JP4086421B2 - 樹脂積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、耐衝撃性、落下衝撃強度、柔軟性、ヒートシール性、耐熱性、耐寒性に優れた樹脂積層体及びその樹脂積層体よりなる医療用チューブ又は医療用容器に関する。特に、透明性、落下衝撃強度及び柔軟性に優れた樹脂積層体及びその樹脂積層体よりなる医療用チューブ又は医療用容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、食品包装、医療器具、工業資材等の分野において透明性、機械的強度に優れ、かつ柔軟性に優れた材料として軟質ポリ塩化ビニルフィルムが広く用いられてきた。しかしながら、軟質ポリ塩化ビニルフィルムは可塑剤を大量に含有しているために医療器具等に用いる場合、衛生性に問題があった。また、廃棄時の燃焼の際に炉を腐蝕する、ダイオキシンを発生するという理由から国内外において軟質ポリ塩化ビニルフィルムに代わる素材が求められるようになってきた。
【0003】
上記軟質ポリ塩化ビニルフィルムに似た軟質フィルムとしてはエチレン・酢酸ビニル共重合体、超低密度ポリエチレン等を主体としたものがあり、柔軟性、透明性、衛生性等の点から様々な用途で使われてきている。しかしながら、これら軟質フィルムは厚くすると透明性、光沢等の点で劣るので、薄くせざるを得ず、そうすると落下衝撃強度等の強度が維持できないという問題点があった。
【0004】
こうした点を改良するものとして、内層、中間層及び外層の少なくとも3層構造を有し、プロピレン成分含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフインを20〜100重量%及び結晶性ポリプロピレンを80〜0重量%含有してなる樹脂組成物からなる中間層と、結晶性ポリプロピレンからなる内外層が積層されるフイルムにより構成されてなる積層フイルムが特開平5−77371号に提案され、包装フィルム、メディカル用途フィルム等として好適に用いられることが知られている。
【0005】
さらに、内層、中間層及び外層の少なくとも3層構造を有し、プロピレン及び/又はブテン−1成分含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフイン20〜100重量%及び結晶性ポリプロピレン80〜0重量%からなる中間層と、ポリオレフイン及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる内外層とが積層されるフイルムにより構成されてなる積層フイルムが特開平7−68722号に提案され、包装フィルム、メディカル用途フィルム等として好適に用いられることが知られている。
【0006】
しかしながら、これらのフィルムは特に低温時の落下衝撃強度が不足するため、液体物包装、重量物包装及び輸液バッグ、血液バッグ等の医療容器として用いられる場合、輸送等の流通時において、包装物に亀裂が入ったり、破れたりして内容物が流出するという問題点があることが解った。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点に鑑み、本発明は、落下衝撃強度に優れ、かつ耐熱性、耐寒性、透明性、柔軟性、ヒートーシール性、光沢、衛生性等 特に、透明性、柔軟性及び落下衝撃強度に優れた樹脂積層体及び該樹脂積層体からなる医療用チューブ、医療用容器の提供を目的とする。また、本発明は、食品包装等の包装用材料、薬液バッグ、輸液バッグ、血液バッグ、廃液バッグ、排尿バッグ等のメディカル材料、金属保護フィルム、粘着テープの基材、土木、建築分野における建材用材料等の各種用途に好ましく使用できるもので、フィルム、シート等のウェブ状に成膜されたものでもよいし、ブロー容器、深絞りの容器等の如く容器状に成型されたものでもよく、その形状は任意である。特に、透明性、落下衝撃強度及び柔軟性に優れた樹脂積層体及びその樹脂積層体よりなる医療用チューブ又は医療用容器を提供しようとするものである。
【0008】
本発明者らは、これら目的を実現すべく研究を重ねた結果、少なくとも3層からなる樹脂積層体に於いて、中間層が低結晶性ポリオレフィン、結晶性ポリプロピレン及びスチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物の混合物からなり、外内層が、ポリプロピレン又はポリプロピレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物からなる樹脂積層体が、これら目的を実現することを見出し、本発明に到達したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1の発明は、少なくとも内層、中間層及び外層の3層よりなる樹脂積層体において、中間層を構成する樹脂(A)がプロピレン及び/又はブテン−1成分を50重量%以上含有する非晶性ポリオレフィンを20重量%以上100重量%未満含有する低結晶性ポリオレフィン、結晶性ポリプロピレン及びスチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物からなり、外層及び内層を構成する樹脂(B)がポリプロピレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする樹脂積層体である。
【0011】
