JP4052617B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バリア性、機械強度、柔軟性、熱接着性、透明性、リサイクル性等に優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンやポリスチレンのような疎水性熱可塑性樹脂は、その優れた溶融成形性、二次加工性、機械特性、経済性から、食品包装分野においてはフィルム、ボトル、カップ等の容器等に、非食品分野においては、生活用品、家電部品、自動車部品等に巾広く使用されている。また、これらの樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと記す)との多層構造体は、酸素、フレーバー等に対するバリア性が必要とされる食品分野等において広く使用されている。
【0003】
このように、疎水性熱可塑性樹脂とEVOHを積層することで両者の特性を生かすことが可能であるが、同時に両者を配合して用いる手法も広く用いられている。ところがEVOHは親水性の高い樹脂であり、疎水性熱可塑性樹脂と配合する際には相容性に問題があり、良好な物性を有する樹脂組成物が得られないという課題を有している。これまで、極性官能基を保有するポリオレフィン系樹脂に代表される各種の相容化剤が検討されているが、その効果は必ずしも充分ではなく、両者を良好に相容させる高性能の相容化剤の開発が望まれている。
【0004】
ポリオレフィンやポリスチレンのような疎水性の熱可塑性樹脂とEVOHを積層する手法は有用であるが、成形物の形状が複雑な場合あるいは成形物が小型の場合には、両者を多層成形することが困難であるため、単層の、バリア性を有する熱可塑性材料の開発が望まれている。
【0005】
EVOHと疎水性熱可塑性樹脂の相容性を向上させるための相容化剤を使用した組成物として、特開平6−80150号公報(ヨーロッパ特許第584808号)に、ポリオレフィン、融点135℃以上のEVOH、および融点130℃以下のEVOHの3成分からなる樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、口頭部と筒状胴部からなる2ピースチューブ状容器の口頭部に成形されている。
【0006】
そのほかにも特許第2771024号公報および特開平5−124666号公報に、チューブ状容器の口頭部およびキャップ用として、ポリエチレン、EVOHおよびカルボン酸変性ポリエチレン接着性樹脂の組成物を使用する方法が記載されている。
【0007】
しかし、かかる組成物を用いて作成した口頭部は、バリア性、機械強度、さらに、口頭部と筒状胴部との接着力等の要求性能を必ずしも十分に満足するものではなかった。また、キャップ用途としても、成形品の衝撃強度は基材の熱可塑性樹脂に比べてかなり低く、特に、複雑な形状で用いる場合や耐衝撃性を必要とする用途には、耐衝撃性が不十分である。そのうえ、成形品の透明性もかなり不足しており、透明性を要する用途には使用され得なかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガスバリア性、機械強度、熱可塑性樹脂との接着性、リサイクル性および成形品の透明性に優れた組成物を得ようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エチレン含有量20〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)5〜60重量%、ポリアミド樹脂(B)1.5〜20重量%、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)5〜84重量%、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)5〜84重量%および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(E)5〜84重量%からなる樹脂組成物に関する。
【0010】
好ましい実施態様においては、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が連続相、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が分散相となる樹脂組成物である。
【0011】
また、好ましい実施態様においては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が連続相、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が分散相となる樹脂組成物である。
【0012】
さらに、本発明は、上記いずれかの樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体、チューブ状容器の口頭部、注ぎ口、容器用キャップ、プルリング付き注ぎ口、および、中空成形容器に関する。
【0013】
また、本発明は、上記樹脂組成物の製造方法に関し、ポリアミド樹脂(B)およびオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)を先に溶融混合してから、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)と溶融混合する、樹脂組成物の製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるEVOH(A)は、エチレンとビニルエステルからなる共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、あるいは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル、およびN−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンを共重合することも出来る。
【0015】
本発明に用いるEVOHのエチレン含量は20〜60モル%が好ましく、より好適には25〜55モル%、さらに好適には25〜50モル%である。エチレン含量が20モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化しやすくなる。また、60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られなくなる虞がある。
【0016】
また、本発明に用いるEVOHのビニルエステル成分のケン化度は90%以上が好ましく、より好適には95%以上、さらに好適には98%以上である。ケン化度が90%未満では、高湿度時のガスバリア性が低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物にゲルが発生しやすくなる。
【0017】
本発明に用いるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10min.、最適には0.5〜30g/10min.である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。これらのEVOH樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】
本発明で用いられるポリアミド樹脂(B)は、アミド結合を有する重合体であって、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)の如き単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸重合体(ナイロン−6,9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,12)、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとの重合体、あるいはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との重合体である芳香族系ナイロンなどが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0019】
