JP4094737B2 - 酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法およびこの製造方法に用いる触媒 - Google Patents

酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法およびこの製造方法に用いる触媒 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に、アセトアルデヒドの製造に関するものであり、特に、本発明は、酢酸を水素化させることによるアセトアルデヒドの製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アセトアルデヒドは、工業的に重要な化合物である。酢酸、無水酢酸、酢酸セルロース、その他酢酸エステル、酢酸ビニル樹脂、合成ピリジン誘導体、テレフタル酸、過酢酸、およびペンタエリスリトールの商業的生産の出発物質として用いられている。歴史上、アセトアルデヒドは酢酸の生産に用いられていたが、技術的な進歩により、結果として、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合物)からのより経済的な酢酸の生産に帰着している。この進展は、技術的に実行可能な経路として存在するのであれば、アセトアルデヒドからの酢酸の生産よりも、むしろ、酢酸からのアセトアルデヒドの生産のほうが経済的に魅力的であることを意味する。
【0003】
アセトアルデヒドは、銀触媒の存在下にて、空気とともにエタノールを480℃で反応させることにより商業的に生産されている。このプロセスは、現在通用しているプロセス、エチレンのWacker酸化に置き換えられている。これらプロセスの両方ともエチレンで開始され、このWacker酸化の経路は、エタノール酸化経路よりもより直接かつ有効となっている。また、アセトアルデヒドはアセチレンの水和によっても製造されていた。このプロセスは触媒として水銀塩を用いるため、水銀の取扱いが環境上および安全性上の問題を招来することになり得る。アセチレンの使用は安全性に懸念を招来することになり、また、エチレンと比較してアセチレンの高いコストが、このプロセスを時代後れなものとした。また、アセトアルデヒドは、温度と圧力を上昇させてロジウム担持シリカ触媒の存在下で合成ガスを反応させることによっても製造することができるが、アセトアルデヒドの選択性が低く、このプロセスは決して商業的に実行することができない。また、アセトアルデヒドは、15の助触媒の集団とともにヨウ化コバルト触媒を用いて温度と圧力を上昇させて、メタノールに合成ガスを反応させることによっても製造されるが、このプロセスもまた決して商業的に実行することができない。しかしながら、Wacker酸化のプロセスは、今日、好ましい商業的プロセスであるが、これもまた多くの望ましくない状況を有している。これらは、特別な安全性と、エチレンと酸素との反応、および、特に高価な素材の構造物を必要とする水性の酸性塩化物を含む反応混合物の非常に強い腐食性が絡み合った取扱い上の問題と、を含んでいる。アセトアルデヒドの製造のためには、このようなすでに存在していて知られているプロセスを超える進歩という必要性が存在している。
【0004】
アセトアルデヒドを合成するための実現の可能性を秘めている魅力的な手段は、酢酸の水素化によるものである。下記の反応(I)を参照されたい。しかしながら、カルボン酸基は、一般に、触媒の水素化による還元が最も難しい官能基の中にあると見なされている。逆に、アルデヒド基は、触媒の水素化により容易にアルコールに還元される。下記の反応(II)を参照されたい。このように、カルボン酸の還元が要求される状況下では、アルデヒドは、しばしばアルデヒドがさらにアルコールまで還元されるために、良い収率で単離されない。さらにカルボン酸がα位に水素を含んでいる場合、ケトンに転化し、水と二酸化炭素が発生する。下記の反応(III) を参照されたい。この反応は、α位の水素の数が増えることによってより行われ易くなる。
【0005】
したがって、アセトンは、反応(I)を用いるための典型的な温度(300−400℃)で酢酸から容易に形成される。上述した水素と酢酸とが関与する気相での反応は、下記のように要約される。
【0006】
【化1】
Figure 0004094737
【0007】
【化2】
Figure 0004094737
【0008】
【化3】
Figure 0004094737
【0009】
アセトアルデヒドおよび水への酢酸の水素化(反応(I))は、緩やかな吸熱反応である。それゆえ、この反応の熱力学は、温度が上昇されるにつれて改善される。その後の反応(II)、アセトアルデヒドのエタノールへの水素化は、発熱を伴い、この反応は、温度が上昇するにつれてより有利でなくなっていく。酢酸の水素化の平衡が乏しくなる故に、この反応は、認め得るほどの酢酸の転化を達成するためには過剰な水素を伴って進行されなければならない。したがって、熱力学的根拠によれば、エタノールの形成は300−400℃の温度が有利となる。反応(III)、アセトンの形成は、0℃以上の全ての温度で本質的に逆行できず、温度が上昇されるにつれて熱力学的に非常に有利となる。400℃以上の有意なる温度の上昇は、アセトンの生産の増加を引き起こすため、望ましいアセトアルデヒド生成物への選択性を向上する見込みはなくなる。メタン形成のような他の反応では、酸化炭素およびC2炭化水素もまた酢酸水素化化学に関連しているが、この反応は、過度に高温が用いられない限り、上述した3つの反応よりも重要ではない。状況によっては、おそらく中間体としてエタノールを経由する酢酸エチルもまた、望ましいアセトアルデヒドへの選択性を低下させることがあり得る。
【0010】
したがって、酢酸水素化を経由するアセトアルデヒドの生産における主要なチャレンジは触媒デザインであると思われる。理想の触媒は、最初の酢酸のアセトアルデヒドへの水素化を容易にするが、その後のエタノールへの水素化の活性だけでなくアセトンを生産する二量体化反応の活性も本質的に有していないべきである。もし、触媒がアセトアルデヒドのエタノールへの転化あるいは酢酸のアセトンへの転化の小さな活性を有していれば、酢酸および水素をアセトアルデヒドおよび水へ転化させることを考慮にいれた平衡転化レベルを超えて反応が起きても、アセトアルデヒドの選択性の極度の損失が生ずる。選択的に酢酸をアセトアルデヒドへの水素化する触媒の需要が存在する。
【0011】
触媒の選択性は、実行可能なアセトアルデヒド合成の単一の要求だけである。この合成は、また、非常に高い揮発性を有するアセトアルデヒド生成物の容易な回収、副生成物の回収、および未転化の反応体の再利用を見越した方法で実施されなければならない。一般に、カルボン酸のアルデヒドへの水素化のプロセスは、約1bar の圧力(ここで与えられる全圧は絶対圧力によるものである)、かつ、水素対カルボン酸比がほぼ50/1に等しくなる条件下で実行される。しかしながら、これら条件は、不揮発性のアルデヒドには十分であるが、19−20℃で沸騰するアセトアルデヒドには実用的でない。したがって、選択的であり、アセトアルデヒドの経済的な回収を供給する方法によって酢酸をアセトアルデヒドへ転化するプロセスの需要もまた存在する。
【0012】