請求項2の発明は、上記中間層を構成する樹脂(A)が、上記低結晶性ポリオレフィンを5重量%以上80重量%以下、スチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物を15重量%以上90重量%以下、結晶性ポリプロピレンを5重量%以上80重量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂積層体である。請求項3の発明は、上記内層及び外層を構成する樹脂(B)は、スチレン系熱可塑性エラストマーを30重量%以下、ポリプロピレンを70重量%以上100重量%以下未満含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂積層体である。請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂積層体からなる、医療用チューブ又は医療用容器である。
【0012】
本発明の中間層に用いられる樹脂(A)のうち、低結晶性ポリオレフィンは、少なくともプロピレン及び/又はブテン−1の含有率が50重量%以上である非晶性オレフィンポリマーを含むものである。例えば、該非晶性ポリオレフィンに他の非晶性ポリオレフィン又は結晶性のポリオレフィンを混合したもの、該非晶性ポリオレフィンに他の成分を共重合したものを使用することができる。また、非晶性のポリプロピレンやポリブテン−1又はプロピレンやブテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を用いることもできる。非晶性ポリオレフィンのプロピレン及び/又はブテン−1成分含有量が50重量%未満の場合は、結晶性ポリプロピレンとの相溶性が低下するので好ましくない。
【0013】
上記非晶性ポリオレフィンとは、沸騰n−ヘプタン不溶分、すなわち、沸騰n−ヘプタンによるソックスレー抽出不溶分が70重量%以下、好ましくは60重量%以下のものである。沸騰n−ヘプタン不溶分が70重量%より大きいと、非晶性部分の比率が少なくなり得られるフィルムに目的とする十分な柔軟性を付与することができない。
【0014】
また、上記非晶性ポリオレフィンは、好ましくは数平均分子量が1,000〜200,000、更に好ましくは1,500〜100,000である。数平均分子量が200,000を越えるとフィルム成形が難しく、1,000未満では機械的強度が低下する。本発明において、上記非晶性ポリオレフィンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記非晶性ポリオレフィンとしては、結晶性ポリプロピレン製造時に副生するアタクチックポリプロピレンを用いてもよいし、原料からこれを目的として生産して用いてもよい。また、プロピレン又はブテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体は、所定のプロピレン又はブテン−1成分を含有するように原料から生産して用いることができる。
【0016】
本発明の中間層に使用する樹脂のうち非晶性ポリオレフィンとして、具体的には、上記プロピレン成分含有量等所定の組成を有するポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1・エチレン三元共重合体、プロピレン・ヘキセン−1・オクテン−1三元共重合体、プロピレン・ヘキセン−1・4−メチルペンテン−1三元共重合体等のプロピレン成分が主成分である非晶性ポリオレフィンが挙げられる。
【0017】
また、上記ブテン−1成分含有量を有するポリブテン−1、ブテン−1・エチレン共重合体、ブテン−1・プロピレン共重合体、ブテン−1・プロピレン・エチレン三元共重合体、ブテン−1・ヘキセン−1・オクテン−1三元共重合体、ブテン−1・ヘキセン−1・4−メチルペンテン−1三元共重合体等のブテン−1成分が主成分である非晶性ポリオレフィンも挙げられる。
【0018】
非晶性ポリオレフィンが、プロピレン・エチレン共重合体の場合には、エチレン成分含有量が0重量%を越えて30重量%以下、好ましくは1重量%以上20重量%以下が望ましいが、これに限定されるものではない。エチレン成分含有量が、30重量%より大きくなると、得られるフィルムが柔らかくなりすぎる。
【0019】
本発明の非晶性ポリオレフィンがプロピレン・ブテン−1共重合体の場合には、プロピレンが主成分の共重合体と、ブテン−1が主成分の共重合体があるが、いずれも引張伸び、凝集力が大きく、好適に用いられる。
【0020】
本発明の中間層に使用する樹脂(A)のうち、結晶性ポリプロピレンは、押出成形、射出成形、ブロー成形用等として通常市販されているポリプロピレンを包含し、沸騰n−ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレンであり、この場合、プロピレン単独重合体でもよく、また、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0021】
上記結晶性ポリプロピレンは、市販品を用いてもよいし、また専用に製造したものでもよい。結晶性ポリプロピレンの製造方法は、特に制限されるものでなく従来の結晶性ポリプロピレンの製造方法の中から適宜選択して適用することができる。
【0022】
また、結晶性ポリプロピレンとの共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数2〜8のα−オレフィン、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が好ましい。これらの中でも、特にエチレン又はブテン−1が適当である。
【0023】
