JP3608680B2 - 作業車両のトランスミッション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行車両の前輪及び後輪を走行駆動するトランスミッションのハウジング内に配置する前輪駆動軸の配置構成と、後進変速の牽制機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、油圧式無段変速装置を装備した、前輪と後輪とを駆動するためのトランスミッションは公知となっている。例えば、特開平7−117500号の技術である。該技術はエンジン動力が入力される入力軸により油圧式無段変速装置の油圧ポンプを駆動し、油圧式無段変速装置の油圧モータの出力軸の後端からはギア式変速装置を介してデフギア装置に動力を伝えて後輪を駆動し、出力軸の前端は前方へ突出して、ユニバーサルジョイントを介して前輪を駆動するように構成していた。また、油圧式無段変速装置にギア式変速装置を備えたものにおいて、ギア式変速装置を高速操作位置に変速すると、油圧式無段変速装置の変速操作ペダルを後進側へ一定以上増速操作できないように構成した技術も公知となっている。例えば、実公昭62−5942号の技術である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者の従来技術では、油圧ポンプと油圧モータの両方はハウジング内に収容されており、更に油圧式無段変速装置の油圧モータの出力軸から直接に前輪を駆動する構成であるので、ギア式変速装置を切り換えたときに、前輪と後輪との速度比が同期しなくなる状態が発生し、これを回避するためにギア式変速装置を高速側に切り換えたときには前輪を駆動しないようにする牽制機構を設ける必要があった。
また、後者の従来技術のように、油圧式無段変速装置の変速操作具に対する後進側への牽制装置は、ギア式変速装置を変速するためにハウジングの外に配置した操作レバーと油圧式無段変速装置の変速操作ペダルとの間に、ハウジングの外方で牽制リンクを介装して、牽制機構を構成していたために、長期間の使用でゴミ等がリンクにからまったりすると完全に牽制できない事態が生じることがあり、信頼性に欠けていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決する為に次の如く構成したものである。
請求項1においては、エンジン動力を前後輪へ伝動するためのトランスミッションを、前後進切換え可能な油圧式無段変速装置と、走行速度を複数段に変更可能なギア式変速装置とを連動連結して構成すると共に、前記トランスミッションのハウジングに形成した第一の部屋に前記油圧式無段変速装置を収容し、第二の部屋に前記ギア式変速装置を収容したものにおいて、前記ハウジングの、前記第一の部屋を構成する前壁の内外面の各々に、前記油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータとを振り分け装着して互いに流体接続し、油圧ポンプと油圧モータのうちの一方を前記第一の部屋に収容し他方を前記第一の部屋外に位置させる一方、前記ギア式変速装置に連動連結する前輪駆動軸を、前記第一の部屋内に回転自在に支持し前記前壁を貫いて前方へ突設せしめ、該第一の部屋に、前記前輪駆動軸を前記ギア式変速装置の出力部に対して係脱するためのクラッチ機構を収容したものである。
【0005】
請求項2においては、前記前輪駆動軸を、同一軸線上で相対回転自在に嵌合した第一軸部と第二軸部とで構成し、各々の軸部を、第一の部屋を構成する前壁と後壁とで軸受支持させると共に、第一軸部と第二軸部との間に、両者を係脱するクラッチ機構を介装したものである。
【0006】
請求項3においては、前記油圧式無段変速装置の速度制御アームを前記ハウジングの一側方に配置すると共に、前記クラッチ機構の操作アームを前記ハウジングの他側方に配置したものである。
【0007】
請求項4においては、エンジン動力を前後輪へ伝動するためのトランスミッションを、前後進切換え可能な油圧式無段変速装置と、走行速度を複数段に変更可能なギア式変速装置とを連動連結して構成すると共に、前記トランスミッションのハウジングに形成した第 一の部屋に前記油圧式無段変速装置を収容し、第二の部屋に前記ギア式変速装置を収容したものにおいて、前記ハウジングの、前記第一の部屋を構成する前壁の内外面の各々に、前記油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータとを振り分け装着して互いに流体接続し、油圧ポンプと油圧モータのうちの一方を前記第一の部屋に収容し他方を前記第一の部屋外に位置させる一方、前記ギア式変速装置が高速側に切り換えられたときに前記油圧式無段変速装置の速度制御レバーによる後進側への所定以上の増速操作を阻止する牽制機構を前記第一の部屋に収容したものである。
【0008】
請求項5においては、前記牽制機構を、前記ギア式変速装置の切換操作に連動して第一の部屋内で機体前後方向に変位自在なカム手段と、前記ハウジングの外壁面における速度制御レバーの後進側変速範囲中の所定の規制位置に設けた、その一端側が該速度制御レバーに向けて出退自在な牽制ピンと、前記第一の部屋内で機体前後方向軸線まわりに揺動自在に支持した、前記カム手段に接当する第一アーム部と、前記牽制ピンの他端側に接当する第二アーム部とを備えた牽制アームとで構成すると共に、ギア式変速装置の高速側への切換操作でカム手段の浅部に第一アーム部が乗り上げた時に、第二アーム部が牽制ピンを速度制御レバーに向けて押し出すように牽制アームが揺動するものである。
【0009】
請求項6においては、前記ハウジングの前記前壁における、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータを装着する部位を、前記ハウジングより分離可能に構成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に添付の図面に示した本発明の実施例の構成を説明する。