カルボン酸のアルデヒドへの水素化を取り巻く熱力学的限定にも関わらず、この反応のいくつかの例が従来技術に開示されている。一般的に、これら反応は、約1bar の圧力で、水素の大過剰の気相において、200ないし500℃の範囲内の温度で実行され、これら反応は、ほとんどα位の水素を含まない芳香族カルボン酸あるいは脂肪酸を用いると非常に好結果となる。Van Geemらは、米国特許第5,336,810 号において、大過剰の水素の存在下で330℃の気相にて、98.9%の転化で88.3%の選択性で安息香酸をベンズアルデヒドへ転化する酸化マンガン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム触媒について述べている。Joentgenらは、米国特許第5,059,716 号において、325−425℃で大過剰の水素の存在下で1bar における一つ以下のα位の水素を含む芳香族および脂肪族カルボン酸の水素化のための、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、および銅の中から選択される一つあるいはそれ以上の金属と共に酸化チタンあるいは酸化バナジウムをベースにした触媒システムについて述べている。Yokoyamaらは、Stud.In Surf.Sci.and Cat.1994,90の第47−58頁およびBull Chem.Soc.Jpn.1993,66 の第3085−3090頁において、同様の反応条件下での芳香族カルボン酸のアルデヒドへの水素化のための酸化ジルコニウムおよび修飾酸化ジルコニウム触媒の使用について述べている。Yokoyamaらは、米国特許第5,306,845 号において、また、同様の反応条件下で芳香族および脂肪族カルボン酸の両方を水素化するための精製された酸化クロム触媒の使用について述べている。この特許は、ステアリン酸といった分子量の大きい酸の水素化の実施例をいくつか挙げている。酢酸はまた、適当な酸であると述べられているが、実施例は挙げられていない。Yokoyamaらは、酸化クロムの高い純度の獲得がケトン形成反応を妨げている理由であると強調している。Welguny らは、欧州特許出願EP 0 700 890号(1996)において、前に記載した典型的な高温、高水素存在、低圧の条件下でのカルボン酸のアルデヒドへの広い多様性の水素化のための酸化物担持スズ触媒の使用について述べている。酢酸は、この特許出願の請求項に含まれているが、実施例は、芳香族カルボン酸およびピバル酸についてのもののみである。Ferrero らは、欧州特許出願番号EP539,274 号(1993)において、前に記載した典型的な高温、高水素存在、低圧の条件下でのカルボン酸のアルデヒドへの広い多様性の水素化のためのアルミナ担持ルテニウム−スズ−ホウ素触媒について述べている。Ferrero の特許出願は、酢酸の水素化についての実施例は挙げられていないが、請求項では言及している。Ferrero の参考文献のほとんどは、セネシオ酸のプレナールへの還元か、あるいは、芳香族カルボン酸の相応するアルデヒドへの還元に関連している。
【0013】
酢酸のアセトアルデヒドへの水素化についての最も決定的な研究は、Ponec とその共同研究者によって、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas 1994の第426-430 頁、J.Catal.1994,148の第261−269頁、J.Molecular Catalysis A:Chemical 1995,103 の第175−180頁、Applied Surface Science 1996,103の第171−182頁、J.Catal.1997,168の第255−264頁に開示されている。これら研究者らは、上記反応における働きの機構を提唱し、高い選択性での酢酸のアセトアルデヒドへの転化のいくつかの実施例を報告している。これら反応における基本となる触媒は、中間の金属−酸素結合の強さを有する部分的に還元された金属酸化物である。部分的に還元された酸化鉄は最も選択的な金属酸化物であり、ほぼ80%ほどのアセトアルデヒドの選択性が、321℃で水素/酢酸比=50/1で用いて1.2bar の圧力で得ることができる。この触媒への5重量%の白金の付加は、さらにアセトアルデヒドの選択性を80%以上に増加する。酸化スズを伴う白金の付加は、選択性を約二倍にし、もし約40%であれば約80%へ増加する。Ponec は、J.Catal.1997,168の第255−264頁において、最適な白金レベルがあり、この白金レベルを1.25原子%増加させると実際に選択性が減少することを言及している。
【0014】
しかしながら、Ponec とその共同研究者により研究された酢酸の水素化プロセスは、アセトアルデヒドに非常に選択的であるが、アセトアルデヒドの生産の商業的方法としては非実用的である。この非実用性は、約1bar の圧力で最大2−3%の濃度(多少、転化に依存する)しか存在しない蒸気の流れからアセトアルデヒド(通常の沸点=19−20℃)を単離して補集しなければならないことに起因する。水および副生成物は、混合物から単離されなければならず、水素と未転化の酢酸は反応器へ最循環させなければならない。これら操作は、300−400℃の反応温度から相当に低い温度を要求する。実用的プロセスは、Ponec によって用いられるよりもさらに低い水素/酢酸比とさらに高い反応圧力を要求する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
それゆえ、本発明の目的は、水銀およびアセチレンを関与させることによる危険性を避けたアセトアルデヒドの製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、エチレンおよび酸素の反応を関与させることによる操作上の問題を避けたアセトアルデヒドの製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のよりさらなる目的は、水性の酸性酸塩化物を含む反応混合物による腐食を避けたアセトアルデヒドの製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、アセトアルデヒドの生産のための良好な選択性を伴う酢酸の水素化方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、揮発性のアセトアルデヒドを容易に回収することを考慮した酢酸の水素化方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の異なった各目的は、2.5ないし90重量%、より好ましくは10ないし80重量%、最も好ましくは20ないし60重量%でパラジウム(Pd) が含まれる酸化鉄触媒の存在で酢酸を水素化するアセトアルデヒド(HAc)の製造のための方法によって達成される。本発明にかかる触媒は、150m2 /g未満の特定の表面積を有している。水素および酢酸は、水素対酢酸比が2:1ないし25:1、より好ましくは、水素対酢酸比が3:1ないし15:1、最も好ましくは、水素対酢酸比が4:1ないし12:1で反応器に供給される。水素化反応は、約250℃ないし400℃、より好ましくは、270℃ないし350℃、最も好ましくは280℃ないし325℃の温度で実行される。酢酸の水素化は部分的ガス状生成物を生産し、アセトアルデヒドは、酢酸を含む溶媒とともに部分的ガス状生成物から吸収される。上記ガスは水素を含む吸収工程の後に残存するために、このガスは、酢酸の水素化に再利用される。吸収されたアセトアルデヒドは、同じものを単離するために蒸留される。未反応の酢酸および蒸留を経由した他の生成物からアセトアルデヒドが単離された後、未反応の酢酸は、共沸蒸留を用いて他の生成物から分離される。水は他の生成物に含まれ、上記共沸混合物とは酢酸エチルと水との共沸混合物である。未反応の酢酸はカラムにより分離され、該カラムは、酢酸エチルに富んだ酢酸エチルと水との共沸混合物を含んでいることにより調整される。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、好ましい実施の形態と一例として与えられる実施例とによって詳しく述べるが、これに限定されるものではない。
また、本発明は、一例として以下に述べる詳細な実施の形態に加えて、添付する図面(図1および図2)を参照することによってさらに容易に理解することができる。
