JP4733295B2 - トラクタのトランスミッション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタのトランスミッションにおける、油圧作動式PTOクラッチへの油供給レイアウトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車体の後方に作業機を接続可能とし、作業機を牽引するとともに駆動させて種々の作業を行うトラクタは公知とされている。このトラクタの一般的な構成として、車体前部にエンジンを配置し、該エンジンの動力を入力し変速し後車軸へ伝達するためのトランスミッションを車体後部に配置する構成がある。この構成において該トランスミッションは、その前部に入力軸を設ける一方、後部には後車軸を支持するとともに作業機を駆動するためのPTO軸を配置し、前方から入力されたエンジンの動力は分岐されて、後方の後車軸及びPTO軸に伝達されることとなる。また、トランスミッションには、前記後車軸やPTO軸に対する動力を変速したり断接したりするための機構、例えばHSTや副変速装置やPTOクラッチ装置やPTO変速装置等が備えられている。
【0003】
前記PTOクラッチ装置については、これを油圧作動式とする構成が公知とされている。そして従来は、例えば特願平4−59436号に示すように、PTOクラッチ装置に圧油を供給するための補助油圧ポンプをミッションケースの左右一側に取り付ける一方、PTOクラッチ装置を断/接するための切換弁をミッションケースの左右他側に配置するレイアウトとなっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したような従来のレイアウトでは、補助油圧ポンプから切換弁を介してPTOクラッチ装置へ至る油経路が複雑になってしまう。即ち、左右一側の補助油圧ポンプから吐出された油を、左右他側の切換弁へ導き、更にミッションケース内部のPTOクラッチ装置へ導入させるという複雑な油経路レイアウトを採用せざるを得ないのである。従って、配管を用いて上述の油経路を構成する場合は長くて複雑な形状の配管が必要になるし、ミッションケースの壁部に油路や油溝を形成して上述の油経路を構成する場合は油路等の構造が複雑となってミッションケース製造コストが増大してしまう。また、補助油圧ポンプと切換弁とを左右に振り分けて配置する従来のレイアウトでは、トランスミッションの左右幅が増大し、コンパクトなトランスミッションを提供できなくなってしまう。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1においては、ミッションケース(29)内に油圧作動式のPTOクラッチ機構(69)を内装し、該PTOクラッチ機構(69)に圧油を供給する供給源である補助油圧ポンプ(65)を設け、該補助油圧ポンプ(65)は、前記ミッションケース(29)の左右一側の側壁の、上部外面に取り付けたポンプ取付ケース(200)に装着するとともに、前記PTOクラッチ機構(69)を断接操作するPTO入切弁(79)を、前記ポンプ取付ケース(200)の、補助油圧ポンプ(65)を取り付けた面とは他の面に取付け、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)を、ミッションケース(29)に形成した前壁(90)に支持させ、該前壁(90)は少なくとも一側側方に向けて一体的に延出して、該ミッションケース(29)の側壁の一部をなすように形成し、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)の内部に穿設する油路と、前記PTO入切弁(79)とを、該ポンプ取付ケース(200)の取付面から前記前壁(90)に形成された油経路(506・508)を介して連通したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0008】
図1は本発明のトランスミッションを備えたトラクタの全体側面図である。図2はトランスミッションの側面断面展開図、図3はトランスミッションの平面断面展開図、図4は図2におけるX−X断面矢視図である。図5はトラクタの油圧回路図である。
【0009】
〔トラクタの構成〕
図1に示す農用トラクタ1においては前後方向に沿う左右の車両フレーム3を配置し、該車両フレーム3の後端部にトランスミッション14のミッションケース29前面を取り付け、該ミッションケース29の後部左右側面にはリアアクスルケース15・15が配置される。符号2は伝動カバーである。トラクタ1後部には作業機の接続を可能としており、該作業機を駆動するためのリアPTO軸23が、ミッションケース29の後端から突出されて支持される。また、車体の腹部にはモア140が支持されており(ミッドマウントモア)、該モア140を駆動するためのミッドPTO軸25が、ミッションケース29の底面に取り付けられたカバー29cに支持されて、前方に突出される。モア140はその上部に入力軸141を支持する構成としており、該入力軸141と前記ミッドPTO軸25とは、伝達軸142やユニバーサルジョイントを介して連結されている。
【0010】
車両フレーム3の前下方にはフロントアクスルケース12を支持しており、該フロントアクスルケース12の左右端に前輪4・4を懸架している。また、上記左右のリアアクスルケース15・15には後車軸16をそれぞれ支持しており、左右一対の該後車軸16・16のそれぞれの外端に後輪5・5を取り付けている。ミッションケース29両側面にはデフ出力軸15a・15aが突出支持され、前記後車軸16・16と連動連結されている。ミッションケース29の後部上面には、作業機昇降用のリフトアーム21を有する油圧リフト装置22が備えられている。
【0011】
車両フレーム3の左右両側にはステップ6・6を略水平に配設している。また、トランスミッション14の上方には座席7を配設し、車両フレーム3の前後中途部にはダッシュボード8を立設している。該ダッシュボード8の上面には計器パネル11を設け、更に前輪4・4を操向操作するためのステアリングハンドル9を設けている。
