JP4545390B2 - 精製サイリウムシードガムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、精製サイリウムシードガムの製造方法に関する。本発明の製造方法により製造した精製サイリウムシードガムは、食品添加物、食品、特定保健用食品の安定剤や食物繊維素材等として用いられる他、化粧料、医薬部外品、玩具等の人体に直接触れる用途や園芸、土木建築等の屋外用途まで、広く用いられる。
【0002】
【従来の技術】
サイリウム種皮(ハスク)を粉砕して得られるサイリウムシードガムまたはサイリウム種皮(ハスク)もしくはその粉砕物を温水や熱水で抽出して得られるサイリウムシードガム(これらを総称してサイリウムと表すことがある)は、食物繊維の豊富な、食品用素材として用いられてきた。近年、特にその整腸作用および/またはコレステロール低減作用といった作用を有するところから、厚生労働省から表示を許可された特定保健用食品の原材料として活発に利用されている。
【0003】
他方で、米国において、サイリウム種皮を含む食品によるアナフィラキシーショックの症例報告がなされ(例えば、非特許文献1参照。)て以来、日本国内においても、サイリウムに不純物として含まれるタンパク質によるアレルギーの発症が問題として取り上げられるようになってきた。また、この報告を受けて厚生省生活衛生局食品保健課長、食品化学課長は、サイリウムを含有する食品又は添加物にあっては、高度に精製したサイリウム製品を使用するよう関係営業者に対する指導をお願いする旨、各自治体の衛生主管部(局)長宛に通知した(例えば、非特許文献2参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
Kaplan MJ. Anaphylactic reactions to "Heartwise", [Letter] New Eng. J. Med., 1990:323:1072-3
【非特許文献2】
衛保第361号、衛化第169号 、平成9年12月26日
【0005】
サイリウムシードガムは、一般に用いられている他の植物性ガム、海藻由来ガム、発酵ガムに比して、優れた特性を有している。例えば、サイリウムシードガムの溶液は、幅広いpH領域(pH2〜10)において優れた安定性を有し、高い保水性を示し、クインスシードガム、アマシードガムに似た特異な粘度挙動を有すると共に、高濃度で糊感のない非常に弾力のあるゲルを形成するといった優れた特性を有している。この特性を利用して、サイリウムシードガムは、特許文献1に記載の菓子、特許文献2に記載の飲料、特許文献3に記載の食物繊維としての効果を謳った可食性組成物といった食品用途や、特許文献4に記載の化粧料、特許文献5に記載の歯磨組成物といった化粧料・医薬部外品や、特許文献6に記載の園芸用途等のさまざまな用途がある。
【0006】
未精製のサイリウムシードガムは、上述のアレルギーの問題が常に内在している。特に、人体に直接触れる食品用途、化粧料・医薬部外品用途では、これらの用途に使用するサイリウムシードガムが精製品であるべきことは論を待たない。
一方で、精製により上記不純物を取り除きサイリウムシードガムの上記問題点を解決することによる新規用途への展開の可能性が拓けることもまた自明である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−178381号公報
【特許文献2】
特開2002−051756号公報
【特許文献3】
特開平11−075776号公報
【特許文献4】
特開2002−145756号公報
【特許文献5】
特開2000−044446号公報
【特許文献6】
特許第2852321号公報
【0008】
精製サイリウムガムの製造方法としては、特許文献7に記載の方法がある。
【0009】
【特許文献7】
特開平1−197501号公報
【0010】
特許文献7に記載の方法は、精製方法としては優れているが、サイリウムの種子より剥離したサイリウムハスクを熱水分散した後、ケーキ濾過用濾過助剤を添加することなく30ないし150メッシュの網あるいは同等の目開きを有する濾布を用いて不溶解分を除去し、次いで濾液よりガム分を回収しなければならない。特許文献7には、サイリウムガム濃度1%以上のサイリウム熱水分散液を150メッシュ(目開き100μm)より小さい目開きの濾材を用いて濾過を行うのは非常に困難であることが開示されている。特許文献7に開示された方法では、高度な精製品を得るのに有効な小さい目開きの濾材を用いた濾過を行うと過大な濾過時間を要するか、あるいは中途で濾過を行うことができなくなる。
【0011】
