JP2019059870A - ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ガラクトース部分分解物は、天然多糖類由来であり、化学修飾されていないことから人体および環境に安全であるため、該ガラクトース部分分解物を用いて製造された組成物は、食品、化粧品、または医薬品製剤等において幅広く利用され得る。(特許文献1、2参照)
かかる変色が発生すると、例えば、食品や化粧品等といったアルカリ性の条件下で加熱する工程を経て製造される用途に適用されたとき、製品の品質低下を招くことになる。
このように、従来のガラクトース部分分解物は、熱安定性が十分であるとはいい難い。
一方、ガラクトース部分分解物を製造する際には、作業性に優れることも要望されている。
また、従来の濃度でガラクトキシログルカンを含有する水溶液とβ−ガラクトシダーゼと反応させると、含水したゲル状であって、且つ、ペースト状であるガラクトース部分分解物が生成されるのに対し、従来よりも高い濃度でガラクトキシログルカンを含有する水溶液と、β−ガラクトシダーゼと反応させることによって、含水したゲル状であって、且つ、粒子状であるガラクトース部分分解物を生成させることができることを見出した。
通常、上記反応によって生成されたガラクトース部分分解物は、反応に使用した反応容器から取り出され、洗浄に使用する洗浄容器に移動させてから、洗浄される。このように取り出す際に、ガラクトース部分分解物が粒子状である場合の方が、ペースト状である場合よりも取り出し易く、よって、取り扱いが簡便であり、従って、作業性に優れることを見出した。なお、ペースト状のガラクトース部分分解物を粉末状にしようとすれば、乾燥工程が必要となるため、その分、多大な作業が発生することになる。
しかも、このような状態のガラクトース部分分解物を、特定のアルコール、または該アルコールと水とを含有する含水アルコールで洗浄することによって、遊離ガラクトース量を低減し得ることを見出した。
さらに、含水アルコールでガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を洗浄することによって、比較的少量で、また、同じ使用量であれば少ない洗浄回数で、遊離ガラクトースの含有量を3.0質量%以下にし得ることも見出して、本発明を完成するに至った。
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を製造する方法であって、
下記工程(1)〜(4)を含む工程を行うことによって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下である粉状のガラクトース部分分解物を製造する、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法である。
(1)5〜20質量%ガラクトキシログルカンと水とを含む水溶液中で、前記ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを反応させて、ガラクトース部分分解物を生成する工程、
(2)工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、メタノール、イソプロピルアルコール及び第三級ブチルアルコールよりなる群から選択される1つ以上のアルコール、または、該アルコールと水とを含有する含水アルコールで少なくとも1回洗浄する工程、
(3)工程(2)で得られた洗浄物を脱水する工程、
(4)工程(3)で得られた脱水物を乾燥する工程。
ここで、粒子状とは、ペースト状ではなく、複数の固形物の集合体であることを意味し、かかる複数の固形物は、一次粒子であっても、一次粒子が凝集した二次粒子であっても、これらの混合物であってもよい。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を上記アルコールまたはこれを含む含水アルコールで洗浄することによって、ガラクトース部分分解物中に含まれる遊離ガラクトースが、反応に用いた水(含水したガラクトース部分分解物に含まれている水)と共に、または、該反応に用いた水及び洗浄に用いた水と共に、アルコール中に移動することになる。よって、ガラクトース部分分解物中の遊離ガラクトースを、比較的多く、添加したアルコール、または、添加した含水アルコール中のアルコールに移動させることができる。
さらに、上記粒子状のガラクトース部分分解物を洗浄する方が、ペースト状のガラクトース部分分解物を洗浄する場合よりも、反応容器から洗浄容器に移動させることが容易であるため、取り扱いが容易であり、効率的であり、よって、作業性に優れる。
また、工程(3)にて、洗浄物を脱水することによって、上記のようにアルコール(洗浄液)中に移動させた遊離ガラクトースを、洗浄液と共に除去することができる。ここで、洗浄液がガラクトース部分分解物から隔離されず、これに接触している場合には、この状態で乾燥すると、洗浄液が残っている分だけ、ガラクトース部分分解物から洗浄液中に一旦移動させた遊離ガラクトースがガラクトース部分分解物に再度移動し、その結果、遊離ガラクトースを十分に低減できないおそれがある。しかし、洗浄物を脱水することによって、遊離ガラクトースを含有する洗浄液を除去することができるため、遊離ガラクトースを十分に低減することが可能となる。
