JP3848487B2 - 液晶表示装置用スペーサ及び液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置用スペーサ及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用スペーサ及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、一般に、配向層を形成した透明電極基板を液晶表示装置用スペーサを介して所定の間隔に対向配置し、周辺をシール後に液晶を注入し、注入口を封止することにより製造される。
【0003】
上記液晶表示装置において、液晶表示装置用スペーサは、透明電極基板の間隔を一定に保持するために用いられるものであるが、最近、液晶とスペーサとの界面で液晶分子の配向が変則的になる「異常配向現象」が発生することにより、液晶表示装置の表示品質が低下することが問題となっている。
【0004】
特に、近年需要の伸びているスーパーツイステッドネマチック液晶(STN型液晶)でこのような異常配向現象が起こり、液晶表示装置を点灯させた際に、スペーサの周囲でバックライトからの光が透過してしまう、いわゆる「光抜け」や、液晶画面に年輪上の模様が現れる、いわゆる「年輪」が発生する。
【0005】
この光抜け等の現象は、特に液晶表示装置に高電圧を印加したり、液晶表示装置の画面に強い振動、衝撃を与えたときに生じることが多く、光抜けが画素内に存在する多くのスペーサの周囲で発生すると、液晶表示装置のコントラストを著しく低下させてしまう。
【0006】
このような異常配向現象は、液晶表示装置が衝撃等を受けると、スペーサ表面と液晶とが激しく振動し、その結果、液晶とスペーサとの界面において、液晶分子がスペーサの主に親水性部分と吸着し、液晶の配向が部分的に乱れることに起因していると考えられる。
【0007】
このような異常配向現象に起因する光抜けの問題を解決する方法として、例えば、特開平9−113915号公報には、表面に長鎖アルキル基を有する化合物が結合した液晶表示装置用スペーサが開示されており、このような化合物を用いることにより、スペーサ周辺の異常配向現象の発生を回避することができることが示唆されている。
【0008】
しかし、このような液晶表示装置用スペーサを用いると、液晶表示装置に通常の電圧を印加した状態では、異常配向現象の発生を防止することができるが、高電圧を印加した後や振動、衝撃を与えた後に発生する異常配向現象や光抜け現象等の防止に関しては、表面に長鎖アルキル基を有する化合物を結合させたのみでは、その防止効果が充分でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、液晶表示装置に通常の電圧を印加した際や高電圧を印加した後、液晶表示装置に振動、衝撃を与えた後等に発生する異常配向現象を防止することができ、高いコントラストを有する液晶表示装置を作製することができる液晶表示装置用スペーサ及びそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶表示装置用スペーサは、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させることにより得られ、2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体反応物を少なくとも5重量%以上含むプラスチック微球体の表面に層が形成されており、前記層は、水酸基を有する重合性単量体を重合させた重合体でプラスチック微球体の表面を被覆することにより、もしくは水酸基を有する重合体をプラスチック微球体の表面にグラフト重合した後に重合鎖を炭素数4〜22のアルデヒドまたは酸クロライドと反応させることにより形成されており、前記層は、下記の式(1);
1 −O− (1)
(式中、R1 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団、及び/又は、下記の式(2);
2 −CO− (2)
(式中、R2 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団を1ng/m2 以上の密度で含むことを特徴とする。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の液晶表示装置用スペーサを構成するプラスチック微球体は、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させることにより得られ、2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体反応物を少なくとも5重量%以上含むものである。
上記プラスチック微球体は、2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体の重合物のみからなるものであってもよい。
【0012】
2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体反応物が少なくとも5重量%未満であるときは、上記プラスチック微球体の強度が低下して液晶表示装置用スペーサとしての機能を果たせなくなる。
【0013】
上記2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えば、複数のメチロール基を有するメチロールアルキルの一部又は全部が(メタ)アクリル酸とエステルを形成しているメチロールアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート及びジアリルアクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記複数のメチロール基を有するメチロールアルキルの一部又は全部が(メタ)アクリル酸とエステルを形成しているメチロールアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
その他のエチレン性不飽和基を有する単量体としては、エチレン性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0017】
上記プラスチック微球体は、上記2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体を少なくとも1種以上使用しているが、これらを2種以上併用してもよく、さらに、上記その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を1種又は2種以上併用してもよい。
【0018】
上記プラスチック微球体は、上記エチレン性不飽和基を有する単量体の少なくとも1種以上を公知の方法、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法を用いて重合させることにより製造することができるが、最も一般的には、ラジカル重合開始剤の存在下、適当な温度条件の下で数時間〜数十時間懸濁重合させることにより製造することができる。
【0019】
得られるプラスチック微球体の形状は特に限定されず、対向するガラス板により狭持された際に一定の間隔を保持することができるものであればよく、楕円形状等の非真球形状のものであっても構わないが、真球形状のものが好ましい。
【0020】
