JP4063415B2 - 油圧駆動車両のトランスミッション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車速を変更する為の走行用の油圧式無段変速装置と、操向を行う為の旋回用の油圧式無段変速装置を具備したコンバイン等の油圧駆動車両のトランスミッションに関するものであり、詳しくは、直進走行時において安定した直進性を得るために配設されたステアリングブレーキの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、クローラ式走行装置によって走行するコンバインの左右一側に運転部を配し、該運転部の後方にグレンタンクを配置し、運転席の側方に刈取部を配し、該刈取部にて刈り取った穀稈を刈取部後方の脱穀装置に搬送し、選別した後の排藁を機体後部より排出する構成のコンバインがあり、また、車両の速度を変更する油圧式無段変速装置と、車両の進行方向を変更する為の油圧式無段変速装置を具備しており、走行操作レバーのシフト操作により前後方向、ステアリングハンドルの操作量に応じて左右方向に旋回可能としていた。
【0003】
ところが、ステアリングハンドルを中立位置とした直進走行中においても、クローラなど走行部において左右の回転負荷の間に差が生じた場合や、ステアリングハンドルが微動して中立位置から左右にぶれた場合などにおいて、機体の進路が左右に変化し、安定した直進走行が維持できないといった問題があり、また、走行停止中においても、左右走行部の支持荷重に変化が生じたり、ステアリングハンドルが中立位置より変化した場合には、機体が不測に旋回するといった問題があった。そこで、操向中立直進走行時においては、ステアリングハンドルの中心位置をリミットスイッチにて検出して、電磁弁、油圧式作動ピストン等とから構成されるブレーキ機構により旋回用の油圧式無段変速装置のモータ軸を回転不能にすべくブレーキ操作し、遊星歯車機構の左右インターナルギヤを固定することにより、直進走行に安定性を持たせていた。例えば、特開平10−16813号の技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の操向中立時に作動するブレーキ機構は、電磁弁、油圧式作動ピストン等とから構成されるため、ブレーキ機構が高コストとなり、また、旋回用の油圧式無段変速装置のモータ軸を完全に回転不能に固定するものであったため、固定する際の制動側と被制動側との間で相対回転差が大きく、摩擦が大きくなり、ブレーキ機構の耐久性においても問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。即ち、左右一対の遊星歯車機構の3要素のうち、第一要素の一対を、走行変速操作具により変速操作される変速装置に連動連結し、第二要素の一対を、ステアリング操作具により変速操作される油圧式無段変速装置に連動連結し、第三要素の一対を車軸に連動連結してなる作業車両のトランスミッションにおいて、前記油圧式無段変速装置の出力軸から前記第二要素の一対に至るまでの動力伝達経路の一軸上に、前記出力軸によって異なる回転速度で同方向に駆動させる一対の回転部材を設けると共に、この両回転部材を回転軸心方向に常時圧接させるブレーキ機構を設けた。
【0006】
また、前記回転部材の各々の外周に刻設した異なる歯数の歯部に対して、共通の駆動ギヤを噛み合わせた。
【0007】
また、前記回転部材の一方は、前記駆動ギヤからの動力を前記遊星歯車機構の第二要素へ伝達する伝動ギヤに構成されて前記一軸と相対回転不能に固定される一方、前記回転部材の他方は、複数の摩擦板であって、前記一軸と一体回転するよう設けた複数の相手板と重合して前記伝動ギヤに圧接されるものに構成された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインの全体側面図、図2は同じくコンバインの平面図、図3は本コンバインの正面模式図、図4はトランスミッションのスケルトン図、図5はトランスミッション全体の模式斜視図、図6はトランスミッションから無段変速装置を分離させた状態を示す模式斜視図、図7は走行用の油圧式無段変速装置を含むトランスミッションの断面展開図、図8は旋回用の油圧式無段変速装置を含むトランスミッションの断面展開図、図9は遊星歯車機構の断面図、図10はトランスミッションの左側面断面図、図11はトランスミッションの左側面図、図12はトランスミッションの右側面図、図13はブレーキ機構を示すミッション装置の断面展開図である。
