JP5709625B2 - 樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 - Google Patents

樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 Download PDF

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Description

本発明は、耐衝撃性に優れた樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体に関するものであり、特には、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物を含有する樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体に関するものである。
従来、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物共重合体(以下、EVOHと称することがある)は、透明性、ガスバリア性、保香性などに優れており、一般的に包装材料に用いられる。さらに、EVOHは帯電防止性、耐油性、耐溶剤性にも優れるため、燃料や農薬等、揮発性物質を含有する溶液用のボトル、タンク、ドラム等の容器や、それらを輸送するホース等の材料としても有用である。
しかしながら、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物はその水酸基の豊富さによって高度なガスバリア性を発揮するが、同時に結晶性が高いという性質も有するので耐衝撃性が低い傾向があり、クラック等が生じ易いという性質を有する。
そこで、ガスバリア性、成形収縮率および肉厚ムラが小さく、外観が良好であり、熱成形性にも優れる樹脂組成物として、特定の多層構造重合体粒子をEVOHに配合した樹脂組成物をフィルムに供することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−263666号公報
しかしながら燃料や農薬等、揮発性物質を含有する溶液用のボトル、タンク、ドラム等の容器や、それらを輸送するホース等の材料等の分野においては、上記の技術では、柔軟性が付与されるものの、EVOHと多層構造重合体粒子との曲げ弾性率や引張伸び性の違いにより、成形品を小さい曲率で曲げた時になどに層間剥離が発生する恐れがあり、樹脂の引張強さ、引張伸び性には改善の余地があった。
一方、EVOHに他成分を配合して他の機能を付与する場合、一般的にEVOHにガスバリア性の無い他の成分を配合すると、樹脂組成物全体のガスバリア性が低下する傾向がある。
しかしながら、従来のEVOHには無い優れた耐衝撃性能を有し、かつ従来のEVOHと同様にガスバリア性に優れる樹脂が求められていた。
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討の結果、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)とゴム質グラフト重合体(B)に、アイオノマー(C)およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)を選択して用いることにより、優れたガスバリア性を保ちつつ、曲げ弾性率、引張強さ、引張伸び性の全てに優れる耐衝撃性を有し、硬さと粘り強さに優れた樹脂組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)にゴム質グラフト重合体(B)アイオノマー(C)、およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)を含有してなる樹脂組成物に存する。
エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)にゴム質グラフト重合体(B)に対して、アイオノマー(C)を選択して用いることにより、アイオノマー(C)のようなガスバリア性の無い樹脂を配合するにもかかわらず、EVOHの優れたガスバリア性を保ちつつ、曲げ弾性率、引張強さ、引張伸び性の全てに優れる耐衝撃性を有するという予想外の顕著な効果が得られた。
本発明においては、EVOHへの分散性に優れるゴム質グラフト重合体(B)を用いることで、かかる成分が樹脂組成物のマトリックスたるEVOH(A)中に効率よく分散する。そして(A)成分と(B)成分との界面の面積が大きくなるために(B)による衝撃吸収効率が増加し、耐衝撃性が向上する。
そして、かかる組成物に、EVOH(A)と親和性を有する特性のあるアイオノマー(C)が共存することによりアイオノマーの分子間のイオン架橋による強靭性が付与されるためか、曲げ弾性率、引張強さ、引張伸び性の全てに優れるという予想外の顕著な効果が得られた。
ガスバリア性の無いアイオノマー(C)を樹脂分として配合するにもかかわらず、ガスバリア性が低下しないのは、ゴム質グラフト重合体(B)とアイオノマー(C)が適度に相溶し、マトリックスたるEVOH(A)中に(B)+(C)として効率よく分散するという理由によるものと推測される。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
本発明は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)にゴム質グラフト重合体(B)およびアイオノマー(C)を含有してなる樹脂組成物に存する。
<EVOH(A)の説明>
本願で用いるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)について説明する。
本発明で用いるEVOH(A)は、公知の樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。EVOH(A)は、通常、ビニルエステル系モノマー(例えば、脂肪酸ビニルエステル)とエチレンを共重合してエチレン−ビニルエステル系共重合体を得、これをケン化して得られるものである。すなわち、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化後に残存する若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。上記共重合に際しては、溶液重合法など、公知の重合法が採用されうる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、経済的な点から通常は酢酸ビニルが用いられる。他にも、例えばギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を用いてもよい。
また、EVOH(A)のエチレン含有量は、エチレンとビニルエステル系モノマーの重合時に決定されるものであり、ケン化の前後で変化するものではない。ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有率が通常20〜60モル%、好ましくは20〜55モル%、特に好ましくは25〜50モル%である。エチレン含有量が低すぎると耐衝撃性や加工性が低下する傾向があり、高すぎるとガスバリア性や耐溶剤性が低くなる傾向がある。
さらに、EVOH(A)のケン化度は滴定法(JIS K6726)(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)で測定した値で通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは98〜100%である。ケン化度が低すぎると酸素バリア性が低下する傾向がある。
EVOH(A)のメルトフローレート(以下、MFRと称することがある)は210℃、荷重2160gで測定した値で通常0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜40g/10分である。かかる値が高すぎたり低すぎたりすると加工性が低下する傾向がある。
このようなEVOH(A)の密度は、40℃にて24時間、真空乾燥し水分を除いた後、乾式密度計(島津製作所製 アキュピック1330)で測定した値で通常1〜1.5g/cm、好ましくは1〜1.4g/cm である特に好ましくは1.1〜1.3g/cmである。
なお、本発明では、エチレンとビニルエステル系モノマー以外に、EVOH(A)に要求される特性を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、上記単量体としては、下記のものがあげられる。例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類や、そのアシル化物、エステル化物が挙げられ、該エステル化物としては、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、特に、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等があげられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、ならびに、炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類があげられる。また、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、ならびに、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類や、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩ならびにその4級塩等のメタクリルアミド類があげられる。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類や、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、ならびに、酢酸アリル、塩化アリル、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等があげられる。また、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等「後変性」されていても差し支えない。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、延伸加工や真空・圧空成形などの二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