図1は作業車両の全体側面図である。
【0011】
図1において、本発明のトランスミッションを搭載したミッドマウントモア型の作業車両の全体構成から説明する。機体前部上のボンネット1内にエンジンEを収納し、該ボンネット1後部にダッシュボード2を配置し、該ダッシュボード2上にハンドル3を配置している。該ダッシュボード2下部の両側方にステップ4を配置し、左側のステップ4にブレーキペダル5L・5Rを配置し、右側のステップに図示しない主変速ペダルを配置している。前記ダッシュボードの後方には座席6を配置し、該座席6の側方に副変速レバー7、PTO切換レバー9が配置されている。
【0012】
前記座席6下方に本発明のトランスミッションが配置されており、該トランスミッションは、前ケース10と後ケース11からなるハウジング内に油圧式無段変速装置とギア式変速装置とPTO伝動装置とを収納して構成されている。
【0013】
該前ケース10から前方に入力軸12と前輪駆動軸の第一軸部13とミッドPTO軸14を突出し、入力軸12には前記エンジンEのクランク軸が、機体フレーム15内のダンパー、伝動軸16を介して連動連結されている。前記前輪駆動軸の第一軸部13にはユニバーサルジョイント17を介してフロントアクスルケース18より突出した入力軸19が連結され、該入力軸19に動力が伝えられて、フロントアクスルケース18の左右両側に軸支した前輪20を駆動できるようにしている。
【0014】
22は、ハンドル3の操作により前輪20を操向するための油圧シリンダーである。前記ミッドPTO軸14にはユニバーサルジョイント23を介して、モア24のギアボックス25より突出した入力軸26と連動連結されている。該モア24は図示しない昇降装置によって、前輪20と後輪21との間の空間内で地面に対して昇降可能に構成されている。
【0015】
前記後ケース11の後部両側面からは車軸27を左右側方へ突出して後輪21を軸支して駆動できるようにしている。後ケース11上面には、油圧昇降装置用の油圧シリンダーケース29を載置し、該ケース29より左右一対のリフトアーム30を後方へ突出している。後ケース11の後面には、ロアリンク31・31の前部を枢支し、下端にドローバーヒッチ32を備えたプレートを装着している。そして、前記リフトアーム30とロアリンク31と図示しないトップリンクに作業機を昇降自在に装着できるようにし、また、ドローバーヒッチ32に牽引作業機を装着できるようにしている。
【0016】
次にトランスミッションの構成を説明する。図2は走行系及びPTO系の動力伝達のスケルトン図、図3は前ケース部分の側面断面図、図4は第二の部屋内のギア式変速装置とミッドPTO軸への動力伝達機構を示す側面断面図、図5は前輪駆動軸への動力伝達機構とリアPTO軸への動力伝達機構を示すハウジング上部側面断面図、図6は慣性空転防止ブレーキ装置とPTOクラッチの拡大断面図、図7は走行系及びPTO系の動力伝動軸の配置を示す正面図、図8は図3におけるX−X矢視断面図、図9はギア式変速装置の変速操作部と、変速操作部に連係される後進変速牽制装置部の平面断面図、図10は図3における右側のY−Y矢視断面図と左側のY’−Y’矢視断面図、図11はハウジングの前部斜視図、図12は油圧回路図である。
【0017】
前記ハウジングは、前ケース10と後ケース11に前後に分割可能に接合されており、該前ケース10は前面に前壁10aを、後面に後壁10bを形成して、前壁10aの周囲にフランジ部10hが形成され、該前ケース10の前壁10aの一部に設けた開口部を閉塞するためにセンタセクション40が固設され、前ケース10の後壁10bとセンタセクション40との間に第一の部屋R1を形成している。該センタセクション40は後述する油圧ポンプP1とモーターMを装着支持するためのものであって前壁10aの一部を構成している。そして、前壁10aの、上下方向でみて下方で、左右方向でみて略中央に位置する部位には前輪駆動軸13・44を挿入するための貫通孔が形成されている。そして、後ケース11の機体前後方向略中央部に隔壁11aを設けて、後ケース11内を前後に仕切り、前記前ケース10の後壁10bと前記隔壁11aとの間に第二の部屋R2を形成し、該隔壁11aと後ケース11の後壁11cとの間に第三の部屋R3を形成している。更に、後ケース11の後壁10cの外面には凹部を形成して、該凹部は蓋体79によって閉塞され、第四の部屋R4を形成している。
【0018】
そして、前記センタセクション40と後壁10bとの間の第一の部屋R1内において、上部に入力軸12を支持する一方、センタセクション40の内面に油圧ポンプP1を装着して、該入力軸12により油圧ポンプP1を駆動している。前記センタセクション40の外面には、チャージポンプP2を収容したポンプケース105を装着し、入力軸12によりチャージポンプP2を駆動している。また、第一の部屋R1内の上下方向略中央に走行第一伝動軸41を支持している。センタセクション40の外面には、走行伝動一軸41と同一軸心上にその回転軸心が位置するように油圧モータMを装着している。センタセクション40内に穿設した後述する油路を通じて油圧ポンプP1と油圧モータMとを流体接続することにより油圧式無段変速装置が構成されている。
【0019】
