JP3863353B2 - 椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、背もたれの後傾動に連動して座体が後退動(及び後傾動)するシンクロタイプの椅子に関し、特に座部の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シンクロ構造の椅子において、背もたれの後傾動に連動して座体の全体が後傾すると、ロッキング時に人の大腿部に圧迫感を与える虞がある。
【0003】
そこで、座体を屈曲可能な構造として、前部と後部との後傾角度を異ならせることが行われており、その例として、実公昭4−6596号公報や特公平4−68932号公報には、座体が後傾するシンクロ機構において、座体を構成するインナーシェル(座板)を前後に分割し、これらを屈曲可能に連結することが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ロッキング時に人の背と背もたれとが相対動することにより、人のシャツが引っ張られるいわゆるシャツめくれ(或いは背ずれ)の現象が生じて人に不快感を与えることがあり、この現象を無くすためには、背もたれの後傾動に追従して座体を後退させることが必要である。
【0005】
しかし、従来のシンクロ機構の椅子は、このような要請に応えることはできず、このため、ロッキング機能の向上に限度があった。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、いわゆるシャツめくれ(或いは背ずれ)の現象を防止又は著しく改善した椅子を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の椅子は、脚の上端に固定したベースと、背もたれが取り付くと共に弾性手段に抗して後傾動するように前記ベースに取り付けられた揺動フレームと、前記背もたれの後傾動に連動して後傾しつつ後退するように前記ベースと揺動フレームとに連結された中間金具と、前記中間金具及び揺動フレームで支持された座体とを備えており、前記座体は、合成樹脂製のインナーシェルとその上面に張ったクッションとで構成されており、更に、前記座体のインナーシェルは前部インナーシェルと後部インナーシェルとに分離しており、これら前後インナーシェルは、側面視で屈曲し得るように当該前後インナーシェルの下面よりも高い位置で連結されている。
【0008】
そして、請求項1では、前記中間金具の後傾度合いが揺動フレームの後傾度合いよりも小さくなっている一方、着座した人の座骨が前部インナーシェルの後部に当たり得るように前部インナーシェルの前後寸法が後部インナーシェルの前後寸法よりも大きい寸法に設定されており、更に、前記前部インナーシェルは中間金具に前後スライド可能に支持されて、後部インナーシェルは前記揺動フレームに取り付けられており、背もたれの後傾動に際して、後部インナーシェルが前部インナーシェルよりも大きな度合いで後傾すると共に、前部インナーシェルが後部インナーシェルによって後ろ向きに引っ張られる。
【0009】
また、請求項2の発明では、請求項1において、前後両インナーシェルは、その左右両端部が高くなるようにそれぞれ正面視で上向き凹状に湾曲しており、これら前後インナーシェルを、その左右両端部において連結している。
【0010】
【発明の作用・効果】
本願発明では、座を構成する前後インナーシェルは背もたれの後傾動に連動して後退動及び後傾動するが、後部インナーシェルの後傾度合いが前部インナーシェルの後傾度合いよりも大きく、かつ、後部インナーシェルが前部インナーシェルに対して相対的に後傾することによって前部インナーシェルが後方に引っ張られるため、前部インナーシェルは後部インナーシェルに対して相対的に後傾動せずに後退動することになり、そのため、人の下半身を背もたれの後傾動に追従して的確に後退させることができ、その結果、いわゆるシャツめくれ又は背ずれの現象を防止又は著しく改善し得る。
【0011】
請求項2の構成では、前後インナーシェルは左右両端部の高い位置で連結されているため、後部インナーシェルが後傾すると、両インナーシェルの連結箇所は回動方向に大きく移動することになり、このため、前部インナーシェルは、後部インナーシェルの後傾動により、後部インナーシェルに対して接近動する。
【0012】
換言すると、前部インナーシェルは、後部インナーシェルの後退動により、後部インナーシェルよりも多く後退動するのであり、このため、前後インナーシェルは、その間隔を狭めながら後退動する(前後インナーシェルの間隔は、左右中央部ほど大きく狭まり、連結箇所では変化はない)。
