JP4050527B2 - 背もたれ付き椅子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、背もたれを備えたロッキング椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
椅子に背もたれを後傾動可能に取付ける場合、脚支柱の上端に固定したベースに後ろ向きに延びる揺動フレームを後傾動可能に取付け、この揺動フレームに、背もたれが取り付くバックフレームを一体に又は別体に設けるのが一般的である。
【0003】
揺動フレームは形状や素材など様々である。左右に分離しているものもあるし、全体が一体になっているものもある。素材として板金製のもの、アルミダイキャストのような金属成形品のもの、或いは合成樹脂製のものなどがある。
【0004】
いずれにしても、ロッキング椅子においては、揺動フレームは軸によってベースに回動自在に取り付けられる。また、背もたれの後傾動に連動して座が後退動及び/又は後傾動するシンクロタイプの椅子では、揺動フレームの前後中途部を座に対して左右長手の軸で連結しているものが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
デザイン等の関係で揺動フレームを左右に分離した場合、必然的に、左右の揺動フレームが離反しないように保持する必要がある。また、組み立ての容易性も要請される。
【0006】
また、揺動フレームを軸によってベースに連結するにおいて、軸を揺動フレームに貫通させて、その両端に抜け止め用のスナップリングを取付けることも行われているが、軸の端部が露出したままでは美感が劣ると共に、その露出した軸の端部に人の衣服が引っ掛かる虞がある。
【0007】
この点については、軸の端部をキャップによって覆えば良く、その場合、キャップと揺動フレームとを同じ素材で製造すると、質感が共通するために全体のデザイン的調和が取れて好ましい。しかし、揺動フレームがアルミダイカストのような金属成形品である場合、金属成形品は弾性変形させることができないため、簡単な取付け構造とすることが極めて困難であった。
【0008】
本発明は、このような現状を改善することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、脚の上端に設けたベースの左右外側に前後方向に延びる左右一対の揺動フレームを配置し、これら左右の揺動フレームの前端部を左右長手の軸によってベースに回動自在に取付け、前記左右揺動フレームの後部に、背もたれが取り付くバックフレームを取付けて成る椅子に係るもので、前記左右揺動フレームの後部は前記バックフレームによって離反不能に連結されている一方、左右揺動フレームの前端部には、前記軸を挿通するための貫通穴が内外に開口するように空いており、前記軸の両端に抜け止め手段を設けている。
【0010】
そして、前記左右揺動フレームには、前記貫通穴に外側から嵌め込み装着されて当該貫通穴を塞ぐキャップと前記軸が嵌まる軸受けとが備えられており、前記軸受けは合成樹脂製であってベースに面した内側から貫通穴に嵌め込まれていて外側には抜け不能に保持されており、前記軸受けとキャップとに、キャップを揺動フレームの貫通穴に嵌め込み装着すると揺動フレームの内部で互いに係合してキャップを脱落不能に保持する係合手段が形成されており、かつ、前記軸受けの係合手段は弾性変形してキャップに係合する係止片である。
【0011】
【0012】
【発明の作用・効果】
本願発明によると、揺動フレームを左右に分離した場合において、その後端がバックフレームによって連結されていることに加えて、前端部又は前後中途部の箇所でも軸の抜け止め手段を介して離反不能に連結されるため、椅子を頑丈な構造とすることができる。
【0013】
アルミダイカストのような金属成形品は重厚なかつ独特の金属光沢を備えており、これを揺動フレームに使用すると、ユーザーの注意を引き付けるデザイン的要素となる。しかし、前記したように、従来は、取付けの困難性のため、キャップも同じ金属成形品製とすることはあまり行われていなかった。
【0014】
これに対して、本願発明では、キャップの係合手段は変形しなくても軸受けの係合手段が変形することにより、金属成形品製のキャップであってもワンタッチ的な操作によって抜け不能に取付けることができる。このため、キャップは、その取付けの容易性を損なうことなく、優れた美感を呈することができる。