【0009】
まず、図1及び図2より本発明のコンバインの全体構成について説明する。
トラックフレーム1には左右のクローラ式走行装置2L・2Rを装設している。3は前記トラックフレーム1に架設する機台、4はフイードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀機である脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダである。
13は排藁チェン14の終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒16を介して搬入する穀物タンク、17は前記穀物タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、18は丸型の操向ハンドル19を支架するハンドルポスト、68は主変速レバー、20は運転席であり、また、21は、機体左右方向に沿う出力軸を有するエンジンであり、コンバインの前方より連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0010】
また、このコンバインには走行用の無段変速装置及び旋回用の無段変速装置8を具備しており、それぞれエンジン21より駆動力を得るよう構成されている。そして、エンジン21により駆動力を得た走行用の無段変速装置により、正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が走行系伝動機構Rを介して差動機構33に伝達される。また、エンジン21により駆動力を得た旋回用の無段変速装置により正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が正逆転付与機構Sを介して差動機構33に伝達される。このような構成で、差動機構33に連動連結された左右のクローラ式走行装置2L・2Rの駆動スプロケット34L・34Rに駆動力を常時伝達し、前後直進走行及び、左右駆動スプロケット34L・34Rに対する回転数の相対的な増減制御により旋回を可能としたものであり、以下において、この走行及び旋回の機構について説明する。
【0011】
次に本発明のトランスミッションの構成について図7乃至図12より説明する。 本実施例においては無段変速装置として静油圧式無段変速装置(以下HST装置)Hを採用しており、前記クローラ式走行装置2L・2Rを駆動するトランスミッションMは前記ミッションケース22内の走行系伝動機構R、正逆転付与機構S及び遊星歯車機構35L・35R、及び該ミッションケース22に載置されたHST装置Hより構成される。HST装置Hは、1組の走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる主変速機構である走行用の油圧式無段変速装置25と、1組の旋回油圧ポンプ26及び旋回油圧モータ27からなる旋回機構である旋回用の油圧式無段変速装置28とからなる。また、ミッションケース22は左側(図7及び図8において左側)のケース部22L及び右側のケース部22Rより構成され、ケース部22L・22Rがミッションケース22の左右方向で中央付近において接合されている。
【0012】
また、図10及び図11に示すように前記走行用の油圧式無段変速装置25は、機体の前後方向における後方(図10における右側)に横置きしたケース内に走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24が並設されており、該走行油圧ポンプ23の入力軸23a及び、該走行油圧モータ24の出力軸24aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0013】
