JP4042375B2 - 立軸ポンプの吸込水槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立軸ポンプ機場に設けられる立軸ポンプの吸込水槽に係わり、特に下方へ向けて開口したポンプ吸込管へ導水する立軸ポンプの吸込水槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各地の大きな河川には、大雨増水時における河川流域の冠水被害を防止する目的で、海やバイパス水路などに緊急排水を行う排水ポンプ機場(以下適宜、単に機場という)が建設されている。
【0003】
これは、増水側の河川の水を機場の吸込水槽に導き、この吸込水槽中において吸込口が下方に開口するように設置したポンプ吸込管へさらに導入した後、立軸ポンプによって高いヘッド(揚程)に位置する吐出水槽へ揚水することにより、適切な排水経路に排水しようとするものである。
【0004】
ここで、元来、ポンプ吸込水槽及び吸込水路の形状は、例えば機場やプラントの立地条件に大きく左右され、水路の流れが理想的になるように形状を決定できることはまれである。例えば、ポンプ吸込水槽に水を導入する水路中に屈曲部がある場合や、ポンプ吸込水槽に水を導入する水路が分割壁等により2つ以上に分割されている場合等においては、水路の幅方向に偏った流速分布を生じたまま(=偏流)ポンプ吸込水槽に流入することがある。このような場合、その偏流によりポンプ吸込管付近において旋回流が発生し、これによって空気吸込渦や水中渦が生じることがある。そして、これらの渦の中心においては水圧が極端に低くなるため空洞が発生し、この空洞が立軸ポンプに到達することで震動や騒音などといった悪影響を及ぼす。
【0005】
ところで、近年では都市化による用地の確保の困難化あるいは環境問題への配慮等により、機場の省スペース化が強く望まれる傾向にある。そのためには、吸込水槽を小さく必要があるが、この場合、吸込流量を維持するため吸込流速を大きくする必要がある。その一方で、上述した空気吸込渦や水中渦等は一般に流速が大きくなるほど発生しやすくなるため、吸込流速の向上にはある限界(=限界流速)があり、これが吸込水槽のコンパクト化、ひいては機場の省スペース化の妨げとなっていた。
【0006】
そこで、これを解決するために、例えば特開平2000−18199号公報に記載のように、吸込水路におけるポンプの上流側天井部から水面付近にまで下方に突出した天井側突出構造物を設ける構成が提唱されている。これにより、天井側突出構造物より水路下流側では水路幅方向の偏流の発生を低減でき、旋回流による上記空気吸込渦や水中渦等の発生を抑制し、限界流速を向上することができる。このときさらに、上流側水路における幅方向流速分布の偏りが小さいほど、すなわち水路を幅方向に2等分したときの両側の平均流速V1,V2の比V1:V2=50:50に近づくほど、ポンプの周囲において旋回流による空気吸込渦や水中渦等の発生をさらに抑制できる結果、限界流速をさらに向上できることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、上記のように天井側突出構造物を設ける場合には、水流の圧力抵抗に耐えうるだけの大きい強度のものをポンプ吸込水槽の幅方向全体に設置しなければならない。また天井側突出構造物は、立軸ポンプ機場の運転状況により大きく変化するポンプ吸込水槽の水位に幅広く対応可能とするため、水深方向に大きな構造とすることが必要となる。また設置コストの増大を招く可能性があった。
【0008】
本発明の目的は、天井側突出構造物を用いることなく限界流速を向上し、十分な小型化を図ることができる立軸ポンプの吸込水槽を提供することにある。