【0012】
ダッシュボード8の左右一側側面から変速レバー41が横向きに突出されて、その握り部を機体略左右方向へ向けながら前後回動可能に支持されている。該変速レバー41は適宜のリンク機構を介して、前記トランスミッション14の後述するコントロールアーム14dに連係される。機体左側のステップ6上には走行停止ペダル47が枢支されており、該走行停止ペダル47を踏動することによりトランスミッション14を中立状態において車両を停止できるように連動連係している。この走行停止ペダル47はまた、後述のPTOクラッチ機構69が接続されているときにこれを切断するように、該PTOクラッチ機構69にも連動連係させてある。
【0013】
トランスミッション14内には左右の前記デフ出力軸15a・15aを駆動するための副変速機構や差動機構等が配置され、該副変速機構は、上記座席7の側部に配設された副変速レバー24により変速切換可能とされる。また、上記リアPTO軸23・ミッドPTO軸25への動力を断接するための機構も、該トランスミッション14内に配置される。トランスミッション14の詳細な構成については後述する。
【0014】
この構成において、エンジン26の駆動力がトランスミッション14に入力され、左右一対のデフ出力軸15a・15aを介して、リアアクスルケース15内の左右の後車軸16・16を経由したのち、後輪5・5を駆動する。また、トランスミッション14前部に支持される前輪駆動取出軸19には該デフ出力軸15a・15aと同期する回転が得られ、該前輪駆動取出軸19の回転はプロペラシャフト13やユニバーサルジョイントを介してフロントアクスルケース12に伝達され、左右の前輪4・4を駆動する。また、トランスミッション14に支持されるリアPTO軸23・ミッドPTO軸25に対してもエンジン26の動力が伝達されて、車両後端に取り付けられる作業機や、車両腹部の前記モア140を駆動できるようにしている。
【0015】
前記車両フレーム3上にはエンジン26を防振支持している。エンジン26の周囲にはラジエータやバッテリー、エアクリーナやマフラー等の装置群を配設し(図略)、これら装置群の周囲は図1に示すようにフロントカバー17やサイドカバー18・18やボンネットフード10で覆われている。エンジン26のクランク軸は後方に突出されてフライホイール48を取り付けており、該フライホイール48は、図示しないダンパー機構、二つのユニバーサルジョイント50・52、及び、下向きに傾斜する伝達シャフト51を介して、トランスミッション14の入力軸14bに連結させている。
【0016】
〔トランスミッションの構成〕
次に、本発明のトランスミッションについて、その構成を説明する。トランスミッション14は図2と図3に示すように、前側と後側のケース半部29a・29bを有する割り状に構成されたミッションケース29を備えており、その前面には主変速機構としての静油圧式無段変速装置(以下「HST」と称する。)14aが配設され、その入力軸14bをHST14aのハウジング14cより前方へ突出支持している。HST14aの下方においてミッションケース29の前面から前記前輪駆動取出軸19が突出されて支持され、また、ミッションケース29の後端には前記リアPTO軸23が支持されている。更には、前記前側ケース半部29aの下面にはカバー29cが付設されて、該カバー29cの前面から前記ミッドPTO軸25が突出されて支持される。
【0017】
図2・図3に示すように、前側ケース半部29aは前端に壁部90(以下「前壁」という。)を有し、後端側を開口させてある。一方、後側ケース半部29bは後端に壁部91(以下「後壁」という。)を有し、前端を開口させてある。後側ケース半部29bは前後中途部に仕切り壁108を形成し、ケース半部29bは、該仕切り壁108より後方の部分においてその上面を開口させている。前記前壁90は機体前後方向に垂直な平板状に形成されて機体上下左右方向に延出され、図14に示すように、その縁部はミッションケース29の天井壁や下壁、及び左右側壁の一部をなしている。
【0018】
前側ケース半部29aの後端縁と、後側ケース半部29bの前端縁とを接合して、前記仕切り壁108の前方に第一のチャンバ131を、仕切り壁108の後方に第二のチャンバ132を、それぞれ形成する。更に、後側ケース半部29bの後壁91にはカバー110が取り付けられて、該後壁91とカバー110との間に第三のチャンバ133を形成している。そして図2・図3に示すように、この第一のチャンバ131においてケース半部29aの前壁90とケース半部29bの仕切り壁108との間に、走行出力軸42、走行カウンタ軸45、前輪駆動取出軸19、PTO駆動主軸68、第一リアPTO伝動軸82を、前後方向に沿って配置し、互いに平行となるよう軸受支持する。また、ケース半部29bの後壁91と前記カバー110とにより、前後方向に沿って互いに平行な、後述する第二リアPTO伝動軸92とリアPTO軸23を軸受支持させる。
【0019】
ミッションケース29内部には一定量の油が充填され、後述の駆動系に配置される軸やギア等を自然潤滑する。この油はHST14aの作動油としての役割をも果たしている。ミッションケース29の左右一側における側壁の上部外面には、ポンプ取付ケース200を取り付けてある。該ポンプ取付ケース200の後面には第一補助油圧ポンプ65のケーシング300が取り付けられ、該ケーシング300の後面には、第二補助油圧ポンプ66のケーシング400が取り付けられる。このポンプ取付ケース200は図14に示すように、前記ミッションケース前壁90の左右一側の縁部であって、ミッションケース29の側壁の一部をなしている部分に、外側から取り付けられる。
【0020】
