JP4727016B2 - ガソリンバリア性に優れた燃料容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高いガソリンバリア性を有する燃料容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素類、例えばガソリンを保存するための容器として、プラスチック製の共押出ブロー成形容器が近年好適に用いられており、その一例として自動車用燃料タンクが挙げられる。また、プラスチックとしてはポリエチレン(特に超高密度ポリエチレン)が経済性、成形加工性、機械的強度等の点で期待されている。しかし、ポリエチレン製燃料タンクは、保存されるガソリンの気体または液体が容器のポリエチレンの壁を通して大気中に揮散しやすいという欠点を有することが知られている。
【0003】
そこで、かかる欠点を解消するため、ポリエチレン製容器にハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素)あるいは三酸化硫黄(SO3)などを容器に吹き込み、容器内面をハロゲン化あるいはスルホン化する方法が開示されている。また、ポリアミド樹脂とポリエチレン樹脂とを多層化する方法が開示されている(特開平6−134947号公報、USP5441781)。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂とポリエチレン樹脂とを多層化する方法も知られている(USP5849376、EP759359)。また、ガソリンバリア性を向上させるために、バリア層を内層寄りにした多層燃料タンクも知られている(特開平9−29904号公報、EP742096)。
【0004】
しかしながら上記の方法で製造した燃料容器においてもガソリン透過量の抑制は完全なものとは言えず、近年ガソリンの消費量節約、高性能化、地球環境保護のために、より透過量を低減する方法が望まれている。
【0005】
また、上記燃料容器の好適な態様として自動車用燃料タンクが挙げられる。自動車用燃料タンクは、一般的に、給油口、エンジン、キャニスター等と配管を通して接続されなければならない。このため、タンクと各種配管とを接続するためにタンク本体の胴部に開口部を設け、タンクと各種配管を接合させるための燃料容器用付属部品(燃料タンク用コネクターなど)を装着することが多い。従来、かかる燃料容器用付属部品はほとんどが高密度ポリエチレン製であり、これまで、燃料容器用付属部品からの燃料の透過量が問題とされたことはなかった。
【0006】
しかしながら、燃料容器からの燃料透過量の抑制が要求されるレベルは近年、高まる一方である。そこで、本発明者らは、燃料容器用付属部品の装着部分における燃料の透過量の削減を目指し、詳細な検討を行った。
【0007】
その結果、本発明者らはEVOHを含有する樹脂組成物からなる燃料タンク用付属部品を開発し(特願平11−172151号、特願平11−172152号)、燃料容器用付属部品からの燃料透過量の大幅な削減を達成した。
【0008】
しかしながら、EVOHを含有する樹脂組成物が有するガソリンバリア性と、従来から燃料容器用付属部品の材料として用いられていた高密度ポリエチレンが有するガソリンバリア性の差を考慮して計算上求められるガソリンバリア性の改善効果に対して、現実に得られるガソリンバリア性の改善効果は計算値よりも小さいものであった。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いガソリンバリア性を有する燃料容器を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有する燃料容器において、ピンチオフ部の対向するバリア性樹脂(A)層間に存在する層の切断面をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器によって解決される。
【0020】
好ましい実施態様では、本発明で用いられるバリア性樹脂(A)のガソリン透過量が100g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下である。
【0021】
また、好ましい実施態様では、本発明で用いられるバリア性樹脂(A)がポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドおよび脂肪族ポリケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0022】
さらに、好ましい実施態様では本発明の燃料は、内層を構成する熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィンであり、好適には密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンである。
【0023】
好ましい実施態様では、本発明に用いられるバリア材(C)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)が熱可塑性樹脂(B)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)の0.1倍以下である。
【0024】
また、好ましい実施態様では、本発明に用いられるバリア材(C)のガソリン透過量が400g・20μ/m2・day(20℃−65%RHで測定した値)以下である。
【0025】
さらに、好ましい実施態様では本発明で用いられるバリア材(C)が金属箔、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
好適な実施態様では、本発明の燃料容器はバリア性樹脂(A)からなる中間層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内外層を有する。
【0027】
好適な実施態様では、本発明の燃料容器はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる層が接着性樹脂層を介して積層されてなる。
【0028】
好適な実施態様では、本発明の燃料容器は容器胴部において、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と全層厚み(T2)との比(T1/T2)が45/100以下である。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有する燃料容器において、ピンチオフ部をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器に関する。
【0030】
燃料容器は、好適には共押出ブロー成形により成形される。ブロー成形によるプラスチック容器の製造法においては、溶融押出によりパリソンを形成し、このパリソンを一対のブロー成形用金型で挟持し、パリソンの喰切を行うと共に対抗する喰切部を融着させ、ついで喰切が行われたパリソンを前記金型内で膨張させることにより容器の形に成形する。ただし、自動車用燃料タンクなど、容器の大きさが大きくなる場合は金型によりパリソンを挟持し、圧着を行うが、金型で喰切は行わず、容器表面からからはみ出た部分を任意の高さでカッターなどで切断することが多い。上記の融着させて結合された部分がピンチオフ部であり、上記に示した、金型で喰切られた切断面またはカッターなどで切断された面がピンチオフ部の切断面である。ピンチオフ部は容器壁の厚さ方向に突出した先細り状の突条を形成する。
【0031】
かかる共押出ブロー成形により得られる燃料容器にピンチオフ部のヒートシール強度、力学的強度および優れたガソリンバリア性を付与するためには、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有することが好ましい。かかる燃料容器は、バリア性樹脂(A)が有するガソリンバリア性により、優れたガソリンバリア性を有するが、実際に成形される燃料容器からの燃料の透過量は、バリア性樹脂(A)が有するガソリンバリア性から算出される計算値よりも大きなものだった。本発明者の詳細な検討の結果、かかる共押出ブロー成形燃料容器からのガソリンの透過は、該容器のピンチオフ部において特に顕著であることが初めて明らかとなった。
【0032】
これに対し、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有する燃料容器において、ピンチオフ部をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器を用いることにより、これまで着目されていなかった燃料容器のピンチオフ部からの燃料の透過を極めて効果的に抑制できることを見出した。