【0013】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、底面とこの底面上の側壁と閉端部とによって略長方形に形成された吸込水槽と、この吸込水槽の閉端部側で、前記側壁間の中央部にポンプ吸込口を導入した立軸ポンプの吸込管とを備えた立軸ポンプの吸込水槽において、前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側に、前記側壁間の幅方向を2等分するように仕切壁を配置し、この仕切壁の下流側端部に、先端が前記吸込水槽の一方の側壁に向けて屈曲する屈曲部を形成し、前記屈曲部の両側と前記側壁とで形成される水路の各平均流速比は、6:4から8:2の範囲であることを特徴とする。
【0014】
これにより、上流側水路を幅方向に2等分させることができ、かつそれらの平均流速比を確実に偏らせることができる。
【0016】
(2)上記目的を達成するために、本発明は、底面とこの底面上の側壁と閉端部とによって略長方形に形成された吸込水槽と、この吸込水槽の閉端部側で、前記側壁間の中央部にポンプ吸込口を導入した立軸ポンプの吸込管とを備えた立軸ポンプの吸込水槽において、前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側に、開口部を有する2枚の抵抗板を前記側壁間の幅方向に並設し、前記一方の抵抗板と前記他方の抵抗板との開口部の開口比が異なるように設定し、前記各抵抗板を通過した後の各平均流速比は、6:4から8:2の範囲であることを特徴とする。
【0017】
これにより、形態や抵抗係数が既知である抵抗板を組み合わせて用いることで、流れ解析などの検討を必要とせずに、上流側水路を幅方向に2等分したときの平均流速比を簡便に設定することができる。
【0018】
(3)上記(2)において、前記2枚の抵抗板の間に、前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側水路を幅方向一方側と他方側とに仕切る仕切壁をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
以下に、本発明の第1の実施の形態による立軸ポンプの吸込水槽を図1〜図9により説明する。
【0021】
図1(a)は、本実施の形態による立軸ポンプの吸込水槽の水流方向縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)中I−I面から見た矢視平面図である。
これら図1(a)及び図1(b)において、図示しない導水経路から河川等の水が流入される略長方形の吸込水槽1と、吸込水槽1より高いヘッドに位置している吐出水槽2と、吸込水槽1の下流側閉端部(図中右端部)近傍で下端のポンプ吸込口3を下方底面に向けて開口し、その上方が略水平横方向に曲折してその先端開口部のポンプ吐出口4が吐出水槽中に接続しているポンプ吸込管5と、ポンプ吸込管5の上流側で吸込水槽1の側壁と略平行に配置され、その下流側端部に屈曲部6を備えた仕切壁7と、ポンプ吸込口3下方の吸込水槽1の底面に設置した旋回流防止板7と、ポンプ吸込口3内部に配置され複数枚の羽根9aを備えたポンプ羽根車9と、ポンプ吸込管5を貫通して設けられポンプ羽根車9を先端に固定した羽根車シャフト10と、ポンプ吸込管5の曲折部の上方に位置し、クラッチ11を介して羽根車シャフト10に接続するポンプ原動機12aを備えた駆動部12とが設けられている。
【0022】
ポンプ吸込口3は吸込水槽1を満たす水中に位置して吸込水槽1からポンプ吸込管5内に導水するものであり、また曲線的に広がるベルマウス形状に形成されている。ポンプ原動機12aは例えばガスタービン等の原動機であり、またその出力軸は駆動力の接続・切り離しを行う例えば円板型のクラッチ11を介して羽根車シャフト10に接続している。ポンプ吐出口4は吐出水槽2を満たす水中に浸漬するよう吐出水槽2に接続している。また、仕切壁7はポンプ吸込管5の上流側で吸込水槽1を幅方向に2等分する配置で設置されており、またその下流側端部には仕切壁7の両側の平均流速Vs1,Vs2を後述する比率に設定するよう、吸込水槽1の一方の側壁(図1(b)中下側の側壁)に向けて屈曲した屈曲部6が形成されている。