前記油圧ポンプP1は次のように構成される。即ち、センターセクション40の上部内面に設けたポンプ付設面50にシリンダブロック51が回転自在に配置され、該シリンダブロック51の中心に入力軸12が貫通して係合されている。該シリンダブロック51の複数のシリンダ孔内に、付勢バネを介してピストン52・52・・・が往復動自在に嵌合され、該ピストン52・52・・・の頭部には可動斜板53のスラストベアリング53aを当接している。該可動斜板53はその側方へ突出したトラニオン軸53b・53bを中心として傾倒させることができ、図8に示すように、トラニオン軸53b・53bの一方は前ケース10の内壁側面に回転自在に支持され、他方は、前ケース10の右側面に形成した開口部を閉塞する側板60に回転自在に支持されている。また、この他方のトラニオン軸53b上には中立戻しバネ59が外嵌されて、可動斜板53を中立位置へ戻すように付勢し、このトラニオン軸53bは更に延長して側板60より突出し、この突出部分に速度制御アーム61を固定している。該速度制御アーム61には後述する連結ロッド125等を介して前記ステップ4上に配置した主変速ペダル(図示せず)と連動連結されている。
【0020】
前記センターセクション40の下部外面にはモータ付設面54が構成されており、該モータ付設面54に、シリンダブロック55が回転自在に配置され、該シリンダブロック55の中心に出力軸45が貫通して係合されている。該シリンダブロック55の複数のシリンダ孔内に付勢バネを介して複数のピストン56・56・・・が往復動自在に嵌装されている。該ピストン56の頭部は固定斜板57に接当している。固定斜板57及びシリンダブロック55はセンタセクション40の前面に装着したモーターケース58内に収納されている。よって、モータ付設面54とは反対側のセンターセクション40の下部内面には何も配置されていないので、第一の部屋R1内には後述する高速後進の牽制機構や前輪駆動のクラッチ機構Cを収容するためのスペースが広く確保されているのである。
【0021】
そして、前記油圧ポンプP1と油圧モータMは、センタセクション40内に穿設した一対の油路40a・40b(図9)によって流体的に結合され、該油路40a・40bによって閉回路を構成し、該閉回路内には入力軸12上に設けたチャージポンプP2から圧油が補給される。図10に示すように、前ケース10の下部外側面には油フィルター46が配置され、図8、図11に示すように、前ケース10の下部外側面にフィルター取付部10gが形成されている。該油フィルター46の入口孔46aは、図8に示すように、後壁10bに穿設した孔120を通じて第二の部屋R2と連通している。第二の部屋R2内に溜められた潤滑油は、孔120から入口孔46aを通じて油フィルター46内に導入され、油フィルター46によりろ過された後に油フィルター46の出口孔46b(図10)より前ケース10の側壁に設けた油路121a、及び、側板60の内面と前ケース10の外側面との合わせ面に形成した油路121b、並びに、前ケース10の前壁10aに開口する油路121c、センタセクション40内の油路を通じて前記チャージポンプP2の吸入ポートに導かれる。
【0022】
このように第一の部屋R1内には油圧ポンプP1を収納してしているので、長時間の稼動によりその内部に溜められた油は比較的高温となる。一方、第二の部屋R2内には後述するギア式変速装置とPTO伝動装置を収納しているだけなので、その中の油はあまり高温にはならない。よって、相対的に温度の低い油を前記油フィルター46を介してチャージポンプP2に吸い込んで油圧式無段変速装置の閉回路に補給することにより、耐久性を向上させている。また、前ケース10に油フィルター46の関連要素を集中配置することにより、配管することなく、短く簡単な油路構成で後ケース11内の油を吸入できるようにして、コスト低減化を図っている。
【0023】
前記チャージポンプP2の吐出ポートから吐出される油の圧力は、図12に示すように、メインリリーフ弁47によって設定され、その圧油の一部は、チャージポンプP2のケース105に収容した抵抗弁48を介して配管を通ってパワーステアリング用の切換弁200に送油され、ハンドル3の回動によって該切換弁200が切り換えられるとステアリングシリンダー22に送油され、前輪20が操向される。該ステアリングシリンダー22からの戻り油は配管を通じて、オイルクーラー123、モーターケース58内に戻され、更にセンタセクション40の貫通孔を介して第一の部屋R1、後壁10bの軸受部を介して第二の部屋R3へと流れる。また、チャージポンプP2からの吐出油は、チャージポンプP2のケース105に内装した減圧弁49により調圧され、チェック弁124・124の低圧側のチェック弁124より前記閉回路内に補給される。また、高圧側の油路40aまたは40bが設定圧より高くなるとリリーフ弁104よりリリーフされる。減圧弁49が調圧作動したときに、ここから排出されるドレン油は後述するPTOクラッチ・ブレーキ制御弁101に送油される。
【0024】
また、前記閉回路を構成する油路40a・40bには、図9に示すように、第一の部屋R1との間にチェック弁102・102と油フィルター103・103が介装されており、エンジンEを停止して坂道に駐車する場合等において、油圧モータMや油圧ポンプP1などの各部分から閉回路内の油が漏れて作動油の不足を生じたときに油フィルター103・103を通じてチェック弁102から第一の部屋R1内の潤滑油を閉回路に補給できるようにしている。そして、図3に示すように、センタセクション40の上部には前記メインリリーフ弁47が設けられて、チャージポンプP2の吐出油圧を規定圧に設定している。
【0025】
また、図2、図4、図5に示すように、前記前ケース10の後壁10bと後ケース11の隔壁11aとの間に、PTOカウンター軸39、PTO伝動軸33、走行伝動第二軸42、走行伝動第三軸43が軸受を介して回転自在に前後方向に沿って平行に横架されている。更に前ケース10と後ケース11との接合部において下斜め側方へ突出形成した膨出部10i・11bの中にカウンター軸99及びミッドPTO軸14が軸受を介して回転自在に前後方向に横架されている。
【0026】