【0022】
本発明のプロセスにおける詳細な実施の形態は、図1に概略して示す反応部と図2に概略して示す回収部との二つの主な区分からなっている。酢酸は、反応部において、固定床の反応器RX内の鉄とパラジウムを含む触媒上に過剰の水素の存在下でアセトアルデヒドおよび水に転化される。アセトアルデヒド生成物は、冷却(溶媒冷却器)S後の溶媒としての酢酸に富んだ蒸留残留物を用いる吸収(吸収器)A後に、蒸留(蒸留カラム)Dを経由して回収される。
【0023】
図1を参照すると、流れ3は、酢酸と水素を含む反応器RXに供給される。1対1のモル比がアセトアルデヒドの生産にとって化学量論的に十分であるが、供給物3(流れ3)においては過剰の水素が供給される。反応器RXは酸化鉄/パラジウム触媒を含んでいる。供給物3(流れ3)が反応器RXに供給される前に、炉Fおよび予熱器PHで加熱される。反応器RXの生成物4(流れ4)は吸収器Aに供給される。この生成物4(流れ4)は高温で、供給物放出交換器FEで冷却される。供給物放出交換器FEは、また、反応器RXへの供給物3(流れ3)を予熱するようになっている。反応器RXの生成物4(流れ4)は、実質上ガス状となっている。吸収器Aは、アセトアルデヒドおよび他の生成物を液化して活用する。冷却された生成物4(流れ4)は吸収器Aに供給され、酢酸の供給物7(流れ7)もまた供給される。供給物7(流れ7)からの酢酸は上記生成物を捕らえ、水素を、流れ6を経由して通過するようにする。水素の一部は、流れ10、再利用圧縮機RCおよび流れ13を経由して再利用される。水素の他の一部は流れ9を経由してパージされ、これが水素の純度を維持することになる。再利用圧縮機RCは水素を圧縮する。反応器RXおよび吸収器Aは加圧下で運転する。吸収器Aにおける加圧は、流れ4とポンプPUにおける加圧された生成物によるものである。
【0024】
流れ8としての吸収器Aで得られた液体は、アセトアルデヒド回収のための蒸留カラムDに送られる。蒸留カラムDからの上方部は、同一のものを凝縮するための凝縮器Cを経由して冷却される。凝縮された液体の一部は逆流として蒸留カラムDに送り返される。オフガス18は凝縮されず、図1および2に示すように、本システムから出ていく。アセトアルデヒド生成物は流れ19からやってきて、これもまた図1および2に示すように装置から出ていく。蒸留カラムDの底部からは、再煮沸器RBが、蒸留カラムDへバックされる高い揮発性の化合物を補充するように用意されている。流れ23は酢酸に富んでおり、吸収器Aへ部分的に再利用される。上述したように、吸収器Aにおける吸収は低温で最適に実行され、溶媒冷却器Sはこの目的のために準備されている。
【0025】
流れ30は、酢酸エチル、水、酢酸、およびアセトンを含んでいてよい。これら化合物を分離するために、図2に概略して示す回収装置(回収部)が使用される。まず、酢酸カラムACは酢酸を分離するために用いられる。酢酸の沸点は水の沸点と非常に近接しており、蒸留を介してこれら2つの化合物を分離することは通常困難である。この問題に取りかかるために、酢酸エチルは流れ35を介して酢酸カラムACへ供給される。酢酸エチルは水と共沸混合物を形成する。この共沸混合物は水または酢酸エチルのどちらよりも有意に低い沸点を有する。これが分離を可能とする。酢酸再煮沸器ARの後、流れ33から酢酸が回収される。この酢酸は、水素と混合されて流れ3を経由して反応器RXへ供給されてもよい。
【0026】
酢酸カラムACからの上方部は酢酸エチル、水およびその他の生成物を含んでいる。上述したように水は酢酸から分離することが困難であるため、流れ35を経由して過剰の水が供給されないことが重要である。この目的のために、流れ32は、デカンタ冷却器DCで凝縮され、そのあとデカンタDE中に静かに注がれる。水相はデカンタDEから流れ38へ出ていき、有機相は流れ37へ出ていく。流れ37の一部は、酢酸カラムACにバックして供給される。流れ37のその他の一部は「本物に近い」酢酸エチル−水共沸混合物を蒸留することで流れ39を経由して共沸混合物カラムZへ供給される。上記混合物は、水に酢酸エチルが正確な共沸混合比で含まれていないため「本物に近い」共沸混合物となっている。上述した通り、共沸混合物は低い沸点を有しており、それゆえ共沸混合物カラムZから上方部として分離することができる。共沸カラム凝縮器ZCの後に、共沸混合物は流れ43を経由して酢酸カラムACへバックするように間接的に再利用される。
【0027】
共沸混合物カラムZの底部からは、共沸カラム再煮沸器ZR後に酢酸エチルカラムEの方へ流れ42が供給される。上述したように、酢酸の過剰な水素化はエタノールを生成する。エタノールは酢酸と反応することが可能であり、エステル化プロセスにより酢酸エチルを生成する。この反応は、エタノールおよび酢酸が共に存在するやいなや、上記装置内のいたるところで起こることになる。この反応は、両方の反応体が液相である場合に取り分け顕著となるといっても差し支えない。酢酸エチルカラムEは上方部として酢酸エチルを分離する。酢酸エチルカラム凝縮器ECの後に、流れ54は最終生成物として販売することが可能な程度の酢酸エチルを含んでいる。酢酸エチルカラムEの底部からは、酢酸の幾分小さな流れ55が酢酸エチルカラム再煮沸器ERの後に生成される。
【0028】
上述したように、デカンタDEは有機生成物から水性生成物を分離する。水性の流れ38は流れストリッパーSSへ供給される。流れストリッパーSSは、流れ46によって加熱された蒸留カラムである。より軽い有機物は流れストリッパーSSの頂上から流れ45に得られ、底部から排水が流れ47として得られる。流れ45中の上記有機物は排アセトンカラムWへ供給される。アセトンは、共沸混合物よりもさらに低い、非常に低い沸点を有している。それゆえ、排アセトンの流れ51は、アセトンカラム凝縮器WCの後に生成される。排アセトンカラムWの底部からは、本物に近い酢酸エチル−水共沸混合物の流れ50がアセトンカラム再煮沸器WRの後に再利用されるようになっている。
【0029】
共沸混合物を再利用する2つの流れ50および43は酢酸カラムACに直接バックするように供給されない。その代わり、それらは水を取り除くためにデカンタ冷却器DCおよびデカンタDEへ供給される。
【0030】
図1および2に描写されるプロセスは、次の各状態で最適な運転を行うことができるように設計されている。その各状態とは、1)反応器RXにおいて、水素対酢酸が5/1のモル比で流れ3に供給されること、2)アセトアルデヒド回収カラム(蒸留カラム)Dの底部に存在する条件で、化学平衡によって規定されることにより副生成物エタノールが酢酸エチルに転化されること、および、3)上記反応器RXは、300℃、17.2bar 、およびアセトアルデヒドへ89%、エタノールへ5%、アセトン(および二酸化炭素)へ4%、およびメタンとC2炭化水素(エチレン+エタン)へ2%の選択性を伴う45%の酢酸転化で運転されることである。反応器RXにおいて、エタノールおよび未転化の酢酸からの酢酸エチル形成度が低ければ、上記反応は、回収前の酢酸に富んだ溶媒へ硫酸を添加することによって単純に触媒されてもよい。図2に示す回収の概要は、この副生成物エタノールの酢酸エチルへの転化に高く依存し、本発明の重要な部分である。
【0031】
酢酸エチル以外の多量の分離剤は可能である。このような分離剤は、凝縮で水に富んだ液相および有機物に富んだ液相に分離する、水を伴う最少沸騰共沸混合物からの有機化合物から選択されてよい。分離技術へ熟練しておれば、このような酢酸エチルの代替物を選択してもよいし、図2に描写したプロセスを適当に修飾してもよい。しかしながら、酢酸エチルは本プロセスの共生成物であり、その共沸混合剤としての使用は、本プロセスへの他の化合物を導入を避けるものであり、そして、それ自体が好ましい実施例として用いられる。
【0032】