本発明において、上記結晶性ポリプロピレンとして、好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン成分を30重量%以下、好ましくは1重量%以上25重量%以下含有するプロピレン・エチレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、ブテン−1を20重量%以下含有するプロピレン・ブテン−1のランダム共重合体又はブロック共重合体が挙げられる。これらのうち、本発明の樹脂積層体、例えば、フィルムやシート等の用途からエチレン又はブテン−1とプロピレンとの共重合体が、特に好ましい。上記結晶性ポリプロピレンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、本発明においては、上記中間層を構成する樹脂組成物にスチレン系熱可塑性エラストマーをさらに混合している。スチレン系熱可塑性エラストマーを、ポリプロピレンに混入することにより、耐衝撃性、流動性、柔軟性、透明性、低温脆性等の改質を促す改質剤として機能する。
【0025】
本発明で用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、中間層に用いられる樹脂(A)に用いられるものとして、スチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物が例示でき、後述する内外層を構成する樹脂(B)に用いたれるものとして、スチレン・ジエン系のブロック共重合体エラストマー、同ランダム共重合体エラストマー及びそれらの水素添加物が例示できる。ここでスチレン系成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、及びこれらの混合物等を例示でき、ジエン系成分としてはブタジエン、イソプレン、ペンタジエン及びこれらの混合物等を例示できる。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマーの代表例としてはスチレン・ブタジエンブロック共重合体、同ランダム共重合体及びそれらの水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体、同ランダム共重合体及びそれらの水素添加物等を挙げることができる。
【0027】
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーをより詳述すれば、中間層に用いられる樹脂(A)に用いられるものは、スチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物であり、内外層に用いられる樹脂(B)に用いられるものは、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては特に制限はないが、下記のようなエラストマーが例示できる。
【0028】
スチレン系エラストマーとして具体的に、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブテン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブテン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・プロピレン、ポリスチレン−ポリエチレン・プロピレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリプロピレン・ブテン、ポリスチレン−ポリプロピレン・ブテン−ポリスチレン、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブチレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブチレン−ポリエチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブチレン−ポリプロピレン、ポリスチレン−ポリエチレン・プロピレン−ポリエチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・プロピレン−ポリプロピレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブテン−ポリエチレン、ポリスチレン−ポリエチレン・ブテン−ポリプロピレン、ポリスチレン−ポリプロピレン・ブテン−ポリエチレン、ポリスチレン−ポリプロピレン・ブテン−ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンランダム共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレンランダム共重合体及びその水素添加物等が例示される。
【0029】
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレン・ジエン系エラストマーの水素添加物が好ましく、特に、スチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物が好ましい。樹脂積層体が、輸液バッグ、又は血液バッグに使用される場合は、特に、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレンランダム共重合体の水素添加物が良好である。
【0030】