また、前記旋回用の油圧式無段変速装置28においては、機体の前後方向における前方(図10における左側)から旋回油圧ポンプ26及び、旋回油圧モータ27が並設され横置きのケースに内装されており、該旋回油圧ポンプ26の入力軸26a及び、該旋回油圧モータ27の出力軸27aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0014】
一方、図3、図6及び図12で示すように前記ミッションケース22の右側のケース部22Rの右上部には、ミッションケース22の上面よりも上方に延出する入力ケース部22aが突出形成されている。入力ケース部22aはケース部22Rの右端部に一体形成され、該入力ケース部22aの右端開口を閉じるべく蓋体22bが固定されている。
そして、該ミッションケース22の上面に臨む入力ケース部22aの左側面において、機体後方から順に走行用の油圧式無段変速装置25及び旋回用の油圧式無段変速装置28を並設させるように、両油圧式無段変速装置25・28のケースを取り付けている。
このように、ミッションケース22上に走行用及び旋回用の油圧式無段変速装置25・28を機体の前後方向に並列させたので、HST装置Hが、ミッションケース22上にコンパクトに収納され、特に、機体の前後方向に並設させたことにより、左右方向のサイズを小さくすることができ、二条用、三条用といった小型のコンバインにおいても二つの油圧式無段変速装置25・28を装備可能となったのである。また、それぞれの油圧式無段変速装置25・28は、その構成要素である油圧ポンプ及び油圧モータを機体前後方向に並列に配置しているため、左右方向の幅が小さくユニットとしてコンパクトな構成となっている。
【0015】
また、ミッションケース22内には走行系伝動機構R及び正逆転付与機構Sが配設されており、該走行系伝動機構Rの動力受入部Ra及び正逆転付与機構Sの動力受入部Saが、該入力ケース部22a内に設けられている。そして、前記走行用の油圧式無段変速装置25の走行油圧モータ24の出力軸24aの一端が動力受入部Raを構成する伝達ギヤ42に挿入係合され、また、前記旋回用の油圧式無段変速装置28の旋回用油圧モータ27の出力軸27aの一端が該動力受入部Saを構成する伝達ギヤ97に挿入係合されている。
【0016】
また、機体の前後方向に並列された走行用及び旋回用油圧モータ24・27の各々が出力される動力を受け入れるための動力受入部Ra・Saを入力ケース部22aの左側面の前後に設けたので、動力伝達の構成が非常にシンプルとなり、また小型のコンバインにおいても充分搭載可能なようコンパクトなトランスミッションを構成することが可能となったのである。
【0017】
また、走行用の油圧式無段変速装置25のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aが突出しており、その端部には二連の入力プーリー23bが入力軸23aに一体的に装着されており、また、旋回用の油圧式無段変速装置28のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記旋回油圧ポンプ26の入力軸26aが突出しており、その端部には一連の入力プーリー26bが入力軸26aに一体的に装着されている。
そして、前記入力プーリー23bの一方と入力プーリー26bとの間には第一無端帯である伝動ベルト30が巻回されており、旋回油圧ポンプ26の入力軸26aを伝動ベルト30と、入力プーリー23b・26bを介し、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aに連動連結させている。31は伝動ベルト30を適当な張り具合に調整するテンションプーリーである。
また、前記エンジン21の出力軸21aには出力プーリー21bが一体的に装着されており、該出力プーリー21bと前記走行用油圧ポンプ23の入力プーリー23bの他方との間には第二無端帯である伝動ベルト29が巻回されている。このようにして走行油圧ポンプ23の入力軸23aを伝達ベルト29、プーリー等を介しエンジン21に連動連結させている。
【0018】