本発明で用いられるEVOH(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH系樹脂(A)100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.010〜0.1重量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH系樹脂(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH系樹脂(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。尚、EVOH系樹脂(A)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOH系樹脂(A)に酢酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20〜80重量%のEVOH系樹脂(A)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH系樹脂(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH系樹脂(A)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH系樹脂(A)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)を併用する方法が好ましい。
<ゴム質グラフト重合体(B)の説明>
本発明において使用されるゴム質グラフト重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)の存在下でビニル単量体(B2)を重合して得られるグラフト重合体である。かかる重合体はゴム質重合体(B1)をコアとし、ビニル単量体(B2)をシェルとするコアシェル構造を有する微粒子である。
ゴム質重合体(B1)としては、ブタジエン系ゴム質重合体、シリコーン系ゴム質重合体、アクリル系ゴム質重合体など公知のゴム質重合体を用いることが可能である。これらのゴム質重合体(B1)のガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある。)はより優れた耐衝撃性を付与できるという観点で、通常、0℃以下であり、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度が複数ある場合、少なくとも1つのガラス転移温度が上記範囲内であることが好ましく、特に好ましくは全てのガラス転移温度が上記範囲内にあることである。これらのゴム質重合体(B1)は、乳化重合によって得ることが好ましい。
本発明において使用されるゴム質グラフト重合体(B)のゴム質重合体(B1)のガラス転移温度は、動的機械的特性解析装置で測定されるtanδ曲線のピークトップの温度である。
具体的には、次のようにして測定する。
ゴム質グラフト重合体(B)の粉体を熱プレス機によって3mm(厚さ)×10mm(幅)×50mm(長さ)の試験片に調製し、動的機械的特性解析装置(機種名「EXSTAR DMS6100」、セイコーインスツル社製)により、両持ち曲げモード、昇温速度2℃/分、周波数10Hzの条件でtanδ曲線を測定し、tanδ曲線のピークトップの温度をガラス転移温度とする。
ブタジエン系ゴム質重合体としては、1,3−ブタジエン50〜100重量%と、1,3−ブタジエンと共重合可能な1種以上のビニル単量体0〜50重量%を重合して得られるものが好ましい。このような、ブタジエン系ゴム質重合体を用いることにより、得られるゴム質グラフト重合体を配合したEVOH樹脂組成物の耐衝撃性を大きく向上させることができる。1,3−ブタジエンと共重合可能なビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の多官能芳香族ビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アリルを併用することもできる。
尚、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
シリコーン系ゴム質重合体としては、ポリオルガノシロキサンゴムと、ポリオルガノシロキサンゴムとアクリルゴムを複合化したシリコーン/アクリル系複合ゴムが挙げられるが、得られるグラフト共重合体を配合した熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることから、シリコーン/アクリル系複合ゴムを用いることが好ましい。シリコーン/アクリル系複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンゴム成分が1〜99重量%、アクリルゴム成分が99〜1重量%(両成分の合計が100重量%)であることが好ましい。
シリコーン/アクリル系複合ゴムの製造方法としては、乳化重合によって、まずポリオルガノシロキサンゴムのラテックスを調製し、次いで、アクリルゴムを構成する単量体をポリオルガノシロキサンゴムのラテックス粒子に含浸させてから、これを重合する方法が好ましい。アクリル系ゴムを構成する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アクリル系ゴム質重合体としては、(メタ)アクリレート、又は、(メタ)アクリレー
トを主成分とする混合物を重合して得られるものが好ましい。(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル系ゴム質重合体は、Tgが0℃以下であることが、得られるグラフト共重合体を配合したEVOH樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることから好ましい。Tgが0℃以下であるアクリル系ゴム質重合体を得るには、(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
アクリル系ゴム質重合体は、単量体の1種以上を重合させて得た(共)重合体であってもよい。また、2種以上のアクリル系ゴム質重合体を複合させた、アクリル系複合ゴムであってもよい。
かかるゴム質重合体(B1)として、低温衝撃強度において高い効果を発現させることができる点で好ましくは、ブタジエン系ゴム質重合体およびシリコーン系ゴム質重合体である。
以上説明したゴム質重合体(B1)の存在下にビニル単量体(B2)を重合することにより、ゴム質グラフト共重合体(B)を得ることができる。
ビニル単量体(B2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。EVOH(A)への親和性の点で好ましくは、芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレートである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ
)アクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等の、分子中に
2個以上の不飽和結合を有するビニル単量体を併用することもできる。
これらのビニル単量体(B2)は、得られる重合体としてのTgが30℃以上であるものが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。Tgが低すぎる場合、生成したゴム質グラフト重合体(B)の脱水乾燥から樹脂への溶融混合にいたる各工程でのハンドリングが、その粘着性のために困難となり実用性に欠ける傾向がある。
さらに、ビニル単量体(B2)が極性官能基を有していても良い。中でも、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基から選ばれる少なくとも1種を用いた場合には、その極性官能基の存在によってEVOH(A)との混合性が良好になって好ましい。カルボキシル基を含有する単量体の例としてはメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸、メチレンロマン酸、α−メチレングルタール酸等をあげることができるが、特にメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸が好ましく用いられる。水酸基を含有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。グリシジル基を含有する単量体としてはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの極性官能基を有する単量体の量としては、ビニル単量体(B2)の通常1〜40重量%、好ましくは、1〜20重量%である。
但し、グリシジル基を含有する単量体の場合、その含有量はビニル単量体(B2)の通常5重量%未満であり、好ましくは0〜4重量%である。
ゴム質グラフト重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)10〜90重量%〔ゴム質重合体(B1)およびビニル単量体(B2)の合計100重量%中〕の存在下において、ビニル単量体(B2)10〜90重量%〔ゴム質重合体(B1)およびビニル単量体(B2)の合計100重量%中〕をグラフト重合して得られたものであることが好ましい。さらにゴム質重合体(B1)50〜90重量%の存在下において、ビニル単量体(B2)10〜50重量%をグラフト重合して得られたものであることが好ましい。ゴム質重合体(B1)の使用割合が高いほどEVOH樹脂に付与できる耐衝撃性が優れる。一方、ゴム質重合体(B1)の使用割合が90重量%以下であれば、ゴム質グラフト重合体(B)どうしのブロッキングを抑制しやすく作業性の観点で好ましい。