【0013】
そして、着座した人の下半身はその大部分が前部インナーシェルで支持されているため、前部インナーシェルが後部インナーシェルよりも大きく後退動することにより、シャツめくれ又は背ずれの現象をより的確に防止することができ、更に、前後インナーシェルがその連結箇所で屈曲するに際して人の臀部に違和感(突き上げ感)を与えることもない。
【0014】
【0015】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は椅子の右側面図、図2(A)は縦断右側面図、図3及び図4は分離斜視図であり、まず、これらの図に基づいて椅子の基本構造を説明する。
【0016】
(1).基本構造
椅子は、ガスシリンダー等の脚支柱1を備えた脚2と、脚支柱2の上端に固定した上向き開口のベース3と、ベース3に上方から被さる中間金具4と、中間金具4の後方に配置した揺動フレーム5と、中間金具4と揺動フレーム5とで支持した座体6と、揺動フレーム5に取り付けた背部7とを備えている。脚支柱1は脚カバー8で覆われており、ベース3はベースカバー9で下方から覆われている。
【0017】
ベース3の底面には第1ブラケット10が固着されており、この第1ブラケット10とベース3とに固定したブッシュ11に脚支柱1の上端を嵌着している。また、ベース3における左右両側板3aの前部には前後長手の長穴12が空いており、この長穴12と中間金具4の側板4aとに第1軸13が挿入されている。
【0018】
ベース3の下面には正面視下向き開口コ字状の第2ブラケット14を溶接等によって固着している一方、揺動フレーム5は、第2ブラケット14の外側に位置する側板5aを備えており、揺動フレーム5の前端部を、第2軸15によって第2ブラケット14に後傾動自在に取付けている。また、揺動フレーム5と中間金具4とは第3軸16によって連結されている。
【0019】
図2に示すように、ベース3の後部には、揺動フレーム5を貫通した下向きのロッド17が抜け不能に取付けられており、このロッド17の先端部に設けたばね受け18で、弾性手段の一例としてのコイルばね19を支持しており、コイルばねで揺動フレーム5を受けている。コイルばねはホルダー19′に嵌まっている。
【0020】
揺動フレーム5の後部には、左右方向に広がる翼状の受け板20を固着しており、この受け板で座体6の後部が包まれた状態になっている。
【0021】
背部7は、着座した人の腰を包むような形状の腰部アウター部材21と、これに取付けた背もたれ22とからなっており、図4に示すように、腰部アウター部材21には、脚カバー8に嵌まる凹所24と、ばねのホルダー19′が嵌まる穴25が形成されている。
【0022】
そして、腰部アウター部材21に設けた左右一対ずつの締結片26,27に、揺動フレーム5の受け板20をねじ(図示せず)で締結している。また、腰部アウター部材21には、揺動フレーム5の側板5aに嵌合して位置決めを行う規制部28,29を設けている。
【0023】
受け板20における傾斜部の外面に、肘掛け(図示せず)の支柱をねじで取付けるようになっている。このため、受け板20の傾斜部と腰部アウター部材21との間には隙間が空いている。
【0024】
背もたれ22は、アウターシェル22a(図1参照)と、その内側に配置したインナーシェル22bと、その前面に張ったクッション22cとから成っており、インナーシェル22aを爪等を備えた係合手段によって腰部アウター部材21に着脱自在に取付けている。図4では、係合手段として、腰部アウター部材21に設けた第1及び第2係止爪31,32のみを表示している。
【0025】
(2).座体の取付け構造
図2に示すように、座体6は、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるインナーシェル(座板又は底板と言い換えてもよい)34と、その上面に張ったクッション35とからなっており、インナーシェル34は、前部インナーシェル34aと後部インナーシェル34bとに分割されている。
【0026】
以下、図5以下の図も参照して座体6について説明する。図5は分離した状態の平面図、図6は図5のVI−VI視図、図7は分離した状態の底面図、図8は前部インナーシェル34aを裏返した状態での斜視図、図9は連結した状態での部分平面図、図10は図9の X-X視側面図、図11は座部の正面図、図12は図11のXII-XII 視断面図である。
【0027】
