JP4095318B2 - 精製サイリウムシードガム、およびこれを用いた製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度に精製されたサイリウムシードガム、その製法およびこれを用いた製品に関する。本発明の精製サイリウムシードガムは、安定剤や食物繊維素材等として、食品添加物、特定保健用食品の原材料等として広く利用される。
【0002】
【従来の技術】
サイリウム種皮(ハスク)を粉砕し、もしくは、温水や熱水でサイリウム種皮(ハスク)から抽出して得られるサイリウムシードガム(これらを総称してサイリウムと表すことがある)は、食物繊維の豊富な、食品用素材として用いられて来た。近年、特にその整腸作用および/またはコレステロール低減作用といった機能により、サイリウムについては、厚生労働省から表示を許可された特定保健用食品の原材料としての利用が活発に行われている。
【0003】
他方で、米国において、サイリウム種皮を含む食品を摂取したことによりアナフィラキシーショックを起こしたという症例報告(Kaplan M.J. Anaphylactic reactions to "Heartwise", [Letter] New Eng. J. Med., 1990:323:1072-3)がなされて以来、日本国内においても、サイリウムに不純物として含まれるタンパク質によるアレルギーの発症が問題として取り上げられるようになってきた。また、この報告を受けて、厚生省生活衛生局食品保健課長、食品化学課長より、サイリウムを含有する食品又は添加物にあっては、高度に精製したサイリウム製品を使用するよう関係営業者に対する指導をお願する旨各自治体の衛生主管部(局)長宛に通知された(衛保第361号及び衛化第169号、平成9年12月26日)。
【0004】
精製したサイリウムシードガムに関して、(1)USP5,266,473号には、1〜50質量%の固形分濃度を有するサイリウムシードハスクのスラリーにプロテアーゼ(タンパク質加水分解酵素)を作用させ、ハスク表面のアレルゲンタンパク質を分解し低アレルゲンサイリウムシードハスクを製造する方法が開示されている。しかしながら、本発明の実施により得られるサイリウムシードハスクは、ハスク表面のみのタンパク質を分解して得られたものであり、しかもプロテアーゼ処理をする際のハスクの状態がスラリーであるため、ハスクの表面でさえ、全てに、プロテアーゼが作用しているかは疑問である。また、得られたハスクに含まれるタンパク質含量が開示されていないため、精製度合いを推し量ることもできない。さらに、サイリウムシードハスクを水に十分に加熱溶解しておらず濾過操作も経ていないところから、サイリウムシードハスクが常態として含有する水または熱水に溶解しない成分を精製後も内在していると考えられ、優れた溶液透明性も期待できない。
【0005】
また、前述の旧厚生省からの通知の別添2に記載の文献である(2) James et al. Anaphylactic rections to a psyllium-containing cereal, J. Allergy Clin. Immunol., 1991:88(3):402-408 には、粒子の表面を研磨し、篩い分けてアレルゲンタンパク質を低減させた、高度に精製されたサイリウムが開示されている。しかしながら、開示されたサイリウムは、サイリウム粒子を研磨することにより表面のタンパク質を削り取り、これを篩い分けて得られるものであるため、微小な削りかすが付着等により残存することは否めない。この方法で純度98%のサイリウムを得た旨が報告されているが、この場合の純度の定義も、タンパク質含量についても開示されていない。さらに、サイリウムを水に溶解し濾過する操作を経ていないことから、やはり、サイリウムが常態として持つ水または熱水に溶解しない成分を精製後も内在していると考えられ、優れた溶液透明度を期待できない。
【0006】
(3)特開平1-197501号公報には、種子より剥離したサイリウムハスクを熱水分散した後、ケーキ濾過用濾過助剤を添加することなく30乃至150メッシュの網あるいは同等の目開きを有する濾布を用いて不溶解分を除去し、次いで濾液よりガム分を回収し乾燥、粉砕することを特徴とする精製サイリウムガムの製造方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、濾過が濾材表面のみで行われているために、その水不溶成分の除去の観点からは精製度が充分とは言えず、高い溶液透明性を要求される用途に適用するには限界がある。
【0007】
一方、サイリウムを用いた粉状、錠剤、カプセル剤、ダイエット補助食品や食品等の製品は、定常的に摂取することで、高カロリー高脂肪に偏りがちな現代人の食生活改善に資するものと期待されている。定常的な摂取の為には、摂取する形態が、日常生活の中で無理なく自然に摂取できるものであることが肝要である。
【0008】
サイリウムを摂取する形態としては、サイリウム粉体をそのまま又は水に溶かして飲用する,薬品様形態(錠剤、カプセル剤等)のものを服用する、サイリウム含有食品(一般の食品中に添加されたもの)を飲食する、といった形態が考えられるが、日常生活の中で無理なく自然に摂取できるものとしては、サイリウム含有食品の形態が最も望ましいことは論を待つべくもない。
