなように、本発明に基づくイオン伝導体は、リン酸系フラーレン誘導体とイミダゾールとの混合物であるので、乾燥雰囲気中でも、広い温度領域において高いイオン伝導率を示した。これに対し、リン酸フラーレン誘導体のみの場合、全体的にイオン伝導率が低く、室温においてはイオン伝導率が測定限界値(1×10-9Scm-1)以下であった。
実施例2
本実施例では、上記のPO(OH)2基とイミダゾールとのモル比を変化させ、イオン伝導率を測定した。混合方法及びイオン伝導率測定方法は実施例1と同様の方法で行った。結果を図13に示す。
図13より明らかなように、温度依存性が多少あるものの、低温ではイミダゾール(Im)の添加量が(Im)/(PO(OH)2)=3の時に伝導率はほぼ最大値に達し、高温では(Im)/(PO(OH)2)=20の時に伝導率はほぼ最大値に達した。
また、上記モル比率が20を越えたとき、イオン伝導体全体に対するPO(OH)2基の密度が減少したり、あるいはイミダゾール(Im)の占有する体積などが大きくなり過ぎて、かえってイオン伝導率が低下し易かった。逆に、上記モル比率が0.1未満であると、イミダゾール(Im)の数がPO(OH)2基の数の10分の1未満ということになり、PO(OH)2基からのイオンの解離が不十分となり易く、またリン酸系フラーレン誘導体とイミダゾール(Im)とが均一に混ざり難くなった。
従って、前記イオン解離性の基と、前記イオン伝搬性の基との比(前記イオン伝搬性の基/前記イオン解離性の基)が、モル比で20以下、好ましくは0.1〜20、より好ましくは1.2〜20、更に好ましくは1.5〜10となるように、前記誘導体と前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とを混入したときに、より優れた効果を発揮することが分かった。
実施例3
リン酸系フラーレン誘導体に代えてポリマー化したメチルスルホン酸フラーレンを用い、またスルホン酸基とイミダゾールとのモル比を1:1とした以外は、上記の実施例1と同様にしてペレットを作製し、イオン伝導率を測定した。
図14は、ポリマー化したメチルスルホン酸フラーレンのみのイオン伝導率と、ポリマー化したメチルスルホン酸フラーレン誘導体+イミダゾール(スルホン酸基:イミダゾール=1:1(モル比))からなる本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導率との温度依存性を比較して示すものである。
図14より明らかなように、本発明に基づくイオン伝導体は、ポリマー化したメチルスルホン酸フラーレンとイミダゾールとの混合物であるので、乾燥雰囲気中でも、広い温度領域において高いイオン伝導率を示した。これに対し、ポリマー化したメチルスルホン酸フラーレンのみの場合、全体的にイオン伝導率が低かった。
以上、本発明を実施の形態及び実施例について説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
例えば、上記に前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とが混合されている例を説明したが、本発明に基づくイオン伝導体は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、線状又は筒状炭素の前記構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基及び前記イオン伝搬性の基が結合されていてもよい。
また、前記燃料電池等の本発明に基づく電気化学デバイスにおいて、その形状、構成、材質等は本発明を逸脱しない限り、適宜選択可能である。
さらに、本発明に基づくイオン伝導体は、上述したプロトン(H+)の他にもリチウムイオン等のイオン伝導に用いることができ、アルカリ二次電池等にも適用可能である。
本発明の実施の形態による、本発明に基づくイオン伝導体のプロトン伝導の メカニズムを示す模式図である。 同、本発明のイオン伝導体において母体となるフラーレン分子を示す模式図 である。 同、本発明のイオン伝導体において母体となるカーボンクラスターの種々の 例を示す模式図である。 同、カーボンクラスターの他の例(部分フラーレン構造)を示す模式図であ る。 同、カーボンクラスターの他の例(ダイヤモンド構造)を示す模式図である 。 同、カーボンクラスターの更に他の例(クラスター同士が結合しているもの )を示す模式図である。 同、本発明のイオン伝導体の母体となるカーボンナノチューブ及びカーボン ファイバーの概略図である。 同、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質として用いることができる材料 の構造式である。 同、燃料電池のプロトン伝導のメカニズムを示す模式図である。 同、燃料電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施例による、本発明に基づくイオン伝導体の複素インピーダン スの測定結果を示す図である。 同、本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導率の測定結果を示す図であ る。 同、本発明に基づくイオン伝導体について、イオン伝導率の組成依存性を 示す図である。 同、本発明に基づく他のイオン伝導体のイオン伝導率の測定結果を示す図 である。
符号の説明
1…イオン伝導体(プロトン伝導部)、2…第1極(負極)、2a…触媒、
3…第2極(正極)、3a…触媒、8、9…端子、12…導入口(水素用)、
13…排出口(水素用)、14…燃料(H2)、15…流路(水素用)、
16…導入口(酸素用)、17…流路(酸素用)、18…排出口(酸素用)、
19…酸素(空気)

Claims (19)

  1. フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を有する、イオン伝導体。