図6及び図11に示すように、前後インナーシェル34a,34bとも、人の身体(臀部)にフィットするように正面視で上向き凹状に形成されている。また、図5や図7に示すように、前部インナーシェル34aの後部は平面視で後ろ向き凸状に形成されている一方、後部インナーシェル34bの前面は平面視で前向き凹状に形成されている。
【0028】
そして、図5や図9に示すように、前部インナーシェル34aの後部のうち高さの高い左右両端部に下向き鉤状の連結用係止爪36を設ける一方、後部インナーシェル34bの後部のうち高さの高い左右両端部には、前記連結用係止爪36が上方から嵌まる受け部37を形成している。
【0029】
図2や図9に示すように、前後インナーシェル34a,34bを連結した状態では、両者の間のスリット状の隙間38が空いている。
【0030】
図2に示すように、後部インナーシェル34bの後端には、受け板20の後端部に引っ掛かる第1係合爪39を形成している。
【0031】
また、図2や図5,図7等に示すように、後部インナーシェル34bの後端のうち第1係合爪39を挟んだ両側には上向きの第2係合爪51を形成しており、この第2係合爪51を、腰アウター部材21に形成した係止リブ52を係合させている。第2係合爪51の左右両側にはスリット51′が形成されており、このため、第2係合爪51を容易に係脱させることができる。
【0032】
図6〜図7に示すように、前部インナーシェル34aの前部には、中間金具4の上面に当たる当接部(スライダー)40と、中間金具4の前端部に前方から嵌合する係止爪41とを形成している。
【0033】
図2及び図8に示すように、係止爪41の箇所には、上向きの鉤部53が形成されている。これは、図2に示すように、座用カバー(座用アウターシェル)54を取付けるためのもので、座用カバー54の前部に形成した後ろ向き片54aに、上向き鉤部53に嵌合する切欠き部55を形成している。このため、座用カバー54は、その前部において落下不能で左右ずれ不能に保持されている。
【0034】
座用カバー54は、インナーシェル34の略前半分程度の周囲を囲うように平面視で後ろ向きコ字状に形成されており、その左右両側部には前後一対ずつの上向き鉤状爪56が形成されており、この鉤状爪56を前部インナーシェル34aの左右両側部に形成した係合部56aに嵌め込んでいる。従って、座用カバー54は、左右2ヶ所と前部の2ヶ所とで前部インナーシェル34aに取り付けられており、このため、ガタ付きなく強固に取付けられる。
【0035】
また、前部インナーシェル34aの下面には、中間金具4の外側面に密接した状態で前後方向に延びる縦リブ42を形成している。縦リブ42も補強の役割を果たしている。前部インナーシェル34aの下面には、更に縦横に延びる多数本の補強リブ43を形成している。(後部インナーシェル34bの下面にも補強リブが形成されているが、この点は省略している)。
【0036】
図2及び図12に示すように、座体6が前進し切った状態では、中間金具4の前端面と係止爪41との間にはある程度の隙間が空いている。なお、座体6の取付けは、前部インナーシェル34aの係止爪41を中間金具4に前方から嵌め込んでから、後部インナーシェル34bの両係合爪39,51を弾性に抗して受け板20後端と係止リブ52とに押し込み係合させる、というワンタッチ的な作業で行える。
【0037】
(3).動きの説明
以上の構成において、着座した人が背もたれ22にもたれ掛かると、背もたれ22及び腰部アウター部材21は一体になって後傾すると共に、座体6は後傾しつつ後退する。
【0038】
この場合、後部インナーシェル34bの受け部36で前部インナーシェル34aの連結用係止爪36が下方から支持されているため、前部インナーシェル34aの後部と後部インナーシェル34bの前部との相対的な高さは一定のままで、前後インナーシェル34a,34bは後退しつつ後傾する。
【0039】
そして、揺動フレーム5の後傾角度よりも中間金具4の後傾角度が小さいため、後部インナーシェル34bの後傾度合いが前部インナーシェル34aの後傾度合いよりも大きい。すなわち、前後インナーシェル34a,34bは、その相対的な角度を変えながら後退しつつ後傾する。
【0040】
その場合、図10に模式的に示すように、前後インナーシェル34a,34bの連結箇所は当該両インナーシェル34a,34bの下面よりも高さが高いため、後部インナーシェル34bがある角度θだけ後傾すると、後部インナーシェル34bの受け部37はある距離Lだけ回動方向に移動することになり、このため、後部インナーシェル34bが前部インナーシェル34aに対して相対的に後傾することにより、前部インナーシェル34aは後方に引っ張られる。
