JP4084926B2 - 電気化学電池用の破壊制御機構 - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、電気化学電池の構造に関する。特に、本発明は、電気化学電池であって、該電池が内的または外的に酷使された場合に内部短絡を生成する破壊機構を含むものに関する。本発明は、特に、らせん状に巻かれた電極のタイプの構造を有するLi−イオン電気化学電池の構造に適用可能なものである。
【0002】
(背景技術)
高エネルギーのLi−イオンバッテリは、その再充電特性により、近年大いに注目を集めている。このバッテリに関する市場は、再充電可能なバッテリパックを使用する携帯電話、ポータブルコンピュータ、及びカムコーダの売上の増加を通じて、拡大してきている。これらのデバイスに使用されるバッテリパックは、通常、プラスチックのハウジング、複数の相互に接続された電気化学電池、及びプラスチックのハウジングの中に取り付けられた放電制御回路を含む。
Li−イオン電池は、通常、導電性の材料からなり、開いた末端及び閉じた末端を有する、円筒形の電池のハウジングを含む。らせん状に巻かれた電極アッセンブリ(あるいは、「ゼリーロール」アッセンブリ)は、負極、セパレータ及び正極からなる交互の層を、心棒の周りに巻きつけることにより形成されるものであり、円筒形の電池のハウジングの開いた末端へ挿入される。次に、電解質が電池のハウジングの中に充填され、次いで、電池のハウジングの開いた末端にカバーアッセンブリを取り付けることによって、電池のハウジングがシールされ、カバーアッセンブリが一方の電極(通常は正の電極)に電気的に接続される。カバーアッセンブリは、シールと、このシールによって円筒形の電池のハウジングの壁から電気的に絶縁される導電性のカバーとを含む。
【0003】
これらのLi−イオン電池が充電され得る高い電圧により、らせん状に巻かれた電極アッセンブリの内部で生成される短絡はどのようなものであっても、比較的大きなレベルの電流が電池の内部で正の電極と負の電極との間を流れる原因となる。この電流は、大量の熱を発生させ、この熱は、電池の温度を化学反応が起こり得る臨界温度を超える温度とし、これにより過剰な温度上昇、過剰な内部圧力の上昇、穴あき、大量の煙の発生、クリンプの緩み及び/または電池の分解につながる原因となる可能性がある。
内部短絡の結果生ずる潜在的に有害な反応のため、安全性は、Li−イオンバッテリの設計及び製造における主たる関心事である。Li−イオン電池の安全性を評価するため、圧潰試験、ネイル試験、過充電試験、及び熱的酷使試験を含む、規格化された試験法が開発されている。これら各試験の間に発火または爆発が生じた場合には、欠陥が発生したと認められる。
圧潰試験の間に発生し得るLi−イオン電池の無制御反応を軽減するため、様々な異なるアプローチが開発されてきた。このようなアプローチには、カソード及びアノードに過剰のバインダー材料(絶縁体)をドープすること、及び、サーモ−フォーメーション等の電気化学的な不動態化手法により不動態化することが含まれる。しかしながら、これらのアプローチは、一般に、容量、フェードレート、定格可能出力、及びサイクル寿命などの領域における電池の性能の劣化という結果をもたらす。
【0004】
特開平10−116633号公報には、らせん状に巻かれたLi−イオン電池であって、バインダー中に分散された導電性パウダーの層がセパレータと電極シートの一方または両方との間に設けられているものの構造が開示されている。導電性パウダーは、外的な力の下で電池が変形した場合に、セパレータに侵入して、電極シートの間に短絡を生成することが意図されているものである。あるいは、導電性パウダー/バインダー層に代えて、電極シートの一方または両方にすじをつけることにより、あるいは電極シートの表面に金属パウダーをコーティングすることにより形成された凹凸を付与する方法がある。しかしながら、電極シートの表面に、導電性パウダー/バインダー層、すじ、あるいは金属粉末のコーティングを適用すると、追加の、かつ困難なコーティング工程を、電池の製造プロセスに導入することになる。さらに、使用する金属粉末の寸法が小さいことから、内部応力を発生させる誤用の条件下で有効な短絡を生成するには、極めて大きな力を必要とする機構となる可能性がある。