【0023】
なお、以上において、仕切壁7が、吸込管5の上流側水路を幅方向に2等分したときの平均流速比を、6:4より大きく8:2より小さくなるように偏らせる偏流手段を構成している。
【0024】
次に、本実施の形態の作用を説明する。まず、本発明の背景原理を、図2〜図9を用いて説明する。
以下、これら図2〜図9までにおいて、図1と同符号のものは同一部分を示す。
【0025】
図2は一般的な立軸ポンプの吸込水槽の構造を表す縦断面図である。
図2において、吸込水槽22は略長方形の形状で図中左方向に伸びて設置している。先の図1(a)と同様、ポンプ吸込口3は吸込水槽22を満たす水中に位置して吸込水槽22からポンプ吸込管5内に導水できるようになっている。
【0026】
上記構成において、ポンプ羽根車9が回転駆動され揚水開始されると、図2の要部拡大図である図3(a)及び図3(a)中III−III断面による水平断面図である図3(b)に示すように、ポンプ吸込口3周囲の水がポンプ羽根車9の回転と連動して流速Vbでポンプ吸込管6の中へ吸い込まれるとともに、吸込水槽22中の水が図中左側からポンプ吸込管5に向かって流速Vsで流れる。
【0027】
ここで流速Vsは、ポンプ吸込管5の上流側の水路全体で見た平均流速であると考え、そのうち上流側水路を幅方向に2分割して見た場合にそれぞれ上流側水路の両側壁に沿って流れる流速をVs1,Vs2とする。そしてこれら流速Vs1,Vs2に大きな差がある場合、すなわち幅方向の流速分布の偏りが大きい場合には、全体的に流速Vsが大きくなるに従いポンプ吸込口3付近に旋回流13が生じる。そしてこの旋回流13がさらに強くなるに従って吸込水槽22の底面から又は水面Wから渦が発生し、それぞれの渦の中心の圧力が極度に低くなることで空洞化し、その結果、同図3中に示すような水中渦14や空気吸込渦15に発達する。そしてこの水中渦14及び空気吸込渦15は、流速Vsが十分に大きい間は渦の状態が維持されてポンプ吸込管5に震動・騒音を与え続ける。
【0028】
また逆に、流速Vs1,Vs2に差がない場合、すなわち幅方向の流速分布の偏りが小さい場合で全体的に流速Vsがある一定の大きさを越えた時点では、図2の要部拡大図である図4(a)及び図4(a)中IV−IV断面による水平断面図である図4(b)に示すように、ポンプ吸込管5下流側の左右両側面の水面W付近にそれぞれ剥離渦16が生じる。これら2つの剥離渦16は時間の経過とともにどちらか一方の剥離渦16が下流側に流されながら次第に発達して大きくなっていく。そしてついには内部が空洞化し、ポンプ吸込口3にまで続く空気吸込渦15又は水中渦14に発達してポンプ吸込管5に大きな震動・騒音を与える。ここで吸込水槽22が天井部の無い開水路である場合は剥離渦16が空気吸込渦15に、吸込水槽22が天井部を備えた閉水路である場合は水中渦14に発達する。このような渦の発生から拡散消滅までの行程は、左右2つの剥離渦16が交互に、またそれぞれ比較的長い時間をかけて行うものであり、各行程の最中では左右2つの渦剥離16はお互いに何ら干渉し合うことなくスムーズに進行する。
【0029】
以上のように発生する水中渦14や空気吸込渦15によって、ポンプ吸込管5やその内部で回転するポンプ羽根車9に大きな振動や騒音を与えるのを防ぐため、従来ではVb,Vsの限界である流速限界が低く制限されていた。その結果、同一流量を確保するためには、吸込水槽22の幅方向寸法を大きく取らざるを得なくなるため、吸込水槽22自体の省スペース化が妨げられることになる。
【0030】
これを解決するためには、ポンプ吸込口3周囲に渦の発生を防ぐための何かしらの構成を設けることが考えられる。図5は上記旋回流13による水中渦14及び空気吸込渦15の発生をそれぞれ防止するために旋回流防止板8を設けた場合の水流方向縦断面図である。
【0031】
