JP4176913B2 - 作業車のトランスミッション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行駆動用のHST装置及び旋回駆動用のHST装置を備えた作業車のトランスミッションの技術に関する。詳細には、上記トランスミッションにおいて、HST装置のみを容量の異なるものに容易に交換可能とするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車速を変更する走行駆動用のHST装置及びステアリングのための旋回駆動用のHST装置の二者を、ミッションケースの側壁に並置して、コンパクトな構成とした作業車のトランスミッションの技術は公知となっている。例えば、特開平10−54451号の技術である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来のトランスミッションは、HST装置を構成する油圧ポンプのポンプ軸、及び、油圧モータのモータ軸の両者がミッションケース内に挿入されて、ミッションケース内のドライブトレーンと連結される構成となっていた。従って、HSTの容量を変更する場合は、HSTを構成する油圧ポンプ及びモータの軸の配置(軸間距離)が変更されるのが通例であり、従って、一つのミッションケースを、容量の異なるHST装置と組み合わせてトランスミッションとするのは困難であった。従って、一つのミッションケースがある容量のHST装置には適用できても、容量の異なるHST装置には適用できないということとなり、HSTの容量が異なる度に新しいミッションケースを設計製造する必要が生じ、コストや工数の増大をもたらしていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、差動的に相互結合された左右の車軸(40L・40R)の伝動経路中に二つの無段変速装置(25・28)を備えさせ、そのうちの第一無段変速装置(25)を作動させたときに左右の車軸を同方向に駆動して機体を直進させ、他の第二無段変速装置(28)を作動させたときに左右の車軸(40L・40R)に相対回転差を与えて機体を旋回させるように構成された作業車のトランスミッションにおいて、前記二つの無段変速装置(25・28)の各々を、前記車軸(40L・40R)を支持するミッションケース(22)の対向する二つの面の各々に配置し、該両無段変速装置(25・28)の出力部が収納されるハウジング部分のみを、該ミッションケース(22)の両側に取付固定する一方、前記両無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が収納されるハウジング部分は、前記ミッションケース(22)に取付けない部分とし、更に、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力部の回転軸線を一致させ、該2本の入力軸(23a・26a)の各々を突き合わせ状に延伸させて連結部材(95)にて相互連結し、前記ミッションケース(22)の上部に段差部(K)を設け、該段差部(K)の左右面に、前記二つの無段変速装置(25・28)のハウジングを取り付けるHST取付面(N1・N2)の各々を形成し、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が配置される、ハウジング部分間にパイプメンバを油密的に架設し、前記入力軸(23a・26a)及び連結部材(95)を該パイプメンバ内に位置させたものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載の作業車のトランスミッションにおいて、前記パイプメンバは、二つの無段変速装置のうち一の無段変速装置の入力部が収納されるハウジング部分に固設した第一パイプ半部(98)と、他の無段変速装置のハウジングに固設した第二パイプ半部(99)とで構成し、その各々の自由端側を、油密状態を維持しつつ軸方向に摺動変位可能に相互嵌合させたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面模式図である。
【0009】
まず、図1・図2より、本発明のコンバインの全体構成について説明する。即ち、このコンバインは、トラックフレーム1の左右にクローラ式走行装置2L・2Rを支持した構成であり、3は前記トラックフレーム1に架設する機台、4はフィードチェーン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀機である脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10等を備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダである。13は排藁チェーン14の終端を臨ませる排藁処理部、15は揚穀筒16を介して脱穀部4からの穀粒を搬入する穀物タンク、17は前記穀物タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、18は丸型の操向ハンドル19を支架するハンドルポスト、68は主変速レバー、20は運転席であり、また、21は、機体左右方向に沿う出力軸を有する原動機たるエンジンであり、コンバインの前方より連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0010】
