JP4041193B2 - 液晶表示板用着色スペーサーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示板用着色スペーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示板には、2枚の電極基板と該基板間の隙間距離(セルギャップ)を均一にし、保持するためのスペーサーと液晶(LC)とが含まれる。この場合に、かかる表示板にバックライトを当てると、スペーサーが存在する部分には液晶が存在しないため、バックライトからの光が抜けてきて、画像のコントラストが低下し、表示品位が悪くなるという問題があった。特に、STN−LCDにおいては、その表示がノーマリーブラックモードであるため、スペーサーが存在する部分からの光抜けの抑制が求められている。
【0003】
かかるスペーサー部分からの光抜けの抑制方法としては、スペーサー粒子を着色する方法が試みられている。従来から知られている着色法には、染料や顔料などの着色剤を用いる方法がある。
【0004】
染料を用いて着色する方法には、▲1▼得られた粒子を染料で後染着する方法(特開平3−33165、特開平4−103633および特開平4−351639など)および▲2▼モノマーと染料とを懸濁重合する方法(特開平5−301909など)が挙げられる。
【0005】
▲1▼の方法では、染着の際に粒子表面の粒子構造が切断されるため、粒子の強度が小さくなり、かかる粒子をスペーサーとして液晶表示板を作成する場合に、2枚の電極基板を組み合わせる際に、該電極基板の間に存在するスペーサーが容易に変形し、場合によっては破壊するためセルギャップの均一が困難で、ギャップムラが生じ、そのギャップムラに起因する画像の色ムラの発生原因となる場合がある。
【0006】
他方、▲2▼の方法では、染料中に重合禁止作用を有するものが含まれている場合があり、得られる重合体の重合度が低かったり、十分な強度を有する粒子が得られなかったり、または柔らかかったりする場合がある。かかる粒子をスペーサーとして液晶表示板を組み立てると、スペーサーの強度が十分でないため、ギャップコントロールがしづらくてギャップムラ発生し、その結果、画像の色ムラが生じる場合がある。
【0007】
▲1▼および▲2▼のいずれの方法においても、染料を用いた場合に、粒子マトリックス中に染料を固定化することが困難なため、染料や染料中の不純物が液晶中へ溶出し、液晶の電気特性などの信頼性に問題がある場合がある。
【0008】
次に、顔料を用いる着色方法には、モノマーと顔料とを懸濁重合させる方法 (特開平7−2913、特開平9−25309など)などがあるが、顔料が凝集し易いためモノマーへの均一分散が困難であり、さらに重合しても着色されていない粒子が得られる場合がある。特に、カーボンブラックは得られる粒子を黒色にすることができるため有利であるが、カーボンブラック表面の水酸基やカルボキシル基が重合禁止又は抑制の維持効果があるため、重合の際のモノマーの重合度が低くて、得られる粒子の強度が十分でなかったり、又は柔らかすぎたりする場合がある。かかる粒子をスペーサーとして液晶表示板を組み立てると、染料法の場合と同様に、ギャップコントロールがしづらく、ギャップムラが発生して画像の色ムラが生じやすい問題がある。そのうえ、カーボンブラックの場合には、カーボンブラックの導電性に起因してスペーサーの絶縁性が低下し、スペーサー周囲の光抜けが大きい問題があるため、液晶表示板に使用することが困難な場合がある。
【0009】
さらに、最近、モニター用のLCDの開発が進んでおりLCDパネルの大型化(13インチ以上)、高表示品位化(コントラスト、色ムラ)や信頼性の向上がますます望まれており、したがってスペーサーの品質の向上も望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる問題点を改良すべくなされたもので、液晶表示板に組み立てた場合に、ギャップムラが発生せず、ギャップコントロールがしやすい強度と硬さとを有し、着色剤やそれに由来する不純物のブリードがなく、スペーサーおよびその周囲の光抜けの少ない液晶表示板用着色スペーサーを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、前記液晶表示板用着色スペーサーの製造方法を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、前記液晶表示板用着色スペーサーを用いる液晶表示板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、予めカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)および水酸基およびアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた少なくとも 1 種であって、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)を有する重合体(P)で表面処理して得られるカーボンブラックと、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)とを配合し、かかる配合物を重合することを特徴とする液晶表示板用着色スペーサーの製造方法に係る。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
最初に、本発明の液晶表示板用着色スペーサーについて説明する。
【0019】
本発明において使用されるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能基を有するものである方が、重合体(P)と反応し易いため好ましく、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどのいずれの種類のものも用いることができ、なかでもカルボキシル基を有するものが好ましい。官能基は、その他の化合物との反応性の点からカーボンブラックの表面または表面近傍にあることが望ましい。さらに、カーボンブラックとしてはpH6未満、特にpH1〜5のカーボンブラックを用いることが好ましい。カルボキシル基を有するカーボンブラックは、酸性カーボンブラックとして容易に入手できるが、中性あるいは塩基性のカーボンブラックを酸性化処理することにより得られるものも使用できる。カーボンブラックがカルボキシル基などの官能基を有していない場合、あるいはpHが6を越える場合には、カーボンブラックがグラフト化などの反応が有効に行われない場合があるので好ましくない。なお、カーボンブラックのpHの試験法は、JIS K 6211による。
【0020】
また、カーボンブラックの平均粒子径は、通常、0.0005〜0.5μm,特に0.001〜0.2μmの範囲内にあることが好ましい。0.0005μm未満のカーボンブラックは容易に得られないため、産業上その意義が少なく、一方、0.5μmを越える場合には、重合体で表面処理されたカーボンブラックに二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)での分散性が十分に付与できないことがある。
【0021】
本発明において、予め重合体で表面処理されたカーボンブラックを得る方法は、特に限定されないが、目的の表面処理されたカーボンブラックが容易に得られる点で次の2種の方法が好ましい:
(イ)カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有する重合体(P)で、カーボンブラックを表面処理する方法、および