そして、このようにして得られた脱水物を、工程(4)にて乾燥することによって、遊離ガラクトースが低減されたガラクトース部分分解物を得ることができる。
このように、反応直後(反応後に処理を加えない状態)において、含水してゲル状であって、且つ、粒子状であるガラクトース部分分解物を、上記アルコールまたは含水アルコールで洗浄し、脱水、乾燥するだけで、比較的多くの遊離ガラクトースを上記アルコールに移動させることができる。よって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下であるガラクトース部分分解物が優れた作業性で製造される。
残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下であることによって、ガラクトース部分分解物は、アルカリ性条件下での加熱による変色が、抑制されたものとなる。すなわち、熱安定性に優れた上記ガラクトース部分分解物となる。
よって、上記の通り熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、優れた作業性で製造し得る。
工程(2)において、工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、前記含水アルコールによって少なくとも1回洗浄することが好ましい。
よって、かかる構成によれば、含水アルコールで上記ガラクトース部分分解物を洗浄することによって、残存する遊離ガラクトース量を、より安全かつ経済的に低減し易くなる。
従って、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より安全かつ経済的に製造し得る。
工程(2)において、前記ガラクトース部分分解物の1〜4倍量の前記アルコールまたは前記含水アルコールと、前記ガラクトース部分分解物とを混合することによって洗浄を行うことが好ましい。
よって、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
前記含水アルコールにおける前記アルコールの濃度が、30〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
よって、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
前記アルコールがメタノールであることが好ましい。
よって、かかる構成によれば、アルコールとしてメタノールを用いることによって、脱水物をより短時間で乾燥し得る。また、乾燥時間が短くなる分、乾燥に晒されることによって悪影響が及ぼされるおそれを回避し得る。
従って、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
工程(1)で得られるガラクトース部分分解物が、含水したゲル状であって、且つ、粒子状であることが好ましい。
前記残存する遊離ガラクトース量が1.5質量%以下であることが好ましい。
従って、熱安定性により優れた上記ガラクトース部分分解物を、優れた作業性で製造し得る。
工程(2)において、前記洗浄を1回行うことが好ましい。
下記工程(5)、(6)をさらに行うことが好ましい。
(5)工程(4)で得られた乾燥物を粉砕する工程、
(6)工程(6)で得られた粉砕物を篩過する工程。
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を製造する方法であって、
下記工程(1)〜(4)を含む工程を行うことによって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下である粉状のガラクトース部分分解物を製造する、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法である。
(1)5〜20質量%ガラクトキシログルカンと水とを含む水溶液中で、前記ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを反応させて、ガラクトース部分分解物を生成する工程、
(2)工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、メタノール、イソプロピルアルコール及び第三級ブチルアルコールよりなる群から選択される1つ以上のアルコール、または、該アルコールと水とを含有する含水アルコールで少なくとも1回洗浄する工程、
(3)工程(2)で得られた洗浄物を脱水する工程、
(4)工程(3)で得られた脱水物を乾燥する工程。
このガラクトキシログルカンは、グルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖として有しており、主鎖としてβ−1,4結合してなるグルコースを有し、側鎖としてキシロースを有し、そのキシロースにさらに結合されたガラクトースを有する。
