JP4098389B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内圧の上昇の際に、破裂板の一部が離脱することによりガスを逃がし破裂を防止することのできる非水電解液二次電池に関するものであり、さらに、その破裂板における離脱部の離脱の際に電流の遮断ができる非水電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化および携帯化が急速に進展している。そして、この種の電子機器において、リチウムイオンを利用した非水電解液二次電池が、エネルギー密度の高い二次電池として注目されている。この非水電解液二次電池は、ノート型パソコン,携帯型電話,ビデオカメラなどの電源として使われており、さらに、電気自動車用電池や電力貯蔵システムへの応用も検討されている。
【0003】
このような非水電解液二次電池として、図2に示したものがある。
この非水電解液二次電池1は、まず、帯状の負極板2と帯状の正極板3の間に薄板状のセパレータ4aを挟み込み、さらに正極板3の開放側面に他のセパレータ4bを密着させる。ついで、これらを渦巻き状に巻回して電極5を形成し、この電極5を円筒状の負極缶6内に装填する。この際、電極5には電解液を含浸させておく。
【0004】
つぎに、円板状の破裂板7と中央部がやや盛り上がった円形のキャップ8を重ね合わせこれらの縁部を挟むようにしてパッキング9をリング状に巻回する。ついで、そのパッキング9の外側を負極缶6の開口縁部6aで圧着して負極缶6を閉塞する。そして、負極板2の外周側下端部と負極缶6の底部をリード線10で接続し、正極板3の上端部と破裂板7をリード線11で接続して構成されている。
【0005】
また、上記のような非水電解液二次電池1は、正極板3がリチウム含有酸化物を含んでおり、負極板2が黒鉛などの炭素質物を含んでいる。そして、電解液はリチウム塩を有機溶媒に溶解したもので構成されている。このリチウムの化学的活性度が高いことと有機溶媒を使用していることから、内部短絡や過充電時に化学反応が生じてエチレンガス,プロピレンガス,炭酸ガス等が発生し内圧が上昇すると非水電解液二次電池1が破裂することがある。
【0006】
このため、このような非水電解液二次電池1には、一般的に安全性の対処がなされている。この場合、破裂板7の中央部に円状の切り欠き溝12が設けられ、キャップ8には所定間隔で複数のガス逃がし穴13が設けられている。これによって、負極缶6の内圧が異常に上昇した際には、切り欠き溝12の中心側の離脱部14が破裂板7の他の部分から離脱してキャップ8の天井側にめくれ、内部のガスを外部に逃がすようになっている。この結果、非水電解液二次電池1の破裂が防止できるというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような非水電解液二次電池1では、破裂板7とキャップ8との間隔がわずかしかないため、離脱部14はキャップ8の天井部に当たってしまい、破裂板7の他の部分から十分に離脱することができない。例えば、内部短絡による反応は瞬時に起こるもので、ガス抜きがその反応に対して効率よくできない場合には、非水電解液二次電池1を破裂させてしまうことがある。このため、離脱部14が充分離脱できず、充分なガス抜きができない場合非水電解液二次電池1が破裂してしまい危険であるという問題がある。
【0008】
また、上記の非水電解液二次電池1では、離脱部14が離脱したのちも、破裂板7とリード線11が接続したままであるため電流が流れ、これが発火の原因になるという問題も生じている。
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、充分なガス抜きにより破裂が防止でき、さらに、破裂板が破裂する際に電流を遮断することにより発火を防止することができる非水電解液二次電池の提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明の請求項1に係る非水電解液二次電池は、有底筒状の負極缶の上面開口を閉塞するキャップとの間に所定の空間部を形成するようにして負極缶内に破裂板が設けられ、負極缶の内圧が上昇すると破裂板の一部が空間部に向かって離脱することによりそれ自身の破裂を防止するようになった非水電解液二次電池であって、破裂板における離脱部分の長さであって特定の2点間の直線距離が、破裂板とキャップの間の長さよりも短く設定され、かつ、破裂板における離脱部分の面積が負極缶の横断面積の5〜30%であるとともに、負極缶に内蔵された電極の正極板の内周側上端部から延設される正極リードが破裂板における離脱部分に接続され、その正極リードが、離脱部分が破裂板から離脱した際に離脱部分から離れてしまう長さに設定されている構成をとる。
【0010】
この発明の発明者は、非水電解液二次電池を破裂に至らせないためには、破裂板の離脱部分の面積を充分広く確保するとともに、離脱部分が完全に開くようにキャップの内高さを高く設定することが破裂防止に有効であることに着目し、この発明に至った。