(ロ)カーボンブラックの存在下で二重結合基1個を有するビニル系単量体(A)を重合してカーボンブラックを表面処理する方法。
【0022】
最初に、(イ)の方法について説明する。
【0023】
本発明において使用し得る、カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)としては、カーボンブラックの官能基と反応し得るものであれば、特に限定はされないが、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基などの複素環基;イソシアネート基、N−ヒドロキシアルキルアミド基およびアミノ基などが例示できる。中でも、複素環基が好ましく、特に、カーボンブラックの有する官能基との反応性を考慮すると、エポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基が好ましい。反応性基(X)の数は、カーボンブラックの有する官能基の数との関係にもよるが、重合体1分子当り平均して50〜1、好ましくは20〜1程度であることが望ましい。
【0024】
本発明において使用し得る、反応性基(X)を有する重合体(P)としては、カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を備えるものであれば特に限定はされない。重合体(P)としては、例えば、ポリシロキサン系構造、ポリ(メタ)アクリル系構造、ポリエーテル系構造、ポリエステル系構造、ポリアルキレン構造、ポリアミド系構造、ポリイミド系構造、ポリウレタン系構造およびポリスチレン系構造あるいはこれらの共重合体などが挙げられ、直鎖状、分岐状の構造であってもよい。
【0025】
特に、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)への分散性を高くできる点で重合体(P)は、ビニル系重合体、ビニル系重合体とブロックまたはグラフト型の重合体を形成する共重合体などが好ましい。ビニル系重合体としては、特に限定されないが、好ましくはカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有するビニル系モノマー単独または該モノマーと共重合可能なその他のビニル系モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、スチレン類など)とを(共)重合することによって得られるビニル系重合体(ポリ(メタ)アクリル系、ポリスチレン系)が挙げられる。
【0026】
また、重合体(P)中に二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)を有していると、ビニル系単量体(B)と反応性基(Y)が反応する結果、得られる粒子中にカーボンブラックが固定化されるため、粒子の強度や硬度がギャップコントロールし易いものになり、顔料やそれに由来する不純物のブリードが少なくなって高信頼性の着色スペーサーが得られるため好ましい。
【0027】
かかる重合体(P)の分子量は、特に限定はされないが、カーボンブラックに対する顕著な処理効果やカーボンブラックの作業性の面からMn=200〜1x106 とするのが好ましく、より好ましくは300〜1x105 、さらに好ましくは1000〜5×104 である。
【0028】
二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)は、特に限定されないが、二重結合基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種または2種以上のものであることが好ましく、特に、ビニル系単量体(B)との反応性の点から、二重結合基が好ましい。また、反応性基(Y)の数は、特に限定されるものではないが、重合体1分子当り平均して20〜1が好ましく、さらに10〜1程度有することが好ましい。
【0029】
これらの反応性基(X)を有する重合体(P)は、対応する単量体から従来公知の方法、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法、溶液重合法などにより重合できる。また、予め、重合体を形成したのち反応性基をかかる重合体に導入してもよい。
【0030】
カーボンブラックとカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基 (X)を有する重合体(P)との処理は、種々の方法で行うことができ、例えば、カーボンブラックと重合体(P)とを常温〜350℃の温度条件下で撹拌混合することにより反応させることができる。この方法によれば、原料に用いた二次凝集状態にあるカーボンブラックが撹拌混合して反応する際に、効率よく解砕されて微細かつ均一な粒子径となり、しかも反応効率も向上する。
【0031】
また、必要により、上記の反応は、分散媒液の存在下に行うこともできる。使用される分散媒としては、沸点が150℃以下の非極性溶媒が反応性基(X)と反応しないために好ましい。
【0032】
このような分散媒液存在下におけるカーボンブラックと重合体(P)との反応は、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜140℃の温度下に、0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間撹拌混合することにより行われる。
【0033】
カーボンブラックと重合体(P)との割合は、特に限定されないが、カーボンブラック100重量部に対して重合体(P)を1〜5000,好ましくは1〜1000、さらに好ましくは2〜250重量部とすることが望ましい。すなわち、重合体(P)の割合が1重量部未満であると、カーボンブラックの性状、特に表面性状を十分に改質することが困難となるおそれがあり、一方、5000重量部を越えると、カーボンブラックに結合する重合体の割合が多くなり、経済的でないのみならず、要求されるカーボンブラックの特性を損なうおそれがある。
【0034】
次に、(ロ)の方法について説明する。
【0035】
本発明において使用し得る二重結合基1個を有するビニル系単量体(A)としては、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類などが挙げられる。これらビニル系単量体(A)が重合する際に、重合中の成長末端のラジカルがカーボンブラックのベンゼン環にトラップされて、カーボンブラック表面にビニル系単量体(A)の重合物がグラフトされる。ビニル系単量体(A)には、上記のような反応性基(X)がなくても前述の機構によりカーボンブラック表面がビニル系単量体(A)の重合物で処理される。
【0036】
カーボンブラックの存在下でビニル系単量体(A)を重合する方法としては、対応する単量体から従来公知の方法、例えば塊状重合法、溶液重合法などが挙げられるが、ビニル系単量体(A)の重合物がカーボンブラック表面に効率よくグラフトされる点で、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、塊状重合法が最も好ましい。水を用いる懸濁重合法や乳化重合法ではカーボンブラックが水中に存在するためグラフト効率が悪くなる。例えば、重合は、カーボンブラックとビニル系単量体(A)とをそのままあるいは溶媒の存在下、重合開始剤とともに、常温〜350℃、好ましくは50〜200℃の温度条件下で撹拌、混合することにより行われる。