本発明におけるゴム質グラフト重合体(B)の製造方法は特に限定されるものではないが、ゴム質重合体(B1)の存在下でビニル単量体(B2)をグラフト重合することにより、ゴム質グラフト重合体(B)を得る多段階シード乳化重合法などによって得ることができる。なお、グラフト重合は2段以上の多段で行ってもかまわない。また、ビニル単量体(B2)として、極性官能基を有する単量体を、最終段において使用すると、EVOH(A)との相溶性を良好にするためには好ましい。
かかる重合法により製造したゴム質グラフト重合体ラテックスを凍結融解、あるいは塩折によりポリマーを分離した後、遠心脱水や乾燥等によって粒状、フレーク状あるいは粉体として取り出すことができる。また、スプレイ・ドライヤーによる噴霧乾燥でラテックスからゴム質グラフト重合体(B)をとりだすこともできる。
更に、こうして取り出されたゴム質グラフト重合体(B)は、不活性ガス雰囲気下、乾燥機中における加熱処理あるいは押出機を通すことによる加熱処理、および脱水剤を用いるなどの種種の方法で脱水処理を施すことにより、ビニル単量体(B2)中にカルボキシル基を有することができる。また、カルボキシル基の少なくとも一部が無水酸型であるゴム質グラフト重合体を得ることもできる。
上記のようにして製造されたゴム質グラフト重合体(B)の平均粒子径は通常50〜1000nmであり、好ましくは80〜750nmの範囲のものが用いられる。またその粒度分布については、分布のピークが1つしか存在しない単分散であってもよく、また分布のピークが複数存在する複分散であってもよい。
<アイオノマー(C)成分の説明>
本発明で用いるアイオノマー(C)は、公知の樹脂であり、疎水性の高分子主鎖に対し、側鎖にイオン基を有する熱可塑性樹脂である。
かかるアイオノマーとしては、ポリスチレンスルホン酸塩(PSS)アイオノマー、エチレン系スルホン酸塩アイオノマー等スルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された構造のスルホン酸塩アイオノマーや、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された構造のカルボン酸系アイオノマーなどを挙げることができる。 本発明においては、EVOHとの親和性の点から、カルボン酸系アイオノマーを用いることが好ましく、特にはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを用いることが好ましい。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにおける不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルなどを挙げることができ、これらは単独でも複数を同時に用いることも可能である。中でも特に(メタ)アクリル酸が好ましい。
上記エチレン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体アイオノマーのエチレン成分含有量は、通常50〜99重量%であり、好ましくは60〜95重量%である。また、不飽和カルボン酸成分は、通常1〜50重量%、好ましくは15〜40重量%である。
また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーには、共重合成分となりうる他の単量体を少量含有していてもよく(例えば20重量%未満にて)、例えば、酢酸ビニルのようなビニルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、のような不飽和(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基成分を中和する金属イオンとしては、通常、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属イオン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの2価金属イオン、鉄、アルミニウム等の3価金属イオン等が挙げられるが、特に汎用性の点からカリウム、ナトリウムが好適である。アイオノマー中の金属カチオン含有量は、アイオノマー1kg当たり通常0.4〜4モル、好ましくは0.6〜2モルの範囲にあることが望ましい。また、中和度は、前記金属の陽イオンで共重合体成分中の不飽和カルボン酸量の15〜80%、好ましくは20〜60%が中和されたものが好適に用いられる。
すなわち、本発明のアイオノマーは、エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
かかるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、公知の重合方法、例えば高温高圧下で各重合成分をランダム共重合することによって得ることができる。
アイオノマー(C)として好ましくは、融点が通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃、特に好ましくは85〜95℃のものである。また、MFRが190℃、荷重2160gにて、通常0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分、特に好ましくは0.5〜1.5g/10分のものである。
上記のアイオノマーとしては、「ハイミラン」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「サーリン」(デュポン社製)、などの市販品を挙げることができる。
<樹脂組成物の説明>
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)にゴム質グラフト重合体(B)、アイオノマー(C)および他の成分を配合した樹脂組成物から形成される。EVOH(A)と重合体(B)のみでは、耐衝撃性に改善の余地があるところ、さらに(C)成分が存在することで、強靭性が付与され、優れたガスバリア性を保ちつつ、耐衝撃性すなわち、弾性率、降伏値、引張強さ、引張伸び性の全てに優れる硬さと粘り強さに優れるという、顕著な効果が得られる。
本発明の樹脂組成物全体におけるベース樹脂はEVOH(A)である。従って、EVOH(A)成分の量は、樹脂組成物全体に対して通常50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%である。かかる量が多すぎる場合、耐衝撃性が低くなる傾向があり、少なすぎる場合、ガスバリア性や耐溶剤性が低下する傾向がある。
そして、本発明の樹脂組成物中におけるEVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)との重量比(A)/(B)は、通常70/30〜99/1、好ましくは75/25〜97/3である。重量比(A)/(B)が大きすぎる場合、耐衝撃性が低くなる傾向があり、重量比(A)/(B)が小さすぎる場合、ガスバリア性が低下する傾向がある。
そして、本発明の樹脂組成物中におけるゴム質グラフト重合体(B)とアイオノマー(C)との重量比(B/C)は、通常0.1〜10、好ましくは0.3〜8、特に好ましくは0.5〜5である。重量比(B/C)が大きすぎる場合、低温における耐衝撃性が低下する傾向がある。小さすぎる場合、耐溶剤性が低下する傾向がある。
なお、本発明の樹脂組成物中におけるEVOH(A)とアイオノマー(C)との重量比(A/C)は、通常70/30〜99/1、好ましくは75/25〜97/3である。重量比(A)/(C)が大きすぎる場合、耐衝撃性が低くなる傾向があり、重量比(A)/(C)が小さすぎる場合、ガスバリア性が低下する傾向がある。
本発明の樹脂組成物には、EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)、アイオノマー(C)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、目的に応じて、他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂を含む場合、他の熱可塑性樹脂の含有量は樹脂組成物全体に対して通常30重量%未満であり、好ましくは20重量%未満である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、目的に応じて、他の配合剤成分を含んでいてもよい。これら配合剤の添加量は樹脂組成物に対して通常20重量%未満である。上記配合剤としては、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維などのフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤などが挙げられ、任意の配合剤を1種、または2種以上添加することができる。
特に、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を増進させ、また溶融安定性等を改善するためにハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の1種または2種以上を樹脂組成物に対し0.01〜1重量%添加することは好適である。
さらに本発明の効果を増進させ、層間接着性や樹脂組成物の相溶性の改善のためにリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンを有するアルカリ金属塩を含有させることも効果的である。アルカリ金属化合物としては、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の炭素数2〜7の低級脂肪族カルボン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムなどの芳香族カルボン酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム等の燐酸塩エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等の金属錯体等があげられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