このように旋回流防止板8を設置することによって、図3に示すような吸込水槽22の底面における旋回流13の動きが抑制され、水中渦14及び空気吸込渦15の発生を防ぐ効果が向上するものの、図4に示すようなポンプ吸込管5下流側における水面付近の剥離渦16の発達を防ぐには何ら効果が得られない。
【0032】
剥離渦16を発達させないために、ポンプ吸込管5の上流側水路において幅方向の流速分布を大きく偏らせることが考えられるが、過度に偏らせた場合には、ある一定の流速を超えると旋回流防止板8を備えていても局所的な乱流をきっかけとしてやはり強い水中渦14が発生してしまう。そのため幅方向の流速分布の偏りを過度に大きくした場合にはVsの限界流速VsLを高く設定することができなくなる。
【0033】
そこで本願発明者等が実験に基づいて検討を行ったところ、ポンプ吸込管5の上流側水路を幅方向に2等分させてそれらの平均流速比を6:4より大きく8:2より小さくなるように偏らせることで、左右2つの剥離渦16の発達を抑制しつつ限界流速VsLを高く設定できることを知見した。
【0034】
以下、この知見による剥離渦の発達防止作用について図6〜図9により説明する。図6は、旋回流防止板8を備えた立軸ポンプの吸込水槽22において、幅方向の平均流速比Vs1:Vs2の変化と限界流速VsLとの関係を示す図であり、図7、図8、図9はそれぞれ幅方向の平均流速比Vs1:Vs2を5:5、7:3、9:1とした場合のそれぞれの剥離渦16又は旋回流13が発生する様子を上から見た平面図である。
【0035】
まず始めに幅方向の平均流速比Vs1:Vs2を5:5として偏りを無くした場合には、図7に示すようにポンプ吸込管5の左右両側面の下流側にそれぞれ剥離渦16a,16bが発生し、そしてそれらが互いに干渉することのない離れた位置に発生するため、時間が経過するに従い交互に発達しやすくなっている。そのため比較的低い流速Vsでも空気吸込渦15や水中渦14に発達しやすく、その結果、図6に示すように限界流速VsLが低く設定されることになる。
【0036】
次に、徐々に幅方向の平均流速比Vs1:Vs2を偏らせた場合、図8に示すように、平均流速の高い側(図中流速Vs1側)の剥離渦16aが発生直後からポンプ吸込管5の下流側に大きく回り込むようになり、ついには平均流速の低い側(図中Vs2側)の剥離渦16bに接触する状態となる。これにより2つの剥離渦16a,16bはお互いに干渉し合い、各渦の旋回方向が逆方向であるために、互いに旋回力を打ち消し合ってどちらも強くて定常的な渦に発達しにくくなる。すなわち2つの剥離渦16a,16bは共に発達が抑制されて空気吸込渦15や水中渦14に発達しにくくなり、その結果、図6に示すように限界流速VsLは比較的高く設定される。
【0037】
特に平均流速比Vs1:Vs2を6:4より大きく、8:2より小さくなるように偏らせた場合には、2つの剥離渦16a,16bの干渉が顕著となって高い発達抑制効果が得られるため、限界流速VsLは大幅に高く設定される。
【0038】
そしてさらに幅方向の平均流速比Vs1:Vs2を9:1まで偏らせた場合には、図9に示すように、平均流速の高い側の剥離渦16aが平均流速の低い側の剥離渦16bを打ち流し、結果的にポンプ吸込管5の周囲に旋回流13を発生させる状態となる。この場合、ポンプ吸込口3の下方に旋回流防止板8を設置していても、ある一定の流速を超えると局所的に乱流が発生し、それをきっかけに水中渦14が発生しやすくなる。従って図6に示すように限界流速VsLが低く設定されることになる。
【0039】
以上により、本願本発明者等は、ポンプ吸込管5の上流側水路を幅方向に2等分したそれぞれの平均流速比Vs1:Vs2を、6:4より大きく8:2より小さくなるよう偏らせることにより、良好な剥離渦16の発達抑制効果が得られることを知見した。この知見に基づき、図1に示す本発明の第1の実施の形態においては、上流側水路に設置した仕切壁7を偏流手段として、平均流速比Vs1:Vs2を特に最適な7:3に偏らせるよう構成することで剥離渦16の発達を抑制する。