また、このコンバインには二つの静油圧式無段変速装置(以下「HST」)、即ち、第一無段変速装置である走行系の走行駆動HST25、及び、第二無段変速装置であるステアリング系のステアリングHST28を具備しており、それぞれのHST25・28はエンジン21より駆動力を得るよう構成されている。そして、エンジン21により駆動力を得た走行駆動HST25により、正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が走行系ドライブトレーンPを介して差動機構33に伝達される。一方、エンジン21により駆動力を得たステアリングHST28により、正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力がステアリング系ドライブトレーンS、正逆転付与機構Rを介して差動機構33に伝達される。
【0011】
以上構成とすることにより、差動機構33に連動連結された左右のクローラ式走行装置2L・2Rの駆動スプロケット34L・34Rに駆動力を常時伝達することにより前後直進走行を可能としており、また、左右駆動スプロケット34L・34Rに対する回転数の相対的な増減制御により旋回を可能としているのである。以下において、この走行及び旋回の機構について詳述する。
【0012】
まず、トランスミッションの構成について説明する。図4はトランスミッションの走行系及びステアリング系のドライブトレーンのスケルトン図である。図5はトランスミッションの走行系ドライブトレーンの構成を表した正面断面展開図、図6はトランスミッションのステアリング系ドライブトレーンの構成を表した正面断面展開図である。図7は無段変速部の構成を表した正面一部断面拡大図、図8はPTO系ドライブトレーンの構成を表した平面断面展開図である。また、図9はトランスミッションの各ドライブトレーンのギアの噛み合いを示した側面断面図である。図10はクラッチフォークシャフトの構成を示した側面断面拡大図、図11はクラッチスライダの摺動操作機構を示した後面断面展開図、図12は同じく側面断面図である。
【0013】
即ち、このトランスミッションMは、前記クローラ式走行装置2L・2Rを駆動するための走行系ドライブトレーンP、ステアリング系ドライブトレーンS、正逆転付与機構R、差動機構33等をミッションケース22内に配置し、該ミッションケース22上部左右側面には、上記二つのHST25・28を有する無段変速部Hを設ける構成としている。上記ミッションケース22は左右の半部22L・22Rを接合して構成され(図5等)、その内部には一定量の潤滑油が注入され、内部に配置された上記の各機構を自然潤滑することとしている。そして、この潤滑油は、二つのHST25・28及び刈取昇降用油圧シリンダ11の作動油をも兼ねることとしている。
【0014】
また、上記無段変速部Hは、一組の走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる主変速機構である、走行駆動HST25と、一組の旋回油圧ポンプ26及び旋回油圧モータ27からなる旋回機構である、ステアリングHST28とからなる。以下、この無段変速部Hについて説明する。
【0015】
即ち、図5に示すように、前記走行用の走行駆動HST25は、ケース25a及びセンタセクション25bよりなるハウジング内に、上から、入力部である走行油圧ポンプ23、出力部である走行油圧モータ24の順に並べて配設され、該走行油圧ポンプ23のポンプ軸23a及び、該走行油圧モータ24のモータ軸24aの各々が互いに平行となるよう機体左右方向に軸支され、走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24の二者が、センタセクション25bを介して流体的に結合される構成としている。
【0016】
ミッションケース22の上部(図5・図7に示す高さEだけの部分)は、左右幅を狭くした形状として段差部Kとしており、該段差部Kの上下方向の高さEは上記走行駆動HST25のハウジングの上下高さの略半分として、その左右側面にはHST取付面N1、N2を形成している。そして、走行駆動HST25のハウジングの略下半分(即ち、出力部たる走行油圧モータ24が収納される部分)のみが、上記HST取付面N1に取付固定され、略上半分(即ち、入力部たる走行油圧ポンプ23が収納される部分)はミッションケース22に取付けない構成としている。また、走行駆動HST25は、そのケース25aが右側、センタセクション25bが中央側(ミッションケース22側)となるようにして、上記HST取付面N1に該センタセクション25bを取付固定するようにしている。
【0017】
尚、本実施例においては、ミッションケース22の上部左側のみを直角に欠切した形状として、段差部Kを構成しているが、左右幅を狭くする構成であればこれに限るものではなく、例えばミッションケース22上部右側のみを欠切して段差部Kを構成してもよいし、あるいはミッションケース22上部の左右両側を欠切した凸(突)形状としてもよい。
【0018】
また、前記旋回用のステアリングHST28は、ケース28a及びセンタセクション28bよりなるハウジング内に、上から、入力部である旋回油圧ポンプ26、出力部である旋回油圧モータ27の順に並べて配設され、該旋回油圧ポンプ26のポンプ軸26a及び、該旋回油圧モータ27のモータ軸27aの各々が互いに平行となるよう機体左右方向に軸支され、旋回油圧ポンプ26及び旋回油圧モータ27の二者が、センタセクション28bを介して流体的に接合される構成としている。そして、ステアリングHST28のハウジングの略下半分(即ち、出力部たる旋回油圧モータ27が収納される部分)のみが、上記HST取付面N2に取付固定され、略上半分(即ち、入力部たる旋回油圧ポンプ26が収納される部分)はミッションケース22に固定(接触)されない構成としている。また、ステアリングHST28は、そのケース28aが右側、センタセクション28bが中央側(ミッションケース22側)となるようにして、上記HST取付面N2に該センタセクション28bを取付固定するようにしている。
【0019】