【0037】
この方法により、原料に用いた二次凝集状態にあるカーボンブラックが撹拌混合して反応する際に、効率よく解砕されて微細かつ均一な粒子径となる。
【0038】
カーボンブラックとビニル系単量体(A)との割合は、特に限定されないが、カーボンブラック100重量部に対してビニル系単量体(A)を1〜5000、好ましくは10〜5000,さらに好ましくは20〜5000重量部とすることが望ましい。ビニル系単量体(A)の割合が1重量部未満であると、カーボンブラックの性状、特に表面性状を十分に改質することが困難となるおそれがあり、一方、5000重量部を越えると、重合の発熱を抑制できなくなるとともに、カーボンブラックに結合する重合体の割合が多くなり、経済的でないのみならず、要求されるカーボンブラックの特性を損なうおそれがある。
【0039】
上記のような(イ)および(ロ)の方法により得られる、重合体(P)で表面処理されたカーボンブラックはそのまま使用してよいが、カーボンブラック表面に反応していない重合物を除去する方が望ましい。
【0040】
次に、本発明の液晶表示板用の着色スペーサーの製造方法について説明する。本発明のかかる着色スペーサーの製造方法は、(i)予めカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有する重合体(P)で表面処理して得られるカーボンブラックと、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)とを配合し、かかる配合物を重合すること、(ii)予めカーボンブラックの存在下二重結合基1個を有するビニル系単量体(A)を重合することにより表面処理して得られるカーボンブラックと、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)とを配合し、かかる配合物を重合すること、により達成される。
【0041】
上記の(イ)、(ロ)のように表面処理されたカーボンブラックとビニル系単量体(B)との重合は、公知の重合方法、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法、溶液重合法などにより行うことができるが、懸濁重合法が好ましい。以下、懸濁重合法に基づいて説明するが、この重合方法に限定されるものではない。懸濁重合法においては、上記の処理カーボンブラックとビニル系単量体(B)と重合開始剤とを含有する組成物を、水系媒体中で懸濁させてかかる組成物の油滴を形成させ、得られる懸濁液を昇温して重合させ、その後必要により分級する工程からなる。
【0042】
本発明において使用される、重合体(P)で表面処理して得られるカーボンブラックは、上記(イ)、(ロ)の方法で得られたものを用いることができる。
【0043】
本発明において使用される、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)としては、特に限定はされないが、次の単量体を例示できる:ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールジメ(タア)クリレート;ジビニルベンゼン、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(ジ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど。二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)は、一種または二種以上を用いることができる。なかでも好ましいのは、処理カーボンブラックとの反応性の点から、ジビニルベンゼン、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0044】
かかるビニル系単量体(B)と前記処理されたカーボンブラックの割合は、ビニル系単量体(B)100重量部に対して前記処理されたカーボンブラックが0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、最も好ましくは1.5〜40重量部の範囲内である。この範囲より少ないと、得られるスペーサーの着色度が小さくなるおそれがあり、一方、この範囲より大きいと、得られるスペーサーの硬度が大きくなりすぎ、強度が小さくなるおそれがある。
【0045】
本発明において使用される重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの重合開始剤は、通常、使用される単量体100重量部当り0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部、最も好ましくは0.3〜6重量部の範囲内で使用されることが好ましい。重合開始剤は、一種または二種以上を用いることができる。
【0046】
本発明において使用される水系媒体としては、用いられる処理カーボンブラック、ビニル系単量体(B)、重合開始剤の種類によって適宜選択されるが、水、アルコール、ジオキサン、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物が例示できる。
【0047】
上記処理カーボンブラックを十分に分散させるため、界面活性剤を予め水系媒体に適宜加えてもよい。
【0048】
上記処理カーボンブラック、ビニル系単量体(B)と重合開始剤などとを含む組成物を、界面活性剤などを分散させた水系媒体中に加えて懸濁させ、撹拌することにより組成物の油滴を形成する。この段階では、組成物の油滴を形成することが目的であり、通常、重合開始剤の分解温度以下で実施する。撹拌手段としては、ホモジナイザー、ホモミキサー等の公知の機械的な手段を用いることができる。
【0049】
次に、得られた懸濁液を窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で昇温し、重合させる。
【0050】
懸濁重合の重合温度としては、特に限定されないが、通常、重合開始剤の存在下で上記組成物が重合を開始する温度以上であって水系媒体の沸点以下であり、50〜100℃の温度範囲が好ましい。また、その重合時間は、特に限定されないが、通常、10分〜8時間であることが好ましい。なお、重合時には、上記処理カーボンブラックが凝集しないように、重合温度、重合時間、撹拌の程度などの反応条件に十分に注意する必要がある。
【0051】
なお、懸濁重合法としては、通常、粒度分布の広い粒子が得られるが、膜乳化法を用いると、粒度分布が比較的シャープになるために好ましい。ここで、膜乳化法とは、多孔質膜を通して水系媒体中へ単量体を油滴として供給する方法であって多孔質膜の孔径を変えるで目的の粒子径を有する粒子が容易に得られ、しかも粒度分布が比較的シャープであるという特徴を有する。膜乳化法としては、例えば宮崎県工業試験場が開発した多孔質ガラス(SPG)を膜として用いる方法などが挙げられる。
【0052】
本発明の重合体で表面処理されたカーボンブラックは単量体(B)への均一分散が容易であるため、膜乳化法を容易に適用できる点で好ましく、他方、重合体で表面処理されていないカーボンブラックは単量体(B)への分散性が悪いため、膜乳化法を適用することが困難であり、例え膜乳化法を適用してもカーボンブラックが凝集しているため膜の孔に引っ掛かり、単量体の油滴にはカーボンブラックが存在しなかったり、存在しても極微量であるため、得られるスペーサーは着色スペーサーというには程遠いものでスペーサー自身の光抜けを抑制することはできない。
