JP2004327066A - 二次電池及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Liイオン二次電池1の巻回電極体3は、押圧されて断面が略楕円をなすように偏平にされている。巻回電極体3は、短径側部分21が押圧された分、長径側部分22における各素材(正極シート、負極シート及びセパレータ)の結合度がルーズとなるので、長径側部分22には、隙間23が形成される。過充電等により巻回電極体3の内側で発生したガスは、隙間23を通って、巻回電極体3の外部に案内され、巻回電極体3内にガスが滞留することがない。このため、電池ケース2内で発生したガスが安全弁に適切に作用し、当該ガス圧(電池ケース2の内圧)が所定の圧力以上になると、安全弁が開くので、発生ガスを電池ケース2外に良好に放出し、安全性を向上できる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車及び情報関連機器などに用いられるLiイオン二次電池、Ni−MH電池などの二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
Liイオン二次電池等の二次電池は、情報関連機器、通信機器の分野、または自動車用バッテリなど種々の分野で用いられている。
このような二次電池の一例として、セパレータを介して重畳される正極シート及び負極シートを前記セパレータと共に渦巻き状に巻回して構成される巻回電極体と、該巻回電極体を収納する電池ケースとからなる円筒型の二次電池がある。
ところで、上記二次電池では、過充電等による電池の異常時に、巻回電極体(正極シート、負極シート及びセパレータ)が高温となり、電池ケースの内部に充填した電解液からガスが発生し電池ケースの破裂を招くことがある。
【0003】
上記問題に対処するようにした二次電池の一例として特許文献1に示される二次電池がある。この二次電池では、巻回電極体の中空部に直列接続された2個の温度ヒューズとツェナーダイオードを挿入し、過大な充電電流が流れた場合あるいは内部短絡により過大な電流が流れた場合、温度ヒューズが作用して過大電流の通電を抑えるようにしている。
【0004】
しかしながら、通電遮断を行っても一時的に安全は確保されるものの、過充電された電力は放電(電位ゼロもしくは蓄積エネルギゼロ)することができない。
このため、二次電池の過充電状態は維持されており、外部入力(落下・衝撃など)による巻回電極体の変形などに伴って起こり得る短絡時に瞬間的な大電流が流れ、場合によっては、熱暴走などに陥り、重大災害に至る虞がある。
【0005】
また、従来の二次電池の一例として、電池ケース内で発生したガスにより電池ケースの内部圧力が所定以上に上昇すると、電池ケースに付設した安全弁が開口してガスを外部に放出することにより、電池ケースの破裂事故を防ぐようにする二次電池もある。
しかし、前記安全弁は、電池ケース内で発生したガスが巻回電極体と電池ケースとのあいだの空間(実際は電解液が存在する。以下、安全弁作用空間という。
)に充満して圧力が上昇した際に機能する。しかしながら、巻回電極体は、各素材(正極シート、負極シート及びセパレータ)が堅固に巻回して構成されることから、巻回電極体内にガスが滞留しやすく、安全弁が有効に機能しないこともあり得る。
【0006】
また、一部のガスが巻回電極体内に滞留した状態で安全弁が開弁し、短絡事故が発生した場合、短絡によるジュール熱で滞留ガスが膨張し、電池ケースに大きな衝撃を与えつつ、そのガスが安全弁から瞬間的に吐出されることがある。そして、場合によっては膨張したガスの圧力により電池ケースが破裂することが起こり得る。
【0007】
上述した問題点の改善を図るようにした二次電池の一例として、特許文献2に示すリチウム二次電池がある。この特許文献2のリチウム二次電池は、正極シート及び負極シートの少なくとも一方に、発生するガスの巻回電極体からの放出を容易にするために、小孔、スリットまたは溝を形成している。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−325943号公報〔段落「0012」、「0013」、「0018」、「0019」、図1、図2〕
【特許文献2】
特開2001−6749号公報〔段落「0026」、「0033」、「0038」、図1、図2〕
