JP4046367B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体において、とくに優れた電磁変換特性と耐久性をもつ磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピーディスクなどとして広く用いられている。磁気記録媒体は、強磁性粉末が結合剤(バインダ)中に分散された磁性層を非磁性支持体上に積層している。
【0003】
磁気記録媒体は、電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性において高いレベルにあることが必要とされる。すなわち、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求されている。また、ビデオテープについては、原画再生能力が優れているなど電磁変換特性が優れていることが要求されている。
このような優れた電磁変換特性を有すると同時に、磁気記録媒体は前述のように良好な走行耐久性を持つことが要求されている。そして、良好な走行耐久性を得るために、一般には研磨材および潤滑剤が磁性層中に添加されている。
【0004】
しかしながら、研磨材によって優れた走行耐久性を得るためには、その添加量をある程度多くする必要があり、そのため強磁性粉末の充填度が低下する。また優れた走行耐久性を得るために粒子径の大きな研磨材を使用した場合には、磁性層表面に研磨材が過度に突出し易くなる。従って、研磨材による走行耐久性の改良は上記の電磁変換特性の劣化をもたらす場合が多く問題となる。
そして、潤滑剤によって走行耐久性を向上させる場合には、その添加量を多くする必要があり、このため結合剤が可塑化され易くなり、磁性層の耐久性が低下する傾向がある。
また、走行耐久性および電磁変換特性を向上させるためには、磁性層の主成分の一つである結合剤も、当然のことながら重要な働きを担っている。従来から用いられている塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等では、磁性層の耐摩耗性が劣り、磁気テープの走行系部材を汚染するという問題があった。
【0005】
このような問題を改善する方法として、強靭な結合剤を用いて磁性層の硬度を高める方法が行われている。
例えば、ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いた−SO3M を有するポリウレタン結合剤について特公昭58−41565号公報に記載されおり、長鎖ジオールとして70重量%を有する化合物を用いることが合成例に示されている。また、ウレタン基2.5mmol/g以上のウレタンとポリビニルアセタールとを含むウレタン樹脂からなる結合剤を用いた磁気記録媒体が特開平6−96437号公報に記載されている。また、特公平6−19821号公報には、ウレタンとウレアの合計が1.8〜3.0mmol/gのウレタンウレアすなわち長鎖ジオールが76重量%含まれている結合剤とともに、長鎖ジオール/短鎖ジオール=1/3以下、すなわち長鎖ジオールの含有量が25重量%以上であることが望ましいことが記載されているが、これらは、ウレタン結合濃度の増加により、塗膜強度が強く耐久性に優れるが、塗布液粘度が高くなるために分散性が低下し、電磁変換特性が低下するという問題点を有している。
また、特開平6−76265号公報には、ポリウレタン樹脂として分岐鎖を有する多価アルコールを一種以上用いたポリエステルジオールとジイソシアネートから得られる樹脂を用いることが記載されており、また特開昭61−148626号公報には、ポリウレタン樹脂として、長鎖ジオール成分の少なくとも20重量%がビスフェノール類あるいはその誘導体と芳香族二塩基酸あるいはその誘導体を主成分することが記載されているが、これらは、環状構造によって塗膜の耐久性に優れるが環状構造が溶剤への溶解性に乏しいために分散性が不十分である。
【0006】
また、特開平1−267829号公報には、ポリウレタン樹脂が、環状構造を有するポリエーテルポリオールを含有するものであり、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物をジオール(分子量250〜3000)等として用いることが記載されており、実施例においては、ポリオールとMDIからウレタンを合成することが記載されているが、得られる塗膜はポリオール含有量が多いために塗膜が軟らかくなり走行耐久性が低下する。
【0007】
また、特開昭61−190717号公報には、ウレタン樹脂としてポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオールを用いているが、実施例の記載によれば、ポリオール含有量は70重量%以上であり、塗膜が軟らかくヘッド汚れなどが生じ耐久性が低下する。
【0008】
以上のように、磁気記録媒体用結合剤として用いられるポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂は、一般的にポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の親水性セグメントを有する長鎖ジオールを用いることが記載されており、また、長鎖ジオールは、各先行技術に記載の実施例によると樹脂中の長鎖ジオールはいずれも25モル%以上、50重量%以上含むことが記載されている。
しかし、上記ポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂は前述した親水性セグメントを有するために有機溶剤との親和性を妨げ、親水性極性基が凝集をおこし易く、有機溶剤中における分子鎖の広がりが小さくなる方向にあり、強磁性微粉末の分散性を妨げる作用をするという欠点がある。
【0009】