また、図5に示すように、前記後ケース11の隔壁11aと後ケース11の後壁11cの間の第三の部屋R3内には、上部にリアPTO駆動軸35を前後方向に横架して設け、底部にデフギア装置Dと油圧リフト用の油フィルター38とを並置している。該リアPTO駆動軸35の後端は前記第四の部屋R4に挿入され、該第四の部屋R4内のリアPTO駆動軸35上に歯車35aを設け、更に、後壁11cと蓋体79との間の第4の部屋R4内にリアPTO軸36を回転自在に横架して、第四の部屋R4内のリアPTO軸36上に歯車37を固設して、該歯車37を前記歯車35aと噛合させている。そして、蓋体79より後方へリアPTO軸36の後端を突出している。
【0027】
次に、図2〜図7よりトランスミッションの動力伝達機構を説明する。前記入力軸12には前述のようにエンジンEよりダンパー、伝動軸16を介して動力が伝えられる。該入力軸12により油圧ポンプP1とチャージポンプP2が駆動され、該油圧ポンプP1からの圧油が油圧モータMに送油されて出力軸45が駆動される。該出力軸45の後端には前記走行第一伝動軸41の前端がスプライン嵌合されて、一体的に回動するように構成し、該走行第一伝動軸41の後壁10bを突き抜けた後端に歯車62を固設している。
【0028】
次にギア式変速装置について説明する。前記走行第一伝動軸41上の歯車62は、図2、図4に示すように、走行第二伝動軸42上に固設した大径歯車63と噛合し、該大径歯車63は走行第三伝動軸43上に回転自在に遊嵌した小径歯車65aと常時噛合している。また、走行第二伝動軸42上には小径歯車64が設けられて、該小径歯車64は走行第三伝動軸43上に回転自在に遊嵌した大径歯車66aと常時噛合している。該小径歯車65aと大径歯車66aとの間の軸43上にスプラインカラー67が固定され、該スプラインカラー67上にスライダー68が相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に嵌合されている。
【0029】
前記スライダー68の外周に形成した環状凹部68aには、図10に示すように、シフター106が係止されている。該シフター106はシフター軸107に固設され、該シフター軸107の前部が後述する速度制御アーム61の後進変速牽制機構と連係され、後部がアーム108より突出したピンと係合される。該アーム108は後ケース11の左側面に軸支した高低切換軸109の内端に固定され、該高低切換軸109の外端に高低切換アーム110が固定され、該高低切換アーム110はリンク等を介して前述の副変速レバー7と連結されている。
【0030】
そして、前記歯車65a・66aに夫々備わる係合子65b・66bは前記スライダー68の内歯と噛合可能に構成され、副変速レバー7を操作すると、高低切換アーム110、高低切換軸109、アーム108、シフター軸107、シフター106を介してスライダー68が軸方向に摺動されて、前記歯車65a・65bのうちの一方が走行第三伝動軸43に係止されて高低の二段変速を可能としている。
【0031】
従って、前記副変速レバー7を高速位置へ操作すると、スライダー68の内歯が前記小径歯車65aの係合子65bと噛合し、前記出力軸45からの動力が、走行第一伝動軸41→歯車62→大径歯車63→小径歯車65a→係合子65b→スライダー68→スプラインカラー67→走行第三伝動軸43と伝えられて、走行第三伝動軸43の後端に設けたベベルピニオン69からデフギア装置Dを介して車軸27に高速回転の動力を伝える。
【0032】
また、副変速レバー7を低速位置へ操作すると、スライダー68の内歯が前記大径歯車66aの係合子66bと噛合し、前記出力軸45からの動力が、走行第一伝動軸41→歯車62→大径歯車63→走行第二伝動軸42→小径歯車64→大径歯車66a→係合子66b→スライダー68→スプラインカラー67→走行第三伝動軸43と伝えられて、前記同様に車軸27に低速回転の動力を伝える。
【0033】
次に、前記速度制御アーム61の後進変速時の牽制機構について説明する。図3、図8、図9に示すように、前記シフター軸107の前端は第一の部屋R1内に延びており、そこには断面視半円形状に削られ最深部107aを有するカム面が形成されている。油圧ポンプP1の下方には牽制アーム111が配置されている。該牽制アーム111は互いに異なる方向に延びる第一アーム部111aと第二アーム部111bとを有し、中途部は支軸113に固定され、該支軸113はセンターセクション40と前ケース10の後壁10bとの間に、機体前後軸線方向に沿って横架され、牽制アーム111を左右方向に揺動自在に支持している。前記牽制アーム111の第一アーム部111aの先端に設けたピン112は、前記シフター軸107のカム面に接当し、また、第二アーム部111bの先端は牽制ピン114の一端面に当接されている。該牽制ピン114は側板60の外面上において前記速度制御アーム61の後進側変速回動範囲(RB)の略中間位置に位置決めされて、ブッシュ115を介して進退自在に可動斜板53の傾転軸線と平行に枢支され、第一の部屋R1内に位置する牽制ピン114上にはバネ116が外嵌されて、牽制ピン114を第一の部屋R1内に引っ込めるように付勢している。
【0034】
速度制御アーム61は、図17〜図20に示すように、側板60より突出したトラニオン軸53bの先端に固設されており、該速度制御アーム61の回動基部側には接当部61aを設けてあり、該接当部61aは側板60より外側方へ突出した凹状のストッパー60a内に臨ませて配置している。該ストッパー60aの凹部の内側の寸法は、接当部61aが回動して接当したときに、速度制御アーム61の最大前進増速位置Fと最大後進増速位置Rとなるように設定されている。そして、速度制御アーム61の先端には連結ロッド125とショックアブソーバ126の伸縮体126aが連結され、連結ロッド125は前記ステップ4上に配置した主変速ペダルと連動連結され、ショックアブソーバ126の基端126bは後ケース11の側面に揺動自在に枢支されて、伸縮体126aは速度制御アーム61の急速な回動を防止している。
【0035】