したがって、公知の電池に関連する上記問題点のうちのいくつかを回避する電池構造を提供し得ることが望ましいと考えられる。さらに、電池のパフォーマンス特性について悪影響を及ぼすことなく上記安全性試験をパスする、改良された電池構造を提供し得ることが望ましいと考えられる。
【0005】
(発明の開示)
したがって、第1の観点において、本発明は、電気化学電池であって、
電池のハウジング、
第1の電極、セパレータ、及び第1の電極の極性とは反対の極性を有する第2の電極からなる交互の層を含む、表面積の大きな電極アッセンブリ、及び、
過剰な力が印加された場合に第1の電極と第2の電極との間に内部短絡を生成する破壊機構であって、第1の電極から第2の電極に向かって突き出しており、過剰な力が印加された場合にセパレータを貫通して第2の電極との電気的接触を形成する1つ以上のばりを含む、前記破壊機構、
を備えている、前記電気化学電池を提供する。
【0006】
有利なことに、本発明による電池構造は、電池が破壊される様式を制御する破壊制御機構であって、この機構がなければ電池を破壊してしまうような条件に電池が曝された場合に、発火や爆発の可能性を回避するものを導入している。さらに、この破壊制御機構は、電池のパフォーマンス性能に悪影響を及ぼさず、なお破壊的な力や環境に曝された電池の破壊をより安全に制御するのである。本発明による電池構造の他の利点は、この破壊機構が、製造プロセスにおいて追加のコーティング工程を必要とせず、既存の装置の簡単な改良によって電池に容易に導入し得ることにある。さらに他の利点は、この破壊機構が、電池に印加された内部の力または外部の力、あるいはこれらの両方に対応して、短絡を提供し得ることにある。
【0007】
本発明にしたがって構成された電気化学電池は、電池のハウジング、及び、正電極、セパレータ、及び負電極からなる、交互に積層され、あるいは巻かれた層を含む、表面積の大きな電極アッセンブリを備えている。この電気化学電池は、さらに、破壊機構であって、好ましくは電池のハウジングの内部表面の近傍に設けられており、この破壊機構に過剰な力が印加された場合に、セパレータの一部(好ましくは電極アッセンブリの正電極の最外層と負電極の最外層との間)に穴を開けて内部短絡を生成するものを備えている。
この破壊機構を電池のハウジング内の適切な位置に配置することにより、電池のハウジングの外部表面に過剰な力が印加された場合に、電池内部の他のいかなる内部短絡生成よりも先に内部短絡を生成させることができる。好ましくは、この位置は、内部で発生した熱を電池の外部により効果的に放散させるように、電池のハウジングに接近した領域である。最初の内部短絡生成が所望の位置で生成され得る可能性をさらに向上させるため、らせん状に巻かれた電極アッセンブリの中央開口部に、芯ピンを挿入してもよい。
【0008】
この破壊機構は、好ましくは2つの電極の最外部に形成された、1つ以上のばりであって、一方の電極から他方の電極に向かって突き出しており、このばりに過剰な力が印加された場合に、これらの電極の間に設けられているセパレータ層を貫通して内部短絡を生成するものを含む。このばりは、導電性のホイル、ストリップまたはシートから形成され、例えば、導電性金属ストリップであって、活性電極材料が塗布されているもの、好ましくはその露出領域、あるいは、そのようにコーティングされたストリップと電気的に接触している導電性タブなどから形成される。このばりは、導電性材料のストリップまたはタブから、例えば該ストリップまたはタブを通してパンチすることにより、あるいは、導電性タブの場合、このタブをストリップに取り付けることにより、形成することができる。導電性のストリップまたはタブからの突出部であって、過剰な力の下で対向する電極に接触して短絡を生成するのに十分に鋭いかあるいは突出しているものを形成するため、任意の好適な手段を使用することができると考えられる。かくして、このばりは、電極の導電性のストリップまたはタブの一体部分を形成する。所望により、電極の一方または両方にこのばりを形成することができる。
【0009】