又、これらの親水性セグメントを持つ長鎖ジオールは、ポリエステルの場合には、エステル結合基が加水分解しやすく保存性が低下するという問題があり、ポリエーテルには、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのようにTgが低く耐熱性に乏しく、柔らかく強度の小さいものとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、分散性が極めて高く、分散安定性に優れ生産性に優れ、長期保存性に優れ、広範囲の温湿度条件下の耐久性に優れる磁気記録媒体を提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非磁性支持体上に強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を設けた磁気記録媒体において、該結合剤がポリオ−ルと有機ジイソシアネ−トを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、該ポリオール成分として前記ポリウレタン樹脂中に、環状構造を有する短鎖ジオ−ル成分を15〜40重量%、長鎖ポリエーテルポリオール成分を10〜50重量%、さらに分子量500〜5000の極性基含有長鎖ポリオール成分をそれぞれ含む磁気記録媒体である。
極性基含有長鎖ポリオール成分はポリウレタン樹脂全体に対して極性基が1×10-5eq/g〜2×10-4eq/gとなるように極性基を含む前記の磁気記録媒体である。
極性基含有長鎖ポリオール成分は、極性基含有長鎖ポリオール成分は−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO32、−OPO32、−NR2、−N+2R’COO-(ここでMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、R、R’は炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれた少なくとも一種の極性基を有する前記の磁気記録媒体である。
ポリウレタン樹脂がOH基を1分子あたり3個〜20個を有することを特徴とする前記の磁気記録媒体である。
非磁性支持体上に前記の結合剤に強磁性粉末を分散した塗布液を塗布して磁性層を形成した磁気記録媒体において、非磁性支持体と磁性層の間には無機質非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を設けるとともに、前記磁性層の厚みを1μm以下とした磁気記録媒体である。
無機質非磁性粉末を分散する結合剤として前記のポリウレタン樹脂を用いた前記の磁気記録媒体である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のポリウレタン樹脂の原料である環状構造を有する短鎖ジオールは、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素化ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールP、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ハイドロキノン等の芳香族、脂環族を有するジオール、及びこれらのエチレンオキシドまたは、プロピレンオキシド付加物などから選ぶことができるもので分子量500未満のものが好ましい。
これらの中でも好ましいものとして、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA及びこれらのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物をあげることができる。更に好ましくは水素化ビスフェノールAである。
環状構造を有する短鎖ジオールのポリウレタン樹脂中の含有量は、15〜40重量%であり、好ましくは20〜35重量%である。さらに好ましくは22〜30重量%である。15重量%未満では、得られる塗膜が軟らかくなりすぎ充分な強度が得られず、スチル耐久性が低下する。また、40重量%を超えると、溶剤への溶解性が低下し、強磁性粉末の分散性が低下し、電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が得られなくなる。
【0013】
また、本発明のポリウレタン樹脂の原料であるエーテル基を含む長鎖ジオールには、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールPなどの環状ジオールにポリエチレンオキド及び又はポリプロピレンオキシドを付加して得られるポリエーテルポリオールなどが用いられる。
好ましくは、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物があげられる。分子量は500〜5000、好ましくは600〜3000である。5000以上では塗膜のTgが低下し、強度も低下し耐久性が低下する。
【0014】
また、ポリウレタン樹脂中のエーテル含有量は1〜5mmol/gであることが好ましい。特に好ましくは2〜4mmol/gである。エーテル基の含有量が1mmol/g未満であると磁性体への吸着性が低下するために分散性が低下する。5mmol/g以上であると溶剤への溶解性が低下するために分散性が低下する。
本発明は、ポリウレタン樹脂が環状構造を有するので、塗膜強度が高く、耐久性に優れ、溶剤への溶解性に富み分散性に優れる。
【0015】
本発明のポリウレタンの原料である極性基含有長鎖ポリオールの極性基としては、極性基含有長鎖ポリオール成分は−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO32、−OPO32、−NR2、−N+2R’COO-(ここでMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、R、R’は炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれるものが用いられる。
ポリオール骨格構造としてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが用いられる。