EVOHとの相容性の点から、これらのポリアミド樹脂(B)のうち、ナイロン6成分を含むポリアミド樹脂(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,12、ナイロン−6/12、ナイロン−6/6,6等)が好ましい。EVOHとポリアミド樹脂は高温での溶融過程で反応してゲル化するため、ブレンド組成物の熱劣化を抑制する点から、ポリアミド樹脂(B)の融点は240℃以下が好ましく、230℃以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いるポリアミド樹脂(B)の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10min.、最適には0.5〜30g/10min.である。但し、融点が210℃付近あるいは210℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、210℃に外挿した値で表す。
【0021】
本発明に用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)とは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸とからなる共重合体の分子中にカルボキシル基を有するポリオレフィンおよびポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在しているものをいう。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)のベースとなるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の各種ポリオレフィンが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の中でも、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物をランダム共重合して得られる重合体の金属塩が好ましく、エチレンと不飽和カルボン酸またはその無水物がランダムに共重合していることがさらに望ましい。ランダム共重合体の金属塩がグラフト化合物よりも優れている理由は、グラフト化合物では、相容性を発揮するのに必要な高い酸含有量を得ることが難しいためである。さらに、不飽和カルボン酸、例えば無水マレイン酸のグラフト化合物の場合は、EVOH中の水酸基とグラフト共重合体中のカルボキシル基が反応して、ゲル・ブツの原因となるため、好ましくない場合がある。
【0023】
不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量は、好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0024】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)における金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が例示され、特に亜鉛を用いた場合がポリアミド樹脂に対する相容性の点で好ましい。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩における中和度は、100%以下、特に90%以下、さらに70%以下の範囲が望ましい。中和度の下限値については、通常5%以上、特に10%以上、さらには30%以上が望ましい。
【0025】
本発明で用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、好ましくは0.05〜50g/10min.、さらに好ましくは0.5〜30g/10min.である。これらのオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
本発明で用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)とは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸とからなる共重合体のことをいう。本発明においては、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)には含まれない。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)との差異は、金属塩か否かであり、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)のベースとなるポリオレフィンの種類、ランダム共重合体がグラフト重合体よりも好ましいこと及びその理由、不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量および種類、およびオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)のメルトフローレートに関しては、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩の場合と同じ説明が適用される。
【0027】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(E)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)とは異なる熱可塑性樹脂であり、溶解性パラメーターが11以下である事が重要である。即ち、熱可塑性樹脂(E)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)が近いことにより、結果として、5成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)間の相容性が向上する。熱可塑性樹脂(E)の溶解性パラメーターが11を超える場合、5成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)間の相容性が低下し、ブレンド樹脂組成物のスクラップ回収性、熱成形性、機械強度、透明性等が著しく低下する。
【0028】
溶解性パラメーターが11以下の熱可塑性樹脂(E)として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。その中でも、ポリオレフィン系樹脂が最も好ましく、高密度もしくは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などから選ばれたα−オレフィン同士の共重合体などが例示される。また、α−オレフィンに以下の成分:ジオレフィン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの不飽和カルボン酸エステルなど;を共重合したものも含まれる。また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。本発明においてはポリオレフィン類を用いることが、機械強度の観点から好ましく、ポリエチレンあるいはポリプロピレンを用いることがさらに好ましい。
【0029】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(E)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、好ましくは0.05〜100g/10min.、さらに好ましくは0.05〜50g/10min.、最適には0.5〜30g/10min.である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0030】