好ましくは、このばりは、最外電極(好ましくは負電極)の一部を形成する導電性ホイルのストリップの露出した部分に、導電性タブを取り付けることによって形成される。このばりがセパレータに侵入した際に最初の内部短絡が発生する可能性をさらに向上させるため、ばりの下にある電極(好ましくは正電極)の部分を露出した導電性のホイルで形成して、ばりがセパレータに侵入した際にさらに良好な電気的結合が得られるようにしてもよい。さらに重要なことに、正電極及び負電極の不活性で露出した導電性ホイルが電気的に結合することにより、最初の内部短絡を生成させて、電池の破壊を制御することによって、抵抗が最も低く、かつ、一緒に反応し得る活物質が存在しない領域で、ショートが起こることとなり、その結果、発生する熱が最小となるのである。
【0010】
(発明を実施するための最良の形態)
図面を参照して、本発明についてさらに説明する。
図1は、本発明による電気化学電池5を示す。電池5は、閉じた末端12及び開いた末端14を有する電池のハウジング10を含む。電池のハウジング10は、円筒形または角柱状の形状を有していてよく、堅い電気伝導性の材料で形成されている。電池のハウジング10は、さらに、ビード16を含んでいてよい。ビード16は、カン10の開いた末端14付近のカン10の周縁の周りに形成されたくぼみである。ビード16は、電池のハウジング10の開いた末端に配置されるカバーアッセンブリ20に機械的な支持を与えるために設けられる。カバーアッセンブリ20は、電池をシールし、電池のハウジング10の壁から電気的に絶縁された電気的接点を提供するために設けられる。このようにして、ハウジング10の閉じた末端12と、カバーアッセンブリ20のカバー18によって規定される接触端子は、反対の極性の接触端子として機能することができる。カバーアッセンブリ20は、このタイプの電気化学電池についての任意の従来手法により形成することができる。
【0011】
図に示されている通り、電気化学電池5はさらに、らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30を含む。らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30は、負電極、第1のセパレータ、正電極、及び第2のセパレータの交互の層からなる。このような層は、好適な材料のストリップを芯の周囲に巻くことによって形成することができる。らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30は、任意の従来のプロセスを用いたらせん状の様式で巻かれていてよい。らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30を一旦巻いた後、これを電池のハウジング10に挿入する。次に、芯ピン40を、必要によりらせん状に巻かれた電極アッセンブリ30の中心に挿入し、次いで、電解質溶液を、電池のハウジング10の開いた末端14に供給する。次に、カバーアッセンブリ20を、開いた末端14に配置し、カバーアッセンブリ20の縁の上に電池のハウジング10の末端をかしめることにより、その位置に固定する。カバーアッセンブリ20は、導電性タブ66を利用して、正電極に電気的に接続される。
図には、らせん状に巻かれた電極構造が電極アッセンブリとして示されているが、他の任意の表面積の大きな構造により本発明を実施することができると考えられる。例えば、電極構造は、積層された、あるいは、折りたたまれた、交互の電極の層で形成されていてもよい。さらに、本発明の本質にしたがって構成された電気化学電池は、一次電池であっても二次(再充電可能な)電池であってもよいと考えられる。
【0012】
本発明による電気化学電池の構造について一般的に記載したが、好ましいらせん状に巻かれた電極アッセンブリ30について、図2及び3を参照して、以下にさらに詳細に記載する。らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30は、好ましくは、4つの細長い材料のストリップを、芯の周囲に、らせん状の様式で巻くことによって形成される。4つの材料のストリップは、負電極50、正電極60、並びに第1及び第2のセパレータ層70及び72を含む。セパレータ層70及び72は、負電極50と正電極60との間に配置され、その間のいかなる物理的接触をも防止する。セパレータ層70及び72は、負電極50及び正電極60よりも大きな幅を有することにより、電池のハウジング10の内壁、あるいはカバーアッセンブリ20の任意の部分への、電極のいかなる物理的接触をも防止するのが好ましい。