好ましい実施の形態では、共沸混合剤は水とともに最小沸騰共沸混合物を形成するのみならず、凝縮により2つの液相を形成する。可能性のある共沸混合剤は、アクリロニトリル、酢酸アリル、アセトンアリル、シアン化アリル、ベンゼン、1-ブタノール、1-ブテニルエチルエーテル、1-ブトキシ-2- プロパノール、酢酸ブチル、アセト酢酸ブチル、アクリル酸ブチル、n-ブチルアニリン、安息香酸ブチル、酪酸ブチル、塩化ブチル、ブチルエーテル、ブチルイソプロペニルエーテル、2-ブチルオクタノール、ブチルアルデヒド、ブチロニトリル、二硫化炭素、四塩化炭素、2-クロロエチルエーテル、クロロホルム、クロロイソプロピルエーテル、クロトンアルデヒド、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアリルアセタール、ジアリルアミン、ジブチルアセタール、ジブチルアミン、ジブチルエタノールアミン、2,3-ジクロロプロパノール、ジシクロペンタジエン、ジエチルアセタール、ジエチルブチラール、ジイソブチレン、ジイソブチルケトン、ジメチルブチラール、2,5-ジメチルフラン、2,6-ジメチル-4- ヘプタノール、ジメチルイソブチラール、ジプロピルアセタール、ジプロピルケトン、エピクロロヒドリン、酢酸エチル、アクリル酸エチル、n-エチルアニリン、エチルベンゼン、2-エチルブタノール、酢酸2-エチルブチル、酪酸2-エチルブチル、エチルブチルエーテル、エチルブチルケトン、2-エチルブチルアルデヒド、クロトン酸エチル、二塩化エチレン、ギ酸エチル、2-エチルヘキサノール、酢酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルアミン、塩化2-エチルヘキシル、クロトン酸2-エチルへキシル、2-エチルヘキシルエーテル、エチリデンアセトン、4-エチルオクタノール、プロピオン酸エチル、ヘプタン、酢酸2-ヘプチル、酢酸3-ヘプチル、ヘキサアルデヒド、ヘキサン、ヘキサノール、2-ヘキサナール、酢酸ヘキシル、塩化ヘキシル、イソブチルアルコール、イソホロン、酢酸イソプロピル、イソプロピルベンゼン、塩化イソプロピル、イソプロピルエーテル、酸化メシチル、メタクリルアルデヒド、1-メトキシ-1,3- ブタジエン、酢酸3-メトキシブチル、メチルアミルケトン、塩化メチレン、2-メチル-5- エチルピリジン、5-メチル-2- ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、n-メチルモルホリン、2-メチルペンタナール、2-メチルペンタノール、4-メチル-2- ペンタノール、4-メチル-2- ペンテン、酢酸4-メチル-2- ペンチル、酢酸2-メチルプロピル、メチルプロピルケトン、ノナン、パラアルデヒド、ペンタン、2,4-ペンタンジオン、3-ペンタノール、プロピオニトリル、塩化プロピル、二塩化プロピレン、スチレン、テトラクロロエチレン、1,4-チオキサン、トルエン、トリアリルアミン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエチレン、吉草酸アルデヒド、吉草酸、酢酸ビニル、ビニルアリルエーテル、ビニルブチルエーテル、酪酸ビニル、クロトン酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニル-2- エチルヘキシルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、イソ酪酸ビニル、ビニルイソプロピルエーテル、ペンタン酸ビニル-2- メチル、プロピオン酸ビニル、ビニルプロピルエーテル、およびm-キシレンなどを含むがこれらに限定されるものではない。これらのうち、上述したように、共生成物であり、その使用が分離工程への他の構成要素を導入しないことから、酢酸エチルが好ましい。
【0033】
本発明における上記触媒(反応器RX中の)は、鉄とパラジウムを含んでいる。触媒は、Fe2O3(三酸化二鉄)として計算された重量(鉄の実際の化学特性は、触媒合成に使用される特別な方法によるFe2O3 であってもなくてもよい)との均衡を伴って2.5ないし90重量%のPd(パラジウム)を含んでいる。より好ましい触媒はFe2O3 を基礎として10ないし80重量%のPdを含む。最も好ましい触媒はFe2O3 を基礎として20ないし60重量%のPdを含む。パラジウムを少量含む触媒は、低圧・高水素の条件下で良好に機能するが、本発明において好ましい高圧・低水素の条件下では良好に機能しない。パラジウムを少量含む触媒は、本発明において好ましい高圧・低水素の条件下では、その活性および選択性を迅速に失うことになりかねない。非常に多量のパラジウムは不経済であり、炭化水素を過剰な量生成しかねない。本発明における触媒の活性成分はサポートされ得るが、このサポートは、酢酸のアセトンへの転化のためには反応しないべきである。上記触媒は150m2 /g以下の表面積を有するべきである。過剰な表面積を有する触媒は、所望のアセトアルデヒドへの選択性の縮小を示すことがあり得る。本発明における触媒は、水素の存在下で、約50ないし500℃の間で約1−50bar の圧力下で該触媒を接触させることにより水素と酢酸との反応におけるそれらの使用の前に、水素を還元してもよい。より好ましい先の還元の条件は、約200ないし400℃の間で約1−20bar の圧力下であり、最も好ましい先の還元の条件は、約250ないし350℃の間で約1−5bar の圧力下である。
【0034】
上記触媒はむしろ適当な酸化状態にあることが重要であり、適当な酸化状態は上記反応条件下で容易に再生されるべきである。もし、上記触媒が過剰な酸化状態にあれば、その場合、アセトンが主な生成物になる。上記選択的触媒は、0価の金属と酸化物状態の金属との混合物を含んでいる。もし、上記触媒が過剰な還元状態にあれば、メタンが主な生成物になる。触媒へのパラジウムの付加は、望ましい酸化状態の形成および維持を促進する。
【0035】
本発明における触媒は広い多様性を有する条件下で反応的であり選択的である。温度は約250ないし400℃の範囲内とすることができる。より好ましい温度は270ないし350℃の範囲内であり、最も好ましい温度範囲は、280ないし325℃である。低温ではその割合が低下することになりかねず、もし、上記混合物が水素中で少量であれば、上記反応は、該反応の熱力学により平衡制限が規定されることによって限定される。過剰な高温はアセトンと炭化水素の形成のためのアセトアルデヒドの低い選択性を導くことになる。圧力は、1bar もない状態から最大50bar の範囲内とすることができ、上記触媒は、正しい温度および正しい水素対酢酸比を用いることで、一層優れた割合と規定されたアセトアルデヒドの選択性を有することになる。300℃で1bar の圧力で、酢酸1に対する水素比を40とした場合に、Pdを含まないFe2O3 ですら優れた割合と転化が見られる。これら条件下における上記割合および選択性は、本発明のようにもしFe2O3 にPdが加えられればより高くなる。しかしながら、本発明における本プロセスの回収および再利用部分は、これらの低圧・高水素条件下で実用的でなくなる。低圧における酢酸に対する水素比の低下は、上記割合と転化を非実用的なレベルにまで低下し、上記触媒をアセトンの選択性の増加を引き起こす好ましくない酸化状態とする。一般に、酢酸を加えた水素の圧力の増加は、他の条件が変化されていない状態で残されたとしても、酢酸転化の割合と酢酸の転化度を増加させる。選択性もまた、上記圧力の増加に伴い変化することができる。酢酸エチルは、標準的には低圧下では重要な生成物ではないが、上記圧力の増加に伴い重要な生成物となる。アセトンは、低圧、低水素条件下では重要な生成物とすることができるが、Fe2O3 を基礎とした約20重量%のPdを含む触媒を準備した高圧、低水素条件では、重要な生成物とはならない。もし、上記触媒が、Fe2O3 を基礎として約20重量%のPdより少ない量を有意に含んでいるとすれば、上記触媒の活性およびアセトアルデヒドの選択性は、生産上時間が経過するにつれて迅速に悪化し、アセトンと酢酸エチルの選択性は高温、低水素条件下で増加する。50bar を超える酢酸および水素による圧力は、エタノールおよび酢酸エチルの選択性の増加させることになる。しかしながら、50bar 以上の有意な圧力を増加することへの希釈の利用は、本発明の精神を伴っているものであり、上記選択性を害することを伴わずに実行することができる。本発明のプロセスのための、水素を加えた酢酸の好ましい圧力は、約5ないし50bar の間である。酢酸を加えた水素のより好ましい圧力は約5ないし30bar であり、最も好ましい圧力は約6ないし20bar の間である。