具体的には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、カリウムテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2−カリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸ナトリウム、ナトリウムスルホコハク酸などの極性基をもつジカルボン酸またはグリコールを他のグリコール、ジカルボン酸とともに脱水縮合して得られる極性基含有ポリエステルポリオール、上記極性基含有ジオールを開始剤としてε−カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる極性基含有ポリエステルポリオールや極性基含有ジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した極性基含有ポリエーテルジオールなどがある。
【0016】
上記ポリエステルポリオールに用いられる他のグリコールとしては エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の脂肪族グリコールやシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコールがある。
他のジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸が用いられる。
【0017】
好ましいものとしては例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸/イソフタル酸/ネオペンチルグリコールを脱水縮合して得たポリエステルポリオール、5−カリウムスルホイソフタル酸のエチレンオキシド付加物を開始剤としてε−カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオールにプロピレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
分子量は500〜5000で、好ましくは600〜2500である。
このポリオールを用いてポリウレタン中に極性基を導入するとポリウレタン分子中の極性基の分布が小さくなり、分散性、分散安定性が向上する。
分子量が大きすぎるとポリウレタン中に導入できる極性基量が少なくなり分散性が低下する。
ポリウレタン中の極性基の量は、極性基の量が1×10-5eq/g〜2×10-4eq/gとなるように極性基を含むのが好ましい。多くなると極性基間の会合により溶液の粘度が上昇し分散性が低下する傾向がある。
【0018】
本発明のポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは45〜120℃であり、さらに好ましくは、50〜90℃である。これ以上の温度のものは塗膜強度が小さく、走行耐久性が低下し、120℃以上のものは、カレンダー成形性が低下し、電磁変換特性が低下する。
また、本発明のポリウレタン樹脂の重量平均分子量は10,000〜200,000であり、10,000〜100,000が好ましく、20,000〜800,000がさらに好ましく、30,000〜70,000が特に好ましい。これらの重量平均分子量が10,000より小さいと塗膜強度が低下し、走行耐久性が低下する傾向がある。これらの重量平均分子量が200,000以上であると溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する傾向がある。
【0019】
また、本発明のポリウレタン樹脂に用いる短鎖ジオールとして、上記以外のジオールを併用することができる。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂肪族ジオール、脂環族ジオール等がある。
【0020】
また、本発明のポリウレタンの原料として含まれる有機ジイソシアネート化合物の例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
ポリウレタンに含まれるジイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50重量%の範囲で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%の範囲である。
【0021】
本発明の結合剤を磁性層に用いる場合には、本発明のポリウレタン樹脂に塩化ビニル系の合成樹脂を併用しても良い。併用することができる塩化ビニル系樹脂の重合度は100〜600が好ましく、200〜450が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂はビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどを共重合させたものでもよい。また、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を併用しても良く、これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
他の合成樹脂を併用する場合には、磁性層に含まれるポリウレタン樹脂は、結合剤中に10〜100重量%を含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜100重量%の量である。特に好ましくは50〜100重量%の量である。10重量%以下では溶媒への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0022】
また塩化ビニル系樹脂は、結合剤中に10〜80重量%含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜70重量%の量である。特に好ましくは30〜60重量%の量である。
本発明の磁性層には結合剤とともに硬化剤を用いることが出来る。硬化剤としてはポリイソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などがあるがポリイソシアネート硬化剤が好ましい。ポリイソシアネート硬化剤の例としては前記有機ジイソシアネート化合物、前記ジイソシアネートとトリメチロールプロパン、グリセリンなど多価アルコールとの反応物、たとえばトリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、キシリレンジイソシアネートあるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物などがある。またジイソシアネート化合物を重合したイソシアヌレート型のポリイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの3、5、7量体がある。またMDIの多量体であるポリメリックMDIなどがある。
