JP4328127B2 - 作業機の車軸支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業機の車軸支持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンバイン等の作業機の車軸支持構造においては、ミッションケース内部や、該ミッションケースに連設するアクスルケース内部に設けられたベアリング支持部により車軸が支持される。かかる車軸支持部の構造として、例えば、走行車軸の支持部において、特許文献1に示すようにアクスルケース内部のオイルを潤滑油として供給する構造が提案されている。具体的には、アクスルケースの両端部をシーリングしてオイル溜り室を形成させ、該オイル溜り室内のオイルを外端部の軸受けに対する潤滑オイルとして供給するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
このように、車軸支持構造においては、走行車軸を支持するだけでなく、前記アクスルケース内部においてオイルを貯油する作用をも奏するのである。通常では、アクスルケースの外端部にオイルシールが設けられており、アクスルケース内部にオイルを貯油可能とし、また該オイルが外部に漏洩しないようにしている。
【0004】
一方、上述のようにアクスルケースの外端部にオイルシールを配設することで、外部からの泥や砂等がアクスルケース内に混入することも防ぐことができる。しかし、コンバイン等の作業機においては、地表面がぬかるんだ作業場等での作業が想定される。そのため、アクスルケースの外端部にオイルシールを配設しただけでは、ミッションケース内にまで泥等が混入することを防ぐには十分であるとはいえない。
【0005】
このような観点から、特許文献2に示すようなコンバインのトランスミッション構造が提案されている。具体的には、乗用田植機において、サスペンション機構を通じてアクスルケース内に泥等が浸入した場合においても、ミッションケースとアクスルケースとが接合している接合部との間にシール材を介設して、ミッションケースにまで当該泥等が侵入しないようにしている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
実開平5−30601公報
【特許文献2】
特開2002−274205公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記シール材が摩耗や劣化した場合には、これを逐一取り替える必要がある。しかし、従来の作業機の車軸支持構造においては、該シール材を交換・取付けする際や、その他のミッションケース内のメンテナンスを行う際などに、アクスルケースや車軸をミッションケースから取り外すと、ミッションケースからオイルが漏れ出してしまう。そのため、当該ミッションケース下部に設けられたオイルドレンから、ミッションケース内のオイルを一度抜き取り、さらに、組み立ての際にはオイルをミッションケース内に再注入しなければならず、煩わしいという課題があった。
【0008】
特に、前記特許文献2記載のトランスミッション構造においては、サスペンション機構の上下摺動による泥等の浸入を防ぐために、シール材をミッションケースとアクスルケースとの接合部に介設し、泥等に対するシール効果を高めるものである。しかしながら、ミッションケースの下部が完全に密閉されているわけではないので、アクスルケースや車軸が取り外されたときに、ミッションケース内部からオイルが漏出してしまうという課題があったのである。
【0009】
そこで、本発明においては、作業機の車軸支持構造に関し、前記従来の課題を解決するもので、ミッションケースからアクスルケースや車軸を取り外してもオイルが漏れ出すことがない構造を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
