JP4079547B2 - 鉄道レール用絶縁クリップ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は鉄道レールにおける分岐器や伸縮継目の分野で使用され、特に電気的絶縁が必要な箇所で用いられるレール用クリップに関する。
【0002】
【従来の技術】
シーサースクロッシングのような分岐器や伸縮継目においては、列車の運転制御等のためレールに信号電流が流れているときに左右のレール間を電気的に絶縁する必要がある。
【0003】
ここに従来より図11で示すようにレール1とタイプレート2間に絶縁板2′を挿入固着するとともにレール底部11とクリップ30のレール係合段部41との間に絶縁片10を挟み込むか、前記絶縁片10をクリップ30へ仮止め程度に接着している。
【0004】
従来の絶縁片10は周囲の他の部品に比べて小さいうえに長期の敷設により埃等が付着して視認しにくく、レールおよびその締結装置の解体・復旧工事時に取付けを失念する可能性があり、また経年使用による接着強度の低下のため脱落するおそれがあり、軌道短絡事故の発生原因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金具本体に絶縁カバーを確実に取付けて一体化し、工事施工時に絶縁手段の取付けを失念したり、脱落することがないようにし、短絡事故を起こすことなく、列車が安全運行できるようにし、しかも容易に製造できるようにし、またボルト・ナット締めにより楔状片の一端若しくは両端でレールを押えるタイプの締結金具やタイプレートに突設した係止片タイプの締結金具に絶縁カバーをより確実に取付けることができるようにし、さらに請求項2の発明は単独のクリップで隣り合う別個のレールを同時に絶縁かつ締結できるようにすることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はいずれもレールをタイプレートに締結する金具本体のレール係合部に絶縁カバーを凹凸嵌合手段を介して取付けたことを構成要件の1つとするものである。
【0007】
前記のように構成し、このクリップでレールをタイプレートに締結すれば、レールと金具本体間は電気的に絶縁され、また金具本体と絶縁カバーとを凹凸嵌合するだけで両部材を確実に一体化でき、取付けを失念したり、脱落することがなく、短絡事故を防止し、安全運行を遂行することができる。
【0008】
しかも、前記構成要件に加え、請求項1の発明は金具本体がボルトおよびナットによりレール底部をタイプレートに定着させる楔状片であり、レール係合部が前記楔状片の一端に形成され、しかもへ字状の係合段部を有し、絶縁カバーが前記レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、凹凸嵌合手段が前記絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両側面に形成した嵌合孔であり、請求項2の発明は金具本体がボルトおよびナットにより隣り合う別個のレール底部をタイプレートに定着させる楔状片であり、レール係合部が前記楔状片の両端に形成され、しかもそれぞれへ字状の係合段部を有し、絶縁カバーが1対であり、前記各絶縁カバーが前記各レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、凹凸嵌合手段が前記各絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両端部の両側面に形成した嵌合孔であり、請求項3の発明は金具本体がタイプレートに突設した係止片であり、レール係合部が前記係止片に形成された断面へ字状の係合段部を有し、絶縁カバーが前記レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、凹凸嵌合手段が前記絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両側面に形成した嵌合孔である。
【0009】
このようにすれば分岐器、伸縮継目において電気的絶縁を必要とする各種の締結金具への絶縁手段の取付けの失念および脱落による短絡事故防止を図ることができ、しかも弾性を有する絶縁カバーはへ字状の段部のみならず、これを含むレール係合部の端面、上面、両側面に確実に密着するとともに絶縁カバーに一体形成した内向突起、つまり弾性を有する内向突起と前記嵌合孔により絶縁カバーは金具本体に、より確実に一体化でき、また金具本体に突起、絶縁カバーに嵌合孔を形成する場合に比べて製造が容易となり、さらには1種類の絶縁カバーで3タイプの締結金具に共用でき、経済的にも有効である。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は第1の実施の形態を示すものであり、シーサースクロッシングのような分岐器および伸縮継目のレール締結構造で用いる。