【0053】
重合反応の終了後、得られる反応生成物を冷却し、濾過と洗浄の操作を繰り返し、その後、乾燥して黒色のビニル系樹脂架橋の着色粒子を得る。
【0054】
得られた着色粒子は、必要により、所望の粒子径となるように、自然沈降法(デカント法)やメッシュ法を使用して精密に分級する。
【0055】
以上のように、本発明の液晶表示板用のスペーサーは、カーボンブラック表面が上記のように処理されるので、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)の重合遅延が防止され、信頼性や硬度や強度の高いものが得られる。また、カーボンブラックを重合体で処理することにより、処理カーボンブラックの絶縁性を向上させることができ、得られる液晶表示板の電気特性が改良され、その駆動性や信頼性を向上させることができる。さらに、上記のように処理されたカーボンブラックはビニル系単量体(B)やその重合物の粒子中に均一に分散できるために、少量で得られる着色スペーサーの着色度を増加させることができ、さらに液晶表示板用に着色スペーサーを組み込んだ際に着色スペーサー自身の光抜けを防止できる。
【0056】
また、重合体で表面処理したカーボンブラックを含有してなる樹脂着色粒子が、特にビニル系樹脂架橋着色粒子の場合には、かかる着色粒子は、適度な弾力性に富んでおり、それを一対の電極基板の間に挟んで力を加えたとしても、かかる樹脂粒子は簡単には潰れることなく、またそれに接している液晶表示板を傷付けるおそれも少なくて液晶表示板用のスペーサーに適している。かかる樹脂粒子は、その直径がほぼ均一であり、液晶表示板用のスペーサーとして使用した場合に、液晶層の厚みをほぼ一定に保持することも可能である。さらに、得られる着色スペーサー中の不純物の漏出も少なく、液晶に及ぼす影響も少ないため、スペーサー周囲の光抜けも小さい。
【0057】
本発明の液晶表示板用スペーサーは、さらに次のような特性に関する要件を満たす:すなわち、その平均粒子径は、使用する液晶の大きさやタイプによるが、通常、1〜20μm、好ましくは1〜15μm、特に好ましくは1.5〜12μmの球状である。この範囲を外れると、液晶表示用スペーサーとして用いることができなくなる領域である。また、スペーサーの変動係数(CV)は、10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。すなわち、10%を越えると、液晶表示板に用いた際に、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなる。ここで、平均粒子径、変動係数は、後述の実施例の中で説明する方法にしたがって定義される。
【0058】
スペーサーの硬度(10%圧縮弾性率)は、好ましくは250〜3000kgf/mm2 、さらに好ましくは250〜2500kgf/mm2 、最も好ましくは300〜2000kgf/mm2 の範囲である。250kgf/mm2 未満の場合には、スペーサーの散布個数の増加による製造コストの上昇、スペーサー周囲の光抜けの増加によるコントラストの低下の問題があり好ましくなく、一方、3000kgf/mm2 超の場合には、電極基板上の透明電極、配向膜あるいはカラーフィルターへの物理的損傷や低温発泡のおそれがあり好ましくない。
【0059】
スペーサーの破壊強度は、好ましくは2.1gf以上、さらに好ましくは2.2gf以上、最も好ましくは2.3gf以上である。2.1gf未満の場合には、セルギャップがしづらく、セルギャップムラが発現しやすくなって好ましくない。ここで、スペーサーの硬度(10%圧縮弾性率)および破壊強度は、後述の実施例の中で説明する方法にしたがって定義される。
【0060】
さらに、スペーサーに接着性を付与すれば、スペーサーの移動防止効果があり、液晶表示板を構成したときに、色ムラが発生せず、表面積が大きなパネルや自動車などに搭載する振動などの負荷がかかる用途には、スペーサーが振動などにより移動することなく、特に有用である。接着性スペーサーとしては、スペーサー表面が(メタ)アクリル酸系樹脂、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂で被覆またはグラフトされたものが挙げられる。
【0061】
また、スペーサーに粘着性や付着性を付与すれば、セル組立て時などにスペーサーの移動防止効果があり、セルギャップのコントロールがし易くなってギャップムラが生じにくいという利点がある。
【0062】
更に、本発明の液晶表示板について説明する。
【0063】
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、上述したような本発明の液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させたものであり、同スペーサーの粒子径と同じかまたはほぼ同じ隙間距離を有する。使用されるスペーサーの量は、通常、30〜1000個/mm2 、好ましくは40〜500個/mm2 、さらに好ましくは50〜400個/mm2 、最も好ましくは60〜300個/mm2 である。
【0064】
本発明の液晶表示板は、例えば、第1電極基板と第2電極基板と液晶表示板用スペーサーとシール材と液晶とを備えている。ここで、第1電極基板は、第1透明基板と第1透明基板の一方の表面に形成された第1透明電極とからなる。第2電極基板は、第2透明基板と第2透明基板の一方の表面に形成された第2透明電極とからなり、さらに第2電極基板は、第2透明電極のある面が、第1透明電極基板のある面において第1電極基板と相対している。液晶表示板用スペーサーは、本発明の液晶表示板用スペーサーであって、第1電極基板と第2電極基板との間に介在している。シール剤は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部において接着するものである。液晶は、第1電極基板と第2電極基板とシール剤とで囲まれた空間に充填されている。
【0065】
本発明の液晶表示板には、電極基板、シール剤、液晶など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様の手段で使用できる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの透明基板と、透明基板の一方の表面に形成された透明電極とを有しており、必要に応じて、透明基板の表面に透明電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール剤として、エポキシ樹脂接着シール剤などが使用される。液晶として、従来より用いられているものでよく、例えばビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
【0066】
本発明の液晶表示板を作成する方法としては、例えば、次のように実施することができるが本発明はこの方法に限定されるものではない。本発明のスペーサーを、面内スペーサーとして、2枚の電極基板のうちの一方の電極基板の電極のある面に、湿式法または乾式法により均一に散布したものに、これとは別に、本発明のスペーサーを、シール部スペーサーとして、エポキシ樹脂などの接着シール剤に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せた。これに、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分の加熱硬化させる。次いで、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る。
