JP4796247B2 - 金属酸化物触媒の活性予測方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、計算化学手法によって金属酸化物触媒の酸化触媒性能を予測し、評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属酸化物触媒の開発における高活性触媒種の探索はもっぱら実験に頼っており、大量の触媒サンプルを調製して膨大な回数の実験を繰り返すことによってスクリーニングを行っていた。しかし、このようなスクリーニング方法では、実験を繰り返し行うことにより、設備、時間、人件費等の投資が大きくなる傾向があった。また、わずかな実験条件の差やミスによって結果が大きく変わることがあり、その触媒が有している触媒性能を正しく評価できない場合が多かった。さらに、実験に際して取り扱う化学物質の種類によっては、その毒性による健康への影響や爆発などの事故が伴うことがあった。このように、新しい触媒の開発には、多大な労力と費用に加え、長い期間が必要であるにもかかわらず、正確な触媒性能を評価できない場合があった。
【0003】
一方、最近では理論化学計算により工業材料の構造や物性などを予測、解析する方法が研究されている。例えば、触媒活性に関するものではないが、分子性結晶において、結晶の局所的な性質を失わない程度にその結晶構造の一部を取りだし、構造がエネルギー的に最も安定となるように最適化することによって結晶の高次の超分極率を非経験的に解析する方法(特開平5−173198号公報)、固体表面の吸着種の構造等の解析において、吸着種の最近接表面原子と隣接するすべての固体原子からなるクラスタを固体表面モデルとし、そのクラスタの局在軌道のうち吸着種の最近接表面原子に局在する軌道のみを電子相関計算に用いて固体表面の吸着種の解析を行う方法(特開平6−295294号公報)、未知物質の結晶構造を仮定し、その結晶構造から有限個の単位格子からなる系を取りだして各構成元素の電荷状態を仮定した後、主たるスペクトルを生成する構成元素からなるクラスターモデルを選択して他の構成元素を点電荷で置き換え、系の電子状態を分子軌道法によって計算する方法(特開8−62162号公報)、化合物の構造欠陥部分を電荷に置き換えて配置した仮定電荷と他の構成原子の電荷とにより形成される静電場を取り入れた分子軌道法を用いて電子状態を計算する構造欠陥を有した化合物の電子状態を予測する方法(特開平8−44701号公報)などが提案されている。
【0004】
金属酸化物触媒の触媒活性能の予測においても、計算化学手法は有効であると考えられる。そして、理想的には、実際の触媒反応を模擬して、触媒固体表面における目的物質の分解反応のダイナミクスをシミュレートし、触媒成分を変えてそれぞれの触媒活性を比較、評価できることが望ましい。しかしながら、化学反応の動的なシミュレーションや、多数の原子から構成される巨大な触媒固体表面モデルの計算には、莫大な計算資源を必要とするため、現状ではハード、ソフトの制約から触媒反応の経時的なシミュレーションを行い、その性能を予測することは非常に困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、計算化学手法によって、触媒の設計等において必要な触媒性能を短期間に、かつ正確に予測する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、金属酸化物触媒における触媒表面の活性点の構造を単純化したクラスタモデルを構築する工程と、構築されたクラスタモデルについて、量子化学計算手法により触媒表面における物性値を推算する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この特徴によれば、触媒表面の活性点の構造を単純化したクラスタモデルについて物性値を推算することにより、現実の触媒における性能を高精度に予測することが可能になる。しかも、クラスタモデルは単純化されたものを用いるので、量子化学計算に必要な計算量をあまり大きくする必要がなく、計算資源を有効に活用できる。
【0008】
第2の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第1の態様において、さらに、2種以上の金属酸化物触媒について推算された物性値を相対比較する工程を含むことを特徴とする。この特徴によれば、2種以上の金属酸化物触媒について推算された物性値を相対比較することによって、複数の触媒活性物質(例えば、金属種)の序列化を図ることができ、触媒設計における最適な金属種の選択が容易に行える。
