JP4070934B2 - 既存建物へのエレベータの構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存建物へのエレベータの構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集合住宅には外部階段室型のものがあり、これは、例えば図3、図16に示すように、隣接の2戸の住戸1毎とに、該住戸1,1を挟むようにして、途中に踊場2を設けた折返し型の階段室3を設けてあり、踊場2は建物の外側に面している。
【0003】
かかる外部階段室型の既存の集合住宅において、エレベータを新たに付設しようとする場合、このような既存建物6には住民が生活していることから、建物の改造は必要最小に止めることが望まれ、エレベータは既存の階段室3の踊場2を潰してここに設置されることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、踊場2にエレベータを設置した場合、踊場2は階段室3の途中に存在するものであるから、各住戸1があるフロアとは床面が異なり、バリアフリーに対応できず、高齢者や身障者、病人などの入居者の居住性に対して配慮に欠けるものになる。
【0005】
そこで、エレベータを階段室3が設けられている側とは異なる側、例えばその反対側のバルコニー4の側に設置することも考えられ、かかる場合はバリアフリーに対応することができる。しかし、バルコニー4は通常は建物の南側に面しており、しかも、各住戸1のリビング5などがこのバルコニー4に通じているため、建物の南側からの採光に支障が生じたり、各住戸1へのアクセスがエレベータからリビング5へのものとなり、居住性を低下させるおそれもある。
【0006】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、外部階段室を備えた既存の集合住宅にエレベータを増設する場合、既存建物の改造部分を必要最小に止めることができることはもちろんのこと、居住者が退去することなく居ながらにして施工でき、増設のエレベータと既存建物の各フロアの床面とをバリアフリーとすることもできて居住性の向上を図れる既存建物へのエレベータの構築方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、踊場が建物本体の外側に位置し、各住戸への出入口に続く外部階段室を備えた既存の集合住宅の、前記外部階段室の側にエレベータ構造物を構築し、該エレベータ構造物と既存の集合住宅の各階のフロアとを同一面に位置する新設床で連結する既存建物へのエレベータの構築方法において、新設床の敷設と既存 階段の撤去が完了するまでの間、エレベータ構造物に各住戸への仮設出入口を設けることを要旨とするものである。
【0008】
第2に、前記仮設出入口は、既存建物とエレベータ構造物とを連続させる仮のステージと、既存建物内の住居の階段室側の居室に設ける出入口とで構成することを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、既存建物の各フロアとエレベータ構造物とが前記フロアと同一面の新設床で接続されるから、バリアフリーを実現できる。また、新設床は、通常、建物の北側に位置している階段室内に設けることで、バルコニーやリビングなどのある建物の南側には変更を加えずにすみ、居住性を低下させずにすむとともに、居住しながら同時にエレベータの増築工事を行うことができる。
【0014】
さらに、新設床の敷設と既存階段の撤去が完了するまでの間、エレベータ構造物に各住戸への仮設出入口を設けるようにしたから、既存の階段室の使用が不可となってもエレベータ構造物から各住戸の室へ直接出入りできるから、居住を継続するのに支障は生じない。
【0000】
請求項2記載の本発明によれば、仮設出入口は、既存建物とエレベータ構造物とを連続させる仮のステージと、既存建物内の住居の階段室側の居室に設ける出入口とで構成するから、例えば仮設足場を構築するようにして組み上げることができ、設置だけでなく、撤去も容易にできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す縦断側面図、図2は同上横断平面図で、図中6は既存建物を示し、図3、図16について既に説明したように例えば階部階段型の5階建ての集合住宅であり、隣接の2戸の住戸1毎とに、該住戸1,1を挟むようにして、途中に踊場2を設けた折返し型の階段室3が設けてあり、踊場2は建物の外側に面している。
【0016】
そして、図13にも示すように階段室3に続く床8に面した各住戸1の出入口7である玄関が設けてある。
【0017】
