JP4040170B2 - チューブ状容器の口頭部 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、食品、化粧品、練歯磨などの日用品などが充填されるチューブ状容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、外部からの酸素などの気体の混入、あるいは内部からの有効成分もしくは香気成分の脱着による劣化から内容物を保護するため、アルミニウムなどのバリア材を含むラミネートフィルムをシールして成形した筒状体、あるいはバリア材を含む熱可塑性樹脂を環状ダイより共押出して成形した多層の筒状体にポリオレフィン系樹脂よりなる口頭部を接合してチューブ容器を作る方法、すなわち2ピースチューブ状容器製造方法は、実開昭49−115346号公報などにより紹介されている。更に以下の方法も公知である。
【0003】
(1)射出成形法 射出成形金型に予め成形した胴部となる筒状体を挿入した状態で、口頭部となる樹脂を射出成形すると同時に口頭部と筒状胴部を熱接合してチューブ状容器を作る方法。
【0004】
(2)ディスク成形法 口頭部となる樹脂を押出成形法でシートを作製し、ついで円盤状に打抜くと同時に予め作製した筒状胴部を押圧して口頭部と筒状胴部を熱接合してチューブ状容器を作る方法。
【0005】
(3)圧縮成形法 可塑化した口頭部となる樹脂を雌金型に投入し、併せて予め成形した胴部となる筒状体を雄金型に入れ押圧して、口頭部を成形すると同時に口頭部と筒状胴部を熱接合してチューブ状容器を作る方法(特公昭64−7850号)。
【0006】
(4)バリア材を含む熱可塑性樹脂を共押出してパリソンを成形後、金型内でブロー成形してチューブ状容器を作成する方法、すなわち1ピースチューブ容器の製造方法(特公昭57−57338号)。
【0007】
ここに挙げた各成形法において、(4)を除く2ピースチューブ状容器の口頭部は、通常ポリオレフィン系樹脂で成形されているためにバリア性は不十分である。しかし肩部をバリア樹脂のみで成形する方法は、バリア樹脂の強度が不十分であるため成形品が割れやすく実用に耐えない。また該用途に使用されるようなバリア樹脂は一般的に高価であるためコスト的にも適当でない。また前記口頭部のバリア性を改善するためにアルミニウム箔などのバリア材を貼付する方法や、多段射出成形などの方法でポリオレフィン系樹脂と熱可塑性バリア樹脂との多層体を形成する方法は、工程が複雑となりコストアップは免れない。
【0008】
前記(2)のディスク法では、口頭部を形成するための押出シートとしてバリア樹脂を含む多層シートを用いることでバリア化が可能であるが、多層であるがゆえに工程が複雑となり、打抜き時のヒケや、打抜き後のスクラップ発生などの問題がある。また(4)の1ピースチューブ状容器は、ブロー成形時の割金型のウェルドライン発生や口頭部のネジ部分などの寸法精度に劣りまた外観が美麗でない。
【0009】
これらの課題を解決するための手段として、特開平6−80150号公報には、ポリオレフィン系樹脂を最内層とした筒状胴部と、ポリオレフィン系樹脂、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、及び融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物により形成された口頭部からなるチューブ容器に関する記載がある。
【0010】
また特開平9−240696号公報には、最内層がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる筒状胴部と、ポリオレフィン系樹脂、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、及び融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物により形成された口頭部からなるチューブ容器に関する記載がある。
【0011】
しかし前者は、口頭部のマトリックス相および筒状胴部の最内層が一致するときには口頭部と胴部の接着力が発現するが、そうでないとき、すなわち口頭部のマトリックス相と胴部最内層が異なる樹脂のときには接着性が発現していない。また後者はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が筒状胴部の最内層に存在しかつ口頭部のマトリックス相がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のときのみに限定されており、筒状胴部の最内層にポリオレフィン系樹脂を用いた場合、及び口頭部マトリックスがポリオレフィン系樹脂である場合には接着性が大きく低下している。すなわち、口頭部のマトリックス相と筒状胴部の最内層が一致しない限り口頭部と胴部の接合力は発現していない。
【0012】
近年、バリア性を有するチューブ状容器の用途拡大に伴い、筒状胴部最内層がポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のいずれであっても接合力およびバリア性を同時に発現する口頭部のニーズが極めて高くなっている。
【0013】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術の欠点を解決するものであり、2ピースチューブ状容器において、次のような課題1)〜4)を解決することを目的としている。
1)口頭部と筒状胴部との接合力改善
2)筒状胴部最内層がポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のいずれでも接合力が発現すること
3)口頭部の強度改善
4)口頭部の外観改善