ガラクトキシログルカンは、いかなる植物由来のガラクトキシログルカンでもよく、例えばタマリンド、ジャトバ、ナスタチウムの種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギなどの穀物またはリンゴなどの果実の表皮から入手できる。最も入手し易く、含有量も多いことを考慮すると、好ましくは、豆科植物タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンである。かかるガラクトキシログルカンとしては、市販のものを採用し得る。市販品としては、例えば、グリロイド(登録商標)等が挙げられる。
なお、ガラクトキシログルカンとは、側鎖ガラクトースが後述する酵素処理による部分分解によって除去されていないガラクトキシログルカン(完全ガラクトキシログルカン)を意味する。また、かかる完全ガラクトキシログルカンは、ネイティブガラクトキシログルカンとも称される場合がある。
上記部分分解には酵素が用いられる。酵素としては、例えば、β−ガラクトシダーゼが挙げられる。
加えて、その結果、得られたゲル組成物の弾力性及び強度をより十分に発揮させ得る。
なお、ガラクトースの部分分解率(すなわち、ガラクトースの除去率)は、得られた部分分解物がセルラーゼ分解されることによって生成されるガラクトキシログルカンオリゴ糖量を、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称する。)(アミノカラム)で測定することにより算出することができる。
このようにpHが調整された水溶液にβ−ガラクトシターゼを添加し、該水溶液中で、ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを反応させる(酵素反応工程)。
次いで、反応溶液を加熱すること、または、反応溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリ成分を添加することによって、β−ガラクトシターゼを失活させる(酵素失活工程)。
なお、アルカリ成分によってβ−ガラクトシダーゼを失活させた後、さらに上記酸成分を添加することによって、反応溶液のpHを調整してもよい(中和工程)。
すなわち、ペースト状ではなく、複数の固形物の集合体である、未精製のガラクトース部分分解物が生成される。この複数の固形物は、一次粒子であっても、一次粒子が凝集した二次粒子であっても、これらの混合物であってもよい。
pH調整工程においては、添加する酸成分の濃度は、0.0005〜0.5質量%が好ましい。また、pHを、4.5〜6.5に調整することが好ましい。
酵素反応工程においては、反応温度は、40〜70℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜24時間が好ましく、1〜16時間がより好ましい。
酵素失活工程においては、加熱温度は、好ましくは90〜100℃であり、より好ましくは10〜60分である。また、添加するアルカリの濃度は、0.05〜5質量%であることが好ましい。
中和工程においては、反応溶液のpHが5.5〜7.5に調整されるように、酸成分を添加することが好ましい。
かかるアルコールまたは含水アルコールによる洗浄によって、ガラクトース部分分解物中から、添加したアルコール、または、添加した含水アルコール中のアルコールに遊離ガラクトースを移動させることができる。また、上記特定のアルコールまたは含水アルコールを用いることによって、比較的多くの遊離ガラクトースをガラクトース部分分解物中から上記特定のアルコール中に移動させることができる。さらに、ガラクトース部分分解物の反応直後のゲルを特に処理することなく、そのまま洗浄することで、簡便に遊離ガラクトースを移動させることができる。
上記アルコールのうち、メタノールが好ましい。メタノールは沸点が64.7℃であり、イソプロピルアルコールの沸点(82.6℃)よりも遥かに低いことから、工程(4)における乾燥において、工程(3)により得られた脱水物をより短時間で乾燥し得る。また、乾燥時間が短くなる分、乾燥に晒されることによって悪影響が及ぼされるおそれを回避し得る。
洗浄に用いるアルコールまたは含水アルコールの量は、未精製ガラクトース部分分解物の1〜4倍量(質量)であることが好ましい。
洗浄時間は、特に限定されるものではないが、1回の洗浄あたり、10〜120分間行うことが好ましく、30分〜60分間行うことがより好ましい。
洗浄温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
含水アルコールによる洗浄回数は、特に限定されない。洗浄を複数回行う場合は、洗浄が終了した後、工程(3)によって洗浄物を脱水し、得られた脱水物にアルコールまたは含水アルコールを加えて、再度次の洗浄を行い得る。また、1回の洗浄が終了した後、工程(3)によって洗浄物を脱水し、工程(4)によってアルコールまたは含水アルコールを乾燥させた後、得られた乾燥物にアルコールまたは含水アルコールを加えて、再度次の洗浄を行っても良い。例えば、洗浄を複数回行うと、その分、遊離ガラクトースを低減し得る一方、操作が煩雑になる傾向にある。この点を考慮すれば、洗浄を1回行うことが好ましい。