【0009】
第3の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第1の態様または第2の態様において、クラスタモデルが1個の金属原子と、該金属原子と結合する水酸基と、からなる金属水酸化物クラスタモデルであることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、単純化されたクラスタモデルとして、1個の金属原子と、該金属原子と結合する水酸基とからなる金属水酸化物クラスタモデルを採用することによって、複雑で不明確な部分の多い現実の触媒挙動を考慮せずに、予測対象となる金属種自体が持つ酸化触媒活性そのものを予測することができる。
【0011】
第4の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第1の態様または第2の態様において、金属酸化物触媒が複合金属酸化物触媒であり、クラスタモデルが、異なる2個の金属原子と、該2個の金属原子間において両方の金属原子と結合している1または複数の酸素原子と、該金属原子と結合する水酸基と、からなる金属水酸化物クラスタモデルであることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、単純化されたクラスタモデルとして、異なる2個の金属原子、両方の金属原子に結合している1または複数の酸素原子および水酸基からなる金属水酸化物クラスタモデルを採用することによって、複雑で不明確な部分の多い現実の触媒挙動を考慮せずに、予測対象となる複合金属酸化物触媒における金属種の酸化触媒活性や、金属種の組み合わせの良否などを予測することができる。
【0013】
第5の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第3の態様または第4の態様において、金属水酸化物クラスタモデルが、金属原子の最高価数に基づき構築されたものであることを特徴とする。この特徴によれば、金属水酸化物クラスタモデルを、金属原子の最高価数に基づき構築することで、その金属種の酸化能を最大限に引き出した状態で量子化学計算を行うため、触媒活性を予測する上での指標性は高いものとなる。
【0014】
第6の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第3の態様または第4の態様において、金属水酸化物クラスタモデルが、金属原子が触媒中で取り得る最高価数に基づき構築されたものであることを特徴とする。この特徴によれば、その金属種が現実の触媒中で取りうる最高価数に基づきクラスタモデルを構築することによって、より実際の触媒の状態に近い推算値を得ることが可能になる。ここで、ある金属種が現実の触媒中で取りうる最高価数は、金属原子が固有に持つ最高価数と一致する場合もあるが、金属種の種類をはじめ、触媒の使用条件、担体の種類などによって変化するものであり、経験的に知ることができるものである。
【0015】
第7の態様の金属酸化物触媒の活性予測方法の発明は、第1の態様から第6の態様のいずれか1において、量子化学計算手法による触媒表面における物性値の推算を、クラスタモデルがエネルギー的に最も安定となるように構造安定化して行うことを特徴とする。この特徴によれば、仮想分子であるクラスタモデルがエネルギー的に最も安定な条件で物性値の推算を行うことにより、極めて複雑で解明されていない点も多い現実の触媒結晶中での構造に近づける努力をするよりも、計算速度を大幅に速めることができるので有利となる。なお、クラスタモデル分子の初期構造が安定化された構造と一致する場合には、実質的に構造安定化が必要でない場合もある。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の金属酸化物触媒の活性予測方法は、金属酸化物触媒における触媒表面の活性点の構造を単純化したクラスタモデルを構築する工程と、構築されたクラスタモデルについて、量子化学計算手法により触媒表面における物性値を推算する工程と、を含むものである。
【0017】
本発明方法で活性予測が可能な金属酸化物触媒としては、特に制限はないが、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などの第4、第5および第6周期の遷移金属種を含む金属酸化物や、これらの2種以上を含む複合金属酸化物を挙げることができる。
【0018】
