JP3824794B2 - コンバインの刈取部駆動装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインの刈取部が機体前進時には正方向に駆動される一方、後進時には逆方向に駆動されないようにするために、駆動伝達経路の適宜位置に一方向クラッチを設けた刈取部駆動装置において、該一方向クラッチのメンテナンスを容易に行うことができ、かつ安価な刈取部駆動装置を提供するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンバインを用いた刈取作業においては、機体前進時には刈取作業を行うべく刈取部を駆動させる必要があるが、機体後進時に刈取部を逆転させると、刈り取った穀稈が前方に放出したり、詰まりの原因となるため、後進時には刈取部の逆方向駆動を防止するため、駆動伝達経路の適宜位置に一方向クラッチを設けた刈取部駆動装置の技術は公知となっている。
この刈取部駆動装置は、一方向クラッチを駆動伝達経路の適宜位置、例えば、ミッションケース内に収容される伝動ギアのボス部や駆動装置に軸支された刈取PTO軸先端の刈取出力プーリーのボス部等に設けており、コンバインを使用した刈取作業において、コンバイン前進時は該一方向クラッチが係合して刈取部を駆動させるべく刈取PTO軸を駆動回転させる一方、後進時には該一方向クラッチの係合が解除されて刈取PTO軸の駆動は行われなく空転して、刈取部を逆駆動させないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一方向クラッチをミッションケース内の伝動ギアのボス部に設けた刈取部駆動装置は、一方向クラッチがミッションケース内部にあるために、一方向クラッチをメンテナンス等するためにはミッションケース全体を分解し、修理・交換を行ってから再び組み立てる必要があり、面倒であった。特に一方向クラッチは一定使用期間毎に交換が必要なものであるため、その際に逐一ミッションケース全体の分解・組立を行う必要があり、メンテナンス上とりわけ不便であった。
また、一方向クラッチをPTO軸先端のプーリーのボス部に設けた構成の刈取部駆動装置は、クラッチが装置外部にあるためメンテナンス的には前述のものに比して多少有利であったが、一方向クラッチ用の油をプーリーのボス部に封入してシールする必要があるので、そのようなプーリーを特別に設計製造する必要が生じ、その結果コストアップとなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、ミッションケースの側壁に、刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを同一軸心上に対向配置せしめるクラッチ収容部を、ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは区画されるようにして設け、該クラッチ収容部内において、該刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを刈取走行同調軸が機体前進方向に回転するときに係合させる一方向クラッチを介して連結するとともに、前記クラッチ収容部を構成する一壁部分を前記ミッションケースの側壁に対し脱着自在に取り付けたものである。
【0005】
請求項2においては、前記クラッチ収容部と、前記ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは潤滑油が相互に流通自在に構成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係る刈取部駆動装置を具備したコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面模式図、図4はトランスミッションのスケルトン図、図5はトランスミッション全体の模式斜視図、図6は走行用の第一無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図、図7は旋回用の第二無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図、図8はトランスミッションの左側面断面図、図9は同じく左側面図、図10は同じく右側面図、図11は刈取PTO軸を含むトランスミッションの断面展開図、図12は図9において凹部蓋体を取り外した状態を示すクラッチ収容部の断面拡大図、図13はクラッチ収容部内部における潤滑油の流れを示す断面拡大図、図14はトランスミッションにおいて刈取PTO軸の回転数を変更する方法を示した断面拡大図である。
【0007】
まず、図1及び図2より本発明のコンバインの全体構成について説明する。
トラックフレーム1には左右のクローラ式走行装置2L・2Rを装設している。3は前記トラックフレーム1に架設する機台、4はフイードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀機である脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10等を備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダである。
13は排藁チェン14の終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒16を介して搬入する穀物タンク、17は前記穀物タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、18は丸型の操向ハンドル19を支架するハンドルポスト、68は主変速レバー、20は運転席であり、また、21は、機体左右方向に沿う出力軸を有するエンジンであり、このエンジン21からの動力によって、コンバインの前方より連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0008】
また、このコンバインのトランスミッションには図4に示すように、走行系の第一無段変速ユニット及び旋回系の第二無段変速ユニットを具備しており、それぞれのユニットはエンジン21より駆動力を得るよう構成されている。そして、エンジン21により駆動力を得た第一無段変速ユニットにより、正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が走行系伝動機構Rを介して差動機構33に伝達される。また、エンジン21により駆動力を得た第二無段変速ユニットにより正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が正逆転付与機構Sを介して差動機構33に伝達される。このような構成で、差動機構33に連動連結された左右のクローラ式走行装置2L・2Rの駆動スプロケット34L・34Rに駆動力を常時伝達し、前後直進走行及び、左右駆動スプロケット34L・34Rに対する回転数の相対的な増減制御により旋回を可能としたものであり、以下において、この走行及び旋回の機構について説明する。
【0009】
次にトランスミッションの構成について図3乃至図14より説明する。本実施例においては無段変速ユニットとして静油圧式無段変速装置(以下HST装置)Hを採用しており、前記クローラ式走行装置2L・2Rを駆動するトランスミッションMは前記ミッションケース22内の走行系伝動機構R、正逆転付与機構S及び遊星ギア機構35L・35R、及び該ミッションケース22に載置されたHST装置Hより構成される。HST装置Hは、一組の走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる主変速機構である走行用の第一無段変速ユニット25と、一組の旋回油圧ポンプ26及び旋回油圧モータ27からなる旋回機構である旋回用の第二無段変速ユニット28とからなる。また、ミッションケース22は左側(図6及び図7において左側)のケース部22L及び右側のケース部22Rより構成され、ケース部22L・22Rがミッションケース22の左右方向で中央付近において接合されている。
【0010】
そして、両ケース部22L・22Rの内部においては、主区画たる走行駆動用歯車収容部200が形成され、該収容部200内に潤滑油及びHST作動油としての油を溜めることができるようにしている。該走行駆動用歯車収容部200内には、遊星ギア機構35L・35R、走行系伝動機構Rの大部分及び後述の差動機構33等、駐車ブレーキ機構T等が配置されている。
【0011】
また、図9に示すように前記走行用の第一無段変速ユニット25は、機体の前後方向における後方(図9における右側)に横置きしたケース内に走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24が並設されており、該走行油圧ポンプ23の入力軸23a及び、該走行油圧モータ24の出力軸24aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0012】