【0033】
また、本発明はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有する容器の胴部に設けられた開口部の切断面をバリア材(C)で被覆してなる燃料容器に関する。
【0034】
さらに、本発明はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝の内面がバリア材(C)で被覆されてなることを特徴とする燃料容器に関する。また、本発明はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝がバリア材(C)で充填されてなることを特徴とする燃料容器に関する。
【0035】
前述の通り、本発明者らはこれまで燃料容器からの燃料透過量を抑制するために、バリア性を付与した燃料容器用付属部品を提案していた。ところが、かかる燃料容器用付属部品を用いた場合においても完全な燃料透過の抑制は達成されておらず、未だ改良の余地が残されていた。かかる現象について本発明者らがさらに鋭意検討を行った結果、燃料容器用付属部品が装着された燃料容器本体の胴部の開口部の切断面のバリア性樹脂(A)より外側に存在する熱可塑性樹脂(B)を通過して、燃料の透過が発生していることが明らかとなった(図1参照)。
【0036】
これまで、容器胴部に設けられた開口部に取り付けられる燃料容器用付属部品は一般にガソリンバリア性に乏しい高密度ポリエチレンで作られていたため、燃料容器の胴部に設けられた開口部の切断面からの燃料の透過については全く省みられてこなかった。しかし、本発明者らの研究の結果、燃料容器用付属部品にバリア性を付与する場合などの、燃料容器全体において極めて高度な燃料透過量の抑制を達成する必要がある場合には、開口部の切断面からの燃料の透過を効果的に抑制する必要があることが明らかとなり、鋭意検討の結果、本発明を完成させるに至った。
【0037】
すなわち、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有する容器の胴部に設けられた開口部の切断面をバリア材(C)で被覆してなる燃料容器を用いることにより、かかる開口部の切断面からの燃料の透過を効果的に抑制することが可能となり、極めてガソリンバリア性に優れた燃料容器が提供できるようになった。さらに、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝の内面がバリア材(C)で被覆されてなることを特徴とする燃料容器、およびバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝がバリア材(C)で充填されてなることを特徴とする燃料容器を用いることによっても、極めてガソリンバリア性に優れた燃料容器が提供できるようになった。
【0038】
本発明に用いられるバリア性樹脂(A)とは、本発明の燃料容器に充填される燃料に対して、バリア性を有する樹脂である。(A)以外の熱可塑性樹脂(B)を内層および/または外層とする多層容器に用いられるため、バリア性樹脂(A)は熱可塑性樹脂であることが好ましい。かかるバリア性樹脂(A)としては、ガソリン透過量が100g・20μm/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることが好ましい。ガソリン透過量の上限はより好適には10g・20μm/m2・day以下であり、さらに好適には1g・20μm/m2・day以下であり、特に好適には0.5g・20μm/m2・day以下であり、最適には0.1g・20μm/m2・day以下である。ここでガソリン透過量の測定に用いられるガソリンは、Ref.Cと呼ばれるトルエン/イソオクタン=1/1の体積分率で混合されるモデルガソリンである。
なお、本発明は、燃料容器に充填される燃料がメタノールなどのアルコールを含有するアルコール含有ガソリンや、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)含有ガソリンなどの、いわゆる含酸素ガソリンであっても優れた効果を発揮する。
【0039】
また、本発明に用いられるバリア性樹脂(A)として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドおよび脂肪族ポリケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることも好適である。
【0040】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体、特にエチレンとビニルエステルとの共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0041】
また、本発明のポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には99%以上である。ケン化度が90モル%未満では、ガソリンバリア性が不充分になる虞がある。
なおここで、ポリビニルアルコール系樹脂がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。かかるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0042】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂としては、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好であり、かつ優れたガソリンバリア性を有する観点から、エチレンとの共重合体(EVOH)が好適である。
【0043】
EVOHのエチレン含有量は5〜60モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化する虞がある。EVOHのエチレン含有量の下限は好適には10モル%以上であり、より好適には15モル%以上、最適には20モル%以上である。エチレン含有量の上限は好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。エチレン含有量が60モル%を超えると充分なガスバリア性が得られない虞がある。また、ビニルエステル成分のケン化度は85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上のものが使用できる。ビニルエステル成分のケン化度が85%未満では、ガソリンバリア性、熱安定性が悪くなる虞がある。かかるEVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0044】
なおここで、EVOHがエチレン含有量あるいはケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量あるいはケン化度とする。
ただし、2種類のEVOHを配合する際には、両者のエチレン含有量の差が15モル%以下であり、かつケン化度の差が10%以下であることが好ましい。これらの条件から外れる場合には樹脂組成物層のガソリンバリア性が損なわれてしまう虞がある。良好なガソリンバリア性を得る観点からはエチレン含有量の差はより好適には10モル%以下であり、さらに好適には5モル%以下である。また、同様に良好なガソリンバリア性を得る観点からケン化度の差はより好適には7%以下であり、さらに好適には5%以下である。
【0045】
また、ポリビニルアルコール系樹脂、特にEVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で他の単量体を少量共重合することもできる。共重合できる単量体の例としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0046】
なかでも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、共押出成形あるいは共射出成形する際の基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形体の製造が可能である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0047】