多糖類の製造においては、一般に、多糖類を水等の溶媒に加えこれを加熱溶解して溶液または分散液を調製し濾過等の精製工程に供するが、濾過工程を効率的に実施することができるように溶液または分散液を調製する処理時間が製造コストに大きく関与している。このため、「濾過工程を効率的に実施することができるサイリウムシードガム溶液または分散液の調製に時間がかかる」ということは、「製造のコストがかかる」と同義である。このために、濾過工程を効率的に実施することができるサイリウムシードガム溶液または分散液の調製時間を短縮した、サイリウムシードガムの製造方法が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術の現状に鑑み、本発明は、サイリウムが常態として持つ水または熱水に溶解しない成分やアレルギー発症の原因となる虞のあるタンパク質の含量が低く、水に溶解したときに優れた透明性を有する高度に精製されたサイリウムシードガムを製造する方法であって、濾過工程を効率的に実施することができるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の溶液または分散液の調製に要する時間を短縮した、低コストの、効率的なサイリウムシードガムの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の溶液もしくは分散液の調製に要する時間を短縮し、濾過工程を効率的に実施することができるサイリウムシードガムの製造方法を見い出すべく鋭意検討を行い本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の溶液または分散液の粘度を、酸化剤を利用することにより短時間で所望の粘度まで減粘することができることを見出し完成されたものであり、次に記載する事項により特定することができる。
【0015】
(1)サイリウム種皮(ハスク)、またはその粉砕物の溶液もしくは分散液を、酸化剤を用いて減粘処理した後に、濾過することを特徴とする精製サイリウムシードガムの製造方法。
(2)前記酸化剤が、過酸化水素、次亜塩素酸、塩素酸、臭素酸、沃素酸、二クロム酸、過マンガン酸およびこれらの塩類ならびにさらし粉および高度さらし粉からなる群より選ばれた1種のまたは組み合わせて用いることが可能な2種以上の酸化剤であることを特徴とする(1)記載の精製サイリウムシードガムの製造方法。
(3)前記酸化剤が、さらし粉または次亜塩素酸もしくはその塩類であって、その添加量が、減粘処理を行うサイリウム種皮(ハスク)、またはその粉砕物の溶液もしくは分散液全体に占める有効塩素の濃度が20ppm以上となる量であることを特徴とする(2)記載の精製サイリウムシードガムの製造方法。
(4)前記サイリウム種皮(ハスク)、またはその粉砕物の溶液もしくは分散液のpHが、4.0以上6.0以下であることを特徴とする(3)記載の精製サイリウムシードガムの製造方法。
(5)前記減粘処理を行うサイリウム種皮(ハスク)、またはその粉砕物の溶液もしくは分散液の温度が、70℃以上であることを特徴とする(1)記載の精製サイリウムシードガムの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物は、オオバコ科の植物プランタゴオバタ(Plantago ovata)の種子から得られる種皮(ハスク)またはその粉砕物であり、多糖類をその主成分とするものである。
【0017】
本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物としては、サイリウム、サイリウムハスク、サイリウムシードガム、イサゴールとして市販されているものを挙げることができる。本発明で用いられるサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の具体例としては、ATLAS INDUSTRIES社(以下、ATLAS社と略す)、SHRADDHA EXPORTS社、URVESH PSYLLIUM INDUSTRIES LIMITED社等(何れもインド所在)の製造・販売するサイリウムパウダー、サイリウムハスクを挙げることができる。
【0018】
本発明においては、いかなる粒度、グレードのサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を用いても構わないが、ごみ等共雑物の少ないものが好ましい。
また、本発明においては、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物として、これらを、例えば加熱、酸や酵素を作用させる等によってわずかに処理し、これらの粘度を若干下げたものや、アルカリ性アルコール水溶液中で加熱処理して予めタンパク質を低減させたものを原料として使用することができる。
【0019】
本発明の製造方法における酸化剤による減粘処理は、上記のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を溶媒に分散または溶解し、これに酸化剤を作用させる方法によって行うことができる。
【0020】
サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を酸化剤により減粘処理する際に用いることのできる溶媒としては、水を挙げることができる。減粘処理を行なう際のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の使用量は、溶媒100質量部に対し、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物を、一般的には、0.1質量部から5質量部であり、好ましくは0.1質量部から2質量部、より好ましくは0.2質量部から1.5質量部である。前記の使用量を、5質量部以下とすると、得られる溶液の粘性が適性な範囲となり操作性が良好となり、0.1質量部以上とすると、生産性が向上する。
【0021】
本発明に用いることのできる、酸化剤は、前述のサイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物の分散液もしくは溶液(これらをサイリウムシードガム溶液と表すことがある)の粘度を減じることができるものであれば、如何なるものを用いてもよい。本発明に使用することのできる酸化剤としては、例えば、過酸化水素およびその塩類;次亜塩素酸、塩素酸、臭素酸、沃素酸等のハロゲン元素を含むオキソ酸類およびこれらの塩類ならびにさらし粉および高度さらし粉;二クロム酸、過マンガン酸等のクロムやマンガンを含むオキソ酸およびこれらの塩類等を挙げることができる。これらの酸化剤のなかでは、過酸化水素、次亜塩素酸、塩素酸、臭素酸、沃素酸、二クロム酸、過マンガン酸およびこれらの塩類ならびにさらし粉および高度さらし粉が好ましい。酸化剤は、製造する精製サイリウムシードガムの使用目的に応じたものであればより好ましい。例えば、製造する精製サイリウムシードガムを食品用途に使用するのであれば、食品添加物として販売されている、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水等がより好ましく用いられる。これらの酸化剤は、単独で、または、組み合わせて用いることができる。酸化剤については、2種以上の酸化剤を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明におけるサイリウム種皮(ハスク)等の減粘処理において用いる酸化剤の添加量は、減粘処理において、引き続いて行う濾過工程を効率的に実施することができる程度までサイリウムシードガムを減粘可能な量であれば特に限定されず、任意に設定することができる。
例えば添加する酸化剤が次亜塩素酸またはその塩類である場合においては、本発明に用いる酸化剤の好ましい添加量は、サイリウムシードガム溶液全体の質量に対し有効塩素の濃度が20ppm以上、好ましくは50ppm以上となるように設定すればよい。
【0023】
本発明における酸化剤を用いた減粘処理の条件は、処理対象であるサイリウムシードガムの品質、精製度、サイリウムシードガム溶液中のサイリウムシードガム濃度、溶媒または分散媒の酸化電位、使用する酸化剤の種類、濃度、酸化能、熱分解性、酸化能を有するpH範囲等を考慮して適切な条件を設定すればよい。具体的には、温度は、一般的には70℃以上、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上である。例えば加圧状態で加熱する場合には、100℃以上とすることができる。70℃以上の温度で減粘処理を行うと、反応が速やか進み、減粘処理に要する時間を短縮し生産コストを低減することができる。
【0024】
pHは、減粘処理において使用する酸化剤が酸化能を有するpH範囲とすればよい。例えば添加する酸化剤が次亜塩素酸またはその塩類である場合は、一般的には4.0以上6.0以下、好ましくは4.5以上5.5以下、より好ましくは4.8以上5.2以下である。pHを6.0以下とすると反応が速やかに進み処理時間を短縮することができる。また、pHを4.0以上とすると、生産設備が腐食されることもなく、減粘のコントロールも容易となり好ましい。pH調整は、pHを低くするときは、塩酸、グルコノデルタラクトン等の酸を、pHを高くするときは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性物質を添加することにより容易に行うことができる。
【0025】
本発明における酸化剤を用いた減粘処理は、サイリウムシードガム溶液の粘度が1000mPa・s(80℃、B型粘度計、30rpm)以下となったときに停止すればよい。上記減粘処理は、所望の場合には還元剤を適量添加することにより停止することができる。使用することのできる還元剤としては、例えばアスコルビン酸,エリソルビン酸およびそれらの塩類,チオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。使用した酸化剤が、pHを調整することにより酸化能を消失するものである場合には、例えば次亜塩素酸の塩類のような酸化剤であるときは、サイリウムシードガム溶液のpHを調整することにより反応を停止し、減粘処理を停止させる方法も用いることができる。pHの調節には、上記の酸またはアルカリ性物質を用いることができる。精製工程の簡略化の上から、pHを調整する方法により減粘処理を停止させる方法を採用するのが好ましい。