より具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン−ブタジエン−ランダム共重合体の水素添加物(HSBR)が例示されるが、本発明では、HSBRを使用することが好ましい。上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0031】
前記HSBR(スチレンブタジエンランダム共重合体の水素添加物)は、重合体のほとんどの部分がスチレンとブタジエンのランダム共重合体であり、その重合体の両端部分をポリスチレンのブロック部とし、そのポリマーを水素添加したものである。一般に、SBRを水素添加したものは、ペレット化するとブロッキングが発生しやすく、使用することができない。エチレンプロピレンランダム共重合体(ランダムPP)又はエチレンプロピレンブロック共重合体(ブロックPP)にそれぞれHSBRを混入すると、それぞれのPPに対して非常に分散性が良く、それにより、ランダムPPの場合、耐衝撃性、柔軟性、透明性、耐熱性、低温脆性が大きく改善され、ブロックPPの場合も同様に、耐衝撃性、柔軟性が飛躍的に改良され、さらに耐熱性、低温脆性、透明性に優れる。
【0032】
しかしながら、スチレン系エラストマーであるスチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物は、低結晶性ポリオレフィンと混合した場合、相溶性が良くなくすじが発生する傾向があり、特に、血液バッグ、輸液用医療部材には注意を要する。
【0033】
例えば、PPにHSBRを混入すると、HSBRはPPへの分散性が非常に良く、0.1μmの単位で均一分散し、更には、数10nmの単位まで微分散可能である。PPとHSBRを混合した場合は、相互の分散性がよく透明性が極めて優れたものになる。同様に低結晶性ポリオレフィンのCAP樹脂とHSBRを混合すると、HSBRはCAP樹脂への分散性が非常に良く、透明性が極めて優れたものである。一方、PP又はCAP樹脂とスチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を混合した場合、分散性が低くすじが発生する傾向が認められた。
【0034】
本発明の内外層を構成する樹脂(B)は、ポリプロピレンとスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物である。ポリプロピレンは、中間層において使用するものと同様のエチレンプロピレンランダム共重合体が好ましいが、これに限定されず、前述した各種の化合物を使用することができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、中間層において使用したものと同様のエラストマーが好ましいが、これに限定されず、各種の化合物を使用することができる。ポリプロピレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーの配合比率は、ポリプロピレン70重量%以上100重量%未満、スチレン系熱可塑性エラストマー30重量%以下が好ましい。
【0035】
本発明の樹脂積層体は、上記した中間層樹脂(A)及び内外層樹脂(B)を、通常、交互に積層して構成され、少なくとも3層から構成される。例えば(B)/(A)/(B)の組み合わせで樹脂積層体を構成する。
【0036】
本発明の樹脂積層体を構成する樹脂組成物の組み合わせは、例えば、プロピレン及び/又はブテン−1成分含有率が50重量%以上の低結晶性ポリオレフィン(APO)と結晶性ポリプロピレン(PP)とスチレン系熱可塑性エラストマー(HSBR)とを括弧内の記号で表せば、以下のようになる。この場合、+は混合物を意味する。さらに、以下の組み合わせは、外層/中間層/内層の順に示している。混合物は、各ペレットを押出機の中で混練される
PP + HSBR /APO + HSBR + PP /PP + HSBR
【0037】
本発明において、樹脂積層体及び樹脂積層体を構成する各層の厚さは、特に制限されるものではなく、任意に選択することができる。また、中間層樹脂(A)と内外層樹脂(B)との厚みの比率も、特に制限されるものではないが、好ましくは、前述のように中間層樹脂(A)は樹脂積層体の柔軟性に寄与し、内外層樹脂(B)は樹脂積層体の柔軟性、耐熱性、弾性、シール性に寄与するため、適宜用途に応じて厚みを構成することができる。
【0038】
中間層樹脂(A)のHSBRの添加量を増加すれば、全体として耐衝撃性、耐熱性、耐寒性、柔軟性、弾性が増加する傾向にある。また、HSBRの添加量が80〜100重量%の場合は、滅菌後にしわや白化が発生し、またコストが大幅に高くなるので好ましくない。従って、(A)のHSBRの添加量は、20〜80重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、25〜75重量%、さらにより好ましくは、25〜50重量%の範囲が好適である。
【0039】
(A)層の非晶性ポリオレフィン(APO)の量を増加すれば、柔軟性が維持されるが、弾性は改善されず、強度が充分ではない。そのため、柔軟性、弾性を改善するためにHSBRを添加する必要がある。HSBRに対してAPOを多くすれば、強度が落ちるが、APOを少なくすれば、しわが発生する
【0040】
さらに、APOとHSBRに対してPPの添加量が多いと、柔軟性が落ち、添加量が少ない場合には、結晶性PPを添加する効果であるしわの解消ができない
APOとHSBRとPPとの混合量は、APOの量が5〜80重量%、HSBRの量が15〜90重量%、PPの量が5〜80重量%の配合が好ましく、また、APOが20〜30重量%、HSBRが40〜60重量%、PPが20〜30重量%の配合がより好ましく、さらにまた、APOが25重量%、HSBRが50重量%、PPが25重量%との配合がさらに最も好ましい。