好適には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の炭素数2〜7の低級脂肪族カルボン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム等の燐酸塩があげられる。さらに好ましくは、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸塩であり、特に好ましくは炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸のカリウム塩が用いられる。
かかるアルカリ金属化合物の含有量は、EVOH(A)100重量部に対して金属換算した値(重量基準)にて通常0.0001〜1重量部、好ましくは0.0003〜0.5重量部、さらに好ましくは0.0005〜0.1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.05重量部である。なお、かかるアルカリ金属化合物が前述したようにEVOH(A)に予め含有されている場合、その量を含む総量が上記範囲内であることが好ましい。
特に本発明の樹脂組成物には、上記(A)〜(C)成分と共にグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)をさらに配合することが好ましい。
<グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)の説明>
重合体(D)は、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位を通常5重量%以上含有する。重合体(D)中のグリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位の含有率が5重量%以上であれば、重合体(D)の配合量を低くすることができる。これにより、EVOH(A)との相溶性の制御が容易になり、得られる樹脂組成物の耐衝撃性及びガスバリア性の発現が良好となる。重合体(D)中の、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位の含有率は20重量%以上が好ましい。
このような重合体(D)のエポキシ当量としては、通常、50〜5000g/eq、好ましくは、100〜4800g/eq、特に好ましくは150〜4500g/eqが用いられる。エポキシ当量が多すぎても少なすぎても、耐衝撃性が低下する傾向にある。
本発明のエポキシ当量は、下記(1)〜(6)の方法により測定されたものをいう。
(1)100mlメスフラスコに塩酸2gを入れ、エタノール/ジオキサン=20/80溶液でメスアップする。(A液)
(2)100ml共栓付き三角フラスコに試料0.15〜0.20gを精秤する。ジオキサン20mlを加え、超音波洗浄器を用いて超音波を1時間程度照射し、試料を溶解する。溶解時の液温は、40℃程度である。
(3)試料が溶解した後、三角フラスコ内にA液を10ml加える。
(4)A液添加後の試料溶液を、フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/l−KOH(エタノール)で滴定する。
(5)ブランク液の滴定も同時に行なう。
(6)試料量、試料溶液及びブランク液の適定量からエポキシ当量を算出する。
グリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位として利用可能なものは、グリシジル基を含有するメタクリレート及び/又はアクリレートであれば特に限定されないが、工業的な入手の利便性や重合時の安定性の観点から、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートが好ましい。グリシジル(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
重合体(D)は、グリシジル基を含有する(メタ)アクリレート単位以外の、その他の単量体単位を含有することができる。その他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
その他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、メチルメタクリレートが好ましい。
重合体(D)中の、その他の単量体単位の含有率は、通常95重量%以下であり、特に80重量%であることが好ましい。その他の単量体単位の含有率が上記値以下であれば、重合体(D)の配合量を低くしてもEVOH(A)との相溶性の制御が容易になり、得られる樹脂組成物の耐衝撃性及びガスバリア性の発現が良好となる。
また、重合体(D)は、他成分との界面を形成する重合体の表面が上記グリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位を通常5重量%以上含有するものであればよく、(B)成分と同様、ゴム質重合体の存在下で、ビニル単量体を重合して得られるゴム質グラフト重合体構造を有していても良い。この場合のゴム質重合体は、前記(B1)成分において列記したゴム質重合体であればよく、ビニル単量体は、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート単位を通常5重量%以上含有するビニル単量体であればよい。
重合体(D)のTgは、通常0〜150℃の範囲である。重合体(D)のTgが、0℃以上であれば、取扱い性(重合体(B)の耐ブロッキング性、耐融着性)が良好となり、150℃以下であれば、EVOH(A)と配合する際の、溶融速度を高めることができる。取扱い性と溶融速度の観点から、重合体(D)のTgは30℃以上が好ましく、90℃以下が好ましい。
重合体(D)におけるTgとは、下記式1の、Foxの式から計算される共重合体のTgである。
式1: 1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
(但し、Wiは単量体iの全単量体に対する重量比率、Tgiは単量体iの単独重合体のTgを示す。)
単独重合体のTgの数値としては、POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION(WILEY INTERSCIENCE)に記載の数値を用いることができる。
重合体(D)の重量平均分子量は、重合の点から、通常1〜10万であり、好ましくは2〜8万である。
本発明の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、下記の測定条件にて、分子量既知のポリメチルメタクリレートによる検量線から求めたものをいう。
カラム :TSK−Gel SUPER HZM−M(東ソー(株)製)
測定温度 :40℃
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
溶離液速度:0.6ml/分
検出器 :RI
重合体(D)の形状としては、取扱い性や、EVOH(A)との配合性の観点から、球状粒子であることが好ましい。
重合体(D)の重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等、公知の重合方法が適用可能である。この中では、容易に球状粒子の重合体を得ることができるため、懸濁重合が好ましい。
重合体(D)の重合に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。これらの中では、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
重合体(D)の重合では、必要に応じて、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類;α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができ、これらの中では、n−ドデシルメルカプタンが好ましい。
重合体(D)の懸濁重合に用いる分散剤としては、例えば、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物;ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸とメチル(メタ)アクリレートの共重合物のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸スルホン酸エステルアルカリ金属塩の共重合物等のアニオン系高分子化合が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明においては、かかる重合体(D)をさらに配合する場合、さらに顕著な耐衝撃性が得られる。
EVOH(A)100重量部に対するグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)の配合量は、通常0.1〜20重量部であり、好ましくは0.1〜15重量部、特に好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜8重量部である。かかる値が大きすぎても小さすぎても、耐衝撃性向上効果が効果的に得られない傾向がある。
なお、ゴム質グラフト重合体(B)100重量部に対するグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)の配合量は、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜40重量部、特に好ましくは10〜35重量部である。かかる値が大きすぎても小さすぎても、耐衝撃性向上効果が効果的に得られない傾向がある。
本発明の樹脂組成物には、上記(A)〜(C)成分と共に、ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)、または(D)成分および(E)成分をさらに配合することが好ましい。ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)が存在することにより、低温における耐衝撃性がさらに向上する。
<ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)成分の説明>
本発明で用いるポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)は、公知の樹脂であり(特開2006−294204号公報参照)、ポリアルキレンエーテルユニットを含有する重合体であれば、単一重合体であっても共重合体であってもよい。
ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)として好ましくは、融点が通常135〜195℃、好ましくは145〜185℃、特に好ましくは155〜175℃のものが用いられる。また、MFRが230℃、荷重2160gにて、通常2〜80g/10分、好ましくは5〜60g/10分、より好ましくは20〜50g/10分、更に好ましくは25〜45g/10分、特に好ましくは30〜40g/10分のものが用いられる。
かかるポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)としては、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3)プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体または共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。
また、ポリアルキレンエーテルユニットを有するブロック共重合体も用いることができる。ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを用いたポリエステルエーテルブロック共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを用いたブロック共重合体、短鎖グリコールとジイソシアネートとの重合体からなるユニットとジイソシアネートとポリアルキレンエーテルとの重合体からなるユニットを有するポリウレタン系共重合体、ポリアミドとポリアルキレンエーテルを用いたポリアミドポリエーテル共重合体等が挙げられる。
これら重合体(E)の中では、ポリアルキレンエーテルユニットを有するブロック共重合体が好ましく、さらに好ましくは芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体である。
また、該ポリアルキレンエーテルユニットとして好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニットである。
ポリアルキレンエーテルユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルユニットの含有量の下限値は限定されないが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上である。ポリアルキレンエーテルユニットの含有量が前記下限値未満の場合は、EVOH(A)とのブレンドの際に分散性が低下する傾向がある。また、ポリアルキレンエーテルユニットの含有量の上限値は限定されないが、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。なお、ポリアルキレンエーテルユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
また、ポリアルキレンエーテルユニットの数平均分子量は通常600〜4000であり、さらに好ましくは800〜2500、特に好ましくは900〜2100である。かかる数平均分子量が低すぎる場合、融点が高くなってEVOH(A)とのブレンドの際に分散性が低下する傾向があり、逆に数平均分子量が高すぎる場合、融点が低下してEVOH(A)とのブレンド時にホッパーへの付着等が発生する虞がある。これらのポリアルキレンエーテルユニットは、1種又は数平均分子量が異なる2種以上を使用することができる。なお、ここでポリアルキレンエーテルユニットの数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものを言う。
なお、上記の芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステル、及び数平均分子量が通常600〜4000のポリアルキレンエーテルとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料として通常用いられるものが使用できる。例えば、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。脂環族ジオールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのジオールは、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。中でも炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、特には1,4−ブタンジオールが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸及びその低級(例えば炭素数4以下)アルキルエステルやイソフタル酸、フタル酸、2,5−ノルボナンジカルボン酸、1,4−ナフタル酸、1,5−ナフタル酸、4,4−オキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。また、これらの芳香族ジカルボン酸を単独で、もしくは2種以上併用してもよい。
すなわち、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体として好ましくは、テレフタル酸と炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むポリエステルユニットと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体である。
なお、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体には、上記成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸及び/又はそのエステルの1種又は2種以上を少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸やそのジアルキルエステルをも共重合成分として導入してもよい。
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体の融点は限定されないが、通常125℃以上であり、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上である。ポリエステルポリエーテルブロック共重合体の融点が前記下限値未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向がある。なお、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体の融点の上限は限定されないが、通常300℃以下、好ましくは260℃以下である。ここで、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体の融点の測定方法は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で昇温させた時の融解ピークの温度である。
上記のポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、「ポリエスター」(日本合成化学工業社製)、「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)、「ハイトレル」(デュポン社製)などの市販品を挙げることができる。
なお、本発明において、上記のポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)は、カルボキシル基を含有することが好ましい。特に、未変性である重合体(以下、「未変性重合体」と称することがある)(E1)としてポリエステルポリエーテルブロック共重合体を使用し、これをカルボキシル基含有化合物にて変性したものである、カルボキシル基含有ポリエステルポリエーテルブロック共重合体(E2)が好適である。
カルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体の場合、マトリックスポリマーの分子量が増加してマトリックスそのものの耐衝撃性が向上し、同時にマトリックスから(B)成分への衝撃伝達効率が増加するためか、耐衝撃性が顕著に向上し、低温条件下における耐衝撃性にも優れる。以下、カルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体を調製する場合について述べる。
未変性重合体(E1)を変性してカルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体を調製するためのカルボキシル基含有化合物は限定されないが、不飽和カルボン酸またはその誘導体が挙げられ、該誘導体としては、酸無水物、エステル、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどが挙げられる。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラス酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のα,β−不飽和カルボン酸や不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸類を挙げることができる。好ましくは酸無水物であり、特に好ましくは無水マレイン酸である。これらのカルボキシル基含有化合物は、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用してもよい。