また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用することができる。
樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の重量は、強磁性粉末100重量部に対して、通常15〜40重量部の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは20〜30重量部である。
【0023】
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末でSBET 比表面積が40〜80m2/g 、好ましくは50〜70m2/g である。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は0.05〜0.25μmであり、好ましくは0.07〜0.2μmであり、特に好ましくは0.08〜0.15μmである。強磁性金属粉末としてはFe、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Co−Ni−Fe等が挙げられ、金属成分の20重量%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、金、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、銀、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマスを含む合金を挙げることができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。これらの強磁性粉末の製法は既に公知であり、本発明で用いる強磁性粉末についても公知の方法に従って製造することができる。
強磁性粉末の形状には、針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0024】
上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、磁性塗料の調製の際に通常使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。
なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al23、Cr23等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散材などの通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
次に本発明の磁気記録媒体が上層磁性層と下層非磁性層または下層磁性層の多層から構成されている場合について説明する。
下層非磁性層に用いる非磁性粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機質化合物から選択することができる。具体的には、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化すず、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せて使用される。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタンである。これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の平均粒径は0.01μm〜0.2μmである。非磁性粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/g である。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPによる吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
これらの非磁性粉末の表面はAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性の向上に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2 である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は多孔質層にしても良いが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0025】
下層にカ−ボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カ−ボンブラックの平均粒径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カ−ボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化学社製、#3050B,3150B,3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0026】
下層が磁性層である場合には、磁性粉末としては、γ−Fe23、Co変性γ−Fe23、α−Feを主成分とする合金、CrO2 等が用いられる。特に、Co変性γ−Fe23が好ましい。本発明の下層に用いられる強磁性粉末は上層磁性層に用いられる強磁性粉末と同様な組成、性能が好ましい。また、長波長記録特性を向上させるためには、下層磁性層のHcは上層磁性層のそれより低く設定することが望ましく、また下層磁性層のBrを上層磁性層のそれより高くする事が有効である。
下層磁性層または下層非磁性層の製造に使用する結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤あるいは分散方法等は、上層磁性層に使用のものと同様のものを適用することができる。
【0027】