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献2の従来技術では、正極シート及び負極シートの少なくとも一方に形成される小孔、スリットまたは溝により応力集中を招かないように、また小孔、スリットまたは溝形成に伴いバリが発生して電極シート(正極シート又は負極シート)の機能低下を招かないように、設計及び作業に十分に注意を払うことが必要とされ、不便である。例えば、小孔形成のために、ドリルによる穴あけ、プレスによる打ち抜き等が行われるが、この作業により、電極シートの機能低下を招くバリ等が発生しやすいので、バリ等が発生しないように作業に十分に注意を払う必要がある。また、小孔の大きさによっては応力集中を招くので、このような事態になることを回避するために、設計段階で大きさなどを十分検討しておく必要がある。
【0010】
また、近時、使用対象機器によっては、所望の電圧、電流を確保する等のために、複数個(複数セル)の二次電池を前記対象機器に設けることがある。この場合、良好な放熱効果を維持して設置スペースの拡大を抑制できる等の利点があることから、円筒型に構成した二次電池(いわゆる円筒型二次電池)が用いられることが多い。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ガスの放出を適切に行え、かつ複数セルの使用を、設置スペースの拡大抑制及び良好な放熱効果を確保して果たすことができる二次電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載に係る二次電池の発明は、正極シート及び負極シートの間にセパレータが介在するようにこれらを渦巻き状に巻回して構成される巻回電極体と、該巻回電極体を収納し、かつ内部で発生したガスを放出する安全弁が設けられた円筒型の電池ケースとを有し、前記巻回電極体は、押圧されて断面が略楕円をなすように偏平にされていることを特徴とする。
請求項2記載に係る二次電池の作製方法の発明は、正極シート及び負極シートの間にセパレータが介在するようにこれらを渦巻き状に巻回して構成される巻回電極体と、該巻回電極体を収納し、かつ内部で発生したガスを放出する安全弁が設けられた円筒型の電池ケースとを有する二次電池の作製方法であって、渦巻き状に巻回された巻回電極体を、押圧し、断面が略楕円をなすように偏平にし、偏平にされた巻回電極体を円筒型の電池ケースに収納することを特徴とする。
請求項1又は2記載に係る発明によれば、巻回電極体は、押圧されて断面が略楕円をなすように偏平にされており、巻回電極体は、短径側部分が押圧された分、長径側部分における各素材(正極シート、負極シート及びセパレータ)の結合度がルーズとなるので、巻回電極体の長径側部分には、隙間が形成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施の形態のLiイオン二次電池1(二次電池)を図1〜図6に基づいて説明する。
このLiイオン二次電池1は、図1〜図3に示すように、円筒型の電池ケース2と、電池ケース2内に収納される巻回電極体3と、電池ケース2の内部に充填された電解液4と、電池ケース2に設けられた安全弁5と、から大略構成されている。巻回電極体3は、正極シート6及び負極シート7の間にセパレータ8(この場合、2枚)が介在するようにこれらを渦巻き状に巻回して構成されている。巻回電極体3は、後述するように、当初は断面略円形状に形成され、その後、平板プレスの押圧により扁平した形状になり断面が略楕円形状になっている。本実施の形態では、セパレータは、2枚が用いられており、以下、適宜、第1、第2セパレータ8a,8bという。
【0014】
電池ケース2は、有底筒状のケース本体10と、ケース本体10の開口部11を閉塞する円板状の蓋体12と、からなり、直径が18mmで高さが65mmとされている。
ケース本体10の底部13には、負極シート7に接続された負極リード端子15が抵抗溶接されている。巻回電極体3の中央には孔16が形成されており、この孔16に負極リード端子15が通され、その端部がケース本体10の底部13に上述したように抵抗溶接されている。ケース本体10は、負極リード端子15に接続されており、全体が負極とされている。
【0015】