また、前記旋回用の第二無段変速ユニット28においては、機体の前後方向における前方(図9における左側)から旋回油圧ポンプ26及び、旋回油圧モータ27が並設され横置きのケースに内装されており、該旋回油圧ポンプ26の入力軸26a及び、該旋回油圧モータ27の出力軸27aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0013】
一方、図3及び図5で示すように前記ミッションケース22の右側のケース部22Rの右上部には、ミッションケース22の上面よりも上方に延出する入力ケース部22aが突出形成されている。入力ケース部22aは右側ケース部22Rの右端部に一体形成され、該入力ケース部22aの右端開口を閉じるべく蓋体22bが固定されている。
そして、該ミッションケース22の上面に臨む入力ケース部22aの左側面において、機体後方から順に走行用の第一無段変速ユニット25及び旋回用の第二無段変速ユニット28を並設させるように、両無段変速ユニット25・28のケースを取り付けている。
【0014】
また、ミッションケース22内には走行系伝動機構R及び正逆転付与機構Sが配設されており、該走行系伝動機構Rへの動力を受け入れるギア42及び正逆転付与機構Sへの動力を受け入れるギア97が、該入力ケース部22a内に設けられている。そして、前記第一無段変速ユニット25の走行油圧モータ24の出力軸24aの一端が入力ケース部22a内に挿入されギア42に係合され、また、前記第二無段変速ユニット28の旋回油圧モータ27の出力軸27aの一端が入力ケース部22a内に挿入されギア97に係合されている。
【0015】
また、図6で示すように、走行用の第一無段変速ユニット25のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aが突出しており、その端部には二連の入力プーリー23bが入力軸23aに一体的に装着されており、また、図7で示すように、旋回用の第二無段変速ユニット28のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記旋回油圧ポンプ26の入力軸26aが突出しており、その端部には一連の入力プーリー26bが入力軸26aに一体的に装着されている。
そして図5で示すように、前記入力プーリー23bの一方と入力プーリー26bとの間には伝動ベルト30が巻回されており、旋回油圧ポンプ26の入力軸26aを伝動ベルト30と、入力プーリー23b・26bを介し、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aに連動連結させている。31は伝動ベルト30を適当な張り具合に調整するテンションプーリーである。
また、前記エンジン21の出力軸21aには出力プーリー21bが一体的に装着されており、該出力プーリー21bと前記走行油圧ポンプ23の入力プーリー23bの他方との間には伝動ベルト29が巻回されている。このようにして走行油圧ポンプ23の入力軸23aを伝動ベルト29、プーリー等を介しエンジン21に連動連結させている。
【0016】
また、ミッションケース22の左側ケース部22Lの側面から、刈取走行同調軸57が突出しており、該刈取走行同調軸57上には一体的に回転する刈取出力プーリー55bが固設され、図3に示すように、該刈取出力プーリー55bと刈取入力ギアボックス120の刈取入力プーリー121との間に刈取伝動ベルト122が巻回されている。そしてミッションケース22内の副変速駆動軸53からギア56、55aを介して、エンジン21の出力が刈取入力ギアボックス120に伝達される。
【0017】
また、図5に示すように、第一・第二無段変速ユニット25・28の各々のケース上面には、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26に対する変速アーム23c、26cが配設されており、該変速アーム23c、26cの回動操作により、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26の可動斜板145、146がそれぞれ傾動し、走行油圧モータ24及び旋回油圧モータ27の回転速度及び回転方向が制御される。
【0018】
次に、図4、図6及び図7より、差動機構33の構成について説明する。ミッションケース22内の差動機構33は左右の一対の遊星ギア機構35L・35Rを有し、各遊星ギア機構35L・35Rはサンギア36L・36Rと、該サンギア36L・36Rの外周で噛合う複数のプラネタリギア37L・37Rと、リングギア38L・38Rに一体構成されプラネタリギア37L・37Rに噛合うインターナルギア38a・38aと、サンギア軸39と同軸線上の車軸40L・40Rに固設されプラネタリギア37L・37Rを枢支するキャリア41L・41R等から構成されている。
該プラネタリギア37L・37Rは車軸40L・40Rから放射状に均等配置されてキャリア41L・41Rにそれぞれ回転自在に軸支され、左右のサンギア36L・36Rを挟んで左右のキャリア41L・41Rを配置させると共に、前記インターナルギア38a・38aは各プラネタリギア37L・37Rに噛み合い、サンギア軸39とは同一軸心上に配置させ、車軸40L・40Rに回転自在に軸支させている。
【0019】
そして、左右の前記サンギア36L・36Rは共通のサンギア軸39の外周面上に刻設され、両サンギア36L・36Rの中間部に係止したセンタギア46を介して、副変速機構32等からなる走行系伝動機構Rに連動連結され、さらに走行系伝動機構Rの入力部には、前記第一無段変速ユニット25の出力軸24aに係合されるギア42が連動連結されている。
【0020】
副変速機構32は、ミッションケース22に横架した副変速駆動軸53の一端に入力用ギア44を固設し、該副変速駆動軸53上には低速用ギア50、中速用ギア51を固設し、高速用ギア52を遊嵌し、高速ギア52と噛合可能なクラッチスライダ81を摺動可能にスプライン嵌合している。また、前記副変速駆動軸53と平行に回転自在に横架した副変速従動軸45上には、ギア47・48を遊嵌し、その間にクラッチスライダ80を両者に嵌合可能にスプライン嵌合し、出力ギア49を固設している。そして、ギア47と低速用ギア50、ギア48と中速用ギア51、ギア49と高速用ギア52とをそれぞれ常時嵌合させている。
【0021】
これら二つのクラッチスライダ80・81は運転席近傍に配備した一本の副変速レバーに連係され、該副変速レバーが操作されることで各々の軸53、45上を同時に摺動して、クラッチスライダ80・81のいずれかがギア47・48・52のいずれかと係合するように構成され、これにより、副変速従動軸45に三段の変速回転が得られ、出力ギア49から出力されるようになっている。
【0022】
このような構成において走行油圧モータ24の回転出力が、図6及び図8に示すように出力軸24aから入力ケース部22a内のギア42を介して、カウンター軸43上のギア43a、入力用ギア44を介して副変速機構32に伝達され、副変速機構32において変速したのち出力ギア49からカウンターギア54、センタギア46を経由して左右のサンギア36L・36Rを回転駆動させるのである。そして、左右の遊星歯車機構35L・35Rを介し車軸40に伝達させることにより、左右の駆動スプロケット34L・34Rを回転駆動させ、クローラ式走行装置2L・2Rを駆動させるのである。
【0023】
一方、図7及び図8に示すように、左右の前記リングギア38L・38Rは、支軸63上に遊嵌したギア63c・63d、アイドル軸62上のアイドルギア62a等からなる正逆転付与機構Sに連動連結され、さらに正逆転付与機構Sの入力部には第二無段変速ユニット28の出力軸27aに係合されるギア97が連動連結されている。
【0024】
そして、旋回用の第二無段変速ユニット28の旋回油圧モータ27の回転出力が、出力軸27aから順に伝達ギア97、カウンター軸96上の駆動ギア96aに伝達され、さらに入力用の伝動ギア91を介して旋回入力軸90、クラッチ装置Cを介してクラッチ軸61へと伝達される。
【0025】
前記旋回入力軸90には同歯数の駆動ギア90a・90bが刻設され、またクラッチ軸61上には、該駆動ギア90a・90bと常時噛み合うクラッチギア61b・61cが遊嵌配置されている。そして、両クラッチギア61b・61cの間に、該クラッチギア61b・61cの各々に対して係脱自在なクラッチスライダ61dを、クラッチ軸61と相対回転不能で、かつ、軸方向摺動自在に設置することにより、前記クラッチ装置Cを構成している。このクラッチスライダ61dは前述の副変速機構32のクラッチスライダ80・81と連動連係され、副変速機構32が中立位置にあるときにはクラッチギア61b・61cのいずれとも係合せず、副変速機構32が1速から3速までの伝動状態にあるときのみ係合して旋回入力軸90からの動力をクラッチ軸61に伝達し、クラッチ軸61と一体の出力ギア61aより出力するように構成されている。
【0026】