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)5〜60重量%、ポリオレフィン樹脂(B)35〜80重量%、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)1〜20重量%、およびエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)1〜20重量%からなる樹脂組成物よりなり、筒状胴部と接合されてチューブ状容器を構成する、チューブ状容器の口頭部が、強度、胴部との接合性、外観の改善の点で有効であり、さらに驚くべきことに、本組成物は成形して口頭部とした際のマトリックス相と筒状胴部の最内層の成分が異なる場合においても十分な接合強度を有することを見出した。
【0015】
かかる接合強度の発現理由はいまだ明らかでないが、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相容化剤として機能している、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)に対しエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の存在が(A)と(B)の相容性を強化することで、口頭部を形成する組成物内においてマトリックス相とドメイン相となる成分の各々を胴部との接着部表面に交互に偏析させ、かつ口頭部の層内剥離による接合強度低下を抑える働きを示しているものと考えられる。また口頭部の強度、外観が改善される理由についても、(D)の存在が(C)との相乗作用により組成物の相容性を強化しているためと考えられる。
【0016】
このとき、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)とエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の合計配合量が5〜30重量%であり、かつ(C)、(D)の配合重量比が下記式(1)を満足することが好適である。
0.3≦(C)/(D)≦5 (1)
また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)がランダム共重合体であることも好適である。
さらに、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)のSP値(Fedorsの式より算出)をそれぞれSP(C)、SP(D)としたとき、下記式(2)を満足することも好ましい。
|SP(C)−SP(D)|≦1.0 (2)
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の口頭部は、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)、およびエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)からなる樹脂組成物よりなるものである。
【0018】
本発明におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の融点は135℃以上、好ましくは135〜195℃、更に好ましくは150〜185℃であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)の融点は130℃以下、好ましくは85〜125℃である。(A)の融点が135℃を下回る場合、あるいは(C)の融点が130℃を上回る場合には、前記口頭部のバリア性、胴部との接合力に劣る。また(A)の融点の上限は195℃であることが好ましく、かつ(C)の融点は85℃以上であることが好ましい。(A)の融点の上限値あるいは(C)の融点の下限値が前記範囲を外れた場合、口頭部の溶融成形性、外観および胴部との接合力にやや劣る。
【0019】
本発明における融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のエチレン含量は20〜60モル%であり、好ましくは25〜55モル%、更に好ましくは27〜50モル%である。エチレン含量が20モル%未満では口頭部の強度が低下し、溶融成形性や胴部との接合性も悪化する。また60モル%を越えると十分なガスバリア性が得られない。一方、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)のエチレン含量は60〜99モル%であり、好ましくは70〜97モル%、更に好ましくは77〜90モル%である。前記範囲を外れた場合、組成物の相容性が極端に低下し、組成物の強度の低下、層内剥離による胴部との接合力の低下がおきる。
【0020】
本発明に用いられる融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のケン化度は、95%以上、好ましくは97%以上、更に好ましくは99%以上であり、また融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)のケン化度は20%以上、好ましくは45%以上であり、更に好ましくは70〜99%である。(A)および(C)のケン化度が前記範囲を外れた場合には口頭部のバリア性および胴部との接合性に劣る。
【0021】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)および(C)のメルトフローレート(MFR)はいずれも0.5〜50g/10分の範囲であり、特に(A)のMFRを3.0〜40g/10分、(C)のMFRを2.0〜20g/10分の範囲とすることが、口頭部のバリア性、溶融成形性、外観の点で好ましい。なお、前記(A)および(C)は、本発明の作用、効果を損なわない範囲で、他のコモノマーが共重合されたものであっても良い。