図5に示す如く、ミッションケース29内の油は、後述するポンプ駆動ドライブトレーン113により駆動される第一補助油圧ポンプ65によって吸い上げられ、前記HST14aの作動油循環油路20・20に対しチャージ油として圧送される。この第一補助油圧ポンプ65は後述するPTOクラッチ機構69や連れ回り防止ブレーキ装置97に対しても油を送る役割を果たし、送られた油は該機構69や装置97の作動油及び潤滑・冷却油として用いられる。また図5に示すように、ミッションケース29内の油は第二補助油圧ポンプ66によっても吸い上げられ、ここから圧送された油は二手に分岐されて、その一方は油圧リフト装置22へ導かれ、該装置22の作動油として用いられる。この油圧リフト装置22は、車両の適宜位置に設けられた作業機昇降レバー28の操作に応じて、作業機昇降用の前記リフトアーム21を上下昇降駆動して、トラクタ1の後部に接続する作業機の高さを変更できるように構成している。第二補助油圧ポンプ66から分岐された他方の油は、ステアリングハンドル9の操作力を低減するためのパワーステアリング装置27に導かれ、該装置27の作動油として用いられる。
【0021】
〔走行駆動系〕
トランスミッション14における走行駆動系を、主に図2を参照しながら説明する。この走行駆動系は、前記HST14aと、該HST14aの出力を更に変速する副変速機構43と、該副変速機構43により変速された回転を差動装置56を介して後車軸16・16に伝達させる後輪側ドライブトレーン111と、該副変速機構43により変速された回転を前輪駆動取出軸19に伝達させる前輪側ドライブトレーン112とによりなる。
【0022】
主変速機構としてのHST14aを説明する。前記ミッションケース29の前面略上半部に平板状のセンタセクション30が直立させて取り付けられ、該センタセクション30の前面上側にポンプ付設面が、前面下側にモータ付設面が、それぞれ形成されている。該センタセクション30には、後述するアキシャルピストン式の油圧ポンプ31及び油圧モータ32を収納させるための、HSTハウジング14cが取り付けられる。
【0023】
油圧ポンプ31を説明する。前記ポンプ付設面の中央にポンプ軸兼用とした前記入力軸14bを支持させ、該入力軸14bにシリンダブロック33を相対回転不能に嵌合し、該シリンダブロック33はセンタセクション30の前記ポンプ付設面に対して回転摺動自在に設置されている。該シリンダブロック33にはシリンダ孔を複数穿設して、それぞれの該シリンダ孔にピストン34を、付勢バネを介して往復摺動自在に嵌合している。ピストン群34・34・・・の頭部は可動斜板35に接当されており、可動斜板35の傾角を変更させることにより、ピストン34のストロークが変更されて吐出容積を無段的に変更することができる。該可動斜板35はトラニオンタイプに構成し、そのトラニオン軸はハウジング14c外に延出されてコントロールアーム14dが取り付けられ(図3)、該コントロールアーム14dは図外のリンク機構を介して前記変速レバー41に連係される。前記入力軸14bは前述したようにHSTハウジング14cから前方へ突出され、図1に示す伝達シャフト51等を介して、エンジン26のフライホイール48に連動連結されている。
【0024】
センタセクション30の内部には、前記油圧ポンプ31により吐出される圧油を以下に説明する油圧モータ32へ送油するための、作動油循環油路20・20が穿設されている(図3・図6等)。
【0025】
油圧モータ32を説明する。前記入力軸14bの下方に平行に配置されたモータ軸36が前記モータ付設面の中央に支持され、該モータ軸36にはシリンダブロック37を相対回転不能に嵌合し、該シリンダブロック37はセンタセクション30の前記モータ付設面に対して回転摺動自在に設置されている。該シリンダブロック37にはシリンダ孔を複数穿設して、それぞれの該シリンダ孔にピストン38を、付勢バネを介して往復動自在に嵌合している。ピストン38・38・・・の頭部は固定斜板39に接当されており、前記油圧ポンプ31の吐出容積に応じた速度の回転を、モータ軸36に得ることができるようにしている。前記モータ軸36は図2に示すように、センタセクション30を貫通して後方のケース半部29a内に突出させており、その後端に走行出力ギア40を固定している。
【0026】
副変速機構43について図2を参照して説明する。この副変速機構43はコンスタントメッシュタイプの二段変速式としており、前記走行出力軸42上に第一入力ギア44が遊嵌され、該第一入力ギア44は前記モータ軸36上の走行出力ギア40に噛合される。また、前記走行カウンタ軸45上には第一カウンタギア46を固定して、前記第一入力ギア44は該第一カウンタギア46にも噛合させるようにしている。前記走行カウンタ軸45には第一カウンタギア46よりも歯数の少ない第二カウンタギア49が形設され、該第二カウンタギア49は、前記走行出力軸42上に遊嵌させた、第二入力ギア53に噛合させている。そして、前記第一入力ギア44と前記第二入力ギア53とに挟まれた位置において、走行出力軸42上にクラッチハブを介してクラッチスライダ54を嵌合し、該クラッチスライダ54は走行出力軸42に対し相対回転不能かつ軸方向摺動自在としている。このクラッチスライダ54は適宜のリンク機構を介して、図1に示す前記副変速レバー24に連係されている。また、前記第一入力ギア44及び前記第二入力ギア53には、ともにクラッチスライダ54に係合し得る歯部を形成してあり、前記副変速レバー24を操作して該クラッチスライダ54を軸方向に摺動させて、それらのいずれかに係合させることにより、第一入力ギア44からの高速の回転又は第二入力ギア53の減速された回転を、択一的に走行出力軸42に得ることができるようにしており、また、それらのいずれにも係合させないことで、回転が伝達されない中立状態とすることもできるようになっている。
【0027】
走行出力軸42の回転は、前記後輪側ドライブトレーン111を介して後輪5・5に、前輪側ドライブトレーン112を介して前輪4・4に、それぞれ伝達される。
【0028】