【0040】
すなわち図1において、図示しない導水経路から河川等の水が吸込水槽1に平均流速Vsで流入し、その後に吸込水槽1内で仕切壁7により幅方向に2等分される。そして両側の流れが仕切壁7の下流側端部に設けた屈曲部6を通過することにより、それぞれの平均流速の比Vs1:Vs2を7:3となるよう偏流され、その後に下流側のポンプ吸込管5に流される。このように適切な平均流速比で偏流させた水流をポンプ吸込管5へ流すことにより、上記の知見に基づいた吸込管5下流側の剥離渦16の発達抑制効果が良好に得ることができ、水中渦14や空気吸込渦15の発生を防ぐことができる。したがって本発明の第1の実施の形態による立軸ポンプの吸込水槽1によれば、限界流速VsLを高く設定することができ、吸込水槽1を十分に小型化するよう設計できる。
【0041】
なお、幅方向両側の平均流速比Vs1:Vs2の偏りは、仕切壁7の屈曲部6における水平断面形状の違いにより両側の流れの抵抗が異なることによって生じる。したがって、屈曲部6の形状は、図1(b)に示すように単純に一方へ曲げられる形状に限られず、それ以外にも幅方向両側のそれぞれの流れに対して異なる抵抗を与えるのであればどのような形状としてもよい。また、それら屈曲部6等による流れの抵抗は、基本的にその流れの流速と線形関係にあるため、上流側の流速Vsが変化しても幅方向両側の平均流速比Vs1:Vs2の偏りはほとんど変化しない。
【0042】
なお、幅方向両側の平均流速比Vs1:Vs2を所望に偏らせるための屈曲部6の大きさや角度の設定は、個々のポンプ吸込水槽1の形状や上流側の導水路の構成などの他の要因が複雑に影響し合って多様に相違するものであるが、近年一般的な設計に使用されるようになった汎用流れ解析を利用すれば、数回の計算を実施することによって最適な形状を見出すことができる。またこのとき実験によっても最適な形状を見出すことができるのは勿論である。
【0043】
また、仕切壁7に屈曲部6を設ける位置は本実施の形態のように下流側端部に限られず、それ以外にも仕切壁7の上流側端部又は両端の間の途中位置に設けてもほぼ同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、上記本実施の形態の仕切壁7の適用については、吸込水槽1やその上流側の水路が図1に示すような開水路に設置する場合に限られるものではなく、天井部を備えた閉水路であっても設置することは可能であり、その場合には仕切壁7は天井部を支持する強度部材としても機能する。
【0045】
次に本発明の第2の実施の形態による吸込水槽を図10により説明する。本実施の形態は、前述した本発明の第1の実施の形態における屈曲部付きの仕切壁に代えて、吸込水槽の幅方向に2枚の抵抗板を並設したものである。
【0046】
図10(a)は本実施の形態による立軸ポンプの吸込水槽を上から見た水流方向平面図であり、図10(b)は図10(a)中の矢視Xから見た縦断面図である。これら図10(a)及び図10(b)において、図1(a)及び図1(b)と同符号のものは同一部分を示し、適宜説明を省略する。
【0047】
図10(a)及び図10(b)において、吸込水槽20のポンプ吸込管5上流側には、2枚の抵抗板25a,25bが幅方向に並んで吸込水槽20全体を塞ぐように設置されており、一方側の抵抗板25aには比較的大径の丸孔で構成する開口部26aが、他方側の抵抗板25bには比較的小径の丸孔で構成する開口部26bが、それぞれ均等な配置で多数設けられている。そしてそれぞれの全板面積に対する開口部26a,26bの占める割合、すなわち各抵抗板25a,25bの開口比については、抵抗板25aの方が抵抗板25bよりも大きくなっている。
【0048】