【0015】
また、軸受けは貫通穴の内部に位置しているから外部に露出することはなく、これを設けたことによって美感が悪化することもない。また、軸受けをキャップの取付けに兼用するものであるから、部材点数が増えるのを抑制して、それだけ構造を簡単化することができる。
【0016】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(1).概要
先ず、図1〜図6に基づいて椅子の下部を説明する。図1は右側面図、図2は正面図、図3は背面図、図4は部材の分離斜視図、図5は部分的な縦断側面図、図6は部分的な背面図である。
【0018】
椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1を立設した脚2と、座3と、肘掛け装置4と、背もたれ5と、ヘッドレスト6とを備えている。脚支柱1の上端には上向きに開口したベース7が固定されており、ベース7の上方に正面視で翼状に広がる中間部材8及び3が配置されている。
【0019】
詳細は省略するが、座3は、合成樹脂製の座板(座インナー部材)にクッションを張った構造になっており、座板の左右両側部を中間部材に対して前後動自在に装着している。
【0020】
中間部材8の前部と後部とには、左右一対ずつのブラケット部8a,8bを下向きに突設しており、前ブラケット部8aを左右長手の第1軸9でベース7に連結している。第1軸9がベース7に嵌まる穴10は前後長手の長穴になっている。
【0021】
ベース7の前後略中間部には、揺動フレーム11の前部が左右長手の第2軸12(請求項に記載した軸)によって連結されている。また、揺動フレーム11の前後中途部には、中間部材8の後部ブラケット8bが左右長手の第3軸13によって連結されている。
【0022】
図4及び図5に示すように、第2軸12のうちベース7の内部に位置した部位には、弾性支持手段の一例として、左右2本のねじりばね(キックばね)14が振り分けて配置されており、これらねじりばね14の一端部を受け部材15で上方から支持し、ねじりばね14の他端には中間部材8の後部ブラケット8bが上方から当たっている。
【0023】
従って、揺動フレーム11はねじりばね14の弾性に抗して後傾し、かつ、中間部材8及び座3は揺動フレーム11の後傾動に連動して後傾しつつ後退する(すなわち、座3が背もたれ5にシンクロする)。ねじりばね14の初期弾性力は、受け部材15に係合したつまみ16で調節できる。
【0024】
(2).揺動フレームの概要及び背もたれとの関係
揺動フレーム11は、後部に立ち上がり部11aを有する側面視略L字状に形成されており、本実施形態では、揺動フレーム11は、アルミのような軽合金を素材としてダイカスト加工によって製造されている。
【0025】
鉄のような各種金属を素材とした鋳造で製造することも可能であるし、もちろん、金属の削り出しによって製造することも可能である。但し、製造の容易性や軽量化、並びに美感の点からはアルミのような軽金属のダイカスト製とするのが優れているといえる。
【0026】
揺動フレーム11は、正面視で左右外側の上下寸法が小さくなるように断面略三角形状に形成されており、かつ、内向きに開口している。そして、内部には補強リブ17を設けている。このため、断面係数が増大して、同じ断面積である場合に比べて強度が高い。左右の揺動フレーム11が相対向する面(すなわちベース7の側面と対向する面)は平坦状になっている。
【0027】
また、揺動フレーム11の前後中途部には、第3軸13の端部が嵌まる突起部11bを設けている(ダイカスト品であるため、突起部11bを簡単に形成できる)。突起部11bは、中間部材8の後部ブラケット8bに密着又は密接させることができるため、第3軸13に対して曲げモーメントが作用することを抑制できる。
【0028】
揺動フレーム11の立ち上がり部11aは傾斜部とスムースに連続するように平面視で三角形状(或いは涙滴状)に形成されており、その後面には凹所18を形成し、凹所18にリブ19を多段に設けている。立ち上がり部11に設けた上向きの穴11cにバックフレーム20における支柱20aの下端部を差し込んでいる。支柱20aは、凹所18の箇所においてねじで固定されている。
【0029】