【0009】
サイリウム含有食品としては、特定保健用食品として、麺類(スナック麺、即席麺)、シリアル、粉末清涼飲料、アルミパック入り清涼飲料(ゼリー飲料)の4種類がある(平成14年2月20日現在)。これらの特定保健用食品は、いずれも、商品価値形成に高い溶液透明性を有するサイリウムが必須とされる製品ではないものである。これまでは、溶解時の透明性に優れたサイリウムが無かったが故に、ニアウォータ、ポーションゼリーといった透明性が要求されるサイリウム含有食品等の開発が困難な状況にあり、これを打開するために、優れた溶液透明性を有するサイリウムが望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術の現状を鑑み、本発明は、サイリウムが常態として持つ水または熱水に溶解しない成分やアレルギー発症の原因となる虞のあるタンパク質の含量が低く、水に溶解したときに優れた透明性を有する高度に精製されたサイリウムシードガムを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、本発明の精製サイリウムシードガムを用いた製品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、明確で客観的な指標に基づいて、高度に精製されたサイリウムシードガムを見い出すべく鋭意検討し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次に記載する事項により特定することができる。
(1)0.5質量%の濃度の水溶液の光線透過率(測定波長660nm、液厚10mm、温度25℃)が83%以上であり、タンパク質の含有率が0.5質量%未満である精製サイリウムシードガム。
(2)前記精製サイリウムシードガムの製造方法であって、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を溶媒に分散または溶解し、pH3.5〜4.5、60〜100℃で酸によって加水分解する工程(A)および加水分解反応物をケーキ濾過する工程(B)を有する方法。
(3)前記精製サイリウムシードガムを含む食品または飲料。
【0012】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物は、オオバコ科の植物 プランタゴオバタ(Plantago ovata) の種子から得られる種皮(ハスク)またはその粉砕物であり、多糖類をその主成分とするものである。
本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物としては、サイリウム、サイリウムハスク、サイリウムシードガム、イサゴールとして市販されているものを挙げることができる。本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の具体例として、ATLAS INDUSTRIES社(以下、ATLAS社と略す)、SHRADDHA EXPORTS社、URVESH PSYLLIUM INDUSTRIES LIMITED社等(何れもインド所在)の製造・販売するサイリウムパウダー、サイリウムハスクを挙げることができる。
【0013】
本発明においては、いかなる粒度、グレードのサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を用いても構わないが、ごみ等共雑物の少ないものが好ましい。
また、本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物として、これらを、例えば酸や加熱等によってわずかに処理し、これらの粘度を若干下げたものや、アルカリ性アルコール水溶液中にての加熱処理により予めタンパク質を低減させたものも原料として使用することができる。
【0014】
本発明の精製サイリウムシードガムの製造方法に係る加水分解工程(A)においては、加水分解反応は、上記のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を溶媒に分散もしくは溶解し、これに酵素を作用させる方法(酵素法と表すことがある)、酸性条件下で加水分解する方法(酸加水分解法と表すことがある)または酵素法と酸加水分解法とを組み合わせた方法(酵素/酸加水分解法と表すことがある)等によって行うことができる。酵素/酸加水分解法においては、酵素法を行った後に酸加水分解法を行うことも、酸加水分解法を行った後に酵素法を行うことも、酵素の至適pHが適合すれば、酵素法と酸加水分解法とを同時に行うこともできる。
【0015】
サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を酵素法により加水分解を行う際に用いることのできる溶媒としては、水を挙げることができる。加水分解反応を行なう際のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の使用量は、溶媒100質量部に対し、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物は、一般的には、0.1から5質量部であり、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部である。前記の使用量が、5質量部以下であれば得られる溶液の粘性が適性な範囲となり操作性が悪化する虞がなく、0.1質量部以上であれば生産性が低くなる虞もない。