そして、クラッチ軸61上の出力ギア61aの回転は支軸63上に遊嵌した旋回入力ギア63bに直接的に伝達され、ギア63dを介してリングギア38Rに伝達される。また、左側のリングギア38Lに対しては、クラッチ軸61上の出力ギア61aの回転はアイドル軸62上のアイドルギア62aにて逆転されたのち、支軸63上の旋回入力ギア63aに伝達され、ギア63cを介してリングギア38Lに伝達される。このようにして旋回油圧モータ27の回転出力が、左右のリングギア38L・38Rを互いに逆回転方向へ、かつ左右同一回転数で伝達される。
【0027】
このような構成で、走行油圧ポンプ23の可動斜板145に対する変速アーム23cが、運転席近傍に配備した主変速レバー68にリンク機構を介して連動連係されており、第一無段変速ユニット25は該主変速レバー68の回動操作により可動斜板145の傾斜角度が変更されて走行油圧モータ24の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うことが可能となっている。また、旋回油圧ポンプ26の可動斜板146に対する変速アーム26cが操向ハンドル19にリンク機構を介して連動連係されており、第二無段変速ユニット28は該操向ハンドル19の回動により可動斜板146の傾斜角度が変更されて旋回油圧モータ27の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うよう構成されている。
【0028】
そして、操向ハンドル19を直進走行位置におくと、旋回油圧ポンプ26が中立位置となり、旋回油圧モータ27の駆動が停止して左右リングギア38が静止固定された状態となり、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23より圧油を吐出させて走行油圧モータ24を駆動すると、その回転はセンタギア46から左右のサンギア36L・36Rに同一回転数で伝達され、左右遊星ギア機構35L・35Rのプラネタリギア37L・37R、キャリア41L・41Rを介し、左右の駆動スプロケット34L・34Rが左右同回転方向の同一回転数で駆動されて、機体の前進直進走行が行われる。また、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23からの圧油吐出方向を反転させると、機体は後進状態で直進走行する。
【0029】
ここで、操向ハンドル19を右に切ると、旋回油圧ポンプ26は作動状態となって圧油を吐出し、該圧油を受けて旋回油圧モータ27が駆動される。該旋回油圧モータ27から出力された動力は旋回入力軸90からクラッチ装置Cを経て正逆転付与機構Sに至り、ここで同一回転数のまま二手に分けられ、その一方は前記遊星ギア機構35のリングギア38Lを正転させ、他方はリングギア38Rを逆転させる。正転するリングギア38Lの回転数はサンギア36Lによって正転している左キャリア41Lの回転数に加算される一方、逆転するリングギア38Rの回転数はサンギア36Rによって正転している右キャリア41Rの回転数に減算される。
これによって両駆動スプロケット34L・34Rの駆動状態を維持しつつ、駆動スプロケット34Lの回転数が駆動スプロケット34Rのそれよりも高くなって右方へ進路が変更されるのである。
【0030】
旋回油圧ポンプ26からの吐出油量は操向ハンドル19の切れ角度が大きくなるに従って増加し、これに応じて旋回油圧モータ27の回転数も無段に増加するので、左右の駆動スプロケット34・34に生じる相対回転差は次第に大きくなり、より小さな旋回半径で機体が旋回することとなる。また、操向ハンドル19を左に切ると、旋回油圧ポンプ26の圧油吐出方向が反転して旋回油圧モータ27の回転方向が逆になり、これによって最終的に、左キャリア41Lの回転数が減算される一方、右キャリア41Rの回転数が加算されて、駆動スプロケット34Rの回転数が駆動スプロケット34Lのそれよりも高くなって左方へ進路が変更されるのである。
【0031】
また、正逆転付与機構Sの旋回入力軸90には直進性を安定させるためのブレーキ機構Bが装備されている。このブレーキ機構Bは、旋回入力軸90上で一体的に回転する前記伝動ギア91と、旋回入力軸90に外嵌され、伝動ギア91よりも歯数が少ない摩擦板で構成した制動ギア92とを有する。そして、伝動ギア91は旋回油圧モータ27からの動力を伝達する駆動ギア96aと噛み合っており、該伝動ギア91を介して、旋回入力軸90に動力が伝達されるように構成されている。
【0032】
また、同じく駆動ギア96aと噛み合う制動ギア92が旋回入力軸90に二枚外嵌されており、さらに三枚の相手側摩擦板93・93・93が前記制動ギア92を挟み込むようにして旋回入力軸90と一体回転するよう装着され、該相手側摩擦板93と制動ギア92は、蓋体22bにて受け止められた皿バネ95のバネ力を受ける押圧板94を介して常時押圧されている。そして、この押圧力を受けることにより伝動ギア91、相手側摩擦板93、及び制動ギア92は常時圧接状態を保つ。
【0033】
このような構成において駆動ギア96aから動力が伝達されると、伝動ギア91より旋回入力軸90に動力が伝達される一方、駆動ギア96aにより動力を伝達された制動ギア92が伝動ギア91とは異なる回転数で旋回入力軸90上で回転するので、伝動ギア91と制動ギア92間において相対回転差が発生し、伝動ギア91、相手側摩擦板93及び制動ギア92の間に摩擦抵抗が発生し、該旋回入力軸90に対するブレーキ作用が発生する。これにより、旋回油圧ポンプ26の中立位置が正確に出ておらず、旋回油圧モータ27が微動に回転しようとしても、旋回入力軸90が制動されているので左右リングギア38L・38Rの静止固定状態が維持される。
【0034】
続いて、図示せぬハンドブレーキを操作することにより走行系伝動機構Rに制動力を付与させる駐車ブレーキ機構Tについて、図6を用いて説明する。まず、ハンドブレーキに連動連結したブレーキアーム113を回動操作すると連動してカム軸110が回転する。そしてカム軸110の回転によりプレッシャープレート111が回動するとともに図7において左方向への推力が発生して、副変速従動軸45上に一体的に装着された摩擦板とミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる多板式摩擦ブレーキ112を押圧する。この押圧により副変速従動軸45に抵抗を与え駐車ブレーキ作用を発生させるのである。
【0035】
また、図7、図8及び図12に示すように走行油圧ポンプ23の入力軸23aの他端はケース外側に突出し、外側面に第一・第二無段変速ユニット25・28に対する作動油補給用のチャージポンプCPが付設され、前記入力軸23aからの動力によって駆動され、また、旋回油圧ポンプ26の入力軸26aの他端も、入力ケース部22a、蓋体22bを貫通して突出し、該蓋体22b外側面に刈取部の昇降用ポンプSPを付設し、動力を伝えている。
【0036】
前記チャージポンプCPと昇降用油圧ポンプSPとの各々の吸入側は図10に示すようにミッションケース22の右側ケース部22R外側面に配設したサクションポート151・152に配管を介して接続されている。図8で示すようにミッションケース22の内部には互いに仕切られた第一・第二油室142a・142bが形成され、該第一油室142aは、ミッションケース22内に収容したギア等を潤滑する潤滑油が溜められた油溜めに開放されその内部にストレーナ141が横架されている。このストレーナ141にて濾過された油がミッションケース22のケース部22L外側面に取付けた外装式の油フィルタ140を通過して更に濾過され、第二油室142b内に溜められてサクションポート151・152より吸い込まれるようになっている。
【0037】
また、図9に示すように、ミッションケース22のケース部22L前方寄りの外側面には、前記刈取部8を対地昇降操作自在な昇降バルブユニットVUが配置されている。即ち、昇降バルブユニットVUのバルブケース150がケース部22Lの外側面に脱着自在に付設され、該バルブケース150の正面にはポンプポート153とシリンダポート155が、下面にはタンクポートが、上面には三位置切換式で電磁操作式の方向制御弁147が配設されている。昇降用ポンプSPから送られる作動油がポンプポート153に導入される。
【0038】
次に、本発明の要部である刈取PTO軸55のクラッチ収容部202について説明する。
図11に示すように、上述の左側ケース部22Lの左側側壁上部外側には椀状の壁22cが形設されて、その内部に収容凹部(図12における58)を形成している。一方、上述の刈取PTO軸55は軸心部分に油路55cを形成して中空状に構成しており、該刈取PTO軸55の左側は前記左側ケース部22Lの側壁部分に軸支され、その先端は該側壁から外側に突出して、前記収容凹部58内に位置している。
【0039】
該収容凹部58内において、該刈取PTO軸55の先端にはニードルベアリング59が設置される小径部分が形成され、該刈取PTO軸55の軸支部分と上記小径部分との間において、刈取PTO軸55の外周面にはスプラインを刻設している。そして、該スプラインには、後述の伝動筒60をスプライン嵌合する構成としている。