なお、以上において、抵抗板25a,25bが、吸込管5の上流側水路を幅方向に2等分したときの平均流速比を、6:4より大きく8:2より小さくなるように偏らせる偏流手段を構成している。
【0049】
以上の構成において、各抵抗板25a,25bの開口比が水流の通過を妨げる抵抗係数に逆比例することが分かっており、すなわち開口比の大きい抵抗板25aを通過する流量の方が相対的に多くなり、開口比の低い抵抗板25bを通過する流量の方が少なくなる。この結果、図10(a)に示すように抵抗板25a側下流の平均流速Vs1は、抵抗板25b側下流の平均流速Vs2より大きくなる。
【0050】
以上、本実施の形態によれば、2枚の抵抗板25a,25bのそれぞれの開口比を調整して幅方向の平均流速比Vs1:Vs2を6:4より小さく8:2より大きく偏らせることにより、上記第1の実施の形態と同様にして、水中渦14及び空気吸込渦15の発生が防止され、限界流速VsLを高く設定することができる。特に本実施の形態は、比較的小さな立軸ポンプを用いる吸込水槽の場合に有効であり、簡易な構成で各渦の発生を防止することができる。
【0051】
また本実施の形態によれば、既研究結果などから抵抗係数が既知の抵抗板を利用することで、流れ解析などの検討を必要とすることなく所望の幅方向の平均流速比の偏りを設定し、簡便に吸込水槽を最適に設計することができる。
【0052】
なお、本実施の形態において各抵抗板25a,25bは多数の丸孔形状の開口部26a,26bを設けた多孔板の形態で構成されているが、本発明はこれに限られず、例えば網状フェンスの形態であったり、又は複数のスリットを設けた形態としてもよく、また吸込水槽20全体を塞がずとも一部だけ塞ぐような構成としてもよい。どのような形態・構成であっても各抵抗板25a,25bの開口比(又は抵抗係数)及びそれらどうしの比を適切に調整することにより同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、上記本実施の形態においては、その変形例として図11に示すように、ポンプ吸込管5の上流側水路を、幅方向一方側と他方側に仕切るような仕切壁7Aを2枚の抵抗板25Aa,25Abの間にさらに設ける構成としてもよい。以下、このような変形例を図11(a)及び図11(b)により説明する。
【0054】
図11(a)は、この変形例による立軸ポンプの吸込水槽を上から見た水流方向平面図であり、図11(b)は図11(a)中の矢視XIから見た縦断面図である。これら図11(a)及び図11(b)において、図10(a)及び図10(b)と同符号のものは同一部分を示し、適宜説明を省略する。
【0055】
図11(a)及び図11(b)において、吸込水槽21の側壁と平行な仕切壁7Aが、その下流側端部を2枚の抵抗板25Aa,25Abの間に挟まれる配置で設置されており、この仕切壁7Aは抵抗板25Aa,25Abの上流側の水路を幅方向に2等分するようになっている。
【0056】
この変形例によれば、以下のような効果がある。
すなわち、前述したように、2枚の抵抗板25Aa,25Abを通過する流量の割合を調整して幅方向に所望の平均流速比に偏らせる上で、上流側水路を各抵抗板25Aa,25Abに明確に対応させるよう2等分することができ、その結果、一方側と他方側の平均流速比を安定化させることができる。特に本変形例は、比較的大きな立軸ポンプを用いる吸込水槽の場合に有効であり、また強い水流に対しても仕切壁7Aが2枚の抵抗板25Aa,25Abを堅固に支持する強度部材として機能する。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポンプ吸込管の上流側水路を幅方向に2等分したときの平均流速比を8:2より小さくすることにより、旋回流による水中渦や空気吸込渦の発生を防止し、また平均流速比を6:4より大きくすることにより、2つの剥離渦を吸込管のすぐ下流側で互いに打ち消し合わせて発達を抑制し、空気吸込渦や水中渦の発生を防止することができる。
【0058】