そして、副変速レバー7を中立位置及び低速位置に操作したときには、図8に示すように、ピン112がカム面の最深部107aに位置しており、牽制アーム111は図示の状態に保たれ、速度制御アーム61は、図18及び図20に示すように、ストッパー60aで設定された前進側変速回動範囲(FB)と後進側変速回動範囲(RB)の全範囲で回動することができる。そして、副変速レバー7を高速位置に操作したときには、シフター軸107が前方へ摺動されるので、牽制アーム111の第一アーム部111a先端に設けたピン112がカム面の最浅部に乗り上げ、これにより牽制アーム111が図8でみて紙面左回りに回動されて、第二アーム部111bが牽制ピン114の端面を押し、該牽制ピン114の他端を側板60より突出させるように構成している。よって、速度制御アーム61を中立位置(図17)から後進側へ回動しようとするときに、図19に示すように、後進側の回動範囲の略中間位置にさしかかった時点で、速度制御アーム61の端面が牽制ピン114の外周面に当たるのでそれ以上の増速操作が制限され、後進側変速回動範囲(RB’)に縮小されるのである。つまり、副変速レバー7を高速側へ切り換えた状態で後進させると、高速で後進してしまうので、実用上不必要な高速後進状態を自動的にカットし、低速側へ切り換えたときのみ、速度制御アーム61の全回動範囲(RB)で後進増速できるようにしているのである。
【0036】
次に前輪駆動のための動力伝達機構を説明する。図2、図3、図4、図5、図7に示すように、前記走行第三伝動軸43上の前端側にスプライン嵌合した歯車71は、前記走行第二伝動軸42の前端側に回転自在に遊嵌した歯車70と噛合し、該歯車70は前輪駆動第二軸部44(図3、図5)上に固設した歯車72と噛合している。前輪駆動軸は、図3に示すように、2本の第一軸部13と第二軸部44とからなり、前輪駆動第一軸部13は前ケース10の前壁10aに設けた前記貫通孔にベアリングを介して回転自在に支持され、前輪駆動第二軸部44は後壁10bにベアリングを介して回転自在に支持され、前輪駆動第一軸部13の後端に軸心を一致させて前輪駆動第二軸部44の前端を遊嵌支持している。
【0037】
該前輪駆動第二軸部44の前端と前輪駆動軸の第一軸部13の後端との間に前輪駆動の入・切を行うクラッチ機構Cが設けられている。即ち、該前輪駆動第二軸部44の前端と前輪駆動軸の第一軸部13の後端との夫々の外周にはスプライン溝を形成し、前輪駆動第一軸部13の後端上にはスライダー73を相対回転不能でかつ軸方向摺動自在にスプライン嵌合している。該スライダー73は、図8に示すように、その外周に形成した環状凹部73aにシフター74の先端が係止されて、該シフター74はシフター軸75の内端に固設されている。該シフター軸75は前記前ケース10の左外側面に固設した側板77に回動自在に軸支されて、シフター軸75の外端に前輪駆動入・切用操作アーム76が固定されて速度制御アーム61に対して反対側に配置している。該前輪駆動入・切用操作アーム76はリンク等を介して運転部に設けた前輪駆動入・切レバー(図示せず)と連結される。なお、スライダー73と前輪駆動第一軸部13との間にはスライダー73を「4WD」位置と「2WD」位置とに保持できるようにボールデデント機構が設けられている。
【0038】
このような構成において、前輪駆動入・切用操作アーム76が「4WD」側に操作されると、スライダー73が、前輪駆動第二軸部44と前輪駆動第一軸部13との両者を係合し、前記走行第三伝動軸43に伝えられた動力が、歯車71→遊嵌歯車70→歯車72→前輪駆動第二軸部44→スライダー73→前輪駆動第一軸部13→ユニバーサルジョイント17→入力軸19→フロントアクスルケース18と伝えられて前輪20を駆動し、同時に前記走行第三伝動軸43からデフギア装置Dを介して後輪21が駆動されているので四輪駆動(4WD)となる。前輪駆動入・切用操作アーム76が「2WD」側に操作されると、スライダー73が前輪駆動第二軸部44と前輪駆動第一軸部13との動力伝達を断って後輪21のみが駆動され二輪駆動(2WD)となる。
【0039】
次にPTO伝動装置について説明する。図2、図5、図6に示すように、前記入力軸12の後端は前ケース10の後壁10bを貫いて第二の部屋R2内に突出されており、その入力軸12の端部上に歯車80が固設され、該歯車80は前記PTOカウンター軸39上に固設した歯車81と噛合し、該歯車81は、PTO伝動軸33上にベアリング83を介して回転自在に遊嵌した歯車82と噛合している。該歯車82の側面にはボス部が設けられ、図6に拡大して示すように、該ボス部と、PTO伝動軸33上に固設したクラッチケース84との間に摩擦板を交互に介装して摩擦多板式の油圧作動型PTOクラッチ85を構成している。該摩擦板は後述する油圧供給によってピストン86が摺動されると摩擦板を圧接して歯車82をPTO伝動軸33に係合し入力軸12からPTO伝動軸33へ動力を伝えるようにしている。89はピストン86を摩擦板押圧解除方向へ付勢するバネである。
【0040】
前記PTO伝動軸33の前端は前ケース10の後壁10aを突き抜けて第一の部屋R1内に突出され、そこに慣性空転防止ブレーキ装置Gが構成されている。即ち、PTO伝動軸33前端の外周にスプライン溝33aを形成し、該スプライン溝33aと、前ケース10の後壁10bの前面に形成した凹部との間に摩擦板を交互に介装し、前端の摩擦板は円板状のアクチュエータ90の中央部に形成した押圧部90aに当接されている。アクチュエータ90はその中央部に突出形成された押圧部90と、その押圧部90aをとり囲むように同じ方向に突出形成した環状のピストン部90bとを備えてあり、該ピストン部90bは前記摩擦板の外径より大きく形成して、後壁10bの前記凹部の外周にリング状に形成したシリンダー室に挿入している。このようにアクチュエータ90は押圧部90aの外周にピストン部90bを設けることによって、アクチュエータ90の軸方向寸法を小さくし、慣性空転防止ブレーキ装置Gの全長を短くしてトランスミッションの小型化を図っている。そして、該アクチュエータ90は前ケース10の後壁10bの前面に固設した蓋体87に介装したバネ88によって、摩擦板を押圧する向きに付勢されている。