次に、両HST25・28のポンプ軸及びモータ軸の構成を説明する。即ち、ステアリングHST28の入力軸である、旋回油圧ポンプ26のポンプ軸26aは、ステアリングHST28のケース28aから左側へ突出して、該突出部分に入力プーリー26bを固定しており、エンジン21の出力軸21aに固設された出力プーリー21bとベルト29を介して連動連結されて(図3・図4)、該ポンプ軸26aを入力軸と兼用している。一方、走行駆動HST25の入力軸である、走行油圧ポンプ23のポンプ軸23aは、走行駆動HST25のケース25aから右側へ突出して、該突出部分には上記HST25・28の作動油の漏れ分を補償するチャージポンプCPを設けている。
【0020】
また、二つのHST25・28の各々のケース25a・28aの一側側面には、走行油圧ポンプ23に対するコントロールアーム23c、旋回油圧ポンプ26に対するコントロールアーム26cがそれぞれ枢設されており、該コントロールアーム23c、26cの回動操作により、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26の可動斜板145、146(図4)がそれぞれ傾動し、走行油圧モータ24及び旋回油圧モータ27の回転速度及び回転方向が制御される。
【0021】
そして、上記両コントロールアーム23c・26cには、その中立位置を弾性的に保持するためのデテント機構23d・26dが配設される。このデテント機構について説明する。即ち、図7に示すように、両HSTのケース25a・28aには回動アーム92・92がそれぞれ傾動自在に枢支され、その先端にはローラ93・93がそれぞれ回転自在に軸支される。また、該回動アーム92・92には付勢バネ94・94が弾装されて、ローラ93・93を下方向へ付勢している。一方、コントロールアーム23c・26cにはカムプレート96・96が設けられてその上縁を上記ローラ93・93が転動可能としており、該カムプレート96には凹部96aが形設されて、コントロールアーム23c・26cがそれぞれ中立位置にあるときに、上記凹部96aに該ローラ93が位置するようにして、各HST25・28の中立位置を保持するようにしている。
【0022】
両HST25・28は、ミッションケース22上部を挟んで左右対向して設けられており、両HST25・28のポンプ軸23a・26aは互いに軸線が一致するよう配置され、両ポンプ軸23a・26aはそれぞれセンタセクション25b・28bを貫通して、ミッションケース22中央側に向けて突き合わせ状に突出されて、両センタセクション25b・28b間位置にて両軸23a・26aの先端同士を連結部材95を介して相対回転不能に連結する構成としている。この構成により、入力プーリー26bからステアリングHST28のポンプ軸26aに入力されたエンジン21の動力は、連結部材95を介して走行駆動HST25のポンプ軸にも伝達され、両HST25・28が動力を得て駆動するようにしている。
【0023】
また、図7に示すように、走行駆動HST25側のセンタセクション25bに第一パイプ半部98を突設し、該第一パイプ半部98の軸心は上記両ポンプ軸23a・26aのそれと一致させる一方、対向するステアリングHST28側のセンタセクション28bには第二パイプ半部99を設けており、第二パイプ半部99は第一パイプ半部98の先端に嵌合可能としており、かつ、嵌合した状態で互いに軸方向に摺動可能としている。また、両半部98・99接合部分にはオイルシールが設けられて、両者を嵌合あるいは摺動したときに油漏れが生じないようにしている。従って、上記両ポンプ軸23a・26a及び連結部材95は、上記の二つの半部98・99で構成されるパイプメンバにて覆われることとなり、該パイプメンバ内には潤滑油が注入されて、両ポンプ軸23a・26a及び連結部材95を潤滑することができる。これにより、両ポンプ軸23a・26aの相互連結状態が、長期間にわたって良好に維持されるのである。
【0024】
また、両HST25・28のモータ軸24a・27aも互いに軸線が一致するよう配置されて、両モータ軸24a・27aはそれぞれセンタセクション25b・28bを貫通して中央側へ突出して、ミッションケース22内へ挿入される。 そして、走行駆動HST25のモータ軸24a先端には、走行系ドライブトレーンPへの動力を受け入れる入力ギア42を配置する一方、ステアリングHST28のモータ軸27a先端には、ステアリング系ドライブトレーンSへの動力を受け入れる入力ギア97を配置している。
【0025】
そして、図5・図6・図9に示すように、上記両モータ軸24a・27aと平行にカウンター軸43が配置され、該カウンター軸43には二つの伝達ギア43a・43bが遊嵌配置され、伝達ギア43aは上記入力ギア42に噛合され、伝達ギア43bは上記入力ギア97に噛合される。この構成により、上記走行油圧モータ24のモータ軸24aの動力は、入力ギア42から伝達ギア43aへと伝達され、後述の副変速機構32を介して変速されて、後述の差動機構33に伝達される。この入力ギア42・伝達ギア43a・副変速機構32により、走行系ドライブトレーンPが構成される。一方、上記旋回油圧モータ27のモータ軸27aの動力は、入力ギア97から伝達ギア43bへと伝達され、後述のクラッチ装置Cを経た後、正逆転付与機構Rを経由して該差動機構33に伝達される。この入力ギア97・伝達ギア43b・クラッチ装置C・正逆転付与機構Rにより、ステアリング系ドライブトレーンSが構成される。
【0026】