ミッションケース(22)に、左右のアクスルケース(27)を連設して、該ミッションケース(22)と左右のアクスルケース(27)により、左右の車軸(26)を支持し、該ミッションケース(22)内の左右の車軸(26)の一端に動力伝動体を設ける作業機の車軸支持構造において、該動力伝動体は、左右の差動機構(25)のキャリア(28)であり、該差動機構(25)は、左右一対の遊星歯車機構により構成し、前記ミッションケース(22)の下方の伝動軸(84)に、前記左右の車軸(26)にそれぞれ動力を伝達する左右の出力ギヤ(86)を固設し、該出力ギヤ(86)は前記差動機構(25)のリングギア(29)と噛合し、該伝動軸(84)の下方の車軸(26)と同軸線上にサンギア軸(90)を横設し、該サンギア軸(90)にサンギア(87)を支持し、該サンギア(87)の外周には、複数のプラネタリギア(88)を、該サンギア(87)と噛合可能に該キャリア(28)により枢支し、該プラネタリギア(88)は同時に、前記リングギア(29)に一体形成されたインターナルギア(89)と噛合し、該リングギア(29)は、ベアリング部において前記キャリア(28)に軸受支持され、前記サンギア軸(90)には、左右略中央に左右の逆転ギア(91)を支持し、該逆転ギア(91)は、左右の差動機構(25)のサンギア(87)と常時噛合し、該ミッションケース(22)内の正逆転付与機構より、該逆転ギア(91)に動力が伝達され、前記アクスルケース(27)の外端部と車軸(26)との間に、外側のシール材(39)を配設し、前記ミッションケース(22)の外端部とキャリア(28)の外周との間に、内側のシール材(40)を配設し、該キャリア(28)と車軸(26)との連結部である車軸嵌合部(28a)に、前記車軸(26)を引き抜き可能に嵌合し、該キャリア(28)と車軸(26)への連結部を密閉すべく、前記キャリア(28)の車軸嵌合部(28a)の内側に、キャップ状のシール材(41)を装着し、左右の車軸(26・26)の内側端部を、前記シール材(41)によりシールしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明に係る車軸支持構造を備えたコンバインの全体左側面図、図2はトランスミッションの正面断面図である。また、図3は車軸支持構造の一部断面展開図、図4は別構成例に係る車軸支持構造の一部断面展開図、図5は同じく別構成例に係る車軸支持構造の一部断面展開図である。
【0014】
まず、本実施例に係るコンバインの全体構成について、以下に説明する。図1に示すように、当該コンバインにおいては、トラックフレーム1の左右にクローラ式走行装置2が構成され、機台3が架設されている。該機台3の前端には、引起し・刈取部8が昇降可能に配設されている。そして、該引起し・刈取部8の先端において分草された穀稈が、該引起し・刈取部8の下部に配設された刈刃9にて株元が刈り取られる。このようにして刈り取られた穀稈は、穀稈搬送機構10にてコンバイン後部へ搬送され、該穀稈搬送機構10の上端部から株元がフィードチェーン5に受け継がれ、脱穀部4内に搬送される。
【0015】
前記フィードチェーン5後端には、排藁チェーン14が配設されている。該排藁チェーン14後部下方には、排藁処理部13が形成されている。前記脱穀部4側部には該グレンタンク15が配設され、該グレンタンク15には、図示せぬ楊殻筒を介して前記脱穀部4からの選別後の精粒が搬入される。該グレンタンク15前部には運転室18が配設され、該運転室18内には丸型の操向ハンドル19と運転席20とが配置されている。また、該グレンタンク15後部には排出オーガ17の縦オーガ17aが立設され、排出オーガ17先端よりトラック等へ、グレンタンク15内の穀粒を排出できるようにしている。
【0016】
前記トラックフレーム1の前方上部にはエンジン21が配設されている。本実施例におけるコンバインにおいては、静油圧式無段変速装置(以下「HST」と略記する)、すなわち、図示せぬ走行系の走行用HSTと旋回系の旋回用HSTとからなるトランスミッションが配設されている。該HSTはHSTケース23内に形成され、該HSTケース23がミッションケース22の上部側面に付設され、該エンジン21からの動力で走行駆動されるように構成されている。
【0017】
そこで、本実施例におけるエンジン21から車軸26への動力の伝達機構を以下に詳説する。まず、ミッションケース22内の構成について説明する。図2および図3において、エンジンからの動力は、まず伝動軸62にスプライン嵌合されたベベルギア63に伝達される。該伝動軸62には、ギヤ64がスプライン嵌合されており、該ギヤ64はカウンタ軸66に嵌合されたギヤ67と常時噛合されている。カウンタ軸66にはギヤ68が嵌合されており、該ギヤ68は後述する走行用HSTの入力軸69上の入力ギヤ70と常時噛合されている。なお、ミッションケース22の側方に突出した前記伝動軸62の突出部には、エンジンラジエータおよび冷却用のファン駆動用のプーリ65が固設されている。