図6に示すように、バックフレーム20における左右支柱20aは上部横長部材20bと下部横長部材(下係合部)20cとで連結されており、このため、左右の揺動フレーム11はその後部において左右動不能に保持される。
【0030】
バックフレーム20の支柱20aにランバーサポート機構26を上下動自在に取付けている。このランバーサポート機構26は、背もたれ板21のうち特に人の腰椎に当たる部分を前方に押し出すことにより、着座した人を腰椎に負担が掛からない正しい姿勢に保持するものであるが、本件発明との関連は薄いので説明は省略する。
【0031】
(3).揺動フレームの連結構造
次に、揺動フレーム11の詳細並びに第2軸及び第3軸13との関係を、図7以下の図面に基づいて説明する。
【0032】
図7〜図9はそれぞれ斜視図、図10は揺動フレーム11を内側から見た側面図、図11は椅子に組み込まれた状態で図10のXI−XI視断面図、図12は椅子に組み込まれた状態で図10のXII-XII 視断面図である。
【0033】
揺動フレーム11の前端部には、第2軸12が嵌まる貫通穴28が内外に開口するように空いている。開口穴28は、外側に向いた部分は大径部(座ぐり部28a)になっており、この大径部28aにキャップ29が嵌め込み装着されている。
【0034】
キャップ29は揺動フレーム11と同じ素材のダイカスト品であり、貫通穴28の大径部28aにきっちり嵌まるように段部29aが形成されている。また、揺動フレーム11に装着した状態で、揺動フレーム11とキャップ29との外面が滑らかに連続するようにデザインされている。このため、美感に優れている。
【0035】
貫通穴28には、ベース7に面する内側からの挿入により、合成樹脂製でフランジ30aを備えた軸受け(ブッシュ)30が嵌め込まれている。フランジ30aの存在により、軸受け30は外向き抜け不能に保持される。第2軸12の左右両端には、抜け止め手段の一環を成す環状溝31が形成されており、この環状溝30は貫通穴28の大径部28aに露出している。
【0036】
そして、この環状溝30、抜け止め手段の一環を成すスナップリング32(図11参照)を嵌め込むことにより、左右の揺動フレーム11をその前部において左右離反不能に保持している。貫通穴28に外向き開口の大径部28aを形成したのは、スナップリング32を工具(図示せず)で着脱するに際して、工具の挿入空間を確保する意味を持っている。
【0037】
貫通穴28における大径部28aの内周面のうち当該貫通穴28の軸心よりも後方の部位には、揺動フレーム11の内側面まで開口した連通穴33を形成している。他方、キャップ29には、係合手段の一環として、前記連通穴33に嵌まり込む足部34を一体に形成しており、この足部34の先端寄り部位には、放射方向に向けて内外に開口した係合穴35を形成している。
【0038】
他方、前記軸受け30にも、係合手段の一環として、前記連通穴33に嵌入する係止片36を一体に形成し、この係止片36に、当該係止片36の弾性に抗しての変形によって前記キャップ29の係合穴35に嵌入(係合)し得る爪36aを形成している。
【0039】
このため、図11に示すように、軸受け30の爪36aがキャップ29の係合穴35に係合した状態になると、キャップ29は抜け不能に保持される。図9(b)に示すように、キャップ29の開口縁のうち軸心を挟んで足部34と反対側に位置した部位には、通常のマイナスドライバの先端が嵌まる程度の幅の切欠き溝37を形成している。
【0040】
図9(A)から容易に推測できるように、切欠き溝37は段部29aよりも深く入り込んでいる。このため、キャップ29を揺動フレーム11に装着した状態で、外側から切欠き溝37にマイナスドライバーの先端を差し込むことができ、これにより、キャップ29をこじて外すことができる。このようにキャップ11をこじて取り出すと、軸受け30の係止片36は折損してしまう(曲がり変形しないため)。
【0041】
揺動フレーム11の突部11bに第3軸13の端部が嵌入されているが、この場合、突部11bに前記と同じ軸受け30を嵌め込まれている。従って、第2軸12と第3軸13とは同じ直径になっている。また、軸受け30の係止片30との干渉を回避するため、突部11bにおける穴の周囲の適当な箇所には捨て穴38を形成している。
【0042】