さらに、EVOHがホウ素化合物を含有する場合にも、EVOHの溶融粘性、熱安定性およびロングラン性が改善され、均質な共押出あるいは共射出成形体を安定して得られる点で有効である。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもホウ酸が好ましい。
ホウ素化合物の含有量はホウ素元素換算で20〜2000ppm、望ましくは50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0048】
また、本発明のEVOHに対し、アルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm含有させることも層間接着性や相容性の改善のために効果的であることから好ましい。
アルカリ金属塩のより好適な含有量はアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、さらには30〜750ppmである。ここでアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどがあげられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
【0049】
また、本発明のEVOHに対し、リン酸化合物をリン酸根換算で10〜500ppm含有させることも好ましく、リン酸化合物を適切な範囲で添加することにより、成形物の着色およびゲル・ブツの発生を抑制することが可能である。リン酸化合物の添加による上記の改善効果はEVOHからなる樹脂組成物ペレットを用いたロングラン成形時および成形物の回収時に特に顕著である。リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が例示されるが、これらに限定されない。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。
【0050】
リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で下限は50ppm以上が好ましく、より好ましくは70ppm以上であり、上限は300ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましい。かかる範囲のリン酸化合物を含有することで、より着色が少なく、ゲル化しにくいEVOHからなる樹脂組成物ペレットを得ることができる。リン酸化合物の含有量が10ppm未満の場合は、溶融成形時の着色が激しくなる虞がある。特に、熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著であるために、該樹脂組成物ペレットを成形して得られた成形物が、回収性に乏しいものとなる虞がある。また、リン酸化合物の含有量が500ppmを超える場合は成形物のゲル・ブツの発生しやすくなる虞がある。
【0051】
また、本発明に用いるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.01〜100g/10分、より好適には0.05〜50g/10分、さらに好適には0.1〜10g/10分である。
【0052】
また、本発明の目的を阻外しない範囲で熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)をEVOH樹脂にブレンドすることもできる。
【0053】
本発明のバリア性樹脂(A)として用いられるポリアミドは、アミド結合を有する重合体であって、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)の如き単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸重合体(ナイロン−6,9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,12)、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとの重合体、あるいはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との重合体である芳香族系ナイロンなどが挙げられる。これらのポリアミドは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0054】
これらのポリアミドの中でも、ナイロン−6がガソリンバリア性の観点から好適である。
【0055】
本発明のバリア性樹脂(A)として用いられる脂肪族ポリケトンとは、一酸化炭素−エチレン系共重合体であり、一酸化炭素−エチレン共重合体としては、一酸化炭素とエチレンとを共重合して得たもの、または一酸化炭素とエチレンを主体とし、これにエチレン以外の不飽和化合物を共重合して得たものが挙げられる。ここで、エチレン以外の不飽和化合物としては、炭素数3以上のα−オレフィン、スチレン、ジエン、ビニルエステル、脂肪族不飽和カルボン酸エステルなどがあげられる。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体などがあげられるが、結晶性が高くなる交互共重合体がバリア性の面で好ましい。
【0056】
交互共重合体のなかでは、一酸化炭素あるいはエチレン以外の第3成分による共重合が施されている方が、融点が低下するので、溶融安定性の観点から好ましい。共重合される単量体のうち好適なものとしてα−オレフィンがあげられ、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ドデセン−1などがあげられるが、なかでも炭素数3〜8個のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好適である。これらα−オレフィンの共重合量はポリケトンに対して0.5〜7重量%であることが、適当な結晶性と溶融安定性を確保できる観点から好ましい。
【0057】
また、共重合されるジエンとしては炭素数4〜12個のものが好ましく、ブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどがあげられる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、などがあげられる。脂肪族不飽和カルボン酸、その塩およびそのエステルとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル(これらのエステルとしてはメチルエステル、エチルエステルなどのアルキルエステルなど)、アクリル酸塩、マレイン酸塩、イタコン酸塩(これらの塩としては1価または2価の金属塩など)があげられる。これらの共重合単量体は一種のみでなく、二種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0058】
ポリケトンの製造方法としては、公知の方法、例えば、米国特許第2,495,286号および特開昭53−128690号、特開昭59−197427号、特開昭61−91226号、特開昭62−232434号、特開昭62−53332号、特開昭63−3025号、特開昭63−105031号、特開昭63−154737号、特開平1−149829号、特開平1−201333号、特開平2−67319号などに記載されている方法があげられるが、特にそれに制限されるものではない。
【0059】
本発明に用いるポリケトンの好適なメルトフローレート(MFR)は、0.01〜50g/10分(230℃、2160g荷重下)、最適には0.1〜10g/10分である。MFRが前記範囲にある場合、樹脂の流動性は優れ、さらに成形加工性も優れたものとなる。
【0060】
これらの樹脂の中でも、本発明に用いられるバリア性樹脂(A)としてはガソリンバリア性の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂およびポリアミドが好適であり、EVOHが特に好適である。
【0061】
また本発明において内層および/または外層として用いられる熱可塑性樹脂(B)としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独またはその共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレンが好ましく用いられる。
【0062】
