JP3998477B2 - セルロース複合体とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、食品、化粧品、工業用添加剤として有用なセルロースと水溶性物質との新規な複合体とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セルロース単体の機能を高め、取り扱い性を向上させ、種々の用途に応用する目的で、セルロースと水溶性物質との複合体が開発され、種々の提案がなされている。
特公昭40−12174号公報では、水に容易に分散する結晶セルロースが提案されている。このセルロース分散体は、100μm以上の粗大粒子が含まれるため、飲料や化粧品に使用したとき、ざらつきを感じるという問題点を有していた。これを改善するため、特開平7−268129号公報では、微細セルロース50〜98重量%と水溶性ガム類および親水性物質50〜2重量%からなる組成物を水に再分散したとき、10μm以上の長さの粒子のアスペクト比が3.0以下であり、コロイド分画が65%以上である水分散性の複合体が開示されている。しかし、セルロース原料は、パルプ等の酸加水分解、洗浄、水への再分散、摩砕と製造工程が長く煩雑であるため、なお改善が望まれていた。
【0003】
また、特許第3007363号公報には、微生物セルロース産生菌を培養する培地中に高分子物質を添加し微生物セルロースと高分子物質の複合体および複合体を含有する食材が開示されている。この方法では、生産性が極めて悪いため、実用化の障害になっていた。また、これらのセルロースはいずれもセルロースI型結晶系であり、セルロースII型結晶形態をもつセルロースと水溶性物質との複合体は知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医薬品、食品、化粧品、工業用添加剤として有用なセルロースと水溶性物質との複合体、及びその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、セルロースを超臨界水または亜臨界水で分解してセルロースを可溶化し、その後、水溶性物質を添加することにより、一定の重合度と結晶性をもつセルロースと水溶性物質との複合体が容易に形成されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
1.平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解した、平均重合度13以上100以下であり、セルロースI型分率0.1以下、かつセルロースII型分率0.5以上であるセルロースと、水溶性有機物質とからなる複合体、
2.平均重合度13以上100以下であり、かつセルロースII型分率0.7以上であるセルロースと、水溶性有機物質とからなる上記1.記載の複合体、
3.平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解し、溶解状態で、水溶性有機物質を添加することを特徴とする上記1.または2.記載のセルロース複合体の製造方法、
4.平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させ、その後冷却して、温度250℃以上350℃以下の亜臨界水と1分以上10分以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解し、溶解状態で、水溶性有機物質を添加することを特徴とする上記1.または2.記載のセルロース複合体の製造方法、
である。
【0007】
一般的にセルロースとはβ−1,4−グリコシド結合した直鎖状の結晶体のことを指すが、本発明のセルロースは、結晶体のみならず、結晶体でない直鎖状の高分子やオリゴマーをも含める。
本発明のセルロースの平均重合度(DP)、セルロースI及びセルロースII型結晶成分の分率(χI およびχII)は、下記手順で算出した。
セルロースI型結晶成分の分率(χI )は、セルロース分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源Cu−Kαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0゜における絶対ピーク強度h0 と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 から、下記(1)式によって求められる値を用いた。
【0008】
同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源Cu−Kαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h0 *とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 *から、下記(2)式によって求められる値を用いた。
χI =h1 /h0 (1)
χII=h1 */h0 * (2)
図1に、χI およびχIIを求める模式図を示す。
なお、セルロース試料は、減圧乾燥法等の手段で乾燥して、乾燥セルロース試料とした。
【0009】