前記したように、キャップ29は、その切欠き溝37にマイナスドライバの先端を差し込んでこじるなどして取り外すことができるが、すると、軸受け30の係止片36は折損してしまうため、次にキャップ29を取付けようとしても取付けることができなくなる。
【0043】
そこで、第2軸12のための軸受け30を取り外して、これを貫通穴28に嵌め込む一方、係止片36が折損した軸受け30は突部11bに嵌め込むことにより、キャップ29を抜け不能に取付け直すことができる。突部11bに嵌め込んだ軸受け30においては係止片36はもともと必要ないため、係止片36が折損していても特段の問題はない。
【0044】
(4).その他
本発明は更に様々に具体化することができる。例えば係合手段としては、係合穴と爪との組合せに限らず、爪と爪との組合せなど、様々の組合せを採用できる。
【0045】
軸の抜けを防止する抜け止め手段としては、スナップリングの他に、割りピン等のピンを挿入する、軸よりも大径の頭を有するねじを軸の端面にねじ込む、軸よりも大径の座金を介してねじを軸の端面にねじ込むなど、様々のものを採用できる。軸のうちいずれか一方の端部に大径の頭を形成して、これを一方の抜け止め手段とすることも可能である。
【0046】
本実施形態では揺動フレームの先端部だけにキャップを設けたが、突部においても穴を貫通させて、この部位にもキャップを設けるという構造や、突部の箇所だけに穴を貫通させて、この貫通穴にキャップを装着するという構造を採用することも可能である。
【0047】
軸による揺動フレームの連結箇所は椅子の構造に応じて設定して良い。また、揺動フレームの形状も様々に具体化することができる。揺動フレームは金属製に限らず、合成樹脂製でもよい。また、金属製とする場合、板金製でも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】椅子の右側面図である。
【図2】椅子の正面図である。
【図3】椅子の背面図である。
【図4】ベースと中間部材との分離斜視図である。
【図5】部分的な縦断側面図である。
【図6】背もたれ板を省略した状態での背もたれの正面図である。
【図7】 (A)は揺動フレームとキャップと軸受けとの斜視図、 (B)は揺動フレームと軸受けとの斜視図、 (C)はキャップの斜視図である。
【図8】 (A)は揺動フレームの部分斜視図、 (B)はキャップの正面、 (C)はキャップの背面図である。
【図9】 (A)はキャップの斜視図、 (B)は軸受けの斜視図である。
【図10】揺動フレーム11を内側から見た側面図である。
【図11】椅子に組み込まれた状態で図10のXI−XI視断面図である。
【図12】椅子に組み込まれた状態で図10のXII-XII 視断面図である。
【符号の簡単な説明】
2 脚
3 座
5 背もたれ
7 ベース
9 第1軸
11 揺動フレーム
11a 立ち上がり部
11b 凸部
12 請求項に記載した軸である第2軸
13 第3軸
20 バックフレーム
28 貫通穴
29 キャップ
30 軸受け
31 抜け止め手段の一例としてのスナップリング
33 連通穴
34 係合手段の一環を成す足部
35 係合穴
36 係止片
38 捨て穴

Claims (1)

  1. 脚の上端に設けたベースの左右外側に前後方向に延びる左右一対の揺動フレームを配置し、これら左右の揺動フレームの前端部を左右長手の軸によってベースに回動自在に取付け、前記左右揺動フレームの後部に、背もたれが取り付くバックフレームを取付けており、更に、前記左右揺動フレームの後部は前記バックフレームによって離反不能に連結されている一方、前記左右揺動フレームの前端部には、前記軸を挿通するための貫通穴が内外に開口するように空いており、前記軸の両端に抜け止め手段を設けている、
    という椅子であって、
    前記左右揺動フレームには、前記貫通穴に外側から嵌め込み装着されて当該貫通穴を塞ぐキャップと前記軸が嵌まる軸受けとが備えられており、前記軸受けは合成樹脂製であってベースに面した内側から貫通穴に嵌め込まれていて外側には抜け不能に保持されており、前記軸受けとキャップとに、キャップを揺動フレームの貫通穴に嵌め込み装着すると揺動フレームの内部で互いに係合してキャップを脱落不能に保持する係合手段が形成されており、かつ、前記軸受けの係合手段は弾性変形してキャップに係合する係止片である、
    背もたれ付き椅子。
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