本発明の目的を達成するためには、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)5〜60重量%、ポリアミド樹脂(B)1.5〜20重量%とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)5〜84重量%、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)5〜84重量%および熱可塑性樹脂(E)5〜84重量%からなる樹脂組成物を用いる必要がある。樹脂組成物中のEVOH(A)の含有量は、5〜60重量%であり、好適には10〜50重量%、さらに好適には15〜40重量%である。樹脂組成物中のEVOH(A)の含有量が5重量%未満の場合には組成物のガスバリア性が不足し、EVOH(A)の含有量が60重量%を超える場合には組成物の強度や接着性の改善効果が不充分である。
【0031】
樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の含有量は1.5〜20重量%であり、好適には2〜10重量%である。樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の重量比が1重量%未満の場合には、EVOH(A)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)およびオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)の相容性が低下し、本発明の効果である組成物の強度や接着性の改善効果が不充分となる。また、樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の重量比が30重量%を超える場合には、EVOH(A)に対するポリアミド樹脂(B)の比率が上昇するため、両者の反応によるゲルが生じ易くなる。
【0032】
樹脂組成物中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の含有量 としては5〜84重量%、好適には6〜50重量%、さらに好適には7〜30重量%である。樹脂組成物中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の含有量が5重量%未満の場合には組成物の強度や接着性の改善効果が不充分であり、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の含有量が84重量%を超える場合には組成物のガスバリア性が不足する。
【0033】
ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)との合計量に対するポリアミド樹脂(B)の含有量は、両樹脂の合計量全体に対して2〜98重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(B)含有量が2重量%未満の場合、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)の相容性が低下し、 ポリアミド樹脂(B)含有量が98重量%を超える場合、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)との相容性が低下する。両樹脂の合計量全体に対する、ポリアミド樹脂(B)含有量がかかる範囲にあることで、樹脂組成物の溶融安定性が改善され、長時間におよぶ溶融成形においても良好な外観の成形物を得ることができ、生産性が向上する。この理由は明らかではないが、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)の反応が溶融安定性に悪影響を与えているものと考えられる。各成分間の相容性の低下は、樹脂組成物自身の機械強度の低下あるいはバリア性、リサイクル性の低下につながる。
【0034】
また、組成物中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)の含有量は5〜84重量%、好ましくは10〜75重量%、更に好ましくは15〜70重量%である。樹脂組成物中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)の含有量が5重量%未満の場合には、組成物の強度や接着性、透明性の改善効果が不充分であり、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)の含有量が84重量%を超える場合には、組成物のガスバリア性が不足する。
【0035】
また、組成物中の熱可塑性樹脂(E)の含有量は5〜84重量%、好ましくは10〜75重量%、更に好ましくは15〜70重量%である。樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(E)の含有量が5重量%未満の場合には組成物の強度や接着性の改善効果が不充分であり、熱可塑性樹脂(E)の含有量が84重量%を超える場合には組成物のガスバリア性が不足する。
【0036】
本発明においては、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が連続相、EVOH(A)が分散相となる樹脂組成物が、全体としてポリオレフィンの特長を保有していながら、EVOHを配合することによってその特性を付与することができる点で有用である。すなわち、熱接着性および機械強度を保持しながらバリア性を改善できる。このような分散形態は、 EVOH(A)の溶融粘度をオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)の溶融粘度より大きくすること、あるいは樹脂組成物中のEVOH(A)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)の合計の重量に対する、EVOH(A)の重量の値を小さくすることにより得ることができる。
【0037】
本発明においては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が連続相、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が分散相となる樹脂組成物もまた、有用である。この樹脂組成物は、全体としてEVOHの特長を保有しながら、熱可塑性樹脂(E)を配合することによってその特性を付与することができる点で有用である。すなわちバリア性を保持しながら、熱接着性および機械強度を改善できる。このような分散形態は、 EVOH(A)の溶融粘度をオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)の溶融粘度より小さくすること、あるいは樹脂組成物中のEVOH(A)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)の合計の重量に対する、EVOH(A)の重量の値を大きくすることにより得ることができる。
【0038】
EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)が反応することによるEVOHの熱劣化を防ぐ観点から、本発明に用いる樹脂組成物には、高級脂肪族カルボン酸の金属塩およびハイドロタルサイト化合物の少なくとも1種を含有させることが好ましい。
【0039】
ここで、ハイドロタルサイト化合物としては特にMxAly(OH)2x+3y−2z(A)z・aH2O(MはMg、CaまたはZn、AはCO3またはHPO4、x、y、z、aは正数)で示される複塩であるハイドロタルサイト化合物を挙げることができる。特に、好適なものとして以下のハイドロタルサイト化合物が例示される。
【0040】
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O
Mg8Al2(OH)20CO3・5H2O
Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O
Mg10Al2(OH)22(CO3)2・4H2O
Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O
Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O
Zn6Al6(OH)16CO3・4H2O
Mg4 . 5Al2(OH)13CO3・3.5H2O
【0041】
また、ハイドロタルサイト化合物として、特開平1−308439号(USP4954557)に記載されているハイドロタルサイト系固溶体である、[Mg0.75Zn0.25]0.67Al0.33(OH)2(CO3)0.167・0.45H2Oのようなものも用いることができる。
【0042】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩であり、炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などがあげられ、また金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウムなどがあげられる。このうちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好適である。
【0043】
これらの高級脂肪族カルボン酸の金属塩、またはハイドロタルサイト化合物の含有量は、樹脂組成物の合計重量に対して0.01〜3重量部が好ましく、より好適には0.05〜2.5重量部である。
【0044】
また、本発明に用いられる樹脂組成物には、上記の樹脂成分の他に適切な添加剤(例えば、熱安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂など)を本発明の目的が阻害されない範囲で使用することは自由である。
【0045】
本発明のEVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(E)からなる樹脂組成物は、適切な溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練することにより容易に得ることができる。ブレンドする方法は、特に限定されるものではないが、EVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)を同時にあるいは適当な順序で単軸または二軸スクリュー押出機などでペレット化し乾燥する方法が挙げられる。
【0046】
なかでも、後述する実施例で示されているように、まず最初に、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)とを溶融混合し、造粒・乾燥してから、EVOH(A)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)、および熱可塑性樹脂(E)にドライブレンドし、単軸または二軸スクリュー押出機などで造粒し、乾燥する方法が好ましい。この理由として、各成分を同時に溶融混練する場合は、相容性の良い成分同士(例えば、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B))の混合が優先して進む場合があるために、5成分からなる樹脂組成物のモルフォロジーを安定に制御することが難しいことがある。しかしながら、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)(場合によっては、さらにオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D))とのブレンド物を予め作製しておくことにより、溶融混合時の条件にあまり影響を受けずに、安定したEVOH(A)と熱可塑性樹脂(E)の相容化効果が得られる。
【0047】
なお、溶融配合操作においては、ブレンドが不均一になったり、ゲル、ブツが発生、混入したりする可能性があるので、ブレンドペレット化はなるべく混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素ガスでシールし、低温で押出しすることが望ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、単層構成の成形物とすることもできるし、他の各種基材と2種以上の多層構成の成形物として使用することもできる。本発明の樹脂組成物の層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層としては、高密度、中密度、あるいは低密度のポリエチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、あるいはブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン類を共重合したポリエチレン、アイオノマー樹脂、ポリプロピレンホモポリマー、あるいは、エチレン、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン、ゴム系ポリマーをブレンドした変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、あるいはこれらの樹脂に無水マレイン酸を付加、あるいはグラフトした熱可塑性樹脂が好適なものとして挙げられる。さらにその他の熱可塑性樹脂層として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0049】
また、本発明の樹脂組成物の層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層との間に接着性樹脂層を有していても良い。接着性樹脂は特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)をオレフィン系重合体または共重合体(例えば、LLDPE、VLDPEなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフトしたものが代表的なものとして挙げられる。
【0050】
多層構造体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、押出ラミネート法、ドライラミネート法、押出ブロー成形法、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出パイプ成形法、共押出ブロー成形法、共射出成形法、溶液コート法などが挙げられる。次いで、この積層体を真空圧空深絞り成形、ブロー成形などにより、EVOHの融点以下の範囲で再加熱後、二次加工もできる。
【0051】
多層構造体の層構成に関しては特に限定されるものではない。成形性およびコスト等を考慮した場合、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、樹脂組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層が代表的なものとして挙げられる。両外層に熱可塑性樹脂層を設ける場合は、異なる樹脂を用いてもよいし、同じものを用いてもよい。また、押出成形、ブロー成形、熱成形等を行う際に発生するスクラップを、熱可塑性樹脂層にブレンドしたり、別途回収層として設けてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物を使用することにより、バリア性、機械強度、柔軟性、溶融安定性、熱接着性、透明性、リサイクル性等に優れた成形物を得ることができるので、様々な用途に有効である。
【0053】
例えば、2ピースチューブ状容器の口頭部、紙容器あるいはバッグインボックス用の注ぎ口、容器用キャップ、プルリング付き注ぎ口、中空成形容器等に利用可能である。
【0054】