適切な電極を、カバーアッセンブリ20または電池のハウジング10のいずれかへ、電気的に接続することを可能にするため、導電性タブ56及び66を、各々負電極50及び正電極60に取り付けて、らせん状に巻かれた電極アッセンブリ30の反対の末端から外向きに延ばす。好ましくは、正の導電性タブ66が、カバーアッセンブリ20の電気的接触端子に結合されるのに対し、負の導電性タブ56は、電池のハウジング10の閉じた末端12に物理的かつ電気的に接触する。
【0013】
負電極50は、好ましくは、導電性のホイルのストリップの両面に、リチウムを挿入することのできる炭素などの活性負電極物質並びにバインダーを含む混合物を塗布することによって形成される。また、導電剤を添加してもよい。好ましくは、負電極50を形成する導電性のホイルに対し、その長さに沿って、負電極50の後縁(すなわち、巻取りの間芯に供給される末端と反対の末端)の不活性領域54を除く両面に、この混合物を塗布する。この負電極50の不活性露出領域54に、負の導電性タブ56が取り付けられる。導電性タブ56は、好ましくは、溶接によって、露出したホイルに取り付けられる。以下にさらに詳細に説明する理由から、次に、導電性タブ56及び露出した不活性領域54に対して、導電性タブ56及びホイル54の両方を通して穴をあけ、ホイル54の表面から外向きに突き出している複数のばり58を形成するための、取り付けプロセスを施す。
負電極50と同様に、リチオ化金属酸化物(例えば、LiCoO2、LiMn24、またはLiNiO2)などの活物質62を含む混合物を、導電性のホイルのストリップの両面に、その長さに沿って、導電性タブ66を取り付ける領域を除いて塗布することにより、正電極60を形成する。この場合、導電性タブ66を取り付ける露出した導電性のホイルは、正電極60の前縁にある。好ましくは、導電性タブ66を正電極60の露出した前縁に溶接し、導電性タブ56を負電極50に取り付けた場合のような取り付けは行わない。
【0014】
図2及び3に示されている最も好ましい形態では、正電極60はさらに、その後縁に設けられた第2の露出した不活性領域64を含む。正電極60の後縁に露出した領域64を設けることにより、ばり58の最近接に配置される正電極60の部分は、不活性であって、その結果、ばり58がセパレータ層72に侵入して、露出した領域64と接触して内部短絡を生成した場合に、最も低い抵抗値を示す領域となる。本発明による効果の中には、露出した領域64を設けず、ばり58がセパレータ層72に侵入した際に正電極60の活性部分に接触するように(図4中に第2の形態として示されているように)しても達成し得るものもあるが、ばり58が正電極60の活性部分に接触することにより得られる抵抗は、ばり58が導電性のホイルに直接接触する場合よりもはるかに大きい。さらに、露出した領域64を設けることにより、ばり58が接触することになる電極60の領域には、反応し得るいかなる電気化学的な活物質も存在しないことになる。このように、抵抗が低いこと並びに接触領域に活物質が存在しないことから、図2及び3に示されている第1の形態は、図4に示されている第2の形態において短絡に起因する接触により発生する熱ほどの熱を発生するものではない。
【0015】
ただし、第2の形態におけるばり58の正電極60の活性部分との接触によって示される抵抗は、第1の形態の場合よりも高いものの、その抵抗は、セパレータ70及び72が剥離して、正電極と負電極の両方の活性部分が直接接触することになった場合の抵抗より、なおはるかに低いということに注意すべきである。したがって、第2の形態にしたがって構成された電気化学電池は、従来の構造に比べて、内部短絡によって無制御反応がもたらされる可能性が低いのである。
【0016】