ここで、洗浄液がガラクトース部分分解物から隔離されず、これに接触している場合には、この状態で乾燥すると、洗浄液が残っている分だけ、ガラクトース部分分解物から洗浄液中に一旦移動させた遊離ガラクトースがガラクトース部分分解物に再度移動し、その結果、遊離ガラクトースを十分に低減できないおそれがある。しかし、洗浄物を脱水することによって、遊離ガラクトースを含有する洗浄液を除去することができるため、遊離ガラクトースを十分に低減することが可能となる。
工程(3)で得られた脱水物を工程(4)で乾燥することによって、遊離ガラクトースが低減された粉状のガラクトース部分分解物を得ることができる。
乾燥時間は、2〜30時間が好ましい。
真空乾燥機を用いる場合、その真空度は1〜100kPa(絶対圧)が好ましい。
かかる本実施形態の製造方法によって得られたガラクトース部分分解物は、従来のガラクトース部分分解物よりも、遊離ガラクトースを少なく含有している。すなわち、遊離ガラクトースの残存という点では、従来よりも精製されたガラクトース部分分解物といえる。
また、遊離ガラクトース量が少ない程、上記の着色が抑制され得る点を考慮すると、残存する遊離ガラクトース量は、好ましくは、1.5質量%以下である。
(5)工程(4)で得られた乾燥物を粉砕する工程
(6)工程(5)で得られた粉砕物を篩過する工程
粉砕機の回転数は、粉砕機能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、ハンマーミルを用いる場合には5000〜18000rpm、ピンミルを用いる場合には2000〜11000rpmが好ましい。サンプルミルを用いる場合には2000〜18000rpmが好ましい。
粉砕回数は、特に限定されない。例えば、粉砕状況に応じて、1回の粉砕で十分に粉砕できなかった場合には、粉砕を適宜繰り返して十分に粉砕することが好ましい。例えば、サンプルミルの場合には10〜60秒間の粉砕を、1〜3回行うことが好ましく、ハンマーミルやピンミルの場合には5〜20分間の連続粉砕を、1〜3回行うことが好ましい。粉砕回数が多すぎると、生じる熱によってガラクトース部分分解物が凝集を起こし、その水に対する溶解性が低下するおそれがある。しかし、粉砕回数が1〜3回であることによって、上記溶解性の低下を抑制し得る。
なお、メッシュとは、1インチの長さの間にある網目の数を示す値である。
下記工程(1)〜(4)を含む工程を行うことによって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下である粉状のガラクトース部分分解物を製造する方法である。
(1)5〜20質量%ガラクトキシログルカンと水とを含む水溶液中で、前記ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを反応させて、ガラクトース部分分解物を生成する工程、
(2)工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、メタノール、イソプロピルアルコール及び第三級ブチルアルコールよりなる群から選択される1つ以上のアルコール、または、該アルコールと水とを含有する含水アルコールで少なくとも1回洗浄する工程、
(3)工程(2)で得られた洗浄物を脱水する工程、
(4)工程(3)で得られた脱水物を乾燥する工程。
ここで、粒子状とは、ペースト状ではなく、複数の固形物の集合体であることを意味し、かかる複数の固形物は、一次粒子であっても、一次粒子が凝集した二次粒子であっても、これらの混合物であってもよい。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を上記アルコールまたはこれを含む含水アルコールで洗浄することによって、ガラクトース部分分解物中に含まれる遊離ガラクトースが、反応に用いた水(含水したガラクトース部分分解物に含まれている水)と共に、または、該反応に用いた水及び洗浄に用いた水と共に、アルコール中に移動することになる。よって、ガラクトース部分分解物中の遊離ガラクトースを、比較的多く、添加したアルコール、または、添加した含水アルコール中のアルコールに移動させることができる。
さらに、上記粒子状のガラクトース部分分解物を洗浄する方が、ペースト状のガラクトース部分分解物を洗浄する場合よりも、反応容器から洗浄容器に移動させることが容易であるため、取り扱いが容易であり、効率的であり、よって、作業性に優れる。
また、工程(3)にて、洗浄物を脱水することによって、上記のようにアルコール(洗浄液)中に移動させた遊離ガラクトースを、洗浄液と共に除去することができる。ここで、洗浄液がガラクトース部分分解物から隔離されず、これに接触している場合には、この状態で乾燥すると、洗浄液が残っている分だけ、ガラクトース部分分解物から洗浄液中に一旦移動させた遊離ガラクトースがガラクトース部分分解物に再度移動し、その結果、遊離ガラクトースを十分に低減できないおそれがある。しかし、洗浄物を脱水することによって、遊離ガラクトースを含有する洗浄液を除去することができるため、遊離ガラクトースを十分に低減することが可能となる。
そして、このようにして得られた脱水物を、工程(4)にて乾燥することによって、遊離ガラクトースが低減されたガラクトース部分分解物を得ることができる。