【0011】
鋼製の楔状片31よりなる金具本体3の傾斜端縁34の下面に沿って嵌挿脚30を突設し、傾斜端縁34と平行にボルト挿通用の細長孔35を設け、内側端面42を垂直面43とこれに連続するへ字状の係合段部41にしてレール係合部4を形成し、金具本体3のレール係合部4側の両側面に凹凸嵌合手段6としてそれぞれ茸状の嵌合孔61を形成する。また例えばナイロン6のような弾性を有する絶縁材により絶縁カバー5を形成する。この絶縁カバー5は上面板52、端面板53、両側面板54、54を一体的に形成するもので、端面板53は垂直面53′とこれに連続するへ字状面55によりなり、上面板52は金具本体3の上面に、端面板53は金具本体3の内側の端面42に、側面板54、54は金具本体3の両側面にそれぞれ添接する形状を有し、各側面板54から凹凸嵌合手段7として各嵌合孔61に嵌合する茸状の内向突起71を一体的に突設する。
【0012】
そして弾性を有する上面板52、端面板53、両側面板54、54を金具本体3に密着してレール係合部4に被着するとともに内向突起71、71を嵌合孔61、61に圧入すれば、各内向突起71の頭部71′は嵌合孔61の柄孔部61′で弾性変形した後、傘孔部61″で復元方向に戻り、完全に凹凸嵌合する。前記構成によると絶縁カバー5と金具本体3との接触面積が従来例より遥かに大きく、しかも前記凹凸嵌合により極めて確実に一体化して脱落するおそれがなく、また製造も容易で好ましい。
【0013】
図5〜図7および図4は第2の実施の形態を示すもので、シーサースクロッシングのような分岐器のレール締結構造で用いる。鋼製の楔状片32よりなる金具本体3中央にボルト挿通用の細長孔35を設け、傾斜両端縁36、36に沿う両端面42′、42′をそれぞれ垂直面43とこれに連続するへ字状の係合段部41にしてレール係合部4を形成し、金具本体3の両レール係合部4、4の両側面にそれぞれ茸状の嵌合孔61を形成する。なお第2の実施の形態における絶縁カバー5の構成、材質および金具本体3への取付法は第1の実施の形態と同一であり、図5〜7に同一符号を付して重複説明を省略する。第1の実施の形態との差異は絶縁カバー5、5を1対、用い、金具本体3の両レール係合部4、4にそれぞれ取付ける点である。
【0014】
図8〜図10および図4は第3の実施の形態を示すもので、シーサースクロッシングのような分岐器および伸縮継目のレール締結構造で用いる。断面略コ字状の鋼製の係止片33よりなる金具本体3の内端縁に沿う内端面42″を垂直面43とこれに連続するへ字状の係合段部41にしてレール係合部4を形成し、係止片33の両側面にそれぞれ茸状の嵌合孔61を形成する。なお第3の実施の形態における絶縁カバー5の構成、材質および金具本体3への取付法は第1の実施の形態と同一であり、図8〜10に同一符号を付して重複説明を省略する。この第3の実施の形態における金具本体3はその底部37をタイプレート2の嵌合溝21に埋設かつ溶接により固着してタイプレート2に突設する。
【0015】
次に各実施の形態の使用法を説明すれば、鋼製のタイプレート2上に敷かれ、かつ接着された絶縁板2′上にレール1を敷設した後、第1の実施の形態においてはタイプレート2より突設したボルト8に細長孔35を外挿するとともに嵌挿脚30をタイプレート2の傾斜溝20に嵌挿し、また絶縁カバー5のへ字状面55をレール底部11に当接し、楔状片31を図2において上方へ叩いて嵌挿脚30を傾斜溝20に沿って進め、レール係合部4によるレール底部11への押圧状況を確認後、角座9′をボルト8に外挿し、しかる後ナット9″、ナット9を螺着する。
【0016】
第2の実施の形態においては、ボルト8に細長孔35を外挿するとともに絶縁カバー5、5の各へ字状面55を隣り合うレール1、1の各内側のレール底部11に当接し、楔状片32を図6において下方へ叩いて進め、レール係合部4、4によるレール底部11、11への押圧状況を確認後、第1の実施の形態同様、角座9′を介してナット9″、9をボルト8に螺着する。
【0017】
第3の実施の形態においてはレール底部11を絶縁カバー5のへ字状面55に係止しつつ絶縁板2′上に敷設する。