前記底部13には、安全弁5が設けられている。安全弁5は、Y字状に施された刻印から構成され、底部13の他の部分に比して薄い厚さとされている。安全弁5は、ガスの発生などに伴い電池ケース2の内圧が所定圧以上になると切れて(開いて)前記ガスを電池ケース2外に放出するようにしている。
【0016】
蓋体12の中央部には、周囲に比して外方に突出するへそ部17が形成されている。当該へそ部17には正極シート6に接続された正極リード端子18が抵抗溶接により接続されている。蓋体12は、樹脂製の絶縁部材19を介してケース本体10の開口部11に、プレスによるかしめにより結合されている。正極リード端子18に接続される蓋体12とケース本体10とは、間に前記絶縁部材19が介在されることにより、絶縁されている。
【0017】
巻回電極体3は、正極シート6、負極シート7及び第1、第2セパレータ8a,8bを渦巻き状に巻回して作製され、当初は直径が約16mmの略円筒状をなしている。巻回電極体3は、この後、平板プレスにより押圧されて、長径が16mm、短径が13mmで、高さが52mmとされ、偏平した形状(断面が略楕円形状)になっている。巻回電極体3の中央の孔20は、長径が4mm、短径が1mmとされている。そして、巻回電極体3は、上述したように偏平した形状にされた状態で電池ケース2に収納されている。
【0018】
上述したように構成したLiイオン二次電池1では、当初略円筒状である巻回電極体3を押圧し、偏平させて断面略楕円形状に構成している。そして、巻回電極体3は、短径側部分21が押圧された分、長径側部分22における各素材(正極シート6、負極シート7及びセパレータ8a,8b)の結合度がルーズとなるので、巻回電極体3の長径側部分22には、隙間23が形成される。
【0019】
上述したように巻回電極体3の長径側部分22に隙間23が形成されることから、過充電等による電池の異常時に、電解液4からガスが発生した場合、巻回電極体3の内側で発生したガスは、前記隙間23を通って、巻回電極体3と電池ケース2とのあいだの空間(実際は電解液が存在する。以下、安全弁作用空間という。)25に案内される。このため、巻回電極体3内にガスが滞留することがなくなり、電池ケース2に発生したガスが安全弁5に適切に作用し、当該ガス圧(電池ケース2の内圧)が所定の圧力以上になると、安全弁5が開く。このため、発生ガスを電池ケース2外に良好に放出し、電池ケース2の破裂事故を防ぐことができる。
【0020】
また、巻回電極体3内にガスが滞留しなくなることから、ガス滞留状態での短絡事故、ひいては短絡に伴うジュール熱によるガス膨張を回避することができ、短絡に伴う電池ケース2の破裂事故の発生を抑制できる。
さらに、ガスの放出案内を、巻回電極体3を押圧して偏平にすることにより形成される隙間23により行う。このため、正極シート6又は負極シート7に小孔、スリットまたは溝を形成する従来技術(特許文献2)が惹起する応力集中及びバリ発生に伴う機能低下を招くことがなく、その分、ガスの放出を適切に行えることになる。
【0021】
さらに、本実施の形態では、巻回電極体3を円筒型の電池ケース2に収納し、全体形状が略筒状をなしている。このため、所望の電圧、電流を確保する等のために複数個(複数セル)を用いる場合にも、大きなスペースを用意することなく良好な放熱効果を発揮でき、いわゆる円筒型二次電池が有する効果(良好な放熱効果を維持して設置スペースの拡大を抑制できる)を確保することができる。
【0022】
【実施例】
上記実施の形態に基づいて、偏平にされた巻回電極体3を有するLiイオン二次電池1(実施例)を作製し、過充電試験及び圧壊試験を行った。また、この実施例のLiイオン二次電池1の試験結果と比較するため偏平にされていない略円筒状の巻回電極体を有するLiイオン二次電池(比較例)を作製し、過充電試験及び圧壊試験を行った。以下、当該実施例のLiイオン二次電池1の作製方法及び前記試験結果を説明する。
【0023】
偏平にされた巻回電極体3を有するLiイオン二次電池1(実施例)の作製方法を図4〜図6に基づいて以下に説明する。まず、図4に示す正極シート6及び負極シート7が次のように作製される。
【0024】
正極シート6は次のように作製される。