【0041】
このように、前後インナーシェル34a,34bが屈曲することにより、前部インナーシェル34aは後部インナーシェル34bよりも多く後退動するのであり、その結果、シャツめくれ現象を防止又は著しく改善できる。
【0042】
また、中間金具4の前端と係止爪41との間に間隔が空いていることと、両インナーシェル34a,34bの間に隙間38が空いていることとにより、前部インナーシェル34aが後部インナーシェル34bに対して相対的に後退動することが許容される。
【0043】
なお、前部インナーシェル34aに設けた補強用の縦リブ42が中間金具4に左右から嵌まっているため、椅子の使用に際して座体6が左右にぶれることはなく、このため、使用者は椅子を快適に使用することができる。
【0044】
前部インナーシェル34aが後傾し切ると、その後部が腰用アウター部材21における平坦部21a(図4参照)で支持されるように設定している。このため、後部インナーシェル34bに過大が荷重がかかることはない。
【0045】
インナーシェル34a,34bを上向き凹状に形成していない場合は、前部インナーシェル34aにおける後部の左右両端部と、後部インナーシェル34bにおける前部の左右両端部とに上向きの突起を設け、これらの突起をピン等で連結することにより、本実施形態と同じ作用を得ることができる。
【0046】
(4).その他
本発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、前部インナーシェルを更にその前後中途部で屈曲し得る構造として、当該前部インナーシェル34aの前部を水平の姿勢のままに保持することも可能である。
【0047】
【0048】
また、インナーシェルの前後分割に対応して、クッション(及び表皮)を前後に分けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る椅子の側面図である。
【図2】 (A)は椅子の縦断側面図、 (B)は座用カバーの側断面図である。
【図3】ベースと中間金具と揺動フレームの分離斜視図である。
【図4】揺動フレームと背受け部材との分離斜視図である。
【図5】インナーシェルの分離平面図である。
【図6】図5のVI−VI視図である。
【図7】インナーシェルの分離底面図である。
【図8】前部インナーシェルの裏返した状態での斜視図である。
【図9】連結した状態でのインナーシェルの部分平面図である。
【図10】図9の X-X視図である。
【図11】座部の正面図である。
【図12】図11のXII-XII 視断面図である。
【符号の説明】
3 ベース
4 中間金具
5 揺動フレーム
6 座体
7 背部
21 腰部アウター部材
22 背受け
34 インナーシェル
34a 前部インナーシェル
34b 後部インナーシェル
36 連結用係止爪
37 受け部
Claims (2)
- 脚の上端に固定したベースと、背もたれが取り付くと共に弾性手段に抗して後傾動するように前記ベースに取り付けられた揺動フレームと、前記背もたれの後傾動に連動して後傾しつつ後退するように前記ベースと揺動フレームとに連結された中間金具と、前記中間金具及び揺動フレームで支持された座体とを備えており、前記座体は、合成樹脂製のインナーシェルとその上面に張ったクッションとで構成されており、更に、前記座体のインナーシェルは前部インナーシェルと後部インナーシェルとに分離しており、これら前後インナーシェルは、側面視で屈曲し得るように当該前後インナーシェルの下面よりも高い位置で連結されている、という椅子であって、
前記中間金具の後傾度合いが揺動フレームの後傾度合いよりも小さくなっている一方、着座した人の座骨が前部インナーシェルの後部に当たり得るように前部インナーシェルの前後寸法が後部インナーシェルの前後寸法よりも大きい寸法に設定されており、更に、前記前部インナーシェルは中間金具に前後スライド可能に支持されて、後部インナーシェルは前記揺動フレームに取り付けられており、背もたれの後傾動に際して、後部インナーシェルが前部インナーシェルよりも大きな度合いで後傾すると共に、前部インナーシェルが後部インナーシェルによって後ろ向きに引っ張られる、
椅子。 - 前後両インナーシェルは、その左右両端部が高くなるようにそれぞれ正面視で上向き凹状に湾曲しており、これら前後インナーシェルを、その左右両端部において連結している、
請求項1に記載した椅子。
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