また、図8・図9に示すように、PTOアイドル軸70が上記カウンター軸43の前方(図8における上方、図9における右方)で平行に配置され、該PTOアイドル軸70上にはアイドルギア71が遊転可能に設置され、該アイドルギア71は上記伝達ギア43aに噛合される。更に、上記PTOアイドル軸70と平行でモータ軸34a・27aの前方に刈取PTO軸55が回転自在に軸支され、該刈取PTO軸55上には伝動ギア72が遊嵌され、該伝動ギア72と該刈取PTO軸55の間にはワンウェイクラッチ73が介設され係脱自在としている。これらアイドルギア71、伝動ギア72等により、PTO系ドライブトレーンOが構成される。そして、上記刈取PTO軸55は、ミッションケース22の左側面より外方へ突出されて(図8)、この左側面に取付固定したパイプ74に軸支されながら更に左側へ延出されて、その端部には刈取出力プーリー55bが設けられ、該刈取出力プーリー55bと、図3で示す刈取入力ギアボックス120の刈取入力プーリー121との間には、ベルト122が巻回されている。この構成により、走行油圧モータ24の出力回転は、伝達ギア43a→アイドルギア71→刈取PTO軸55へと伝達されて刈取出力プーリー55bから出力され、刈取入力ギアボックス120へ動力を導入して刈取部8を駆動することとしている。尚、図8における76は上記刈取出力プーリー55bに巻回されたベルト120の折り返し部分を覆うベルトガイド、75はステアリングHST28のケース28aに固設され、上記パイプ74を支持してパイプ74の倒れを防止する支持ステーである。
【0027】
次に、図5より、左右の車軸を差動的に連結する上述の差動機構33の構成について説明する。即ち、この差動機構33は左右の一対の遊星ギア機構35L・35Rを有し、各遊星ギア機構35L・35Rはサンギア軸39に刻設されるサンギア36と、該サンギア36の外周で噛合する複数のプラネタリギア37・37・・・と、リングギア38L・38Rに一体構成されプラネタリギア37・37・・・に噛合するインターナルギア58L・58Rと、サンギア軸39と同軸線上の車軸40L・40Rに固設されプラネタリギア37L・37Rを枢支するキャリア41L・41Rから構成されている。該プラネタリギア37・37・・・は車軸40L・40Rから放射状に均等配置されてキャリア41L・41Rにそれぞれ回転自在に軸支され、サンギア36を挟んで左右のキャリア41L・41Rを配置させるとともに、前記インターナルギア58L・58Rは各プラネタリギア37・37・・・に噛合され、サンギア軸39と同軸線上に配置して、車軸40L・40Rに回転自在に軸支させている。
【0028】
そして、左右の前記サンギア36は共通のサンギア軸39に一体的に刻設され、両サンギア36の中間部に係止したセンタギア46を介して、副変速機構32等からなる走行系ドライブトレーンPに連動連結される。
【0029】
次に、上述の副変速機構32について説明する。即ち、図5に示すように、上記カウンター軸43と平行に副変速駆動軸53が配置され、該副変速駆動軸53の一端に入力用ギア44を固定し、該副変速駆動軸53上には低速用ギア50、中速用ギア51を固定し、高速用ギア52を遊嵌し、該高速用ギア52と噛合可能なクラッチスライダ81を摺動可能にスプライン嵌合している。また、前記副変速駆動軸53と平行に回転自在に横架した副変速従動軸45上には、ギア47・48を遊嵌し、その間にクラッチスライダ80をギア47・48に択一的に係脱自在となるよう該副変速従動軸45にスプライン嵌合し、更にギア56及び出力ギア49を刻設している。そして、ギア47と低速用ギア50、ギア48と中速用ギア51、ギア56と高速用ギア52とをそれぞれ常時嵌合させている。
【0030】
そして図10に示す如く、これら二つのクラッチスライダ80・81は、後述のクラッチスライダ61cともに、クラッチフォークシャフト82に放射状に植設された三つのクラッチフォーク82fの各々に係合される。そして、該クラッチフォークシャフト82は軸方向に摺動自在とされ、運転席近傍に配設した副変速レバーに連係して該クラッチフォークシャフト82を操作するための副変速操作部Gが設けられる。即ち、図5・図11・図12に示すように、ミッションケース右側半部22Rの外面に凹部が設けられ、該凹部を閉じるべく蓋体87が被装されて区画Aを形成し、上記蓋体87に支軸84をクラッチフォークシャフト82に対して直交させるようにして回動自在に軸支する一方、上記区画A内にクラッチフォークシャフト82の一端が突出され、上記支軸84に基端を固設された操作アーム85の先端にクラッチフォークシャフト82の該突出部分が連結され、支軸84は蓋体87の外部(ミッションケース22外)に突出されて、該突出部分には外部アーム86の基端が固設されている。また、クラッチフォークシャフト82には変速位置決めのためのデテント機構Dが設けられている。従って、該副変速レバーが操作されることで外部アーム86を介して支軸84が回動され、操作アーム85に連結されたクラッチフォークシャフト82が軸方向に摺動して、クラッチフォーク82fに係合されたクラッチスライダ80・81が各々の軸53、45上を同時に摺動して、クラッチスライダ80、81のいずれか一つがギア47、ギア48、高速用ギア52のいずれか一つと係合するように構成され、これにより、副変速従動軸45に三段階の変速回転が得られ、該回転が出力ギア49から出力されるのである。
【0031】
上記デテント機構Dは、カートリッジ88c内に大デテントボール88aを配置して付勢バネで付勢し、更に小デテントボール88bを大デテントボール88aに当接させて配置する一方、上記クラッチフォークシャフト82の一端には上記小デテントボール88bに係合可能としたデテント溝82aを 軸方向に沿って変速段数分設ける構成としている。従って、小デテントボール88bが大デテントボール88aを介して付勢バネで係合方向へ常時付勢されているので、小デテントボール88bがデテント溝82aに係合することにより、副変速の摺動操作の位置決めが可能な構成となっている。また、付勢バネは大デテントボール88aを介して間接的に小デテントボール88bを付勢しているので、付勢バネの径を小さくしないでも、小さいデテントボール88bを付勢できる。さらに、デテントボール88bが小さいので、デテント溝82a同士の間隔を狭くでき、小さいシフトストロークでの位置決めが可能な構成となっている。