まず、図4及び図5に示すように、厚さ15μmのAl(アルミニウム)集電箔30の両面に、ニッケル酸リチウム:カーボンブラック:PVDF=85:10:5(wt%)の割合で含まれたニッケル酸リチウム、カーボンブラック及びPVDF等を含む正極部材31を、30μmの厚さで塗布する(ステップS11)。
Al集電箔30に正極部材31を塗布した後、Al集電箔30における未塗布部を裁断し、正極部材31が塗布された部分について、幅47mm×長さ550mmにカットする(ステップS12)。
ステップS12で得られた幅47mm×長さ550mmの部材(Al集電箔30及び正極部材31)の端部に、厚さt=20μm、幅5mm×長さ60mmのAl製の正極リード端子18を超音波溶接により接合し、これにより正極リード端子18を有する正極シート6が作製される(ステップS3)。
【0025】
負極シート7は次のように作製される。
まず、厚さ20μmのCu(銅)集電箔32の両面に、グラファイト:PVDF=92.5:7.5(wt%)の割合で含まれたグラファイト及びPVDF等を含む負極部材33を、40μmの厚さで塗布する(ステップS21)。
Cu集電箔32に負極部材33を塗布した後、Cu集電箔32における未塗布部を裁断し、負極部材33が塗布された部分について、幅50mm×長さ600mmにカットする(ステップS22)。
ステップS22で得られた幅50mm×長さ600mmの部材(Cu集電箔30、グラファイト及びPVDF)の端部に、厚さt=30μm、幅5mm×長さ60mmのCu 製の負極リード端子15を抵抗溶接により接合し、これにより負極リード端子15を有する負極シート7が作製される(ステップS23)。
【0026】
次に、厚さ25μm、幅52mmで、長さが60mm以上の2枚のPE製のセパレータ8(第1、第2セパレータ8a,8b)が用意され、図5に示すように4軸の巻回機35を使用して、正極シート6、負極シート7及び第1、第2セパレータ8a,8bの巻回を行う(ステップS40)。巻回機35の4軸(便宜上、第1、第2、第3、第4軸という。)36a、36b、36c、36dには、それぞれ第1セパレータ8a、負極シート7、第2セパレータ8b及び正極シート6が、当該巻回作業に先だって予め巻回されている。巻回機35には、図5及び図6に示すように、直径3mmの回転駆動される2つの割巻芯37が備えられている。
正極シート6、負極シート7及び第1、第2セパレータ8a,8bの巻回作業では、まず、図6に示すように、第1セパレータ8aの端部及び第2セパレータの端部を2つの割巻芯37に挟み込んで、割巻芯37を3回、時計方向に回転してセパレータを3巻捨巻する(ステップS41)。
【0027】
次に、正極シート6の端部を割巻芯37に挟み込んで、割巻芯37を1回時計方向に回転する(ステップS42)。その後、負極シート7の端部を割巻芯37に挟み込んで、割巻芯37を時計方向に所定回、回転し(ステップS43)、渦巻き状に巻回された略円筒状の巻回電極体3を得る(ステップS44)。この際、負極リード端子15は巻回電極体3の中心部に配置され、正極リード端子18は巻回電極体3の外周部に配置される。
【0028】
ステップS44で得られた略円筒状の巻回電極体3を、平板プレスにより押圧(1274N×1min)し、巻回電極体3を偏平形成する(ステップS45)。ステップS45の偏平形成により、長径16mm、短径13mm、高さ52mmの楕円筒で、中央に長径4mm、短径1mmの楕円の孔20を有する、偏平にされた巻回電極体3(実施例の巻回電極体3)が得られる。
【0029】
ステップS45で得られた偏平にされた巻回電極体3(実施例の巻回電極体3)の正極リード端子18を蓋体12に抵抗溶接し、蓋体12を接合した状態で巻回電極体3を電池ケース2のケース本体10に収納し、負極リード端子15を底部13に抵抗溶接する(ステップS46)。電池ケース2のケース本体10は、Ni鋼鈑深絞り直径18mm、高さ65mm、厚さ0.3mmとされている。次に、電解液4を5ml、ケース本体10内に注入する(ステップS47)。電解液4は、LiPF6を1mol/L溶かしたEC(エチレンカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)〔EC/DEC=3:7〕の混合液とされている。
【0030】