上記伝動筒60は、円筒の一端を平面で閉じた形状としており、該閉塞部分の中央に貫通孔を開口し、該貫通孔の内周面にスプライン溝を形成して、前記刈取PTO軸55に形成したスプラインに噛合するよう外嵌し、同一軸心上で一体的に回動するようにしている。
【0040】
該伝動筒60の内部には、刈取走行同調軸57が同一軸心上に配置され、該刈取走行同調軸57の一端の軸心位置に穿設した穴57aの内周に前記ニードルベアリング59が装着されて前記刈取PTO軸55の小径部が挿入される。そして、該刈取走行同調軸57端は、上記ニードルベアリング59により前記刈取PTO軸55に対し相対回転自在に支持している。
そして、該伝動筒60の内周面には一方向クラッチ64が取り付けられる。該一方向クラッチ64は、伝動筒60の内周面と刈取走行同調軸57の外周面との間に位置して、刈取PTO軸55が機体前進方向に回転するときはクラッチが係合して伝動筒60の回転を刈取走行同調軸57に伝達し、機体後進時に逆方向に回転するときはクラッチの係合が解除されて空転し、刈取走行同調軸57へ回転を伝達しないようにしている。
【0041】
そして前記刈取PTO軸55先端部、ニードルベアリング59、伝動筒60、刈取走行同調軸57及び一方向クラッチ64を収容した収容凹部58は、蓋体22dによって閉じられる。即ち、この蓋体22dと左側ケース部22Lの収容凹部58とにより、一方向クラッチ64を収容するための小区画たるクラッチ収容部202が構成される。
該蓋体22dは取付ボルト65によって左側ケース部22Lに脱着自在としている。そして、前記刈取走行同調軸57は、該蓋体22dにベアリングを介して軸支されて外側に突出し、その先端には刈取出力プーリー55bを取り付けている。
【0042】
上記のようにクラッチ収容部202を構成することにより、図12に示すように取付ボルト65を緩めて外すことにより蓋体22dを取り外すことができ、ミッションケース22全体を分解することなく、一部の分解のみでクラッチ収容部202内部の一方向クラッチ64が簡単に点検・修理・交換できるのである。
【0043】
また、前述のチャージポンプCPにより第一・第二無段変速ユニット25・28に補給され、該第一・第二無段変速ユニット25・28からの余剰油となる潤滑油は、前記収容凹部58内部において図13に矢印で示す如く流れる。即ち、第一・第二無段変速ユニット25・28から溢れた潤滑油は、図10に示すように、油孔164を通じて入力ケース部22a内に排出され、該入力ケース部22aの底部に油溜め201を形成する。入力ケース部22a内はミッションケース22の右側ケース22Rと左側ケース22Lとで区画された走行駆動用歯車収容部200内と油孔165を通じて連通しているので、油溜め201に溜まる油量が油孔165にて規定されオーバーフローする分は走行駆動用歯車収容部200に戻される。この入力ケース部22a内に突入する前記刈取PTO軸55の軸端をこの油溜め201に臨ませてあるため、該油溜め201に溜まった潤滑油は刈取PTO軸55内の油路55cを通り刈取走行同調軸57の端部孔57a内に入る。
【0044】
そして、刈取PTO軸55先端外周面のニードルベアリング59を通過し、刈取走行同調軸57と伝動筒60との間の一方向クラッチ64内部を通って、伝動筒60外側を経由して収容凹部58から、最後には刈取PTO軸55を軸支するベアリングを通過して走行駆動用歯車収容部200へ導かれる。
このように一方向クラッチ64に潤滑油を流して流動性を付与して循環させることにより、クラッチ収容部202内にゴミ等が堆積することが防止され、一方向クラッチ64の寿命を長くすることができる。
【0045】
最後に、刈取PTO軸55の回転数を容易に変更可能とした構成について説明する。
即ち、図11に示すように、前述の副変速駆動軸53及び刈取PTO軸55の軸端は、入力ケース部22a内に突出している。該入力ケース部22aと前記走行駆動用歯車収容部200とは右側ケース部22Rの側面によって区画され隔たれている。該入力ケース部22a内に突入する副変速駆動軸53の端部外周面には、スプラインを刻設している。また、刈取PTO軸55端部の外周面にもスプラインを形成している。
【0046】
そして、副変速駆動軸53と刈取PTO軸55とを連動連結する二つのギア56・55aは、該二軸53・55上にそれぞれ形設されたスプラインに噛合する係合孔を有しており、それぞれ副変速駆動軸53・刈取PTO軸55に外嵌される。また、副変速駆動軸53には、更に同様の係合孔を有する入力用ギア44が外嵌される。
即ち、これら三つのギア56・55a・44は、副変速駆動軸53又は刈取PTO軸55のスプライン上を軸線方向に摺動可能としており、脱着が可能な構成となっている。そして、これらギア56・55a・44が抜けることのないように、ギア55aは止め輪55dにより刈取PTO軸55に固定され、ギア56及び入力用ギア44はベアリングを介して止め輪53aにより副変速駆動軸53に固定される。
【0047】
前記入力ケース部22aの蓋体22bは、取付ボルトの脱着により装脱自在に構成されている。
従って、図14に示すように蓋体22bを外し、軸53・55から止め輪53a・55dを抜くことにより、副変速駆動軸53と刈取PTO軸55とを連動連結する二つのギア56・55aを軸53・55より入力ケース部22a外へ抜き出して、異なる歯数のものに容易に交換することができる。従って、ミッションケース22全体を分解することなく、一部の分解のみによって刈取PTO軸55の回転数を変更することが可能であり、従って刈取部の仕様の変更や適用機種の変更等にも容易に対応できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏するのである。
即ち、請求項1に示す如く、ミッションケースの側壁に、刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを同一軸心上に対向配置せしめるクラッチ収容部を、ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは区画されるようにして設け、該クラッチ収容部内において、該刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを刈取走行同調軸が機体前進方向に回転するときに係合させる一方向クラッチを介して連結するとともに、前記クラッチ収容部を構成する一壁部分を前記ミッションケースの側壁に対し脱着自在に取り付けたので、ミッションケース全体を分解することなく、一壁部分をミッションケースの側壁から取り外すのみでクラッチ収容部内部の一方向クラッチが簡単に点検・修理・交換でき、メンテナンス性が向上する。
また、プーリーのボス部内部に一方向クラッチを配置してオイルを封入する構成に比しても、プーリー自体の構造が簡潔となるので、製造コストが低減される。
【0049】
請求項2に示す如く、前記クラッチ収容部と、前記ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは潤滑油が相互に流通自在に構成したので、潤滑油の循環により、一方向クラッチ内で発生する油分の固まりその他のゴミがクラッチ収容部内部に滞留することが防止される。従って、上述の異物による一方向クラッチの劣化が防止され、一方向クラッチの寿命を長くすることができ、結果として装置のメンテナンスコストの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る刈取部駆動装置を具備したコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく正面模式図。
【図4】トランスミッションのスケルトン図。
【図5】トランスミッション全体の模式斜視図。
【図6】走行用の第一無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図。
【図7】旋回用の第二無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図。
【図8】トランスミッションの左側面断面図。
【図9】同じく左側面図。
【図10】同じく右側面図。
【図11】刈取PTO軸を含むトランスミッションの断面展開図。
【図12】図9において凹部蓋体を取り外した状態を示すクラッチ収容部の断面拡大図。
【図13】クラッチ収容部内部における潤滑油の流れを示す断面拡大図。
【図14】トランスミッションにおいて刈取PTO軸の回転数を変更する方法を示した断面拡大図。
【符号の説明】
22 ミッションケース
22d 一壁部分(蓋体)
22L 左側ケース部
55 刈取PTO軸
55b 刈取出力プーリー
57 刈取走行同調軸
58 収容凹部
60 伝動筒
64 一方向クラッチ
200 走行駆動用歯車収容部
202 クラッチ収容部