【0011】
すなわち、この発明では、破裂板とキャップの間の間隔を大きくして、破裂板の離脱部分が離脱する際に反転してもキャップの天井部に当接しないようにしている。これによって、負極缶内のガスをすばやく外部に吐出できるようになる。また、上記離脱部分の面積を缶の横断面積と比較して充分広い値に設定して、ガスを逃がすための破裂板の開口面積を充分に取るようにしている。これによって、負極缶内のガスを充分に吐出でき負極缶の内圧の上昇による非水電解液二次電池の破裂を確実に防止できるようになる。
【0012】
また、負極缶に内蔵される電極の正極板の内周側上端部から延設される正極リードが破裂板における離脱部分に接続され、その正極リードが、離脱部分が破裂板から離脱した際に離脱部分から離れてしまう長さに設定されている。したがって、負極缶の内圧が上昇して、破裂板における離脱部分が離脱して上昇すると正極リードは離脱部分から離れてしまう。この結果、瞬時に電流が遮断され発火が防止されるようになる。
つぎに、この発明による非水電解液二次電池を図面を用いて詳しく説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一例による非水電解液二次電池20を示している。この非水電解液二次電池20では、破裂板21が中央側が下側に向かって湾曲した円板状に形成されている。この破壊板21は、その厚みは電池の大きさにより異なるが、通常は100〜300μmに設定されている。また、その材質としては、導電性のあるものであればよく、通常は正極リードと接合されるため、電気化学的にみた酸化電位の高い金属が用いられる。例えば、アルミニウムやチタン等が好適である。
【0014】
そして、この破壊板21の中央側に円形の切り欠き溝22が形成され、その中心側部分が離脱部23になっている。上記切り欠き溝22の溝部分の厚みは、破裂板21の厚みの40〜70%に設定されている。なお、上記切り欠き溝22の断面形状は三角形,台形,半円形等にすることができ、その全体形状も上記の円形以外の形状でもよく、四角形やその他多角形にすることができる。
【0015】
また、破裂板21の上方に配置され負極缶24の上面開口を閉塞するキャップ25は、中央部25aが縁周部25bから上方に向かって突出して高くなっている。この中央部25aと破裂板21における離脱部23との間の高さ距離は、離脱部23の直径よりもやや大きく設定されている。したがって、離脱部23が破裂板21の他の部分から離脱して反転してもキャップ25の天井面には当接しない。
【0016】
また、負極缶24内で、負極板26とともに巻回されて電極30を構成する正極板27の内周側上端部からは正極リード28が延設されその上端部は離脱部23にスポット溶接により接続されている。この正極リード28は長さに殆ど余裕がないように設定され、離脱部23が破裂板21の他の部分から離脱する際には、離脱部23から離れるようになっている。
【0017】
なお、上記離脱部23の面積は、負極缶24の横断面積の5%〜30%に設定されている。また、キャップ25のガス逃がし穴29は、キャップ25の中央部25aが高く設定されている分やや大きめになっている。
それ以外の部分の構成については、図2に示した従来例の非水電解液二次電池1と同様である。したがって、同一部分に同一符号を記している。
【0018】
このような構成になっているため、非水電解液二次電池20の使用時に、内部短絡や過充電によりガスが発生すると、その内圧により離脱部23は、図1に一点鎖線で示したように破裂板21の他の部分から離脱して捲れ上がった状態になる。したがって、非水電解液二次電池20内のガスは、瞬時に破裂板21の開口からガス逃がし穴29を通って外部へ排除される。これによって、非水電解液二次電池20の破裂が防止される。なお、ここでいう非水電解液二次電池20の破裂とは、キャップ25や破裂板21が電池本体または負極缶24から離脱(吹っ飛ぶ)状態をいう。
【0019】
また、この際、正極リード28は離脱部23から離れるため、電流が遮断される。これによって、過充電が防止され発火の発生も生じなくなる。
つぎに、実験により、離脱部の面積と負極缶の横断面積の比率を変えることによる非水電解液二次電池の破裂の有無と、その際の正極リードの破裂板への接続位置の違いによる発火の有無を確認した。その結果を以下に記す。
【0020】
実験例1
まず、下記の条件で各種の非水電解液二次電池を作製した。
負極として3000℃で黒鉛化した気相成長炭素繊維を用い、正極としてコバルト酸リチウムを用いて、直径17mm、高さ50mmの円筒型のリチウムイオン電池を得た。これには、電解液にLiPF6 をエチレンカーボネート+プロピレンカーボネート+ジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比で、3:2:5)に1Mの濃度になるよう溶解した非水電解液を用いた。