【0032】
このような構成において、走行油圧モータ24のモータ軸24aの回転出力が図5・図8に示すように入力ギア42→伝達ギア43a→副変速機構32と伝達され、該副変速機構32において変速したのち出力ギア49→カウンター軸57上のカウンターギア54→センタギア46と伝達されて、サンギア軸39を回転駆動させる。そして、該駆動力をサンギア36から左右の遊星ギア機構35L・35Rを介し車軸40L・40Rに伝達させることにより、左右の駆動スプロケット34L・34Rを同一方向に回転駆動させ、クローラ式走行装置2L・2Rを駆動させるのである。
【0033】
一方、図6・図9に示すように、左右の前記リングギア38L・38Rは、上記ステアリング系ドライブトレーンSに連動連結されており、さらに、旋回用のステアリングHST28の出力軸27aに固設される入力ギア97がステアリング系ドライブトレーンSの入力部に連動連結されている。
【0034】
そして、図6・図9に示すように、旋回用のステアリングHST28の旋回油圧モータ27の回転出力は、出力軸27aから入力ギア97→カウンター軸43上の伝達ギア43b→入力用の伝動ギア91と伝達され、旋回入力軸90、クラッチ装置Cを介してクラッチ軸61へと伝達される。
【0035】
以下、上記クラッチ装置Cについて説明する。即ち、前記旋回入力軸90には同歯数の駆動ギア90a・90bが固定され、また、クラッチ軸61上には、該駆動ギア90a・90bと常時噛合するクラッチギア61a・61bが遊嵌配置されている。そして、両クラッチギア61a・61bの間に、該クラッチギア61a・61bの各々に対して係脱自在なクラッチスライダ61cを、クラッチ軸61と相対回転不能で、かつ軸方向摺動自在に設けて、前記クラッチ装置Cを構成している。このクラッチスライダ61cは前述のクラッチフォークシャフト82に連結され、副変速機構32が中立位置にあるときにはクラッチギア61a・61bのいずれとも係合せず、副変速機構32が一速から三速までの伝動状態にあるときのみ係合して旋回入力軸90からの動力をクラッチ軸61に伝達し、クラッチ軸61と一体的に設けられた出力ギア64より、減速ギア63L・63Rへ出力するように構成されている。
【0036】
上記減速ギア63L・63Rは大径ギア・小径ギアを一体的に構成した二連ギアとしており、それぞれ減速軸63上に配置されて遊転可能に支持され、上記出力ギア64に両ギア61L・61Rの大径ギアが噛合される。そして、一の減速ギア63Rの小径ギアはリングギア38Rに噛合される一方、他の減速ギア63Lの小径ギアは、アイドル軸62上の逆転ギア62aに噛合され、該逆転ギア62aは上記差動機構33のリングギア38Lに噛合される。
【0037】
この構成で、出力ギア64の回転は二つの減速ギア63L・63Rに分岐されて伝達された後、一の減速ギア63Rの回転は直接的に上記差動機構のリングギア38Rに伝達され、他の減速ギア63Rの回転は上記逆転ギア62aにより正逆変換されて、上記差動機構のリングギア38Lに伝達される。このようにして、旋回油圧モータ27の回転出力が分岐されて、互いに逆方向かつ等速とされて、左右のリングギア38L・38Rへ伝達されるのである。これら逆転ギア62a、減速ギア63L・63R等により、正逆転付与機構Rが構成される。
【0038】
このような構成で、走行油圧ポンプ23の可動斜板145に対するコントロールアーム23cが、運転席近傍に配備した走行操作具である主変速レバー68に図外のリンク機構を介して連動連係されており、走行駆動HST25は該主変速レバー68の回動操作により可動斜板145の傾斜角度が変更されて走行油圧モータ24の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行う。また、旋回油圧ポンプ26の可動斜板146に対するコントロールアーム26cが操向ハンドル19に図外のリンク機構を介して連動連係されており、旋回用のステアリングHST28は該操向ハンドル19の回動により可動斜板146の傾斜角度が変更されて旋回油圧モータ27の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うよう構成されている。
【0039】
そして、操向ハンドル19を直進走行位置におくと、旋回油圧ポンプ26が中立位置となり、旋回油圧モータ27の駆動が停止して左右のリングギア38L・38Rが静止された状態となり、該状態で主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23より圧油を吐出させて走行油圧モータ24を駆動すると、その回転はセンタギア46からサンギア36を介して左右の遊星ギア機構35L・35Rのプラネタリギア37L・37Rに伝達され、キャリア41L・41R、車軸40L・40Rを介し、左右の駆動スプロケット34L・34Rが左右同回転方向の同一回転数で駆動されて、機体の前進直進走行が行われる。また、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23からの圧油吐出方向を反転させると、前記と逆方向の駆動力が伝達され、機体は後方へ直進走行を行う。
【0040】