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインの刈取部が機体前進時には正方向に駆動される一方、後進時には逆方向に駆動されないようにするために、駆動伝達経路の適宜位置に一方向クラッチを設けた刈取部駆動装置において、該一方向クラッチのメンテナンスを容易に行うことができ、かつ安価な刈取部駆動装置を提供するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンバインを用いた刈取作業においては、機体前進時には刈取作業を行うべく刈取部を駆動させる必要があるが、機体後進時に刈取部を逆転させると、刈り取った穀稈が前方に放出したり、詰まりの原因となるため、後進時には刈取部の逆方向駆動を防止するため、駆動伝達経路の適宜位置に一方向クラッチを設けた刈取部駆動装置の技術は公知となっている。
この刈取部駆動装置は、一方向クラッチを駆動伝達経路の適宜位置、例えば、ミッションケース内に収容される伝動ギアのボス部や駆動装置に軸支された刈取PTO軸先端の刈取出力プーリーのボス部等に設けており、コンバインを使用した刈取作業において、コンバイン前進時は該一方向クラッチが係合して刈取部を駆動させるべく刈取PTO軸を駆動回転させる一方、後進時には該一方向クラッチの係合が解除されて刈取PTO軸の駆動は行われなく空転して、刈取部を逆駆動させないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一方向クラッチをミッションケース内の伝動ギアのボス部に設けた刈取部駆動装置は、一方向クラッチがミッションケース内部にあるために、一方向クラッチをメンテナンス等するためにはミッションケース全体を分解し、修理・交換を行ってから再び組み立てる必要があり、面倒であった。特に一方向クラッチは一定使用期間毎に交換が必要なものであるため、その際に逐一ミッションケース全体の分解・組立を行う必要があり、メンテナンス上とりわけ不便であった。
また、一方向クラッチをPTO軸先端のプーリーのボス部に設けた構成の刈取部駆動装置は、クラッチが装置外部にあるためメンテナンス的には前述のものに比して多少有利であったが、一方向クラッチ用の油をプーリーのボス部に封入してシールする必要があるので、そのようなプーリーを特別に設計製造する必要が生じ、その結果コストアップとなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、ミッションケースの側壁に、刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを同一軸心上に対向配置せしめるクラッチ収容部を、ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは区画されるようにして設け、該クラッチ収容部内において、該刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを刈取走行同調軸が機体前進方向に回転するときに係合させる一方向クラッチを介して連結するとともに、前記クラッチ収容部を構成する一壁部分を前記ミッションケースの側壁に対し脱着自在に取り付けたものである。
【0005】
請求項2においては、前記クラッチ収容部と、前記ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは潤滑油が相互に流通自在に構成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係る刈取部駆動装置を具備したコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面模式図、図4はトランスミッションのスケルトン図、図5はトランスミッション全体の模式斜視図、図6は走行用の第一無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図、図7は旋回用の第二無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図、図8はトランスミッションの左側面断面図、図9は同じく左側面図、図10は同じく右側面図、図11は刈取PTO軸を含むトランスミッションの断面展開図、図12は図9において凹部蓋体を取り外した状態を示すクラッチ収容部の断面拡大図、図13はクラッチ収容部内部における潤滑油の流れを示す断面拡大図、図14はトランスミッションにおいて刈取PTO軸の回転数を変更する方法を示した断面拡大図である。
【0007】
まず、図1及び図2より本発明のコンバインの全体構成について説明する。
トラックフレーム1には左右のクローラ式走行装置2L・2Rを装設している。3は前記トラックフレーム1に架設する機台、4はフイードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀機である脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10等を備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダである。
13は排藁チェン14の終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒16を介して搬入する穀物タンク、17は前記穀物タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、18は丸型の操向ハンドル19を支架するハンドルポスト、68は主変速レバー、20は運転席であり、また、21は、機体左右方向に沿う出力軸を有するエンジンであり、このエンジン21からの動力によって、コンバインの前方より連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0008】
また、このコンバインのトランスミッションには図4に示すように、走行系の第一無段変速ユニット及び旋回系の第二無段変速ユニットを具備しており、それぞれのユニットはエンジン21より駆動力を得るよう構成されている。そして、エンジン21により駆動力を得た第一無段変速ユニットにより、正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が走行系伝動機構Rを介して差動機構33に伝達される。また、エンジン21により駆動力を得た第二無段変速ユニットにより正逆の回転方向と回転数増減の制御が行われたのち、駆動力が正逆転付与機構Sを介して差動機構33に伝達される。このような構成で、差動機構33に連動連結された左右のクローラ式走行装置2L・2Rの駆動スプロケット34L・34Rに駆動力を常時伝達し、前後直進走行及び、左右駆動スプロケット34L・34Rに対する回転数の相対的な増減制御により旋回を可能としたものであり、以下において、この走行及び旋回の機構について説明する。
【0009】
次にトランスミッションの構成について図3乃至図14より説明する。本実施例においては無段変速ユニットとして静油圧式無段変速装置(以下HST装置)Hを採用しており、前記クローラ式走行装置2L・2Rを駆動するトランスミッションMは前記ミッションケース22内の走行系伝動機構R、正逆転付与機構S及び遊星ギア機構35L・35R、及び該ミッションケース22に載置されたHST装置Hより構成される。HST装置Hは、一組の走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる主変速機構である走行用の第一無段変速ユニット25と、一組の旋回油圧ポンプ26及び旋回油圧モータ27からなる旋回機構である旋回用の第二無段変速ユニット28とからなる。また、ミッションケース22は左側(図6及び図7において左側)のケース部22L及び右側のケース部22Rより構成され、ケース部22L・22Rがミッションケース22の左右方向で中央付近において接合されている。
【0010】
そして、両ケース部22L・22Rの内部においては、主区画たる走行駆動用歯車収容部200が形成され、該収容部200内に潤滑油及びHST作動油としての油を溜めることができるようにしている。該走行駆動用歯車収容部200内には、遊星ギア機構35L・35R、走行系伝動機構Rの大部分及び後述の差動機構33等、駐車ブレーキ機構T等が配置されている。
【0011】
また、図9に示すように前記走行用の第一無段変速ユニット25は、機体の前後方向における後方(図9における右側)に横置きしたケース内に走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24が並設されており、該走行油圧ポンプ23の入力軸23a及び、該走行油圧モータ24の出力軸24aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0012】
また、前記旋回用の第二無段変速ユニット28においては、機体の前後方向における前方(図9における左側)から旋回油圧ポンプ26及び、旋回油圧モータ27が並設され横置きのケースに内装されており、該旋回油圧ポンプ26の入力軸26a及び、該旋回油圧モータ27の出力軸27aの各々が機体左右方向に軸支され、互いに前後方向に並列されている。