この後、ケース本体10の開口部に絶縁部材19を介して蓋体12を、かしめにより結合し、電池ケース2(ケース本体10)を閉じ、偏平にされた巻回電極体3を有するLiイオン二次電池1(実施例)が得られる(ステップS48)。
【0031】
上述したようにして作製された偏平にされた巻回電極体3を有するLiイオン二次電池1(実施例)及び略円筒状の巻回電極体(前記ステップS44段階の巻回電極体3に相当する)を有するLiイオン二次電池(比較例)を対象にして、過充電試験(言わば連続的に通電されるモードの試験)及び圧壊試験(言わば短絡を起こさせるモードの試験)を行った。
過充電試験は、5C〔C:放電率(1時間で電池の容量を全て放電させる単位)〕、10C定電流充電で、図8の表1に示す試験条件で行った。
【0032】
圧壊試験は、充電状態〔SOC(state of charge)〕で行い、巻回電極体3を折り曲げて巻回電極体3に強制的に短絡を起こさせ、この短絡によるジュール熱に伴うガスの膨張の影響を把握しようとするものである。
この圧壊試験は、図7に示すヘッド40を用いて、図8の表1に示す試験条件で行った。ヘッド40は、図7に示すように、長さm100mm×幅w10mm×高さh25mmの略かまぼこ型をなし、湾曲部分40aの形状は断面視半径R5mmとされている。湾曲部分が電池ケース2に当接するようになっている。この場合、ヘッド40は、電池ケース2に対して直交した状態で電池ケース2の側面部を図7矢印A方向に押付け、巻回電極体3を折り曲げて強制的に短絡を起こさせるようにしている。
【0033】
上述した試験により、図9の表2に示す試験結果が得られた。
この表2に示されるように、略円筒状の巻回電極体を有するLiイオン二次電池(比較例)では、いずれも、開弁(安全弁が開くこと)・破裂(電池ケースが破裂すること)・発火が生じる結果となった。これに対し、偏平にされた巻回電極体3を有するLiイオン二次電池1(実施例)によれば、過充電試験及び圧壊試験のいずれの試験でも、破裂及び発火が起こらず、開弁のみが生じる結果が得られ、仮に短絡しても発生したガスを、適正に放出し、安全性に優れていることを確認することができた。
【0034】
上記実施の形態及び実施例では、二次電池がLiイオン二次電池1である場合を例にしたが、これに代えてNi−MH電池などの他の二次電池に本発明を適用してもよい。
【0035】
また、上記実施の形態及び実施例では説明しなかったが、図10に示すように、巻回電極体3の短径側部分21と電池ケース2との間の2箇所の隙間部42に、それぞれ例えばPP樹脂製のスペーサ43を介在するようにしてもよい。このように構成することにより、巻回電極体3の変位を抑制し、製品の劣化を抑制し寿命の延長を図ることができる。例えば、前記実施例に、厚さt=1mm、幅5mm×長さ60mmのPP樹脂製のスペーサを前記隙間部42に挿入して、2Cサイクル試験(65℃2Cサイクル試験)を実施したところ、良好な特性を得ることができた。この2Cサイクル試験は、スペーサを設ける場合(スペーサ有)と、設けない場合(スペーサ無)とを対象にして、次のように行った。
【0036】
すなわち、2C(≒900mA)〔セル1C容量の2倍〕の電流値で3V⇔4.1Vの充放電を60℃にて500サイクル繰り返し実施する。そして、この500サイクルまでの間の100サイクル及び300サイクルの各充放電が終わった後、及び500サイクルの充放電が終わった後に、25℃に戻して放電容量を測定する。
【0037】
この放電容量の測定は次のように行う。
まず、1C(≒450mA)定電流で4.1Vになるまで充電し、4.1Vになった時点(充電開始から略1時間)から4.1V定電圧で充電し、1C定電流での充電開始から2.5時間が経過するまで充電を行う。この後、10分間(レスト)が経過した後、(1/3)×C定電流で放電を行い、電圧が3Vになった時点で放電をカットする。そして、放電開始からカット時点までの放電容量を測定する。この放電容量を初期の放電容量(450mA=100%)で割って容量維持率を求める。
【0038】
上述した試験を行うことにより、スペーサを設ける場合(スペーサ有)と、設けない場合(スペーサ無)とについて、図11に示す容量維持率特性を得ることができた。この図11から明らかなように、上述したようにスペーサを設けることにより、良好な容量維持率を確保できることを確認することができた。