【0041】
そして、前記PTO伝動軸33の軸内には油路33b・33cを穿設し、該油路33bの一端は前記PTOクラッチ85のピストン86を収納したシリンダー室に開口して、該油路33bの他端は、PTO伝動軸33の外周に形成した環状溝33cを通じて前ケース10の後壁10bにおいて前記側板77方向に穿設した油路10fと連通しており、更に前ケース10の左側面と側板77との間に形成された油路77aを介して側板77に装着したPTOクラッチ・ブレーキ制御弁101の出力ポートと接続している。該PTOクラッチ・ブレーキ制御弁101は3ポート2位置切換式の電磁弁に構成され、運転席近傍に配置したPTO切換スイッチのON・OFFにより切換操作することができる。そしてまた、該油路10fは、慣性空転防止ブレーキ装置Gのピストン部90bのシリンダー室に油路10cを介して連通されている。
【0042】
また、側板77は、図13、図14、図15に示す如く構成されており、前記油路77aは、図10の右半分に示すように、アキュムレータ117と接続されている。前ケース10の後壁10b内に入力軸12と直交する方向に沿ってシリンダー室10dを設け、該シリンダー室10dにバネ117bとピストン117aを挿入してピストン117aの前面を側板77で蓋してその前面を油路77aに臨ませることによりアキュムレータ117を簡単に構成している。なお、シリンダー室10dのバネ収容側は、入力軸12の軸受室10jに連通しており、アキュムレータ117の作動時にシリンダー室10dとピストン117aとの間隙から漏れた油は入力軸12の軸受の潤滑油として利用されるようになっている。
【0043】
また、前記PTOクラッチ・ブレーキ制御弁101が側板77の上部に配置され、該PTOクラッチ・ブレーキ制御弁101の出力ポートに接続される油路77aには、側板77に装着した、クラッチ作動圧を設定するリリーフバルブ119が接続され、リリーフバルブ119の作動時に排出されるリリーフ油は側板77と前ケース10の接合面に形成された油路77bへ流されて、図8、図12に示すように、油路10eから慣性空転防止ブレーキ装置Gの摩擦板へ潤滑油として送られ、更に、PTO伝動軸33の軸内に穿設した油路33cと連通して、前記PTOクラッチ85の摩擦板や歯車等を潤滑するようにしている。PTOクラッチ・ブレーキ制御弁101の入力ポートは、側板77と前ケース10との接合面において形成された油路77c及び前ケース10の側壁内においてセンタセクション40方向に延びる油路77eを介して前記減圧弁49の排出ポートと接続されている。
【0044】
このように構成することで、PTO切換スイッチをONとすると、PTOクラッチ・ブレーキ制御弁101の入力ポートと出力ポートとが通じてチャージポンプP2から吐出された油の一部は、油路77cより油路77a、油路10f、油路33bを介してクラッチケース84のシリンダー室に供給され、その中のピストン86が摩擦板を押圧する向きに摺動されPTOクラッチ85が係合し、歯車82からクラッチケース84を介してPTO伝動軸33に入力軸12からの動力が伝えられる。そして同時に、油路10fに流れた圧油は油路10cを通じてアクチュエータ90をバネ88に抗して摺動させて、PTO伝動軸33に対する慣性空転防止ブレーキ装置Gの制動力を解除する。PTO切換スイッチをOFFとすると、油路77cからの圧油は、第一の部屋R1の油溜まりに通じる油路77dへ送油されて、油路10fに圧油が送油されないので、ピストン86はバネ89の付勢力によって戻され、PTOクラッチ85は非係合となりPTO伝動軸33に動力を伝えず、油路10cにも圧油が送油されないために、アクチュエータ90はバネ88の付勢力によって慣性空転防止ブレーキ装置Gを作動させてPTO伝動軸33の回転を停止させ、PTOクラッチ85を非係合とすると速やかに、後述するリア・ミッド両方のPTO軸を制動して、全ての作業機を停止させる。
【0045】
このPTO伝動軸33に作用する軸トルクと時間との関係は、図16で示す如くであり、波形aが、慣性空転防止ブレーキ装置GによるPTO伝動軸33を制動するブレーキトルクであり、時間(t0)でPTO切換スイッチがOFFの時にトルク値(T1)のブレーキトルクがPTO伝動軸33に作用している。そしてPTO切換スイッチをONとすると、油圧供給によりアクチュエータ90が押されてバネ88の付勢力が弱められ時間の経過とともに、ブレーキトルクは減少していく。一方、時間(t1)に至るまでPTOクラッチ85のピストン86のシリンダー室に作動油が充填されるまでの間、PTO伝動軸33には伝動トルクが発生しない。そして、時間(t1)に達して波形bで示す伝動トルクがPTO伝動軸33に与えられ、時間(t1)〜(t2)の間でバネ117bに抗してピストン117aが変位して、シリンダー室10d内に作動油を充填するので、ピストン86に作用する油圧上昇は穏やかとなり摩擦板に対する押圧力を徐々に高めながらPTOクラッチ85が穏やかに係合し始め、伝動トルクが上昇していく。そして、時間(t2)に到着したところでピストン117aの変位が停止し、時間(t2)〜(t3)の間でバネ89の付勢力に抗してピストン86が摩擦板を強く押して、時間(t3)でPTOクラッチ85が完全係合し、PTO伝動軸33には設定最大の伝動トルクT2が与えられる。
【0046】