このように、反応直後(反応後に処理を加えない状態)において、含水してゲル状であって、且つ、粒子状であるガラクトース部分分解物を、上記アルコールまたは含水アルコールで洗浄し、脱水、乾燥するだけで、比較的多くの遊離ガラクトースを上記アルコールに移動させることができる。よって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下であるガラクトース部分分解物が優れた作業性で製造される。
残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下であることによって、ガラクトース部分分解物は、アルカリ性条件下での加熱による変色が、抑制されたものとなる。すなわち、熱安定性に優れた上記ガラクトース部分分解物となる。
よって、上記の通り熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、優れた作業性で製造し得る。
工程(2)において、工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、前記含水アルコールによって少なくとも1回洗浄することが好ましい。
よって、かかる構成によれば、含水アルコールで上記ガラクトース部分分解物を洗浄することによって、残存する遊離ガラクトース量を、より安全かつ経済的に低減し易くなる。
従って、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より安全かつ経済的に製造し得る。
工程(2)において、前記ガラクトース部分分解物の1〜4倍量の前記アルコールまたは前記含水アルコールと、前記ガラクトース部分分解物とを混合することによって洗浄を行うことが好ましい。
よって、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
前記含水アルコールにおける前記アルコールの濃度が、30〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
よって、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
前記アルコールがメタノールであることが好ましい。
よって、かかる構成によれば、アルコールとしてメタノールを用いることによって、脱水物をより短時間で乾燥し得る。また、乾燥時間が短くなる分、乾燥に晒されることによって悪影響が及ぼされるおそれを回避し得る。
従って、熱安定性に優れたガラクトース部分分解物を、より優れた作業性で製造し得る。
工程(1)で得られるガラクトース部分分解物が、含水したゲル状であって、且つ、粒子状であることが好ましい。
前記残存する遊離ガラクトース量が1.5質量%以下であることが好ましい。
従って、熱安定性により優れた上記ガラクトース部分分解物を、優れた作業性で製造し得る。
工程(2)において、前記洗浄を1回行うことが好ましい。
下記工程(5)、(6)をさらに行うことが好ましい。
(5)工程(4)で得られた乾燥物を粉砕する工程、
(6)工程(5)で得られた粉砕物を篩過する工程。
攪拌できる容器に、ガラクトキシログルカン〔DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標)〕1gと水99gとを添加し、汎用撹拌機を用いて75℃で15分撹拌し、基質を1質量%含有する1質量%ガラクトキシログルカン水溶液を得た。精製酵素β−ガラクトシダーゼを用い、1質量%ガラクトキシログルカン水溶液を、酵素濃度2.4×10−5質量%、pH5.6、50℃で反応させた後、100℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。反応溶液は、反応開始後約15時間でゲル化した。これにより、含水してゲル状であって、且つ、ペースト状である組成物を得た(従来のペースト状の未精製ガラクトース部分分解物)。得られた組成物の写真を、図1に示す。
得られたペースト状の組成物におけるガラクトース除去率を、以下の方法で算出した。
得られた未精製ガラクトース部分分解物について、以下に示す方法で、残存する遊離ガラクトースの含有量を、ガラクトース部分分解物の量に対する百分率として測定したところ、6.89質量%であった。
ガラクトース部分分解物0.25gを水99.75gに溶解し、0.25質量%の試料溶液を得た。試料溶液200μLと、10mM β−NAD(β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)50μLと、水200μLと、1.0Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)500μLとを混合し、GDH(ガラクトースデヒドロゲナーゼ)10μLを加えた後、室温で1時間静置した。1時間経過後、波長340nmでの試料溶液の吸光度を測定した。
上記1時間経過後には、ガラクトース部分分解物中の遊離ガラクトース量に応じてβ−NADHが生成している。そこで、生成したβ−NADHのモル吸光係数(6200μL/μmol・cm)と、上記測定で得られた吸光度とから、ガラクトース部分分解物中の遊離ガラクトースの量(g)を算出した。