本発明で規定するセルロースの平均重合度(DP)は、上述の乾燥セルロース試料をカドキセン(CdO/NH2CH2CH2NH2/NaOH/H20 = 5/28/1.4/65.6,w/w/w/w) に溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(3)および換算式(4)により算出した値を採用した。
[η]=3.85×10-2×MW0.76 (3)
DP=MW/162 (4)
【0010】
通常、医薬添加剤、食品添加剤、化粧品添加剤、工業添加剤に使用されるセルロ−スは、天然由来のセルロースI型結晶系である。セルロースI型結晶系は、セルロースが高度に配向、凝集した形態であるので、摩砕等の機械的加工がきわめて難しいのが通常である。木材、古紙等、地球上に豊富に存在するバイオマス資源を、粉体等産業上利用しやすい形態にするため、一般に塩酸や硫酸等による加水分解が行われる。しかし、この方法でも、非結晶部分から選択的に加水分解し、緻密な構造であるセルロースI型高結晶部分は反応せず、結果として加水分解生成物は原料のセルロースI型結晶系を保っている。
【0011】
本発明のセルロースは、セルロースI型とは異なり、結晶形態がII型であり、かつ平均重合度が比較的低いため、二次加工(粉砕、摩砕)がきわめて容易にできるという特徴がある。構成するセルロ−スは固体であることが必須条件である。構成するセルロースの平均重合度が13未満の場合、水溶性になるため、本発明の効果は得られない。また、平均重合度が100を越えると、複合体の水中での摩砕等のセルロ−ス粒度コントロールが難しくなる。
【0012】
本発明においては、特定の平均重合度と結晶形態を有するセルロースと水溶性物質と複合化することにより、種々の機能、例えば分散安定性、乳化安定性、乾燥皮膜物性、バインダー機能、食材としての口あたり、種々のゲル化、粘度コントロール等の応用物性制御が無限に可能になる。
特に、複合体を水中で分散させる場合、用途に応じて水溶性物質、複合体濃度、分散機を選んで攪拌力を制御することにより種々の物性の分散液やゲル状態を自由自在に作り出すことも可能である。このことから、本セルロース複合体は産業応用上きわめて有用である。
【0013】
本発明でいう水溶性物質とは、常温で水に容易に溶解する有機物質であり、セルロースとの相溶性が良好な物質であれば種類を問わない。例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グルコース、マルトース、フラクトース、トレハロース、水溶性デキストリン、セルロースオリゴマー等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、クイストシードガム、カラヤガム、アラビアガム、トラガントガム、ガティガム、アラビノガラクタン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム等の天然産水溶性ガム類、アルギン酸およびその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等の水溶性合成高分子類、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体類、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルなどの非イオン性界面活性剤、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類が挙げられる。このうち、保護コロイド性を有し、水分散状態での分散安定性を増す機能を有する水溶性ガム類、セルロース誘導体類が好ましい。
【0014】
次に、本発明のセルロース複合体の製造方法を説明する。
本発明における超臨界水とは、374℃以上、22.1MPa(臨界点)以上の状態にある水と定義する。亜臨界水とは、臨界点近傍の状態にある熱水のことであり、250℃以上375℃以下、15MPa以上22.1MPa以下の水と定義する。
木材パルプ、精製リンター、結晶セルロース、粉末セルロ−ス、古紙、麦わら、稲わら、再生セルロース繊維等のセルロ−ス素材を、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0. 01秒以上〜5秒以下接触させて、セルロース素材を加水分解して溶解し、冷却する。
【0015】
温度条件は、セルロースの収率および物性に大きく影響する。250℃未満の場合、生成物中に原料セルロースI型が大部分残存するため本発明のセルロースは得られない。450℃を越えると、加水分解および熱分解が過度に進行し、グルコース等の水溶性物質がほとんどになり、本発明のセルロースは得られない。好ましくは温度350℃以上400℃以下、圧力25MPa以上である。最も好ましくは温度370℃以上390℃以下、圧力35MPa以上である。
【0016】
さらに、セルロースと超臨界水または亜臨界水との接触反応時間はセルロースの収率に大きく影響する。0. 01秒未満の場合、反応が充分進行せず、生成物中に原料セルロースI型が大部分残存し、本発明のセルロースは得られない。5秒を越えると加水分解および熱分解が過度に進行し、グルコース等の水溶性物質がほとんどになり、本発明のセルロースは得られない。好ましくは0. 05秒以上1秒以下である。