【0067】
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板と同じ用途、例えばテレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサーなどの画像表示素子または部品として使用できる。なかでも、スペーサーが着色されているため、ノーマリーブラックモードのLCDには好適であり、特にSTN−LCDには有用である。
【0068】
【実施例】
以下、本発明の実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。特に断らない限り、部は重量部を表す。
【0069】
(スペーサーの物性測定方法)
1.平均粒子径、標準偏差、変動係数
平均粒子径、平均粒子径の標準偏差および粒子径の変動係数は、電子顕微鏡撮影像の任意の粒子200個の粒子径を実測して次式から求めた。
【0070】
【数1】
【0071】
2.粒子の硬度(10%圧縮弾性率)、破壊強度
硬度を示す尺度は10%圧縮弾性率であり、ここで、10%圧縮弾性率とは、下記測定方法により測定した値である。島津微小圧縮試験機(株式会社島津制作所製MCTM−200)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイアモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定負荷速度(0.27gf/sec)で荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させ、10%変形時の荷重と圧縮変位のミリメートル数を求める。求められた圧縮加重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を次式:
【0072】
【数2】
【0073】
に代入して計算された圧縮弾性率が10%圧縮弾性率である。
【0074】
また、破壊強度は、前述した微小圧縮試験機を用いて調べることができる。前述したように試料台上に散布した試料粒子1個について、円形平板圧子を用いて、粒子の中心方向へ一定速度(0.27gf/sec)で荷重をかけ、粒子が破壊する圧縮加重を求めることができる。
【0075】
この操作を異なる3個の粒子について行い、その平均値を粒子の10%圧縮弾性率、破壊強度の値とし、それぞれ、粒子の硬度、破壊強度の尺度とする。
【0076】
(処理カーボンブラックの合成例)
合成例1
撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えたフラスコにポリビニルアルコール0.2部を溶解した脱イオン水400部を仕込んだ。そこへ、予め調整しておいたスチレン194.9部およびグリシジルメタクリレート5.1部からなる重合性単量体にベンゾイルパーオキサイド16部を溶解した混合物を仕込み、高速で撹拌して均一な懸濁液とした。ついで窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌を続けて重合反応を行った後に冷却して重合体懸濁液を得た。この重合体懸濁液を濾過、洗浄した後に乾燥して反応性基としてエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体を得た。この重合体の分子量はGPC測定により数平均分子量Mn=5,500であった。
【0077】
反応性基としてエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体40部とカーボンブラックMA−100R(三菱化学(株)製)20部とをラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて160℃、100rpmの条件下に混練して反応した後に冷却、粉砕して処理カーボンブラック(1)を得た。
【0078】
合成例2
合成例1のスチレンおよびグリシジルメタクリレートからなる重合性単量体の代わりに、メチルメタクリレート100部、ブチルアクリレート94.3部および2,3−エビチオプロピルメタクリレート5.7部からなる重合性単量体を用いた以外は合成例1と同じ方法により、反応性基としてチオエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体を得た。この重合体の分子量はGPC測定によりMn=5,800であった。
【0079】
反応性基としてチオエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体20部とカーボンブラックMA−100R20部とを、合成例1と同様に反応して処理カーボンブラック(2)を得た。
【0080】
合成例3
合成例1のスチレンおよびグリシジルメタクリレートからなる重合性単量体の代わりに、スチレン196部およびイソプロペニルオキサゾリン4部からなる重合性単量体を用いた以外は合成例1と同じ方法により、反応性基としてオキソザリン基を有する重合体を得た。この重合体の分子量はGPC測定によりMn=5,800であった。
【0081】
反応性基としてオキサゾリン基を有する重合体40部とカーボンブラックMA−100R20部とを、合成例1と同様に反応して処理カーボンブラック(3)を得た。
【0082】
合成例4
合成例1で用いたのと同じフラスコに、トルエン200部およびメチルイソブチルケトン200部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱した。そこへ、予め調製したスチレン190部および2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート10部からなる重合性単量体にベンゾイルパーオキサイド4部を溶解した混合物を2時間にわたって滴下ロートから滴下した。滴下後、さらに5時間撹拌を続けて重合反応を行い、その後冷却して重合体溶液を得た。この重合体溶液100部にメタノール2000部を加えて再沈降させ、得られた沈降物を乾燥して反応性基としてアジリジン基を有する重合体を得た。この重合体の分子量はGPC測定によりMn=3000であった。
【0083】
反応性基としてアジリジン基を有する重合体40部とカーボンブラックMA−100R20部とを、合成例1と同様に反応して処理カーボンブラック(4)を得た。
【0084】
合成例5
予め、ポリメチルメタクリレートマクロマー(AA-6、東亜合成化学(株)製、Mn=6200)78.17部をエチルセロソルブアセテート200重量部に溶解させた後、スチレン10.92部、グリシジルメタクリレート10.91部を加え、さらに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10部を溶解した。
【0085】
撹拌羽根、不活性ガス導入管、還流冷却管、温度計および滴下ロートを備えたセパラブルフラスコに、上記溶解物の25%を仕込み、N2 気流下85℃で30分間重合させた。さらに、残りの75%を3時間にわたり滴下しながら同温度で重合を行った。滴下終了後、さらに85℃で30分間保持し、エチルセロソルブアセテート50部にアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解させたものを添加した。添加後、85℃で1時間保持し、その後さらに95℃に昇温し1時間保持した後に冷却した。得られた重合体溶液は、Mn=7500、不揮発分は28.57重量%であった。
