JP4055217B2 - フッ素系界面活性剤及びそれを使用した組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な均質性の求められるコーティング分野、例えば何層かに重ね塗りした塗膜の表面平滑性が求められる各種塗料分野、精密塗工が要求され、スピンコーティング、スプレーコーティングのような高速、高剪断力のかかる塗工方法を必要とするコーティング分野、例えば、紫外線、遠紫外線、エキシマレ−ザ−光、X線等の放射線に感応するフォトレジストを使用するフォトリソグラフィー工程、詳しくはLSI、IC等の半導体製造工程、液晶、サ−マルヘッド等の基板の製造、PS版の製造、その他のフォトファブリケ−ション工程等で好適に使用できるフッ素系界面活性剤およびその組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より各種コーティング分野において、塗膜の均質性及び平滑性を向上させる目的で、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系等の様々なレベリング剤が使用されている。
【0003】
その中でもフッ素系界面活性剤は、その表面張力低下能が高いこと、塗工後の汚染が少ないことから幅広く用いられている。しかし、塗工後の皮膜に実用レベルのリコート性が欠如しているため、一層限りのコーティング、トップコーティング或いは現像等の後加工のない工程にしか用いることができず、用途が限定されていた。また生産効率向上のための高速塗工あるいはスピンコート、スプレーコートの様な高剪断力がかかる塗工方法においては、起泡性が激しくなるため塗工前の消泡に時間を要し、作業効率が悪化するばかりでなく、塗工後の表面に泡に起因するクレーター、ピンホール、フィッシュアイ等の製品価値を著しく損なう欠陥が生じる等の問題があった。
【0004】
さらに表面張力低下能が高いということだけでは優れたレベリング性が得られないという問題が浮上している。その典型例が半導体製造工程におけるフォトレジストの基板へのスピンコーティングであり、これまでのレベリング剤ではストリエーションと呼ばれる塗りムラが生じるという微細加工分野では致命的な欠点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、特開平3−30825号公報、特開平8−62834号公報の様な界面活性剤及びそれを応用した組成物が提案されており、ある程度の効果が認められるものの実用的な加工方法、工程においては不十分な点も多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来からフッ素系界面活性剤の欠点とされてきた消泡性、リコート性、現像等の後加工性を実用レベルにまで引き上げ、さらに高速、高剪断力を伴う過酷な塗工方法に対しても優れたレベリング性を有するフッ素系界面活性剤及びその組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と特定のシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を必須構成単位として重合せしめた共重合体からなるフッ素系界面活性剤を塗料、レジスト等の各種コーティング組成物中に用いることにより、高速、高剪断力を伴う塗工方法であっても、消泡性に優れ且つ高度なレベリング性を発揮し、更に塗工後の皮膜にもリコート性、後加工適性を有することを見い出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と式(1)で表されるシリコーン鎖を含有するエチレン性不飽和単量体(B)を含有してなる共重合体からなるフッ素系界面活性剤であり、一般式(1)中R2及びR3が式(2)で表される官能基であり、さらに好ましくは式(1)中のR4、R5、R6、及び式(2)中のR7、R8及びR9がメチル基であり、pが0であり、好ましくはさらに共重合体の構成単位としてポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)を含有し、さらに好ましくはこのポリオキシアルキレン基がオキシエチレン及びオキシプロピレンの繰り返し単位によって構成されているフッ素系界面活性剤を提供する。
【0009】
また好ましくはさらに共重合体の構成単位として、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)を含有してなるものであり、好ましくは上記単量体(A)、(B)、(C)及び(D)の重量割合が10〜40/5〜30/30〜70/1〜10であり、好ましくは共重合体の数平均分子量が、1,000以上200,000以下であるフッ素系界面活性剤を提供する。
【0010】
さらに本発明は、上記界面活性剤を含んでなるコーティング用組成物、塗料用組成物及びレジスト組成物を提供する。
【0011】
【化4】
【0012】
[式中、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、若しくは式(2)で表される官能基を示し、
【0013】
【化5】
【0014】
[式中、R7、R8、R9は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を示す)、R4、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を示し、pは0〜3の整数を示す。]
【0015】
【発明の実施の形態】
先ず本発明において、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基を有する化合物であれば特に制限はないが、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性、或いは重合反応性の観点からアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適しており、具体的には下記式(3)にて表されるフッ素化(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
尚、本発明において、各種コーティング組成物中の配合物とは、マトリックス樹脂、溶剤或いは溶媒の他目的とする用途における各種添加物に至る全ての配合物を意味する。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート、アクリレート、フルオロアクリレート、塩素化アクリレートを総称するものとする。
【0017】
即ち
【0018】
【化6】
【0019】
[式中、Rf は炭素数1〜20のパ−フロロアルキル基、または部分フッ素化アルキル基であり、直鎖状、分岐状、または主鎖中に酸素原子が介入したもの、例えば -(OCFCF2)2CF(CF3)2 等でも良く、R1 はH,CH3, Cl, またはFであり、Xは2価の連結基で、具体的には-(CH2)n-,
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
(但し、nは1〜10の整数であり、R2 はHまたは炭素数1〜6のアルキル基である。)、
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
または
【0030】
【化15】
【0031】
等であり、aは0または1である。]にて表わされる化合物や、一般式
【0032】
【化16】
【0033】
の如き分子中にパーフロロアルキル基を複数個有する化合物[式中、lは1〜14の整数である。]である。フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレ−トの具体例としては、以下の如きものが挙げられる。
【0034】
【化17】
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】
【0037】
【化20】
【0038】
【化21】
【0039】
【化22】
【0040】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0041】
本発明において、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、本発明に係わるフッ素系界面活性剤を添加した配合物の静的表面張力を低下させ、基材に対する濡れ性、即ちレベリング性を向上させる上で、更には高速、高剪断力を伴う塗工方法に対してのレベリング性の指標となる動的表面張力を低下させる上で必須の単量体成分である。この成分が欠落すると、上記性能は劣悪なものとなり、結果として皮膜の均質性、平滑性が欠如する。
【0042】