後輪側ドライブトレーン111を説明する。前記走行出力軸42後端にはベベルピニオン55が形設され、該ベベルピニオン55は前記差動装置56の入力ベベルギア57に噛合される。差動装置56に入力された動力は左右のデフ出力軸15a・15aにトルク分配され、後車軸16・16にギアを介して伝達されて、後輪5・5を駆動する。このベベルピニオン55と前記第二入力ギア53との間には、後述の前輪側ドライブトレーン112及びミッドPTOドライブトレーン115を配置するためのスペースが設けられている。
【0029】
前輪側ドライブトレーン112を説明する。走行出力軸42の軸方向略中央部位上には前輪出力ギア58が固定され、該前輪出力ギア58には、前記走行カウンタ軸45上に遊嵌配置された中間ギア59が噛合される。ミッションケース29下方に支持されて前記前壁90よりその前端が突出するように配置した前記前輪駆動取出軸19上には、前輪伝動ギア60が固定され、該前輪伝動ギア60は前記中間ギア59と噛合される。この構成により、前記走行出力軸42と同期した回転が前輪駆動取出軸19に伝達され、前輪4・4を駆動することができる。
【0030】
〔油圧ポンプ駆動系〕
次に、前述した二つの補助油圧ポンプ65・66を駆動させるためのポンプ駆動ドライブトレーン113を説明する。図3に示すように、前記入力軸14bはセンタセクション30を貫通させて、その後端に出力ギア61を設けている。該出力ギア61に近接させてカウンタ軸62をケース半部29aの前壁90に片持ち支持させ、該カウンタ軸62上に油圧ポンプ駆動ギア63を回転自在に支持して、前記出力ギア61に噛合させている。
【0031】
ケース半部29aの左右一側の側壁上部外面にはポンプ取付ケース200が固定され、該ポンプ取付ケース200内には伝達ギア64が支持される。ポンプ取付ケース200には、ケース取付面200aと、該ケース取付面200aと垂直なポンプ取付面200bがそれぞれ形成され、ケース取付面200aを前記ケース半部29aの前記側壁に取り付けることによってポンプ取付ケース200をミッションケース29に固定する一方、ポンプ取付面200bには二つの補助油圧ポンプ65・66のケーシング300・400を連設し取り付けている。
【0032】
前記ケース半部29aにおいて、ポンプ取付ケース200を取り付ける部分には開口が形成され、該開口から前記油圧ポンプ駆動ギア63の歯部の一部が外方へ突出されて、該突出部分を前記ポンプ取付ケース200で覆うとともに、前記伝達ギア64を噛合させている。該伝達ギア64は、前記ポンプ取付ケース200の後面に連接した二つの補助油圧ポンプ65・66の共通のポンプ軸67に固定されている。この構成により、前記入力軸14bの動力により二つの補助油圧ポンプ65・66が駆動されることとなって、ミッションケース29内の油を、前述のパワーステアリング装置27や油圧リフト装置22等に圧送することになる。
【0033】
〔PTO駆動系〕
次に、前述のリアPTO軸23及びミッドPTO軸25を駆動させるための駆動系を説明する。図3・図4に示すように、出力ギア61を挟んで前記油圧ポンプ駆動ギア63の略反対側の位置に、PTO駆動主軸68が回転自在に支持される。該PTO駆動主軸68は前記入力軸14bに対してオフセットされた位置に配置され、該PTO駆動主軸68上には、前方側に油圧多板湿式のPTOクラッチ機構69を、後端に油圧多板湿式の連れ回り防止ブレーキ装置97を、それぞれ設置している。
【0034】
前記PTOクラッチ機構69の構成を説明する。該PTO駆動主軸68上に入力ギア70を相対回転自在に支持して前記出力ギア61に噛合させるとともに、円環状の凹部を有するクラッチハウジング71をPTO駆動主軸68上に相対回転不能に固定している。該円環状の凹部には油圧的に進退可能としたピストン72が嵌合されるとともに、前記入力ギア70の一側面は前記円環状の凹部に向けて筒状に延出させてボス部分とし、該ボス部分の外周面に取り付けられる複数の摩擦板と前記クラッチハウジング71の内周面に取り付けられる複数の摩擦板とを交互に積層させて、摩擦板群81を構成している。前記ピストン72は油圧により進退駆動され、摩擦板群81の圧接して前記入力ギア70とクラッチハウジング71とを摩擦係合させ、あるいは該圧接を解除して両者70・71の摩擦係合を解除し得るように構成している。PTO駆動主軸68の内部には給排油路73が軸方向に穿設されており、前記ピストン72の摩擦板群81に対する接離は、該給排油路73を介して圧油が給排されることにより行われる。
【0035】
連れ回り防止ブレーキ装置97の構成を説明する。図3に示すように、前記PTO駆動主軸68の一端はカップ状のブレーキハウジング103内に臨ませ、軸受を介して支持させてある。このブレーキハウジング103は、前記仕切り壁108において前記第一のチャンバ131を向く側面に開口形成した凹所116に対し、軸方向に差し込まれ、図示せぬ係合突起により回転不能とされている。該ブレーキハウジング103内に挿入させた前記PTO駆動主軸68の端部にはピストン104を油密的に嵌合させるとともに、ブレーキハウジング103に取り付けた摩擦板とPTO駆動主軸68に取り付けた摩擦板とを交互に積層させて摩擦板群106を構成し、前記ピストン104が摩擦板群106を押圧し摩擦係合させてPTO駆動主軸68に制動力を付与できるように構成している。
【0036】
ここで、前記ピストン104とブレーキハウジング103との間には更に皿バネ105が配置され、摩擦板群106を圧接させる方向の付勢力をピストン104に与えている。また、PTO駆動主軸68内に穿設された前記給排油路73は延出されて、該PTO駆動主軸68の後端面に開口している。従って、該給排油路73に圧油を供給すると、ピストン104は前記皿バネ105に抗して、摩擦板群106の圧接を解除する方向に後退され、PTO駆動主軸68の制動が解除される。一方で、該給排油路73の圧油をドレンすると、ピストン104は前記皿バネ105の弾発力を得て前進し、摩擦板群106を摩擦係合させ、PTO駆動主軸68に制動力を与える。
【0037】