【0018】
ミッションケース22の上方部には、HSTケース23が付設されている。該HSTケース23内には、図示せぬ走行用HSTの走行油圧ポンプおよび走行油圧モータが上下に並設されており、該走行油圧ポンプの入力軸69および走行油圧モータの出力軸71が、ミッションケース22の左右軸方向に軸支され、互いに上下方向に並列されている。なお、該HSTケース23内には、図示せぬ旋回用HSTの旋回油圧ポンプおよび旋回油圧モータが上下に並設されており、該旋回油圧ポンプの入力軸および旋回油圧モータの出力軸が機体左右軸方向に軸支され、互いに上下方向に並列されている。また、刈取出力軸61が、該HSTケース23の側方に突出されており、該刈取出力軸61を介して前記刈取部8が駆動される。このように、走行用HSTと旋回用HSTとが単一のHSTケース23内に一体的に構成されているため、HST自体の組み立ておよび該HSTケース23のミッションケース22への脱着が容易になり、メンテナンス性が向上しているのである。
【0019】
前記走行用HSTの入力軸69の下方には、上述のように走行用HSTの出力軸71が横設され、副変速駆動機構60が構成されている。すなわち、該出力軸71にはギヤ72が嵌合され、該ギヤ72には低速走行用外歯72aと高速走行用外歯72bとがそれぞれ形成されている。前記出力軸71の下方には副変速駆動軸73が横設され、該副変速駆動軸73にはギヤ74とギヤ75とがそれぞれ遊嵌されている。また、該ギヤ74およびギヤ75は、前記ギヤ72の低速走行用外歯72aおよび高速走行用外歯72bに常時噛合されている。前記副変速駆動軸73には伝動ギヤ77が嵌合され、該伝動ギヤ77は、副変速駆動軸73の下方に横設された副変速従動軸78上のギヤ79と常時噛合されている。
【0020】
また、該副変速駆動軸73には、前記ギヤ74とギヤ75とにそれぞれ噛合可能なクラッチスライダ76が、左右軸方向に摺動可能に、スプライン嵌合されている。該クラッチスライダ76には、図示せぬシフトフォークが外装されている。該シフトフォークは、前記運転席20近傍に配設された一本の図示せぬ副変速レバーに連結連動されており、該副変速レバーを操作することによりクラッチスライダ76が摺動される。このように、副変速駆動機構60においては、該クラッチスライダ76が、前記ギヤ74およびギヤ75のいずれかと噛合するように構成することで、副変速従動軸78に二段階の変速回転が得られるのである。
【0021】
なお、該副変速従動軸78の左端部には、駐車ブレーキ機構81が設けられている。該駐車ブレーキ機構81は、図示せぬハンドブレーキにより制動力の操作が可能とされている。該駐車ブレーキ機構81においては、ハンドブレーキに連結連動した図示せぬブレーキアーム・カム軸を介して、プレッシャープレート82が回動される。そして、図2における左方向への推力が発生し、該プレッシャープレート82により、副変速従動軸78上に一体的に装着された摩擦板と、ミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる多板式摩擦ブレーキ83が押圧される。この押圧により、副変速従動軸78に抵抗を与え、駐車ブレーキ作用を発生させるようにしているのである。
【0022】
前記副変速従動軸78の下方には、伝動軸84が横設されている。該伝動軸84には伝動ギヤ85が嵌合され、該伝動ギヤ85は、前記副変速従動軸78に嵌合された変速駆動出力ギヤ80と常時噛合されている。また、該伝動軸84には、左右の車軸26にそれぞれ動力を伝達する出力ギヤ86が固設され、該出力ギヤ86が、差動機構25のリングギア29と噛合されている。
【0023】
該差動機構25は、左右一対の遊星歯車機構により構成されている。具体的には、まず、前記伝動軸84の下方であって、かつ、車軸26と同軸線上にサンギア軸90が横設され、該サンギア軸90にサンギア87が固設されている。該サンギア87の外周には、複数のプラネタリギア88・88・・・が、サンギア87と噛合可能にキャリア28により枢支され、同時に、前記リングギア29に一体形成されたインターナルギア89と噛合されている。リングギア29は、ベアリング部においてキャリア28に支持されている。