ここで、2ピースチューブ状容器の口頭部とは、アルミニウムやEVOHなどのバリアフィルムを含むラミネートフィルムをシールして成形した筒状体、あるいはバリア材を含む熱可塑性樹脂を環状ダイより共押出して成形した多層の筒状体に接合してチューブ容器を作るための口部のことである。
【0055】
かかる口頭部の成形方法としては、予め射出成形などで作成した口頭部を熱接着や超音波接着などで接着する方法のほか、胴部を装着した金型への射出成形あるいは圧縮成形、などで一体成形する方法等が挙げられる。胴部の構成は特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂あるいはEVOH樹脂を最内層に用いることが望ましく、なかでもポリオレフィン系樹脂を用いることが、胴部と口頭部の接着力の観点から望ましい。
【0056】
このようにして得られた包装容器、特にチューブ状容器はガスバリア性に優れているほか、肩部の機械強度、胴部と口頭部間の接着力に優れており、化粧品、薬品、歯磨粉、食品などの包装容器材料として好適である。
【0057】
本発明における注ぎ口とは、バッグインボックス、注ぎ口付きパウチなどの容器に用いられる物であり、本発明の樹脂組成物を成形してなる注ぎ口と、容器本体とを、熱接着あるいは超音波接着などの方法で接着させることにより、作成される。本発明の樹脂組成物を注ぎ口に用いることで、強度、透明性および容器本体との接着性に優れた注ぎ口を有する、ガスバリア性に優れた包装容器を得ることが出来る。かかる注ぎ口は通常、容器本体とは別工程にて作成され、このスクリューは、やはり別工程にて作成されるキャップを装着するために備えられる。
【0058】
図1に、1例として、バッグインボックスの模式図を示す。図1において、注ぎ口1は肩部2で容器本体3と接着されており、この容器3には、流動状の食品4が注入されている。注ぎ口1を有する容器はダンボール製の外箱5に収納されて、バッグインボックス6を形成している。なお、注ぎ口1には、スクリューねじ7が設けられており、キャップが装着できるようにされている。
【0059】
注ぎ口の作成方法としては、射出成形の他、圧縮成形法、あらかじめ作成したシートを熱成形する方法などが挙げられるが、あらかじめ溶融混練した組成物を射出成形する方法が、特に形状が複雑な場合にもっとも好適である。
【0060】
注ぎ口を装着する容器本体の形態は特に限定されないが、アルミ箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリア材からなるバリア層と、ポリオレフィンなどからなる熱可塑性樹脂層とを、接着層を介して積層した積層包装材を用いて作成した包装容器が用いられ、バッグインボックス、紙容器、ストロー状の注ぎ口をもつ注ぎ口付きパウチなどが好適である。
【0061】
注ぎ口と容器本体との接着方法は特に限定されないが、加熱による部分溶融で接着する方法、超音波を用いて接着する方法が主に用いられる。注ぎ口と積層シートを袋状に成形した容器本体との接着は、成形前でも成形後でもかまわないが、容器本体に注ぎ口を装着して注ぎ口として機能させるためには、容器本体にあらかじめ穴をあけるか、袋状にした容器本体の端部で注ぎ口を挟み込む必要がある。
【0062】
このようにして得られた包装容器はガスバリア性に優れているほか、注ぎ口の強度、注ぎ口と容器本体間の間の接着力、機械強度、透明性に優れており、食品、とくに液状食品(たとえばワイン、酒などのアルコール類、しょう油等)の包装容器材料として好適である。
【0063】
容器用キャップとは、ガラス瓶やプラスチック製ボトルなどに装着するキャップであり、消費者が開栓するまで密封性を保ち、なおかつ開栓後の簡易密封性を維持し開栓後の保存時にもバリア性を発現することが重要である。かかるキャップの作成方法としては、射出成形の他、圧縮成形法、あらかじめ作成したシートを熱成形する方法などが挙げられるが、スクリュー溝などの形状を考慮すると、あらかじめ溶融混練した組成物を射出成型する方法がもっとも好適である。
【0064】
図2に、一例として、容器用キャップの断面図を示す。図2の容器キャップ8は筒状であり、底面はフラットで、スクリュー溝9を有している。このような容器キャップは、そのままでも密着性は得られるが、密封用ライナー(キャップライナー)と併用してもよい。密封ライナーの材質は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−ポリ-1-ブテン共重合体等が用いられる。
【0065】
キャップを装着する容器本体の形態は特に限定されない。ガラス瓶、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどの容器、アルミ箔やエチレン‐ビニルアルコール共重合体などのガスバリア材とポリオレフィンあるいはPETとを接着層を介して積層した積層包装材を用いて作成した容器が用いられる。
【0066】
このようにして得られたキャップを容器本体に用いるに当たり、容器のガスバリア性を保持するために、接合部分は互いに密着させる必要がある。そのままでも密着性は得られるが、更に密着性を高めるにはキャップライナーなどを装着することが効果的である。キャップライナーの材質は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−ポリ-1-ブテン共重合体等が用いられる。
【0067】
このようにして得られた包装容器はガスバリア性に優れているほか、強度、リサイクル性に優れており、食品、とくに液状食品(たとえばワイン、酒などのアルコール類、しょう油等)の容器用キャップとして好適である。
【0068】
プルリング付き注ぎ口とは、消費者が開栓するまで密封性を保ち、なおかつ易開栓性を与えるためにの注ぎ口である。好ましくは、開栓後の保存時にもバリア性を発現することが出来るように、キャップと注ぎ口とがヒンジでつながった、いわゆる一体式のプルリング付き注ぎ口が用いられる。このような、一体式のプルリング付き注ぎ口は、例えば、図3に示される。図3において、一体式のプルリング付き注ぎ口11は、開栓時に指を挿入するためのリング12、リング12と栓部18とをつなぐ部分13、易開栓性を付与するための薄肉部14を備え、開栓後の簡易密封性を維持するためのキャップ15と、キャップ15と注ぎ口16とをつなぐヒンジ17とを有している。
【0069】
プルリング付き注ぎ口の作成方法としては、射出成形の他、圧縮成形法、あらかじめ作成したシートを熱成形する方法などが挙げられる。プルリング付き注ぎ口の形状は、一般的に複雑であることから、溶融混練した組成物を射出成型する方法がもっとも好適である。
【0070】
得られたプルリング付き注ぎ口は、ついで、容器本体に装着される。プルリング付き注ぎ口を装着する容器本体の形態は特に限定されない。ガラス瓶、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどの容器、アルミ箔やエチレン‐ビニルアルコール共重合体などのガスバリア材とポリオレフィンあるいはPETとを接着層を介して積層した積層包装材を用いて作成した容器が用いられる。
【0071】
プルリング付き注ぎ口を容器本体に装着する方法は特に限定されない。例えばスクリューを用いて締め付ける方法、双方に凹凸を設けて嵌め込む方法、熱接着法や超音波接着法にて接着する方法などが挙げられる。しかし、いずれの場合にも容器のガスバリア性を保持するために、接合部分は互いに密着させる必要がある。
【0072】
このようにして得られた包装容器はガスバリア性に優れているほか、口部の強度、プルリングの強度、プルリングの易開封性、リサイクル性に優れるため、食品、とくに液状食品(たとえばワイン、酒などのアルコール類、しょう油等)の容器材料として好適である。
【0073】
中空成形容器とは、ワンピースチューブ、ボトル、タンクなど、内容物を充填・密封するために成形された容器である。本発明の樹脂組成物を単層で用いることで、バリア性、透明性、機械強度、耐衝撃性に優れた中空成形容器を得ることができる。特に、小型容器や複雑な形状の容器に関しては、単層でバリア性容器を作成できることは非常に有用である。また、本発明の樹脂組成物はポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂と積層して多層で用いることもできる。その時本樹脂組成物は他のバリア性樹脂やアルミ箔などのバリア材と異なり熱可塑性樹脂との接着性に優れる場合が多い。