触媒表面の活性点の構造を単純化したクラスタモデルとしては、1個または2個の金属原子によって構成されるクラスタモデルであり、例えば、式(I)で示されるような1個の金属原子と、その金属原子と結合する水酸基と、からなる金属水酸化物クラスタモデルや、式(II)、式(III)で示されるような、異なる2個の金属原子と、該2個の金属原子間において両方の金属原子と結合している1または複数の酸素原子と、該金属原子と結合する水酸基と、からなる複合金属水酸化物クラスタモデルを挙げることができる。なお、式(II)、式(III)の例に限らず、金属原子間に介在する酸素原子は、3個以上存在してもよい。
【0019】
【化1】
Figure 0004796247
(式中、M、M、Mは、それぞれ金属原子を示し、n1からn5はそれぞれ金属原子と結合する水酸基の数を示す)
【0020】
現実の金属酸化物触媒は、通常、触媒表面においても金属原子と酸素原子とが周期的に繰り返して配列した結晶構造をとるが、ここでは結晶構造の一部を金属原子を中心にして切り出し、単一成分系金属酸化物の場合には式(I)に示すように、金属原子と、金属原子に配位した酸素原子と、結晶場からの影響を第一次近似的に置き換えた水素原子とからなるクラスタモデル(金属水酸化物クラスタモデル)を仮定する。また、複合金属酸化物の場合には、式(II)、式(III)に示すように異なる2種の金属原子と、それらの金属原子に配位した酸素原子(この酸素原子のうちの1つ以上は2個の金属原子の間に位置し、2個の金属原子間の結合に寄与する)と、結晶場からの影響を第一次近似的に置き換えた水素原子とからなるクラスタモデルを仮定する。このように、最小単位の単純なクラスタモデルを仮定することによって、量子化学計算の負担を大幅に軽減して迅速な活性予測を行うことが可能になる。複合金属酸化物においては、式(II)、式(III)のようなクラスタモデルによって、例えば活性金属種と担体とのクラスタモデル、活性金属種と助触媒金属種とのクラスタモデル等を構築することが可能になる。
【0021】
構築された金属水酸化物クラスタモデルの立体構造(初期構造)は、この段階では任意の構造を選定し得る。図1に、Ti、V、Cr、FeおよびCoについての金属水酸化物クラスタモデルの初期構造の例を示す。同図中、(a)はTiO触媒表面のクラスタモデルとしてのTi(OH)を示すものであり、同様に、(b)はV触媒表面のクラスタモデルとしてのV(OH)、(c)はCr触媒表面のクラスタモデルとしてのCr(OH)、(d)はFe触媒表面のクラスタモデルとしてのFe(OH)、(e)はCo触媒表面のモデル分子としてのCo(OH)を示すものである。
【0022】
上記クラスタモデルは、触媒と同様に電気的に中性なものとすることが必要である。また、クラスタモデルの構築に際しては、金属原子の最高価数に基づきクラスタモデルを構築する方法、あるいは金属原子が触媒中で取り得る最高価数に基づきクラスタモデルを構築する方法、のいずれを採用してもよい。
【0023】
金属原子の最高価数に基づきクラスタモデルを構築する場合には、クラスタモデル中の金属原子と結合する水酸基の数が多くなるため、その分一つ一つの水酸基と金属との結合は弱くなる。つまり、この方法では、その金属種の反応性(酸化能)を最大限に引き出すようにモデリングすることになるので、触媒活性を予測する上での指標性は高いものとなり、触媒活性が高いものを見落とす可能性は少なくなる。
一方、現実の触媒中では、金属原子は必ずしもその金属種の最高価数を取り得るわけではなく、また逆に、分子状態の金属酸化物よりも高い価数をとることもあるため、その金属種が現実の触媒中で取りうる最高価数に基づきクラスタモデルを構築することによって、より実際の状態に近い推算値を得ることができる。いずれの方法でクラスタモデルを構築するかは、目的に応じて選択すればよい。ある金属種が現実の触媒中で取っている価数は、例えばX線光電子分光法(XPS)などの手法によって知ることができる。
【0024】
構築されたクラスタモデルについて、量子化学計算手法により触媒表面における物性値を推算する。物性値の推算に当っては、まずクラスタモデルがエネルギー的に最も安定となるように構造安定化を行う。構造安定化によって、物性値の推算を行うクラスタモデルと現実の触媒結晶中の配位状態や対称性とは必ずしも一致しないものとなる場合があるが、このように構造安定化を行うのは、現実の触媒における結晶構造が極めて複雑で、解明されていない不明な点が多いため、現実の触媒中での分子状態に近づける努力をするよりも、あくまで仮想分子であるクラスタモデルがエネルギー的に最も安定となるような条件で物性値の推算を行う方が計算上有利と考えられるためである。