ばり58は、図2〜4に示されているもののように、不可避な電池の破壊を制御する手段として機能するように設けられる。このようなばりは、好ましくは、該ばりに圧力が印加された場合に、セパレータ材料の層の少なくとも1つに侵入して、内部短絡を生成するように配向される。図3及び4に示されているように、このような圧力は、電池のハウジングの外部からの力の印加により印加される場合もあり、あるいは、内部応力の印加により印加される場合もある。ばり58をセパレータ層に貫通させるのに必要な力が、電池内の任意の他の場所で内部短絡を発生させる力よりも小さいことを条件として、ばり58は電池の内部で最初の内部短絡をもたらすことになる。かくして、このような破壊制御機構を、最初の短絡を生じさせるのに最も望ましい電池内部の場所に形成することにより、電池内部の他の場所で発生する短絡の悪影響を著しく低減させることができる。
ばり58を、らせん状に巻かれた電極中の正電極の最外層と負電極の最外層との間で内部短絡を生成する場所に設けることにより、そのような短絡が生じた場合に発生する熱をさらに迅速に放散させるためのヒートシンクとして、電池のハウジング10を使用することができる。そのような内部短絡によって発生し得る熱の量は、液体電解質を自発的に燃焼させるのに十分なものであるため、内部で発生した熱をできる限り迅速に電池の内部から放散させて、電池が爆発あるいは燃焼して発火するのを防止することは重要である。
【0017】
また、ばり58を、活物質が塗布されていない一方の電極の部分の上に配置するのが望ましい。ばり58を電極50のそのような不活性領域54の上に形成することにより、得られる短絡の場所で示される抵抗は、負電極及び正電極の活性領域52及び56が接触することになった場合の抵抗より、はるかに低くなる。制御された短絡の場所での抵抗が低いことが望ましい理由は、それによって、内部電流が最小抵抗の経路を通って流れるようになるため、発生し得る他の任意の内部短絡の場所で放出されるエネルギーが低下することにある。
【0018】
図7及び8に示されているように、2つ(またはそれ以上)のばり58の列を、不活性領域54に形成してもよい。図7に示されている形態では、6個のステッチが2列設けられているのに対し、図8では、12個のステッチが2列設けられている。そのような第2列のばり58は、電極に第2のタブを取り付けることによって形成してよい。そのような第2のタブを、タブ56よりも短い長さを有するものとすることにより、カバーアッセンブリまたは電池のハウジングへの電気コネクタとして機能しないように構成してよい。2列のばり58を形成することにより、ばり58の列を、電極アッセンブリが完全に巻かれた際に相互に90°で配置されるように、十分な距離をおいて相互にオフセットしてもよい。この方法により、特に単一のばりの列が配置されている所から90°の場所に力が印加された場合に、ばりが全ての内部短絡のうち最初のものをもたらす可能性を高めることができる。
【0019】
本発明の破壊制御機構をLi−イオンバッテリにおいて実施することにより得られる効果を立証するため、10個の異なるロットのバッテリを組み立て、次いで組み立てた電池の各々について、規格化された圧潰試験を行うことにより破壊した。圧潰試験の結果を、次の表1に示す。
【0020】
【表1】
圧潰試験での不合格の割合
Figure 0004084926
【0021】
ロット1及び2は、対照ロットとして組み立てた。各対照電池は、490.2mmの長さの正電極及び546.1mmの負電極を有するものとした。正電極(好ましくは、アルミニウムの導電性ホイルストリップを有するもの)は、LiCoO2で被覆した。一方、負電極(好ましくは、銅の導電性ホイルストリップを有するもの)は、中間相の炭素繊維で被覆した。電極及びセパレータを芯の周囲に巻きつけて、らせん状に巻かれた電極アッセンブリを形成し、これを18650(4/3A)サイズの電池のハウジングに挿入した。電解質を添加し、電池をシールして、次いで、4.1Vに充電した。次に、図6に示すように、各電池5を頑丈な金属パッド7の上に置き、電池の電圧が4.1ボルトから0.1ボルト以下まで低下して短絡が検出されるまで、圧潰ロッド9を用いて下向きの力を印加して圧潰した。
圧潰した電池が、大量の煙の発生や、クリンプの緩み、あるいは分解を示した場合には、その電池は圧潰試験で不合格であったと判断した。他の場合には、電池は試験を合格したものとした。対照ロット2は、ロット2の電池がらせん状に巻かれた電極の中心に挿入された芯ピンを有するものである点で、対照ロット1と異なる。対照電池並びに本発明にしたがって組み立てた電池に使用した芯ピンは、ステンレススチールの管であって、直径3.175mm、長さ55.245mm、壁の厚さ0.508mmのものである。