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの非磁性支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行っても良い。また本発明に用いることのできる非磁性支持体は中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μ以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0028】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層塗布液を好ましくは磁性層の乾燥後の層厚が0.05〜5μmの範囲内、より好ましくは0.07〜1μmになるように塗布する。ここで複数の磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。
【0029】
上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。 これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0030】
本発明を二層以上の構成の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
【0031】
本発明で用いる非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
なお、非磁性支持体の磁性塗料およびバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられいてもよい。
【0032】
塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。
このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
【0033】
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cmの範囲であり、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
このようにして硬化処理された積層体を次に所望の形状にする。
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0034】
本発明のポリウレタン樹脂は、芳香族や脂環族などの環状構造を含む短鎖ジオールを多く含むので従来のポリウレタン樹脂に比べて、高強度、高Tgが得られる。特に高温環境での繰り返し走行などに優れる。また、短鎖ジオール含量が多いので実質的にポリウレタン樹脂中のウレタン結合濃度が増加するのでウレタン結合による分子間水素結合によって、更に高強度、高Tgが得られた。
また、従来のポリウレタン樹脂では環状構造、ウレタン結合を増やすと脆くなり磁性層の裁断の際に形成される裁断面が一様ではなく、エッジ部の磁性層にクラックが入り走行時に磁性層が壊れて粉状に脱落してドロップアウトが増えるという問題があった。しかしながら本発明のポリウレタン樹脂では長鎖ポリエーテルポリオールと環状構造をもつ短鎖ジオールのバランスが良く高強度、高Tgでありながら破断伸びが比較的大きく強靱な塗膜物性が得られた。この結果、繰り返し走行で磁性層が壊れて粉状になりやすいと問題、ドロップアウト増加、ヘッド汚れなどの耐久性に優れた磁気記録媒体を提供できる。
また、従来のポリウレタン樹脂では環状構造やウレタン結合濃度が増加すると溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下するが本発明のポリウレタン樹脂は溶剤への溶解性にも優れている利点がある。
これは、 本発明のポリウレタンにはエ−テル基を適度に含むので溶剤溶解性を向上させ、また磁性体への吸着がしやすくなるために分散性が向上したと考えられる。
さらには、短鎖ジオールに環状構造を持つのでウレタン結合近傍に立体障害性が付与され、塗布液中で分子間でのウレタン結合同志の会合がしにくくなるためにウレタン結合濃度が高くても溶剤溶解性が低下しないので分散性を向上させる。 短鎖ジオールの環状構造のなかでも脂環族の短鎖ジオールのほうが溶剤溶解性は高いので好ましい。
【0035】
また本発明のウレタン樹脂は分散性を向上させるために極性基を有する。極性基は−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO32、−OPO32、−NR2、−N+2R’COO-(ここでMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、R、R’は炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれたもののような強い極性基がポリウレタン分子中に数個存在して磁性体表面に吸着し、かつ極性基以外のセグメントは溶剤中に広がった分子鎖の形態をとることが分散安定性に有利である。したがって、分子中の極性基の量が増やしすぎるとポリウレタン分子鎖全体が磁性体表面に吸着した形態をとるため分散性は低下してしまう。一方、少なくしすぎると極性基を持たないポリウレタン分子の割合が増えるため、分散性が低下する。特に同じ極性基量でも、極性基を多く持つ分子と極性基をまったく持たない分子が混合したものでは、磁性体表面のポリウレタン樹脂の吸着量は低下し分散性、特に分散安定性が低下する。いずれのポリウレタン分子鎖にも均一に極性基を有することが分散安定性を向上させるために重要である。
本発明のポリウレタン樹脂は極性基を均一に導入するためにポリウレタン重合溶剤に対して溶解性の高い、極性基含有長鎖ポリオールを用いた。長鎖の極性基含有ポリオールは溶剤への溶解性が高いため、ポリウレタンを重合するときに他の短鎖ジオール、長鎖ポリエーテルポリオールと均一に混合するのでポリウレタン分子中に均一に組み込まれる。この結果極性基を全く持たない分子が生じにくく、分散性を向上させることができた。また特に分散安定性をも向上させることができた。