そして、操向ハンドル19を右に切ると、旋回油圧ポンプ26は作動状態となって圧油を吐出し、該圧油を受けて旋回油圧モータ27が駆動される。該旋回油圧モータ27から出力された動力は旋回入力軸90からクラッチ装置Cを経て、同一回転数のまま二手に分岐され、その一方は前記遊星ギア機構35のリングギア38Lを正転させ、他方はリングギア38Rを逆転させる。正転するリングギア38Lの回転数はサンギア36によって正転している左キャリア41Lの回転数に加算される一方、逆転するリングギア38Rの回転数はサンギア36によって正転している右キャリア41Rの回転数に減算される。これによって両駆動スプロケット34L・34Rの駆動状態を維持しつつ、左の駆動スプロケット34Lの回転数が右の駆動スプロケット34Rのそれよりも高くなって、右方へ進路が変更されるのである。
【0041】
旋回油圧ポンプ26からの吐出油量は操向ハンドル19の切れ角度が大きくなるに従って増加し、これに応じて旋回油圧モータ27の回転数も無段に増加するので、左右の駆動スプロケット34L・34Rに生じる相対回転差は次第に大きくなり、より小さな旋回半径で機体が旋回することとなる。また、操向ハンドル19を左に切ると、旋回油圧ポンプ26の圧油吐出方向が反転して旋回油圧モータ27の回転方向が逆になり、これによって最終的に、左キャリア41Lの回転数が減算される一方、右キャリア41Rの回転数が加算されて、右の駆動スプロケット34Rの回転数が左の駆動スプロケット34Lのそれよりも高くなって左方へ進路が変更されることとなる。
【0042】
また、ステアリング系ドライブトレーンSの経路に配置された旋回入力軸90には、直進性を良好とするための中立ブレーキ機構Bが、図6に示す如く配設されている。この中立ブレーキ機構Bは、旋回入力軸90上に一体的に装着された摩擦板とミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる摩擦ブレーキ100、及び該摩擦ブレーキ100を押圧するピストン101により構成される。該ピストン101は油圧駆動とされ、電磁弁(図13における180)により圧油の供給が行われ、該電磁弁180は図示せぬコントローラに接続されて、操向ハンドル19が中立状態にあるときは該電磁弁180が開かれるように電気的に制御されている。
【0043】
このような構成において、オペレータが操向ハンドル19を中立(直進)状態におくと、電磁弁180は「開」となるようコントローラにより制御され、ピストン101が駆動されて摩擦ブレーキ100を押圧して、制動作用が発生する。 これにより、旋回油圧ポンプ26の中立位置が正確に出ておらず、旋回油圧モータ27が微動に回転しようとしても、旋回入力軸90が制動されているので、左右のリングギア38L・38Rの静止固定状態が維持され、直進性が良好に維持されるのである。
【0044】
続いて、図示せぬハンドブレーキを操作することにより走行系ドライブトレーンPに制動力を付与させる駐車ブレーキ機構Tについて、図5を用いて説明する。即ち、まず、図外のハンドブレーキに連動連結したブレーキアーム113を回動操作すると、カム軸110が該ブレーキアーム113に連動して回転する。そしてカム軸110の回転によりプレッシャープレート111が回動するとともに右方向(図5における左方向)への推力が発生して、副変速従動軸45上に一体的に装着された摩擦板とミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる多板式摩擦ブレーキ112を押圧する。この押圧力により、副変速従動軸45に抵抗を与え、ブレーキ作用を発生させるよう構成しているのである。
【0045】
次に、上記構成のトランスミッションMにおけるオイルフローについて、主に図13を参照しながら説明する。図13はトランスミッションの潤滑油の流れを表した図である。
【0046】
即ち、図9に示すように、ミッションケース22内に作動油を吸い上げるための油路105が上下方向に配置され、該油路105はミッションケース22の前方内部に一体的に形設されて、その端部はミッションケース22内に配設されたサクションストレーナ106に接続される。尚、図9に示す190はブリーザ機構を有するキャップ、191は該キャップ190が取付けられるパイプ部材であり、その内部はミッションケース22に連通している。
【0047】
そして、油路105内を吸い上げられてサクションストレーナ106にて異物等を除去された潤滑油は、二手に分岐され、そのうち一方はチャージポンプCPの吸入ポートに配管P1を介して導入され(図5)、吐出ポートから配管P2を介して吐出された潤滑油は、ラインフィルタF、配管P3、管継手J1を介して、走行駆動HST25のセンタセクション25b内の油補給ポートに導入される。他方は、エンジン21の出力軸21aに設けられる刈取部昇降用ポンプSPの吸入ポートに導入され、該ポンプSPの吐出ポートから吐出された油は、昇降バルブユニットVUのポンプポート153に導入される。
【0048】
昇降バルブユニットVUにて、刈取昇降用油圧シリンダ11に作動油を供給する回路には、方向制御弁147、ロードチェック弁134、スローリターン弁135が配設され、刈取昇降用油圧シリンダ11に対する作動油の供給と排出を制御し、シリンダポート155を介して刈取昇降用油圧シリンダ11に対する作動油を給排可能としている。また、リリーフ弁148により刈取昇降用油圧シリンダ11の作動油圧を規定している。そして、刈取昇降用油圧シリンダ11側から排出された作動油は、タンクポート154から配管を介して、後述のワンウェイクラッチ潤滑部Wへ導入される。
【0049】
一方、走行駆動HST25のセンタセクション25b内には、油の補給時にのみ開く一対のチェックバルブ130、中立範囲を拡大するための絞り131が配置される。また、ステアリングHSTのセンタセクション28b内にも、同様にチェックバルブ132、絞り133が配置される。
【0050】