【0024】
前記キャリア28は車軸26への動力伝動体となり、軸心部を外方向延出して車軸26の外周部にボス部を形成し、ミッションケース22に形成された支持部22aに挿入支持され、車軸支持部であるベアリング支持部31により、左右軸中心に回転可能に内嵌支持されている。該キャリア28には、前記インターナルギア29の位置固定用の止め輪32が、該インターナルギア89のベアリング部と前記ベアリング支持部31との間に嵌装されている。そして、該キャリア28の車軸連結部である車軸嵌合部28aに、前記車軸26が引き抜き可能に嵌合されている。
【0025】
また、前記サンギア軸90には、左右略中央に逆転ギア91が固設され、該逆転ギア91は、それぞれ左右の差動機構25の前記サンギア87と常時噛合されている。そして、ミッションケース22内には図示せぬ正逆転付与機構が構成されており、エンジン21からの動力は、前記HSTケース23内の旋回用HSTの旋回用出力軸から正逆転付与機構を経て、該逆転ギア91にまで伝達されるように構成されている。つまり、逆転ギア91が左右一対の遊星歯車機構の構成するサンギア87に噛合されているため、旋回用HSTにより正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われると、当該制御は該逆転ギア91を介して、それぞれ左右の差動機構25に作用されるのである。
【0026】
このように、エンジン21からの動力は、前記走行用HSTおよび副変速駆動機構60を介して差動機構25に伝達される。また、エンジン21からの駆動力は、旋回用HSTにも伝達され、該旋回用HSTにより正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力がミッションケース22内の図示せぬ正逆転付与機構を介して差動機構25に伝達される。したがって、該差動機構25に連動連結された車軸26を介して、クローラ式走行装置2の駆動スプロケット24に駆動力を常時伝達することにより前後直進走行を可能とし、また、駆動スプロケット24に対する回転数の相対的な増減制御により旋回を可能としているのである。
【0027】
ここで、本発明に係る車軸支持構造について以下に説明する。図3に示すように、ミッションケース22の下部において、左右両側部には、アクスルケース27がボルト34により固設されている。前記車軸26の両端部は、車軸支持部であるベアリング支持部35を介して該アクスルケース27の外端部に支持されている。該ベアリング支持部35は、車軸26に嵌装され、該車軸26の同軸上に形成されたカラー36とベアリング支持部35の位置固定用の止め輪37とによりアクスルケース27の外端部に位置固定されている。そして、前記車軸26の一側端には、ナット38により駆動スプロケット24が固設されている。このように、前記キャリア28に嵌合された前記車軸26は、ミッションケース22のベアリング支持部31とアクスルケースのベアリング支持部35とにより、水平軸方向に支持されているのである。なお、該車軸26の内部には、このような車軸26の嵌合部に混入したエアを、該嵌合部から放出させるエア抜き通路26aが形成されている。
【0028】
アクスルケース27の外端部においては、車軸26において前記ベアリング支持部35よりも外側で、かつ、該車軸26とアクスルケース27との隙間を完全に密閉するように、シール材としてオイルシール39が介装されている。本実施例に係るコンバインは、地表面がぬかるんだ作業場等においても実施されるものであり、該オイルシール39を配設することで、前記アクスルケース27と駆動スプロケット24との当接部から、アクスルケース27内に泥や水等が混入するのを防ぐことができるのである。
【0029】
前記アクスルケース27内には、潤滑オイルとして供給されるオイルが貯油されている。該オイルは、アクスルケース27の一側面部に配設されたオイル穴42により供給される。アクスルケース27内にオイルを入れた場合には、車軸スプライン部の摩耗を防止することができ、外端部のオイルシール39が破損した場合であっても、該アクスルケース27外部からの発見が容易となるのである。