【0086】
次に、温度計、撹拌羽根、冷却管を備えたセパラブルフラスコに、上記重合体溶液23.35部、カーボンブラックMA−100R 20部、エチルセロソルブアセテート56.65部をそれぞれ仕込んで分散させ、さらにステンレス製ビーズ1000部を仕込んだ。撹拌(300rpm)しながら、160℃で2時間グラフト化を行った。さらに、エチルセロソルブアセテート100部を加えて均一に分散させた。その後、ステンレス製ビーズを分離し、さらに溶媒を除去して処理カーボンブラック(5)を得た。
【0087】
合成例6
最初に次の方法により、マクロマーを合成した:撹拌羽根、不活性ガス導入管、温度計および滴下ロートを備えたセパラブルフラスコに、溶剤としてトルエン250部、メチルエチルケトン50部を仕込み、N2 ガス導入下85℃において、メチルメタクリレート(MMA)344部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)56部、チオグリコール酸8.5部(9.2271x10-2モル)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部からなる混合溶液を4時間にわたり連続的に滴下して重合を行った。さらに、AIBN 0.1部を加え、同温度で2時間加熱した。その後、95℃で1時間加熱して重合を終了した。この反応液に、グリシジルメタクリレート17.0部(1.3倍当量/COOH)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド2.5部および重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.08部を加え、反応温度95℃で8時間反応させた後、冷却して重合体生成物を得た。この重合体生成物をn−ヘキサンを用い再沈を行った後、減圧乾燥を2日行い、Mn=7000の片末端メタクリレート型のポリ(メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート)マクロマーを得た。
【0088】
得られたポリ(メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート)マクロマー75部、スチレンモノマー15.2部、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル3部を、エチルセロソルブアセテート100部に溶解させ、単量体組成物を得た。
【0089】
合成例5で用いたのと同じフラスコに、エチルセロソルブアセテート50部を導入した後に昇温した。80℃に達した後、同温度で上記単量体組成物を2時間にわたり滴下し、引続き80℃で2時間重合を行った後95℃に昇温し、2時間熟成を行い、不揮発分40.0%の重合体溶液を得た。
【0090】
合成例5のカーボンブラックの反応で用いたのと同じフラスコに、上記重合体溶液22.5部、カーボンブラックMA−8(三菱化学(株)製)30部、エチルセロソルブアセテート97.5部を仕込んで分散させ、さらにジルコニア製ビーズ1000部を仕込んだ。撹拌(300rpm)しながら、100℃で2時間グラフト化を行った。さらに、エチルセロソルブアセテート50部を加えて均一に分散させた。その後、ジルコニア製ビーズを分離し、さらに溶媒を除去して処理カーボンブラック(6)を得た。
【0091】
合成例7
合成例6で得られた重合体溶液250部に、メタクリロイルイソシアネート(分子量:111.1)8.9部を30分にわたり室温(25±5℃)で滴下し、3時間撹拌を行って二重結合を導入した重合体溶液(不揮発分:43.6%)を得た。
【0092】
合成例6のカーボンブラックの反応において、重合体溶液の代わりに上記重合体溶液20.6部、エチルセロソルブアセテートの使用量を108.4部とした以外は、合成例6と同様に反応して処理カーボンブラック(7)を得た。
【0093】
合成例8
ポリメチルメタクリレート(AA-6、東亜合成(株)製)64.5部、スチレンモノマー15.2部、イソプロペニルオキサゾリン9.8部、ヒドロキシエチルメタクリレート10.5部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル3部を、エチルセロソルブアセテート100部に溶解させ、単量体組成物を得た。
【0094】
合成例6で用いたと同じフラスコにエチルセロソルブアセテート50部を導入した後80℃に昇温させた。80℃に保持したまま上記単量体組成物を2時間にわたり滴下した。その後、同温度で2時間、95℃で2時間反応を行い、冷却して不揮発分40%の反応液を得た。この反応液250部にメタクリロイルイソシアネート8.9部を30分にわたり室温で滴下し、二重結合を導入した重合体溶液を得た。
【0095】
上記重合体溶液を用い、合成例6のカーボンブラックの反応と同様に反応して処理カーボンブラック(8)を得た。
【0096】
合成例9
撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管および温度計を備えたフラスコに、予め調整しておいたスチレン100部およびメチルメタクリレート100部からなる重合性単量体に、ベンゾイルパーオキサイド1部を溶解した混合物を仕込み、さらにカーボンブラックMA−100R(三菱化学(株)製)20部を高速で分散させた。ついで、窒素ガスを吹込ながら、80℃に加熱して重合反応を行って、処理カーボンブラック(9)を得た。
【0097】
実施例1
モノマーとしてジビニルベンゼン500部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート500部、合成例1で得られた処理カーボンブラック(1)200部およびベンゾイルパーオキサイド15部を混合してモノマーの均一分散液とした。
【0098】
撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管および温度計を備えたフラスコに、5重量%のポリビニルアルコール溶液2500部と上記分散液を仕込み、高速で撹拌して均一な懸濁液とした。ついで、窒素ガスを吹き込みながら加熱して80℃とし、撹拌を10時間継続して重合反応を行い、さらに95℃に昇温し1時間撹拌を続けた。なお、重合時には凝集もなく均一に重合ができた。次に、冷却して重合体懸濁液を得た。
【0099】
かかる重合懸濁液を、濾過と洗浄とを繰り返し、残留物を乾燥して黒色のビニル系樹脂架橋着色粒子を得た。得られたビニル系樹脂架橋着色粒子を、所望の粒子径となるように精密に分級することにより、黒色の液晶表示板用の着色スペーサー(1)を得た。着色スペーサー(1)は、平均粒子径が6.02μm、粒子径の変動係数が3.1%、粒子の破壊強度が4.2gf、粒子の硬度(10%圧縮弾性率)480kgf/mm2 )であった。
【0100】
次に、着色スペーサー(1)を用いて、以下の方法により、液晶表示板を作成した。図1にみるように、最初に、下側のガラス基板111上に、電極(例えば、透明電極)5およびポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って下側電極板110を得た。この下側電極基板110に、本発明の液晶表示板用の着色スペーサー(1)(この場合、面内スペーサー)8を湿式散布法により、200個/mm2 の散布密度で凝集塊もなく均一に散布した。なお、湿式散布液としては、溶媒に水/イソプロピルアルコール(IPA)(体積比:7/3)を用い、水/IPAが100部に対して着色スペーサー(1)2.5部の割合で混合し、超音波分散させて用いた。この際、湿式散布溶媒が着色することはなく透明であった(着色スペーサーからの色落ちはなかった)。