【0013】
一方、図3及び図5で示すように前記ミッションケース22の右側のケース部22Rの右上部には、ミッションケース22の上面よりも上方に延出する入力ケース部22aが突出形成されている。入力ケース部22aは右側ケース部22Rの右端部に一体形成され、該入力ケース部22aの右端開口を閉じるべく蓋体22bが固定されている。
そして、該ミッションケース22の上面に臨む入力ケース部22aの左側面において、機体後方から順に走行用の第一無段変速ユニット25及び旋回用の第二無段変速ユニット28を並設させるように、両無段変速ユニット25・28のケースを取り付けている。
【0014】
また、ミッションケース22内には走行系伝動機構R及び正逆転付与機構Sが配設されており、該走行系伝動機構Rへの動力を受け入れるギア42及び正逆転付与機構Sへの動力を受け入れるギア97が、該入力ケース部22a内に設けられている。そして、前記第一無段変速ユニット25の走行油圧モータ24の出力軸24aの一端が入力ケース部22a内に挿入されギア42に係合され、また、前記第二無段変速ユニット28の旋回油圧モータ27の出力軸27aの一端が入力ケース部22a内に挿入されギア97に係合されている。
【0015】
また、図6で示すように、走行用の第一無段変速ユニット25のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aが突出しており、その端部には二連の入力プーリー23bが入力軸23aに一体的に装着されており、また、図7で示すように、旋回用の第二無段変速ユニット28のケースから入力ケース部22aとは反対側へ、前記旋回油圧ポンプ26の入力軸26aが突出しており、その端部には一連の入力プーリー26bが入力軸26aに一体的に装着されている。
そして図5で示すように、前記入力プーリー23bの一方と入力プーリー26bとの間には伝動ベルト30が巻回されており、旋回油圧ポンプ26の入力軸26aを伝動ベルト30と、入力プーリー23b・26bを介し、前記走行油圧ポンプ23の入力軸23aに連動連結させている。31は伝動ベルト30を適当な張り具合に調整するテンションプーリーである。
また、前記エンジン21の出力軸21aには出力プーリー21bが一体的に装着されており、該出力プーリー21bと前記走行油圧ポンプ23の入力プーリー23bの他方との間には伝動ベルト29が巻回されている。このようにして走行油圧ポンプ23の入力軸23aを伝動ベルト29、プーリー等を介しエンジン21に連動連結させている。
【0016】
また、ミッションケース22の左側ケース部22Lの側面から、刈取走行同調軸57が突出しており、該刈取走行同調軸57上には一体的に回転する刈取出力プーリー55bが固設され、図3に示すように、該刈取出力プーリー55bと刈取入力ギアボックス120の刈取入力プーリー121との間に刈取伝動ベルト122が巻回されている。そしてミッションケース22内の副変速駆動軸53からギア56、55aを介して、エンジン21の出力が刈取入力ギアボックス120に伝達される。
【0017】
また、図5に示すように、第一・第二無段変速ユニット25・28の各々のケース上面には、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26に対する変速アーム23c、26cが配設されており、該変速アーム23c、26cの回動操作により、走行油圧ポンプ23及び旋回油圧ポンプ26の可動斜板145、146がそれぞれ傾動し、走行油圧モータ24及び旋回油圧モータ27の回転速度及び回転方向が制御される。
【0018】
次に、図4、図6及び図7より、差動機構33の構成について説明する。ミッションケース22内の差動機構33は左右の一対の遊星ギア機構35L・35Rを有し、各遊星ギア機構35L・35Rはサンギア36L・36Rと、該サンギア36L・36Rの外周で噛合う複数のプラネタリギア37L・37Rと、リングギア38L・38Rに一体構成されプラネタリギア37L・37Rに噛合うインターナルギア38a・38aと、サンギア軸39と同軸線上の車軸40L・40Rに固設されプラネタリギア37L・37Rを枢支するキャリア41L・41R等から構成されている。
該プラネタリギア37L・37Rは車軸40L・40Rから放射状に均等配置されてキャリア41L・41Rにそれぞれ回転自在に軸支され、左右のサンギア36L・36Rを挟んで左右のキャリア41L・41Rを配置させると共に、前記インターナルギア38a・38aは各プラネタリギア37L・37Rに噛み合い、サンギア軸39とは同一軸心上に配置させ、車軸40L・40Rに回転自在に軸支させている。
【0019】
そして、左右の前記サンギア36L・36Rは共通のサンギア軸39の外周面上に刻設され、両サンギア36L・36Rの中間部に係止したセンタギア46を介して、副変速機構32等からなる走行系伝動機構Rに連動連結され、さらに走行系伝動機構Rの入力部には、前記第一無段変速ユニット25の出力軸24aに係合されるギア42が連動連結されている。
【0020】
副変速機構32は、ミッションケース22に横架した副変速駆動軸53の一端に入力用ギア44を固設し、該副変速駆動軸53上には低速用ギア50、中速用ギア51を固設し、高速用ギア52を遊嵌し、高速ギア52と噛合可能なクラッチスライダ81を摺動可能にスプライン嵌合している。また、前記副変速駆動軸53と平行に回転自在に横架した副変速従動軸45上には、ギア47・48を遊嵌し、その間にクラッチスライダ80を両者に嵌合可能にスプライン嵌合し、出力ギア49を固設している。そして、ギア47と低速用ギア50、ギア48と中速用ギア51、ギア49と高速用ギア52とをそれぞれ常時嵌合させている。
【0021】
これら二つのクラッチスライダ80・81は運転席近傍に配備した一本の副変速レバーに連係され、該副変速レバーが操作されることで各々の軸53、45上を同時に摺動して、クラッチスライダ80・81のいずれかがギア47・48・52のいずれかと係合するように構成され、これにより、副変速従動軸45に三段の変速回転が得られ、出力ギア49から出力されるようになっている。
【0022】
このような構成において走行油圧モータ24の回転出力が、図6及び図8に示すように出力軸24aから入力ケース部22a内のギア42を介して、カウンター軸43上のギア43a、入力用ギア44を介して副変速機構32に伝達され、副変速機構32において変速したのち出力ギア49からカウンターギア54、センタギア46を経由して左右のサンギア36L・36Rを回転駆動させるのである。そして、左右の遊星歯車機構35L・35Rを介し車軸40に伝達させることにより、左右の駆動スプロケット34L・34Rを回転駆動させ、クローラ式走行装置2L・2Rを駆動させるのである。
【0023】
一方、図7及び図8に示すように、左右の前記リングギア38L・38Rは、支軸63上に遊嵌したギア63c・63d、アイドル軸62上のアイドルギア62a等からなる正逆転付与機構Sに連動連結され、さらに正逆転付与機構Sの入力部には第二無段変速ユニット28の出力軸27aに係合されるギア97が連動連結されている。
【0024】
そして、旋回用の第二無段変速ユニット28の旋回油圧モータ27の回転出力が、出力軸27aから順に伝達ギア97、カウンター軸96上の駆動ギア96aに伝達され、さらに入力用の伝動ギア91を介して旋回入力軸90、クラッチ装置Cを介してクラッチ軸61へと伝達される。
【0025】
前記旋回入力軸90には同歯数の駆動ギア90a・90bが刻設され、またクラッチ軸61上には、該駆動ギア90a・90bと常時噛み合うクラッチギア61b・61cが遊嵌配置されている。そして、両クラッチギア61b・61cの間に、該クラッチギア61b・61cの各々に対して係脱自在なクラッチスライダ61dを、クラッチ軸61と相対回転不能で、かつ、軸方向摺動自在に設置することにより、前記クラッチ装置Cを構成している。このクラッチスライダ61dは前述の副変速機構32のクラッチスライダ80・81と連動連係され、副変速機構32が中立位置にあるときにはクラッチギア61b・61cのいずれとも係合せず、副変速機構32が1速から3速までの伝動状態にあるときのみ係合して旋回入力軸90からの動力をクラッチ軸61に伝達し、クラッチ軸61と一体の出力ギア61aより出力するように構成されている。
【0026】
そして、クラッチ軸61上の出力ギア61aの回転は支軸63上に遊嵌した旋回入力ギア63bに直接的に伝達され、ギア63dを介してリングギア38Rに伝達される。また、左側のリングギア38Lに対しては、クラッチ軸61上の出力ギア61aの回転はアイドル軸62上のアイドルギア62aにて逆転されたのち、支軸63上の旋回入力ギア63aに伝達され、ギア63cを介してリングギア38Lに伝達される。このようにして旋回油圧モータ27の回転出力が、左右のリングギア38L・38Rを互いに逆回転方向へ、かつ左右同一回転数で伝達される。
【0027】