【0026】
次いで、上記の減粘処理により得られたサイリウムシードガム溶液(減粘処理溶液と表すことがある)を、濾材を用いて濾過する。本発明の精製サイリウムシードガムの製造方法においては、ケーキ濾過用濾過助剤を添加することなく濾過する方法、または、ケーキ濾過を行う方法の何れの方法を用いてもよい。なお、本発明で「ケーキ濾過」とは、濾過助剤を用いて濾過することをいう。
【0027】
濾材の材質は、濾過圧力に耐えるものであれば、特に限定されない。一般には、網あるいは濾布等が濾材として好ましく用いられる。濾材は、100μm以下の目開きを有するものが用いられ、ケーキ濾過を行う場合には、濾過助剤を通過させない目開きを有する濾材が好ましく用いられる。
【0028】
ケーキ濾過に用いることのできる濾過助剤は、減粘処理溶液を濾過することができるものであれば、種類、形状、粒径等は問わない。本発明の製造方法においては多糖類のケーキ濾過において一般的に用いられている、珪藻土やパーライト等を用いることができる。これらの平均粒径は、10〜20μmのものが好ましい。濾過助剤の使用量は、サイリウム種皮(ハスク)またはその粉砕物100質量部に対し、一般的には、0.01質量部〜1000質量部、好ましくは0.1質量部〜500質量部である。
【0029】
濾過助剤の減粘処理溶液への加え方は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、予め溶媒に濾過助剤を分散させた分散体を濾過して濾過助剤からなるケーキ層を形成させ、次いで減粘処理溶液を濾過する等の方法もあるが、一般的には、作業の容易さの点から、減粘処理溶液に濾過助剤を加え攪拌混合してこれを分散し濾過する方法が好ましく用いられる。
【0030】
濾過方法は、加圧濾過、減圧濾過、または加減圧なしの自然濾過の何れを用いてもよい。濾過圧力は、減粘処理溶液が濾過できる程度のものであればよく、減粘処理溶液の性状によって適切な圧力を用いればよい。一般的には、濾過圧力は大気圧から1MPaであり、濾過温度は、一般的には、40℃以上95℃以下である。
【0031】
濾液から精製サイリウムシードガムを回収する方法としては、スプレードライ法、水親和性有機溶媒添加法等の公知の方法を挙げることができる。精製度の高い製品を得るには、水親和性有機溶媒添加法が好ましい。
【0032】
水親和性有機溶媒添加法に用いることのできる水親和性有機溶媒は、特に限定されないが、本発明の方法によって製造された精製サイリウムシードガムの用途に応じ、適した水親和性有機溶媒を用いるのが好ましい。例えば、食品、食品添加物、化粧料、医薬部外品等の用途に使用する場合は、その用に供するに適した種類、精製度の水親和性有機溶媒を用いるのが好ましい。
水親和性有機溶媒の具体例としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性アルコール等を挙げることができる。
【0033】
濾液に水親和性有機溶媒を添加すると、精製サイリウムシードガムの沈澱物を得ることができる。また、少量の電解質を加えること、および/またはpHを調整することにより、沈澱生成の効果を上げることができる。これにより、沈澱生成に必要な水親和性有機溶媒の量を低減することができる。
【0034】
また、本発明の精製サイリウムシードガムの製造方法においては、殺菌または制菌の目的で、酸化剤による減粘処理以外の各処理段階において、酸化剤等を適宜加えることもできる。さらに、雑菌汚染防止等の目的で、殺菌または制菌作用を有するエタノール等の有機溶媒を加えてもよい。
【0035】
精製サイリウムシードガムは、精製したサイリウムシードガム溶液からスプレードライ法によって精製サイリウムシードガムを回収し、または水親和性有機溶媒添加法により得られた沈澱物を回収し、乾燥して得ることができる。得られた乾燥精製サイリウムシードガムは、粉砕し、分級し、所望のサイズを有する粉体として得ることができる。
【0036】
精製サイリウムシードガムの沈澱物の乾燥は、所望の程度まで溶媒を除去することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法の中から適した方法を選択すればよい。例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、電磁波照射等の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0037】
また、粉砕方法も、特に限定されず、乾燥し固化した精製サイリウムシードガムを粉体状にできる方法であれば如何なる粉砕方法を用いてもよい。
粉体状にした精製サイリウムシードガムの分級方法も、特に限定されず、必要に応じて如何なる分級方法を用いてもよい。例えば、篩等を用いることもできる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に基づき限定的に解釈されるものではない。本実施例において、特記しないかぎり、部および%は、それぞれ、質量部および質量%を表す。