【0030】
前記ミッションケース22内部においては、該ミッションケース下部を油密的に密閉する密閉手段として、該ミッションケース22とアクスルケース27との接合部近傍、具体的には、前記ベアリング支持部31よりも外側であって、かつ、該ミッションケース22と前記キャリア28との隙間を完全に密閉するようにシール材としてオイルシール40が介装されている。また、前記キャリア28の車軸連結部である車軸嵌合部28aの内部において、キャップ状のシール材41が該車軸嵌合部28aの内側に装着されて、該シール材41の外周と車軸嵌合部28aの内側との間にOリング等を介装している。
【0031】
そして、前記キャリア28のミッションケース22内側からは、前記サンギア軸90が介挿されており、該サンギア軸90には先述のように、サンギア87、逆転ギア91およびベアリング部92が介装されている。該サンギア軸90は左右のキャリア28を狭設するように形成されている。つまり、ミッションケース22から、前記サンギア軸90に配設されるベアリングを介してオイルが漏出することがない。したがって、前記オイルシール39等を取り替え、車軸支持部におけるメンテナンスを行う際に、前記車軸26やアクスルケース27を取り外してもオイルがミッションケース22内部から漏出することがない。ミッションケース22内のオイルを抜き取ることなく、前記車軸26やアクスルケース27の着脱を行うことができるのである。
【0032】
上述の車軸支持構造に加えて、オイルシール40およびシール材41を配設することで、ミッションケース22の下端部が外部に対して密油的に密閉した状態となるのである。したがって、該ミッションケース22と前記キャリア28との隙間、および、前記車軸嵌合部28aを通じて、オイルがミッションケース22の外部に漏出することがないのである。
【0033】
また、前記オイルシール39では、該アクスルケース27内への泥等の混入を、完全には防ぐことができない。当該泥等がミッションケース22内にまで混入した場合には、ギア等の摩耗や破損につながる。本実施例においては、前記ミッションケース22の車軸支持部が、前記オイルシール40およびシール材41により密閉されているため、事態に応じてアクスルケース27内に該泥等が混入した場合であっても、ミッションケース22内にまで泥等が混入することを防ぐことができるのである。
【0034】
なお、本実施例におけるエンジン21の動力伝達機構において、トランスミッションは上記のHSTに限定されるものではなく、パワーシフト、および、摺動歯車式や常時噛み合い式、Vベルト式等のトランスミッションでもよい。さらに、後述するように、油圧式トランスミッションと油圧式操向クラッチとが配設されたものであってもよい。
【0035】
次に、本発明に係る車軸支持構造の、別実施例について、以下に説明する。上述したように、本発明は、旋回形式が左右一対の遊星歯車機構による差動機構に限定されず、サイドクラッチ・ブレーキのトランスミッションを採用する作業機の車軸支持構造においても適用可能である。図4および図5に示したように、ミッションケース22内に前方方向の中心部位に支持される、図示せぬ油圧式変速機構を介して、前記エンジン21の動力が従動ギア45に伝達される。該従動ギア45は、デフ機構46の操行軸47と同軸上に固設されている。また、該操行軸47には、サイドギア48とサイドブレーキ機構49とが配設され、該サイドギア48は後述する最終減速ギア50と噛合可能とされている。
【0036】
該最終減速ギア50は、ミッションケース22に形成された支持部22aにおいて、車軸支持部としてベアリング支持部51により、該ミッションケース22の左右軸中心に回転可能に内嵌支持されている。該最終減速ギア50の位置固定用の止め輪52が、該最終減速ギア50のベアリング支持部51を挟んで嵌装されている。また、車軸連結部としての車軸嵌合部50aに、前記車軸26が引き抜き可能に嵌合されている。
【0037】