また、ミッションケース22の左側ケース部22Lの側面から、刈取PTO軸55が突出しており、該刈取PTO軸55上には一体的に回転する刈取出力プーリー55bが固設され、該刈取出力プーリー55bと刈取入力ギヤボックス120の刈取入力プーリー121との間に刈取伝動ベルト122が巻回されている。そしてミッションケース22内の副変速軸53からギヤ56、55aを介して、エンジン21の出力を刈取入力ギヤボックス120に伝達するのである。
【0019】
また、油圧式無段変速装置25・28の各々のケース上面には、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26に対する変速アーム23c、26cが配設されており、該変速アーム23c、26cの回動操作により、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26の可動斜板145、146がそれぞれ傾動し、走行油圧モータ24及び旋回油圧モータ27の回転速度及び回転方向が制御される。
【0020】
次に、図4及び図7乃至図9より、差動機構33の構成について説明する。ミッションケース22内の差動機構33は左右の1対の遊星歯車機構35L・35Rを有し、各遊星歯車機構35L・35Rは第一要素であるサンギヤ36L・36Rと、該サンギヤ36L・36Rの外周で噛合う複数のプラネタリギヤ37L・37Rと、第二要素であるリングギヤ38L・38Rと一体的に構成されプラネタリギヤ37L・37Rに噛合うインターナルギヤ38a・38aと、サンギヤ軸39と同軸線上の車軸40L・40Rに固設されプラネタリアギヤ37L・37Rを枢支する第三要素であるキャリヤ41L・41R等から構成されている。
該プラネタリアギヤ37L・37Rは車軸40L・40Rから放射状に均等配置されてキャリヤ41L・41Rにそれぞれ回転自在に軸支され、左右のサンギヤ36L・36Rを挟んで左右のキャリヤ41L・41Rを配置させると共に、前記インターナルギヤ38a・38aは各プラネタリギヤ37L・37Rに噛み合い、サンギヤ軸39とは同一軸芯状に配置させ、車軸40L・40Rに回転自在に軸支させている。
【0021】
そして、左右の前記サンギヤ36L・36Rは共通のサンギヤ軸39の外周面上に刻設され、両ギヤ36L・36Rの中間部に係止したセンタギヤ46を介して、副変速機構32等からなる走行系伝動機構Rに連動連結され、さらに走行系伝動機構Rの入力部には、前記走行用の油圧式無段変速装置25に対する前記動力受入部Raである伝達ギヤ42が連動連結されている。
副変速機構32は、ミッションケース22に横架した副変速駆動軸53の一端に入力用ギヤ44を固設し、該副変速駆動軸53上には低速ギヤ50、中速ギヤ51を固設し、高速ギヤ52を遊嵌し、高速ギヤ52と噛合可能なクラッチスライダ81を摺動可能にスプライン嵌合している。また、前記副変速駆動軸53と平行に回転自在に横架した副変速従動軸45上には、ギヤ47・48を遊嵌し、その間にクラッチスライダ80を両者に対して噛合可能にスプライン嵌合し、出力ギヤ49を固設している。そして、ギヤ47と低速用ギヤ50、ギヤ48と中速用ギヤ51、ギヤ49と高速用ギヤ52とをそれぞれ常時噛合させている。
これら2つのクラッチスライダ80・81は運転席近傍に配備した一本の副変速レバーに連係され、該副変速レバーが操作されることで各々の軸53・45上を同時に摺動して、クラッチスライダ80・81のいずれかがギヤ47・48・52のいずれかと係合するように構成され、これにより、副変速従動軸45に3段の変速回転が得られ、出力ギヤ49から出力されるようになっている。
【0022】
このような構成において走行用油圧モータ24の回転出力が、出力軸24aから入力ケース部22a内の伝達ギヤ42を介して、カウンター軸43上のギヤ43a、入力用ギヤ44を介して副変速機構32に伝達され、副変速機構32において変速したのち出力ギヤ49からカウンターギヤ54、センタギヤ46を経由して左右のサンギヤ36L・36Rを回転駆動させるのである。そして、左右の遊星歯車機構35L・35Rを介し車軸40に伝達させることにより、左右の駆動スプロケット34L・34Rを回転駆動させクローラ式走行装置2L・2Rを駆動させるのである。
【0023】