【0036】
本発明における触媒は、水素対酢酸比が幅広い範囲の下で活性を有する。上記反応における上記割合は、水素の量の増加に伴って増加する。反応における上記割合は、酢酸の量が増加することに伴って最初は増加するが、その後、酢酸の量がより増加することに伴って減少する。上述した低圧下での酢酸の過剰な量は、上記触媒を、低効率およびアセトンの選択性の増加を与える不適当な酸化状態とすることになる。アセトアルデヒドは、水素対酢酸比が約2:1ないし50:1あるいはそれ以上でも生産されることができる。しかしながら、本発明における回収および再利用部の視点では、好ましい水素対酸素比は約2:1ないし25:1の範囲内である。より好ましい水素対酢酸比は約3:1ないし15:1の範囲内であり、最も好ましい比は約4:1ないし12:1の範囲内である。
【0037】
ガスの一時間当たりの空間速度(GHSV、反応条件での一時間毎における上記触媒を含む反応体の体積)は、前述したように他のパラメータに依存する。一般に、空間速度は望ましい転化を規定するために選択される。アセトアルデヒドの選択性は、酢酸転化が増加することに伴って減少する。平衡転化レベルはアセトアルデヒドをエタノールおよび酢酸エチルへ転化させるどのような反応であっても及ぶことになるため、上記効果は極めて低水素レベルでは非常に増加することになる。温度、水素対酸素比、および酢酸を加えた水素の圧力における最も好ましい条件下では、もしアセトアルデヒドが主生成物として望ましい場合には、酢酸の転化を50%以下に維持することが好ましい。もし、酢酸エチルの量が増大することが望ましければ、酢酸転化を100%に近づけるように反応を起こすことができる。
【0038】
反応器RXからの流出物を生成物の流れと未転化の反応体の流れとに分離することは、多数の工程を必要とする。好ましい実施の形態では、最初の工程は、酢酸に富んだ溶媒を用いてのアセトアルデヒドとアセトアルデヒドよりも高い沸点を有する化合物(アセトアルデヒドの沸点は19−20℃)の吸収器Aによる吸収である。吸収器Aにおいて用いられる条件は、主として、温度、圧力、反応器RXからの流出物および望ましいアセトアルデヒドの回収の構成によって、規定されることになる。50%を超えるアセトアルデヒドの回収が望まれ、各条件の固有の選択によって得られることができる。一般に、回収は温度の減少、圧力の増加、溶媒の供給率の増加に伴って改善する。反応器RXからの流出物の温度が、図1にて描写した反応器供給物−流出物熱交換器(供給物放出交換器)FEを経由して減少するのはこのためである。好ましくは、流出物の温度は吸収のために250℃以下に引き下げられる。より好ましくは、200℃以下の温度であり、最も好ましくは150℃以下の温度である。
【0039】
吸収器Aの圧力は、アセトアルデヒドの回収に重要であり、実用的にはできる限り高くするべきでる。このような圧力は、圧力降下およびガス状(生成物)の再利用圧縮機RCの配置を考慮に入れた後に反応器RXに用いられる場合に限られる。前述したが、アセトアルデヒドへの触媒の選択性は、希釈の後に吸収器Aの圧力を60bar 以下に効果的に制限する、水素および酢酸の分圧の組み合わせが50bar を超えた場合に損害を被る。それで、吸収器Aの圧力の広い範囲は、5ないし60bar であり、好ましくは6ないし25bar である。
【0040】
流れ7における吸収器Aの溶媒の構成は、触媒の選択性および反応器RX中における酢酸の転化に依存する。上記吸収器Aの溶媒は、低転化レベルで、少なくとも50重量%の酢酸が95重量%に上昇することを伴ったとはいえ、主として転化されない酢酸を当然含んでいる。流れ7における好ましい酢酸の含有量は、60ないし80重量%の範囲内である。溶媒比は、吸収器Aにおける望ましいアセトアルデヒドの回収によって支持されるが、吸収器Aへ供給される溶媒(流れ4)の比を0.1ないし20重量/重量の範囲内とするべきであり、好ましくは1ないし10重量/重量とするべきである。
【0041】
吸収器Aからの流れ6のガス状生成物は、未転化の水素および反応副生成物として形成される軽量ガスを主に含んでいる。この流れ6は、望ましい水素の純度を維持させるパージ率を伴って主として反応器RXへ再利用される。これら軽量ガスは、どれも全て、触媒の作用に有害な効果を有するものではないことが明らかにされている。ガス状生成物の再利用13(流れ13)における水素の含有量は、50モル%を超えるべきであり、好ましくは60ないし95モル%の間の純度を保つべきであることが期待される。
【0042】
第2の主な分離工程は蒸留カラムDでの蒸留を経由するアセトアルデヒドの回収である。カラム圧力は、この相対的に低沸点のアセトアルデヒド成分(19−20℃)から生成される液体の流れ19のために重要であり、上方の凝縮器Cでの冷却の要求を最小限とするためにできる限り高くするべきである。最小限のカラム圧力は1bar であり、好ましくは5ないし20bar の圧力である。
【0043】
以上のように、本発明にかかるアセトアルデヒドの製造方法は、2.5ないし90重量%のPdを含んでいる酸化鉄触媒の存在下で、酢酸の水素化を行う工程を含む方法である。
【0044】
上記製造方法では、上記触媒は、10ないし80重量%のPdを含んでいることが好ましく、20ないし60重量%のPdを含んでいることが最も好ましい。
【0045】
上記製造方法では、さらに、水素対酢酸比が2:1ないし25:1となるように反応器に水素および酢酸を供給する工程を含むことが好ましい。
【0046】
上記水素対酸素比は3:1ないし15:1であることがより好ましく、4:1ないし12:1であることが最も好ましい。
【0047】
上記製造方法では、酸化鉄がFe2O3 であることが好ましい。
【0048】
また、上記水素化は、約250℃ないし400℃の温度で実行されることが好ましく、約270℃ないし350℃の温度で実行されることがより好ましく、約280℃ないし325℃の温度で実行されることが最も好ましい。
【0049】
上記製造方法では、上記触媒は150m2 /g未満の特定表面積を有していることが好ましい。
【0050】
本発明にかかるアセトアルデヒドの製造方法は、上記製造方法に加えて、さらに、上記酢酸の水素化は、部分的ガス状生成物を製造するとともに、酢酸を含む溶媒とともに上記部分的ガス状生成物からアセトアルデヒドを吸収する工程を含むものである。
【0051】
上記製造方法では、アセトアルデヒドを吸収する工程は、250℃以下の温度で実行されることが好ましく、200℃以下の温度で実行されることがより好ましく、150℃以下の温度で実行されることが最も好ましい。
【0052】
上記製造方法では、上記吸収工程は、水素を含むガス状生成物を製造するとともに、該ガス状生成物は酢酸の水素化のために再利用されることが好ましく、さらに、吸収されたアセトアルデヒドを蒸留する工程を含むことがより好ましい。
【0053】
上記吸収されたアセトアルデヒドを蒸留する工程は、1bar の圧力、またはそれを超える圧力で実施されることが好ましく、5ないし20bar の圧力で実施されることがより好ましい。
【0054】