【0022】
ロット3及び4は、各々、幅3.175mmの導電性タブを負電極の後縁に取り付けることにより1列のばりを形成した点で、ロット1及び2と異なる。各タブは、6.35mmの間隔で隔てられた6個のステッチを含む。ロット5及び6は、各々、正電極が520.5mmの全長を有し、正電極の後縁の25〜30mmが活性正電極物質の混合物を塗布されないままとされていた点で、ロット3及び4と異なる。ロット7及び8は、図7及び8に示すように、各々、幅6.350mmの単一の導電性タブを負電極に取り付けることにより2列のばりを設けた点で、ロット3及び4と異なる。ロット9及び10は、ロット7と、10.7mmの間隔で隔てられた2個の導電性タブの各々を負電極に取り付けることにより2列のばりを形成した点で異なり、さらに、正電極の後縁に不活性領域を設けた点で異なる。ロット9及び10は、ロット9が1列あたり6個のステッチを含み、ロット10が1列あたり12個のステッチを含む点で、互いに異なる。
表1から明らかなように、負電極の後縁の近傍にばりを用意することにより、一般に、電池が圧潰試験に合格する可能性が向上する。ロット5に関する結果によって立証されるように、負電極上のばりが接触することとなる不活性領域を正電極の後縁上に設けた場合に、最も著しい改良が得られる。さらに芯ピンを設けると(ロット6)、圧潰試験で不合格だったのは組み立てた電池のうちわずか3.8%であった。また、表1から明らかなように、2列のステッチ及び正電極の後縁上の不活性領域を設けることにより、不合格の試験電池はなくなった。したがって、このような構造については、芯ピンを使用して圧潰試験での性能をさらに改善することは、もはや必要ない。
【0023】
圧潰試験に対する電池の結果を改善することに加え、本発明はまた、そのような電気化学電池が過充電酷使試験及び熱的酷使試験の両方に合格する可能性をも改善する。電気化学電池が充電され、あるいは上昇する周囲温度に曝された場合、電池のハウジングの内部のらせん状に巻かれた電極アッセンブリは膨張する。この膨張によって、内部で力が発生し、これがらせん状に巻かれた電極の最外層を電池のハウジングの内壁に押しつけ、これによって、負電極の後縁上に設けられたばりが隣接するセパレータ層を貫通し、いかなる無制御反応の発生よりも先に短絡を生成することになる。熱的酷使試験及び過充電酷使試験の間の結果の改善を立証するため、上記ロット5と同じ構成を使用して、負対正の容量比が0.8:1よりも大きい、追加の電気化学電池を作製した。
【0024】
これらの電池のいくつかを、1Cの速度(1.35Aの定電流)で150分間過充電した。試験は、21℃で行なった。過充電の間、電極の均一な膨張により生じた力から予定された短絡が生成され、ばりが隣接するセパレータ層を貫通し、これによって、正電極の不活性領域と負電極の不活性領域との間に低抵抗のショートを付与することになる。この試験を受けた電池は、112分以内の充電で130から160℃付近のスキン温度を示した。この時点で、電池は予定された短絡を示し、電池の電圧は約5V以上から1.5Vまで急激に低下した。各電池において圧力が散逸することにより、一時的な圧力の低下や、断続的な電池電圧の回復(約4.5Vまで)、及び最終的な永久短絡が発生したが、発火や分解は発生しなかった。
熱的酷使試験については、本発明にしたがって組み立てた電池のいくつかをオーブン中に置く一方、このオーブンの温度を25分間にわたって150℃まで増進的に上昇させた。その時点で、電池の電圧及び温度は、約3.8V及び125℃であった。150℃で約5分以内に、電池は突然短絡を生じ、電池の電圧はゼロまで降下した。電池について行った分析から、ここでも短絡は、本発明による破壊制御機構によって、負電極の後縁上のばりが隣接するセパレータ層に侵入して、正電極の後縁の不活性領域への短絡を生成することにより、生成されたことが示された。各電池において圧力の散逸が生じたが、ここでも曝露された電池の発火及び分解はなかった。
【0025】