中でも、本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)として密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンを用いることが好ましい。密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンは通常市販品の中から適宜選択して使用することができるが、中でも剛性、耐衝撃性、成形性、耐ドローダウン性、耐ガソリン性等の観点から、かかる密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンの密度は0.95〜0.98g/cm3であることがより好ましく、さらに好ましくは0.96〜0.98g/cm3である。また、密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が0.01〜0.5g/10分(190℃、2160g荷重下)であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1g/10分(190℃、2160g荷重下)である。
【0063】
また、本発明の燃料容器は、バリア性樹脂(A)からなる層に対して熱可塑性樹脂(B)からなる内層および/または外層を、接着性樹脂層を介して積層してなることが好適である。かかる接着性樹脂層としては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好適なものとして用いられる。
【0064】
本発明に用いられるカルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とからなる共重合体のことをいい、分子中にカルボキシル基を有するポリオレフィンおよびポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在しているものも含まれる。カルボン酸変性ポリオレフィンのベースとなるポリオレフィンとしては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)など)、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の各種ポリオレフィンが挙げられるが、このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55重量%)、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35重量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。
【0065】
不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸無水物としては無水イタコン酸、無水マレイン酸等が例示され、特に無水マレイン酸が好適である。不飽和カルボン酸無水物の含有量としては、好ましくは0.0001〜5モル%、より好ましくは0.0005〜3モル%、更に好ましくは0.001〜1モル%である。また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0066】
カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が例示される。カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における中和度は、100%以下、特に90%以下、さらに70%以下の範囲が望ましい。中和度の下限値については、通常5%以上、特に10%以上、さらには30%以上が望ましい。
【0067】
本発明に用いられるカルボン酸変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.05〜30g/10分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分である。これらのカルボン酸変性ポリオレフィンは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0068】
本発明で用いられるバリア材(C)とは、バリア性樹脂(A)と同様に燃料容器に充填された燃料に対し、バリア性を示すものを指す。好適には、本発明に用いられるバリア材(C)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)が熱可塑性樹脂(B)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)の0.1倍以下である。バリア材(C)のガソリン透過量の上限はより好適には熱可塑性樹脂(B)のガソリン透過量の0.05倍以下、さらに好適には0.01倍以下である。
【0069】
バリア材(C)のガソリン透過量が熱可塑性樹脂(B)のガソリン透過量の0.1倍を越えるとバリア材としての能力が不充分になる虞があり、ピンチオフ部および胴部開口部からの燃料の透過量の低減効果が不満足になる虞がある。
【0070】
また、本発明に用いられるバリア材(C)のガソリン透過量が400g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることも好ましい。ガソリン透過量が400g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)を超える場合は、バリア材としての能力が不充分になる虞があり、ピンチオフ部および胴部開口部からの燃料の透過量の低減効果が不満足になる虞がある。バリア材(C)のガソリン透過量は100g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることがより好ましく、50g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることがさらに好ましく、10g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることが特に好ましく、1g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下であることが最適である。
【0071】
また、本発明に用いられるバリア材(C)として、金属箔、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることも好適である。これらの中でも、取り扱いの観点から金属箔を用いることが好ましく、特にアルミテープのように、燃料タンク本体と接着性を有する基材に金属箔を積層する態様が好適である。金属箔としては特に限定されず、金属の蒸着膜、金属酸化物の蒸着膜も含まれるが、入手の容易性や取り扱いなどの観点から、アルミ箔が好適である。
【0072】
また、バリア材(C)が熱可塑性樹脂である場合は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、機械強度、成形性などの向上のために、他の熱可塑性樹脂を適量配合することは任意である。熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど)、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどが用いられる。
【0073】
本発明の燃料容器は、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有する燃料容器において、ピンチオフ部をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器である。また、本発明の燃料容器はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有する容器の胴部に設けられた開口部の切断面をバリア材(C)で被覆してなる燃料容器である。バリア材(C)による燃料容器のピンチオフ部の切断面および/または燃料容器本体の胴部に設けられた開口部の切断面の被覆方法は特に限定されない。
燃料容器本体と接着性を有するバリア材(C)を切断面に塗布した後に固化あるいは乾燥させる方法;燃料容器本体とバリア材(C)の双方に接着性を有する接着剤を切断面に塗布した後、バリア材(C)で切断面を被覆する方法;バリア材(C)と接着剤からなる積層体(例えばアルミテープなど)を用いて切断面を被覆する方法、バリア材(C)からなる成形物を切断面と熱融着により接合、あるいは接着剤を介して接合して切断面を被覆する方法などが挙げられる。なお、バリア材(C)からなる成形物は特に限定されないが、フィルムまたはシート、あるいは燃料容器用付属部品などが好適なものとして例示される。