超臨界水または亜臨界水との反応に用いる装置は特に限定されないが、反応時間を自由に制御できる流通式のものが好ましい。例えば図2に示す装置が好ましく使用できる。昇温した水と原料セルロースの水スラリーを混合し、所定温度にした後反応管を通し、直後に常温の水を混合して急冷する。このように処理することにより反応時間を1秒以下に制御することが可能となる。
【0017】
図2に本発明で好ましく用いられる反応装置の一例を概略系統図で示す。水容器1中の水を水ポンプ2で所定の圧力に昇圧する。その後、ヒーター3で加熱し、所定の温度に昇温させる。これを加熱水Aとする。一方、原料セルロースは水と混合してスラリー状態として容器4に入れる。スラリーポンプ5で昇圧する。これを原料スラリーBとする。加熱水Aと原料スラリーBは混合して超臨界水反応管6を通し第一段階の反応をさせる。その後、冷却水Cを混合して第二段階の反応温度にまで冷却し、亜臨界水反応管9で第二段階の反応をさせる。第二段階の反応を行なわせない場合には亜臨界水反応管9を通さず、直接冷却器10に通してもよい。その後、冷却器10で50℃以下まで冷却し、フィルター11で未溶解固形分を除去し、背圧弁12を通して処理水を容器13に集める。
【0018】
反応直後の水溶液には、低分子量のグルコースや水溶性オリゴマーとともに本発明の平均重合度10以上100以下であり、セルロースI型分率0.1以下、かつセルロースII型分率0.5以上であるセルロースが溶解している。ここに、水溶性物質を添加し、濃縮することにより、本発明のセルロース複合体が沈殿もしくはゲル状化し、分離可能となる。ろ過等により分離をした後、乾燥、粉砕することにより、複合体を得る。このとき、水中で共存する水溶性物質を除去せず、濃縮、乾燥してもかまわない。また、超臨界水または亜臨界水での反応直後の溶解状態のまま静置し、析出したセルロースをろ過等で分離し、湿ケークの状態にし、該湿度ケーク状態にセルロースに水溶性物質を粉体で配合し、混練機で混合し、乾燥、粉砕してもよい。
【0019】
本発明で使用する混練機器としては種類を問わないが、たとえば、バッチニーダー、エキストルーダー、プラネタリーミキサー等が挙げられる。乾燥機としては、スプレードライヤー、真空乾燥機、ベルトドライヤー、ドラムドライヤー、流動層乾燥機等が挙げられる。
従来技術では、セルロースII型にするには、いったん化学薬品、例えば、ビスコース、銅アンモニア、カドキセン、高濃度アルカリ等にセルロースを溶解した後、水中で再生することにより得られるが、これらはいずれも、危険で有害な化学薬品であり、人体かかわる医薬、食品、化粧品用途には不向きである。
本発明では、無害で豊富にある水を使用して反応させて、結晶形態、重合度を制御したセルロースを生成させるものである。したがって、化学合成品、化学処理再生品と比較して、微量有害物の発生懸念は低いため、安全性は高い。
【0020】
本発明の複合体は、種々の用途に使用できる。すなわち、医薬用途では、例えば錠剤の賦形剤、造粒用バインダー、コーティング剤、検査試薬担体、クロマト担体等に使用できる。食品用途では、低カロリーの機能性食材、ゲル状食材のほか、分散安定剤、乳化安定剤、形状安定剤、離水防止剤等の食品添加剤等として使用できる。また、化粧品では、パック剤、スクラブ剤、ファンデ−ション基材、感触改良剤等に使用できる。また、工業用途では、種々の工業薬品、製剤の分散安定剤、セラミックス製造プロセスのバインダー、造粒用バインダー、コーティング剤等に使用できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
結晶セルロース(旭化成株式会社製、アビセル(登録商標)PH101)を水に分散し、固形分4重量%のスラリーとした。図2に示す流通式超臨界水反応装置を用い、原料スラリー1部に対して、あらかじめ加熱・加圧しておいた超臨界水5部を混合した。得られた0.67重量%原料の原料スラリーを380℃、30MPaの条件で超臨界水反応管に0. 12秒間滞留させた。その後、室温の水を反応後のスラリーに混合し、急冷した。フィルターで固形分をろ過して除去した後、背圧弁で常圧に戻し、セルロース溶解水を容器に集めた。12時間静置後、生成した析出物をろ過した。ろ過後の取得物を乾燥して結晶化度と平均分子量を測定したところ、セルロースI型分率は0、セルロースII型分率は0. 7、平均重合度は45であった。析出物収率は、乾燥重量換算で、原料に対して31重量%であった。
【0022】
一方、反応直後のセルロース溶解液に、乾燥重量換算で、セルロース10部に対し、1部のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Nacalai tesque)を加え、このまま、12時間静置後、真空エバポレーターで全体量の約1/10まで水を留去し、濃縮した。その結果析出した固体をろ過し、減圧乾燥機で乾燥し、衝撃式粉砕機で粉砕し、セルロース複合体の乾燥粉体を得た。この取得物を水に対して2重量%量を水に投入し、プロペラ攪拌機で5分間攪拌したとこと、全体が均一に分散した粘調な分散液となった。また取得物を水に対して10重量%量を水に投入し、特殊機化(株)製TKホモジナーザーで10000rpm、10分間攪拌したところ、全体が均一に分散したゲル状物を得た。
【0023】
【実施例2】