【0074】
かかる中空成形容器を得る方法としては特に限定されるものではないが、例えば、一般のポリオレフィンの分野において実施されている成形法、押出フィルム成形法、押出パイプ成形法、押出ブロー成形法、射出成形法などが挙げられる。
【0075】
かかる中空成形容器は、チューブ等の食品包装容器に特に有用であるが、その他の非食品容器、例えば燃料用タンクとしても使用することができる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。本実施例(以降の実施例、比較例でも同様)で使用した樹脂(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を、それぞれ下記の表1、表2、表3、表4および表5に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
(実施例1:チューブ状容器の口頭部)
実施例1−1
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(A−1)30重量部、ポリアミド樹脂(B−1)3重量部、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C−1:以下、アイオノマーという)7重量部、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D−1)10重量部および熱可塑性樹脂(E−1)50重量部からなるブレンド物を以下の方法で得た。すなわち、まず、ポリアミド樹脂(B−1)とアイオノマー(C−1)を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出しペレット化を行った。得られたブレンドペレットに、(A−1)、(D−1)および(E−1)を再度同様の方法でブレンドし、目的の樹脂組成物ペレットを得た。
【0083】
次に、特開昭56−25411号公報(特公昭64−7850号)に記載されている射出成形法によるチューブ状容器成形機を用いて、射出成形法によりチューブ状容器を作製した。このとき、得られた樹脂組成物ペレットを射出成形機に供給しつつ、一方で同成形機の金型には、あらかじめ作製した胴部となる筒状チューブを供給した。なお、本実施例で使用した筒状胴部の構成は、外側から直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、三井化学、ウルトゼックス3520L、厚み150μm)/接着性樹脂(三井化学、アドマーNF500、厚み20μm)/EVOH(クラレ、EP−E105B、厚み20μm)/接着性樹脂(三井化学、アドマーNF500、厚み20μm)/LLDPE(三井石油化学、ウルトゼックス3520L、厚み150μm)の構成で、環状ダイを用いて共押出法にて作成したものである。
【0084】
このようにして成形したチューブ状容器の評価は、以下のように行った。まず、容器の作製に用いた樹脂組成物の相構成について検討し、ついで成形したチューブ容器の評価を行った。本発明の樹脂組成物の相構成について、成形したチューブ容器の口頭部の一部を切断し、得られた小片の切断面をヨウ素で染色し、切断面を光学電子顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか分散相であるかを確認した。本実施例においては、EVOH(A)が分散相であった。
【0085】
成形したチューブ状容器の評価は、以下のように行った。
(1)接着強度
チューブ胴部を15mm幅で縦方向に2個所、それぞれが対向するように、口頭部との接合部分まで切り取り、20℃、65%RHにて、一週間湿度状態を調節後、前記胴部切開部分の各端部を引張試験機に取付け、20℃、65%RHにて引張り速度50mm/分の条件で剥離強度を求め、以下の基準で判定した。一般に肩部と胴部の接合強度は、3kg・15mm以上が合格基準である。
◎:5kg・15mm以上の接合強度
○:3kg・15mm以上の接合強度
×:上記基準に不合格
【0086】
(2)バリア性(酸素透過係数)
T台を備えたスクリュー径20mmφの押出機に樹脂組成物を仕込み、押出温度210℃にて厚み100μmの単層フィルムを作成した。得られたフィルムを70℃、24時間以上真空乾燥して絶乾状態とし、モダン・コントロール社(米国)製Ox−Tran10/50型酸素透過率測定装置を用いて、温度20℃、0%RHの条件で、JIS K7126に準じて、酸素透過係数(cc・20μ/m2・day・atm)を求めた。実施例1−1における透過係数は、200cc・20μ/m2・day・atmであった。
【0087】
(3)機械強度
20℃、65%RHの室内で、チューブ状容器の開閉を100回繰り返し、口頭部ネジ部分の欠け、クラック発生状況を目視し、ルーペで観察し、以下の基準で判定した。但し、キャップ締めはトルクメーターを使用し、5kg・cmのトルクで実施した。実施例1−1においてはネジ部分の損傷は見られなかった。
◎:極めて良好
○:良好
×:不良
【0088】
(4)透明性
チューブ状容器の口頭部を蛍光燈に透かし、目視にて透明性をチェックし、以下の基準で判定した。実施例1−1においては、良好な透明性を持つ成形物が得られた。
◎:極めて良好
○:良好
×:不良
【0089】
実施例1−2〜4、比較例1−1〜6
表6に記載の組成比にて、実施例1−1と同様の方法でチューブ状容器を作成し、評価した。なお、表中の製法Aは、実施例1−1と同様に、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)を溶融混練した後に、EVOH(A)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)を溶融混練することで組成物を得る方法である。製法Bは、5種の樹脂成分の混練を1回の混練操作のみで行ってペレット化した以外は、実施例1−1と同様にして組成物を得る方法である。実施例1−1も含めて、結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例1−1〜4は、いずれの評価項目も良好であったが、EVOHが本発明の範囲外の組成である比較例1−1、低密度ポリエチレンのみの場合(比較例1−2)は、酸素ガスのバリアー性が悪かった。相容化剤がない場合(比較例1−4)は機械強度、透明性に欠けていた。
【0092】
(実施例2:注ぎ口)
実施例2−1
バッグインボックス(BIB)の容器本体として、外側から直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学、 ウルトゼックス2022L、50μm)/接着性樹脂(三井化学、アドマーNF500、10μm)/EVOH樹脂(クラレ、エバールEP−F101B、20μm)/接着性樹脂(三井化学、アドマーNF500、10μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学、 ウルトゼックス2022L、50μm)、の三種五層構成品を共押出法により作成し、これを内袋として袋状に成形した。なお、注ぎ口を装着する部分にはあらかじめ穴を打ち抜いた。次に、実施例1−1と同じ樹脂を同じ割合で用いて、同じ条件で溶融混練しペレットを得た。次に、図1に示す注ぎ口を作成するための金型を備えた射出成形機に上記ペレットを供給し、射出成形法により注ぎ口を作成した。このとき射出成形機のシリンダー温度は230℃、ノズル温度は220℃とした。
【0093】
本発明の注ぎ口の樹脂組成物の相構成について、成形した注ぎ口の一部を切断し、得られた小片の切断面をヨウ素で染色し、切断面を光学電子顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか分散相であるかを確認した。本実施例においては、EVOH(A)が分散相であった。