【0025】
量子化学計算は、既知の方法である密度汎関数法または分子軌道法などにより行うことができる。量子化学計算によって推算する物性値としては、クラスタモデルの金属原子と酸素原子の結合の強さの指標となるようなもの、例えば、金属原子と酸素原子との間の結合エネルギーや、結合距離、振動数などが好ましい。これは、金属酸化物触媒における触媒反応が、主に触媒中の金属原子と酸素原子との結合の切断による酸化還元反応、例えば、活性形態である金属酸化物の酸素が反応により奪われる反応が重要な素過程の一つと考えられるためである。従って、クラスタモデルの金属原子と酸素原子との結合エネルギーは、予測対象となる触媒(金属種)の活性を示す推算物性値としては妥当なものである。
【0026】
以上の構造安定化から量子化学計算までは、市販のソフトウエア[例えば、密度汎関数プログラム「DMol」(MSI社製)、「ADF」(アムステルダム自由大学製)、分子軌道法プログラム「Gaussian」(ガウシアン社製)等]を用いることによって実施できる。
【0027】
以上のようにして得られた推算値により、対象となる金属種の触媒性能を予測評価することが可能である。クラスタモデルが二種の金属原子を含む複合金属酸化物である場合には、二つの金属種についてそれぞれ推算値が求められることになるので、クラスタモデルが活性金属種−担体金属種のモデルの場合には、活性種の推算値を元に触媒活性を予測評価することができる。クラスタモデルが活性金属種−助触媒モデルである場合も、同様に活性種側の推算値を元に触媒活性を予測評価できる。いずれの金属種が活性金属種であり、担体もしくは助触媒であるかが予期できない場合には、二つの金属種の推算値を比較して、より活性が高いと推察される方を活性種とすればよい。
【0028】
本発明方法は、さらに、2以上の触媒について得られた推算物性値を相対比較する工程を含めることが好ましい。これは、クラスタモデルがあくまで仮想分子であることから、量子化学計算により得られた推算物性値を触媒活性の絶対的な指標として利用するよりも、むしろ同様の条件で複数の触媒(金属種)の物性値を推算して相対的な比較を行うことによって、ある触媒の触媒活性や傾向を他の触媒との比較の中で評価することの方が意味が大きいからである。
【0029】
図2は、本発明の金属酸化物触媒の活性予測方法の一実施形態をアルゴリズムとして示すフローチャートである。ここでは相対比較を行うため、まず、比較したい触媒(すなわち、金属種または2種類の金属種の組み合わせ)を選定する(S101)。次に、金属種の価数を選定する(S102)。金属種の価数は、各金属種の最高価数としても、あるいは触媒中で取り得る最高価数としてもよい。
【0030】
価数を選定した後、金属水酸化物クラスタモデルの初期構造を構築する(S104)。なお、2種類の金属種を含む複合金属酸化物(二成分系)については、異なる金属種間の酸素原子の配位状態を選定した後(S103)、金属水酸化物クラスタモデルの初期構造を構築する(S104)。金属種間の酸素原子の配位状態は、金属原子間の酸素原子が一つの場合、二つあるいはそれ以上の場合などを想定できるが、金属原子間に二以上の酸素原子を含む構造を選択するほうが、クラスタモデル分子全体の構造の自由度が制約されるため、後に行う構造安定化計算において有利となる。
【0031】
初期構造が決定したら、推算する物性値を選定する(S105)。物性値を選定したら、密度汎関数法または分子軌道法からいずれかの計算方法を選定し(S106)、選定した計算方法により、構造安定化計算を行った後(S107)、物性値計算を行う(S108)。
【0032】
次に、他の系を計算するか、しないかの選択を行い、計算する場合には、S105に戻る。他の系の計算をしない場合には、推算された物性値の相対比較を行い(S109)、触媒活性を予測する(S110)。
【0033】
本発明による触媒の活性予測方法はソフトウエアにより実施することも可能である。以下にプログラムの例を示す。
<プログラム>
金属酸化物触媒の活性を予測するために、
(1)予測対象となる触媒(一種または二種の金属種の組み合わせ)を入力する手段と、
(2)予め金属種の価数データを記憶しておく価数データ記憶手段と、
(3)異なる二種の金属原子間における酸素原子の配位データを記憶しておく配位データ記憶手段と、