そして、前記アクスルケース27の外端部においては、ミッションケース22の下部を油密的に密閉する密閉手段として、車軸26において前記ベアリング支持部35よりも外側で、かつ、該車軸26とアクスルケース27との隙間を完全に密閉するようにオイルシール39が介装されている。一方、前記ミッションケース22内部においては、前記ベアリング支持部51よりも外側であって、かつ、該ミッションケース22と前記最終減速ギア50との隙間を完全に密閉するようにオイルシール53が介装されている。また、該最終減速ギア50の車軸嵌合部50aの内部において、車軸26の内側端より内側に、シール材41が該車軸嵌合部50aの内側を密閉するように装着されている。該シール材41を嵌設することによって、ミッションケース22内のオイルが該貫通孔50bを介して、外部に漏出しないようにしているのである。
【0038】
さらに、図4に示した構成例においては、ミッションケース22の下部を油密的に密閉する密閉手段として、前記最終減速ギア50における車軸26の挿通方向と反対方向の貫通孔50bに前記シール材41を嵌設し、さらに、その外側に蓋体55で固定することもできる。該蓋体55は鉄板製とし、最終減速ギア50に嵌設された蓋体55の外周をビーム溶接等して、該蓋体55と最終減速ギア50とを一体としてもよい。かかる場合には、ミッションケース3内部下方の密油性をより向上させることができる。そして、前記アクスルケース27内に泥等が混入した場合であっても、前記最終減速ギア50の貫通孔50bを介して、ミッションケース22内にまで該泥等が浸入するのを防ぐこともできるのである。
【0039】
また、図5に示した構成例においては、左右の前記最終減速ギア50・50間には、内径が前記貫通孔50bの内径以上となるように筒状に形成されたシール材56が、前記貫通孔50bを密閉するように狭設されている。最終減速ギア50には、貫通孔50bからミッションケース22の内部方向に突出するようにシール材57が嵌合されており、該シール材57の突出部と前記シール材56が嵌装されているのである。このような構成とすることで、ミッションケース22内のオイルが該貫通孔50b(車軸連結部)を介して、外部に漏出しないようにしているのである。さらに、前記デフ機構46を介して、左右の車軸の回転速度に差が生じた場合であっても、前記貫通孔50bを密閉した状態を保持できるのである。
【0040】
なお、本実例にかかる作業機の車軸支持構造において、前記蓋体55およびシール材57を前記最終減速ギア50と一体となるように形成してもよい。具体的には、スプラインボスが形成される車軸連結部を、軸孔を設けない最終減速ギア50の側面に直接ビーム溶接させて、該車軸連結部を油密的に密閉してもよい。
【0041】
また、上述の実施の形態において、ミッションケース22内のベアリング支持部31・51およびアクスルケース27のベアリング支持部35において、シール付きベアリングを用いてもよい。該シール付きベアリングを用いた場合には、前記ベアリング支持部35のベアリング部においては潤滑の必要がなく、また、前記アクスルケース27内にオイルを供給する代わりにグリース油で済ませることで、該アクスルケース27の軽量化を図ることができる点で特に有効である。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
ミッションケース(22)に、左右のアクスルケース(27)を連設して、該ミッションケース(22)と左右のアクスルケース(27)により、左右の車軸(26)を支持し、該ミッションケース(22)内の左右の車軸(26)の一端に動力伝動体を設ける作業機の車軸支持構造において、該動力伝動体は、左右の差動機構(25)のキャリア(28)であり、該差動機構(25)は、左右一対の遊星歯車機構により構成し、前記ミッションケース(22)の下方の伝動軸(84)に、前記左右の車軸(26)にそれぞれ動力を伝達する左右の出力ギヤ(86)を固設し、該出力ギヤ(86)は前記差動機構(25)のリングギア(29)と噛合し、該伝動軸(84)の下方の車軸(26)と同軸線上にサンギア軸(90)を横設し、該サンギア軸(90)にサンギア(87)を支持し、該サンギア(87)の外周には、複数のプラネタリギア(88)を、該サンギア(87)と噛合可能に該キャリア(28)により枢支し、該プラネタリギア(88)は同時に、前記リングギア(29)に一体形成されたインターナルギア(89)と噛合し、該リングギア(29)は、ベアリング部において前記キャリア(28)に軸受支持され、前記サンギア軸(90)には、左右略中央に左右の逆転ギア(91)を支持し、該逆転ギア(91)は、左右の差動機構(25)のサンギア(87)と常時噛合し、該ミッションケース(22)内の正逆転付与機構より、該逆転ギア(91)に動力が伝達され、前記アクスルケース(27)の外端部と車軸(26)との間に、外側のシール材(39)を配設し、前記ミッションケース(22)の外端部とキャリア(28)の外周との間に、内側のシール材(40)を配設したので、前記オイルシールを取り替えたり、車軸支持部におけるメンテナンスを行ったりする際に、前記車軸やアクスルケースを取り外してもオイルがミッションケース内部から漏出することがない。