本発明において、静的表面張力とは、白金板を用いてウィルヘルミー平板法にて測定した表面張力を意味し、動的表面張力とは、二つの可動性の障壁を左右に動かすことによって表面積を変え、また表面張力は白金板を用いてウィルヘルミー平板法と同様の方法を用いる表面積変化法による表面張力を意味する。この動的表面張力の測定では、表面積を一定周期で変化させることにより、表面張力−面積のヒステリシス曲線を画き、これより得られた表面損失エネルギーを比較することにより各種界面活性剤の性能を解析することが可能である。
【0043】
本発明者等は、各種塗工方法、とりわけスピンコーティング、スプレーコーティング等の高速、高剪断力を伴う塗工方法においては、該組成物の静的表面張力を低下させることもある程度は必要であるが、それよりもむしろ動的表面張力を低下させることの方が重要な因子であることを見い出した。即ち、極めて優れた静的表面張力低下能を有するものの、動的表面張力低下能が低い界面活性剤を用いるよりは、たとえ静的表面張力低下能が低くても動的表面張力低下能に優れた界面活性剤を用いる方が、各種塗工方法にも対応できる高度なレベリング性を有することが見い出された。
【0044】
本発明に係るコーティング組成物の静的表面張力および動的表面張力を低下させるため、ひいては高度なレベリング性を発現させるためには、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)中のパ−フロロアルキル基または部分フッ素化アルキル基の炭素数としては、3以上が好ましく、6以上がより好ましい。
【0045】
次に本発明に係るもう一つの必須構成成分である特定のシリコ−ン鎖を有するエチレン性不飽和単量体(B)のシリコーン鎖は、一般式(1)で示されるものである。
【0046】
【化23】
【0047】
[式中、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、若しくは式(2)で表される官能基を示し、
【0048】
【化24】
【0049】
(式中、R7、R8、R9は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を示す)、R4、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を示し、pは0〜3の整数を示す。]
上記シリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)としては、分子中に上記式(1)で表されるシリコーン鎖及びエチレン性不飽和基を有すれば特に制限されないが、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性、或いは重合反応性の観点から、エチレン性不飽和基としてアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが好ましいところから、下記構造を有する化合物が好ましい。
【0050】
【化25】
【0051】
[式中、R1はH、Cl、F、CH3を示し、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は前記と同様であり、Xは-CH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)nNHCH2CH(OH)CH20CO-、-(CH2)nOCO-、-(CH2)n-O-(CH2)mOCO-、-OCH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)nC(CF3)2OCO-から選ばれる2価の連結基を示し、pは0〜3の整数、m、nは2〜6の整数、qは0または1を示す。]
この様なシリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)の具体例としては、以下の如き化合物が挙げられる。
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
【化28】
【0055】
【化29】
【0056】
【化30】
【0057】
【化31】
【0058】
【化32】
【0059】
【化33】
【0060】
【化34】
【0061】
【化35】
【0062】
【化36】
【0063】
【化37】
【0064】
【化38】
【0065】
【化39】
【0066】
但し、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表わす。尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0067】
シリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。本発明において、シリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)は、本発明に係わる配合物の起泡性を抑制することにより、コーティング時の作業性を向上させ、高速、高剪断力の伴うコーティング方法にも対応し得るための重要な成分である。さらに、これと共にフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と同様に、本発明に係わる配合物の静的および動的表面張力を低下させることにより、基材に対するレベリング性を向上させ、均質かつ平滑な皮膜の形成に寄与する。また、起泡性の抑制、レベリング性の向上による均質且つ平滑な皮膜の形成という観点からは、式(1)中のR2及びR3が式(2)で示される様な官能基である分岐型の化合物を使用することが好ましい。
【0068】
一方、一般にシリコーン鎖含有化合物を含有する組成物をコーティングした後の皮膜表面は、それを含有しない該組成物から成る皮膜に比較して撥水性が向上する。従って、リコート性、或いは現像等の後処理を行う場合には後処理液の濡れ性が低下することによる、著しい後処理効率の低下を引き起こす原因となっていた。
【0069】
本発明者等はシリコーン鎖長が短いもの、具体的には式(1)においてp=0〜3のものを用いることにより上記問題を解決できることを見い出した。即ち、p=4以上の化合物を用いた場合は、動的表面張力が大きくなり、塗膜のレベリング性に多大な悪影響を与えるばかりでなく、塗工後皮膜の撥水性が高くなってしまい、リコート性、後処理工程に支障を来しこの様な工程を伴う用途には使用できない。p=3以下の化合物、好ましくはp=0の化合物を用いれば、リコート性、後加工性を阻害することなく優れた消泡性並びにレベリング性を得ることが可能である。
【0070】
更に、消泡性及びレベリング性と、リコート性或いは後加工性を両立させるためには、式(1)中のR2及びR3が式(2)で示される官能基であり、且つ式(1)中のR4、R5,R6、及び式(2)中のR7、R8、R9がすべてメチル基であり、且つp=0の化合物を用いることがより好ましい。
【0071】
以上述べてきた本発明に係わる共重合体の必須構成単位であるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と式(1)で表されるシリコ−ン鎖を含有するエチレン性不飽和単量体(B)の効果は、それぞれ区別して表せるものではなく、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とシリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)とを共重合せしめ、フッ素化アルキル基と式(1)で表されるシリコ−ン鎖とを同時に一分子中に含ませることにより、従来の方法では困難であった消泡性、静的表面張力および動的表面張力を低下させることによる高度なレベリング性、リコート性或いは後加工性を兼備し得るのである。
【0072】
従って、本発明の共重合体においてフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)若しくは特定のシリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)のどちらか一方が欠落したり、単量体(A)のみを必須構成成分とする共重合体と単量体(B)のみを必須構成成分とする共重合体を単に混合して用いても、本発明にいう、消泡性及び高度なレベリング性と、リコート性或いは後加工性を両立し得えない。
【0073】
本発明に係る共重合体には、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、塗工後皮膜のリコート性或いは現像等の後加工性を向上させる目的から、さらに構成単位として、ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)を含有させることも可能である。
【0074】
ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)としては、分子中にエチレン性不飽和基とポリオキシアルキレン基を含む化合物であれば特に制限はない。エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性、或いは重合反応性の観点からアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適している。
【0075】
ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)の具体的化合物としては、重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル(以後この表現はアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体の市販品としては、新中村化学工業(株)社製NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AM−90G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、日本油脂(株)社製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、PP−1000、PP−500、PP−800、70PEP−350B、55PET−800、50POEP−800B、NKH−5050、AP−400、AE−350等が挙げられる。
【0076】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。ポリオキシアルキレン基含有単量体(C)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0077】
この様なポリオキシアルキレン基含有単量体(C)は、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、塗工後皮膜のリコート性或いは現像等の後加工性を向上させる点では有効であるが、表面張力低下能という観点からは、本発明に係わる共重合組成物中ではマイナス要因である。本発明者等の知見によれば、組成物中の配合物との相溶性、リコート性或いは後加工性、表面張力低下能のバランスを考慮すると、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン及びオキシプロピレンの繰り返し単位によって構成される化合物であることがより好ましい。
【0078】
オキシエチレン及びオキシプロピレン単位の繰り返し数は、本発明の界面活性剤の適用される系、即ち他の配合物の種類、目的とする塗工方法、後加工性等によって異なるが、各々の繰り返し単位については1〜100が好ましく、2〜50がより好ましく、5〜30が特に好ましい。
【0079】
また本発明に係わる共重合体には、主に消泡性を向上させる観点から、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)を含有させることも可能である。上述したように、消泡性に関しては、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)をフッ素化アルキル基含有単量体(A)と共重合せしめることにより著効を示すが、高速、高剪断力を伴う塗工方法では不十分な場合、或いは共重合体中にシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)の導入量が多くなった場合、皮膜表面の撥水性が向上しリコート性若しくは後加工性に悪影響を及ぼすことがある。この様な場合に、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合体中に導入することは有効である。
【0080】
1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)としては、特に制限はない。エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性或いは重合反応性の観点からアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適している。
【0081】
1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)の具体的化合物としては、重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのEO変性物、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのEO変性物、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。また、市販品としては、新中村化学工業(株)社製NKエステル1G、2G、3G、4G、9G、14G、23G、BG、HD、NPG、A−200、A−400、A−600、A−HD、A−NPG、APG−200、APG−400、APG−700、A−BPE−4、701A、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−50、PDE−100、PDE−150、PDE−200、PDE−400、PDE−600、ADE−200、ADE−400等が挙げられる。
【0082】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。この様な1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合体中に導入することにより顕著な消泡効果が得られるが、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、重合反応制御性の点からは、重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
【0083】
1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。以上述べてきた本発明に係わる共重合体を構成する単量体(A)、(B)、(C)、(D)の割合は、本共重合体が配合される組成物中の配合物、目的とする物性のレベル、塗工方法等によっても異なるが、上述した目的とする物性である、高速、高剪断力を伴う塗工方法にも適用できる高度なレベリング性、消泡性、リコート性、現像等の後加工性を全て満足させる上では、重量割合で(A)/(B)/(C)/(D)=5〜50/3〜40/0〜90/0〜30の範囲にあることが好ましく、より好ましい範囲としては(A)/(B)/(C)/(D)=10〜40/5〜30/30〜70/1〜10であり、特に好ましい範囲としては(A)/(B)/(C)/(D)=15〜25/5〜20/50〜70/2〜7である。
【0084】
本発明に係わる共重合体の割合が上記範囲内にあれば、目的とする物性を達成できるが、この範囲を逸脱すると高度なレベリング性、消泡性、リコート性、現像等の後加工性を全て満足できなくなり、目的に合致した界面活性剤としての実用性を失う。
【0085】
また、本発明に係わる共重合体には、単量体(A)、(B)、(C)、(D)以外にも、それ以外のエチレン性不飽和単量体(E)を共重合成分として導入することが可能である。
【0086】
エチレン性不飽和単量体(E)は、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、重合反応性、コスト等を考慮して、目的に応じて適宜導入されるものである。この様なエチレン性不飽和単量体(E)としては、特に制限はなく公知公用の化合物であれば何れでも使用できる。具体的には、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体として、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以後この表現はアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、即ち(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等が挙げられる。
【0087】