一方、左右の前記リングギヤ38L・38Rは、支軸63上に遊嵌したギヤ63c・63d、アイドル軸62上のアイドル歯車62a等からなる正逆転付与機構Sに連動連結され、さらに正逆転付与機構Sの入力部には旋回用の油圧式無段変速装置28に対する動力受入部Saである伝達ギヤ97が連動連結されている。
【0024】
そして、旋回用の油圧式無段変速装置28の旋回油圧モータ27の回転出力が、出力軸27aから順に伝達ギヤ97、カウンター軸96上の駆動ギヤ96aに伝達され、さらに入力用の伝動ギヤ91を介して旋回入力軸90、クラッチ装置Cを介してクラッチ軸61へと伝達される。
前記旋回入力軸90には同歯数の駆動ギヤ90a・90bが刻設され、またクラッチ軸61上には、該駆動ギヤ90a・90bと常時噛み合うクラッチギヤ61b・61cが遊嵌設置されている。そして、両クラッチギヤ61b・61cの間に、該クラッチギヤ61b・61cの各々に対して係脱自在なクラッチスライダ61dを、クラッチ軸61と相対回転不能で、かつ、軸方向摺動自在に設置することにより、前記クラッチ装置Cを構成している。このクラッチスライダ61dは前述の副変速機構32のクラッチスライダ80・81と連動連係され、副変速機構32が中立位置にあるときにはクラッチギヤ61b・61cのいずれとも係合せず、副変速機構32が1速から3速までの伝動状態にあるときのみ係合して旋回入力軸90からの動力をクラッチ軸61に伝達し、クラッチ軸61と一体の出力ギヤ61aより出力するように構成されている。
【0025】
そして、クラッチ軸61上の出力ギヤ61aの回転は支軸63上に遊嵌した旋回入力ギヤ63bに直接的に伝達され、ギヤ63dを介してリングギヤ38Rに伝達される。また左側のリングギヤ38Lに対しては、クラッチ軸61上の出力ギヤ61aの回転はアイドル軸62上のアイドルギヤ62aにて逆転されたあと、支軸63上の旋回入力ギヤ63aに伝達され、ギヤ63cを介してリングギヤ38Lに伝達される。このようにして旋回油圧モータ27の回転出力が、左右のリングギヤ38L・38Rを互いに逆回転方向へ、且つ、左右同一回転数で駆動するよう伝達されるのである。
【0026】
このような構成で、走行油圧ポンプ23の可動斜板145に対する変速アーム23cが、運転席近傍に配備した走行操作具である主変速レバー68にリンク機構を介して連動連係されており、走行用の油圧式無段変速装置25は該主変速レバー68の回動操作により可動斜板145の傾斜角度が変更されて走行油圧モータ24の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うことが可能となっている。また、旋回油圧ポンプ26の可動斜板146に対する変速アーム26cが操向ハンドル19にリンク機構を介して連動連係されており、旋回用の油圧式無段変速装置28は該操向ハンドル19の回動により可動斜板146の傾斜角度が変更されて旋回油圧モータ27の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うよう構成されている。
【0027】
そして、操向ハンドル19を直進走行位置におくと、旋回油圧ポンプ26が中立位置となり、旋回油圧モータ27の駆動が停止して左右リングギヤ38が静止固定された状態となり、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23より圧油を吐出させて走行油圧モータ24を駆動すると、その回転はセンタギヤ46から左右のサンギヤ36L・36Rに同一回転数で伝達され、左右遊星歯車機構35L・35Rのプラネタリギヤ37L・37R、キャリヤ41L・41Rを介し、左右の駆動スプロケット34L・34Rが左右同回転方向の同一回転数で駆動されて、機体の前進直進走行が行われる。また、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23からの圧油吐出方向を反転させると、機体は後進状態で直進走行する。
【0028】