即ち、前記PTOクラッチ機構69と連れ回り防止ブレーキ装置97とは相互連係して動作し、PTOクラッチ機構69が「接」状態のときは連れ回り防止ブレーキ装置97は「制動解除」状態とされ、PTOクラッチ機構69が「断」状態のときは連れ回り防止ブレーキ装置97は「制動」状態とされる。
【0038】
次に、前記PTO駆動主軸68からリアPTO軸23へ至る、リアPTOドライブトレーン114を説明する。前記HST14aの入力軸14bの後方にはリアPTO伝動軸82が、該入力軸14bと軸線を一致させて配置されている。リアPTO伝動軸82の一端は、前記入力軸14bの出力ギア61に設けた中心孔に挿入され、ニードルベアリングを介して支持されている。
【0039】
また、ミッドPTO軸25への動力断接を行うクラッチ機構としてのPTO動力切換機構83が前記PTO駆動主軸68の前後中途部上に配設され、該PTO動力切換機構83は図3に示すように、PTO駆動主軸68上に回転自在に配置される二つの出力ギア、即ちリアPTO出力ギア84及びミッドPTO出力ギア86と、両出力ギア84・86に挟まれた位置にてPTO駆動主軸68にキー固定されるスプラインハブ88と、該スプラインハブ88上に相対回転不能かつ軸方向摺動自在に取り付けられるクラッチスライダ85とによりなる。該クラッチスライダ85は車両座席の適宜位置に設けた図略のPTO切換レバーに連係される。上述した二つの出力ギア84・86にはそれぞれ上記クラッチスライダ85に係合し得る歯部を有しており、クラッチスライダ85を軸方向に摺動させることにより二つの出力ギア84・86のいずれか一方又は両方に係合し得るようになっている。これにより、PTO駆動主軸68の回転が、前記出力ギア84・86のうちいずれか一方又は両方に出力されることとなる。
【0040】
図3に示すように、前記第一リアPTO伝動軸82にはリアPTO伝動ギア87が固定され、該リアPTO伝動ギア87は、前記PTO動力切換機構83のリアPTO出力ギア84に噛合されている。第一リアPTO伝動軸82の後方には第二リアPTO伝動軸92が同心して配置され、前記第一リアPTO伝動軸82とカップリング93を介して一体的に連結される。また図4に示すように、第二リアPTO伝動軸92は前記第三のチャンバ133まで延出され、前記リアPTO軸23に対しギア94・95によって連動連結している。
【0041】
次に、前記PTO駆動主軸68からミッドPTO軸25へ至る、ミッドPTOドライブトレーン115を説明する。図2に示すように、前記第一のチャンバ131内の、前記副変速機構43と前記差動装置56とに前後を挟まれた位置、かつ、前記PTO動力切換機構83に隣接する位置にて、走行出力軸42上にミッドPTO伝動ギア98が遊嵌され、このミッドPTO伝動ギア98は該PTO動力切換機構83のミッドPTO出力ギア86に噛合されている。該ミッドPTO伝動ギア98は前記走行カウンタ軸45上に遊嵌された第一カウンタギア99に噛合され、該第一カウンタギア99は前記前輪駆動取出軸19上に遊嵌された第二カウンタギア100に噛合される。そして、図4に示すようにケース半部29bの底面には開口118が設けられ、該開口118を覆うようにカバー29cがケース半部29b底面に対して着脱自在に取り付けられる。該カバー29cの前後壁にはミッドPTO軸25が両持ち支持され、該カバー29c内のミッドPTO軸25上に固定したミッドPTO駆動ギア107に対し、前記開口118を通じてカバー29c内にその一部が突入する前記伝動ギア100を噛み合わせる。なお、ミッドPTO軸25が不要のときには、それを備えたカバー25a、第一・第二カウンタギア99・100、及び、ミッドPTO伝動ギア98、ミッドPTO出力ギア86、PTO動力切換機構83を取り去るとともに、リアPTO出力ギア84をPTO駆動主軸68に対して相対回転不能に取り付け、ケース半部29bの底外面に蓋を取り付けて開口118を閉じれば良い。
【0042】
〔油圧回路の構成〕
次に、前記PTOクラッチ機構69やブレーキ装置97、あるいはHST14a等へ圧油を供給するための具体的構成を、図5以降を参照しながら説明する。図6はHSTセンタセクションの作動油循環油路を示す正面断面図である。図7は補助油圧ポンプのミッションケースに対する取付けの様子を平面図的に示した、図6におけるA−A断面矢視図である。図8は図7におけるB−B断面矢視図、図9は同じくC−C断面矢視図、図10は同じくD−D断面矢視図、図11は同じくE−E断面矢視図、図12は同じくF−F断面矢視図、図13は同じくG−G断面矢視図である。図14はミッションケースの前側壁部に形成する溝の様子を示した正面図である。図15はポンプ取付ケースに設けたPTO入切弁の様子を示した平面断面図、図16はポンプ取付ケースに設けたリリーフ弁の様子を示した平面断面図である。
【0043】
ミッションケース29の第二のチャンバ132の底部にストレーナ74が設置され(図2・図3)、該ストレーナ74により濾過された油は、ケース半部29bの側壁肉厚部に穿設した油路75や、ケース半部29bの外側壁に取り付けた管継手76や、図示せぬ配管を介して、ミッションケース29一側に配置された第二補助油圧ポンプ66のケーシング400に形成される、二つの補助油圧ポンプ65・66共通の吸入ポート401(図8)へ導かれる。第二補助油圧ポンプ66においては図7・図8に示すように、前記ポンプ軸67に駆動ギア402を形設するとともに、該ポンプ軸67に平行に前記ケーシング400に従動軸403を支持し、該従動軸403には従動ギア404を形設して、両ギア402・404を相互噛合させて、外接ギアポンプを構成している。前記ポンプ軸67が駆動されることにより、両ギア402・404は吸入ポート401側の油をその歯溝に保持しながら回転し、ケーシング400の前記吸入ポート401と反対側に形成した吐出ポート405へ油を送り込む。該吐出ポート405から出た油は、図5に示す如く、油圧リフト装置22及びパワーステアリング装置27に導かれる。