結晶セルロース(旭化成株式会社製、アビセル(登録商標)PH101)を水に分散し、固形分4重量%のスラリーとした。図2に示す流通式超臨界水反応装置を用い、原料スラリー1部に対して、あらかじめ加熱・加圧しておいた超臨界水5部を混合した。得られた0.67重量%原料の原料スラリーを400℃、40MPaの条件で超臨界水反応管の0. 10秒間滞留させた。その後、室温の水を反応後のスラリーに混合し、急冷した。フィルターで固形分をろ過、除去した後、背圧弁で常圧に戻し、セルロース溶解水を容器に集めた。12時間静置後、生成した析出物をろ過した。ろ過後の取得物はケーク状含水物であり、KETT社製水分計で測定したところ、水分は58重量%であった。このセルロ−スのセルロースI型分率は0、セルロースII型分率は0. 75、平均重合度は38であった。析出物収率は、乾燥重量換算で、原料に対して42重量%であった。
【0024】
ろ過取得後の含水ケークに、乾燥重量換算で、セルロース10部に対し、1部のキサンタンガム、2部の水溶性デキストリンを加え、プラネタリーミキサーにて30分間混練した。その後、湿混練物をエックペレッターで1mmスクリーンを通じて押し出し、湿ペレットとした。この湿ペレットを40℃の棚段乾燥機で12時間乾燥した。乾燥ペレットを衝撃式粉砕機で粉砕し、乾燥粉体生成物を得た。この取得物を水に対して1重量%量を水に投入し、プロペラ攪拌機で5分間攪拌したところ、全体が均一に分散した粘調な分散液となった。
【0025】
【実施例3】
製紙用クラフトパルプをあらかじめ家庭用ミキサーで解砕し、綿状にした後、水に分散し、固形分4重量%のスラリーとした。図2に示す流通式超臨界水反応装置を用い、原料スラリー1部に対して、あらかじめ加熱・加圧しておいた超臨界水5部を混合した。得られた0.67重量%原料の原料スラリーを400℃、40MPaの条件で超臨界水反応管に0. 10秒間滞留させた。その後、室温の水を反応後のスラリーに混合し、280℃に冷却し、そのまま15分間滞留させた。フィルターで固形分をろ過、除去した後背圧弁で、常圧に戻し、セルロース溶解水を容器に集めた。12時間静置後、生成した析出物をろ過した。ろ過後の取得物を乾燥して結晶化度と平均分子量を測定したところ、セルロースI型分率は0、セルロースII型分率は0.7、平均重合度は60であった。析出物収率は、乾燥重量換算で、原料に対して25重量%であった。
【0026】
一方、反応直後のセルロース溶解液に、乾燥重量換算で、セルロース10部に対し、1部のポリエチレングルコール(分子量4000)を加え、真空エバポレーターで全体量の約1/4まで水を留去し、濃縮した。このまま、12時間静置後、析出した固体をろ過し、減圧乾燥機で乾燥し、衝撃式粉砕機で粉砕し、セルロース複合体の乾燥粉体を得た。この取得物を水に対して2重量%量を水に投入し、プロペラ攪拌機で5分間攪拌したとこと、全体が均一に分散した粘調な分散液となった。また取得物を水に対して10重量%量を水に投入し、特殊機化製TKホモジナーザーで5000rpm、5分間攪拌したところ、全体が均一に分散したゲル状物を得た。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、医薬品、食品、化粧品、工業用添加剤として有用なセルロースと水溶性物質との複合体、及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】セルロース乾燥サンプルの広角X線結晶回折パターンであり、χI およびχIIを求める模式図である。
【図2】本発明に使用する超臨界水または亜臨界水反応装置の概略フロシートである。
【符号の説明】
1 水容器
2 水ポンプ
3 ヒーター
4 セルローススラリー容器
5 セルローススラリーポンプ
6 超臨界水反応管
7 水容器
8 水ポンプ
9 冷却器
10 フィルター
11 背圧弁
12 処理水容器
A 加熱水
B 原料スラリー
C 冷却水

Claims (4)

  1. 平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解した、平均重合度13以上100以下であり、セルロースI型分率0.1以下、かつセルロースII型分率0.5以上であるセルロースと、水溶性有機物質とからなる複合体。
  2. 平均重合度13以上100以下であり、かつセルロースII型分率0.7以上であるセルロースと、水溶性有機物質とからなる請求項1記載の複合体。
  3. 平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解し、溶解状態で、水溶性有機物質を添加することを特徴とする請求項1または2記載のセルロース複合体の製造方法。
  4. 平均重合度100以上のセルロースと、温度250℃以上450℃以下、圧力15MPa以上450MPa以下の超臨界水または亜臨界水と0.01秒以上5秒以下接触反応させ、その後冷却して、温度250℃以上350℃以下の亜臨界水と1分以上10分以下接触反応させてセルロースを加水分解して溶解し、溶解状態で、水溶性有機物質を添加することを特徴とする請求項1または2記載のセルロース複合体の製造方法。
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