【0074】
これらの被覆方法の中でも、作業の容易性の観点から、バリア材(C)を予め燃料タンク本体と接着性を有する基材に被覆し、かかる積層体(例えばアルミテープなど)を用いて切断面を被覆する方法、あるいはバリア材(C)からなる成形物を切断面と熱融着により接合、あるいは接着剤を介して接合して切断面を被覆する方法が好適である。
【0075】
また、該切断面をバリア材(C)からなる成形物、特に好適には燃料容器用付属部品で被覆する場合において、開口部の周囲の外表面をくり抜き、得られた凹部に成形物を熱融着させる態様も好適である(図4参照)。バリア材(C)からなる成形物としては、バリア材(C)からなる単層成形品を用いても良いし、バリア材(C)からなる層を少なくとも一層有する多層成形品を用いても良い。かかる実施態様にて切断面を被覆する場合、図5に示すような実施態様による切断面の被覆方法と比較して、熱融着を行う際の作業性の観点から特に好適である。
【0076】
当該凹部の深さは任意であるが、容器胴部平均全層厚み(T2)の0.1〜0.8倍であることが好ましい。当該凹部の深さの下限は容器胴部平均全層厚み(T2)の0.2倍以上であることがより好ましく、0.3倍以上であることがさらに好ましい。また、凹部の深さの上限は容器胴部平均全層厚み(T2)の0.75倍以下であることが好ましく、0.7倍以下であることがさらに好ましい。凹部の深さが容器胴部平均全層厚み(T2)の0.1倍に満たない場合は、ガソリンバリア性の改善効果が不満足になる虞がある。また、凹部の深さが容器胴部平均全層厚み(T2)の0.8倍を超える場合は、かかる凹部の周辺の燃料容器本体の機械強度が不満足になる虞がある。
【0077】
また、凹部の深さがバリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在している層の合計厚み(T1)の0.2倍以上1倍未満であることが、当該凹部を設けられた、容器胴部の開口部周辺の機械強度の観点から好ましい。凹部の深さの下限は(T1)の0.3倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましい。凹部の深さが(T1)の0.2倍に満たない場合は、ガソリンバリア性の改善効果が不充分なものとなる虞がある。バリア材(C)からなる成形物との熱融着性を得る観点からは、凹部の深さの上限は(T1)の0.999倍以下であることがより好ましく、0.995倍以下であることがさらに好ましく、特に熱融着性を重視する場合は0.99倍以下であることが好ましい。
【0078】
ガソリンバリア性を特に重視する場合は、凹部の深さは(T1)以上であることが好ましい。かかる実施態様においては、バリア性樹脂(A)より外側に存在する層からの燃料の透過経路をバリア材(C)で隙間無く塞ぐことが出来ることから、極めて優れたガソリンバリア性が得られる。しかしながら、凹部の深さを(T1)と等しくした場合はバリア性樹脂(A)が露出するため、バリア材(C)からなる成形物を熱融着して当該凹部の切断面を被覆する際において、熱融着性が不足する虞がある。また、凹部の深さが(T1)を超える場合は、該凹部周辺の機械強度が不充分になる虞がある。
【0079】
バリア材(C)を用いて本発明の燃料容器のピンチオフ部を被覆する場合は、ピンチオフ部の全体を被覆しても良く、一部を被覆しても良いが、本発明の効果を効率的に得る観点からは、ピンチオフ部の切断面全体を被覆することが好ましい。少なくとも、対向するバリア性樹脂(A)層間に存在する層の切断面をバリア材(C)で被覆してなることがガソリンバリア性を充分に得る観点から好ましい(図2参照)。ピンチオフ部全体の中でも、少なくともかかる部分を完全に被覆することにより、効果的にピンチオフ部からの燃料透過を抑制できる。
【0080】
同様に、バリア材(C)を用いて本発明の燃料容器の胴部に設けられた開口部の切断面を被覆する場合は、該切断面の全体を被覆しても良く、一部を被覆しても良いが、ガソリンバリア性を充分に得る観点からは、該切断面の内、少なくともバリア性樹脂(A)からなる層より外側に存在する層の切断面をバリア材(C)で被覆してなることが好ましい(図3参照)。切断面全体の中でも、少なくともかかる部分を完全に被覆することにより、燃料容器の胴部に設けられた開口部からの燃料透過を効果的に抑制できる。
【0081】
本発明の燃料容器は、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝の内面がバリア材(C)で被覆されてなることを特徴とする燃料容器である。また、本発明の燃料容器はバリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器において、開口部の周囲の外表面に溝が設けられ、かつ当該溝がバリア材(C)で充填されてなることを特徴とする燃料容器である。これらの、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる外層を有し、容器胴部に開口部が設けられている燃料容器の、開口部の周囲の外表面に設けられた溝の内面をバリア材(C)で被覆する方法、および溝をバリア材(C)で充填する方法も特に限定されない。
溝の内面をバリア材(C)で被覆する方法としては、燃料容器本体とバリア材(C)の双方に接着性を有する接着剤を切断面に塗布した後、バリア材(C)で溝の内面を被覆する方法;バリア材(C)と接着剤からなる積層体(例えばアルミテープなど)を用いて溝の内面を被覆する方法;燃料容器本体と接着性を有するバリア材(C)を溝の内面に塗布した後に固化あるいは乾燥させる方法;などが挙げられる。
【0082】
溝をバリア材(C)で充填する方法としては、燃料容器本体と接着性を有するバリア材(C)を溝に充填し、固化あるいは乾燥させる方法が好適である。この場合、バリア材(C)は疑似接着で接合されていても本発明の効果であるガソリンバリア性を発揮できるが、機械強度等の観点から燃料タンク本体は強固に接着していることが好ましい。燃料容器本体と接着性を有するバリア材(C)を溝に充填し、固化あるいは乾燥させる方法を用いた場合は、開口部にバリア材(C’)からなる燃料容器用付属部品を装着することがガソリンバリア性を充分に得る観点から特に好適である(図6参照)。バリア材(C’)からなる燃料容器用付属部品としては、バリア材(C’)からなる単層成形品を用いても良いし、バリア材(C’)からなる層を少なくとも一層有する多層成形品を用いても良い。
【0083】
また、溝をバリア材(C)で充填する方法として、バリア材(C)からなる成形物、特に好適には燃料容器用付属部品を当該溝に熱融着する方法も好適である。
【0084】
前述に示したような溝を設け、かかる溝の内面を被覆する場合、あるいは溝をバリア材(C)で充填する場合は、開口部の切断面を直接バリア材(C)で被覆する実施態様と比較して、バリア材(C)と燃料の直接接触を避けられる点から好適である。バリア材(C)は容器内の燃料に対してバリア性を示すために、直接接触による劣化は起こりにくいが、燃料の流路面に存在することで、長期間の使用時にバリア材(C)が物理的な力により剥離しやすくなる虞がある。
【0085】
また、バリア材(C)からなる燃料用付属部品を熱融着させることにより当該溝を充填する方法は、開口部の切断面にバリア材(C)からなる燃料用付属部品を熱融着させる実施態様(図5参照)よりも、熱融着を行いやすい観点から好適である。
【0086】
また、開口部の周囲の外表面に設けられた溝が、途切れなく開口部を囲んでいることが、燃料の透過経路を塞ぎ、効果的にガソリンバリア性を向上させられる観点から好適である。溝が途切れなく開口部を囲んでいる場合、溝に囲まれた部分の面積が、開口部の面積の1.1倍〜50倍であることが好ましい。溝を作成する際の加工性の観点から、溝に囲まれた部分の面積の上限は、開口部の面積の30倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることがさらに好ましく、5倍以下であることが特に好ましい。さらに、溝の形状は円形であることが、途切れなく開口部を囲む溝を作成することが容易な点から好ましい。
【0087】
かかる溝の深さは容器胴部平均全層厚み(T2)の0.1〜0.8倍であることが好ましい。溝の深さの下限は容器胴部平均全層厚み(T2)の0.2倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であることがさらに好ましい。また、溝の深さの上限は容器胴部平均全層厚み(T2)の0.75倍以下であることが好ましく、0.7倍以下であることがさらに好ましい。溝の深さが容器胴部平均全層厚み(T2)の0.1倍に満たない場合は、ガソリンバリア性の改善効果が不満足になる虞がある。また、溝の深さが容器胴部平均全層厚み(T2)の0.8倍を超える場合は、かかる溝の周辺の燃料容器本体の機械強度が不満足になる虞がある。