【0022】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)はエチレン、プロピレン等のα−オレフィンからなる重合体であれば特に限定されるものではない。具体的には、高密度、中密度あるいは低密度のエチレンの単独重合体;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合したポリエチレン;プロピレンの単独重合体;エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合したポリプロピレン;ポリ1−ブテン;ポリ4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
また、これらのポリオレフィンは酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等の少量の共重合成分を含むものであっても構わないが、このような官能基を有する共重合成分を含まないポリオレフィンを用いる場合に本発明の目的はより効果的に達成される。
なお、不飽和カルボン酸を共重合成分に含むポリオレフィンは本発明のポリオレフィン(B)からは除かれる。それ自体エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)との相溶性が良好であるので、本発明の構成を採用する必要がないからである。
【0023】
該ポリオレフィン樹脂(B)としては、口頭部の強度、溶融成形性の面から密度(JISK7112)が0.930g/cm3を超える中ないし高密度ポリエチレンがもっとも好ましいが、口頭部に柔軟性を持たせる場合には密度が0.910 g/cm3を超える低密度ポリエチレンでも良い。該ポリオレフィン樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)が0.5〜30g/10分、好ましくは2.0〜20g/10分、最も好ましくは3.0〜15g/10分のものが溶融成形性、外観の点で好ましい。
【0024】
本発明で用いられるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)とは、エチレンと不飽和カルボン酸を共重合して得られる重合体、またはその金属塩のことを言う。不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0025】
(D)としてエチレン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩を用いる場合の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛などが例示され、特に亜鉛を用いた場合が、融点130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)に対する相溶性の点で好ましい。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属塩における中和度は、100%以下、好ましくは90%以下、さらに好ましくは70%以下の範囲が望ましい。
【0026】
本発明に用いるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の好適なMFRは、好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜30g/10分である。かかるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0027】
本発明に用いるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)としては、ランダム共重合体を用いることが胴部との接合性、外観の点で好ましい。ランダム共重合体またはその金属塩がグラフト共重合体に比べて優れている理由は明らかでないが、(D)はポリオレフィン樹脂(B)とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)の相容化剤として働いていることから、グラフト共重合体を用いた場合は(D)と(A)の相容性が局所的に向上して全体の相容性のバランスが多少劣るためと考えられる。
【0028】
また、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)のSP値(Fedorsの式より算出)をそれぞれSP(C)、SP(D)としたとき、下記式(2)を満足することが、胴部との接合性の点から好適である。かかる理由は必ずしも明らかではないが、組成物全体の相容性のバランスが、下記式(2)の範囲で良好となることで、マトリックスおよびドメイン樹脂の口頭部表面への交互偏析が発現するからではないかと推測される。
|SP(C)−SP(D)|≦1.0 (2)
より好適には下記式(2’)を、さらに好適には下記式(2”)を満足することが好ましい。
|SP(C)−SP(D)|≦0.8 (2’)
|SP(C)−SP(D)|≦0.6 (2”)
【0029】
本発明の樹脂組成物中の、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)、およびエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の各成分の配合量は、組成物の総重量に対してそれぞれ、(A)5〜60重量%、(B)20〜80重量%、(C)1〜20重量%、および(D)1〜20重量%である。
【0030】
本組成物における融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の含有量が60重量%を超えると、胴部最内層がポリオレフィン系樹脂である場合の接合力が発現されない。好適には50重量%以下であり、より好適には45重量%以下である。また5重量%を下回ると、胴部がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の時の接着性が発現しなくなるほか、組成物のバリア性が発現しにくくなる。好適には10重量%以上であり、より好適には20重量%以上である。