前記PTO伝動軸33の中途部上にはミッドPTO駆動歯車91を遊嵌し、その後部にスプラインカラー92(図6)をPTO伝動軸33に固定し、PTO伝動軸33の後端に互いの軸心を一致させて、リアPTO駆動軸35に連結する伝動軸34の前端を遊嵌支持している。前記ミッドPTO駆動歯車91の側面上には係合子93を形成し、伝動軸34の前端上にも係合子94を形成し、スプラインカラー92上にはスライダー95が相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に外嵌されている。該スライダー95の外周に形成した環状凹部には図示しないシフターが挿入され、該シフターは、図10に示すシフター軸122に固定されている。該シフター軸122は前ケース10の後壁10aと後ケース11の隔壁11aとの間に前後方向に摺動自在に横架され、その前端は第一の部屋R1内に臨んでいる。一方、側板77には切換軸124が回動自在に横架され、その内端にアーム123が固着され、アーム123はシフター軸122に係止している。切換軸124の外端にはPTO切換アーム25が固着され、PTO切換アーム125はリンク等を介して前記運転席側部に配置したPTO切換レバー9と連結される。
【0047】
前記ミッドPTO駆動歯車91は、図2、図4に示すように、前記走行第三伝動軸43の軸方向中途部上にベアリング96・96を介して回転自在に遊嵌されたアイドル歯車97と噛合し、該アイドル歯車97はカウンター軸99上に固設した歯車98と噛合し、該歯車98はミッドPTO軸14上に固設した歯車100と噛合して、ミッドPTO駆動歯車91からミッドPTO軸14に動力を伝達するように構成している。このように、ミッドPTO軸14に動力を伝達するためのPTO伝動ギアトレーン(ミッドPTO駆動歯車91、アイドル歯車97、歯車98、歯車100)を、ハウジング内の第二の部屋R2に収納し、アイドル歯車97が、ギア式変速装置を構成する軸の1つを利用してここに設置しているのでコンパクトな構成になっている。
【0048】
従って、前記運転席側部に配置したPTO切換レバー9を操作して、スライダー95を図5の紙面後方向へ摺動させると、スプラインカラー92と伝動軸34上の歯車94とがスライダー95を介して連結して、動力はPTO伝動軸33→スプラインカラー92→スライダー95→係合子94→伝動軸34→リアPTO駆動軸35と伝えられ、リアPTO軸36のみが駆動される。スライダー95を一段前方向へ摺動させると、スライダー95は、ミッドPTO駆動歯車91の係合子93とスプラインカラー92と伝動軸34の係合子94とを連結して、前述したリアPTO軸36を駆動すると共に、動力はPTO伝動軸33→スプラインカラー92→スライダー95→係合子93→ミッドPTO駆動歯車91と伝えられ、PTO伝動ギアトレーンを介してミッドPTO軸14を駆動し、ミッドPTO軸14とリアPTO軸36の両方が駆動される。更にスライダー95を前方向へ摺動させると、スライダー95はミッドPTO駆動歯車91の係合子93のみをスプラインカラー92に連結して、動力はPTO伝動軸33→スプラインカラー92→スライダー95→係合子93→ミッドPTO駆動歯車91と伝えられ、ミッドPTO軸14のみが駆動される。
【0049】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
請求項1の如く、ハウジングの第一の部屋を構成する前壁の内外面の各々に、前記油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータとを振り分け装着して互いに流体接続し、油圧ポンプと油圧モータのうちの一方を前記第一の部屋に収容し他方を前記第一の部屋外に位置させたので、例えば、実施例の場合には、油圧モータの固定斜板57及びシリンダブロック55はセンタセクション40の前面に装着したモーターケース58内に収納され、モータ付設面54とは反対側のセンターセクション40の下部内面には何も配置されていないので、第一の部屋R1内には後述する高速後進の牽制機構や前輪駆動のクラッチ機構Cを収容するためのスペースを広く確保することが出来たのである。
また、第一の部屋に、前輪駆動軸とギア式変速装置の出力部とを係脱するためのクラッチ機構を収容したので、第一の部屋に空いた下部空間を有効に利用しながら前輪駆動の駆動・非駆動を任意に選択することができる。
【0050】
請求項2の如く、前輪駆動軸を、同一軸線上で相対回転自在に嵌合した第一軸部と第二軸部とで構成し、各々の軸部を、第一の部屋を構成する前壁と後壁とで軸受支持させると共に、第一軸部と第二軸部との間に、両者を係脱するクラッチ機構を介装したので、第一の部屋に空いたスペースを有効に利用しつつ、クラッチ機構を簡素、かつ、コンパクトに構成できる。
【0051】
請求項3の如く、油圧式無段変速装置の速度制御アームを前記ハウジングの一側方に配置すると共に、前記クラッチ機構の操作アームを前記ハウジングの他側方に配置したので、運転部の変速操作具や前輪駆動入・切操作具に対する連係が何の干渉もなく容易にできるようになる。
【0052】
請求項4の如く、ギア式変速装置が高速側に切り換えられたときに、油圧式無段変速装置の速度制御レバーによる後進側への一定以上の増速操作を阻止する牽制機構を第一の部屋に収容したので、第一の部屋内の空いたスペースを有効に利用して牽制機構を合理的に配置でき、実用上必要のない高速での後進状態を自動的に阻止することができる。
また、牽制機構が第一の部屋に収容されるので、長期間にわたる耐久性・信頼性の向上が図れる。
【0053】
請求項5の如く、牽制機構を、ギア式変速装置の切換操作に連動して第一の部屋内で機体前後方向に変位自在なカム手段と、前記ハウジングの外壁面における速度制御レバーの後進側変速範囲中の所定の規制位置に設けた、その一端側が該速度制御レバーに向けて出退自在な牽制ピンと、前記第一の部屋内で機体前後方向軸線まわりに揺動自在に支持した、前記カム手段に接当する第一アーム部と、前記牽制ピンの他端側に接当する第二アーム部とを備えた牽制アームとで構成したので、牽制機構を少ない部品点数で低コストで製作できるようになった。
【0054】