図中9はエレベータ構造物を示し、図2、図11、図12にも示すように、エレベータ14が配設されるエレベータシャフト10を中心に配置して、その周囲に外部階段として中空状の階段11を配置するとともに、エレベータシャフト10への開口部10aの側には床12を敷設した縦長直方体形状の構造物であり、該エレベータ構造物9の躯体はブレース構造およびラーメン構造(S造)または壁構造(RC造)とする。
【0018】
そして、該床12を敷設した側の躯体には既存建物6と連通させるための開口13を設けた。前記階段11には、雨掛かり防止用の屋根を設けることもできる。
【0019】
次にかかる既存建物6にエレベータ14を増設する方法を図3〜図10について説明する。図3に示した既存建物6の階段室3の側に、前記のような構造のエレベータ構造物9を近接して構造物として構築する(図4参照)。この場合、該エレベータ構造物9は独立した構造物として構築し、基礎9aを設ける。
【0020】
また、エレベータ構造物9の躯体に設けた開口13を既存建物6の階段室3の側に位置させ、床12は既存建物6の側の床8と同一面となるように敷設する。
【0021】
次に図5に示すように既存建物6の最上階である5階の階段室3に設けてある、開口13に面した側の垂壁15を撤去し、開口13を解放させて既存建物6の側の階段室3とエレベータ構造物9とを連通させる。
【0022】
次に図6に示すように既存建物6の最上階である5階の階段室3に続く床8と、エレベータ構造物9の側の床12との間に、階段室3を塞ぐようにして新設床16を敷設し、既存建物6の側の床8とエレベータ構造物9の側の床12とを連結する。この場合、床8と床12とは同一面に位置しているから、新設床16も床8および床12と同一面となり、バリアフリーとなる。
【0023】
この新設床16の敷設工事中は、既設の階段室3の使用が不可となるので、図13に示すようにエレベータ構造物9の側の床12に連続させて、既存建物6の側にこれと接するように仮設出入口17を設ける。
【0024】
この仮設出入口17は、仮のステージ17aと、住戸1の階段室3の側の居室18に設ける出入口17bとで構成するもので、例えば図14に示すように仮のステージ17aを既存建物6の躯体から受け材17cを介して突設して既存建物6に緊結するようにしたり、図15に示すように仮設足場を構築するようにして足場材17dを組み上げ、この足場材17dによってステージ17aを構築するようにする。
【0025】
よって、居住者は新設床16が敷設されるまでの間は、この仮設出入口17を使用して居室18側からエレベータ構造物9側に直接出入りし、エレベータ14や階段11を使用して外部と行き来する。これにより、新設床16の施工場所である階段室3には居住者が立ち入ることはなく、施工区域と居住区域とを分離でき、居住しながら、しかも居住性を損なうことなくエレベータの増設工事を行うことができる。
【0026】
なお、階段室3の内に新しく敷設された新設床16とエレベータ構造物9の側の床12とは、エキスパンションジョイントで接続し、既存建物6とエレベータ構造物9との縁を切っている為、既存建物6が免震構造の場合も適用可能である。
【0027】
このようにして、最上階である5階の床8がエレベータ構造物9と連結されたものになれば、最上階の住戸1の居住者は本来の出入口7を使用して既存建物6側の床8、新設床16を通ってエレベータ構造物9の側の床12へと移動し、エレベータシャフト10内にエレベータ14を利用し、または階段11を使用して外部と行き来する。
【0028】
新設床16が敷設されならば、図7に示すように最上階の5階と4階との間の階段室3の既存の階段を撤去する。最上階での新設床16の敷設工事中、4階以下の居住者は、従来どおり既存の階段室3を利用して出入りする。
【0029】
そして次に4階部分の階段室3内に新設床16を敷設して、エレベータ構造物9と連結し、その後、図8に示すように3階と4階との間の階段室3の既存の階段を撤去する。敷設工事や撤去工事については5階での施工と同様である。
【0030】
同様にして図8、図9に示すように3階部分の階段室3内に新設床16を敷設して、エレベータ構造物9と連結し、その後、2階と3階との間の階段室3の既存の階段を撤去する。
【0031】
最後に図9に示すように2階部分の階段室3内に新設床16を敷設して、エレベータ構造物9と連結し、その後、図10に示すように1階と2階との間の階段室3の既存の階段を撤去する。
【0032】
以上のようにして全ての階で階段室3内に新設床16が敷設され、エレベータ構造物9と既存建物6とが連結されたならば、仮設出入口17を撤去して全ての工事が完了する。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の既存建物へのエレベータの構築方法は、外部階段室を備えた既存の集合住宅にエレベータを増設する場合、独立したエレベータ構造物を既存建物に近接して構築した後、既存の階段室内にエレベータ構造物の側の床と同一面となる新設床を敷設し、この新設床で既存建物とエレベータ構造物とを連結したから、既存建物の改造部分を必要最小に止めることができることはもちろんのこと、増設のエレベータと既存建物の各フロアの床面とをバリアフリーとすることもでき、さらに通常は建物の北側に位置する階段室を利用できるから南側にエレベータを設置せずにすみ居住性の低下を防止できる。