【0041】
(B)のHSBRの添加量を増加すれば、全体として柔軟性は増加するが、ブロッキングが発生し、粘着性が増加して、使用できない。また、HSBR単体では同様にブロッキングが生じて使用できない。また、PPに対してHSBRの混合量を多量に使用することもできるが、コストが高くなるので好ましくなく、用途に応じて添加量を決定することが好ましい。(B)がHSBR及びPPの混合物である場合には、PPは、柔軟性、耐寒性、耐熱性を維持する。PPの量が多いと、硬くなり、PPの量が少ないとHSBRの特性が出現してブロッキングが起こり易くなる。HSBRは、柔軟性と低温脆性とを改善する。HSBRの添加量が多いとブロッキングが発生し、柔軟性が増大し、少ないと耐寒性が低下する。従って、樹脂積層体の全体重量に対して(B)のHSBRの添加量は、30重量%以下の範囲が好ましく、20重量%以下の範囲がより好ましい。
【0042】
本発明の樹脂積層体は、通常の多層押出し成形で製造することができる。3機の押出し機にそれぞれ前述の外層、中間層、内層の材料を投入する。そして、ダイスから共押出し後、水冷して樹脂の結晶化を抑制することにより、透明なフィルム、シート、チューブを得ることができる。更に、これらのフィルム、シート又はチューブを加工することによりバッグ、容器等を得ることができる。
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。
参考例1
以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のランダムエチレンプロピレン共重合体)からなり、厚さが30μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンとからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)の2種類の樹脂を重量比1:1で混合したものからなり、厚さは240μmである。樹脂積層体として、外層30μm/中間層240μm/内層30μmの厚みを有するチューブを製造した。
【0045】
【実施例
同様に、以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)の2種類の樹脂を重量比4:1で混合したものからなり、厚みさは50μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンとからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)、スチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)及びランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)の3種類の樹脂を重量比1:2:1で混合したものからなり、厚さは150μmである。樹脂積層体として、外層50μm/中間層150μm/内層50μmの厚みを有するチューブを製造した。
【0046】
【実施例
同様に、以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)の2種類の樹脂を重量比4:1で混合したものからなり、厚さは25μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンとからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)、スチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)及びランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のランダムエチレンポリプロピレン共重合体)の3種類の樹脂を重量比1:2:1で混合したものからなり、厚さは200μmである。内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のランダムエチレンポリプロピレン共重合体)からなり、厚さは25μmである。樹脂積層体として、内層25μm/中間層200μm/外層25μmの厚みを有するチューブを製造した。
【0047】
【参考例2】
同様に、以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)からなり、厚さは25μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)、スチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)及びランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)の3種類の樹脂を重量比1:2:1で混合したものからなり、厚さは200μmである。内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)の2種類の樹脂を重量比4:1で混合したものからなり、厚さは25μmである。樹脂積層体として、外層25μm/中間層200μm/内層25μmの厚みを有するチューブを得た。
【0048】
参考例3