【0031】
本組成物における(B)の含有量が80重量%を超えると、胴部最内層がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物である場合の接合力が発現されない。好適には70重量%以下であり、より好適には60重量%以下である。また20重量%を下回ると、胴部最内層がポリオレフィン系樹脂である場合の接合力が発現されない。本組成物における(B)の含有量は35重量%以上である。
【0032】
本組成物における(C)の含有量が20重量%を超えると、胴部最内層の種類にかかわらず接合力が極端に低下する。好適には18重量%以下であり、より好適には15重量%以下である。また1重量%を下回ると組成物の相容性が極端に低下し、組成物の強度の低下、外観の不良、層内剥離による胴部との接合力の低下がおきる。好適には3重量%以上であり、より好適には5重量%以上である。
【0033】
本組成物における(D)の含有量が20重量%を超えた場合、あるいは1重量%を下回った場合、本組成物の特徴である、胴部最内層がポリオレフィン系樹脂あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のいずれにかかわらず接合力が発現するという特徴が発現されなくなる。好適には18重量%以下であり、より好適には15重量%以下であり、また好適には3重量%以上であり、より好適には5重量%以上である。
【0034】
また、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)とエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の合計配合量が5〜30重量%であり、かつ(C)、(D)の配合重量比が下記式(1)を満足することが胴部との接合性、強度、外観の点から特に好適である。
0.3≦(C)/(D)≦5 (1)
【0035】
(C)と(D)の合計配合量が5重量%未満の場合、口頭部の強度が低下し、また外観も悪化するという問題がある。好適には10重量%以上である。また、合計配合量が30重量%を超える場合、胴部の種類にかかわらず、胴部との接合性が低下するという問題がある。好適には25重量%以下であり、より好適には20重量%以下である。
また、(C)と(D)の配合重量比(C)/(D)が0.3未満の場合、(A)と(D)との相容性が低下し、口頭部の強度が低下し外観も悪化するという問題がある。好適には0.5以上である。また、(C)/(D)が5を超える場合、口頭部のマトリックス相が胴部最内層樹脂と異なる場合の胴部との接合性が発現しにくいという問題がある。好適には4以下であり、より好適には3以下である。
【0036】
本発明にかかる口頭部を形成する組成物のメルトフローレート(MFR)は0.5〜30g/10分、好ましくは1.0〜20g/10分、最も好ましくは2.0〜15g/10分となるように各成分を配合することが、溶融成形性の点で好ましい。なお、本発明でいうメルトフローレート(MFR)とは、温度190℃、荷重2160gの条件でJISK6760に準じて測定したものである。
【0037】
本発明の組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
【0038】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
【0039】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
【0040】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等。
【0041】
また、他の多くの高分子化合物を本発明の作用効果が阻害されない程度にブレンドすることもできる。
【0042】
本組成物の各成分をブレンドする方法に関しては、特に限定されるものではなく、該熱可塑性樹脂ペレットをドライブレンドしてそのまま成形に供することもできるし、より好適にはバンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出し機などで混練し、ペレット化してから成形に供することもできる。分散状態を均一なものとするためには、混練ペレット化操作時に混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが望ましい。
【0043】
本発明においては、口頭部を構成する組成物の酸素透過係数を5×10-11cc・cm/cm2・sec・cmHg以下、特に3×10-11cc・cm/cm2・sec・cmHg以下とすることが、内容物の空気による劣化防止、内容物の香気成分の脱着防止、すなわちバリア性の点で好ましい。
【0044】
本発明においては、口頭部を形成する組成物が、融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)がマトリックス相、ポリオレフィン系樹脂(B)が分散相であるとき、(B)がマトリックス相、(A)が分散相であるときのどちらの場合にも、胴部との接合性およびバリア性を発現することができる。前者の場合、バリア性が発現する理由は自明である。後者の場合、バリア性が発現される理由としては、特開平6-80150号公報に述べられているように、マトリックス中に分散相(A)が押出ないし射出方向に二次元的に層状に配向するためである。
【0045】
次に本発明のチューブ状容器において、前記口頭部と熱接合する筒状胴部の最内層に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。