【0034】
また、既存建物の最上階から順に新設床を敷設してエレベータ構造物と既存建物とを連結し、既存階段を撤去するようにしたから、施工階より下の階では既存階段の使用が可能であり、施工階も新設床の敷設工事中は仮設出入口を使用して新設の階段やエレベータの使用が可能となるから、居住者は退去することなく居ながらにして施工でき、しかも施工区域と居住区域との分離を図ることができ、居住性も損なわれることがないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す横断平面図である。
【図3】 本発明か実施される既存建物の要部の縦断側面図である。
【図4】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示すエレベータ構造物を設置した状態の縦断側面図である。
【図5】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す最上階の5階の垂壁を撤去した状態の縦断側面図である。
【図6】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す最上階の5階に新設床を敷設した状態の縦断側面図である。
【図7】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す5階〜4階部分の階段を撤去し、4階に新設床を敷設した状態の縦断側面図である。
【図8】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す4階〜3階部分の階段を撤去し、3階に新設床を敷設した状態の縦断側面図である。
【図9】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す3階〜2階部分の階段を撤去し、2階に新設床を敷設した状態の縦断側面図である。
【図10】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す2階〜1階部分の階段を撤去した状態の縦断側面図である。
【図11】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法で構築するエレベータ構造物の正面図である。
【図12】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法で構築するエレベータ構造物の側面図である。
【図13】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す仮設出入口を設置した状態の横断平面図である。
【図14】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す仮設出入口の第1例の側面図である。
【図15】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法の実施の形態を示す仮設出入口の第2例の側面図である。
【図16】 本発明の既存建物へのエレベータの構築方法が実施される既存建物の要部の横断平面図である。
【符号の説明】
1…住戸 2…踊場
3…階段室 4…バルコニー
5…リビング 6…既存建物
7…出入口 8…床
9…エレベータ構造物 9a…基礎
10…エレベータシャフト 10a…開口部
11…階段 12…床
13…開口 14…エレベータ
15…垂壁 16…新設床
17…仮設出入口 17a…ステージ
17b…出入口 17c…受け材
17d…足場材 18…居室
Claims (2)
- 踊場が建物本体の外側に位置し、各住戸への出入口に続く外部階段室を備えた既存の集合住宅の、前記外部階段室の側にエレベータ構造物を構築し、該エレベータ構造物と既存の集合住宅の各階のフロアとを同一面に位置する新設床で連結する既存建物へのエレベータの構築方法において、新設床の敷設と既存階段の撤去が完了するまでの間、エレベータ構造物に各住戸への仮設出入口を設けることを特徴とする既存建物へのエレベータの構築方法。
- 前記仮設出入口は、既存建物とエレベータ構造物とを連続させる仮のステージと、既存建物内の住居の階段室側の居室に設ける出入口とで構成する請求項1記載の既存建物へのエレベータの構築方法。
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