また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル、即ちジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等、また(メタ)アクリル酸の、炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、例えばメトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等、更に橋状結合含有モノマーとしては、例えばジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等、またアルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル、即ちグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等、またサートマー社製スチレンマクロモノマー4500、東亜合成(株)社製AA−6、AN−6等の各種マクロモノマーが挙げられる。
【0088】
更にγ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメチキシシラン等のシランカップング基含有単量体、そして分子中に極性基、とりわけアニオン性基や水酸基を含有するモノマ−として、アクリル酸、メタアクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、部分スルホン化スチレン、モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0089】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。本発明に係わる単量体(A)、(B)、(C)、(D)以外のエチレン性不飽和単量体(E)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0090】
単量体(A)、(B)、(C)、(D)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(E)との共重合割合は、本共重合体が配合される組成物中の配合物、目的とする物性のレベル、塗工方法等によっても異なるが、重量割合で、[(A)+(B)+(C)+(D)]/(E)=20/80〜100/0の範囲内であることが好ましく、より好ましい範囲としては[(A)+(B)+(C)+(D)]/(E)=50/50〜97/3、特に好ましい範囲としては[(A)+(B)+(C)+(D)]/(E)=70/30〜95/5である。
【0091】
単量体(A)、(B)、(C)、(D)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(E)との割合が上記範囲内から逸脱すると、目的とする高度なレベリング性、消泡性、リコート性或いは後加工性の物性の内、何れかを満足できなくなり実用性を失う。
【0092】
本発明に係わる共重合体の製造方法には何ら制限はなく、公知の方法、即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、更にエマルジョン重合法等によって製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。
【0093】
この場合重合開始剤としては、当業界公知のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3 等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。
【0094】
更に必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオ−ル化合物を連鎖移動剤等の添加剤を使用することができる。
【0095】
また光増感剤や光開始剤の存在下での光重合あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によっても本発明に係るフッ素系のランダムもしくはブロック共重合体を得ることができる。
【0096】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性の点から溶剤存在下の場合の方が好ましい。溶剤としては、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブタノ−ル、iso−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、 2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、 メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト等のプロピレングリコ−ル類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類等が挙げられ、これらのいずれも使用できる。
【0097】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。本発明に係わる共重合体の分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量でMn=1,000〜200,000が好ましく、組成物中の配合物との相溶性を良好に保ち、高度なレベリング性、消泡性、リコート性、現像等の後加工性を発揮させるためには、1,000〜100,000がより好ましく、更に2,500〜50,000が特に好ましい。共重合体の分子量が1,000未満の場合は、組成物中の他の配合物との相溶性は良好であるが、高度なレベリング性、消泡性、リコート性、現像等の後加工性を全て満足させることが困難であり、逆に分子量が200,000を越えると、組成物中の配合物との相溶性が欠如する。
【0098】
本発明に係わるフッ素系界面活性剤は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。また、組成物中の配合物との相溶性向上等の目的により、公知公用の炭化水素系、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0099】
本発明に係わるフッ素系界面活性剤を用いれば、高速、高剪断力を伴う塗工方法においても、起泡を抑制し、高度なレベリング性を発現させると共に、塗工後の皮膜表面の撥水性も抑制されているため、リコート性若しくは現像等の後加工性をも可能にするコーティング組成物を提供することが可能である。この様なコーティング組成物としては特に制限はないが、有用なコーティング組成物として、例えば各種塗料用組成物とフォトレジスト用組成物が挙げられる。
【0100】
まず塗料用組成物についてであるが、従来より塗料用組成物には、コーティング時のレベリング性を向上させるため、各種レベリング剤が使用されており、中でも表面張力低下能が低くレベリング効果の高いフッ素系界面活性剤がレベリング剤として用いられている。しかしながら、フッ素系界面活性剤を用いると塗工後の皮膜表面の撥水、撥油性が向上するため、リコートが困難となり使用できる用途が限られていた。この様な観点から、高度なレベリング性、消泡性とリコート性を併せ持つ本発明に係わるフッ素系界面活性剤を塗料用組成物中に配合することは有効である。
【0101】
本発明に係わるフッ素系界面活性剤を塗料用組成物中に添加する割合は、適用される系、目的とする物性、塗工方法、コスト等により異なるが、塗料用組成物に対して0.0001〜20%が好ましく、より好ましくは0.001〜10%、更に好ましくは0.01〜7%である。
【0102】
適用される塗料としては、特に制限はなく、天然樹脂を使った塗料、例えば石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆、カシュー樹脂塗料、油性ピヒクル塗料等、また、合成樹脂を使った塗料、例えばフェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等が挙げられが、特にこれらに限定されるものではない。
【0103】
これらの塗料は水系、溶剤系、非水分散系、粉体系等の何れの形態でも適用でき、溶剤若しくは分散媒にも特に制限はない。溶剤、分散媒の具体例としては、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブタノ−ル、iso−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、 メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類が挙げられる。
【0104】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。また、これら塗料中には必要に応じて、顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフロロエチレン)、ポリエチレン等の有機微粉末、更に耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種充填剤を適宜添加することが可能である。