また口頭部を構成する成分とは必ずしも一致する必要はなく、あるいは二成分以上の組成物であってもよい。熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン系樹脂あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いることが好ましい。
【0046】
かかる最内層に用いられるポリオレフィン系樹脂としては密度が0.945g/cm3以下、好ましくは0.940g/cm3以下、更に好ましくは0.930g/cm3以下の低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを一種あるいは二種以上混合して用いることが、口頭部との接合性、チューブ容器底部の熱溶着性、絞り出し性、エアバック防止性の点で望ましい。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂を最内層に用いる場合の胴部の層構成は特に限定されるものではないが、前記ポリオレフィン系樹脂を内層に、バリア材のアルミニウム箔、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、あるいはポリ塩化ビニリデンをコーティングした延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルム、あるいは無機物を蒸着したバリア性のあるフィルムなどを中間層とし、好ましくはポリエチレン系樹脂を外層とした多層構成が好ましい。
【0048】
またエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を最内層に用いる場合は、エチレン含有量が25モル〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、ケン化度は95%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上のものが用いられる。かかるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は酸素バリア性、フレーバーバリア性の点で優れている。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は香気吸着防止性にも優れており、胴部最内層に用いることで、内容物中の香気成分の収着を防ぐことができる。
【0049】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を最内層に用いる場合の胴部の層構成は特に限定されるものではないが、中間層を延伸ポリアミドフィルムや延伸ポリエステルフィルムなどとし、外層をエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物もしくはポリオレフィン系樹脂とした多層構成などがある。また最内層のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物に他の添加剤や樹脂を配合することは、本発明の効果を損なわない限り自由である。
【0050】
口頭部と接合される胴部は、フィルムをドライラミネート後、筒状にシールして形成するか、胴部を構成する素材が全て熱可塑性樹脂の場合には共押出成形法にてTダイを用いてフィルムないしシートを作成後、筒状にシールするか、あるいは環状ダイを用いて直接筒状胴部を成形するなどの方法で得ることができる。
【0051】
本発明にかかる組成物を用いてチューブ状容器を作成する方法としては、前記した射出成形法、ディスク成形法、圧縮成形法など公知の成形法が採用できる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これにより何ら限定されるものではない。
本発明における各種試験方法は以下の方法にしたがって行った。
【0053】
・バリア性(酸素透過係数)
樹脂組成物をTダイにより240℃にて溶融押出して厚み100μのフィルムを作成した後、絶乾状態とし、モダン・コントロール社(米国)製Ox‐Tran10/50型酸素透過率測定装置を用いて温度20℃、0%RHの条件でJISK7126に準じて酸素透過係数( cc・cm/cm2・sec・cmHg )を求めた。
【0054】
・熱接合性
チューブ胴部を15mm幅で縦方向に二ヶ所、それぞれが対向するように、口頭部との接合部分まで切り取り、20℃、65%RHにて一週間湿度状態を調節後、前記胴部切開部分の各端部を引張試験機に取り付け、20℃、65%RHで引張り速度50mm/分の条件で剥離強度を求めた。一般に胴部と肩部の接合力は3kg/15mm幅以上が合格であるとされている。胴部の最内層がPEである場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物である場合の接着力を測定し、表1の基準より評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
・強度
20℃、65%RHの室内で、チューブ状容器のキャップ開閉を50回繰り返し、口頭部ネジ部の欠け、クラック発生状況を目視及びルーペで観察し、表2の基準より評価した。
【0057】
【表2】
【0058】
・外観
成形品の表面状態(凹凸、荒れ)をルーペで観察し、表3の基準より判定した。
【0059】
【表3】
【0060】
・口頭部切断面の分散状態
成形品の断面を、成形時の流れ方向および流れに垂直な方向から光学顕微鏡で観察し、口頭部のマトリックス相の種類およびドメイン相の形状を観察、表4の基準により判定した。なおマトリックス相の種類は、光学顕微鏡での観察時にヨウ素で(A)を染色することで判別した。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例1〜13