ここで、操向ハンドル19を右に切ると、旋回油圧ポンプ26は作動状態となって圧油を吐出し、該圧油を受けて旋回油圧モータ27が駆動される。該旋回油圧モータ27から出力された動力は旋回入力軸90からクラッチ装置Cを経て正逆転付与機構Sに至り、ここで同一回転数のまま二手に分けられ、その一方は前記遊星歯車機構35のリングギヤ38Lを正転させ、他方はリングギヤ38Rを逆転させる。正転するリングギヤ38Lの回転数はサンギヤ36Lによって正転している左キャリヤ41Lの回転数に加算される一方、逆転するリングギヤ38Rの回転数はサンギヤ36Rによって正転している右キャリヤ41Rの回転数に減算される。
これによって両駆動スプロケット34L・34Rの駆動状態を維持しつつ、駆動スプロケット34Lの回転数が駆動スプロケット34Rのそれよりも高くなって右方へ進路が変更されるのである。
【0029】
旋回油圧ポンプ26からの吐出油量は操向ハンドル19の切れ角度が大きくなるに従って増加し、これに応じて旋回油圧モータ27の回転数も無段に増加するので、左右の駆動スプロケット34・34に生じる相対回転差は次第に大きくなり、より小さな旋回半径で機体が旋回することとなる。また、操向ハンドル19を左に切ると、旋回油圧ポンプ26の圧油吐出方向が反転して旋回油圧モータ27の回転方向が逆になり、これによって最終的に、キャリヤ41Lの回転数が減算される一方、キャリヤ41Rの回転数が加算されて、駆動スプロケット34Rの回転数が駆動スプロケット34Lのそれよりも高くなって左方へ進路が変更されるのである。
【0030】
次に、本発明のブレーキ機構Bについて図13より説明する。
前述の通り、旋回用の油圧式無段変装置28から差動機構33へと動力を伝達する正逆転付与機構Sは、旋回入力軸90、クラッチ軸61等から構成されており、該旋回入力軸90には本発明に係る直進性を安定させるためのブレーキ機構Bが装備されている。
【0031】
ブレーキ機構Bは、一対の回転部材により構成されており、一方の回転部材は旋回入力軸90上で一体的に回転する固定ギヤ91であり、他方の回転部材は旋回入力軸90に外嵌され、伝動ギヤ91よりも歯数が少ない摩擦板で構成した制動ギヤ92である。そして、伝動ギヤ91は旋回用油圧モータ27からの動力を伝達する駆動ギヤ96aと噛み合っており、該伝動ギヤ91を介して、旋回入力軸90に動力が伝達されるように構成されている。
【0032】
また、同じく駆動ギヤ96aと噛み合う制動ギヤ92が図13で示すように旋回入力軸90に複数(本実施例においては2枚)外嵌されており、さらに複数(本実施例においては3枚)の相手側摩擦板93・93・93が前記制動ギヤ92を挟み込むようにして旋回入力軸90と一体回転するよう装着されている。また、蓋体22bに嵌入した旋回入力軸90の軸受内輪と押圧板94との間に複数(本実施例においては3枚)の皿バネ95が介在され、該相手側摩擦板93と制動ギヤ92は押圧板94を介して皿バネ95のバネ力により押圧されている。そして、この押圧力を受けることにより伝動ギヤ91、相手側摩擦板93、及び制動ギヤ92は常時圧接状態を保つ。
【0033】
このような構成において駆動ギヤ96から動力が伝達されると、伝動ギヤ91より旋回入力軸90に動力が伝達される一方、駆動ギヤ96aにより動力を伝達された制動ギヤ92が伝動ギヤ91とは異なる回転数(伝動ギヤ91よりわずかに回転数が多い。)で旋回入力軸90上で回転する。この時、伝動ギヤ91と制動ギヤ92間において相対回転差が発生し、複数の制動ギヤ92と相手側摩擦板93が挟み合うように重合していることにより、伝動ギヤ91、相手側摩擦板93及び制動ギヤ92の間に摩擦抵抗が発生し、該旋回入力軸90及びリングギヤ38L・38Rに対するブレーキ作用が発生するのである。
【0034】
以上の如く構成されたブレーキ機構Bは常時、伝動ギヤ91に摩擦力による抵抗を与えているが、伝動ギヤ91と制動ギヤ92の相対回転差がわずかであるため、操向ハンドル19の回転操作による旋回運転時においては旋回入力軸90の駆動にわずかな抵抗を与えるにすぎない。
そして、操向ハンドル19を中立位置付近に戻した直進走行中においては、クローラなど走行部において左右の回転負荷の間に差が生じた場合や、操向ハンドル19が微動して中立位置から左右にぶれた場合などにおいても、前記ブレーキ機構Bのブレーキ作用により旋回入力軸90が回転駆動することなく、左右のリングギヤ38L・38Rに対するブレーキ作用が発生し、機体の進路が左右に変化することなく、安定した直進走行が維持できるのである。また、走行停止中においても、左右走行部の支持荷重に変化が生じたり、操向ハンドル19が中立位置より変化した場合においても、機体が不測に旋回することなく、停止状態を維持できるのである。