【0101】
一方、上側のガラス基板12上に、電極(例えば、透明電極)5およびポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って上側電極板120を得た。次に、エポキシ樹脂接着シール材2中にシリカスペーサー(この場合、シール部スペーサー)3が30容量%となるように分散させたものを、上側電極基板120の接着シール部分にスクリーン印刷した。
【0102】
最後に、上下側電極基板110、120を、電極5や配向膜4がそれぞれ対抗するように、本発明のスペーサー(1)8を介して貼り合わせ、1kg/cm2 の圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール材2を加熱硬化させた。その後、2枚の電極基板110、120の隙間を真空とし、さらに大気圧に戻すことにより、STN型液晶7を注入し、注入部を封止した。そして、上下ガラス基板12、111の外側にPVA(ポリビニルアルコール)系偏光膜6を貼りつけて13インチの液晶表示板(1)とした。
【0103】
この様にして得られた液晶表示板(1)は、上下の基板の隙間距離が均一化されており、スペーサー自身の光抜けもなくなるとともにスペーサー周囲の光抜けも抑制されており、良好な表示品位であった。
【0104】
また、所定の電圧印加において、長時間駆動できた。
【0105】
実施例2〜9
実施例1に記載のモノマーや処理カーボンブラックの種類を下記の表1の記載のように変更した以外は、実施例1の方法を繰り返して黒色のビニル系樹脂架橋着色粒子をそれぞれ得た。
【0106】
実施例10
実施例1において、懸濁重合を膜乳化法で行い、黒色のビニル系樹脂架橋着色粒子(10)を得た。
【0107】
【表1】
【0108】
表中、CBはカーボンブラック、DBはジビニルベンゼン、
DPはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、
TMはテトラメチロールメタントリアクリレート、
TEはテトラエチレングリコールジメタアクリレートを示す。
【0109】
得られたビニル系樹脂架橋着色粒子を、それぞれ、所望の粒子径となるように精密に分級することにより、黒色の液晶表示板用の着色スペーサー(2)〜(10)を得た。得られた各着色スペーサーの物性、色(目視観察)、平均粒子径、変動係数、破壊強度、硬度(10%圧縮弾性率)を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
表中、着色スペーサーはその番号を示し、硬度は10%
圧縮弾性率(kgf/mm2 )示す。
【0112】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(2)〜(10)を用いて液晶表示板(2)〜(10)をそれぞれ作製した。得られた各液晶表示板の特性とともに湿式散布溶媒への色落ちの有無などの製造の際の因子についても表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
比較例1
実施例1において、処理カーボンブラック(1)の代わりに市販のカーボンブラックMA−100R 66.7部をそのまま用いた以外は、実施例1と同様に懸濁重合を行ったところ、凝集が起こり、均一に重合できなかった。
【0115】
なお、使用したモノマーの種類、使用量などを表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
表中、DBはジビニルベンゼン、CBはカーボンブラック、
DPはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、
ANはアクリロニトリルを示す。
【0118】
懸濁重合後、得られた比較用のビニル系樹脂架橋着色粒子を所望の粒子となるように精密に分級することにより、比較用の着色スペーサー(11)を得た。得られた着色スペーサー(11)の物性、色(目視観察)、平均粒子径、変動係数、破壊強度、硬度(10%圧縮弾性率)を表5に示す。
【0119】
【表5】
【0120】
表中、着色スペーサーはその番号を示し、
硬度は10%圧縮弾性率(kgf/mm2 )示す。
【0121】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(11)を用いて液晶表示板(11)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位である隙間距離の均一性、スペーサー自身の光抜け程度、所定電圧印加時の長期間駆動性とともに湿式散布溶媒への色落ちの有無などの製造の際の因子についても表6に示す。
【0122】
【表6】
【0123】
表5、表6から明らかなように、比較用の着色スペーサー(11)は、未処理のカーボンブラックに起因したモノマーの重合遅延が生ずる結果、得られた粒子の破壊強度や硬度が小さく、隙間距離の均一性が悪くなり、色ムラが発生した。また、カーボンブラックを含有していない粒子が多数存在するためスペーサー自身の光抜けが多く、さらにカーボンブラックが得られた粒子中に均一に分散されていないためにスペーサー周囲の光抜けの程度も大きく、また、カーボンブラックの導電性に起因してスペーサーの絶縁性が低下するために所定電圧を印加しても初期駆動しない場合があり、結果として液晶表示板の表示品位は極めて低いものであった。
【0124】
比較例2
反応性基を有しないポリスチレン(旭化成工業(株)製スタロン−666、Mn=4000)40部とカーボンブラックMA−100R 20部とを合成例1と同様に混練、冷却、粉砕してポリスチレンとカーボンブラックとのPC混合物を得た。
【0125】
次に、実施例1において、処理カーボンブラック(1)の代わりに上記PC混合物を用いた以外は、実施例1と同様に懸濁重合を行い(凝集が発生)、比較用のビニル系樹脂架橋着色粒子を得た。かかる粒子を、さらに、所望の粒子系となるように精密に分級して比較用の着色スペーサー(12)を得た。得られた着色スペーサー(12)の物性を上記の表5に示す。
【0126】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(12)を用いて液晶表示板(12)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位とともに製造の際の因子についても上記の表6に示す。
【0127】
表5、表6から明らかなように、比較用の着色スペーサー(12)は、未処理のカーボンブラックに起因するモノマーの重合遅延が生じる結果得られる粒子の破壊強度や硬度の値が低くなるため、隙間距離の均一性が悪くなり色ムラが発生する。また、カーボンブラックが含有されていない粒子が多く存在するため、スペーサー自身の光抜けが生ずる。さらに、カーボンブラックが粒子中に均一に分散されていないため、スペーサー周囲の光抜けの程度も大きく、また、長期間所定電圧を印加した場合、カーボンブラックの導電性に起因するスペーサーの絶縁性が低下するため、点灯ムラが発生する。
【0128】
比較例3
最初に、染料の共存する水系媒体を次の方法で調製した:イオン交換水2リットルにノニオン系界面活性剤(花王製エマルゲン985)1部とポリビニルアルコール60部とを溶解させ、アンスラキノン系青色分散染料(C.I.Disperse Blue56)50部を加え、超音波分散によりこの染料を十分に分散させた。その後、得られた分散液を10μmの直径を有するメンブランフィルターで濾過し、染料の共存する水系媒体を得た。