このような構成で、走行油圧ポンプ23の可動斜板145に対する変速アーム23cが、運転席近傍に配備した主変速レバー68にリンク機構を介して連動連係されており、第一無段変速ユニット25は該主変速レバー68の回動操作により可動斜板145の傾斜角度が変更されて走行油圧モータ24の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うことが可能となっている。また、旋回油圧ポンプ26の可動斜板146に対する変速アーム26cが操向ハンドル19にリンク機構を介して連動連係されており、第二無段変速ユニット28は該操向ハンドル19の回動により可動斜板146の傾斜角度が変更されて旋回油圧モータ27の正逆の回転方向と回転数増減及び回転停止の制御を行うよう構成されている。
【0028】
そして、操向ハンドル19を直進走行位置におくと、旋回油圧ポンプ26が中立位置となり、旋回油圧モータ27の駆動が停止して左右リングギア38が静止固定された状態となり、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23より圧油を吐出させて走行油圧モータ24を駆動すると、その回転はセンタギア46から左右のサンギア36L・36Rに同一回転数で伝達され、左右遊星ギア機構35L・35Rのプラネタリギア37L・37R、キャリア41L・41Rを介し、左右の駆動スプロケット34L・34Rが左右同回転方向の同一回転数で駆動されて、機体の前進直進走行が行われる。また、主変速レバー68にて走行油圧ポンプ23からの圧油吐出方向を反転させると、機体は後進状態で直進走行する。
【0029】
ここで、操向ハンドル19を右に切ると、旋回油圧ポンプ26は作動状態となって圧油を吐出し、該圧油を受けて旋回油圧モータ27が駆動される。該旋回油圧モータ27から出力された動力は旋回入力軸90からクラッチ装置Cを経て正逆転付与機構Sに至り、ここで同一回転数のまま二手に分けられ、その一方は前記遊星ギア機構35のリングギア38Lを正転させ、他方はリングギア38Rを逆転させる。正転するリングギア38Lの回転数はサンギア36Lによって正転している左キャリア41Lの回転数に加算される一方、逆転するリングギア38Rの回転数はサンギア36Rによって正転している右キャリア41Rの回転数に減算される。
これによって両駆動スプロケット34L・34Rの駆動状態を維持しつつ、駆動スプロケット34Lの回転数が駆動スプロケット34Rのそれよりも高くなって右方へ進路が変更されるのである。
【0030】
旋回油圧ポンプ26からの吐出油量は操向ハンドル19の切れ角度が大きくなるに従って増加し、これに応じて旋回油圧モータ27の回転数も無段に増加するので、左右の駆動スプロケット34・34に生じる相対回転差は次第に大きくなり、より小さな旋回半径で機体が旋回することとなる。また、操向ハンドル19を左に切ると、旋回油圧ポンプ26の圧油吐出方向が反転して旋回油圧モータ27の回転方向が逆になり、これによって最終的に、左キャリア41Lの回転数が減算される一方、右キャリア41Rの回転数が加算されて、駆動スプロケット34Rの回転数が駆動スプロケット34Lのそれよりも高くなって左方へ進路が変更されるのである。
【0031】
また、正逆転付与機構Sの旋回入力軸90には直進性を安定させるためのブレーキ機構Bが装備されている。このブレーキ機構Bは、旋回入力軸90上で一体的に回転する前記伝動ギア91と、旋回入力軸90に外嵌され、伝動ギア91よりも歯数が少ない摩擦板で構成した制動ギア92とを有する。そして、伝動ギア91は旋回油圧モータ27からの動力を伝達する駆動ギア96aと噛み合っており、該伝動ギア91を介して、旋回入力軸90に動力が伝達されるように構成されている。
【0032】
また、同じく駆動ギア96aと噛み合う制動ギア92が旋回入力軸90に二枚外嵌されており、さらに三枚の相手側摩擦板93・93・93が前記制動ギア92を挟み込むようにして旋回入力軸90と一体回転するよう装着され、該相手側摩擦板93と制動ギア92は、蓋体22bにて受け止められた皿バネ95のバネ力を受ける押圧板94を介して常時押圧されている。そして、この押圧力を受けることにより伝動ギア91、相手側摩擦板93、及び制動ギア92は常時圧接状態を保つ。
【0033】
このような構成において駆動ギア96aから動力が伝達されると、伝動ギア91より旋回入力軸90に動力が伝達される一方、駆動ギア96aにより動力を伝達された制動ギア92が伝動ギア91とは異なる回転数で旋回入力軸90上で回転するので、伝動ギア91と制動ギア92間において相対回転差が発生し、伝動ギア91、相手側摩擦板93及び制動ギア92の間に摩擦抵抗が発生し、該旋回入力軸90に対するブレーキ作用が発生する。これにより、旋回油圧ポンプ26の中立位置が正確に出ておらず、旋回油圧モータ27が微動に回転しようとしても、旋回入力軸90が制動されているので左右リングギア38L・38Rの静止固定状態が維持される。
【0034】
続いて、図示せぬハンドブレーキを操作することにより走行系伝動機構Rに制動力を付与させる駐車ブレーキ機構Tについて、図6を用いて説明する。まず、ハンドブレーキに連動連結したブレーキアーム113を回動操作すると連動してカム軸110が回転する。そしてカム軸110の回転によりプレッシャープレート111が回動するとともに図7において左方向への推力が発生して、副変速従動軸45上に一体的に装着された摩擦板とミッションケース22側に装着された摩擦板とが重合してなる多板式摩擦ブレーキ112を押圧する。この押圧により副変速従動軸45に抵抗を与え駐車ブレーキ作用を発生させるのである。
【0035】
また、図7、図8及び図12に示すように走行油圧ポンプ23の入力軸23aの他端はケース外側に突出し、外側面に第一・第二無段変速ユニット25・28に対する作動油補給用のチャージポンプCPが付設され、前記入力軸23aからの動力によって駆動され、また、旋回油圧ポンプ26の入力軸26aの他端も、入力ケース部22a、蓋体22bを貫通して突出し、該蓋体22b外側面に刈取部の昇降用ポンプSPを付設し、動力を伝えている。
【0036】
前記チャージポンプCPと昇降用油圧ポンプSPとの各々の吸入側は図10に示すようにミッションケース22の右側ケース部22R外側面に配設したサクションポート151・152に配管を介して接続されている。図8で示すようにミッションケース22の内部には互いに仕切られた第一・第二油室142a・142bが形成され、該第一油室142aは、ミッションケース22内に収容したギア等を潤滑する潤滑油が溜められた油溜めに開放されその内部にストレーナ141が横架されている。このストレーナ141にて濾過された油がミッションケース22のケース部22L外側面に取付けた外装式の油フィルタ140を通過して更に濾過され、第二油室142b内に溜められてサクションポート151・152より吸い込まれるようになっている。
【0037】
また、図9に示すように、ミッションケース22のケース部22L前方寄りの外側面には、前記刈取部8を対地昇降操作自在な昇降バルブユニットVUが配置されている。即ち、昇降バルブユニットVUのバルブケース150がケース部22Lの外側面に脱着自在に付設され、該バルブケース150の正面にはポンプポート153とシリンダポート155が、下面にはタンクポートが、上面には三位置切換式で電磁操作式の方向制御弁147が配設されている。昇降用ポンプSPから送られる作動油がポンプポート153に導入される。
【0038】
次に、本発明の要部である刈取PTO軸55のクラッチ収容部202について説明する。
図11に示すように、上述の左側ケース部22Lの左側側壁上部外側には椀状の壁22cが形設されて、その内部に収容凹部(図12における58)を形成している。一方、上述の刈取PTO軸55は軸心部分に油路55cを形成して中空状に構成しており、該刈取PTO軸55の左側は前記左側ケース部22Lの側壁部分に軸支され、その先端は該側壁から外側に突出して、前記収容凹部58内に位置している。
【0039】
該収容凹部58内において、該刈取PTO軸55の先端にはニードルベアリング59が設置される小径部分が形成され、該刈取PTO軸55の軸支部分と上記小径部分との間において、刈取PTO軸55の外周面にはスプラインを刻設している。そして、該スプラインには、後述の伝動筒60をスプライン嵌合する構成としている。
上記伝動筒60は、円筒の一端を平面で閉じた形状としており、該閉塞部分の中央に貫通孔を開口し、該貫通孔の内周面にスプライン溝を形成して、前記刈取PTO軸55に形成したスプラインに噛合するよう外嵌し、同一軸心上で一体的に回動するようにしている。
【0040】
該伝動筒60の内部には、刈取走行同調軸57が同一軸心上に配置され、該刈取走行同調軸57の一端の軸心位置に穿設した穴57aの内周に前記ニードルベアリング59が装着されて前記刈取PTO軸55の小径部が挿入される。そして、該刈取走行同調軸57端は、上記ニードルベアリング59により前記刈取PTO軸55に対し相対回転自在に支持している。