該メンテナンス作業において、ミッションケース内のオイルを抜き取る必要がなく、煩わしくない。また、事態に応じてアクスルケース内に該泥等が混入した場合であっても、ミッションケース内にまで泥等が混入することを防ぐことができる。
【0043】
また、該キャリア(28)と車軸(26)との連結部である車軸嵌合部(28a)に、前記車軸(26)を引き抜き可能に嵌合し、該キャリア(28)と車軸(26)への連結部を密閉すべく、前記キャリア(28)の車軸嵌合部(28a)の内側に、キャップ状のシール材(41)を装着し、左右の車軸(26・26)の内側端部を、前記シール材(41)によりシールしたので、差動機構等において、左右の車軸間に隔たりがある場合であっても、ミッションケース内部からのオイルが漏出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車軸支持構造を備えたコンバインの全体左側面図。
【図2】 トランスミッションの断面正面図。
【図3】 車軸支持構造の一部断面展開図。
【図4】 別構成例に係る車軸支持構造の一部断面展開図。
【図5】 同じく別構成例に係る車軸支持構造の一部断面。
【符号の説明】
22 ミッションケース
26 車軸
27 アクスルケース
28 キャリア
28a 車軸嵌合部
31 ベアリング支持部
35 ベアリング支持部
39 オイルシール
40 オイルシール
41、56、57 シール材
Claims (1)
- ミッションケース(22)に、左右のアクスルケース(27)を連設して、該ミッションケース(22)と左右のアクスルケース(27)により、左右の車軸(26)を支持し、該ミッションケース(22)内の左右の車軸(26)の一端に動力伝動体を設ける作業機の車軸支持構造において、該動力伝動体は、左右の差動機構(25)のキャリア(28)であり、該差動機構(25)は、左右一対の遊星歯車機構により構成し、前記ミッションケース(22)の下方の伝動軸(84)に、前記左右の車軸(26)にそれぞれ動力を伝達する左右の出力ギヤ(86)を固設し、該出力ギヤ(86)は前記差動機構(25)のリングギア(29)と噛合し、該伝動軸(84)の下方の車軸(26)と同軸線上にサンギア軸(90)を横設し、該サンギア軸(90)にサンギア(87)を支持し、該サンギア(87)の外周には、複数のプラネタリギア(88)を、該サンギア(87)と噛合可能に該キャリア(28)により枢支し、該プラネタリギア(88)は同時に、前記リングギア(29)に一体形成されたインターナルギア(89)と噛合し、該リングギア(29)は、ベアリング部において前記キャリア(28)に軸受支持され、前記サンギア軸(90)には、左右略中央に左右の逆転ギア(91)を支持し、該逆転ギア(91)は、左右の差動機構(25)のサンギア(87)と常時噛合し、該ミッションケース(22)内の正逆転付与機構より、該逆転ギア(91)に動力が伝達され、前記アクスルケース(27)の外端部と車軸(26)との間に、外側のシール材(39)を配設し、前記ミッションケース(22)の外端部とキャリア(28)の外周との間に、内側のシール材(40)を配設し、該キャリア(28)と車軸(26)との連結部である車軸嵌合部(28a)に、前記車軸(26)を引き抜き可能に嵌合し、該キャリア(28)と車軸(26)への連結部を密閉すべく、前記キャリア(28)の車軸嵌合部(28a)の内側に、キャップ状のシール材(41)を装着し、左右の車軸(26・26)の内側端部を、前記シール材(41)によりシールしたことを特徴とする作業機の車軸支持構造。
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