【0105】
更に、塗工方法についても公知公用の塗工方法であれば何れでも使用でき,例えばロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、デイッピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。
【0106】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。つぎにフォトレジスト用組成物についてであるが、通常半導体素子フォトリソグラフィ−においては、フォトレジスト用組成物を高剪断力の伴うスピンコ−ティングによって、厚さが1〜2μm程度になる様にシリコンウエハ−に塗布するのが一般的である。この際、塗布膜厚が振れたり、一般にストリエ−ションと称される塗布ムラが発生すると、パタ−ンの直線性や再現性が低下し、目的とする精度を有するレジストパタ−ンが得られないという問題が生じる。半導体素子の高集積化に伴ってレジストパタ−ンの微細化が進む現在、塗布膜厚の振れやストリエ−ションの発生を抑えることが重要な課題となっている。また近年、半導体素子の生産性向上等の観点から、シリコンウエハ−の6インチから8インチへという大口径化、もしくはそれ以上への大口径化が進んでいるが、この大口径化に伴って、前記塗布膜厚の振れやストリエ−ションの発生の抑制が、極めて大きな課題となっている。更に、フォトレジスト用組成物を塗布した後には現像工程を伴うため、その際の現像液の濡れ性ということも重要な因子である。
【0107】
この様な問題点を鑑み、高度なレベリング性、消泡性と現像等の後加工性向上という観点からは、本発明に係わるフッ素系界面活性剤は各種フォトレジスト用組成物としても有用である。
【0108】
本発明に係るフォトレジスト組成物は、上記フッ素系界面活性剤と公知公用のフォトレジスト剤とから成るものである。本発明に係るフッ素系界面活性剤との組み合わせが可能なフォトレジスト剤としては、公知公用のものであれば何等制限無く使用することが可能である。
【0109】
通常フォトレジスト剤は、(1)アルカリ可溶性樹脂と(2)放射線感応性物質(感光性物質)と(3)溶剤、そして必要に応じて(4)他の添加剤とからなる。
【0110】
本発明に用いられる(1)アルカリ可溶性樹脂としては、レジストのパタ−ン化時に使用する現像液を構成するアルカリ性溶液に対して可溶の樹脂であれば何等制限無く使用することが可能であり、例えばフェノ−ル、クレゾ−ル、キシレノ−ル、レゾルシノ−ル、フロログリシノ−ル、ハイドロキノン等の芳香族ヒドロキシ化合物及びこれらのアルキル置換またはハロゲン置換芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物とを縮合して得られるノボラック樹脂、o−ビニルフェノ−ル、m−ビニルフェノ−ル、p−ビニルフェノ−ル、α−メチルビニルフェノ−ル等のビニルフェノ−ル化合物及びこれらのハロゲン置換化合物の重合体または共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト等のアクリル酸系またはメタアクリル酸系重合体もしくは共重合体、ポリビニルアルコ−ル、更に前記各種樹脂の水酸基の一部を介してキノンジアジド基、ナフトキノンアジド基、芳香族アジド基、芳香族シンナモイル基等の放射性線感応性基を導入した変性樹脂を挙げることができ、これらの樹脂を併用することも可能である。
【0111】
この他アルカリ可溶性樹脂としては、特開昭58−105143号公報、特開昭58−203434号公報、特開昭59−231534号公報、特開昭60−24545号公報、特開昭60−121445号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭61−260239号公報、特開昭62−36657号公報、特開昭62−123444号公報、特開昭62−178562号公報、特開昭62−284354号公報、特開昭63−24244号公報、特開昭63−113451号公報、特開昭63−220139号公報、特開昭63−98652号公報、特開平2−125260号公報、特開平3−144648号公報、特開平2−247653号公報、特開平4−291258号公報、特開平4−340549号公報、特開平4−367864号公報、特開平5−113666号公報、特開平6−186735号公報、USP第3,666,473号明細書、USP第4,115,128号明細書、USP第4,173,470号明細書、USP第4,526,856号明細書等や、また更に成書、米澤輝彦「PS版概論」印刷学会出版部(1993)に記載されている公知公用のものを挙げることができ、これらを使用することが可能である。
【0112】
更にアルカリ可溶性樹脂としては、分子中にカルボン酸やスルホン酸等の酸性基を含むウレタン樹脂を用いることが可能であり、またこれらのウレタン樹脂を上記アルカリ可溶型樹脂と併用することも可能である。またアルカリ可溶性樹脂としては、2種以上の異なる種類のものを混合して使用しても良い。
【0113】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。本発明に係る(2)放射性感応性物質(感光性物質)としては、公知慣用のものであれば何等制限無く使用することが可能であり、前記アルカリ可溶性樹脂と混合し、紫外線、遠紫外線、エキシマレ−ザ−光、X線、電子線、イオン線、分子線、γ線、等を照射することにより、アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を変化させる物質であれば何等制限なく使用することが可能である。
【0114】
好ましい放射線感応性物質としては、キノンジアジド系化合物、ジアゾ系化合物、ジアジド系化合物、オニウム塩化合物、ハロゲン化有機化合物、ハロゲン化有機化合物/有機金属化合物の混合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物、そして特開昭59−152号公報に記載されているポリ(オレフィンスルホン)化合物等が挙げられる。
【0115】
キノンジアジド系化合物の具体例としては、例えば1,2−ベンゾキノンアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、その他1,2−ベンゾキノンアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド等のキノンジアジド誘導体のスルホン酸クロライド等が挙げられる。
【0116】
ジアゾ化合物としては、p−ジアゾジフエニルアミンとホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとの縮合物の塩、例えばヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、過塩素酸塩または過ヨウ素酸塩と前記縮合物との反応性生物であるジアゾ樹脂無機塩、USP第3,300,309号明細書に記載されている様な、前記縮合物とスルホン酸類との反応生成物であるジアゾ樹脂有機塩等が挙げられる。
【0117】
アジド化合物並びにジアジド化合物の具体例としては、特開昭58−203438号公報に記載されている様なアジドカルコン酸、ジアジドベンザルメチルシクロヘキサノン類及びアジドシンナミリデンアセトフェノン類、日本化学会誌No.12、p1708−1714(1983年)記載の芳香族アジド化合物または芳香族ジアジド化合物等が挙げられる。
【0118】
ハロゲン化有機化合物としては、有機化合物のハロゲン化物であれば特に制限は無く、各種の公知化合物の使用が可能であり、具体例としては、ハロゲン含有オキサジアゾ−ル系化合物、ハロゲン含有トリアジン系化合物、ハロゲン含有アセトフェノン系化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン系化合物、ハロゲン含有スルホキサイド系化合物、ハロゲン含有スルホン系化合物、ハロゲン含有チアゾ−ル系化合物、ハロゲン含有オキサゾ−ル系化合物、ハロゲン含有トリゾ−ル系化合物、ハロゲン含有2−ピロン系化合物、ハロゲン含有脂肪族炭化水素系化合物、ハロゲン含有芳香族炭化水素系化合物、その他のハロゲン含有ヘテロ環状化合物、スルフェニルハライド系化合物等の各種化合物、更に例えばトリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェ−ト、トリス(2,3−ジブロモ−3−クロロプロピル)ホスフェ−ト、クロロテトラブロモメタン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモビフェニル、トリブロモフェニルアリルエ−テル、テトラクロロビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA、ビス(ブロモエチルエ−テル)テトラブロモビスフェノ−ルA、ビス(クロロエチルエ−テル)テトラクロロビスフェノ−ルA、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−ト、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のハロゲン系難燃剤として使用されている化合物、そしてジクロロフェニルトリクロロエタン等の有機クロロ系農薬として使用されている化合物も挙げられる。