これにより、吸込水槽内の限界流速を向上させることができ、立軸ポンプの吸込水槽の十分な小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の立軸ポンプの吸込水槽の第1の実施の形態の水流方向縦断面図、及び図1(a)中I−I面から見た矢視平面図である。
【図2】一般的な立軸ポンプの吸込水槽の水流方向縦断面図である。
【図3】図2の要部である吸込水槽を拡大した水流方向縦断面図、及び図3(a)中III−III面から見た矢視平面図である。
【図4】図2の要部である吸込水槽を拡大した水流方向縦断面図、及び図4(a)中IV−IV面から見た矢視平面図である。
【図5】底面に旋回流防止板を設けた吸込水槽の水流方向縦断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の立軸ポンプの吸込水槽において、幅方向の平均流速比の変化と限界流速との関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の立軸ポンプの吸込水槽において、幅方向の平均流速比を5:5とした場合の剥離渦が発生する様子を説明する平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の立軸ポンプの吸込水槽において、幅方向の平均流速比を7:3とした場合の2つの剥離渦が接触・干渉する様子を説明する平面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の立軸ポンプの吸込水槽において、幅方向の平均流速比を9:1とした場合の旋回流が発生する様子を説明する平面図である。
【図10】本発明の立軸ポンプの吸込水槽の第2の実施の形態の水流方向平面図、及び図10(a)中の矢視Xから見た縦断面図である。
【図11】本発明の立軸ポンプの吸込水槽の第2の実施の形態の変形例の水流方向平面図、及び図11(a)中の矢視XIから見た縦断面図である。
【符号の説明】
1,20,21 吸込水槽
5 ポンプ吸込管
6 屈曲部(偏流手段)
7,7A 仕切壁(偏流手段)
25a,25b 抵抗板(偏流手段)
25Aa,25Ab 抵抗板(偏流手段)
26a,26b 開口部
Claims (3)
- 底面とこの底面上の側壁と閉端部とによって略長方形に形成された吸込水槽と、この吸込水槽の閉端部側で、前記側壁間の中央部にポンプ吸込口を導入した立軸ポンプの吸込管とを備えた立軸ポンプの吸込水槽において、
前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側に、前記側壁間の幅方向を2等分するように仕切壁を配置し、この仕切壁の下流側端部に、先端が前記吸込水槽の一方の側壁に向けて屈曲する屈曲部を形成し、前記屈曲部の両側と前記側壁とで形成される水路の各平均流速比は、6:4から8:2の範囲であることを特徴とする立軸ポンプの吸込水槽。 - 底面とこの底面上の側壁と閉端部とによって略長方形に形成された吸込水槽と、この吸込水槽の閉端部側で、前記側壁間の中央部にポンプ吸込口を導入した立軸ポンプの吸込管とを備えた立軸ポンプの吸込水槽において、
前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側に、開口部を有する2枚の抵抗板を前記側壁間の幅方向に並設し、前記一方の抵抗板と前記他方の抵抗板との開口部の開口比が異なるように設定し、前記各抵抗板を通過した後の各平均流速比は、6:4から8:2の範囲であることを特徴とする立軸ポンプの吸込水槽。 - 請求項2記載の立軸ポンプの吸込水槽において、前記2枚の抵抗板の間に、前記吸込水槽内における前記吸込管の上流側水路を幅方向一方側と他方側とに仕切る仕切壁をさらに備えたことを特徴とする立軸ポンプの吸込水槽。
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