【0039】
【発明の効果】
請求項1又は2に記載に係る発明によれば、巻回電極体は、押圧されて断面が略楕円をなすように偏平にされており、巻回電極体は、短径側部分が押圧された分、長径側部分における各素材(正極シート、負極シート及びセパレータ)の結合度がルーズとなるので、巻回電極体の長径側部分には、隙間が形成される。そして、過充電等による電池の異常時に、電解液からガスが発生した場合、巻回電極体の内側で発生したガスは、前記隙間を通って、巻回電極体の外部に案内され、巻回電極体内にガスが滞留することがなくなる。このため、電池ケースに発生したガスが安全弁に適切に作用し、当該ガス圧(電池ケースの内圧)が所定の圧力以上になると、安全弁が開くので、発生ガスを電池ケース外に良好に放出し、電池ケースの破裂事故を確実に防ぐことができる。
【0040】
また、巻回電極体内にガスが滞留しなくなることから、ガス滞留状態での短絡事故、ひいては短絡に伴うジュール熱によるガス膨張を回避することができ、短絡に伴う電池ケースの破裂事故の発生を抑制できる。
さらに、ガスの放出案内を、巻回電極体を押圧して偏平にすることにより形成される隙間により行う。このため、正極シート又は負極シートに小孔、スリットまたは溝を形成する従来技術が惹起する応力集中及びバリ発生に伴う機能低下を招くことがなく、その分、ガスの放出を適切に行えることになる。
【0041】
さらに、巻回電極体を円筒型の電池ケースに収納し、全体形状が略筒状をなしている。このため、所望の電圧、電流を確保する等のために複数個(複数セル)を用いる場合にも、大きなスペースを用意することなく良好な放熱効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のLiイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の巻回電極体を示す斜視図である。
【図3】図1の電池ケースへの巻回電極体の収納状態を模式的に示す平面図である。
【図4】図1の巻回電極体に用いる正極シート、負極シート、第1、第2セパレータを示す斜視図である。
【図5】図1の巻回電極体を得るための巻回機及びこの巻回機による巻回を説明するための模式図である。
【図6】図5の割巻芯による巻回作業を説明するための模式図である。
【図7】圧壊試験に用いるヘッドによる試験対象のLiイオン二次電池への押圧状態を示す斜視図である。
【図8】Liイオン二次電池に対する過充電、圧壊試験の試験条件を表形式で示す図である。
【図9】Liイオン二次電池に対する過充電、圧壊試験の試験結果を表形式で示す図である。
【図10】巻回電極体と電池ケースとの間にスペーサを配置した例を模式的に示す平面図である。
【図11】スペーサを設ける場合及び設けない場合における容量維持率特性を対比して示す図である。
【符号の説明】
1 Liイオン二次電池
2 電池ケース
3 巻回電極体
5 安全弁
6 正極シート
7 負極シート
8a,8b 第1、第2セパレータ
Claims (2)
- 正極シート及び負極シートの間にセパレータが介在するようにこれらを渦巻き状に巻回して構成される巻回電極体と、該巻回電極体を収納し、かつ内部で発生したガスを放出する安全弁が設けられた円筒型の電池ケースとを有し、前記巻回電極体は、押圧されて断面が略楕円をなすように偏平にされていることを特徴とする二次電池。
- 正極シート及び負極シートの間にセパレータが介在するようにこれらを渦巻き状に巻回して構成される巻回電極体と、該巻回電極体を収納し、かつ内部で発生したガスを放出する安全弁が設けられた円筒型の電池ケースとを有する二次電池の作製方法であって、渦巻き状に巻回された巻回電極体を、押圧し、断面が略楕円をなすように偏平にし、偏平にされた巻回電極体を円筒型の電池ケースに収納することを特徴とする二次電池の作製方法。
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-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115763A patent/JP2004327066A/ja active Pending
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