すなわち、カルボキシル基含有ポリエステルポリエーテルブロック共重合体(E2)として好ましくは、カルボキシル基を含有する芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体である。特に好ましくは、テレフタル酸と炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むポリエステルユニットと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体の酸無水物変性物である。
未変性重合体(E1)をグラフト重合してカルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体を調製する方法は限定されず、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカル発生剤を添加してもよい。また、反応させる手法としては、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法のほか、懸濁分散反応法などの方法を用いてもよい。中でも、溶融変性法が好ましい。
溶融変性法としては、未変性重合体(E1)と酸類、及び必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で混練機中で溶融混練させて反応させる方法や、混練機中で溶融した、未変性重合体(E1)に、溶剤等に溶解した酸類とラジカル発生剤との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。 溶融混練の温度は、重合体(E)が熱劣化しない温度範囲で適宜設定すればよい。
カルボキシル基含有化合物の配合量は、未変性重合体(E1)100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは5重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。酸類の配合量が少な過ぎる場合は、十分な変性が行えず官能基が少なすぎるためにEVOH(A)とのブレンドの際に分散性が低下する傾向があり、配合量が多過ぎる場合は、グラフト反応しなかった化合物が残留することにより、外観不良等を生じる傾向がある。
ラジカル発生剤は限定されないが、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素などの有機及び無機の過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物;ジクミル等の炭素ラジカル発生剤などが挙げられる。
上記のラジカル発生剤は、グラフト変性反応に供する未変性重合体(E1)の種類、酸類の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル発生剤の配合量は、未変性重合体(E1)100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上で、通常3重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.2重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以下である。ラジカル発生剤の配合量が少な過ぎる場合は変性が十分に起こらない傾向にあり、多過ぎる場合は未変性重合体(E1)の低分子量化(粘度低下)が大きく、材料強度が低下する傾向にある。
カルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体の変性率(グラフト量)は、酸変性物中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。グラフト量が少な過ぎる場合は、官能基が少なすぎるためにEVOH(A)とのブレンドの際に分散性が低下する傾向があり、多過ぎる場合は、変性の過程における低分子量化のため材料強度が低下する傾向にある。ここで変性率(グラフト量)は、H−NMR測定により得られるスペクトルから求めることができる。
このようなカルボキシル基含有ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体は市販品を用いることもでき、カルボキシル基含有ポリエステルポリエーテルブロック共重合体として、「プリマロイ」(三菱化学社製)が挙げられる。
EVOH(A)100重量部に対するポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)の配合量は、通常0.1〜30重量部であり、好ましくは0.5〜20重量部であり、特に好ましくは1〜15重量部である。かかる値が大きすぎても小さすぎても、耐衝撃性向上効果が効果的に得られない傾向がある。
なお、ゴム質グラフト重合体(B)100重量部に対するポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)との重量比(B/E)は、通常0.1〜10、好ましくは0.3〜5である。重量比(B/E)が大きすぎる場合、低温における耐衝撃性が低下する傾向がある。小さすぎる場合、耐溶剤性が低下する傾向がある。
<混合方法について>
EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)、アイオノマー(C)(および他の添加剤)とを混合する方法としては、公知の方法を採用することが出来る。例えば、全ての成分をドライブレンドして溶融混合する方法、予め溶融させたEVOH(A)に他の成分を配合する方法等の、溶融混合法や、EVOH(A)を溶媒に溶解し、かかる溶液に他の成分を配合し、EVOH(A)の貧溶媒を用いて析出させる方法等がある。
中でも、工業生産性がよく均一な混合が可能である点で、溶融混合法が好ましい。溶融混合するに際しては、公知の機械を採用することができる。例えば、ニーダールーダー、単軸又は二軸等の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの混練装置を使用して行うことができるが、二軸の押出機を用いることが工業上好ましい。
本発明の樹脂組成物は、押出機内で溶融混合後、押し出す際に各種成形物へ成形してもよいし、一旦樹脂組成物ペレットを作製し、別途公知の加工方法で各種成形物を成形してもよい。樹脂組成物の流通や取り扱い性の点から、後者の方法が好ましい。
また、ペレットにする場合、その形は通常球形、円柱形、立方体形、直方体形等が上げられ、円柱形ペレットが好ましく、その直径は通常1〜5mm、長さは通常1〜5mmである。
本発明の樹脂組成物は、単層にて各種成形物に供することができるが、機械的強度の向上等の点から、樹脂組成物層にEVOH以外の熱可塑性樹脂層を少なくとも1層以上積層された多層構造体にて各種成形物に供することが好ましい。
EVOH以外の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」と称することがある)としては、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、等のポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル系樹脂;ポリスチレン;ビニルエステル系樹脂;ポリエステルエラストマー;ポリウレタンエラストマー;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレン;芳香族または脂肪族ポリケトン;さらにこれらを還元して得られるポリアルコール類が挙げられる。中でも、樹脂組成物のガスバリア性低下を抑制する目的から疎水性樹脂を用いることが好ましく、具体的にはポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
上記樹脂組成物層および他の熱可塑性樹脂層は、多層構造中にそれぞれ2層以上を有していても良い。
上記樹脂組成物層および他の熱可塑性樹脂層は、さらに樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層との間に接着樹脂層が介在していても良い。
接着樹脂層としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、通常0.001〜3重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となる傾向があり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなる傾向がある。
これらの接着性樹脂には、EVOH(A)、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはポリオレフィン系樹脂層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることも可能である。
なお、他の熱可塑性樹脂層や接着樹脂層には、通常配合される公知の酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、ワックス等が含まれていても良い。
上記多層構造体は、本発明に係る樹脂組成物層を少なくとも1層含むものであればよく、その構成は特に限定しないが、水分による樹脂組成物のガスバリア性能の低下を防ぐ目的で、樹脂組成物層が中間層であることが好ましい。
多層構造体の層構成は、樹脂組成物層をα(α1、α2、・・・)、他の熱可塑性樹脂層をβ(β1、β2、・・・)とするとき、通常3〜20層、好ましくは3〜15層、特に好ましくは3〜10層である。例えば具体的には、β/α/β、α/β/α、α1/α2/β、α/β1/β2、β2/β1/α/β1/β2、β2/β1/α/β1/α/β1/β2等任意の組み合わせが可能である。
また、かかる多層構造体は、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層を設けることが可能である。かかるリサイクル層をRとするとき、多層構造体の層構成は、例えばβ/α/R、R/β/α、β/R/α/β、β/R/α/R/β、β/α/R/α/β、β/R/α/R/α/R/β等が挙げられる。