【0044】
前記第二補助油圧ポンプ66のケーシング400には吸入孔406が穿設されて、その一端を、第二補助油圧ポンプ66のギア噛合部分の吸入ポート401寄りの部位に臨ませ、第一補助油圧ポンプ65の吸入ポートとしている。この吸入孔406の他端は、前記ケーシング400の、第一補助油圧ポンプ65のケーシング300に対する取付面(ケーシング400の前面)に連通される。
【0045】
図7に示すように、第一補助油圧ポンプ65のケーシング300後面には凹部が形成され、該凹部には、互いに係合しながら回転するインナーロータ301とアウターロータ302が収納されて、インナーロータ301を前記ポンプ軸67に相対回転不能に係止して、トロコイド型の油圧ポンプ65を形成している。前記吸入孔406はこの第一補助油圧ポンプ65の吸入側に連通されている。
【0046】
第一補助油圧ポンプ65のケーシング300には図9に示すように、油圧ポンプ65の吸入側溝303と吐出側溝304がそれぞれ形成される。そして、ポンプ軸67の駆動により前記ロータ301・302が回転され、吸入側溝303から吐出側溝304へ油を送り込むようにしている。前記吐出側溝304へ連通させてケーシング300には油路305を穿設し、該油路305に垂直に交差させてバルブ収容室306が形成され、該バルブ収容室306内には絞り311付きのバルブスプール307が付勢バネ308を介して配置されて、フローデバイダ78を構成している。このフローデバイダ78は、圧油をPTOクラッチ機構69側へ送る調整流ポート309と、HST14aのチャージ油路側へ送る余剰流ポート310を備えている。
【0047】
図7・図10に示すように、前記ポンプ取付ケース200のポンプ取付面200b(後面)には、背面視L字状の溝201が形成される。前記調整流ポート309は、該ポンプ取付面200bに向かい合うケーシング300の面(ケーシング300の前面)に向けて延出開口され、ケーシング300とポンプ取付ケース200との接合面において、前記調整流ポート309が前記L字状溝201の一端に連通される。図10・図13・図15に示すように、L字状溝201の他端からは、前記ポンプ取付面200bから直角に穿設した孔202の開口部が接続される。ポンプ取付ケース200のケース取付面200a(側面)からは連通孔203が開口され、該連通孔203と前記孔202とは、ポンプ取付ケース200の肉厚部分内部において直角をなして連通されている。
【0048】
図11に示すように、前記連通孔203がケース取付面200a(ポンプ取付ケース200の側面)に形成する開口には、該取付面200aに形設される側面視クランク状の溝204の中途部が接続される。図11・図13に示すように、該クランク状溝204の一端からは該ケース取付面200aに垂直に孔205が開口され、該孔205に直角に接続させてリリーフ孔206が穿設される。図11・図16に示すように、該リリーフ孔206の中途部からは、ドレン孔207を前記ケース取付面200aに向けて延出してある。ドレン孔207が前記ケース取付面200aに形成する開口には、該取付面200aに形成したL字状のドレン溝208の一端が接続される。また、該リリーフ孔206をドレン孔207に対して開閉して、前記PTOクラッチ機構69や連れ回り防止ブレーキ装置97の作動油圧を規定する、リリーフ弁128が配設される。このリリーフ弁128は、スプール209やそれを付勢するバネ210を用いて通例の如く構成されており、リリーフ孔206側の圧力が所定値以下であればスプール209はバネ210のバネ力によってドレン孔207を閉じる一方、リリーフ孔206側の圧力が前記所定値を上回るとスプール209がバネ210に抗して変位し、ドレン孔207を開いて圧油をドレンさせる。
【0049】
図12・図13・図16に示すように、ポンプ取付ケース200のドレン溝208の一端に位置を合わせて、前記ミッションケース29の前壁90側面(ポンプ取付ケース200を取り付ける側面)から、油孔501が穿設される。また、該ミッションケース29の前壁90前面には潤滑油供給溝502が形成され、該潤滑油供給溝502の一端と前記油孔501とは、連通孔503を介して連通されている。潤滑油供給溝502は図14に示す如く、HST入力軸14b支持部分の下方を迂回して、湾曲されながら斜下方に延出され、ドレンされた油を前記PTO駆動主軸68の前端部分の近傍に導いている。
【0050】
前記ミッションケース29の前壁90には円筒状のボス部507が形成され、該ボス部507の内周面に、前記PTO駆動主軸68の前端部寄りの部位が油密的に嵌合され、この前壁90にPTO駆動主軸68の支壁部としての役割を担わせている。前記ミッションケース29の前壁90前面に付設する、前記HST14aのセンタセクション30の後面には、図6や図16に示す如く、前記PTO駆動主軸68の前端部を収容する凹部601が形成されている。図14・図16等に示すように、センタセクション30背面には前記ボス部507を跨ぐように連絡溝602が欠設されて、該凹部601と前記潤滑油供給溝502とを連通している。従って、ドレン溝208からドレンされた油は、油孔501→連通孔503→潤滑油供給溝502→連絡溝602→凹部601と送られる。前記PTO駆動主軸68の内部には、前記給排油路73と平行に、直線状の潤滑油路89が形設されており、その一端が前記PTO駆動主軸68の前端面に開口している。前記凹部601に導かれた油は該開口を介して潤滑油路89へ導入され、前記PTO駆動主軸68内部を通って、PTOクラッチ機構69や、リアPTO出力ギア84・ミッドPTO出力ギア86や、連れ回り防止ブレーキ装置97を、潤滑及び冷却する。
【0051】