このようにして、ガラクトース部分分解物中の遊離ガラクトースの量を定量した。
攪拌できる容器に、ガラクトキシログルカン〔DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標)〕100gと水900gとを添加し、縦型混練機を用いて90℃で30分撹拌し、基質を10質量%含有する10質量%ガラクトキシログルカン水溶液を得た。これに10質量%クエン酸水溶液を0.3g加えてpH5.8に調整した。精製酵素β−ガラクトシダーゼを用い、pH5.8に調整された10質量%ガラクトキシログルカン水溶液中で、ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを、酵素濃度1.4×10−4質量%、55℃で撹拌しながら反応させた後、8質量%水酸化ナトリウム水溶液を5g加えて失活させて反応を停止させ、さらに10質量%クエン酸水溶液5gを加えてpH7程度に中和した。反応溶液は、反応開始後約2時間でゲル化し、また、ゲル化と共に撹拌を受けることによって粒状化され、これにより、含水してゲル状であって、且つ、粒子状である組成物(粒子状の未精製のガラクトース部分分解物)を得た。この組成物は、直径0.1〜10mm程度の細かな粒子状の固形物の集合体であった。得られた組成物の写真を、図2に示す。
得られた粉状の未精製ガラクトース部分分解物について、上記に示す方法で、残存する遊離ガラクトースの含有量を測定したところ、5.84質量%であった。
メタノールとして、メタノール(ナカライテスク社製、ナカライ規格一級、99.0%以上(GC))を用いた。
イソプロピルアルコールとして、2−プロパノール(ナカライテスク社製、ナカライ規格一級、99.0%以上(GC))を用いた。
具体的には、表1に示す通り、500mLガラスビーカーに所定量の脱イオン水と、所定量のメタノールまたはイソプロピルアルコールとを加えて混合して、含水アルコールを調製し、これを洗浄液として用いた。また、水と混合していない(含水していない)メタノール及びイソプロピルアルコールも、洗浄液として用いた。次いで、汎用撹拌機〔新東科学社製、型式:BL1200〕によって攪拌して分散しながら、含水状態の未精製ガラクトース部分分解物100gを加え、そのまま攪拌を続けることによって、室温で60分間、1回の洗浄を行った。
洗浄終了後、洗浄物を室温で吸引ろ過することによって、10分間脱水した。
得られた脱水物をプラスチックトレーに移し、50℃の送風乾燥機〔エスペック社製、型式:SPH−201〕で10〜15時間乾燥した。
得られた乾燥物を小型粉砕機(サンプルミル)〔協立理工社製、型式:SK−M2〕で、18000rpmで10秒粉砕し、50メッシュ(目開き:150μm)の篩で篩過した。
50メッシュ篩上に残った粒子を、再度、粉砕して篩過し、既に得られた篩過物と混合することによって、実施例1〜12の粉状の精製ガラクトース部分分解物を、各5〜9g得た。
また、洗浄回数を2回とすること以外は実施例1〜12と同様にして、実施例13の精製ガラクトース部分分解物を5g得た。具体的には、上記と同様に1回目の洗浄を行った後、上記と同様の脱水を行い、脱水後、上記と同様に2回目の洗浄を行い、その後、上記と同様にして脱水及び乾燥を行い、篩過を行うことによって、実施例13の粉状の精製ガラクトース部分分解物を得た。
さらに、製造例2と同様にして得られた含水状態の未精製ガラクトース部分分解物を、上記洗浄も、その後の脱水も乾燥も行うことなく、製造例1と同様にして、乾燥、粉砕及び篩過を行って、比較例2の粉状の未精製ガラクトース部分分解物を得た。
そして、実施例1〜13、比較例1、2について、上記と同様にして、遊離ガラクトース量を定量した。結果を表1〜表3に示す。
洗浄回数を2回に増やすと、残存する遊離ガラクトース量はさらに低減された。
また、洗浄温度を50℃、60℃に変更すること以外は実施例2と同様に洗浄して、精製ガラクトース部分分解物を得た場合でも、実施例2と同程度の遊離ガラクトース量の低減効果が見られた。
洗浄時間を10分、30分、120分に変更すること以外は実施例2の条件と同様にして、精製ガラクトース部分分解物を得た場合でも、実施例2と同程度の遊離ガラクトース量の低減効果が見られた。
製造例2の未精製ガラクトース部分分解物は、粒子状であるため、反応容器から洗浄容器に移動させ易く、作業性が良好であった。これに対し、製造例1の未精製ガラクトース部分分解物は、ペースト状であるため、反応容器から洗浄容器に移動させ難いことは、明らかであった。