本発明にかかるさらに他のアセトアルデヒドの製造方法は、アセトアルデヒドおよび他の生成物を製造するための酢酸の水素化工程と、未転化の酢酸および他の生成物からアセトアルデヒドを分離する工程と、共沸蒸留を用いて他の生成物から未転化の酢酸を分離する工程とを含んでいる。
【0055】
上記製造方法では、水が他の生成物を含んでおり、水と異成分とからなる共沸混合物が上記共沸蒸留に用いられることが好ましい。
【0056】
上記共沸蒸留には、酢酸エチルおよび水からなる共沸混合物が用いられることが好ましい。
【0057】
上記製造方法では、カラムにより未転化の酢酸を分離するとともに、上記カラムは、酢酸エチルに富んだ酢酸エチルおよび水の共沸混合物を含んでいることにより調整されることが好ましい。
【0058】
上述した各方法によれば、水銀およびアセチレンを関与させることによる危険性を避けたアセトアルデヒドの製造方法を実現することができる。また、エチレンおよび酸素の反応を関与させることによる操作上の問題を避けたアセトアルデヒドの製造方法を実現することができる。さらに、水性の酸性酸塩化物を含む反応混合物による腐食を避けたアセトアルデヒドの製造方法を実現することができる。
【0059】
本発明にかかるアセトアルデヒドへの酢酸の水素化に用いられる触媒は、酸化鉄と2.5ないし90重量%の範囲内のPdとからなっている。
【0060】
上記触媒は、10ないし80重量%のPdを含んでいることがより好ましく、20ないし60重量%のPdを含んでいることが最も好ましい。
【0061】
また、上記触媒は、150m2 /g未満の特定表面積を有していることが好ましい。
【0062】
上記各構成によれば、アセトアルデヒドの生産のための良好な選択性を伴う酢酸の水素化を実現することができる。また、揮発性のアセトアルデヒドを容易に回収することを考慮した酢酸の水素化を実現することができる。
【0063】
【実施例】
本発明にかかるプロセスを以下に例証するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0064】
〔一般的実験方法〕
1bar 圧力での酢酸の水素化はオンラインのガスクロマトグラフィーを装備する反応器システムを用いて実行された。ガスの流れの計量しながら供給には、6つのTylan モデルFC-260マスフローコントローラーを用意した。電気温度コントローラーおよびモニタリングとしては、Gateway モデル2000 486DX/33コンピューターを用いてインターフェースされるDow Camileコントロールシステムを用意した。全てのガスの配送ラインは、偶発的な過剰な与圧作用を防ぐための圧力安全カラムから開始した。酢酸は、酢酸を含む温度調整気化器を介して水素または窒素を計量しながらの供給により、供給した。上記気化器の温度は、水およびエチレングリコールの両方を循環させることによって維持した。生成物の分析は、80/120Carbopack B/6.6% Carbowax 20Mを含む6フィート、X1/8インチステンレス鋼カラムに合わせたHewlett-Packard モデル3790Aガスクロマトグラフを利用したオンラインガスクロマトグラフィーによって行った。生成物は、水素炎イオン化検出器を用いて、0分の間80℃、150℃に達するまで4℃/分、0分の間150℃となるようにプログラムされたカラムを用いた上記のオンラインガスクロマトグラフにより分析した。反応のための供給混合物あるいは分析のためのガスクロマトグラフへの供給混合物を送出するために4ポート Valco Industries サンプリングバルブを用いた。反応体流れあるいは生成物流れをサンプルするために、1mL体積のサンプルループを含む6ポート Valco Industries ガスクロマトグラフサンプリングバルブを2つ用いた。酢酸気化器、バイパスバルブ、反応器、6ポートサンプリングバルブ、およびガスクロマトグラフの出口をつなぐ全ての管ラインは、1/8インチステンレス鋼で構築し、温度調整加熱テープにより150℃に加熱した。上記の3つのサンプリングバルブはバルブ炉を用いて150℃に加熱した。反応器は、6インチ長X7.5mmO.D.−3mmI.D.毛状管からなる下方部を溶接した、8インチ長X8mmO.D.ホウ珪酸塩ガラスの主要部で構成した。反応器は、主反応部の8mmO.D.ガラス部の頭頂から90°で1インチ下方に位置している1インチ長X8mmO.D.ホウ珪酸塩サイドアームを有した。反応器の3つの開口部は、上記ガラス部の端部をシールする2インチ長で1/4インチO.D.のカバー金属管と適合させた。正確に計量した触媒のチャージ(定型的には0.2g)は、最初に、反応器の頭頂から毛状管の上部へガラスまたは石英ウールプラグを挿入し、その後、ガラスまたは石英ウールプラグの頭頂に触媒を充填して配置した。熱電対は、反応器の頭頂を介して触媒床へ挿入し、Swagelok装備品でカバー管をシールした。反応体混合物は上記サイドアームを介して供給し、生成物は反応器の基部に存在した。反応器の入口および出口のカバー部は、Swagelok装備品を用いてステンレス鋼移送ラインに接続した。反応器は、垂直に搭載された単一の要素である12インチ加熱ゾーンを含む電気炉で加熱した。本装置は、温度調整気化器から排出される蒸気の流れを計量しながら供給させるために、水素または不活性ガスの追加を準備させた。酢酸の分圧は、気化器の温度を変化させるか、または温度調整気化器から排出される上記蒸気の流れに水素または不活性ガスを追加することによって調整することができた。本装置は、温度調整気化器で計量しながら不活性製ガスを供給させるために容易に形成することもできる。供給状態の設定におけるこの自由度は、反応力学の研究を促進した。通常、触媒は、酢酸および水素混合物の供給前に、300℃、一晩で水素中(22.4標準立法センチメートル、SCCM)で還元した。いくつかのケースでは、高温が還元に用いられた。同じ触媒チャージを用いての酢酸の水素化実験の間、上記反応器が使用されない場合、水素の流れ(22.4SCCM)は300℃に維持した。
【0065】
高圧酢酸水素化反応は、外径1/4インチを有する12インチ長のHastelloy C管からなる反応器中で実行された。全てのガスの流れ、圧力および温度の調整装置はCamileモデル3300プロセスモニタリングおよびIBMモデル750-P90 コンピューターでインターフェースしたコントロールシステムによって調整した。水素の流れのためにBrooksマスフローコントローラーを用意し、酢酸は、ISCO高圧シリンジポンプを用いて供給した。上記装置は、35bar に設定された安全バルブで適合された。圧力は、流量調整器と反応器との間に設けられた圧力変換器を備えた一部変更されたリサーチコントロールバルブによって調整した。2ミクロンフィルターは反応器とリサーチコントロールバルブとの間に配置した。リサーチコントロールバルブから排出される生成物は、1mLサンプルループを含むValco Industries 6ポートガスクロマトグラフサンプリングバルブへと供給した。ガスクロマトグラフサンプリングバルブは、80/120Carbopack B/6.6% Carbowax 20Mを含む6フィートX1/8インチステンレス鋼カラムに適合させたHewlett-Packard モデル3790Aガスクロマトグラフへインターフェースした。生成物は、水素炎イオン化検出器を用いて、0分の間80℃、150℃に達するまで4℃/分、0分の間150℃となるようにプログラムされたカラムを用いた上記のオンラインガスクロマトグラフにより分析した。反応器から上記ガスクロマトグラフサンプリングバルブに接続した移送ライン、フィルター、およびリサーチコントロールバルブは温度調整加熱テープにより200℃に加熱した。ガスクロマトグラフに接続したガスクロマトグラフサンプリングバルブおよび移送ラインは150℃に維持した。反応器管は、反応器の中央部における正確に計量された触媒チャージ(定型的には、0.2g)の位置に装填した。石英ファイン(1インチ層)、12X20メッシュ石英チップ(3.5インチ層)、および石英またはガラスウールプラグは、触媒チャージの両サイドに配置した。反応器の長手方向全体は温度調整加熱テープで加熱した。酢酸は、反応器頭部および反応器の加熱部の上方部に約1インチの位置を介した同中心のライン通過を経由して反応器に配送した。水素配送ラインおよび安全バルブもまた反応器の頭部に適合した。したがって、加熱された反応器の上方部は酢酸蒸気化および蒸気混合ゾーンとして機能する。触媒は、水素および酢酸を供給する前に、一晩またはそれ以上反応器内で1.7bar 、300℃で水素中(25SCCM)で還元した。反応は、1.7bar の設定で所望の割合で水素および酢酸を供給するように設定を行うとともに、その後、所望の値に加圧する設定を行うことによって開始した。上記反応器が、同じ触媒チャージを用いての酢酸の水素化実験の間、使用されない場合、1.7bar での水素の流れ(22.4SCCM)は300℃に維持した。