図11や図13に示すように、前記クランク状溝204の他端からも、該ケース取付面200aに垂直に孔211が開口され、この孔211は、ソレノイド式のPTO入切弁79の油導入ポートに接続される。このPTO入切弁79は、前記ダッシュボード8の上面に設けたPTO断接スイッチ150(図1)に電気的に接続されており、このPTO断接スイッチ150のON/OFF操作によりスプール212を電磁的に変位させて、前記クランク状溝204からの圧油を、クラッチ供給ポート213を介してPTOクラッチ機構69へ送る状態、又は、ドレンポート214を介してドレンする状態、のいずれかの状態に切り換えることができる。
【0052】
図13・図15に示すように、前記クラッチ供給ポート213は前記ケース取付面200aに開口され、該開口の位置に合わせて図12・図13に示すように、前記ミッションケース29の前壁90に側方から油孔504が開口される。また、該ミッションケース29の前壁90前面にはクラッチ作動油供給溝505が形成され、該クラッチ作動油供給溝505の一端と前記油孔504とは、連通孔506を介して連通されている。図14・図15に示すように、該PTO駆動主軸68の内部に穿設される給排油路73は、前記PTO駆動主軸68の前部の外周面に形設した環状溝73aに、油路73bを介して連通されている。そして、前記クラッチ作動油供給溝505の端部から連絡孔508が穿設され、該連絡孔508は図15に示す如く、前記PTO駆動主軸68の前端部を嵌合させる前記円筒状のボス部507を斜めに貫通して、前記PTO駆動主軸68の環状溝73aと前記クラッチ作動油供給溝505とが、この連絡孔508を介して連通するようにしている。以上のように、前記前壁90に形成される、油孔504、クラッチ作動油供給溝505、連通孔506、連絡孔508によって、前記PTO入切弁79から前記給排油路73に至る油経路の一部を形成しているのである。
【0053】
以上の構成において、前記PTO断接スイッチを「PTO駆動」位置に操作すると、PTO入切弁79は、クラッチ供給ポート213→油孔504→連通孔506→クラッチ作動油供給溝505→連絡孔508→環状溝73aを介して、前記給排油路73に圧油を供給し、PTOクラッチ機構69のピストン72は摩擦板群81を圧接するとともに、ブレーキ装置97のピストン104が摩擦板群106の押圧状態を解除する「クラッチ接・ブレーキ解放」状態となり、エンジン26からの動力が後述のPTO切換機構を介して、リアPTO軸23及びミッドPTO軸25に伝達され、作業機を駆動する。一方、前記PTO断接スイッチを「PTO停止」位置に操作すると、PTO入切弁79は前記給排油路73から圧油をドレンし、PTOクラッチ機構69のピストン72が摩擦板群81の押圧を解除するとともに、ブレーキ装置97のピストン104が摩擦板群106を押圧する「クラッチ断・ブレーキ作動」状態となり、リアPTO軸23・ミッドPTO軸25に対するエンジン26からの動力が断たれるとともに、直ちにブレーキ作用が働いて慣性回転を制動し、リアPTO軸23やミッドPTO軸25の連れ回りを防止する。
【0054】
HST14aの作動油循環油路20・20へ油をチャージする構成を説明する。図10に示す如く、前記ポンプ取付ケース200のポンプ取付面200b(背面)には、ポンプ軸67をJ字状に迂回する溝215が設けられてあり、該J字状の溝215の一端に、前記フローデバイダ78における余剰流ポート310が接続される。該J字溝の他端からは油孔216が穿設されて、該油孔216は、前記ケース取付面200aから垂直に欠設される油孔217に連通される。該油孔217に平行に、ケース取付面200aからは更に油孔218が穿設されて、該油孔218は、前記ケース取付面200bと直角をなして形成されている、油孔219に連通される。一方、前記ミッションケース29の、ポンプ取付ケース200のケース取付面200aに向かい合う部分には、上下方向に沿う略直線状の油溝509が形成されて、前記油孔217・218の開口端同士を接続している。
【0055】
油孔219の端部には、前記ケース取付面200aから直角に穿設させた油孔220が連通され、該油孔220の開口端に位置を合わせて、前記ミッションケース29の前壁90に側方から油孔510が開口される。また、該ミッションケース29の前壁90前面にはチャージ油供給溝511が形成され、該チャージ油供給溝511の一端と前記油孔510とは、連通孔512を介して連通されている。チャージ油供給溝511は左右水平に延出される。
【0056】
ミッションケース29の前壁90に取り付ける前記センタセクション30においては、前記チャージ油供給溝511に連通する位置に、チャージ油導入孔603が形設される。このチャージ油導入孔603の穿設位置は、HST14aの左右平行で上下に延出される前記作動油循環油路20・20の間の位置としている。該チャージ油導入孔603及び、前記作動油循環油路20・20を連通させる、チャージ油供給油路604が、左右水平方向に該センタセクション30に穿設され、該チャージ油供給油路604がそれぞれ作動油循環油路20・20に接続する部分には、逆流防止のためのチェック弁121・121が配設される。一方の作動油循環油路20に配設されるチェック弁121は、絞り122付きとして、HSTの中立不感帯域を拡大させている。
【0057】
前記チャージ油供給油路604の開口端には、前記チャージ油圧を規定するリリーフ弁123が配設されている。このリリーフ弁123は、チャージされる油の油圧が所定のチャージ圧を上回ると、ドレンポート605を開き、後述するドレン室513からドレン孔514を介して油をドレンするようになっている。また、作動油循環油路20・20の下端には、センタセクション30後面に向かって開口する孔609・609がそれぞれ連通される。この孔609はそれぞれ、図5の油圧回路図に示すチェック弁124やフィルタ125に連通しており、負圧側となった作動油循環油路20に油を供給する役割を果たす。
【0058】