300mLステンレスビーカーに脱イオン水196g、実施例1の粉状の精製ガラクトース部分分解物(遊離ガラクトース量:1.23%)4gまたは比較例2の粉状の未精製ガラクトース部分分解物(遊離ガラクトース量:5.84%)4gを入れ、撹拌棒で混合して軽く分散させた後、冷凍庫に1時間保管した。その後、汎用撹拌機〔新東科学社製、型式:BL1200〕を用いて室温で30分間撹拌し、ガラクトース部分分解物を2質量%含有する水溶液を調製した。各水溶液25gを50mL容量のコニカルチューブに入れ、さらに4質量%水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ0g(0質量%)、0.15g(0.012質量%)、0.30g(0.024質量%)、0.50g(0.04質量%)、1.00g(0.08質量%)加え、計50gとなるように脱イオン水を加えて混合して、試料溶液を調製した。得られた試料溶液を85℃の湯浴に浸け、試料溶液の温度が80℃に達してからさらに20分加熱し、放冷した後、室温にて、ポータブルpHメーター〔堀場製作所社製、型式:B−712〕を用いて試料溶液のpHを評価し、カラーメーター〔スガ試験機社製、型式:SM−T、光路透過、C光2度視野〕を用いて試料溶液の色相(b値)を評価した。
b値は、ハンターのLab表色系における色相・彩度を表す色座標であり、正の値は黄色味を示し、その値が大きいほど黄色味が強くなることを示す。
結果を表4に示す。
300mLステンレスビーカーに脱イオン水197.5g、実施例1の粉状の精製ガラクトース部分分解物(遊離ガラクトース量:1.23%)2.5gまたは比較例2の粉状の未精製ガラクトース部分分解物(遊離ガラクトース量:5.84%)2.5gを入れ、汎用撹拌機〔新東科学社製、型式:BL1200〕を用いて氷温(1±1℃)で1時間撹拌し、ガラクトース部分分解物を1.25質量%含有する水溶液を調製した。
得られた試料溶液を1±1℃の水浴に浸け、1時間静置した後、B形粘度計〔東機産業社製、型式:TVB−25L〕を用いて試料溶液の粘度(M2ロータ、30rpm、1分間の値)を測定した。その後、試料溶液を35gずつガラス製ゲルカップに移し、40℃の恒温器〔三洋電機(現、パナソニック)社製、型式:MIR−153〕に3時間静置後、クリープメーター〔山電社製、型式:RE2−33005S〕を用いて試料溶液のゲル破断応力(8mmのプランジャー、1mm/秒)を測定した。
結果を表5に示す。
また、本実施形態の製造方法によれば、粒子状の未精製ガラクトース部分分解物を洗浄する方が、ペースト状の未精製ガラクトース部分分解物を洗浄する場合よりも、作業性に優れることがわかった。
Claims (9)
- ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を製造する方法であって、
下記工程(1)〜(4)を含む工程を行うことによって、残存する遊離ガラクトース量が3.0質量%以下である粉状のガラクトース部分分解物を製造する、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法:
(1)5〜20質量%ガラクトキシログルカンと水とを含む水溶液中で、前記ガラクトキシログルカンとβ−ガラクトシダーゼとを反応させて、ガラクトース部分分解物を生成する工程、
(2)工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、メタノール、イソプロピルアルコール及び第三級ブチルアルコールよりなる群から選択される1つ以上のアルコール、または、該アルコールと水とを含有する含水アルコールによって少なくとも1回洗浄する工程、
(3)工程(2)で得られた洗浄物を脱水する工程、
(4)工程(3)で得られた脱水物を乾燥する工程。 - 工程(2)において、工程(1)で得られたガラクトース部分分解物を、前記含水アルコールによって少なくとも1回洗浄する、請求項1に記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 工程(2)において、前記ガラクトース部分分解物の1〜4倍量の前記アルコールまたは前記含水アルコールと、前記ガラクトース部分分解物とを混合することによって洗浄を行う、請求項1または2に記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 前記含水アルコールにおける前記アルコールの濃度が、30〜80質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 前記アルコールがメタノールである、請求項1〜4のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 工程(1)で得られるガラクトース部分分解物が、含水したゲル状であって、且つ、粒子状である、請求項1〜5のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 前記残存する遊離ガラクトース量が1.5質量%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 工程(2)において、前記洗浄を1回行う、請求項1〜7のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法。
- 下記工程(5)、(6)をさらに行う、請求項1〜8のいずれかに記載のガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造方法:
(5)工程(4)で得られた乾燥物を粉砕する工程、
(6)工程(5)で得られた粉砕物を篩過する工程。
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