本実施例(以降の実施例、比較例でも同様)で使用した樹脂(A)、(B)、(C)および(D)は、それぞれ下記の表5、表6、表7および表8に示したものを用いた。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
また、本実施例(以降の実施例、比較例でも同様)で使用した筒状胴部の構成は、外側から低密度ポリエチレンフィルム(密度0.920g/cm3)200μ/接着性樹脂10μ/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(エチレン含有量47モル%、ケン化度99.5モル%)30μ(最内層)、の三層構成品および、外側から低密度ポリエチレンフィルム(密度0.920g/cm3)120μ/接着性樹脂10μ/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5モル%)30μ/接着性樹脂10μ/低密度ポリエチレンフィルム(密度0.920g/cm3)120μ(最内層)の二種類である。
【0068】
表9の実施例1〜13に記載の各樹脂をタンブラーで予備混合後、ニーディングディスクを有する30mmφの2軸押出機(日本製鋼所製TEX30:L/D=30)を用いてシリンダー温度をフィード下部を190℃、混練部及びノズル付近を210℃に設定し、押出機のローターの回転数は610rpm、フィーダーのモーター回転数250rpmで、溶融混練しペレットを得た。次に口径45mmφ圧縮成形用チューブ容器成形機(AISA社製PTH-80型成形機)に前記ペレットを供給し、一方、同成形機の金型に筒状胴部を供給して圧縮成形法によりチューブ状容器を作製した。このとき圧縮成形機のシリンダー温度は245℃、ノズル温度は230℃とした、また金型温度は50℃となるよう調節した。当該チューブ状容器の熱接合部の外径45mmφ、口頭部の絞り出し部の外径12mmφ、内径10mmφとし、口頭部の肉厚を1mmとした。
【0069】
比較例1〜10
表9の比較例1〜10に記載の樹脂組成物を用いて、実施例1〜13と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0070】
実施例14〜21
表10の実施例14〜21に記載の口頭部形成用組成物を、実施例1〜13と同様の方法でペレット化した。次に口径35mmφ射出成形用チューブ容器成形機に前記ペレットを供給し、一方、同成形機の金型に筒状胴部を供給して射出成形法によりチューブ状容器を作製した。このとき射出成形機のシリンダー温度は245℃、ノズル温度は230℃とした、また金型温度は50℃となるよう調節した。当該チューブ状容器の熱接合部の外径35mmφ、口頭部の絞り出し部の外径10mmφ、内径8mmφとし、口頭部の肉厚を1mmとした。
【0071】
比較例11〜18
表10の比較例11〜18に記載の組成物を実施例14〜21と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0072】
【表9】
【0073】
【表10】
【0074】
【発明の効果】
本発明のチューブ状容器は、口頭部と胴部の接合性およびバリア性、口頭部の強度、外観に優れており、医薬品、食品、化粧品、練歯磨などの日用品などが充填されるチューブ状容器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作成したチューブ状容器を示した図である。
【符号の説明】
1 筒状胴部
2 口頭部
3 筒状胴部と口頭部の熱接合部
4 底部シール部
Claims (6)
- 融点が135℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)5〜60重量%、ポリオレフィン樹脂(B)35〜80重量%、融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)1〜20重量%、およびエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)1〜20重量%からなる樹脂組成物よりなり、筒状胴部と接合されてチューブ状容器を構成する、チューブ状容器の口頭部。
- 樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(B)の含有量が40〜80重量%である請求項1記載のチューブ状容器の口頭部。
- 融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)とエチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)の合計配合量が5〜30重量%であり、かつ(C)、(D)の配合重量比が下記式(1)を満足する請求項1又は2記載のチューブ状容器の口頭部。
0.3≦(C)/(D)≦5 (1) - エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)がランダム共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のチューブ状容器の口頭部。
- 融点が130℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(D)のSP値(Fedorsの式より算出)をそれぞれSP(C)、SP(D)としたとき、下記式(2)を満足する請求項1〜4のいずれかに記載のチューブ状容器の口頭部。
|SP(C)−SP(D)|≦1.0 (2) - 請求項1〜5のいずれかに記載の口頭部と、熱可塑性樹脂を最内層とする筒状胴部を接合してなるチューブ状容器。
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