【0088】
また、溝の深さがバリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在している層の合計厚み(T1)の0.2倍以上1倍未満であることが、当該溝を設けられた、容器胴部の開口部周辺の機械強度の観点から好ましい。溝の深さの下限は(T1)の0.3倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましい。溝の深さが(T1)の0.2倍に満たない場合は、ガソリンバリア性の改善効果が不充分なものとなる虞がある。バリア材(C)からなる成形物との熱融着性を得る観点からは、溝の深さの上限は(T1)の0.999倍以下であることがより好ましく、0.995倍以下であることがさらに好ましく、特に熱融着性を重視する場合は0.99倍以下であることが好ましい。
【0089】
ガソリンバリア性を特に重視する場合は、溝の深さは(T1)以上であることが好ましい。かかる実施態様においては、バリア性樹脂(A)より外側に存在する層からの燃料の透過経路をバリア材(C)で隙間無く塞ぐことが出来ることから、極めて優れたガソリンバリア性が得られる。しかしながら、溝の深さを(T1)と等しくした場合はバリア性樹脂(A)が露出するため、バリア材(C)からなる成形物を熱融着して当該凹部の切断面を被覆する際において、熱融着性が不足する虞がある。また、溝の深さが(T1)を超える場合は、当該開口部周辺の機械強度が不充分になる虞がある。なお、バリア性樹脂(A)層は二層以上用いてもよく、かかる構成の際は、二層以上存在するバリア性樹脂(A)層の中の、最も外層側に位置するバリア性樹脂(A)層よりも外側に存在する層の合計厚みを(T1)とみなす。
【0090】
本発明の燃料容器本体の層構成に関しては、特に限定されるものではないが、成形性およびコスト等を考慮した場合、バリア性樹脂(A)をA、(A)以外の熱可塑性樹脂(B)をB、接着性樹脂をTieとした場合、(内)B/A/B(外)、(内)B/Tie/A(外)、(内)B/Tie/A/Tie/B(外)、(内)B/Tie/A/Tie/A/Tie/B(外)、などが代表的なものとして挙げられる。バリア性樹脂(A)、(A)以外の熱可塑性樹脂(B)および接着性樹脂をそれぞれ複数の層で用いる場合は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良い。
【0091】
なかでも、本発明の燃料容器を燃料タンクとして用いる場合は、剛性、耐衝撃性、成形性、耐ドローダウン性、耐ガソリン性等の観点から、(内)B/Tie/A/Tie/B(外)の層構成を採用することが特に好ましい。
【0092】
本発明の燃料容器の各層の厚みは特に限定されないが、燃料容器のガソリンバリア性、機械強度およびコストメリット等を考慮した場合、バリア性樹脂(A)層の厚みが、全層厚みの0.1〜20%であることが好ましい。バリア性樹脂(A)層の厚みの下限はより好適には全層厚みに対して0.5%以上であり、さらに好適には1%以上である。また、バリア性樹脂(A)層の厚みの上限はより好適には全層厚みに対して15%以下であり、さらに好適には10%以下である。バリア性樹脂(A)層の厚みが全層厚みの0.1%に満たない場合は容器のガソリンバリア性が不充分になる虞があり、20%を超える場合は、コスト的に割高になる他、機械強度が不満足なものとなる虞がある。なお、バリア性樹脂(A)層が複数層存在する場合は、各バリア性樹脂(A)層の合計厚みをバリア性樹脂(A)層の厚みとする。
【0093】
容器の胴部に設けられた開口部の切断面からの燃料透過量を抑制する観点からは、容器胴部において、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と全層厚み(T2)との比(T1/T2)が45/100以下であることが好ましい。容器内の燃料は、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側の層を通過して外部に透過するため(図1参照)、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)を小さくすることにより、相対的に燃料容器からの燃料の透過量を小さくすることが可能である。
【0094】
容器胴部において、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と全層厚み(T2)との比(T1/T2)の上限は45/100以下であることが好ましく、より好ましくは40/100以下であり、さらに好ましくは35/100以下であり、特に好ましくは30/100以下である。
【0095】
上記の比(T1/T2)の下限は特に限定されず、バリア性樹脂(A)が最外層とであっても良い。しかしながら、バリア性樹脂(A)を最外層とする燃料容器は、機械強度および燃料容器用付属部品との熱融着性などの観点から、好ましくない場合がある。このため、本発明の燃料容器は、バリア性樹脂(A)からなる中間層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内外層を有することが好適であり、上記の比(T1/T2)の下限は1/100以上であることが好適であり、5/100以上であることが更に好適である。
なお、バリア性樹脂(A)層は二層以上用いてもよく、かかる構成の際は、二層以上存在するバリア性樹脂(A)層の中の、最も外層側に位置するバリア性樹脂(A)層よりも外側に存在する層の合計厚みを(T1)とみなす。
【0096】
また、燃料透過を抑制する観点からは外層側の熱可塑性樹脂(B)にバリア性樹脂(A)をブレンドすることも好適である。かかる構成を採用することにより、ある程度の機械強度と燃料容器用付属部品との熱融着を有し、ガソリンバリア性がさらに向上した燃料容器を得ることができる。外層側の熱可塑性樹脂(B)は単層であっても良く、複層構成であっても良いが、複層構成である場合は上記のバリア性樹脂(A)をブレンドしたブレンド層を最外層とすることがガソリンバリア性の観点から好ましい。
【0097】
燃料容器を成形する際には、通常、バリの発生が不可避である。かかるバリや、成形時の不合格品を再溶融し、回収層として用いることによって、該容器作成時の使用樹脂のロスを低減し、リサイクル性を向上させることが可能である。
【0098】
回収層は一般に熱可塑性樹脂、バリア層(および実施態様によっては接着性樹脂層)からなる多層構造体を再溶融後成形してなり、熱可塑性樹脂(B)層の代わりとして用いることも可能であるが、熱可塑性樹脂(B)層と積層して用いることが好ましい。一般的には、単一の熱可塑性樹脂からなる層よりも回収層の方が機械強度が弱くなることが多い。該容器が外部から衝撃を受けた場合には、衝撃に対する応力が容器内層側で働き、容器にひずみを生じさせ、場合によっては破損が起こることから、強度的に弱い回収層はバリア層よりも外層側に配置することが好適である。しかしながらバリの発生が多い時など、多量の樹脂をリサイクル必要がある場合は、バリア層の両側に回収層を配置することが好適である。
【0099】
また、本発明の燃料容器は、胴部に設けられた開口部に燃料容器用付属部品が装着されてなることが好ましい。本発明における燃料容器用付属部品としては、具体的には、燃料タンク用コネクター、燃料タンク用キャップ、燃料タンク用バルブなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
本発明の効果を充分に発揮するためには、かかる燃料容器用付属部品にバリア性が付与されていることが好ましく、金属製の燃料容器用付属品や、バリア性を有する樹脂組成物からなる燃料容器用付属部品(特願平11−172151号、特願平11−172152号)などを用いることが好適である。
【0101】
本発明の特に好適な実施態様は、バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内外層を有する燃料容器において、ピンチオフ部をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器の胴部に設けられた開口部の切断面をバリア材(C)で被覆してなる燃料容器であり、かかる燃料容器にバリア性が付与された燃料容器用付属部品が装着されてなることがさらに好ましい。