【0094】
注ぎ口と容器本体との接着は、専用の熱シール装置を用いて、容器内面と、注ぎ口外面を熱接着することにより行った。シール温度は160℃、シール時間は5秒に設定した。このようにして成形したバッグインボックスの評価は以下のように行った。
【0095】
(5)接着力
積層シートを15mm幅で縦方向に二ヶ所、それぞれが注ぎ口をはさんで対向するように、注ぎ口との接合部分まで切り取り、20℃、65%RHにて一週間湿度状態を調節後、前記胴部切開部分の各端部を引張試験機に取り付け、20℃、65%RHで引張り速度50mm/ min.の条件でせん断剥離強度を求め、以下の基準で判定した。実施例2−1での接着力は、容器本体のシートが先に破断するという、十分な接着力であった。
◎:剥離不能(合格)
○:剥離強度5kg/15mm以上(合格)
×:容易に剥離(不合格)
【0096】
(6)衝撃強度(注ぎ口の強度)
成形した注ぎ口を−50℃にて12時間保持して十分に冷却した後、10mの高さから落下させ、以下の基準で損傷をチェックした。実施例2−1においては落下試験による損傷は見られなかった。
◎:変化なし(合格)
×:ひび割れ、もしくは損傷(不合格)
【0097】
(7)バリア性(酸素透過係数OTR)
実施例1−1と同様の方法で評価を行った。実施例2−1における透過係数は、200 cc・20μ/m2・day・atmであった。
【0098】
実施例2−2〜4、比較例2−1〜6
表7に記載の組成比にて、実施例2−1と同様の方法でバッグインボックスを作成し、評価した。なお、表7中の製法AおよびBは、上記の通りである。実施例2−1を含めて、結果を表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
実施例2−1〜4は、いずれの評価項目も良好であったが、EVOHが本発明の範囲外の組成である比較例2−1は、酸素ガスのバリアー性が悪かった。相容化剤(B)、(C)、(D)がない場合は接着力に欠けるか、衝撃強度に欠けていた。
【0101】
(実施例3:容器用キャップ)
実施例3−1
熱可塑性樹脂(E)として、ポリプロピレン(E−2)を用いた以外は、実施例1−1と同じ樹脂を同じ割合で用いて、同じ条件で溶融混練しペレットを得た。
次に、図2に示す容器用キャップの金型を備えた射出成形機に上記ペレットを供給し、射出成形法により容器用キャップを作成した。このとき射出成形機のシリンダー温度は230℃、ノズル温度は220℃とした。
【0102】
まず、容器用キャップの樹脂組成物の相構成について検討した。成形した容器用キャップの一部を切断し、得られた小片の切断面をヨウ素で染色し、切断面を光学電子顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか分散相であるかを確認した。本実施例においては、EVOH(A)が分散相であった。
【0103】
ついで成形した容器用キャップの評価を以下の方法で行った。
(8)バリア性(酸素透過係数)
実施例1−1と同様の方法で評価を行った。実施例3−1における透過係数は、200 cc・20μ/m2・day・atmであった。
【0104】
(9)衝撃強度
成形した容器用キャップを、実施例2−1と同様の方法で落下試験を行い、以下の基準で評価した。実施例3−1においては落下試験による損傷は見られなかった。
◎:変化なし
×:ひび割れもしくは損傷(不合格)
【0105】
(10)外観
成形した容器用キャップの表面の変色や焦げの発生具合を目視にて観察し、以下の基準で判定した。実施例3−1では外観の変質は見られなかった。
◎:変化なし
○:多少変色も使用可
×:変色あるいはこげ発生
【0106】
(11)リサイクル性
容器用キャップの射出成形時に生じたランナー部分などのバリを粉砕後、再度射出成形機に仕込み、同条件で容器用キャップを再度成形した。成形品について、機械強度および外観を上記(9)および(10)の基準で、評価した。実施例3−1においては、リサイクルによる樹脂の劣化は認められなかった。
【0107】
実施例3−2〜4、比較例3−1〜6
表8に記載の組成比にて、実施例3−1と同様の方法で容器用キャップを作成し、評価した。なお、表8中の製法AおよびBは、上記の通りである。実施例3−1を含めて、結果を表8に示す。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例3−1〜4は、いずれの評価項目も良好であったが、EVOHが本発明の範囲外の組成である比較例3−1は、酸素ガスのバリアー性が悪かった。相容化剤(B)、(C)、(D)がない場合は外観が悪いか、衝撃強度に欠けていた。
【0110】
(実施例4:プルリング付き注ぎ口)
実施例4−1
熱可塑性樹脂(E)として、直鎖状低密度ポリエチレン(E−3)を用いた以外は、実施例1−1と同じ樹脂を同じ割合で用いて、同じ条件で溶融混練しペレットを得た。次に、図3に示すような注ぎ口を作成するための金型を備えた射出成形機に上記ペレットを供給し、射出成形法によりヒンジ付きキャップのついたプルリング付き注ぎ口を作成した。このとき射出成形機のシリンダー温度は230℃、ノズル温度は220℃とした。
【0111】
まず、プルリング付き注ぎ口の樹脂組成物の相構成について検討した。成形したプルリング付き注ぎ口の一部を切断し、得られた小片の切断面をヨウ素で染色し、切断面を光学電子顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか分散相であるかを確認した。本実施例においては、EVOH(A)が分散相であった。
【0112】
ついで成形したプルリング付き注ぎ口の評価を以下の方法で行った。
(12)バリア性(酸素透過係数)
実施例1−1と同様の方法で評価を行った。実施例4−1における透過係数は、200 cc・20μ/m2・day・atmであった。
【0113】
(13)機械強度
成形したプルリング付き注ぎ口を、実施例2−1と同様の方法で落下試験を行い、上記(9)の基準で評価した。実施例4−1においては落下試験による損傷は見られなかった。
【0114】
(14)易開封性
100個のプルリング付き注ぎ口について、プルリングを指で引っ張り開封した。開封時にかかった力による薄膜部分の切れ方について、以下の基準で判定した。
◎:薄膜部が切れ、容易に開封できる(合格)。
○:比較的容易に開封できる(合格)。
×:開封困難、薄膜部からは切れない(不合格)。
【0115】
(15)プルリング強度
100個のプルリング付き注ぎ口について、プルリングを指で引っ張り開封した。開封時にリングがきれずに、容易に開封できるかどうかを以下の基準で判定した。
◎:指で引っ張っても切れない(合格)。
○:かなり強く引っ張ると切れる(合格)。
×:簡単に切れる(不合格)。
【0116】
(16)ヒンジ強度
プルリング付き注ぎ口を5℃、65%RHの条件にて1日以上放置し、キャップの開閉を500回繰り返し、ヒンジ部の状態をルーペにて観察し、以下の基準で判定した。
◎:変化なし(合格)。
○:開閉のみでは切れないが、強く捻ると切れる(合格)。
×:開閉により切断(不合格)。
【0117】
(17)リサイクル性
プルリング付き注ぎ口の射出成形時に生じたランナー部分などのバリを粉砕後、再度射出成形機に仕込み、同条件でプルリング付き注ぎ口を再度成形した。成形品について、バリア性の評価を除き、上記の項目を評価した。
【0118】
実施例4−2〜4、比較例4−1〜6
表9に記載の組成比にて、実施例4−1と同様の方法でプルリング付き注ぎ口を作成し、評価した。なお、表9中の製法AおよびBは、上記の通りである。実施例4−1を含めて、結果を表9示す。
【0119】
【表9】
【0120】
実施例4−1〜4は、いずれの評価項目も良好であったが、EVOHが本発明の範囲外の組成である比較例4−1は、酸素ガスのバリアー性が悪かった。相容化剤(B)、(C)、(D)がない場合は機械強度、易開封性、プルリング強度、ヒンジ強度のどれかが悪かった。