同様に、以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)からなり、厚さは50μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・イソプレンのブロック共重合体(SIS)の水素添加物の2種類の樹脂を重量比1:1で混合したものからなり、厚さは150μmである。樹脂積層体として、外層50μm/中間層150μm/内層50μmの厚みを有するチューブを得た。
【0049】
参考例4
同様に、以下の条件で内外層及び中間層の3層からなる樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)からなり、厚さは25μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンよりなる低結晶性ポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)及びスチレン系エラストマー、即ち、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物の2種類の樹脂を重量比1:1で混合したものからなり、厚さは200μmである。樹脂積層体として、外層25μm/中間層200μm/内層25μmの厚みを有するチューブを製造した。尚、ここで使用したスチレン・イソプレンブロック共重合体は、イソプレン部が1.2結合したものである。
【0050】
【比較例1】
比較のため、以下の条件で樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)からなり厚さは30μmであり、中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)からなり厚さは240μmである。樹脂積層体として、外層30μm/中間層240μm/内層30μmの1:8:1の厚みを有するチューブを得た。
【0051】
【比較例2】
比較のため、同様に以下の条件で樹脂積層体を製造した。外内層は、ランダムポリプロピレン(エチレン含有量3%のエチレンプロピレンランダム共重合体)及びスチレン系エラストマー(スチレンブタジエン共重合体の水素添加物:HSBR)の2種類の樹脂を重量比4:1で混合したものからなり厚さは30μmである。中間層は、非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンからなる低結晶性のポリオレフィン樹脂(商品名:CAP樹脂、宇部興産(株)製品)からなり厚さは240μmである。樹脂積層体として、外層30μm/中間層240μm/内層30μmの厚みを有するチューブを得た。
【0052】
【比較例3】
比較のため、塩化ビニル(可塑剤50〜60重量%を添加したもの)単独で、総肉厚350μmのチューブを製造した。
【0053】
次に、実施例及び比較例で製造したチューブにつき、落袋試験を行った。試験方法及び試験結果は以下の通りである。
落袋試験1
検体チューブをカットし、長さ350mm、幅200mmの袋を作った。袋に2000ccの水を注入後、シール幅5mmで150℃〜250℃の範囲でシールして、4方向を溶着した。かくして、外寸横方向200mm、縦方向350mmの袋(バッグ)を作った。次に、バッグを115℃30分の高圧蒸気滅菌後、25℃雰囲気中に24時間放置した。その後、バッグを2mの高さから同じバッグを連続して5回落とす落袋試験を行った。
【0054】
その結果を表1に示す。表中、参1〜参4は、参考例1〜4を意味する。実1〜実2は、実施例1〜2を意味する。比1〜比3は、比較例1〜比較例3を意味する。また、○は破袋せず、×は破袋した、を示す。この結果から、中間層を構成する樹脂成分として、特に、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物であるHSBRを使用したものは、破袋したものが無く、その効果が大きいことが認められた。尚、参考例3及び参考例4は、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を使用したもので、袋は落袋試験で破袋したが、改良の余地はある。
【0055】
【表1】
Figure 0004086421
【0056】
落袋試験2バッグを5℃雰囲気中に24時間放置した後、バッグを2mの高さから同じバッグを連続して5回落とす落袋試験を行った。その結果を表2に示す○は破袋せず、×は破袋した、を示す。落袋試験2は、バッグを低温度に保持した場合の落下衝撃強度をみているものである。この場合も、室温保持した場合と同様に、中間層を構成する樹脂成分として、特に、スチレン・ジエンランダム共重合体の水素添加物は、その効果が大きいことが認められた。
【0057】
【表2】
Figure 0004086421
【0058】
また、上記実施例1〜2、参考例1〜4と比較例1〜3とを2000ccの水を注入、滅菌後(115℃30分)、5℃の雰囲気で24時間、又は、滅菌後(115℃30分)25℃雰囲気中に24時間放置した。これらのバッグを2mの高さから同じバッグを連続して5回落下させる落袋試験を行った。この落袋試験の結果は、先の落袋試験と同様であった。
【0059】
落袋試験に際して、同時に、(1)ピンホールにつながるバッグの傷の有無、(2)バッグ並びにシール部の異常有無、(3)内溶液の漏出の有無、について目視検査を行った。比較例1〜3に於いては、全て5℃雰囲気中に24時間放置した場合、シールしたエッジ部(シールした部分と上下2枚のフィルムの分岐点)が落袋試験後に剥離し、25℃雰囲気中に24時間放置した場合、同様に全てシールしたエッジ部が落袋試験後に剥離し、また、滅菌後シールしたエッジ部が全て落袋試験後に剥離していた。これに対して、実施例1〜2、参考例1〜2に於いては、上記3点の目視検査で特に問題は認めなかった。即ち、本発明のバッグは、いずれも115℃の高温度の滅菌処理に対しても耐熱性があり、その上、室温、低温ともに破袋がないものであった。