【0119】
有機酸エステルの具体例としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。有機酸アミドの具体例としては、カルボン酸アミド、スルホン酸アミド等が挙げられる。更に有機酸イミドの具体例としては、カルボン酸イミド、スルホン酸イミド等が挙げられる。
【0120】
この他本発明に係る放射線感応性物質として、特開昭58−105143号公報、特開昭58−203434号公報、特開昭59−231534号公報、特開昭60−24545号公報、特開昭60−121445号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭61−260239号公報、特開昭62−36657号公報、特開昭62−123444号公報、特開昭62−178562号公報、特開昭62−284354号公報、特開昭63−24244号公報、特開昭63−113451号公報、特開昭63−220139号公報、特開昭63−98652号公報、特開平2−125260号公報、特開平3−144648号公報、特開平2−247653号公報、特開平4−291258号公報、特開平4−340549号公報、特開平4−367864号公報、特開平5−113666号公報、特開平6−186735号公報、USP第3,666,473号明細書、USP第4,115,128号明細書、USP第4,173,470号明細書、USP第4,526,856号明細書等に記載の公知公用のものを使用することが可能である。また放射線感応性物質としては、2種以上の異なる種類のものを使用しても良い。
【0121】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。フォトレジスト組成物において、放射線感応性物質の配合割合は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して1〜100重量部であり、好ましくは3〜50重量部である。
【0122】
本発明において、前記アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を調節する目的から、必要に応じて酸架橋性化合物を使用することが可能である。本発明において、酸架橋性化合物とは、前記放射線の照射下で酸を生成可能な化合物の存在下で照射時に架橋し、放射線の照射部のアルカリ可溶性樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を低下させる物質をいい、このような性質を有する公知慣用の物質であれば何等制限なく使用することが可能である。その中でも、C−O−R基(ここでRは水素原子またはアルキル基である)を分子中に有する化合物、あるいはエポキシ基を有する化合物が好ましい。
【0123】
C−O−R基を有する化合物の具体例としては、例えば特開平2−247653号公報や特開平5−113666号公報等に記載されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキルエ−テルメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエ−テル化ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アルキルエ−テル化ユリア樹脂、ウレタン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキルエ−テル基含有フェノ−ル系化合物等が挙げられる。酸架橋性化合物として、2種以上の異なる種類のものを混合し使用しても良い。またフォトレジスト組成物において、酸架橋性化合物の配合割合は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。酸架橋性化合物が0.1重量部未満であると、レジストパタ−ン形成が困難になり、逆に100重量部を越えると現像残が発生することがある。
【0124】
溶剤(3)としては、公知慣用のものを何等制限無く使用することが可能である。すなわち、従来、フォトレジスト剤をシリコンウエハ−に塗布する際、塗布性の向上、ストリエ−ションの発生防止、現像性の向上のために、特開昭62−36657号公報、特開平4−340549号公報、特開平5−113666号公報等に記載されている様に、様々な溶剤組成が提案されているが、本発明に係るフッ素系界面活性剤を使用すれば、この様なやっかいな溶剤調整をしなくても、優れた塗布性、ストリエ−ションの発生防止、液中パ−ティクルの発生防止、泡の抱き込みの低減化、現像時の現像液の塗れ性向上に伴う優れた現像性を得ることが可能となる。また近年、人体への安全性の観点から、従来フォトレジスト剤に使用されてきたエチルセロソルブアセテ−ト等の様な溶剤から、乳酸エチル等の安全性の高い溶剤が使用される様になり、塗布性やストリエ−ションの発生防止によりきめ細かな注意が必要となっているが、本発明に係るフッ素系界面活性剤を使用すれば、この様な問題点も払拭できるという利点がある。それ故、本発明に係るフォトレジスト組成物においては、従来にもまして広範囲な溶剤を選択することが可能である。
【0125】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロピルアルコ−ル、iso−プロピルアルコ−ンル、n−ブチルアルコ−ル、iso−ブチルアルコ−ル、tert−ブチルアルコ−ル、ペンタノ−ル、ヘプタノ−ル、オクタノ−ル、ノナノ−ル、デカノ−ル等のアルコ−ル類、エチレングリコ−ルジメチルエ−テル、エチレングリコ−ルジエチルエ−テル、ジオキサン等のエ−テル類、エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノプロピルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノプロピルエ−テル等のアルコ−ルエ−テル類、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、 2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、 2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、セロソルブアセテ−ト、メチルセロソルブアセテ−ト、エチルセロソルブアセテ−ト、プロピルセロソルブアセテ−ト、ブチルセロソルブアセテ−ト等のセロソルブエステル類、プロピレングリコ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト等のプロピレングリコ−ル類、ジエチレルグリコ−ルモノメチルエ−テル、ジエチレルグリコ−ルモノエチルエ−テル、ジエチレルグリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレルグリコ−ルジエチルエ−テル、ジエチレルグリコ−ルメチルエチルエ−テル等のジエチレングリコ−ル類、トリクロロエチレン、フロン溶剤、HCFC、HFC等のハロゲン化炭化水素類、パ−フロロオクタンの様な完全フッ素化溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族類、ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等を挙げることができ、成書「溶剤ポケットハンドブック」(有機合成化学協会編、オ−ム社)に記載されている溶剤や、特開昭58−105143号公報、特開昭58−203434号公報、特開昭59−231534号公報、特開昭60−24545号公報、特開昭60−121445号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭61−260239号公報、特開昭62−36657号公報、特開昭62−123444号公報、特開昭62−178562号公報、特開昭62−284354号公報、特開昭63−24244号公報、特開昭63−113451号公報、特開昭63−220139号公報、特開昭63−98652号公報、特開平2−125260号公報、特開平3−144648号公報、特開平2−247653号公報、特開平4−291258号公報、特開平4−340549号公報、特開平4−367864号公報、特開平5−113666号公報、特開平6−186735号公報、USP第3,666,473号明細書、USP第4,115,128号明細書、USP第4,173,470号明細書、USP第4,526,856号明細書等に記載されている公知公用の溶剤等を挙げることができ、これらを使用することが可能である。本発明に係るフォトレジスト剤の溶剤としては、2種以上の異なる溶剤を混合して使用することも可能である。