【0129】
ジビニルベンゼン100部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100部、ベンゾイルパーオキサイド6部を均一に溶解した後に、上記水系媒体を高速攪拌しながら添加して懸濁液とした。この懸濁液を撹拌機、還流冷却管、不活性ガス導入管を備えたフラスコに仕込み、窒素ガスを導入しながら撹拌下80℃で10分間、95℃で1時間加熱して重合を行った。
【0130】
冷却後、得られた濃青色の微粒子を、濾過と洗浄を繰り返し、残留物を乾燥して濃青色の比較用のビニル系樹脂架橋着色粒子を得た。さらに、所望の粒子径となるように精密に分級して比較用の着色スペーサー(13)を得た。
【0131】
得られた着色スペーサー(13)の物性を上記の表5に示す。
【0132】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(13)を用いて液晶表示板(13)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位とともに製造の際の因子についても上記の表6に示す。
【0133】
表5、表6から明らかなように、比較用の着色スペーサー(13)は、染料に起因したモノマーの重合遅延が生じる結果、得られる粒子の破壊強度と硬度が低くなって隙間距離の均一性が悪くなり、色ムラが発生する。また、湿式散布溶媒への色落ちがあることにより、かかる媒体中に染料が混入し、長時間所定電圧を印加した場合に、点灯ムラの発生が生じるとともにスペーサー自身の光り抜けとスペーサー周囲の光抜けがあるために表示品位は悪かった。
【0134】
比較例4
攪拌機、不活性ガス導入管および還流冷却管を備えたフラスコに、5重量%のポリビニルアルコール溶液2.5リットルを準備し、これにジビニルベンゼン300部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート700部およびベンゾイルパーオキサイド15部を均一に溶解混合したモノマー溶液を仕込んだ。ついで、撹拌下で80℃に昇温して10時間懸濁させ、さらに95℃に昇温して1時間重合させた。次に、濾過と洗浄とを繰り返して架橋微粒子を得た。この微粒子を所望の微粒子となるように精密に分級することにより、高分子微粒子を得た。
【0135】
一方、水300ml、分散染料カヤロンポリエステルブラックG−SP(日本化薬(株)製)5部、界面活性剤エマルゲンA−50(花王(株)製)0.3部を加え、十分に撹拌し混合した。このビーカーの中に、上記高分子微粒子10部を撹拌しながら加え、染浴中によく分散をさせた。次に、この高分離子粒子を含む染浴を0.5リットルのオートクレーブに移し、130℃で3時間染色を行った。その後、余剰の染浴の濾別とアセトンでの洗浄を繰り返すことにより黒色の比較用のビニル系樹脂架橋着色微粒子を得て、比較用の着色スペーサー(14)とした。
【0136】
得られた比較用の着色スペーサー(14)の物性を上記の表5に示す。
【0137】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(14)を用いて液晶表示板(14)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位とともに製造の際の因子についても上記の表6に示す。
【0138】
表5、表6から明らかなように、比較用の着色スペーサー(14)は染料による後染着を行う結果、得られる粒子の破壊強度が低くなって隙間距離の均一製が悪くなり、色ムラが発生する。また、湿式散布溶媒への色落ちがあることにより、液晶中に染料が混入し、長期間の所定電圧を印加した場合に、点灯ムラが発生するとともにスペーサー周囲の光抜けもあるために表示品位が悪かった。
【0139】
比較例5
比較例1において、モノマーの種類と使用量とを上記の表4に示す以外は、比較例1と同様にして行い、比較用の着色スペーサー(15)を得た。
【0140】
得られた比較用の着色スペーサー(15)の物性を上記の表5に示す。
【0141】
次に、実施例1と同様に、着色スペーサー(15)を用いて液晶表示板(15)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位とともに製造の際の因子についても上記の表6に示す。
【0142】
表5、表6から明らかなように、カーボンブラックの導電性に起因して長期間所定電圧を印加した場合、点灯ムラが発生するとともにスペーサー周囲の光抜けもあるため表示品位は悪かった。
【0143】
比較例6
比較例1において、懸濁重合を膜乳化法に代えた以外は、同様に行い、比較用白色スペーサー(16)を得た。その物性を表5に示す。膜乳化法では、油滴中にカーボンブラックが入らないため、白色スペーサーしか得られなかった。
【0144】
次に、実施例1と同様にスペーサー(16)を用いて、液晶表示板(16)を作製した。得られた液晶表示板の表示品位とともに製造の際の因子についても上記の表6に示す。
【0145】
表5および表6から明らかなように、スペーサーが黒色化されないため、スペーサー自身の光抜けが大きく、液晶表示板にしたときにコントラストが低下して表示品位は悪かった。
【0146】
【発明の効果】
重合体で表面処理して得られるカーボンブラックを用いることにより、樹脂架橋性の着色粒子が得られ、これを用いることにより、液晶表示板の隙間距離を一定に保持できるスペーサーが提供できる。また、かかる処理カーボンブラックは、スペーサー粒子中の均一分散性に優れるため、得られる粒子の着色度を増加させスペーサー周囲の光抜けも小さくすることできるので、スペーサー自身の光抜け防止が改良される。
【0147】
また、処理カーボンブラックとビニル系単量体との重合ではビニル系単量体への処理カーボンブラックの分散性が優れており、また、重合遅延がなく、膜乳化法などの簡便な方法で実施することができ、従来の着色スペーサーに比較し、強度や硬度に優れた着色スペーサーとなる。
【0148】
さらに、上記の液晶表示板用の着色スペーサーは、絶縁性に優れるため、液晶表示板に使用したときに、電気特性が損なわれず、駆動性や長時間の使用における信頼性の向上した液晶表示板が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例である液晶表示板の説明用断面図である。
【符号の説明】
3…着色スペーサー
4…ポリイミド配向膜
5…電極
8…着色スペーサー(面内)
12…ガラス基板
110…電極基板
111…ガラス基板
120…上側電極板
Claims (1)
- 予めカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)および水酸基およびアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた少なくとも 1 種であって、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)を有する重合体(P)で表面処理して得られるカーボンブラックと、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)とを配合し、かかる配合物を重合することを特徴とする液晶表示板用着色スペーサーの製造方法。
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