【0035】
このように、本発明のブレーキ機構Bは従来の油圧作動式ブレーキ機構に比べてはるかに安いコストで車両直進性を維持するブレーキ機構を実現することができ、また伝動ギヤ91と制動ギヤ92のわずかな相対回転差による抵抗でブレーキ機構を構成しているので、構成部材の摩耗が最小限に抑えられ、発熱等による構成部材の焼き付きや破損も防止できるのである。
また、本実施例においては制動ギヤ92の歯数を伝動ギヤ91より1歯分少なくすることで相対回転差を発生させているが、逆に制動ギヤ92の歯数を伝動ギヤ91より多く(例えば1歯分多くする。)することにより、相対回転差を発生させてもよい。この場合においても同様に、摩擦抵抗によるブレーキ効果が得られ、安定した直進走行が実現できるのである。
【0036】
また、図示せぬハンドブレーキを操作することにより走行系伝動機構Rに制動力を付与させる駐車ブレーキ機構Tについて説明する。まず、ハンドブレーキに連動連結したブレーキアーム113を回動操作すると連動してカム軸110が回転する。そしてカム軸110の回転によりプレッシャープレート111が回動するとともに図7において左方向への推力が発生して、副変速従動軸45上に一体的に装着された摩擦板とミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる多板式摩擦ブレーキ112を押圧する。この押圧により副変速従動軸45に抵抗を与え駐車ブレーキ作用を発生させるのである。
【0037】
また、図7、図8及び図12に示すように走行油圧ポンプ23の入力軸23aの他端はケース外側に突出し、外側面に油圧式無段変速装置25・28に対する作動油補給用のチャージポンプCPが付設され、前記入力軸23aからの動力によって駆動され、また、旋回用油圧ポンプ26の入力軸26aの他端も、入力ケース部22a、蓋体22bを貫通して突出し、該蓋体22b外側面に刈取部の昇降用ポンプSPを付設し、動力を伝えている。
【0038】
前記チャージポンプCPと昇降用油圧ポンプSPとの各々の吸入側は図12に示すようにミッションケース22のケース部22R外側面に配設したサクションポート151・152に配管C1・C2を介して接続されている。図10で示すようにミッションケース22の内部には互いに仕切られた第一・第二油室142a・142bが形成され、該第一油室142aは、ミッションケース22内に収容した歯車などを潤滑する潤滑油が溜められた油溜めに開放されその内部にストレーナ141が横架されている。このストレーナ141にて濾過された油がミッションケース22のケース部22L外側面に取付けた外装式の油フィルタ140を通過して更に濾過され、第二油室142b内に貯められてサクションポート151・152より吸い込まれるようになっている。
【0039】
また、図11に示すように、ミッションケース22のケース部22L前方寄りの外側面には、前記刈取部8を対地昇降操作自在な昇降バルブユニットVUが配置されている。即ち、昇降バルブユニットVUのバルブケース150がケース部22Lの外側面に脱着自在に付設され、該バルブケース150の正面にはポンプポート153とシリンダポート155が、下面にはタンクポートが、上面には3位置切換式で電磁操作式の方向制御弁147が配設されている。昇降用ポンプSPから送られる作動油がポンプポート153に導入される。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、次のような効果を奏するものである。即ち、請求項1の如く、左右一対の遊星歯車機構の3要素のうち、第一要素の一対を、走行変速操作具により変速操作される変速装置に連動連結し、第二要素の一対を、ステアリング操作具により変速操作される油圧式無段変速装置に連動連結し、第三要素の一対を車軸に連動連結してなる作業車両のトランスミッションにおいて、前記油圧式無段変速装置の出力軸から前記第二要素の一対に至るまでの動力伝達経路の一軸上に、前記出力軸によって異なる回転速度で同方向に駆動される一対の回転部材を設けると共に、この両回転部材を回転軸心方向に常時圧接させるブレーキ機構を設けたので、従来の油圧作動式のブレーキに比べてはるかに安いコストでブレーキ機構を構成することができ、また常時摩擦抵抗を受けるブレーキ構造でありながら、わずかな相対回転差により発生する摩擦抵抗によってブレーキ機構を実現しているため、ブレーキ機構の耐久性が増し、発熱等により構成部材が焼き付きや損傷することを防止できるのである。