【0039】
【実施例】
実施例1
2.5Lの水に25gのサイリウム(ATLAS社製)を分散し、加熱昇温し、90℃で30分間攪拌して溶解させた。そのまま90℃で撹拌しながら、塩酸を用いてpHを5.0に調整し、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素12%)を1.88ml添加した。引き続き90℃で30分間撹拌して減粘処理を行った。その後、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.3に戻し、撹拌しながら濾過助剤(パーライト)25.0gを添加し混合した。次いでこれを容量が3.0L、濾過面積が0.01m2のヌッチェ濾過試験器に濾材の粗布(目開き50μm)を取り付け90℃の温湯でジャケット保温しながら濾過圧力0.1MPaの条件で減粘処理溶液を加圧濾過した。減粘処理溶液の粘度は24mPa・s(80℃、B型粘度計30rpm)であり、濾過に要した時間は、2分であった。得られた精製サイリウムシードガム濾液に、1.5質量倍のイソプロピルアルコールを添加し精製サイリウムシードガムを沈澱させ、濾別し、回収した。この回収した沈澱物を60℃のプレート上で加熱乾燥し、コーヒーミルで粉砕して16.2gの精製サイリウムシードガムの粉末を得た。
得られた精製サイリウムシードガム粉末を水に加え、加温溶解して0.5質量%の濃度の水溶液を調製した。この水溶液の粘度は、546mPa・s(温度25℃、B型粘度計30rpm)であり、また光線透過率(測定波長660nm、液厚10mm、温度25℃)は95.5%であった。また、上記精製サイリウムシードガム粉末のタンパク質含量は0.1%であった。タンパク質含量はセミミクロケルダール法で測定した。
【0040】
実施例2
サイリウム(ATLAS社製)25gを用いて、濾過助剤を加えなかったこと以外は実施例1と同条件にして精製サイリウムシードガムを製造し、17.5gの精製サイリウムシードガムの粉末を得た。本実施例の減粘処理溶液の粘度は14mPa・s(80℃、B型粘度計30rpm)であり、濾過に要した時間は2分であった。実施例1と同様にして、得られた精製サイリウムシードガム粉末の物性値を測定したところ、0.5質量%水溶液の粘度は474mPa・s(温度25℃、B型粘度計30rpm)、光線透過率(測定波長660nm、液厚10mm、温度25℃)は84.2%であった。また、タンパク質含量は0.3%であった。
【0041】
比較例1
サイリウム(ATLAS社製)25gを用い、酸化剤の添加を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして溶解し、処理した。本比較例のサイリウム溶液について、実施例1と同条件にて濾過を試みたが、2時間経過後も殆ど濾過されなかった。本比較例のサイリウム溶液の粘度は4000mPa・s(80℃、B型粘度計30rpm)であった。かろうじて得られた微量の濾液から実施例1と同様にしてサイリウムの回収を試みたが、規定量以上のイソプロピルアルコールを添加してもサイリウムシードガムの沈殿は生じず、回収はできなかった。
【0042】
比較例2
塩酸でpH4.0に調整した2.5Lの水に25gのサイリウム(ATLAS社製)を分散し、90℃まで加熱昇温後、1時間、pHを4.0に保ちながら攪拌して減粘処理を行なった。その後の操作を実施例1と同条件にて行い、濾過を試みたが、2時間経過後も殆ど濾過されなかった。上記減粘処理サイリウム溶液の粘度は800mPa・s(80℃、B型粘度計30rpm)であった。かろうじて得られた微量の濾液から実施例1と同様にしてサイリウムの回収を試みたが、規定量以上のイソプロピルアルコールを添加してもサイリウムシードガムの沈殿は生じず、回収はできなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の精製サイリウムシードガムの製造方法により、短時間で、すなわち低コストで、高度に精製されたサイリウムシードガムを得ることが可能となった。本発明の精製サイリウムシードガムの製造方法により得られる精製サイリウムシードガムは、様々の製品への適用が可能である。例えば、前述の特定保健用食品の如く、スナック麺(カップラーメン)、即席麺、シリアル(コーンフレーク等)、粉末清涼飲料やスナック菓子等に配合する事も可能である。また、食品以外にも、本発明の製造方法により得られる精製サイリウムシードガム自体の特異なゲル物性および透明性を利用して、玩具、医薬品、医薬部外品、化粧料等およびその原材料への適用も可能である。
Claims (1)
- サイリウム種皮(ハスク)、またはその粉砕物の溶液もしくは分散液を、pH4.0以上6.0以下において酸化剤を用いて減粘処理した後に、濾過することを特徴とする精製サイリウムシードガムの製造方法。
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