請求項6の如く、ハウジングの前記前壁における、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータを装着する部位を、前記ハウジングより分離可能に構成したので、油圧式無段変速装置の組立、並びに第一の部屋内への組み付けが容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業車両の全体側面図である。
【図2】走行系及びPTO系の動力伝達のスケルトン図である。
【図3】前ケース部分の側面断面図である。
【図4】第二の部屋内のギア式変速装置とミッドPTO軸への動力伝達機構を示す側面断面図である。
【図5】前輪駆動軸への動力伝達機構とリアPTO軸への動力伝達機構を示すハウジング上部側面断面図である。
【図6】慣性空転防止ブレーキ装置とPTOクラッチの拡大断面図である。
【図7】走行系及びPTO系の動力伝動軸の配置を示す正面図である。
【図8】図3におけるX−X矢視断面図である。
【図9】ギア式変速装置の変速操作部と、変速操作部に連係される後進変速牽制装置部の平面断面図である。
【図10】図3における右側のY−Y矢視断面図と左側のY’−Y’矢視断面図である。
【図11】ハウジングの前部斜視図である。
【図12】油圧回路図である。
【図13】油路板の左側面図である。
【図14】油路板の正面図である。
【図15】油路板の右側面図である。
【図16】PTO伝動軸に作用する軸トルクと時間の関係を示す図である。
【図17】速度制御アームが中立位置の牽制機構を示す側面図である。
【図18】速度制御アームが前進側最大増速位置の牽制機構を示す側面図である。
【図19】速度制御アームが後増速規制位置の牽制機構を示す側面図である。
【図20】速度制御アームが後進側最大増速位置の牽制機構を示す側面図である。
【符号の説明】
C クラッチ機構
P 油圧ポンプ
M 油圧モータ
10 前ケース
11 後ケース
12 入力軸
13 前輪駆動軸
40 センタセクション
61 速度制御アーム
107 シフター軸
111 牽制アーム
114 牽制ピン
Claims (6)
- エンジン動力を前後輪へ伝動するためのトランスミッションを、前後進切換え可能な油圧式無段変速装置と、走行速度を複数段に変更可能なギア式変速装置とを連動連結して構成すると共に、前記トランスミッションのハウジングに形成した第一の部屋に前記油圧式無段変速装置を収容し、第二の部屋に前記ギア式変速装置を収容したものにおいて、前記ハウジングの、前記第一の部屋を構成する前壁の内外面の各々に、前記油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータとを振り分け装着して互いに流体接続し、油圧ポンプと油圧モータのうちの一方を前記第一の部屋に収容し他方を前記第一の部屋外に位置させる一方、
前記ギア式変速装置に連動連結する前輪駆動軸を、前記第一の部屋内に回転自在に支持し前記前壁を貫いて前方へ突設せしめ、該第一の部屋に、前記前輪駆動軸を前記ギア式変速装置の出力部に対して係脱するためのクラッチ機構を収容してあることを特徴とする作業車両のトランスミッション。 - 前記前輪駆動軸を、同一軸線上で相対回転自在に嵌合した第一軸部と第二軸部とで構成し、各々の軸部を、第一の部屋を構成する前壁と後壁とで軸受支持させると共に、第一軸部と第二軸部との間に、両者を係脱するクラッチ機構を介装してあることを特徴とする請求項1記載の作業車両のトランスミッション。
- 前記油圧式無段変速装置の速度制御アームを前記ハウジングの一側方に配置すると共に、前記クラッチ機構の操作アームを前記ハウジングの他側方に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のトランスミッション。
- エンジン動力を前後輪へ伝動するためのトランスミッションを、前後進切換え可能な油圧式無段変速装置と、走行速度を複数段に変更可能なギア式変速装置とを連動連結して構成すると共に、前記トランスミッションのハウジングに形成した第一の部屋に前記油圧式無段変速装置を収容し、第二の部屋に前記ギア式変速装置を収容したものにおいて、前記ハウジングの、前記第一の部屋を構成する前壁の内外面の各々に、前記油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータとを振り分け装着して互いに流体接続し、油圧ポンプと油圧モータのうちの一方を前記第一の部屋に収容し他方を前記第一の部屋外に位置させる一方、
前記ギア式変速装置が高速側に切り換えられたときに前記油圧式無段変速装置の速度制御レバーによる後進側への所定以上の増速操作を阻止する牽制機構を前記第一の部屋に収容したことを特徴とする作業車両のトランスミッション。 - 前記牽制機構を、前記ギア式変速装置の切換操作に連動して第一の部屋内で機体前後方向に変位自在なカム手段と、前記ハウジングの外壁面における速度制御レバーの後進側変速範囲中の所定の規制位置に設けた、その一端側が該速度制御レバーに向けて出退自在な牽制ピンと、前記第一の部屋内で機体前後方向軸線まわりに揺動自在に支持した、前記カム手段に接当する第一アーム部と、前記牽制ピンの他端側に接当する第二アーム部とを備えた牽制アームとで構成すると共に、ギア式変速装置の高速側への切換操作でカム手段の浅部に第一アーム部が乗り上げた時に、第二アーム部が牽制ピンを速度制御レバーに向けて押し出すように牽制アームが揺動することを特徴とする請求項4に記載の作業車両のトランスミッション。
- 前記ハウジングの前記前壁における、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータを装着する部位を、前記ハウジングより分離可能に構成してあることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の作業車両のトランスミッション。
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