【0041】
また、前記回転部材の各々の外周に刻設した異なる歯数の歯部に対して、共通の駆動ギヤを噛み合わせてあるので、相対回転を発生させる入力系統が一本化でき、該回転部材の各々の歯数が1つだけ異なる場合においても、わずかな相対回転差を確実に発生させることが可能であり、また構成がシンプルでメンテナンス性に優れているのである。
【0042】
また、前記回転部材の一方は、前記駆動ギヤからの動力を前記遊星歯車機構の第二要素へ伝達する伝動ギヤに構成されて前記一軸と相対回転不能に固定される一方、前記回転部材の他方は、複数の摩擦板であって、前記一軸と一体回転するよう設けた複数の相手板と重合して前記伝動ギヤに圧接されるものに構成されたので、複数の相手板が複数の摩擦板を挟み込んで充分な圧接状態を保ち、わずかな相対回転差であっても、伝動ギヤに対する抵抗力を充分に伝達可能で、確実に前記一軸に対するブレーキ作用を発生させられるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】同じくコンバインの平面図である。
【図3】本コンバインの正面模式図。
【図4】トランスミッションのスケルトン図である。
【図5】トランスミッション全体の模式斜視図。
【図6】トランスミッションより無段変速装置を分離させた状態を示す模式斜視図。
【図7】走行用の油圧式無段変速装置を含むトランスミッションの断面展開図。
【図8】旋回用の油圧式無段変速装置を含むトランスミッションの断面展開図。
【図9】遊星歯車機構の断面図。
【図10】トランスミッションの左側面断面図。
【図11】トランスミッションの左側面図。
【図12】トランスミッションの右側面図。
【図13】ブレーキ機構を示すミッション装置の断面展開図。
【符号の説明】
25 走行用の油圧式無段変速装置
28 旋回用の油圧式無段変速装置
90 旋回入力軸
91 伝動ギヤ(固定部材)
92 制動ギヤ(固定部材)
93 相手板
94 押圧板
95 皿バネ
B ブレーキ機構
27 旋回油圧モータ
27a 出力軸
35L 遊星歯車機構
35R 遊星歯車機構
36L サンギヤ(第一要素)
36R サンギヤ(第一要素)
38L リングギヤ(第二要素)
38R リングギヤ(第二要素)
41L キャリア(第三要素)
41R キャリア(第三要素)
Claims (3)
- 左右一対の遊星歯車機構の3要素のうち、第一要素の一対を走行変速操作具により変速操作される変速装置に連動連結し、第二要素の一対をステアリング操作具により変速操作される油圧式無段変速装置に連動連結し、第三要素の一対を車軸に連動連結してなる作業車両のトランスミッションにおいて、前記油圧式無段変速装置の出力軸から前記第二要素の一対に至るまでの動力伝達経路の一軸上に、前記出力軸によって異なる回転速度で同方向に駆動する一対の回転部材を設けると共に、この両回転部材を回転軸心方向に常時圧接させるブレーキ機構を設けたことを特徴とする油圧駆動車両のトランスミッション。
- 前記回転部材の各々の外周に刻設した異なる歯数の歯部に対して、共通の駆動ギヤを噛み合わせてある請求項1記載の油圧駆動車両のトランスミッション。
- 前記回転部材の一方は、前記駆動ギヤからの動力を前記遊星歯車機構の第二要素へ伝達する伝動ギヤに構成されて前記一軸と相対回転不能に固定される一方、前記回転部材の他方は複数の摩擦板であって、前記一軸と一体回転するよう設けた複数の相手板と重合して前記伝動ギヤに圧接されるものに構成された請求項1記載又は請求項2記載の油圧駆動車両のトランスミッション。
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