そして、該伝動筒60の内周面には一方向クラッチ64が取り付けられる。該一方向クラッチ64は、伝動筒60の内周面と刈取走行同調軸57の外周面との間に位置して、刈取PTO軸55が機体前進方向に回転するときはクラッチが係合して伝動筒60の回転を刈取走行同調軸57に伝達し、機体後進時に逆方向に回転するときはクラッチの係合が解除されて空転し、刈取走行同調軸57へ回転を伝達しないようにしている。
【0041】
そして前記刈取PTO軸55先端部、ニードルベアリング59、伝動筒60、刈取走行同調軸57及び一方向クラッチ64を収容した収容凹部58は、蓋体22dによって閉じられる。即ち、この蓋体22dと左側ケース部22Lの収容凹部58とにより、一方向クラッチ64を収容するための小区画たるクラッチ収容部202が構成される。
該蓋体22dは取付ボルト65によって左側ケース部22Lに脱着自在としている。そして、前記刈取走行同調軸57は、該蓋体22dにベアリングを介して軸支されて外側に突出し、その先端には刈取出力プーリー55bを取り付けている。
【0042】
上記のようにクラッチ収容部202を構成することにより、図12に示すように取付ボルト65を緩めて外すことにより蓋体22dを取り外すことができ、ミッションケース22全体を分解することなく、一部の分解のみでクラッチ収容部202内部の一方向クラッチ64が簡単に点検・修理・交換できるのである。
【0043】
また、前述のチャージポンプCPにより第一・第二無段変速ユニット25・28に補給され、該第一・第二無段変速ユニット25・28からの余剰油となる潤滑油は、前記収容凹部58内部において図13に矢印で示す如く流れる。即ち、第一・第二無段変速ユニット25・28から溢れた潤滑油は、図10に示すように、油孔164を通じて入力ケース部22a内に排出され、該入力ケース部22aの底部に油溜め201を形成する。入力ケース部22a内はミッションケース22の右側ケース22Rと左側ケース22Lとで区画された走行駆動用歯車収容部200内と油孔165を通じて連通しているので、油溜め201に溜まる油量が油孔165にて規定されオーバーフローする分は走行駆動用歯車収容部200に戻される。この入力ケース部22a内に突入する前記刈取PTO軸55の軸端をこの油溜め201に臨ませてあるため、該油溜め201に溜まった潤滑油は刈取PTO軸55内の油路55cを通り刈取走行同調軸57の端部孔57a内に入る。
【0044】
そして、刈取PTO軸55先端外周面のニードルベアリング59を通過し、刈取走行同調軸57と伝動筒60との間の一方向クラッチ64内部を通って、伝動筒60外側を経由して収容凹部58から、最後には刈取PTO軸55を軸支するベアリングを通過して走行駆動用歯車収容部200へ導かれる。
このように一方向クラッチ64に潤滑油を流して流動性を付与して循環させることにより、クラッチ収容部202内にゴミ等が堆積することが防止され、一方向クラッチ64の寿命を長くすることができる。
【0045】
最後に、刈取PTO軸55の回転数を容易に変更可能とした構成について説明する。
即ち、図11に示すように、前述の副変速駆動軸53及び刈取PTO軸55の軸端は、入力ケース部22a内に突出している。該入力ケース部22aと前記走行駆動用歯車収容部200とは右側ケース部22Rの側面によって区画され隔たれている。該入力ケース部22a内に突入する副変速駆動軸53の端部外周面には、スプラインを刻設している。また、刈取PTO軸55端部の外周面にもスプラインを形成している。
【0046】
そして、副変速駆動軸53と刈取PTO軸55とを連動連結する二つのギア56・55aは、該二軸53・55上にそれぞれ形設されたスプラインに噛合する係合孔を有しており、それぞれ副変速駆動軸53・刈取PTO軸55に外嵌される。また、副変速駆動軸53には、更に同様の係合孔を有する入力用ギア44が外嵌される。
即ち、これら三つのギア56・55a・44は、副変速駆動軸53又は刈取PTO軸55のスプライン上を軸線方向に摺動可能としており、脱着が可能な構成となっている。そして、これらギア56・55a・44が抜けることのないように、ギア55aは止め輪55dにより刈取PTO軸55に固定され、ギア56及び入力用ギア44はベアリングを介して止め輪53aにより副変速駆動軸53に固定される。
【0047】
前記入力ケース部22aの蓋体22bは、取付ボルトの脱着により装脱自在に構成されている。
従って、図14に示すように蓋体22bを外し、軸53・55から止め輪53a・55dを抜くことにより、副変速駆動軸53と刈取PTO軸55とを連動連結する二つのギア56・55aを軸53・55より入力ケース部22a外へ抜き出して、異なる歯数のものに容易に交換することができる。従って、ミッションケース22全体を分解することなく、一部の分解のみによって刈取PTO軸55の回転数を変更することが可能であり、従って刈取部の仕様の変更や適用機種の変更等にも容易に対応できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏するのである。
即ち、請求項1に示す如く、ミッションケースの側壁に、刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを同一軸心上に対向配置せしめるクラッチ収容部を、ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは区画されるようにして設け、該クラッチ収容部内において、該刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを刈取走行同調軸が機体前進方向に回転するときに係合させる一方向クラッチを介して連結するとともに、前記クラッチ収容部を構成する一壁部分を前記ミッションケースの側壁に対し脱着自在に取り付けたので、ミッションケース全体を分解することなく、一壁部分をミッションケースの側壁から取り外すのみでクラッチ収容部内部の一方向クラッチが簡単に点検・修理・交換でき、メンテナンス性が向上する。
また、プーリーのボス部内部に一方向クラッチを配置してオイルを封入する構成に比しても、プーリー自体の構造が簡潔となるので、製造コストが低減される。
【0049】
請求項2に示す如く、前記クラッチ収容部と、前記ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは潤滑油が相互に流通自在に構成したので、潤滑油の循環により、一方向クラッチ内で発生する油分の固まりその他のゴミがクラッチ収容部内部に滞留することが防止される。従って、上述の異物による一方向クラッチの劣化が防止され、一方向クラッチの寿命を長くすることができ、結果として装置のメンテナンスコストの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る刈取部駆動装置を具備したコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく正面模式図。
【図4】トランスミッションのスケルトン図。
【図5】トランスミッション全体の模式斜視図。
【図6】走行用の第一無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図。
【図7】旋回用の第二無段変速ユニットを含むトランスミッションの断面展開図。
【図8】トランスミッションの左側面断面図。
【図9】同じく左側面図。
【図10】同じく右側面図。
【図11】刈取PTO軸を含むトランスミッションの断面展開図。
【図12】図9において凹部蓋体を取り外した状態を示すクラッチ収容部の断面拡大図。
【図13】クラッチ収容部内部における潤滑油の流れを示す断面拡大図。
【図14】トランスミッションにおいて刈取PTO軸の回転数を変更する方法を示した断面拡大図。
【符号の説明】
22 ミッションケース
22d 一壁部分(蓋体)
22L 左側ケース部
55 刈取PTO軸
55b 刈取出力プーリー
57 刈取走行同調軸
58 収容凹部
60 伝動筒
64 一方向クラッチ
200 走行駆動用歯車収容部
202 クラッチ収容部
Claims (2)
- ミッションケースの側壁に、刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを同一軸心上に対向配置せしめるクラッチ収容部を、ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは区画されるようにして設け、該クラッチ収容部内において、該刈取PTO軸と刈取走行同調軸とを刈取走行同調軸が機体前進方向に回転するときに係合させる一方向クラッチを介して連結するとともに、前記クラッチ収容部を構成する一壁部分を前記ミッションケースの側壁に対し脱着自在に取り付けたことを特徴とするコンバインの刈取部駆動装置。
- 前記クラッチ収容部と、前記ミッションケースの走行駆動用歯車収容部とは潤滑油が相互に流通自在に構成してある請求項1記載のコンバインの刈取部駆動装置。
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