【0126】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。本発明に係るフォトレジスト組成物において、溶剤の配合割合はフォトレジスト組成物を基板に塗布する際の必要膜厚と塗布条件に応じて適宜調整が可能であるが、一般的にはアルカリ可溶性樹脂と放射線感応性物質とを合計したもの100重量部に対して10〜10,000重量部であり、好ましくは50〜2,000重量部である。
【0127】
また本発明において、本発明に係るフッ素系界面活性剤の配合割合はフォトレジスト組成物を基板に塗布する際の必要膜厚と塗布条件や、使用する溶剤の種類に応じて適宜調整が可能であるが、通常アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して0.0001〜5重量部であり、好ましくは0.0005〜1重量部である。
【0128】
本発明に係るフォトレジスト組成物において、フッ素界面活性剤の存在は極めて重要であり、該フッ素系界面活性剤が欠落すると、優れた塗布性、ストリエ−ションの発生防止、液中パ−ティクルの発生防止、泡の抱き込みの低減化、現像時の現像液の塗れ性向上に伴う優れた現像性を発現する上で支障を来すことになる。
【0129】
本発明に係るフォトレジスト組成物において、必要に応じて公知慣用の界面活性剤、保存安定剤、顔料、染料、蛍光剤、発色剤、可塑剤、増粘剤、チクソ剤、樹脂溶解抑制剤、シランカップリング剤等の密着性強化剤等を添加することが可能であることは言うまでもない。
【0130】
本発明に係るフォトレジスト組成物の塗布方法としては、スピンコ−ティング、ロ−ルコ−ティング、ディップコ−ティング、スプレ−コ−ティング、プレ−ドコ−ティング、カ−テンコ−ティング、グラビアコーティング等、公知慣用の塗布方法を広く使用することが可能である。
【0131】
本発明に係るフッ素系界面活性剤は、さらにはハロゲン化写真感光材料の製造、平版印刷版の製造、カラーフィルター用材料等の液晶関連製品の製造、PS版の製造、その他のフォトファブリケーション工程等の単層、あるいは多層コーティング組成物に用いられる各種樹脂へレベリング剤として添加することもできる。 添加することによりピンホール、ゆず肌、塗りムラ、ハジキ等の無い優れた平滑性を発現する。
【0132】
【実施例】
以下に本発明に係る具体的な合成例、実施例を挙げ本発明をより詳細に説明するが、本具体例等によって発明が何等限定されるものではないことは勿論である合成例1攪拌装置、コンデンサ−、温度計を備えたガラスフラスコにフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレ−ト単量体(a−1)18重量部、シリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(b−3−1)12重量部、分子量400のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖にもつモノアクリレ−ト化合物58重量部、テトラエチレングリコ−ルの両末端がメタクリレ−ト化された化合物 4重量部、メチルメタクリレ−ト 8重量部、そしてイソプロピルアルコ−ル(以下、IPAと略す)350重量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す)1重量部と、連載移動剤としてラウリルメルカプタン10重量部を添加した後、85℃にて7時間還流し重合を完成させた。
【0133】
この重合体のゲルパ−ミエ−ショングラフ(以後GPCと略す)によるポリスチレン換算分子量はMn=3,500であった。この共重合体をフッ素系界面活性剤1とする。
【0134】
合成例2〜16各種フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレ−ト単量体(A)とシリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)、ポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)、及び(A)、(B)、(C)、(D)以外のエチレン性不飽和単量体(E)、連鎖移動剤とを表−1に示す割合で用いた以外は合成例1と同様にしてフッ素系共重合体を得た。それらの重合体の分子量測定の結果を表−1に記した。尚、表−1中の各原料の仕込比は重量部で、原料の記号は本文に掲載した化合物を示している。
【0135】
合成例17シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)として、本文中に記載した式(1)でpが4であり、かつ更に分子量1310のシリコーンモノメタクリレート[本文中に記載した式(1)、及び式(2)のR2、R3、R4、R5、R6がメチル基でpが4でR4、R5、R6がメチル基であり、かつR2、R3が式(2)でR7、R8、R9がすべてメチル基で、連結基Xがー(CH2)3OCO-であるシリコーンモノメタクリレート]を用いた以外は合成例1と同様にしてフッ素系共重合体を得た。この重合体の分子量測定の結果を表−1に記した。
【0136】
合成例18シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)として、分子量約3800のシリコーンモノメタクリレート[本文中に記載した式(1)、及び式(2)のR2、R3、R4、R5、R6がメチル基でpが50であり、かつ連結基Xがー(CH2)3OCO-であるシリコーンモノメタクリレート]を用いた以外は合成例1と同様にしてフッ素系共重合体を得た。この重合体の分子量測定の結果を表−1、表−2に記した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
実施例1以下に示す4種類の塗料に対して、合成例1のフッ素系共重合体を樹脂固形分に対して0.5%添加し、その塗料用樹脂液、及び以下に示す各々の条件にて得られた塗膜表面について、以下の様な評価を実施した。尚、以下の条件で得られた塗膜の膜厚はすべて30μmであった。
(塗料の種類と塗膜作成方法)
アクリル常乾塗料アクリディック A−181(大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、バーコーターにて鋼板(SPCC−SB)に塗布後、室温にて1週間放置することにより評価用塗膜を得た。
二液アクリルウレタン塗料アクリディック A−801−P、及び硬化剤としてバーノック DN−980(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、バーコーターにて鋼板(SPCC−SB)に塗布後、80℃にて20分間の加熱処理を行い、評価用塗膜を得た。
焼き付けアクリルメラミン塗料アクリディック A−465及びスーパーベッカミン L−117−60(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、鋼板(SPCC−SB)にスプレー吹き付けによりコーティングした後、150℃にて30分間焼き付けを行い、評価用塗膜を得た。
焼き付けアルキッドメラミン塗料ベッコゾール WB−703、及びスーパーベッカミン L−117−60(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、鋼板(SPCC−SB)にスプレー吹き付けによりコーティングした後、150℃にて30分間焼き付けを行い、評価用塗膜を得た。
【0140】
以上のようにして得られた塗膜表面について、以下の様な項目について評価した。また、上述の4種の塗料用樹脂液についても以下の様な評価を実施した。
<試験方法及び評価基準>(1)泡立ち性得られた塗料用樹脂液50ccを、100ccの密栓付きサンプル瓶に評取し、30cmの振幅で1秒間に2回の割合で50回浸透し、静置後の気泡の状況を確認した。
【0141】
○:静置と共に気泡が消滅する。
△:静置開始後、1分後には気泡が消滅している。