(4)入力された予測対象金属種について、金属種の価数を価数データ記憶手段から選定するとともに、二種の金属種の組み合わせの場合には配位データ記憶手段から酸素原子の配位状態を選定してクラスタモデルを構築する手段と、
(5)予め金属原子と酸素原子との結合角度、配位状態、対称性等の構造データを記憶しておく構造データ記憶手段と、
(6)前記構築されたクラスタモデルについて、構造データ記憶手段の構造データを利用し、量子化学計算手法により構造安定化計算を行う手段と、
(7)構造安定化されたクラスタモデルについて、量子化学計算手法により触媒表面における物性値を推算する手段、
としてコンピュータを機能させるための金属酸化物の触媒活性予測プログラム。
【0034】
このプログラムは必要に応じ、さらに
(8)異なる複数の金属種について得られた推算値を比較して触媒性能を相対評価する手段、を加えたものとすることもできる。
【0035】
上記触媒活性予測プログラムは、金属酸化物触媒の活性を予測するためにコンピュータを機能させるためのものであり、キーボードなどの入力装置と、量子化学計算を行う中央演算装置(CPU)、各種データを記憶する記憶装置、選択肢や結果を表示する表示装置、推算結果等を記録する記録装置などからなるコンピュータ等のハードウエア上で実行されるものである。
【0036】
【作用】
触媒自体の持つ特性を計算する目的で、多数の原子から構成される巨大な触媒固体表面を模擬することは、計算資源を時間的に有効利用する意味で最良の選択ではない。つまり、触媒固体表面のモデリングを正確に行い、電子状態の精密な計算に長時間を費やすよりも、むしろ触媒表面の特徴を有する小規模なモデル分子(金属酸化物の場合、中心金属種と酸素原子の組み合わせ)を用いて計算を行い、いろいろな中心金属種を有する金属酸化物の多様な固体表面状態を模擬することのほうが、活性点改良型触媒の開発等の目的に適しており、はるかに有益であると考えられる。以上のような観点から、本発明では金属酸化物触媒において最小単位とも言える金属水酸化物クラスタモデルを選定することによって計算量を大きくすることなく触媒性能の予測を実現した。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれにより何ら制約されるものではない。
実施例1
1.触媒活性の測定:
市販の試薬(金属酸化物触媒)について、ダイオキシン類の代替指標物質として知られるオルトクロロフェノール(o−CP)の分解性能を測定した。測定方法の詳細は以下のとおりである。
(1)装置;質量分析器付きパルス反応式試験装置を使用した。
指標物質:クロロフェノール
(2)試料(市販試薬);TiO、V、Cr、Fe、Co
(3)条件
試料量 0.6g(希釈石英 1g)
反応管 内径約10mm(石英製)
試料形状 粉末
反応温度 300℃
キャリアガス 純エアー 70SCCM
指標物質 o−クロロフェノール 9μl
前処理 整粒(遊星ボールミルにて250rpm/30分粉砕)
酸化・乾燥(試験直前に純エアー流通雰囲気中/400℃/60分)
【0038】
空気流通下、指標物質o−CPを試料充填層にパルス状に注入し、通過後のガスをオンライン採取し、四重極質量分析器(ULVAC社製)にてo−CPを分析、定量した。また試料充填層を通さずにその下流にて同量のo−CPを注入し、これを質量分析することにより、o−CP減少率と、そこから一次反応を仮定して反応速度定数を算出した。さらに、充填した試薬金属酸化物の比表面積をN−BET吸着法により計測しておき、これらの値を比表面積で規格化した。
【0039】
2.触媒活性の予測:
実測試験を行った試薬に含まれる金属種(Ti、V、Cr、Fe、Co)について、図2のフローチャートに基づき、金属原子と酸素原子との間の結合エネルギー(ここでは、水酸基1個当りの結合エネルギーとして算出した)を量子化学計算により推算し、実験的に測定した触媒活性との相関を調べた。
【0040】
クラスタモデルを構築する際の価数は、Ti;4価、V;5価、Cr;6価、Fe;3価、Co;4価とした(結晶表面もしくは結晶内部でとり得る、もしくは取っていると推察される最高の価数を採用するため、ここでCrを6価、Coを4価とした)。従って、金属水酸化物クラスタモデルとしては、それぞれTi(OH)、V(OH)、Cr(OH)、Fe(OH)、Co(OH)を採用した。
【0041】
また、物性値の推算は、密度汎関数プログラム「DMol」(MSI社製)]を用い、基底関数は分極を考慮した2倍数値基底関数(DNP)、構造安定化およびエネルギー計算は局所密度近似(LDA)レベルで行った。
【0042】
3.実測値と予測値との比較:
各種金属酸化物について、実測試験で得られた反応速度定数(比表面積で規格化したもの)の大きさは、Cr>Co>Fe>V>TiOの順であった。また、クラスタモデルを用いて推算した結合エネルギーの大きさは、Cr<Co<Fe<V<Tiとなり、実測値で得られた反応速度定数の序列と高い相関があることが示された。両者の相関は図3に示すとおりである。このことより、クラスタモデルの仮想分子における金属原子と水酸基(すなわち、金属原子と酸素原子)の結合が弱い金属種ほど、実際の触媒でも金属原子と酸素原子の結合が切れやすく、酸化能が高いことが予測できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明方法は、実際に起きている化学反応の動的なシミュレートを行うのではなく、触媒自体の特性(理論物性値や電子状態など)を理論計算することによって触媒と目的物質との反応性を明らかにし、より少ない計算資源の範囲内で最も効率的に触媒設計を行うことを可能にするものである。本発明方法によれば、二成分系などの複数の金属種の組み合わせからなる複合金属酸化物触媒の触媒活性を比較評価することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金属水酸化物クラスタモデルの初期構造の例を示す図面であり、(a)はTi(OH)、(b)はV(OH)、(c)はCr(OH)、(d)はFe(OH)、(e)はCo(OH)を示す。
【図2】 本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図3】 実施例1における各金属種の反応速度定数の実測値と理論計算による結合エネルギーとの相関関係を示す図面。

Claims (8)

  1. 金属酸化物触媒における触媒表面の活性点の構造を最小単位に単純化したクラスタモデルを構築する工程と、構築されたクラスタモデルについて、量子化学計算手法により触媒表面における物性値であって、且つ、前記金属酸化物触媒の活性を示す物性値を推算する工程と、を含み、
    前記金属酸化物触媒の活性は、該金属酸化物触媒と目的物質との反応性を表すものであり、
    前記物性値は、前記クラスタモデルの金属原子と酸素原子との間の結合の強さの指標となるものであることを特徴とする、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  2. 請求項1において、さらに、2種以上の金属酸化物触媒について推算された物性値を相対比較する工程を含むことを特徴とする、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  3. 請求項1または2において、クラスタモデルが1個の金属原子と、該金属原子と結合する水酸基と、からなる金属水酸化物クラスタモデルである、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  4. 請求項1または2において、金属酸化物触媒が複合金属酸化物触媒であり、クラスタモデルが、異なる2個の金属原子と、該2個の金属原子間において両方の金属原子と結合している1または複数の酸素原子と、該金属原子と結合する水酸基と、からなる金属水酸化物クラスタモデルである、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  5. 請求項3または4において、金属水酸化物クラスタモデルが、金属原子の最高価数に基づき構築されたものである、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  6. 請求項3または4において、金属水酸化物クラスタモデルが、金属原子が触媒中で取り得る最高価数に基づき構築されたものである、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  7. 請求項1から6のいずれか1項において、量子化学計算手法による触媒表面における物性値の推算を、クラスタモデルがエネルギー的に最も安定となるように構造安定化して行うことを特徴とする、金属酸化物触媒の活性予測方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項において、前記金属酸化物触媒の活性は、目的物質の酸化分解活性であることを特徴とする、金属酸化物触媒の活性予測方法
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