【0102】
以上のようにして得られた燃料容器は、燃料バリア性に極めて優れているため、燃料、特に含酸素ガソリンのバリア性が求められる燃料用パイプまたはタンクとして、例えば自動車用ガソリンタンク、石油ストーブ等の燃料用タンクとして有用である。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これにより何ら限定されるものでない。なお、各実施例における樹脂の燃料透過量およびタンクの燃料透過量は以下のようにして測定した。
【0104】
<使用樹脂の燃料透過量の測定>
・バリア性樹脂(A)の燃料透過量の測定
(1)高密度ポリエチレン(HDPE)としてPaxon製BA−055(密度0.970、190℃−2160gにおけるMFR=0.03g/10分)を、接着性樹脂(Tie)として三井化学製ADMER GT−6A(190℃−2160gにおけるMFR=0.94g/10分)を用い、高密度ポリエチレン、バリア性樹脂(A)、接着性樹脂を別々の押出機に仕込み、高密度ポリエチレン/接着性樹脂/バリア性樹脂(A)/接着性樹脂/高密度ポリエチレン(膜厚み50μm/5μm/10μm/5μm/50μm)の構成を有する全層厚み120μmの共押出シートを成形装置により得た。押出成形は高密度ポリエチレンが直径65mm、L/D=24の一軸スクリューを備えた押出機を170〜210℃の温度とし、接着性樹脂は直径40mm、L/D=22mmの一軸スクリューを備えた押出機を160〜210℃の温度とし、バリア性樹脂(A)は直径40mm、L/D=22の一軸スクリューを備えた押出機を170〜210℃の温度とし、フィードブロック型ダイ(幅600mm)を210℃で運転し、共押出シート(a1)を得た。
(2)該共押出シート(a1)の片面をアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール:ガソリンバリア性=0g・20μm/m2・day)を用いて被覆した。
(3)該共押出シート(a1)およびアルミテープで被覆した共押出シート(b1)をそれぞれ210mm×300mmの大きさにカットした。
(4)カットしたそれぞれのシートを中央で折り曲げ、二辺を、富士インパルス製ヒートシーラーT−230を使用し、ダイヤル6にてシール幅10mmになるようにヒートシールし、パウチを作製した。
(5)それぞれのパウチにモデルガソリンとしてRef.C(トルエン/イソオクタン=1/1)をシールされていない辺より200ml充填し、投入辺を上述した方法と同様にシール幅10mmとなるようにヒートシールした。
該燃料投入パウチを防爆型恒温恒湿槽(40℃−65%RH)に放置し、7日置きに3ヶ月間パウチの重量を測定した。かかる試験を、アルミ箔なしの共押出パウチ(a2)およびアルミテープで被覆した共押出パウチ(b2)それぞれ5個のパウチについて行い、放置前と各放置時間後の該パウチの重量変化を読みとり、放置時間とパウチの重量変化量の傾きから燃料透過量を算出した。
【0105】
アルミテープなしの共押出パウチ(a2)の燃料透過量はパウチ表面とヒートシール部の双方からの燃料透過量の和を示し、アルミテープで被覆した共押出パウチ(b2)の燃料透過量はヒートシール部分からの燃料透過量を示す。
【0106】
{(a2)からの透過量}−{(b2)からの透過量}をバリア性樹脂(A)の燃料透過量とし、バリア性樹脂(A)層20μmあたりの透過量に厚み換算をしてバリア性樹脂(A)の燃料透過量(g・20μm/m2・day)を求めた。
【0107】
・熱可塑性樹脂(B)のガソリンバリア性の測定
(1)東洋精機製ラボプラストミル(直径20mm、L/D=22)を使用し、300mm幅のコートハンガーダイを用い、熱可塑性樹脂(B)の融点+20℃にて押し出し、100μmシートを作製し、該シートを210mm×300mmの大きさにカットした。
(2)カットしたシートを中央で折り曲げ、二辺を、富士インパルス製ヒートシーラーT−230を使用し、ダイヤル6にてシール幅10mmになるようにヒートシールし、パウチを作製した。
(3)該パウチにモデルガソリンとしてRef.C(トルエン/イソオクタン=1/1)をシールされていない辺より200ml充填し、投入辺を上述した方法と同様にシール幅10mmとなるようにヒートシールした。
(4)該燃料投入パウチを防爆型恒温恒湿槽(40℃−65%RH)に放置し、6時間置きに3日間パウチの重量を測定した。かかる試験を5個のパウチについて行い、放置前と各放置時間後の該パウチの重量変化を読みとり、放置時間とパウチの重量変化量の傾きから該パウチの燃料透過量を求め、厚み換算により熱可塑性樹脂(B)の燃料透過量(g・20μm/m2・day)を算出した。
【0108】
・バリア材(C)のガソリンバリア性の測定(熱可塑性樹脂の場合)
バリア性樹脂(A)と同様の方法を用いて、ガソリンバリア性を測定した。
【0109】
・バリア材(C)のガソリンバリア性の測定(ペースト状、液状の場合の場合)
(1)東洋精機製ラボプラストミル(直径20mm、L/D=22)を使用し、300mm幅のコートハンガーダイを用い、上記の高密度ポリエチレン(HDPE)としてPaxon製BA−055の融点+20℃にて押し出し、100μmシートを作製し、該シートを210mm×300mmの大きさにカットした。該シートにバリア材(C)のペーストを塗布し、メイヤーバーにて塗布量5g/m2となるようにバリア材(C)を塗布した。
(2)その後もう一枚の高密度ポリエチレンの100μmシートをラミネートし、2種3層の多層シートを作製した。
(3)該多層シートの片面アルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール:ガソリンバリア性=0g.20μm/m2.day)を用いて被覆した。
以下はバリア性樹脂(A)と同様にして、バリア材(C)の燃料透過量を求めた。
【0110】
・バリア材(C)が金属箔の場合
ガソリンバリア性は0g・20μm/m2・dayとみなした。
【0111】
<タンク燃料透過量>
成形した500mlタンクに、モデルガソリンとしてRef.C(トルエン/イソオクタン=1/1)をブロー吹き込みのための開口部から400ml充填し、該開口部をアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール:ガソリンバリア性=0g・20μm/m2・day)を用いて封止した。その後40℃−65%RHに放置し、3ヶ月間保存した。かかる試験を5個の500mlタンクについて行い、放置前と放置後の該タンクの重量変化の平均値からタンクの透過量を求めた。
【0112】
実施例1
高密度ポリエチレン(HDPE)としてPaxon製BA−055(密度0.970、190℃−2160gにおけるMFR=0.03g/10分、ガソリンバリア性=4000g・20μm/m2・day)を、接着性樹脂(Tie)として三井化学製ADMER GT−6A(190℃−2160gにおけるMFR=0.94g/10分)を、バリア性樹脂(A)としてエチレン含量32mol%、ケン化度99.5mol%、190℃−2160gにおけるMFR=1.3g/10分のエチレン−ビニルアルコール共重合体(ガソリンバリア性=0.003g・20μm/m2・day)を用い、鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて210℃で(内側)HDPE/Tie/Barrier/Tie/HDPE(外側)3種5層パリソンを押し出し、15℃の金型内でブローし、20秒冷却して全層厚み1000μm((内側)HDPE/Tie/Barrier/Tie/HDPE(外側)=460/20/30/20/470μm)の500mlタンクを成形した。該タンクの底面直径は100mm、高さは400mm、ピンチオフ長さは100mm、幅5mm、高さ1mmであった。該タンクのピンチオフ部の切断面をアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール:ガソリンバリア性=0g・20μm/m2・day)を用いて被覆した。この時の該タンクのガソリン透過量は0.02(g/3ヶ月)であった。
【0113】
実施例2