特にリサイクル層を設けることは、成形時に発生する多量のスクラップを有効に活用できる点で工業上好ましい。
本発明の多層構造体における、多層構造の層構成として好ましくは、樹脂組成物層が内包物と接触する層として存在し、EVOH以外の熱可塑性樹脂層、好ましくはポリオレフィン系樹脂層が、内包物と接触する層よりも外側の層に存在していることが好ましい。例えば、(内)樹脂組成物層/接着性樹脂層/他の熱可塑性樹脂層(外)、(内)樹脂組成物層/接着性樹脂層/リサイクル層/他の熱可塑性樹脂層(外)(内)樹脂組成物層/接着性樹脂層/他の熱可塑性樹脂層/リサイクル層/他の熱可塑性樹脂層(外)、(内)樹脂組成物層/接着性樹脂層/他の熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/他の熱可塑性樹脂層(外)等が挙げられるが、最も好ましくは、(内)樹脂組成物層/接着性樹脂層/他の熱可塑性樹脂層(外)である。
多層構造体の総厚みは、機械的強度の点から、通常20〜50000μm、特に好ましくは100〜20000μmである。多層構造体の総厚みが薄すぎる場合には、耐衝撃性およびガスバリア性が低下することがある。多層構造体の総厚みが厚すぎる場合には、耐衝撃性およびガスバリア性が過剰性能となり、不必要な原料を使用することとなるため経済的でない傾向がある。
多層構造における各層の厚みは、層構成、用途や容器形態、要求される物性などにより一概に言えないが、例えば下記の通りである。なお、下記の数値は、樹脂組成物層、接着性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1種の層が2層以上存在する場合には、同種の層の厚みを総計した値である。
樹脂組成物層は通常5〜500μm、好ましくは20〜300μm、特に好ましくは100〜200μmである。樹脂組成物層が薄すぎる場合、本発明の効果が得られにくくなる傾向があり、樹脂組成物層が厚すぎる場合、加工性が低下する傾向がある。
他の熱可塑性樹脂層は通常100〜6000μm、好ましくは200〜4000μm、特に好ましくは1000〜2000μmである。他の熱可塑性樹脂層が薄すぎる場合、耐衝撃性が低下する傾向があり、他の熱可塑性樹脂層が厚すぎる場合、加工性が低下する傾向がある。
接着性樹脂層は通常2〜100μm、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。
また、各層の厚み比は、樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層の厚み比=通常0.002〜1未満、好ましくは0.005〜1未満、特に好ましくは0.05〜0.2であり、樹脂組成物層/接着性樹脂層の厚み比=通常1〜250、好ましくは1〜60、特に好ましくは1〜10である。
上記多層構造体は、さらに公知の方法で延伸処理を行っても良い。
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常100〜300℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸倍率は、面積比にて、通常2〜50倍、好ましくは2〜20倍である。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
EVOH(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(a1)(エチレン含有量32モル%,ケン化度99.6モル%,MFR12g/10分(210℃、荷重2160g),密度1.19g/cm)を用いた。
ゴム質グラフト重合体(B)としてブタジエンを主成分とするゴム質重合体(B1)の存在下に、スチレン及びメチルメタクリレートをグラフト重合して得られるゴム質グラフト重合体((b1)商品名メタブレン C223A(三菱レイヨン社製、ゴム質重合体のガラス転移温度−66℃)を用いた。
アイオノマー(C)として、エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の金属イオン中和物(c1)商品名ハイミラン1707(三井・デュポンポリケミカル製、融点89℃、MFR0.9g/10分(190℃、荷重2160g))を用いた。
その他成分として、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)として、(d1)商品名メタブレンP1900(三菱レイヨン社製)を用いた。本製品はグリシジルメタクリレート単位を主成分として重合してなる、エポキシ当量158(g/eq)、重量平均分子量が4.8万の重合体である。
上記各成分を、(a1/b1/c1/d1)の重量比にて62/15/20/3の割合で配合した。
すなわち、(A/B)の重量比は81/19であり、(A/C)の重量比は76/24である。(B/C)の重量比は0.8である。また、EVOH(A)100重量部に対する(D)の配合量は5重量部であり、(B)100重量部に対する(D)の配合量は20重量部である。
EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)とアイオノマー(C)およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)をドライブレンドした後、ミキシングゾーンを4箇所有する2軸押出機(直径30mm、L/D=42)に仕込み、溶融混錬した(押出機設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/H/D=150/200/210/230/230/230/230/220/220℃)。かかる樹脂組成物をストランド状に押出してカットし、樹脂組成物の円柱状ペレットを得た。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて膜厚20μmのフィルムを製膜した(製膜条件:内径40mm単軸押出機、コートハンガーダイス、フルフライトスクリューを使用して、ダイス温度220℃、冷却ロール温度80℃)。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて縦150×横10×厚4mm(JIS K7161 射出片形状1A)および縦80×横10×厚4mm(射出片形状 ISO179/1eA)の成型体を作成した。
得られた成型体およびフィルムを用いて下記の評価を行った。
<酸素バリア性評価>
上記の膜厚20μmのフィルムを用いて、温度20℃,相対湿度65%の状態で、モコン製Ox−Tran 2/20によって酸素透過量を測定した。
<応力−ひずみ曲線評価>
上記の成型体(縦150×横10×厚4mm JIS K7161 射出片形状1A)を用いて、応力−ひずみ曲線(JIS K7161準拠)の測定を行なった。
<曲げ弾性率評価>上記の成型体(縦80×横10×厚4mm 射出片形状ISO179/1eA)を用いて、曲げ弾性率(JIS K7171 準拠)の測定を行なった。
比較例1
実施例1において、アイオノマー(C)およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)を配合せず、EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)のみを(a1/b1)=80/20にて用いた以外は同様にして射出成形体を得、同様の評価を行なった。
比較例2
実施例1において、アイオノマー(C)を配合せず、(A)と(B)と(D)を重量比にて(a1/b1/d1)=82/15/3にて用いた以外は同様にして射出成形体を得、同様の評価を行なった。
条件と評価結果を表1に示す。
参考例1
実施例1において、ゴム質グラフト重合体(B)およびアイオノマー(C)およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)を配合せず、EVOH(A)のみを用いた以外は同様にして射出成形体を得、同様の評価を行なった。
Figure 0005709625
〔実施例2〕
EVOH(A)として(a1)、ゴム質グラフト重合体(B)として(b1)、アイオノマー(C)として(c1)、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)として(d1)を用い、ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)として、(e1)商品名プリマロイ AP GQ430〔三菱化学社製、融点165℃、MFR35g/10分(230℃、荷重2160g)、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとのブロック共重合体を、溶融混練法によって無水マレイン酸をグラフトさせたもの。〕を用いた。
上記各成分を、(a/b1/c1/d1/e1)の重量比として75/10/3/2/10とした。
すなわち、(A/B)の重量比は88/12であり、(A/C)の重量比は96/4である。(B/C)の比率は重量比にて3である。また、EVOH(A)100重量部に対する重合体(D)の配合量は3重量部であり、重合体(B)100重量部に対する重合体(D)の配合量は20重量部である。また、EVOH(A)100重量部に対する重合体(E)の配合量は13重量部である。なお、(B/E)の比率は重量比にて1である。
EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)とアイオノマー(C)および重合体(D)および重合体(E)を上記重量比にてドライブレンドした後、ミキシングゾーンを4箇所有する2軸押出機(直径30mm、L/D=42)に仕込み、溶融混錬した(押出機設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/H/D=150/200/210/230/230/230/230/220/220℃)。かかる樹脂組成物をストランド状に押出してカットし、樹脂組成物の円柱状ペレットを得た。