破壊制御機構の存在が電池の性能に悪影響を及ぼさないことを確認するため、各ロットからの電池について通常の性能試験を行なった。これらの試験から、電池のサイクル寿命、フェードレート、あるいは容量のいずれも悪影響を受けないことが示された。
本願明細書に開示されている破壊制御機構は、電極50の不活性部分54への導電性タブ56の取り付けの結果として形成されるばり58を使用して実施されるものであるが、当業者であれば、この破壊制御機構を多数の異なる方法で実施し得ると考えられる。例えば、電極の一方(または両方)の後縁を切断して、その縁に沿って多数のばりを形成させるようにしてもよい。さらに、電池のハウジング10における継ぎ目を、ハウジングの内壁から内方へ突出する鋭利な縁あるいは複数のばりを有するように形成してもよい。さらに他のアプローチとしては、導電性タブ56に1つまたは複数のばりを設けることがあり得る。
【0026】
図9及び10に示すように、本発明による破壊制御機構を、角柱状の構造を有する電池において実施することも可能である。図9に示されている形態では、角柱状の電池100は、らせん状に巻かれた電極アッセンブリ130が内部に設置されているハウジング110を含んでいる。電極アッセンブリ130は、負電極152の先縁に取り付けられてばり158を形成する導電性タブ156を含む。正電極は、その前縁にばり158に対向して形成された不活性領域164を有し、またその後縁に形成された導電性タブ166を有する。この構造により、電極アッセンブリ130に印加された力に起因して、ばり158はセパレータ層(図示せず)に侵入し、不活性領域164と電気的に接触して、短絡を形成することになる。
図10に示されている形態では、角柱状の電池200は、らせん状に巻かれた電極アッセンブリ230が内部に設置されているハウジング210を含んでいる。角柱状の電池100と同様に、角柱状の電池200は、正電極の導電性タブ266及び負電極の導電性タブ256bを含む。角柱状の電池200は、負電極252の後縁に取り付けられている第2のタブ256aにばり258が設けられており、正電極の前縁ではなく後縁が、ばり258に対向する不活性領域264を有している点で、角柱状の電池100と異なる。ばり258をハウジング210の壁のさらに近くに配置することにより、ばりによってもたらされる短絡に起因して生成される熱の全てを、さらに迅速に電池の外部に放散させることになる。あるいは、この不活性領域264を省略して、ばり258がセパレータ層(図示せず)に侵入してハウジング210と電気的に接触し、ハウジング210が正電極と電気的に接触することとなるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にしたがって構成された電気化学電池の断面図である。
【図2】 本発明の第1の形態にしたがって構成された、部分的に組み立てられたらせん状に巻かれた電極アッセンブリの全体図である。
【図3】 本発明の第1の形態にしたがって構成された、らせん状に巻かれた電極アッセンブリの部分断面図である。
【図4】 本発明の第2の形態にしたがって構成された、らせん状に巻かれた電極アッセンブリの部分断面図である。
【図5】 比較例のらせん状に巻かれた電極アッセンブリの部分断面図である。
【図6】 比較例の電池及び本発明にしたがって構成された電池の両方について行われた圧潰試験の方法を示す全体図である。
【図7】 本発明の第3の形態にしたがって構成された、部分的に組み立てられたらせん状に巻かれた電極アッセンブリの全体図である。
【図8】 本発明の第4の形態にしたがって構成された、部分的に組み立てられたらせん状に巻かれた電極アッセンブリの全体図である。
【図9】 本発明の第5の形態にしたがって構成された、角柱状の電気化学電池の断面図である。
【図10】 本発明の第6の形態にしたがって構成された、角柱状の電気化学電池の断面図である。
【符号の説明】
30 らせん状に巻かれた電極アッセンブリ
50 負電極
54 不活性領域
56、66 導電性タブ
58 ばり
60 正電極
62 活物質
70 第1のセパレータ層
72 第2のセパレータ層

Claims (17)

  1. 電気化学電池であって、
    電池のハウジング、
    第1の電極、セパレータ、及び第1の電極の極性とは反対の極性を有する第2の電極からなる交互の層を含む、表面積の大きな電極アッセンブリ、及び、