また、本発明のポリウレタンは薄層磁性層を有する重層磁気記録媒体において特に効果を発揮する。このような磁気記録媒体は、磁性層表面が平滑になり、かつ薄層であるためにスチル状態などでの繰り返し走行による削れが発生しやすくなりスチル耐久性が低下してくるが本発明のポリウレタン樹脂は高強度、高Tgが得られるためにヘッドとの摺動熱による磁性層の流動がしにくくスチル耐久性が向上したと考えられる。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例中の「部」は「重量部」を示す。
合成例1(ポリウレタン樹脂Aの合成例)
還流式冷却器、攪拌機を具備し、予め窒素置換した容器に表1に示したジオールをシクロヘキサノン中にて窒素気流下で60℃で溶解した。次いで触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレートを使用した原料の総量に対して60ppm加え更に15分間溶解した。次いで、表1に示したMDIを加え90℃にて2時間加熱反応し、末端NCOポリウレタンプレポリマーを合成した。得られたプレポリマーのNCO含量を定量し、NCO含量と同モルのトリメチロールプロパンを加えて、更に4時間加熱反応し、末端分岐OHを有するポリウレタン樹脂A〜H、J〜Nを得た。また、トリメチロールプロパンを加えないポリウレタン樹脂Iを同様に製造した。
なお、OH含量の調整は表1に示したMDI含量の調整により行った。
得られたポリウレタンのOH含量、分子量を表1に示す。極性基の含有量は、10-5eq/gで示す。
なお、ポリウレタン樹脂のOH含量は、JIS K0070の試験方法により求めたOH価及びGPCを用いて求めたポリスチレン換算での数平均分子量から一分子あたりのOH基数で示した。
【0037】
ポリウレタン合成例2
特開平1−267829号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイドを付加反応させて得られたポリオールおよび4,4−ジフェニルメタンジジイソシアネートをポリイソシアネート成分として使用してポリウレタン樹脂Pを合成し同様に表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004046367
【0039】
表1において、
HBpA:水素化ビスフェノールA
化合物A:ビスフェノールA PO(プロピレンオキシド)付加物(分子量600)n=3〜4
化合物B:ビスフェノールA PO付加物(分子量1000) n=12〜13
化合物C:ビスフェノールA PO付加物 (分子量500) n=2〜3
MDI:4,4−ジフェニルメタンジジイソシアネート
TMP:トリメチロールプロパン
極性基含有長鎖ジオール
ア SIS/IP/NPGポリエステル 分子量1000
イ DEISのε−カプロラクトン付加物 分子量2000
ウ DEISのプロピレンオキシド付加物 分子量600
エ SIS/BD/APAポリエステル 分子量5000
オ SIS/BD/APAポリエステル 分子量6000
カ DEIS 分子量245
SIS:5−ナトリウムスルホイソフタル酸
DEIS:5−ナトリウムスルホイソフタル酸エチレンオキシド付加物
NPG:ネオペンチルグリコール
IP:イソフタル酸
BD:1,4−ブタンジオール
APA:アジピン酸
実施例1
強磁性合金粉末(組成:Fe 92%,Zn 4%,Ni 4%, Hc 2000Oe, 結晶子サイズ15nm,BET比表面積59m2/g,長軸径0.12μm,針状比7,σs140emu/g)100部 をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物(SO3Na=6×10-5eq/g、エポキシ=10-3eq/g、Mw=30,000)を7.5部及びポリウレタン樹脂A10部(固形分)、シクロヘキサノン60部で60分間混練し、次いで
研磨剤(Al23 粒子サイズ0.3μm) 2部
カーボンブラック (粒子サイズ 40nm) 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製 5部(固形分)
コロネート3041)
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間攪拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
【0040】
得られた磁性塗料を乾燥後の厚さが2.5μmになるように、厚さ6μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面にリバースロールを用いて塗布した。磁性塗料が塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で3000ガウスの磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/分、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後6.35mm幅に裁断しデジタルビデオテープレコーダ(DVC)用ビデオテープを作製した。
【0041】
実施例2〜9
ポリウレタン樹脂Aを表2に示したポリウレタン樹脂に変更して、実施例1と同様の方法で実施例2〜9を作成した。
【0042】
実施例10
上層用磁性液の調整:実施例1の磁性塗布液を用いた。
【0043】
下層用非磁性液の調整:
酸化チタン(平均粒径0.035μm、結晶型ルチル、TiO2 含有量90%以上、表面処理層;アルミナ、SBET 35〜42m2/g、真比重4.1、pH6.5〜8.0)85部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで塩ビ/酢ビ/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物(SO3Na=6×10-5eq/g、エポキシ=10-3eq/g、Mw 30,000)を11部及びスルホン酸含有ポリウレタン樹脂(東洋紡績製UR8700)10部(固形分)、シクロヘキサノン60部で60分間混練し、次いで
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間攪拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性塗料を調製した。
【0044】