【0066】
以下の限定は、特定の実施例に適用するものである。
空間速度(SVまたはGHSV)=反応条件下における1時間当たりの触媒量当たりのガスの体積
空間時間収量=1時間当たりの触媒1リットル当たりで生産された生成物のグラム数
%酢酸転化=100(反応した酢酸のミリモル数)/(供給した酢酸のミリモル数)
%酢酸アカウンタビリティ=100(回収した酢酸のミリモル数+生成物中の酢酸塩等価物のミリモル数)/(供給した酢酸のミリモル数)
%標準化選択性=100(生成物のミリモル数)/(全生成物の総計のミリモル数)
〔触媒〕
本実施例に用いた触媒は以下に示す方法によって得られたものである。
触媒番号1:Fe2O3(三酸化二鉄)。Fe2O3(Aldrich ,lot #DQ15808 DQ,純度99.98%)は、入荷されたものを用いた。
【0067】
触媒番号2:Fe2O3 担持2.5%Pd(パラジウム)。Pd(NO3)2xH2O(422mg,Alfa lot #120982,Pd39.9%)および水(10mL)から溶液を調整した。この溶液を蒸発皿に入れた20X40メッシュ触媒番号1(7.1607g)に添加した。この混合物をストリームバスで乾燥し、400℃で4時間マッフル炉で焼成した。
【0068】
触媒番号3:Fe2O3 担持5%Pd。Pd(NO3)2xH2O(127mg,Alfa lot #120982,Pd39.9%)および水(2mL)から溶液を調整した。この溶液を蒸発皿に入れた触媒番号1(1.0294g)に添加した。この混合物をストリームバスで乾燥し、400℃で5時間マッフル炉で焼成した。
【0069】
触媒番号4:Fe2O3 担持10%Pd。Pd(NO3)2xH2O(251mg,Alfa lot #120982,Pd39.9%)、Fe(NO3)3・9H2O(5.06g,Mallinckrodt lot #5032KHTJ)および水(10mL)から溶液を調整した。この溶液にクエン酸(2.59g,Eastman Chemical Campanyプラント材料)から調製した分離溶液および水(5mL)を添加した。この混合物をうろこ状の塊になるまでストリームバスで乾燥し、400℃で5時間マッフル炉で焼成した。
【0070】
触媒番号5:Fe2O3 担持20%Pd。Pd(NO3)2xH2O(501mg,Alfa lot #120982,Pd39.9%)、Fe(NO3)3・9H2O(5.06g,Mallinckrodt lot #5032KHTJ)および水(10mL)から溶液を調整した。この溶液にクエン酸(2.23g,Eastman Chemical Campanyプラント材料)から調製した分離溶液および水(5mL)を添加した。この混合物をうろこ状の塊になるまでストリームバスで乾燥し、400℃で5時間マッフル炉で焼成した。
【0071】
触媒番号6:Fe2O3 担持40%Pd。Pd(NO3)2xH2O(1.0025g,Alfa lot #120982,Pd39.9%)、Fe(NO3)3・9H2O(5.06g,Mallinckrodt lot #5032KHTJ)および水(10mL)から溶液を調整した。この溶液にクエン酸(2.17g,Eastman Chemical Campanyプラント材料)から調製した分離溶液および水(5mL)を添加した。この混合物をうろこ状の塊になるまでストリームバスで乾燥し、400℃で5時間マッフル炉で焼成した。
【0072】
触媒番号7:Fe2O3 担持80%Pd。Pd(NO3)2xH2O(2.005g,Alfa lot #120982,Pd39.9%)、Fe(NO3)3・9H2O(1.01g,Mallinckrodt lot #5032KHTJ)および水(10mL)から溶液を調整した。この溶液にクエン酸(1.93g,Eastman Chemical Campanyプラント材料)から調製した分離溶液および水(5mL)を添加した。この混合物をうろこ状の塊になるまでストリームバスで乾燥し、400℃で5時間マッフル炉で焼成した。
【0073】
触媒番号8:Pdスポンジ。Pdスポンジ(20メッシュ,Alfa lot #00777)は、入荷されたものを用いた。
【0074】
〔実施例1〕
本実施例は、1bar 条件下での標準的な設定の下での大量の重量パーセンテージのFe2O3 担持Pdをチャージしたときの効果を例証する。本実施例は、触媒が0または100%のPdを含み、メタンの選択性が高い際に、酢酸の選択性が低い場合について例証する。本実施例は、また、それら触媒が90%以上の酢酸を転化させ、該10重量%のPdを含む触媒が、最低のメタンの選択性を伴い、最高の割合および最高の選択性でアセトアルデヒド(HAc)を生産する場合について例証する。本実施例はさらに、Pdを含まない触媒が最高のアセトアルデヒド(HAc)の選択性を有するが、それはまた最低の酢酸の転化率を有することを示す。アセトアルデヒド(HAc)の選択性と転化との間の関係は、後の実施例でより明確となっている。実施例1のデータは、触媒活性が高い場合のポイントを集めたもので、表1に示す。
【0075】
【表1】
Figure 0004094737
【0076】
〔実施例2〕
本実施例は、比較し得る酢酸転化の条件下で、2.5重量%および5重量%Pdを含む触媒の性能を比較した。実施例2に用いた供給条件は実施例1と同じものを用い、そのデータは、それゆえ低い転化を見越した上で触媒活性を調整した後に集めたものである。本実施例は、酢酸の転化が同じレベルで稼動された場合に、5重量%のPdを含む触媒が2.5重量%のPdを含むものよりもより高い選択性であることを例証している。本実施例はさらに、実施例1のFe2O3 触媒よりもPdを含む触媒を用いたほうが、より高い酢酸の転化でより高いアセトアルデヒド(HAc)の選択性を実現することを例証する。実施例2のデータは、表2に示す。
【0077】
【表2】
Figure 0004094737
【0078】
〔実施例3〕
本実施例は、比較し得る酢酸転化の条件下で5重量%および10重量%Pdを含む触媒の性能を比較した。実施例3に用いた供給条件は実施例1と同じものを用い、そのデータは、それゆえより高い転化を見越した上で触媒活性が最も高くなる間に集めたものである。本実施例は、酢酸の転化が同じレベルで稼動された場合に、10重量%のPdを含む触媒が5重量%のPdを含むものよりもより高い選択性であることを例証している。本実施例はさらに、1bar の圧力下で、10重量%レベルのPdを含んでいる場合に最適な性能を実現することを例証する。実施例3のデータは表3に示す。
【0079】
【表3】
Figure 0004094737
【0080】
〔実施例4〕