【0121】
(実施例5:中空成形容器)
実施例5−1
熱可塑性樹脂(E)として、高密度ポリエチレン(E−4)を用いた以外は、実施例1−1と同じ樹脂を同じ割合で用いて、同じ条件で溶融混練しペレットを得た。次に得られたペレットを単層のダイレクトブロー成形機にて、500ccの単層ボトル(厚み:2500μ)を作製した。
【0122】
まず、中空成形容器の樹脂組成物の相構成について検討した。成形した中空成形容器の一部を切断し、得られた小片の切断面をヨウ素で染色し、切断面を光学電子顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか分散相であるかを確認した。本実施例においては、EVOH(A)が分散相であった。
【0123】
ついで、得られた中空成形容器(単層ボトル)を用いて、以下の方法で酸素バリア性、ガソリンバリア性および落下試験にて耐衝撃性を評価した。
【0124】
(18)酸素バリア性評価
得られた500cc単層ボトル(厚み:2500μ)をモダン・コントロール社(米国)製Ox−Tran10/50型酸素透過率測定装置を用いて温度20℃、65%RHの条件で、酸素透過係数(cc/pkg・day・atm)を求めた。実施例5−1における透過係数は、0.12cc/pkg・day・atmであった。
【0125】
(19)ガソリンバリア性評価
得られた500cc単層ボトル(厚み:2500μ)に、モデルガソリン(トルエン:イソオクタン:メタノール=42.5/42.5/15体積%)を充填し、ガソリンの漏れのないように金属製キャップをした後、防爆型恒温恒湿槽(20℃、65%RH)にて3週間後の重量減少量(n=5)を測定した。
【0126】
(20)衝撃強度
得られた500cc単層ボトル(厚み:2500μ)に水を充填した後、−5℃の恒温ボックス内にて1日放置した後、コンクリートに落下させ、破壊する高さ(n=20)を求めた。
【0127】
実施例5−2〜4、比較例5−1〜6
表10に記載の組成比にて、実施例5−1と同様の方法で500cc単層ボトル(厚み:2500μ)を作成し、評価した。なお、表10中の製法AおよびBは、上記の通りである。実施例5−1を含めて、結果を表10示す。
【0128】
【表10】
【0129】
実施例5−1〜4は、いずれの評価項目も良好であったが、EVOHが本発明の範囲外の組成である比較例5−1は、酸素ガスのバリアー性が悪かった。相容化剤(B)、(C)、(D)がない場合は衝撃強度が悪かった。
【0130】
【発明の効果】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および11以下の溶解性パラメーターを有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(E)を特定の比率で有する樹脂組成物は、バリア性、機械強度、柔軟性、熱接着性、透明性等に優れる。この樹脂組成物を用いて成形される多層構造体、チューブ状容器の口頭部、注ぎ口、容器用キャップ、プルリング付き注ぎ口、中空成形容器は、バリア性、機械強度、柔軟性、熱接着性、透明性等に優れているため、各種包装容器に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バッグインボックスの模式図である。
【図2】容器用キャップの断面図である。
【図3】ヒンジ付きキャップのついたプルリング付き注ぎ口の一例である。
【符号の説明】
1 注ぎ口
2 肩部
3 容器本体
4 流動状の食品
5 ダンボール製の外箱
6 バッグインボックス
7 スクリューねじ
8 容器キャップ
9 スクリュー溝
11 プルリング付き注ぎ口
12 リング
13 リングと栓部のつなぎ
14 易開栓性を付与するための薄肉部
15 キャップ
16 注ぎ口
17 ヒンジ
18 栓部
Claims (10)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)、および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(E)からなる樹脂組成物であって、
該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度が90%以上であり、かつメルトフローレート(190℃、2160g荷重下)が0.1〜50g/10min.であり、
該ポリアミド樹脂(B)が、ナイロン6の成分を含むポリアミド樹脂であり、
該オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)において、不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が2〜15モル%であり、そして、該金属塩(C)のメルトフローレート(190℃、2160g荷重下)が0.05〜50g/10min.であり、
該オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)において、不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が2〜15モル%であり、そして、該共重合体(D)のメルトフローレート(190℃、2160g荷重下)が0.05〜50g/10min.であり、
該熱可塑性樹脂(E)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂から選択される少なくとも1種であり、そして、該熱可塑性樹脂(E)のメルトフローレート(190℃、2160g荷重下)が0.05〜100g/10min.であり、
該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)、および熱可塑性樹脂(E)が、各々5〜60重量%、1.5〜20重量%、5〜84重量%、5〜84重量%および5〜84重量%の割合で含有され、そして
該ポリアミド樹脂(B)およびオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)の合計重量中に、該ポリアミド樹脂(B)が5〜40重量%の割合で含有される、
樹脂組成物。 - オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が連続相、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が分散相となる請求項1に記載の樹脂組成物。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が連続相、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および/または熱可塑性樹脂(E)が分散相となる請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなるチューブ状容器の口頭部。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなる注ぎ口。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなる容器用キャップ。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなるプルリング付き注ぎ口。
- 請求項1ないし3いずれかの項に記載の樹脂組成物からなる中空成形容器。
- 請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂(B)およびオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩(C)を先に溶融混合してから、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(D)および熱可塑性樹脂(E)と溶融混合する、方法。
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