【0016】
本発明に用いることのできる、酵素は、前述のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の分散液もしくは溶液の粘度を減じることができるものであれば、種類、起源によらず如何なるものを用いてもよい。例えば、夾雑タンパクを加水分解することで減粘効果のある、プロテアーゼと称される酵素群や、サイリウムを加水分解することのできるペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ等を用いることができる。これらの酵素は、単独で、もしくは、至適pH、至適温度等酵素の適性を考慮して、2種以上の酵素を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明に係る精製サイリウムシードガムが主に食品または食品添加物として使用されるため、本発明に用いる酵素は、精製サイリウムシードガム中に残留した場合においても食品または食品添加物の製造に用いることが可能なものであることが望ましい。
これらの点から、本発明に用いることのできるプロテアーゼの好ましい具体例としては、例えば、プロテアーゼ M「アマノ」、ウマミザイム、ニューラーゼF(以上、アマノエンザイム製)、スミチーム AP、スミチーム LP(以上、新日本化学工業製)、プロチンFA(大和化成製)等を挙げることができる。
また、ペクチナーゼの好ましい具体例としては、例えば、ペクチナーゼPL「アマノ」、ペクチナーゼG「アマノ」(以上、アマノエンザイム製)、スミチームAP-2、スミチーム SPC(以上、新日本化学工業製)、スクラーゼ S(三共製)等を、ヘミセルラーゼの好ましい具体例としては、例えば、ヘミセルラーゼ「アマノ」90G(アマノエンザイム製)、スミチーム ACH(新日本化学工業製)、ヘミセルラーゼ M(田辺製薬)等を、挙げることができる。
【0018】
本発明で用いる酵素の量は、精製度、比活性等を考慮して任意に設定できるが、経済性あるいは製品への酵素の混入の可能性を考慮すると必要最少限の量が好ましく、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物100質量部に対して、一般には、0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0019】
酵素法による加水分解反応の条件は、使用する酵素の至適pH、至適温度等を考慮して適切な条件を設定すればよいが、一般的には、pHは3〜10、好ましくは5〜9、温度は、一般的には10〜90℃、好ましくは20〜60℃である。pH調整は、酸性とするときは、塩酸、グルコノデルタラクトン等を、アルカリ性とするときは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を添加することにより容易に行うことができる。
【0020】
酵素法による加水分解反応は、溶液の粘度が1000 mPa・S(40℃、B型粘度計60rpm)以下となったときに停止すればよい。加水分解反応の停止は、アルコールの添加、加熱等の方法で酵素を失活させることで行う。精製工程の簡略化の上から、加熱法により加水分解反応を停止させるのが好ましい。
【0021】
酸加水分解法によりサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の加水分解反応を行う際に用いることのできる溶媒としては、水を挙げることができる。加水分解反応を行なう際のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の使用量は、前記酵素法と同じ程度とすればよい。
【0022】
酸加水分解法に使用する酸としては、塩酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができる。
上述したように、本発明の精製サイリウムシードガムが主に食品または食品添加物等の製品に使用されるため、これら酸も、精製サイリウムシードガム中に残存した場合においても食品または食品添加物等の製品の製造に用いることができるものであることが望ましく、これを考慮して選択するのが好ましい。これらの点から、上記の酸は、食品添加物グレードであることが好ましい。
本発明で用いる酸の量は、用いる酸の濃度、pKa値に応じて、後述する酸加水分解反応の条件を充たすことができる様に、適宜調整する。
【0023】
酸加水分解反応の条件は、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を処理する時間、反応温度等に依って任意に設定することができるが、一般的には、pHは2〜6、好ましくは3.5〜4.5、温度は、一般的には60〜100℃、好ましくは85〜95℃である。本発明では、pHを3.5〜4.5の範囲とする。酸加水分解反応は、溶液の粘度が200 mPa・S(75℃、B型粘度計30rpm)以下となったときに反応を停止すればよい。酸加水分解反応は、上述の塩基性物質を用いて液のpHを、一般的には6より大、好ましくは6.5〜10、に調整する等の方法で停止させることができる。