【0018】
ここにいずれの実施の形態にあってもレール1とタイプレート2間には絶縁板2′が介在するとともに金具本体3がレール底部11に直接、接触することがなく、絶縁カバー5が接触してレール1と金具本体3間は電気的に絶縁され、1枚のタイプレート2上に設置された左右のレール間は電気的絶縁状態となり、短絡事故を生じることがなく、列車の安全運行が遂行される。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、いずれも工事施工時に絶縁カバーの取付けを失念したり、脱落することがなく、短絡事故を起こすことがなく、列車が安全運行することができ、しかも容易に製造することができる。
【0020】
また、本発明によれば、ボルト・ナット締めにより楔状片の一端若しくは両端でレールを押えるタイプの締結金具やタイプレートに突設する係止片タイプの締結金具に絶縁カバーをより確実に取付けることができる。
【0021】
さらに請求項2の本発明によれば、単独のクリップで隣り合う別個のレールを同時に絶縁かつ締結でき、有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の使用状態を示す一部切欠き正面図である。
【図2】同上の一方を示す一部切欠き平面図である。
【図3】同上のクリップの一部切欠き側面図である。
【図4】本発明の第1〜第3の実施の形態における凹凸嵌合手段の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の使用状態を示す一部切欠き正面図である。
【図6】同上の一部切欠き平面図である。
【図7】同上のクリップを示す一部切欠き側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の使用状態を示す一部切欠き正面図である。
【図9】同上の一部切欠き平面図である。
【図10】同上のクリップを示す一部切欠き側面図である。
【図11】従来例の使用状態を示す一部切欠き正面図である。
【符号の説明】
1 レール 2 タイプレート
3 金具本体 4 レール係合部
5 絶縁カバー 6 凹凸嵌合手段
7 凹凸嵌合手段 8 ボルト
9 ナット 11 レール底部
31 楔状片 32 楔状片
33 係止片 41 係合段部
42 端面 61 嵌合孔
71 内向突起
Claims (3)
- レールをタイプレートに締結する金具本体のレール係合部に絶縁カバーを凹凸嵌合手段を介して取付け、また前記金具本体がボルトおよびナットによりレール底部を前記タイプレートに定着させる楔状片であり、前記レール係合部が前記楔状片の一端に形成され、しかもへ字状の係合段部を有し、前記絶縁カバーが前記レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、前記凹凸嵌合手段が前記絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両側面に形成した嵌合孔であることを特徴とする鉄道レール用絶縁クリップ。
- レールをタイプレートに締結する金具本体のレール係合部に絶縁カバーを凹凸嵌合手段を介して取付け、また前記金具本体がボルトおよびナットにより隣り合う別個のレール底部を前記タイプレートに定着させる楔状片であり、前記レール係合部が前記楔状片の両端に形成され、しかもそれぞれへ字状の係合段部を有し、前記絶縁カバーが1対であり、前記各絶縁カバーが前記各レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、前記凹凸嵌合手段が前記各絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両端部の両側面に形成した嵌合孔であることを特徴とする鉄道レール用絶縁クリップ。
- レールをタイプレートに締結する金具本体のレール係合部に絶縁カバーを凹凸嵌合手段を介して取付け、また前記金具本体が前記タイプレートに突設した係止片であり、前記レール係合部が前記係止片に形成された断面へ字状の係合段部を有し、前記絶縁カバーが前記レール係合部の端面、上面および両側面に添接する形状の弾性材からなり、前記凹凸嵌合手段が前記絶縁カバーの両側面に一体形成した内向突起および前記金具本体の両側面に形成した嵌合孔であることを特徴とする鉄道レール用絶縁クリップ。
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