  2. 前記誘導体が、前記炭素物質同士の化学的又は物理的な結合体又は架橋体からなる、請求項1に記載したイオン伝導体。
  3. 前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とが混合されている、請求項1に記載したイオン伝導体。
  4. 前記炭素物質に、前記イオン解離性の基及び前記イオン伝搬性の基が結合されている、請求項1に記載したイオン伝導体。
  5. 前記イオン解離性の基と、前記イオン伝搬性の基との比(前記イオン伝搬性の基/前記イオン解離性の基)が、モル比で20以下である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  6. 前記イオン解離性の基が、−SO3M、−PO(OM)2、−SO2NMSO2−、−SO2NM2、−COOM、=CPO(OM)2及び=C(SO3M)2(但し、Mは陽イオンとなる基である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  7. 少なくとも前記イオン解離性の基を有する官能基が前記炭素物質に結合しており、前記官能基が−A−SO3M、−A−PO(OM)2、−A−SO2NMSO2−R0、−A−SO2NM2及び−A−COOM[但し、Aは−O−、−R−、−O−R−、−R−O−、−O−R−O−又は−R−O−R’−であり(R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよいCxHy又はCxFyHz(1≦x≦20、1≦y≦40、0≦z≦39)で表されるアルキル部位又はフッ化アルキル部位である。)、Mは陽イオンとなる基、R0は−CF3又は−CH3である。]からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  8. 前記イオン伝搬性の基を有する前記物質が、N原子含有化合物又はそのポリマーである、請求項1に記載したイオン伝導体。
  9. 前記N原子含有化合物がイミダゾール、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、フェニルイミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラジン及びピペラジン、又はそれらの構造を有するポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項8に記載したイオン伝導体。
  10. フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法。
  11. フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を乾式混合する工程と、前記乾式混合物を溶融して均一溶融物を得る工程と、この均一溶融物を冷却する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法。
  12. 前記イオン解離性の基と、前記イオン伝搬性の基とのモル比が20以下となるように、前記誘導体と前記イオン伝搬性の基を有する前記物質とを混合する、請求項10又は11に記載したイオン伝導体の製造方法。
  13. 前記イオン解離性の基として、−SO3M、−PO(OM)2、−SO2NMSO2−、−SO2NM2、−COOM、=CPO(OM)2及び=C(SO3M)2(但し、Mは陽イオンとなる基である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項10又は11に記載したイオン伝導体の製造方法。
  14. 前記誘導体として少なくとも前記イオン解離性の基を有する官能基が結合された前記炭素物質を用い、前記官能基として−A−SO3M、−A−PO(OM)2、−A−SO2NMSO2−R0、−A−SO2NM2及び−A−COOM[但し、Aは−O−、−R−、−O−R−、−R−O−、−O−R−O−又は−R−O−R’−であり(R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよいCxHy又はCxFyHz(1≦x≦20、1≦y≦40、0≦z≦39)で表されるアルキル部位又はフッ化アルキル部位である。)、Mは陽イオンとなる基、R0は−CF3又は−CH3である。]からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項10又は11に記載したイオン伝導体の製造方法。
  15. 前記イオン伝搬性の基を有する前記物質として、N原子含有化合物又はそのポリマーを用いる、請求項10又は11に記載したイオン伝導体の製造方法。
  16. 前記N原子含有化合物として、イミダゾール、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、フェニルイミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラジン及びピペラジン、又はそれらの構造を有するポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項15に記載したイオン伝導体の製造方法。
  17. 第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、前記イオン伝導体が、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;この誘導体とは異なりかつイオン伝搬性の基を有する物質と;を有する、電気化学デバイス。
  18. 前記イオン伝導体が、請求項2〜9のいずれか1項に記載したイオン伝導体である、請求項17に記載した電気化学デバイス。
  19. 燃料電池として構成されている、請求項17に記載した電気化学デバイス。
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