    過剰な力が印加された場合に第1の電極と第2の電極との間に内部短絡を生成する破壊機構であって、第1の電極から第2の電極に向かって突き出しており、過剰な力が印加された場合にセパレータを貫通して第2の電極との電気的接触を形成する1つ以上のばりを含む、前記破壊機構、
    を備えている、前記電気化学電池。
  2. 前記破壊機構が、電池のハウジングの内部表面の近傍に設けられており、第1の電極の最外層と第2の電極の最外層との間に内部短絡を生成する、請求項1に記載の電気化学電池。
  3. 前記ばりが第1の電極の末端の近傍にある、請求項1または2に記載の電気化学電池。
  4. 前記破壊機構が、電池のハウジングの外部表面に過剰な力が印加された場合に、電池内部の他のいかなる内部短絡生成よりも先に内部短絡を生成するように配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  5. 前記ばりが、導電性タブを第1の電極の末端に取り付けることによって形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  6. 前記第1の電極が、露出部分を除いて活物質を塗布した導電性のストリップを含み、前記タブが該露出部分に取り付けられて前記ばりを形成している、請求項5に記載の電気化学電池。
  7. 前記取り付けられた導電性タブが、第1の電極の最外層と第2の電極の最外層との間に配置されている、請求項5または6に記載の電気化学電池。
  8. 前記ばりが内側を向いている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  9. 前記破壊機構が、電池のハウジングの外部表面に印加される圧潰力に対して感受性であり、電池のハウジングの内部表面に近接する電極の最外層の間で発生する全ての短絡のうち最初のものを引き起こす、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学電池であって、第1の電極及び第2の電極が、各々延長された活物質を塗布した導電性のストリップを含み、第1の電極及び第2の電極がともに、導電性タブを取り付ける、活物質で被覆されていない第1の露出した末端を有し、第2の電極が、第1の露出した末端に対向している第2の電極の末端に近接する第2の露出した部分を有し、第2の電極の第2の露出した部分が、第1の電極の第1の露出した末端の下にある領域にあり、第1の電極が、第2の電極の第2の露出した部分に向かって突き出していて、十分な力が印加された場合にセパレータを貫通して第2の電極の第2の露出した部分との電気的接触を形成するばりを有する、前記電気化学電池。
  11. 前記第1の電極上のばり、及び前記第2の電極の第2の露出した部分が、電極アッセンブリの最外層に配置されている、請求項10に記載の電気化学電池。
  12. 前記電極アッセンブリが、第1の電極、セパレータ、及び第2の電極からなる巻かれた交互の層を含む、らせん状に巻かれた電極アッセンブリである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  13. さらに、前記らせん状に巻かれた電極アッセンブリの芯の中に挿入された芯ピンを含む、請求項12に記載の電気化学電池。
  14. 前記電池のハウジング及び前記電極アッセンブリが、円筒形または角柱状である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  15. 前記電気化学電池が、1次電池あるいは再充電可能な電池である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  16. 前記第1の電極が負電極であり、前記第2の電極が正電極である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の電気化学電池。
  17. 前記正電極がリチオ化金属酸化物を含み、前記負電極がリチウムを挿入することの可能な炭素を含む、請求項16に記載の電気化学電池。
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