得られた非磁性塗料を2.0μmに、さらにその直後に磁性塗料を乾燥後の厚さが0.1μmになるように、厚さ10μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面にリバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で3000ガウスの磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属 ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/分、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後8mm幅に裁断した。
【0045】
実施例11
実施例10の非磁性下層のスルホン酸含有ポリウレタン樹脂(UR8700)をポリウレタン樹脂Aとした以外は実施例10と同様に作製した。
【0046】
比較例1〜5
ポリウレタン樹脂Aを表2に示したポリウレタン樹脂に変更して、実施例1と同様の方法で比較例1〜5を作製した。
【0047】
比較例6
上層用磁性塗料を比較例1の塗料を用いた以外は実施例10と同様に作成した。
【0048】
得られたテ−プの特性を表2に示す。
以上のようにして得られた実施例および比較例の磁気記録媒体の特性を下記の測定方法1によって測定し、その結果を表2に示す。
【0049】
〔測定方法〕
▲1▼電磁変換特性:試料テープにドラムテスター(交洋製作所製)を用いて記録波長0.5μm、ヘッド速度10m/秒の条件で記録し、再生した。比較例2のテープの再生出力を0dBとしたときの各試料テープの相対的な再生出力を評価した。
【0050】
▲2▼分散安定性: 塗布液を作製後8時間経過してから塗布した試料テ−プの電磁変換特性を▲1▼と同じ方法で測定し、塗布液を直ちに塗布して作製したテープの出力に対する相対出力で評価した。
【0051】
▲2▼SQ:振動試料型磁束計(東英工業製)を用いてHm=5kOeで測定し、
SQ=Br/Bmで求めた。
【0052】
▲3▼Ra:デジタルオプチカルプロフィメ−タ−(WYKO製)を用いたる光干渉法により、カットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さをRaとした。
【0053】
▲4▼スチル耐久性:40℃10%RH環境下において、松下電器製デジタルビデオテープレコーダ(NV−BJ1)を用いてスチル状態で、再生出力が記録信号の50%になるまでの時間(スチル耐久時間)が60分以上のものを良好、それより短い物を不良とした。
▲5▼繰り返し走行性:60分長のテープを▲3▼のVTRを用いて40℃10%RH環境下で100回連続繰り返し走行させ、ビデオヘッドの汚れを観察し、またビデオ出力を連続して記録し、 1回目の出力を0dBとして出力低下を測定した。
【0054】
Figure 0004046367
▲6▼ドロップアウト増加
テープをリールに巻き取った状態で60℃90%RH環境下に1週間保存し、▲1▼のVTRを用いて40℃10%RHの環境下で5分間走行を100回繰り返した後に、1分間に15μ秒間以上、−10dB以上出力低下したドロップアウト個数を調べ、DO増加として示した。
【0055】
【表2】
Figure 0004046367
【0056】
【発明の効果】
本発明のポリウレタンを含有する磁気記録媒体用結合剤は、強磁性粉末の分散性が向上し電磁変換特性が向上し、また塗膜強度が高く、特に高温環境でのスチルライフ、ヘッド汚れが改良され、さらに予期せぬ効果として、塗布液のポットライフが長くなり、製造上に寄与するところが大きい。

Claims (6)

  1. 非磁性支持体上に強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を設けた磁気記録媒体において、該結合剤がポリオ−ルと有機ジイソシアネ−トを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、該ポリオール成分として前記ポリウレタン樹脂中に、環状構造を有する短鎖ジオ−ル成分を15〜40重量%、長鎖ポリエーテルポリオール成分を10〜50重量%、さらに分子量500〜5000の極性基含有長鎖ポリオール成分をそれぞれ含むことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 極性基含有長鎖ポリオール成分はポリウレタン樹脂全体に対して極性基が1×10-5eq/g〜2×10-4eq/gとなるように極性基を含むことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 極性基含有長鎖ポリオール成分は−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO32、−OPO32、−NR2、−N+2R’COO-(ここでMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、R、R’は炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれた少なくとも一種の極性基を有することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  4. ポリウレタン樹脂がOH基を1分子あたり3個〜20個を有することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  5. 非磁性支持体上に請求項1記載の結合剤に強磁性粉末を分散した塗布液を塗布して磁性層を形成した磁気記録媒体において、非磁性支持体と磁性層の間には無機質非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を設けるとともに、前記磁性層の厚みを1μm以下としたことを特徴とする磁気記録媒体。
  6. 前記無機質非磁性粉末を分散する結合剤として請求項1記載のポリウレタン樹脂を用いることを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体。
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