次に、得られた樹脂組成物ペレットを用いて射出成型物を製造した。射出成型に際しては、ISO179/1eA試験用の成型金型を用いて、金型温度30℃、シリンダー温度220℃において、成型体(縦80×横10×厚4mm)を成形した。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて膜厚30μmのフィルム、および膜厚60μmのフィルムを製膜した(製膜条件:内径40mm単軸押出機、コートハンガーダイス、フルフライトスクリューを使用して、ダイス温度220℃、冷却ロール温度80℃)。
得られた成型体およびフィルムを用いて下記の評価を行った。
(評価)
<常温衝撃強度評価>
上記の成型体(縦80×横10×厚4mm)を用いて、23℃、50%RHにおける、ノッチ付シャルピー衝撃強度(JIS K7111準拠)の測定を行なった。
<低温衝撃強度評価>
上記の成型体(縦80×横10×厚4mm)を用いて、−20℃、0%RHにおける、ノッチ付シャルピー衝撃強度(JIS K7111準拠)の測定を行なった。
<酸素バリア性評価>
上記の膜厚30μmのフィルムを用いて、温度20℃,相対湿度65%の状態で、モコン製Ox−Tran 2/20によって酸素透過量を測定した。
<フィルムインパクト評価>
上記の膜厚60μmのフィルムを用いて、YSS式フィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製:型式181)を用いて23℃、50%RHの雰囲気中で衝撃強度(kgf・cm)を測定した。
なお、試料厚みは60μm、径は80mmとし、衝撃球は直径12.7mmの鉄球を用い、荷重を15kgf・cmとし、振り子の持ち上げ角度は90°とした。
〔比較例3〕
実施例2において、(C)〜(E)成分を配合せず、EVOH(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(a2)〔エチレン含有量29モル%,ケン化度99.6モル%,MFR4g/10分(210℃、荷重2160g)〕を用い、(A)と(B)を、重量比(A/B)=80/20にて用いた以外は同様にして、同様の評価を行なった。
〔参考例2〕
実施例2において、(B)〜(E)成分を配合せずにEVOH(A)のみを用いて同様の評価を行った。
Figure 0005709625
曲げ弾性率は樹脂の柔らかさを表し、かかる数値が低い方が柔らかいことを示す。そして応力−ひずみ曲線の最大点応力値は、硬さすなわち脆さを表し、かかる数値が高いほうが脆く硬いことを示し、低いほうが粘りがあり引張強いことを示す。破断点歪み値は、粘り強さを表し、かかる値が大きいほうが粘り強く、伸びが良いことを示す。
したがって、曲げ弾性率が小さい値を示し、かつ応力−ひずみ曲線の最大点応力値が適度に低い値を示し、かつ破断点歪み値が大きい値を示す樹脂組成物は、柔らかく、引張強さや引張伸び性の全てに優れる樹脂であるといえる。
上記表1の評価結果より、EVOH(A)に対してゴム質グラフト重合体B)を含有する樹脂組成物を用いた比較例1は、EVOHのみを用いた参考例1と比較して、曲げ弾性率や最大点応力、破断点歪みの全ての点で柔軟性が向上したものの、酸素透過度は8倍以上に低下した。これは、柔軟性を有するもののガスバリア性を有さないゴム質グラフト重合体(B)を配合した結果、EVOHそのものが有するガスバリア性を低下させたものであると推測される。
また、EVOH(A)に対してゴム質グラフト重合体(B)にアイオノマー(C)成分以外を含有させても、比較例1よりもガスバリア性は改善されるが、曲げ弾性率や破断点歪みにおいては、比較例1の樹脂組成物と同レベルであり、最大点応力はむしろ低下する結果となった。
これに対して、EVOH(A)に対してゴム質グラフト重合体(B)さらにアイオノマー(C)を含有する本発明の樹脂組成物を用いた実施例1は、曲げ弾性率が1.9GPaは、比較例と比べて著しく良好な値となった。最大点−応力評価においても47.3MPaという良好な結果が得られ適度に硬く、また、破断点−歪み評価においても301.7%と、比較例1に対して6倍以上の非常に高い数値が得られた。しかも、酸素透過度は参考例1や比較例2の2倍程度となり、ガスバリア性のない樹脂を配合したにもかかわらず、同程度の優れたガスバリア性を維持していることがわかった。かかる結果より、(A)および(B)成分に、さらに(C)成分が存在することで曲げ弾性率、引張強さ、引張伸び性が向上することが明らかである。
実施例1において、ガスバリア性の無い樹脂であるアイオノマー(C)を樹脂分として配合するにもかかわらず、樹脂組成物のガスバリア性が低下しないのは、ゴム質グラフト重合体(B)のシェルがエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体からなり、かつアイオノマー(C)がエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体であり、分子内の(メタ)アクリル酸の一部が金属カチオンで中和された構造であるため、これら(B)成分と(C)成分が適度に相溶し、マトリックスたるEVOH(A)中に(B)+(C)として効率よく分散するためであるものと推測される。
なお、実施例2においては本発明において耐衝撃性を評価する方法として、常温及び低温のシャルピー衝撃強度とフィルムインパクトを共に評価している。詳細には、シャルピー衝撃強度とはプレート射出片における樹脂の粘り強さを評価するものであり、欠陥(クラック)の進展に対する抵抗性を評価する指標である。一方、フィルムインパクトは、フィルムの破損原因となる衝撃穴あけ強さを評価するものであり、衝撃による欠陥の発生し易さを評価する指標である。
上記表2の評価結果より、実施例2の衝撃強度評価は常温、低温共に非常に優れる値を示す結果となり、フィルムインパクトにおいても、高い値を示す結果が得られた。このことから、(A)〜(C)成分に、さらに(D)、(E)成分が存在することで衝撃強度が向上することがわかる。
以上の実施例では、EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)およびアイオノマー(C)を含有する樹脂組成物層の単層体について説明したが、これらの樹脂組成物層を含有する多層構造体についても上記実施例と同等あるいはそれ以上の効果を奏するといえる。
例えば、上記樹脂組成物層が、少なくとも内側層、すなわち容器の内容物が接触する層として存在し、この内側層よりも外側の層に、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂層が存在する多層構造体が考えられる。上記EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂層がポリオレフィン系樹脂層であれば、ポリオレフィン系樹脂層により低温衝撃強度が向上するとともに、容器外から容器内への水分の進入が抑制され、樹脂組成物層中のマトリックスたるEVOH(A)の酸素バリア性が水分によって低下するのを抑えることができる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂層を多層構造体の外側層に設けることにより、耐溶剤性を維持しつつ、低温衝撃強度を向上させ、酸素バリア性の経時的低下を抑えることができる。
以上の結果より、EVOH(A)とゴム質グラフト重合体(B)およびアイオノマー(C)とを含有する樹脂組成物およびかかる樹脂組成物層を有する多層構造体は、EVOHと同程度の優れた酸素バリア性および曲げ弾性率、引張強さ、引張伸び性の全てに優れる耐衝撃性を有するので、例えば燃料や農薬等、揮発性物質を含有する溶液用のボトル、タンク、ドラム等の容器や、それらを輸送するホース等の材料としても有用である。

Claims (8)

  1. エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)にゴム質グラフト重合体(B)アイオノマー(C)、およびグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)を含有してなる樹脂組成物であって、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)とゴム質グラフト重合体(B)との重量比(A/B)が、70/30〜99/1であり、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)とアイオノマー(C)との重量比(A/C)が、70/30〜99/1であり、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)100重量部に対するグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)の配合量が、0.1〜20重量部である樹脂組成物
  2. ゴム質グラフト重合体(B)とアイオノマー(C)との重量比(B/C)は、0.1〜10である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. ゴム質グラフト重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)およびビニル単量体(B2)の合計100重量%中、ゴム質重合体(B1)10〜90重量%の存在下において、ビニル単量体(B2)10〜90重量%をグラフト重合して得られたものである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. ゴム質重合体(B1)のガラス転移温度が0℃以下である請求項に記載の樹脂組成物。
  5. グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(D)のエポキシ当量が、50〜5000g/eqである請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 上記(A)〜(D)成分と共に、ポリアルキレンエーテルユニットを有する重合体(E)を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体。
  8. 総厚みが、20〜50000μmであることを特徴とする請求項記載の多層構造体。
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