×:静置開始後、1分後でも気泡が存在している。
(2)レベリング性得られた塗膜表面のレベリング性について、その平滑性、ハジキの有無等の観点より目視にて評価した。
【0142】
○:塗りむら、ハジキが全くない。
△:塗りむらは殆どないが、ハジキが塗膜表面に観察される。
×:塗りむらが観察され、さらにハジキが観察される。
(3)リコート性得られた塗膜表面に1mm角で100マスの碁盤目をカッターナイフで作成し、セロテープ剥離試験を行った。評価は100マス中の剥離しなかったマス数にて表示した。
【0143】
実施例2〜14フッ素系共重合体として合成例2〜14を用いた以外は上記実施例1と全く同様にして得られた塗膜、及び塗料用樹脂液を用い、評価についても実施例1と同様に行った。
【0144】
比較例1フッ素系共重合体を添加しなかった以外は上記実施例1と全く同様にして得られた塗膜、及び塗料用樹脂液を用い、評価についても実施例1と同様に行った。
【0145】
比較例2〜9合成例15〜18のフッ素系共重合体、合成例15と16の50/50(重量比)混合物、もしくは市販のフッ素系界面活性剤を用いた以外は上記実施例1と全く同様にして得られた塗膜、及び塗料用樹脂液を用い、評価についても実施例1と同様に行った。
【0146】
以上の評価結果を表−3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
メガファック F−173、F−177、F−179は大日本インキ化学工業株式会社製のフッ素系界面活性剤である。フロラード FC−430は、住友スリーエム株式会社製のフッ素系界面活性剤である。
【0149】
実施例15〜31、比較例9〜202,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンとo−ナフトキシジアジド−5−スルホニルクロライドとの縮合物27重量部と、クレゾ−ルとホルムアルデヒドとを縮合してなるノボラック樹脂100重量部を乳酸エチル400重量部に溶解して溶液を調整し、これに合成例1〜18のフッ素系共重合体、合成例15と16の50/50(重量比)混合物、もしくは市販のフッ素系界面活性剤を溶液中の固形分に対して所定量の濃度になる様に添加し、0.1μmのPTFE製フィルタ−で精密濾過してフォトレジスト組成物を調製した。このフォトレジスト組成物を直径8インチのシリコンウエハ−上に、回転数3,000rpmでスピンコ−ティングした後、ホットプレート上にて90秒間加熱して溶媒を除去し、膜厚が1.5μmのレジスト膜を有するウエハ−を得た。以上の様にして得られたレジスト膜を有するシリコンウエハ−について、以下の様な項目について評価した。
【0150】
また、フォトレジスト溶液についても、以下の様な評価を実施した。評価結果を表−4、表−5に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【0153】
メガファック F−173、F−177、F−179は大日本インキ化学工業株式会社製のフッ素系界面活性剤である。フロラード FC−430は、住友スリーエム株式会社製のフッ素系界面活性剤である。
【0154】
表中、フッ素系重合体もしくは市販界面活性剤の添加量(ppm)は、フォトレジスト剤の固形分に対するフッ素系重合体の固形分の量である。実施例15に示したフォトレジスト組成物の溶剤を、乳酸エチル/プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル(重量比で70/30)の混合溶剤、もしくはメチルエチルケトン/2−ヘプタノン(重量比で50/50)の混合溶剤に代えて検討したが、本発明に係るフッ素系重合体である合成例1〜14については、何れの試験においても良好な結果が得られ、一方合成例15〜18のフッ素系共重合体や合成例15と16の50/50(重量比)混合物、及び従来より市販されてきたフッ素系界面活性剤では、良好な結果は得られなかった。
【0155】
<試験方法及び評価基準>(1)泡立ち性実施例12の様にして調製したフォトレジスト溶液50ccを、100ccの密栓付 きサンプル瓶に評取し、30cmの振幅で1秒間に2回の割合で50回浸透し、静置後の気泡の状況を確認した。
【0156】
○:静置と共に気泡が消滅する。
△:静置開始後、1分後には気泡が消滅している。
×:静置開始後、1分後でも気泡が存在している。
(2)ストリエ−ションレジスト用組成物に対しては、レジスト膜表面を光学顕微鏡で100倍に拡大し、ストリエ−ションの発生状況を観察した。
【0157】
○:ストリエ−ションの発生が認められないもの。
△:ストリエ−ションがやや認められるもの。
×:ストリエ−ションが顕著に認められるもの。
(3)表面荒さレジスト膜表面の荒さを、ランクテ−ラ−ホブソン社製の表面荒さ計「タリステップ」を用いて測定した。測定数は21ポイント/1ウエハ−であり、測定点21個の平均値を求めた。
(4)撥水性現像等の後加工適性の指標として、レジスト用組成物を用いて塗工後皮膜表面の液滴落下直後の水接触角測定を行った。接触角の測定は自動接触角計CA−Z型(協和界面科学株式会社製)を用い、液滴法にて実施した。
(5)塗布性レジスト膜表面を目視観察し、塗れ残りの有無を観察した。
【0158】
○:塗れ残り無し。
△:ウエハ−周辺の極一部に塗れ残りが認められるもの。
×:ウエハ−周辺の一部に塗れ残りが認められるもの。
(6)レベリング性従来よりレベリング性の一つの指標とされてきたウィルヘルミー法による静的表面張力の値、及び本発明者等により見い出された高速、高剪断力を伴う塗工方法に対するレベリング性の指標の一つになる動的表面張力の値を測定した。
【0159】
静的表面張力は、自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−IV型(協和科学株式会社製)を用いて、レジスト溶媒である乳酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒(重量比にて70/30)に対してフッ素系共重合体もしくは市販界面活性剤の固形分が1%となるように調製し、25℃にて白金板を用いたウィルヘルミー法にて測定した。
【0160】
一方、動的表面張力は自動動的表面張力計DST−A1型(協和界面科学株式会社製)を用いて表面積60cm2(最大表面積80cm2、最小表面積20cm2)、測定周期10秒、溶液温度25℃の条件でレジスト溶媒である乳酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒(重量比にて70/30)に対してフッ素系共重合体もしくは市販界面活性剤の固形分が表−3に示す所定の濃度に調製して得られた溶液を用いて、表面損失エネルギーを10回測定し、その平均値により評価した。尚、本発明における動的表面張力の低下は本評価でいう表面損失エネルギー値が小さいことと同義である。
【0161】
【発明の効果】
本発明に係わるフッ素系界面活性剤は、フッ素系界面活性剤の宿命的欠点とされてきた、消泡性、リコート性、現像等の後加工性を実用レベルにまで引き上げ、さらに高速、高剪断力を伴う過酷な塗工方法に対しても優れたレベリング性を発揮させるという効果がある。従って、本発明に係わるフッ素系界面活性剤は、塗料用、レジスト用等の各種コーティング組成物に適用することにより、目的とする性能を十分に発現させることができる。
Claims (5)
- フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と下記一般式(1)で表されるシリコーン鎖を有するエチレン性不飽和単量体(B)、ポリオキシアルキレン基が、オキシエチレン及びオキシプロピレンの繰り返し単位によって構成されるポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体(C)とを必須構成単位として重合せしめた共重合体からなるフッ素系界面活性剤を含有してなることを特徴とするコーティング用組成物。
- 前記一般式(1)中のR4、R5、R6、及び前記一般式(2)中のR7、R8、及びR9がメチル基であり、pが0である請求項1記載のコーティング用組成物。
- さらに共重合体の構成単位として、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(D)を含有する請求項1記載のコーティング用組成物。
- 共重合体を構成する単量体(A)、(B)、(C)、(D)の各単量体の重量割合が、10〜40/5〜30/30〜70/1〜10である請求項3記載のコーティング用組成物。
- 共重合体の数平均分子量が、1,000以上200,000以下である請求項1〜4のいずれか1項記載のコーティング用組成物。
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