【0021】
また、上記電池の横断面積は2cm2 にした。正極リードは破裂板の離脱部にスポット溶接した。そして、離脱部の面積比率(離脱部の面積/負極缶の横断面積×100)および離脱部の直径に対するキャップ中央部と破裂板との高さ距離の比率(離脱部/キャップの内高さ×100)を表1に示すように設定した。
【0022】
そして作製された各種の非水電解液二次電池を用いて、くぎさし試験および過充電試験を行った。
くぎさし試験では、作製した各種の非水電解液二次電池に、まず、電流値800mA,電池電圧4.1Vで、定電流−定電圧充電を3時間行った。そして、その側面に、直径2mmのくぎを貫通させて強制的に内部短絡を生じさせ、その際に破裂が生じるかどうかを調べた。
【0023】
その結果、表1に示したように、面積比率5%,高さ比率70%とした実験例A、面積比率15%,高さ比率80%とした実験例B、面積比率30%,高さ比率90%とした実験例Cでは破裂は生じなかった。そして、面積比率3%,高さ比率80%とした実験例D、面積比率15%,高さ比率110%とした実験例Eでは破裂が生じた。
【0024】
この結果から、面積比率においては破裂が生じる場合と生じない場合の臨界点は5%と3%の間にあり、高さ比率においてはその臨界点は90%と110%の間にあることがわかる。また、面積比率を最高30%としたのは設計上の理由による。
【0025】
また、過充電試験では、3Aの電流で上記各種の非水電解液二次電池を二倍以上の容量が充電されるまで過充電させた。そして、その際に、発火が発生するかどうかを調べた。その結果、実験例Aから実験例Eまでのすべての実験例において発火は生じなかった。これにより、発火を防止するためには、正極リードは破裂板の離脱部に接続することが有効であることがわかる。
【0026】
実験例2
正極リードを破裂板における離脱部以外の部分に接続し、それ以外の部分についてはすべて実験例1と同様にして、各種の非水電解液二次電池を作製した。そして、これらの非水電解液二次電池に実験例1と同様の条件で、くぎさし試験および過充電試験を行った。
【0027】
その結果、くぎさし試験においては、実験例1と同様の結果を得た。すなわち、実験例2における実験例Fは実験例Aと同様の条件であり、実験例Gは実験例Bと、実験例Hは実験例Cと、実験例Iは実験例Dと、実験例Jは実験例Eとそれぞれ同様の条件である。
【0028】
また、過充電試験においては、実験例Fから実験例Jまでのすべてのものについて発火が生じた。これにより、離脱部が離脱してガス抜きが行われても、そのまま正極リードと破裂板が接続された状態になっていれば発火の原因になることがわかる。
【0029】
なお、上記の例では、負極缶24が円筒状になって非水電解液二次電池20の全体形状が円柱状になっているが、非水電解液二次電池20の形状は、このような形状に限らず、横断面形状が四角形や六角形の角形やガム形であってもようことは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る非水電解質二次電池は構成されているため、負極缶の内圧が上昇した際、破裂を防止できるだけの量の発生ガスを瞬時に外部に吐出できるようになる。また、負極缶の内圧が上昇し、破裂板の離脱部分が離脱すると同時に、正極リードが離脱部分から離れ電流が遮断されるため、発火の発生が防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一例による非水電解液二次電池を示す断面図。
【図2】従来例による非水電解液二次電池の断面図。
【符号の説明】
20・・・・・・非水電解液二次電池
21・・・・・・破裂板
23・・・・・・離脱部
24・・・・・・負極缶
25・・・・・・キャップ
27・・・・・・正極板
28・・・・・・正極リード
30・・・・・・電極
【表1】
Figure 0004098389
【表2】
Figure 0004098389

Claims (1)

  1. 有底筒状の負極缶の上面開口を閉塞するキャップとの間に所定の空間部を形成するようにして負極缶内に破裂板が設けられ、負極缶の内圧が上昇すると破裂板の一部が空間部に向かって離脱することによりそれ自身の破裂を防止するようになった非水電解液二次電池であって、破裂板における離脱部分の長さであって特定の2点間の直線距離が、破裂板とキャップの間の長さよりも短く設定され、かつ、破裂板における離脱部分の面積が負極缶の横断面積の5〜30%であるとともに、
    負極缶に内蔵された電極の正極板の内周側上端部から延設される正極リードが破裂板における離脱部分に接続され、その正極リードが、離脱部分が破裂板から離脱した際に離脱部分から離れてしまう長さに設定されている非水電解液二次電池。
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