【0024】
サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を酵素/酸加水分解法で加水分解する場合においては、例えば、酵素法を行った後に酸加水分解法を行う場合においては、酵素による加水分解反応は上述した酵素法と同様にして行うことができる。酵素法による加水分解反応は、溶液の粘度が1000 mPa・S(40℃、B型粘度計60rpm)以下となるまで継続し、次いで、移行する酸加水分解反応の条件にpHを調整し、酸加水分解温度まで加熱することにより酵素を失活させると共に、次の酸加水分解法に移行する。酸加水分解法に移行後は、上述した酸加水分解法と同様にして、加水分解反応を行えばよい。
【0025】
上記の加水分解反応により得られた反応物(加水分解反応物と表すことがある)は、通常は、白〜黄色の微濁の性状を有し、その粘度は、一般的には、200 mPa・S(75℃、B型粘度計30rpm)以下である。
【0026】
本発明の加水分解反応物をケーキ濾過する工程(B)においては、加水分解反応物を、ケーキ濾過する。本発明で「ケーキ濾過」とは、濾過助剤を用いて濾過することをいう。
ケーキ濾過に用いることのできる濾過助剤は、加水分解反応物を濾過することができるものであれば、種類、形状、粒径等は問わないが、多糖類のケーキ濾過において一般的に用いられている、珪藻土やパーライト等を用いることができる。これらの平均粒径は、10〜20μmのものが好ましい。濾過助剤の使用量は、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物100質量部に対し、一般的には、0.01〜1000質量部、好ましくは0.1〜500質量部である。
加水分解反応物と濾過助剤の加え方は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、予め濾過助剤によってケーキ層を形成させた上で濾過する等の方法もあるが、一般的には、作業の容易さの点から、加水分解反応物に濾過助剤を攪拌混合しこれを濾過する方法が好ましく用いられる。
【0027】
濾材の材質は、濾過圧力に耐えるものであれば、特に限定されない。一般には、目開き100μm未満の網あるいは濾布等が濾材として好ましく用いられる。濾過方法は、加圧濾過、減圧濾過、または加減圧なしの自然濾過の何れを用いてもよい。濾過圧力は、加水分解反応物が濾過できる程度のものであればよく、加水分解反応物の性状によって適切な圧力を用いればよい。一般的には、濾過圧力は大気圧〜1 MPaであり、濾過温度は、一般的には、75〜95℃である。
【0028】
工程(B)で得られた濾液からの精製サイリウムシードガムの回収方法は、スプレードライ法、水親和性有機溶媒添加法等の公知の方法を採用することができる。精製度の高い製品を得るには、水親和性有機溶媒添加法が好ましい。
水親和性有機溶媒添加法に用いる水親和性有機溶媒は、人体への安全性に問題なければ種類は問わないが、本発明の精製サイリウムシードガムが主に食品又は食品添加物等の製品に使用されるため、その用に供するに足る精製度のものであることが望ましい。水親和性有機溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性アルコール等を使用することができる。
濾液に水親和性有機溶媒を添加すると、精製サイリウムシードガムの沈澱物を得ることができる。また、少量の電解質を加えること、および/またはpH調整により、沈澱生成の効果を上げることができる。これにより、沈澱生成に必要な水親和性有機溶媒量の低減が可能となる。
【0029】
尚、本発明の精製サイリウムシードガムを製造する工程においては、処理の促進、および/または殺菌の目的で、酵素を作用させる段階以外の各処理段階において、酸化剤等を適宜加えることもできる。さらに、処理中の雑菌汚染防止等の目的で、エタノール等の有機溶媒を加えてもよい。
【0030】
スプレードライ法や、あるいは水親和性有機溶媒添加法により得られた沈澱物等を回収し乾燥して得られた、精製サイリウムシードガムを、粉砕し、所望の精製サイリウムシードガムを粉体として得ることができる。精製サイリウムシードガムの沈澱物の乾燥は、所望の程度まで溶媒を除去することができる方法であればよく、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、電磁波照射等の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
また、粉砕方法も、特に限定されず、乾燥し固化した精製サイリウムシードガムを粉体状にできるものであれば如何なる粉砕方法を用いてもよい。
本発明の精製サイリウムシードガムを用いた製品としては、例えば、本発明の精製サイリウム粉体自体を製品としたもの、これを錠剤、カプセル等の薬品形態に形成した製品、これを添加した各種特定保健用食品、ダイエット食品、これを添加した飲料、化粧品、医薬部外品、医薬品添加物、玩具等を挙げることができる。
これら各種製品は、それぞれの製品に適した公知の方法を採用して、製造することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に基づき限定的に解釈されるものではない。本実施例において、特記しないかぎり、部および%は、それぞれ、質量部および質量%を表す。