本実施例は、1bar 圧力下でFe2O3 担持5重量%Pdの性能において、様々な空間速度での水素中における酢酸(XHOAc)のモルフラクションの変化による効果を例証する。本実施例は、高い酢酸のモルフラクションで高いアセトアルデヒド(HAc)選択性を実現することができるものの、1bar での酢酸のモルフラクションが高い場合、空間速度の低下によってより高い転化を得ることが困難であることを例証する。実施例4のデータは表4に示す。
【0081】
【表4】
Figure 0004094737
【0082】
〔実施例5〕
本実施例は、流れにおける時間の作用としての水素/酢酸比が5/1の場合についての性能を例証するものである。本実施例は、良好な割合および良好なアセトアルデヒド(HAc)の選択性が実現され得るが、流れにおける相当な時間の経過後には、割合、転化、およびアセトアルデヒド(HAc)の選択性が減少することを例証する。本実施例はまた、高圧、低水素条件下では炭化水素の選択性が非常に低いことを例証する。本実施例はさらに、高圧、低水素の条件下では酢酸エチルが重要な生成物になることを例証する。実施例5の性能データは表5に示す。
【0083】
【表5】
Figure 0004094737
【0084】
〔実施例6〕
本実施例は、17.2bar の標準圧力下で、流れの時間の経過に伴って水素/酢酸比が7/1および5/1である場合に、Fe2O3 担持40重量%Pdの性能を例証する。本実施例は、また、実施例5の10重量%Pd触媒によって示される挙動のようには本実施例の触媒の性能を低下させないことを例証する。実施例6の性能データは表6に示す。
【0085】
【表6】
Figure 0004094737
【0086】
〔実施例7〕
本実施例は、本発明における統合したプロセスを例証する。本発明におけるプロセスの工程は、図1および2に示している。反応器(RX)は、本発明のPd/Fe2O3触媒を装填し、300℃、水素対酢酸のモル比5/1、17.2bar 圧力で運転し、本反応は、45%の酢酸の転化で、アセトアルデヒド(HAc)の選択性が89%であり、エタノール/酢酸エチルへの選択性が5%であり、アセトンおよび二酸化炭素の選択性が4%であり、炭化水素への選択性が2%である。エタノールは、アセトアルデヒド回収カラム(蒸留カラムD)の底部で、化学平衡の条件によって命令されることにより酢酸エチルに転化される。任意の硫酸の触媒は、エタノール−酢酸−水−酢酸エチルの平衡を促進することに用いることができる。本方法における本発明のプロセスの運転のための加熱および原料のバランスは、表7ないし9および表10ないし12に用意している。
【0087】
【表7】
Figure 0004094737
【0088】
【表8】
Figure 0004094737
【0089】
【表9】
Figure 0004094737
【0090】
【表10】
Figure 0004094737
【0091】
【表11】
Figure 0004094737
【0092】
【表12】
Figure 0004094737
【0093】
本発明は、好ましい実施の形態および実施例に関して描写されているとはいえ、技術的にそれらに熟練するほどに、上記に概説した原則の範囲内での変更が明白となるであろうことを理解されるだろう。それゆえ、本発明は、上記好ましい実施の形態および実施例に限定されるものではなく、そのような変更を包囲することを含むものである。
【0094】
【発明の効果】
本発明にかかる請求項1記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法は、以上のように、2.5ないし90重量%のパラジウムを含む酸化鉄触媒の存在下で、酢酸の水素化を行う工程を含む方法である。
【0095】
本発明にかかる請求項2記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法は、以上のように、請求項1記載の構成に加えて、上記酢酸の水素化は、部分的ガス状生成物を製造するとともに、さらに、酢酸を含む溶媒とともに上記部分的ガス状生成物からアセトアルデヒドを吸収する工程を含む方法である。
【0096】
本発明にかかる請求項3記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法は、以上のように、請求項1または2記載の構成に加えて、さらに、吸収されたアセトアルデヒドを蒸留する工程を含む方法である。
【0097】
本発明にかかる請求項4記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法は、以上のように、アセトアルデヒドおよび他の生成物を製造するための酢酸の水素化工程と、未転化の酢酸および他の生成物からアセトアルデヒドを分離する工程と、共沸蒸留を用いて他の生成物から未転化の酢酸を分離する工程とを含む方法である。
【0098】
上述した各方法によれば、酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法において、水銀およびアセチレンを関与させることによる危険性を避けることができるという効果を奏する。また、エチレンおよび酸素の反応を関与させることによる操作上の問題を避けることができるという効果も奏する。さらに、水性の酸性酸塩化物を含む反応混合物による腐食を避けることができるという効果も併せて奏する。
【0099】
本発明にかかる請求項5記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法に用いる触媒は、以上のように、酸化鉄および2.5ないし90重量%の範囲内のパラジウムとからなっている構成である。
【0100】
上記構成によれば、アセトアルデヒドの生産のための良好な選択性を伴う酢酸の水素化を実現することができるという効果を奏する。また、揮発性のアセトアルデヒドを容易に回収することを考慮した酢酸の水素化を実現することができるという効果も併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかるアセトアルデヒド生産のために用いられる構成要素の概略説明図である。
【図2】本発明の実施の一形態にかかる酢酸の回収に用いられる構成要素の概略説明図である。
【符号の説明】
3 流れ
19 流れ
30 流れ
43 流れ
50 流れ
A 吸収器
AC 酢酸カラム
D 蒸留カラム
E 酢酸エチルカラム
RX 反応器
Z 共沸混合物カラム

Claims (5)

  1. 2.5ないし90重量%のパラジウムを含む酸化鉄触媒の存在下で、酢酸の水素化を行う工程を含むことを特徴とする酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法。
  2. 上記酢酸の水素化は、部分的ガス状生成物を製造するとともに、
    さらに、酢酸を含む溶媒とともに上記部分的ガス状生成物からアセトアルデヒドを吸収する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法。
  3. さらに、吸収されたアセトアルデヒドを蒸留する工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法。
  4. アセトアルデヒドおよび他の生成物を製造するための酢酸の水素化工程と、
    未転化の酢酸および他の生成物からアセトアルデヒドを分離する工程と、
    共沸蒸留を用いて他の生成物から未転化の酢酸を分離する工程とを含むことを特徴とする酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法。
  5. 酸化鉄および2.5ないし90重量%の範囲内のパラジウムを含んでいることを特徴とする酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法に用いる触媒。
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