そして、図8に示すように、走行駆動HST25とステアリングHST28の間には上下二本のパイプ78・79が配設されて、上記管継手J1から導入された潤滑油は、走行駆動HST25の走行油圧ポンプ23・モータ24からの油漏れによる作動油の減少(油圧の低下)を補償した後、上記二本のパイプのうち下側(図9)のパイプ79を経由して、ステアリングHST28のセンタセクション28b内の作動油補給ポートに導入されて、ステアリングHST28の旋回油圧ポンプ26・モータ27からの油漏れによる作動油の減少(油圧の低下)を補償する。
【0051】
そして、両HST25・28のチャージ圧(補給油圧)を規定するチャージリリーフバルブ143が走行駆動HST25のセンタセクション25b内に設けられており、該バルブ143によりリリーフされた油や走行油圧ポンプ23・モータ24より漏れた油は、走行駆動HST25のケース25a内に導入されて、走行油圧ポンプ23・モータ24の潤滑を行う。また、ステアリングHST28内の旋回油圧ポンプ26・モータ27より漏れた油は、ステアリングHST28のケース28a内に導かれて、ステアリングHSTの旋回油圧ポンプ26・モータ27の潤滑を行う。
【0052】
上記走行駆動HST25のケース25a内部とステアリングHST28のケース28a内部は、上記二本のパイプのうち上側(図9)のパイプ78にて連通されており、走行駆動HST25のケース25a内にて規定量をオーバーフローした潤滑油は、該上側のパイプ78を介してステアリングHST28のケース28a内部に導入されて、該ケース28a内の油と合流する。
【0053】
そして、上記ステアリングHST28のセンタセクション28b内の油は、管継手J2からセンタセクション28b外へ導かれ、配管P4、及び、上述の電磁弁(図13における180)を介して上記中立ブレーキ機構Bに導入され、上述のように、該電磁弁180の操作により上記ピストン101を押圧する作動油としての役割を果たし、中立ブレーキ機構Bの制動を行う。
【0054】
そして、ステアリングHST28のケース28a内でオーバーフローした油は、該ケース28a上面に設けられた管継手J3(図5・図7・図8)から、配管P5、及びオイルクーラー(図13における149)を経由して、配管P6、管継手J4を介してワンウェイクラッチ潤滑部Wへ導入される。このワンウェイクラッチ潤滑部Wは、図9に示すように、ミッションケース右側半部22Rの外面に設けた中空の導入ケース77内に設けられるものであって、該導入ケース77には、上記オイルクーラーから潤滑油を導入する管継手J4と、上述の刈取昇降用油圧シリンダ11を制御するバルブユニットVUからの戻り油を導入する管継手J5が設けられ、両管継手J4・J5から導入される油がこのワンウェイクラッチ潤滑部Wにて合流される。そして、上記刈取PTO軸55の一端はワンウェイクラッチ潤滑部Wに臨ませてあり、該刈取PTO軸55内に形設された油路89が上記ワンウェイクラッチ潤滑部Wに連通されて、該潤滑部W内に導入された油の一部は、該油路89を介してワンウェイクラッチ73を潤滑して、ミッションケース22内に戻される。
【0055】
一方、上記導入ケース77には上記二つの管継手J4・J5のほかに更にもう一つの管継手J6が設けられており、上記油路89へ導入されない残りの潤滑油は、該管継手J6、配管P7を介して、図12に示す管継手J7から副変速操作部Gへ導入され、支軸84やデテント機構D等を潤滑した後、図12に示す戻し孔83からミッションケース22内に戻される。
【0056】
この構成とすることにより、ミッションケース22から走行駆動HST25及びステアリングHST28(又は刈取部昇降バルブユニットVU)を経て、各機構を潤滑したのち再びミッションケース22内に戻される、潤滑油の流れが形成されるのである。
【0057】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
即ち、請求項1に示す如く、差動的に相互結合された左右の車軸(40L・40R)の伝動経路中に二つの無段変速装置(25・28)を備えさせ、そのうちの第一無段変速装置(25)を作動させたときに左右の車軸を同方向に駆動して機体を直進させ、他の第二無段変速装置(28)を作動させたときに左右の車軸(40L・40R)に相対回転差を与えて機体を旋回させるように構成された作業車のトランスミッションにおいて、前記二つの無段変速装置(25・28)の各々を、前記車軸(40L・40R)を支持するミッションケース(22)の対向する二つの面の各々に配置し、該両無段変速装置(25・28)の出力部が収納されるハウジング部分のみを、該ミッションケース(22)の両側に取付固定する一方、前記両無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が収納されるハウジング部分は、前記ミッションケース(22)に取付けない部分とし、更に、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力部の回転軸線を一致させ、該2本の入力軸(23a・26a)の各々を突き合わせ状に延伸させて連結部材(95)にて相互連結したので、入力部が位置するハウジング部分はミッションケースに取り付けられない構成であるので、無段変速装置の大きさを変更したいとき(例えば、HSTの容量を変更したいとき)であっても、入力部は突出させた状態でミッションケースに取り付けられるので、ミッションケースの無段変速装置組付け部分を大きくする必要もなく、従って、ミッションケースを異なるサイズの変速装置と組み合わせて使用することが容易となるのである。
また、両無段変速装置の入力部が収納されるハウジング部分はミッションケースに接触されず露出されており、その入力部から入力軸を延伸させて相互連結するので、ミッションケース外にて二つの無段変速装置の入力軸が連結されることとなり、ミッションケースには両無段変速装置の出力軸のみが挿入される構成である。従って、無段変速装置の入力軸と出力軸の軸間距離が変更されても、該ミッションケースに容易に取付けることが可能となり、このことによってもミッションケースを異なるサイズの変速装置と組み合わせて使用することが容易となるのである。