【0032】
実施例1
塩酸でpH4.0に調整した2.5Lの水に25gのサイリウム(ATLAS社製)を分散し加熱昇温し、90℃で3時間、pHを4.0に保ちながら攪拌して溶解し加水分解反応を行なった。その後、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に戻し、撹拌しながら濾過助剤(三井金属製パーライト)25.0gを添加混合した。次いでこれを容量が3.0L、濾過面積が0.01m2のヌッチェ濾過試験器を用い、濾材を粗布(目開き50μm)として、90℃の温湯でジャケット保温しながら濾過圧力0.3MPaの条件で加水分解反応物を加圧濾過した。得られた精製サイリウムシードガム濾液に、1.6質量倍の蒸留イソプロピルアルコール(純度85%)を添加し精製サイリウムシードガムを沈澱させ、回収した。この沈澱物を加熱乾燥し、コーヒーミルで粉砕して18.5gの精製サイリウムシードガムの粉末を得た。得られた精製サイリウムシードガムにつき、0.5質量%の濃度となるように水に加え、加温溶解して調製した水溶液の光線透過率(測定波長660nm、液厚10mm、温度25℃)を可視分光光度計を用いて測定し、94.9%の値を得た。また、得られた精製サイリウムシードガムのタンパク質含量は0.43%であった。タンパク質含量はセミミクロケルダール法で測定した。
【0033】
実施例2
サイリウム(ATLAS社製)25gを水1.25Lに分散し、pH調整は行わず、加熱昇温し90℃で3時間攪拌して溶解させた。溶解後、冷水を加えて全量を2.5Lにするとともに温度を50℃に調整した。これに酵素「ウマミザイム」(天野製薬製)0.5gを撹拌しながら添加し、温度を50℃にて撹拌しながら5時間作用させ加水分解反応を行なった。ここで、酵素添加前にpH調整は行わなかったのは、用いた酵素の至適pHおよびpH安定性領域がサイリウムの1%溶液と同じ中性付近である為である。その後、再び加熱昇温し、90℃で30分攪拌して酵素を失活させた。この温度を保ちながら塩酸を用いてpHを3.0に調整し、引き続き90℃で3時間撹拌溶解した。これに水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0に戻し、実施例1と同条件にて沈澱、乾燥、粉砕の各処理をこの順に実施して、19.3gの精製サイリウムシードガムを得た。得られた精製サイリウムシードガムにつき、実施例1と同様にして測定した光線透過率は96.0%であった。また、実施例1と同様にして測定したタンパク質含量は0.18%であった。
【0034】
実施例3
実施例1にて得られた精製サイリウムシードガム5g、砂糖150gを水道水に分散して全量を1kgとした。これを85℃の水浴で攪拌溶解した後、クエン酸溶液およびクエン酸ナトリウム塩溶液を各々適量加えてpHを4.0に調整した。さらに、レモンフレーバー0.2gを添加し撹拌して溶解させたのち、室温に冷却し透明性の高いゼリー状飲料を得た。このゼリー状飲料につき、実施例1と同様にして測定した光線透過率は92%であった。
【0035】
比較例1
実施例1で用いたサイリウム(ATLAS社製)を、水に加え、加熱溶解し、濃度が0.5質量%の水溶液を調製した。実施例1と同様にして、この水溶液の光線透過率を測定した。得られた光線透過率は30.2%であった。また、実施例1と同様にして測定したサイリウム(ATRAS社製)のタンパク質含量は1.0%であった。
【0036】
比較例2
サイリウム粉砕品(SARDA GUMS & CHEMICALS社製)を用い、比較例1と同様にして、光線透過率およびタンパク質含量を測定した。光線透過率およびタンパク質含量は、それぞれ、48%および2.9%であった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の高度精製サイリウムシードガムは、未精製サイリウムが常態として持つ水または熱水に溶解しない成分の含有率が低く、その水溶液は高い光線透過率を有し、またアレルギー等の原因となりうるタンパク質含量も低い。本発明の精製サイリウムシードガムは、透明性を要求される商品等の、従来のサイリウムでは適用できなかった製品にまで適用範囲を広げることを可能とし、選択できる商品バリエーションを広げ、一般消費者によるサイリウムの定常的な摂取の機会を拡幅することを可能とした。
Claims (4)
- 0.5質量%の濃度の水溶液の光線透過率(測定波長660nm、液厚10mm、温度25℃)が83%以上であり、タンパク質の含有率が0.5質量%未満である精製サイリウムシードガム。
- 請求項1記載の精製サイリウムシードガムの製造方法であって、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を溶媒に分散または溶解し、pH3.5〜4.5、60〜100℃で酸によって加水分解する工程(A)および加水分解反応物をケーキ濾過する工程(B)を有する方法。
- 請求項1記載の精製サイリウムシードガムを含む食品。
- 請求項1記載の精製サイリウムシードガムを含む飲料。
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