センタセクション30の側面からは油導入油路606が穿設され、この油導入油路606は、センタセクション30前面に開口させる冷却油導入孔607に連通させている。この油導入油路606には前記パワーステアリング装置のリリーフ弁126からリリーフされた油がオイルクーラ127を介して導入されており、この油は冷却油導入孔607からHSTのハウジング14c内部に導かれ、内部のシリンダブロック33・37やピストン34・38等を潤滑及び冷却する。該ハウジング14c内でオーバーフローした油は、センタセクション30を貫通して形成される戻し孔608を介して、ミッションケース29の前壁90前面に形成したドレン室513に導かれ、該ドレン室513に形成されるドレン孔514を介して、油溜まりとしてのミッションケース29に戻される。
【0059】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0061】
請求項1に示す如く、ミッションケース(29)内に油圧作動式のPTOクラッチ機構(69)を内装し、該PTOクラッチ機構(69)に圧油を供給する供給源である補助油圧ポンプ(65)を設け、該補助油圧ポンプ(65)は、前記ミッションケース(29)の左右一側の側壁の、上部外面に取り付けたポンプ取付ケース(200)に装着するとともに、前記PTOクラッチ機構(69)を断接操作するPTO入切弁(79)を、前記ポンプ取付ケース(200)の、補助油圧ポンプ(65)を取り付けた面とは他の面に取付け、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)を、ミッションケース(29)に形成した前壁(90)に支持させ、該前壁(90)は少なくとも一側側方に向けて一体的に延出して、該ミッションケース(29)の側壁の一部をなすように形成し、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)の内部に穿設する油路と、前記PTO入切弁(79)とを、該ポンプ取付ケース(200)の取付面から前記前壁(90)に形成された油経路(506・508)を介して連通したので、補助油圧ポンプを取り付けた側に切換弁が配置されることとなるから、補助油圧ポンプ(65)からPTO入切弁(79)に至る油経路を短く且つ簡潔なものとできる。
また、補助油圧ポンプ(65)とPTO入切弁(79)がミッションケース(29)に対して同じ側に配置されるので、トランスミッション全体のコンパクト化を図ることができる。
【0062】
また、PTO入切弁(79)と、PTOクラッチ機構(69)を油圧作動させるための軸内の油路とを繋ぐ油経路が、該PTO駆動主軸(68)を支持し、かつ、ポンプ取付ケースを取り付ける側壁の一部をなす、ミッションケース(29)の支壁部に形成されることとなるから、PTO入切弁(79)からPTOクラッチ機構(69)までの油経路構造が簡潔かつ合理的なレイアウトとなって、配管の使用量を少なくすることができる(あるいはゼロにできる)。
また、ミッションケース(29)にポンプ取付ケース(200)を設置する際に、PTOクラッチ機構(69)とPTO入切弁(79)の接続が同時に行われることとなるため、組立て作業が容易である。また油漏れも、ポンプ取付ケース(200)をミッションケース(29)にしっかり締結している限り、起きることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のトランスミッションを備えたトラクタの全体側面図。
【図2】 トランスミッションの側面断面展開図。
【図3】 トランスミッションの平面断面展開図。
【図4】 図2におけるX−X断面矢視図。
【図5】 トラクタの油圧回路図。
【図6】 HSTセンタセクションの作動油循環油路を示す正面断面図。
【図7】 補助油圧ポンプのミッションケースに対する取付けの様子を平面図的に示した、図6におけるA−A断面矢視図。
【図8】 図7におけるB−B断面矢視図。。
【図9】 同じくC−C断面矢視図。
【図10】 同じくD−D断面矢視図。
【図11】 同じくE−E断面矢視図。
【図12】 同じくF−F断面矢視図。
【図13】 同じくG−G断面矢視図。
【図14】 ミッションケースの前側壁部に形成する溝の様子を示した正面図。
【図15】 ポンプ取付ケースに設けたPTO入切弁の様子を示した平面断面図。
【図16】 ポンプ取付ケースに設けたリリーフ弁の様子を示した平面断面図。
【符号の説明】
1 農用トラクタ
29 ミッションケース
65 第一補助油圧ポンプ
68 PTO駆動主軸(PTOクラッチを配設する軸)
69 PTOクラッチ機構(PTOクラッチ)
73 給排油路(軸内の油路)
79 PTO入切弁(切換弁)
90 ミッションケースの前壁(支壁部)
200 ポンプ取付ケース
504 油孔(油経路)
505 クラッチ作動油供給溝(油経路)
506 連通孔(油経路)
508 連絡孔(油経路)
Claims (1)
- ミッションケース(29)内に油圧作動式のPTOクラッチ機構(69)を内装し、該PTOクラッチ機構(69)に圧油を供給する供給源である補助油圧ポンプ(65)を設け、該補助油圧ポンプ(65)は、前記ミッションケース(29)の左右一側の側壁の、上部外面に取り付けたポンプ取付ケース(200)に装着するとともに、前記PTOクラッチ機構(69)を断接操作するPTO入切弁(79)を、前記ポンプ取付ケース(200)の、補助油圧ポンプ(65)を取り付けた面とは他の面に取付け、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)を、ミッションケース(29)に形成した前壁(90)に支持させ、該前壁(90)は少なくとも一側側方に向けて一体的に延出して、該ミッションケース(29)の側壁の一部をなすように形成し、前記PTOクラッチ機構(69)を配設するPTO駆動主軸(68)の内部に穿設する油路と、前記PTO入切弁(79)とを、該ポンプ取付ケース(200)の取付面から前記前壁(90)に形成された油経路(506・508)を介して連通したことを特徴とするトラクタのトランスミッション。
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