【0059】
また、前記ミッションケース(22)の上部に段差部(K)を設け、該段差部(K)の左右面に、前記二つの無段変速装置(25・28)のハウジングを取り付けるHST取付面(N1・N2)の各々を形成したので、縦長で左右幅の小さいトランスミッションを構成することができ、作業車のトランスミッションを搭載する空間にも収まり良く配置することができる。
【0060】
また、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が配置され る、ハウジング部分間にパイプメンバを油密的に架設し、前記入力軸(23a・26a)及び連結部材(95)を該パイプメンバ内に位置させたので、該パイプメンバ内に潤滑油を充填することにより、二つの無段変速装置の入力軸の相互連結状態を長期間にわたり良好に維持でき、その結果、メンテナンスの必要性が低減され、使い勝手の良いトランスミッションが提供できる。
【0061】
請求項2に示す如く、請求項1記載の作業車のトランスミッションにおいて、請求項1記載の作業車のトランスミッションにおいて、前記パイプメンバは、二つの無段変速装置のうち一の無段変速装置の入力部が収納されるハウジング部分に固設した第一パイプ半部(98)と、他の無段変速装置のハウジングに固設した第二パイプ半部(99)とで構成し、その各々の自由端側を、油密状態を維持しつつ軸方向に摺動変位可能に相互嵌合させたので、無段変速装置をミッションケースに取り付けたと同時に上記パイプメンバを構成でき、組立てが簡略化されるので、製造コストや工数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】 同じく平面図。
【図3】 同じく正面模式図。
【図4】 トランスミッションの走行系及びステアリング系のドライブトレーンのスケルトン図。
【図5】 トランスミッションの走行系ドライブトレーンの構成を表した正面断面展開図。
【図6】 トランスミッションのステアリング系ドライブトレーンの構成を表した正面断面展開図。
【図7】 無段変速部の構成を表した正面一部断面拡大図。
【図8】 PTO系ドライブトレーンの構成を表した平面断面展開図。
【図9】 トランスミッションの各ドライブトレーンのギアの噛み合いを示した側面断面図。
【図10】 クラッチフォークシャフトの構成を示した側面断面拡大図。
【図11】 クラッチスライダの摺動操作機構を示した後面断面展開図。
【図12】 同じく側面断面図。
【図13】 トランスミッションの潤滑油の流れを表した図。
【符号の説明】
M トランスミッション
22 ミッションケース
23 走行油圧ポンプ(走行駆動HSTの入力部)
23a 走行油圧ポンプのポンプ軸(走行駆動HSTの入力軸)
24 走行油圧モータ(走行駆動HSTの出力部)
25 走行駆動HST(第一無段変速装置)
26 旋回油圧ポンプ(ステアリングHSTの入力部)
26a 旋回油圧ポンプのポンプ軸(ステアリングHSTの入力軸)
27 旋回油圧モータ(ステアリングHSTの出力部)
28 ステアリングHST(第二無段変速装置)
40L・40R 車軸
95 連結部材
K 段差部
N1・N2 HST取付面
98 第一パイプ半部
99 第二パイプ半部
Claims (2)
- 差動的に相互結合された左右の車軸(40L・40R)の伝動経路中に二つの無段変速装置(25・28)を備えさせ、そのうちの第一無段変速装置(25)を作動させたときに左右の車軸を同方向に駆動して機体を直進させ、他の第二無段変速装置(28)を作動させたときに左右の車軸(40L・40R)に相対回転差を与えて機体を旋回させるように構成された作業車のトランスミッションにおいて、前記二つの無段変速装置(25・28)の各々を、前記車軸(40L・40R)を支持するミッションケース(22)の対向する二つの面の各々に配置し、該両無段変速装置(25・28)の出力部が収納されるハウジング部分のみを、該ミッションケース(22)の両側に取付固定する一方、前記両無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が収納されるハウジング部分は、前記ミッションケース(22)に取付けない部分とし、更に、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力部の回転軸線を一致させ、該2本の入力軸(23a・26a)の各々を突き合わせ状に延伸させて連結部材(95)にて相互連結し、前記ミッションケース(22)の上部に段差部(K)を設け、該段差部(K)の左右面に、前記二つの無段変速装置(25・28)のハウジングを取り付けるHST取付面(N1・N2)の各々を形成し、前記二つの無段変速装置(25・28)の入力軸(23a・26a)が配置される、ハウジング部分間にパイプメンバを油密的に架設し、前記入力軸(23a・26a)及び連結部材(95)を該パイプメンバ内に位置させたことを特徴とする作業車のトランスミッション。
- 請求項1記載の作業車のトランスミッションにおいて、前記パイプメンバは、二つの無段変速装置のうち一の無段変速装置の入力部が収納されるハウジング部分に固設した第一パイプ半部(98)と、他の無段変速装置のハウジングに固設した第二パイプ半部(99)とで構成し、その各々の自由端側を、油密状態を維持しつつ軸方向に摺動変位可能に相互嵌合させたことを特徴とする作業車のトランスミッション。
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