実施例1と同様に500mlタンクを作製し胴部に直径50mmの開口部をあけた。タンク胴部の開口部の切断面をアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール)で被覆した後、その開口部に直径70mmのポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレン40μm構成のフィルムを外層から開口部を覆うようにシール幅10mmで170℃のアイロンで熱ラミネートした。さらに、実施例1と同様に該タンクのピンチオフ部の切断面もアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール)を用いて被覆した後、該タンクのガソリン透過量を測定した。この時の該タンクのガソリン透過量は0.02(g/3ヶ月)であった。
【0114】
実施例3
タンク胴部にあけた直径50mmの開口部の切断面をアルミテープを用いて被覆しないこと以外は実施例2と同様にし、該タンクのガソリン透過量を測定した。この時のタンクからの透過量は0.05(g/3ヶ月)であった。
【0115】
実施例4
高密度ポリエチレン(HDPE)としてPaxon製BA−055(密度0.970、190℃−2160gにおけるMFR=0.03g/10分)を、接着性樹脂(Tie)として三井化学製ADMER GT−6A(190℃−2160gにおけるMFR=0.94g/10分)を、バリア性樹脂(A)としてエチレン含量32mol%、ケン化度99.5mol%、190℃−2160gにおけるMFR=1.3g/10分のエチレン−ビニルアルコール共重合体(ガソリンバリア性=0.003g・20μm/m2・day )を用い、鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて210℃で(内側)HDPE/Tie/Barrier/Tie/HDPE(外側)3種5層パリソンを押し出し、15℃の金型内でブローし、20秒冷却して全層厚み1000μm((内側)HDPE/Tie/Barrier/Tie/HDPE(外側)=800/20/30/20/130μm)の500mlタンクを成形した。このとき、層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と容器胴部の全層厚み(T2)との比(T1/T2)は15/100であった。また該タンクの胴部に直径50mmの開口部をあけた後、実施例2と同様に直径70mmのポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレン40μm構成のフィルムを外層から開口部を覆うようにシール幅10mmで170℃のアイロンで熱ラミネートした。さらに、該タンクのピンチオフ部の切断面をアルミテープ(エフピー化工株式会社製、商品名アルミシール)を用いて被覆し、該タンクのガソリン透過量を測定した。この時の該タンクのガソリン透過量は0.03(g/3ヶ月)であった。
【0116】
比較例1
ピンチオフ部の切断面をアルミテープで被覆しないこと以外は実施例1と同様にし、タンクのガソリン透過量を測定した。この時のガソリン透過量は0.04(g/3ヶ月)であった。
【0117】
比較例2
タンク胴部の開口部断面およびピンチオフ部の切断面をアルミテープで被覆しないこと以外は実施例2と同様にし、タンクのガソリン透過量を測定した。該タンクのガソリン透過量は0.07(g/3ヶ月)であった。
【0118】
【表1】
【0119】
容器胴部に開口部を有さず、ピンチオフ部の切断面をアルミテープで被覆した実施例1では、燃料容器は優れたガソリンバリア性を示した。対して、ピンチオフ部の切断面を何ら被覆しなかった比較例1では、燃料透過量は0.04(g/3ヶ月)と実施例1に比べて倍増していた。
【0120】
また、容器胴部に開口部を有し、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と全層厚み(T2)との比(T1/T2)が15/100である実施例4では、バリア層が外層側に配置されることによりタンク全体からの燃料透過量が増加することが予想されたが、特に容器の胴部に設けられた開口部の切断面からの燃料の透過を効果的に低減可能であったため、(T1/T2)が49/100である実施例3よりも、タンク全体として優れたガソリンバリア性を示した。
【0121】
ピンチオフ部の切断面および容器の胴部に設けられた開口部の切断面のいずれをも被覆した実施例2では特に優れたガソリンバリア性を発揮した。
【0122】
これに対し、ピンチオフ部および容器の胴部に設けられた開口部の切断面のいずれもアルミテープで被覆していない比較例2では、その両方をアルミテープを用いて被覆した実施例2と比べて、3倍以上の燃料の透過が見られた。
【0133】
【発明の効果】
高いガソリンバリア性を有する燃料容器を提供できる。好適な実施態様では、容器胴部に設けられた開口部に燃料容器用付属部品を装着してなる燃料容器においても優れたガソリンバリア性を発揮することが可能であり、燃料容器用付属部品にガソリンバリア性が付与されていることがさらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 燃料容器の胴部に設けられた開口部に燃料容器用付属部品が装着されている図である。
【図2】 燃料容器のピンチオフ部の切断面がバリア材(C)で被覆されている図である。
【図3】 燃料容器の胴部の開口部の切断面の内、バリア性樹脂(A)からなる層より外側に存在する層の切断面がバリア材(C)で被覆されている図である。
【図4】 燃料容器の胴部の開口部の周囲をくり抜いて設けられた凹部に、バリア材(C)からなる燃料容器用付属部品を装着されて切断面が被覆されている図である。
【図5】 燃料容器の胴部の開口部の切断面がバリア材(C)からなる燃料容器用付属部品で被覆されている図である。
【図6】 燃料容器の胴部の開口部の周囲に設けられた溝がバリア材(C)で充填されている図である。
【符号の説明】
1 バリア性樹脂(A)層
2 熱可塑性樹脂(B)層(内層)
2’熱可塑性樹脂(B)層(外層)
3 接着性樹脂(Tie)層
4 燃料容器用付属部品
5 バリア材(C)
Claims (12)
- バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内層を有する燃料容器において、ピンチオフ部の対向するバリア性樹脂(A)層間に存在する層の切断面をバリア材(C)で被覆してなる共押出ブロー成形燃料容器。
- バリア性樹脂(A)のガソリン透過量が100g・20μm/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下である請求項1に記載の燃料容器。
- バリア性樹脂(A)がポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドおよび脂肪族ポリケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2記載の燃料容器。
- 熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィンである請求項1〜3のいずれかに記載の燃料容器。
- 熱可塑性樹脂(B)が密度0.93g/cm 3 以上のポリエチレンである請求項4に記載の燃料容器。
- バリア材(C)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)が熱可塑性樹脂(B)のガソリン透過量(40℃−65%RHで測定した値)の0.1倍以下である請求項1〜5のいずれかに記載の燃料容器。
- バリア材(C)のガソリン透過量が400g・20μ/m2・day(40℃−65%RHで測定した値)以下である請求項1〜6のいずれかに記載の燃料容器。
- バリア材(C)が金属箔、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の燃料容器。
- バリア材(C)が接着剤を介して切断面を被覆してなる請求項1〜8のいずれかに記載の燃料容器。
- バリア性樹脂(A)からなる中間層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる内外層を有する請求項1〜9のいずれかに記載の燃料容器。
- バリア性樹脂(A)からなる層と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる層が接着性樹脂層を介して積層されてなる請求項1〜10のいずれかに記載の燃料容器。
- 容器胴部において、バリア性樹脂(A)からなる層よりも外側に存在する層の合計厚み(T1)と全層厚み(T2)との比(T1/T2)が45/100以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の燃料容器。
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