【0060】
次に、本発明の樹脂構造物の柔軟性を官能試験により行った。バッグに2000ccの水を注入、滅菌(115℃30分)した後、25℃雰囲気中に24時間放置した。これらのバッグを3人の素手による触感により一人が同一バッグを5回測定し、バッグの柔軟性を、A〜Cのランクに分類し、判定したものである。結果を表3に示す。尚、表中、Aは柔らかい、Cは硬い、を意味し、柔軟性の順序はA>B>Cである。この結果、本発明の樹脂積層体から製造したバッグの柔軟性は、塩化ビニルと同等の柔軟性を有することが判明した。また、特に、スチレン系エラストマーとしてSHBRを使用した場合は、柔軟性に於いても効果が大きいことが認められる。尚、参考例3〜4は、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を使用したもので、官能試験はBで塩化ビニルを除く比較例に対比し、良い結果を得ている。
【0061】
【表3】
Figure 0004086421
【0062】
また、温度を下げて、5℃雰囲気中に24時間放置したバッグを3人の素手による触感により一人が同一バッグを5回測定し、バッグの柔軟性を測定した場合も、表3と同様な結果を得た。
【0063】
更に、各チューブについて、ヘイズ、全光線透過率、ヤング率、引張強度、引張伸度等の物性を測定した。その結果を表4に示す。表中、*0はJISK6714、*1はJIS K6717を、*2はJIS K727を、*3はJIS K7127を、*4はJIS K7127を、そして*5は100%モジュラスを意味する。
【0064】
【表4】
Figure 0004086421
【0065】
上記表4を総括すれば、ヘイズ及び全光線透過率からスチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物を使用した実施例1〜2、参考例1〜2は、比較例1〜3に比較し、透明性が高いことがわかる。ヤング率の比較から、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物を使用した実施例1〜は、比較例1〜2に比較し、ヤング率の数値が約半分の数値となっており、本発明の実施例が非常に柔軟性に富むことを示している。
【0066】
以上、本発明を3層からなる樹脂積層体について説明してきたが、4層以上の樹脂構成から積層されている樹脂積層体にも適用できることはいうまでもない。即ち、中間になる層を形成する樹脂として、低結晶性ポリオレフィン、結晶性ポリプロピレン及びスチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物を少なくとも含み、内外層を形成する層を構成する樹脂が、ポリプロピレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーよりなる樹脂積層体は、本発明の技術的思想の延長線上にあり、本発明の技術的思想に包含される。
【0067】
【発明の効果】
本発明の樹脂積層体又は該樹脂積層体からなる医療用チューブ、医療用容器は、落下衝撃強度、低温破袋性、透明性、柔軟性に優れ、更に耐熱性、耐寒性及び防汚染性など医療用として望まれる全ての品質性能を備えた医療用容器として提供できる。更に、本発明の樹脂積層体は、輸液用医療部材として使用することを意識して、滅菌処理を必要とすることから耐熱性を保持しつつ、落袋強度と柔軟性、耐熱性、耐寒性とを増強する特性を与えたので、滅菌処理も可能になり、透明性も失われない。高温滅菌後の失透性が極めて少ないのでレトルト後の透明性を必要とする各種分野で幅広い利用が期待できる。

Claims (4)

  1. 少なくとも内層、中間層及び外層の3層よりなる樹脂積層体において、中間層を構成する樹脂(A)がプロピレン及び/又はブテン−1成分を50重量%以上含有する非晶性ポリオレフィンを20重量%以上100重量%未満含有する低結晶性ポリオレフィン、結晶性ポリプロピレン及びスチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物からなり、外層及び内層を構成する樹脂(B)がポリプロピレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする樹脂積層体。
  2. 上記中間層を構成する樹脂(A)が、上記低結晶性ポリオレフィンを5重量%以上80重量%以下、スチレン・ジエン系ランダム共重合体の水素添加物を15重量%以上90重量%以下、結晶性ポリプロピレンを5重量%以上80重量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂積層体。
  3. 上記内層及び外層を構成する樹脂(B)は、スチレン系熱可塑性エラストマーを30重量%以下、ポリプロピレンを70重量%以上100重量%未満含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂積層体。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂積層体からなる、医療用チューブ又は医療用容器
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