プラスチック微球体の形状が真球形状のものである場合には、その直径は、0.1〜100μmの範囲が好ましく、特に1〜30μmの範囲が好ましい。プラスチック微球体の形状が楕円形状のものである場合には、その短径は、0.1〜100μmの範囲が好ましく、特に1〜30μmの範囲が好ましい。このときの長径に対する短径の比は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0021】
上記プラスチック微球体は無色透明、又は、必要に応じて、公知の方法により着色されていてもよい。
着色に用いられる色素、顔料等は、市販されている通常の色素や、有機顔料、無機顔料を用いることができる。上記有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ジアゾ系色素等が挙げられ、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、表面修飾被覆体、金属塩類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の液晶表示装置用スペーサでは、上記プラスチック微球体の表面に、下記の式(1);
1 −O− (1)
(式中、R1 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団、及び/又は、下記の式(2);
2 −CO− (2)
(式中、R2 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団を1ng/m2 以上の密度で含む層が形成されている。
【0023】
上記液晶表示装置用スペーサは、プラスチック微球体の表面に、式(1)及び/又は式(2)で表される官能基団を単独で含む層が形成されているか、両者を含む層が形成されていれば、上記官能基団の存在状態は特に限定されない。従って、上記官能基団を有する化合物がプラスチック微球体に直接結合していてもよく、上記官能基団を有する化合物がプラスチック微球体に直接結合しておらず、単量体に被覆層を形成しているだけであってもよい。
【0024】
ただし、その密度は、プラスチック微球体の単位表面積(1m2 )当たり1ng以上である必要がある。
これらの官能基団の密度が、プラスチック微球体の単位表面積(1m2 )当たり1ng未満であると、製造した液晶表示装置用スペーサを用いて液晶表示装置を製造した場合に、異常配向現象等に起因する光抜け現象や年輪現象が発生してしまう。
【0025】
式(1)及び/又は式(2)で表される官能基団の密度が大きくなるほど、異常配向現象等に起因する光抜け現象を防止する効果は大きくなるため、物理的に可能な範囲内の密度であれば、その上限値は特に限定されるものではないが、100ng/m2 を超えると、スペーサのギャップ制御に影響が出てくる場合があるので好ましくない。
【0026】
上記R1 又はR2 で表される炭素数が4〜22の炭化水素基は、直鎖状、分鎖状、環状のいずれであってもよく、飽和であっても、不飽和であってもよいが、水酸基等の親水性の置換基を有するものは好ましくない。
また、炭素数が4未満であったり、22を超える場合は、液晶表示装置を作製した際にスペーサ周囲に発生する異常配向現象を阻止することができないので、上記範囲に限定される。
【0030】
プラスチック微球体の表面に、上記式(1)及び/又は式(2)で表される官能基団を含む層を形成する方法としては、例えば、水酸基等の活性水素を有する重合性単量体を重合させた重合体で上記プラスチック微球体の表面を被覆する方法、水酸基等の活性水素を有する重合性単量体をプラスチック微球体の表面にグラフト重合した後、該重合体層を炭素数4〜22のアルデヒド、酸クロライド等と反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
水酸基層の活性水素を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前者の方法では、上記活性水素を有する重合性単量体を重合させて被覆層を形成するが、その際、これらの活性水素を有する重合性単量体の1種又は2種以上と、そのほかの重合性単量体とを併用してもよい。
【0033】
後者の方法では、これらの活性水素を有する重合性単量体をグラフト重合させた重合体層に、炭素数4〜22のアルデヒド、酸クロライド等のアルキル付加試薬、例えば、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、ステアリルアルデヒド、ヘキサン酸クロライド、ラウリン酸クロライド、ステアリン酸クロライド、リノール酸クロライド、リノレン酸クロライド等を反応させる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
グラフト重合により形成された上記重合体層中の水酸基等の活性水素は、全てアルキル付加することが望ましいが、全てアルキル付加していなくても、その周囲に充分な密度でアルキル基が存在していればよい。
【0035】
上記方法により製造した液晶表示装置用スペーサを用いた液晶表示装置は、実用電圧を大きく上回る高電圧を印加しても、又は、大きな振動や衝撃を与えても、上記液晶表示装置用スペーサ周囲での異常配向現象の発生を防止することができ、さらには光抜けや年輪現象の発生を低減させることができる。
【0036】
本発明の液晶表示装置用スペーサを用いた場合に、なぜ液晶の異常配向現象や光抜け現象等を阻止することができるのかは、明らかでないが、およそ以下のように考えられている。
異常配向現象は、スペーサと液晶との界面において液晶分子がスペーサに対し垂直配向することにより消失すると考えられているが、スペーサ表面の疎水性を強くすることでこの垂直配向を促進することができることが知られている。スペーサの表面に本発明の官能基団を含有させることにより、液晶がスペーサに対し垂直に配向し、光抜けを防止することができるが、その密度がスペーサの表面積に対して1ng/m2 未満である場合には、振動や衝撃を与えた際に、容易にその垂直配向が乱れて異常配向現象となり、光抜け現象が発生する。
【0037】
すなわち、液晶表示装置に振動や衝撃を与えると、上述したように、スペーサ表面と液晶分子との接触状態が変化し、印加する電圧や振動、衝撃の程度が低い場合には、スペーサ表面と液晶分子との接触は、表面処理層の表層部分に留まり、その状態に大きな変化は見られないが、より強いエネルギーに対しては、表面処理層の深部まで液晶が浸透する現象が生じる。
【0038】
このため、液晶は、表面処理層の深部に存在する親水性部分やプラスチック微球体の表面部分に接触し、化学吸着が起こる。このような吸着現象が起こり、これが液晶パネル上でリング状に出現することにより、年輪現象が発生すると考えられる。
【0039】
一旦、このような化学吸着が起こると、吸着状態から容易に元の状態に戻すことができない。ただし、例えば、液晶表示装置を加熱して液晶の転移温度以上にすると、この化学吸着した液晶を脱離させることができるが、液晶の移動装置が装備された状態でこのような加熱処理を施すことは望ましくない。
【0040】
しかしながら、本発明の液晶表示装置用スペーサを用いて液晶表示装置を製造すると、振動等により液晶分子が表面処理層の深部に達しても、深部においても充分なアルキル基の密度を有しているため液晶分子との垂直配向を維持することができ、あるいは、液晶分子がプラスチック微球体表面まで到達することなく、これらの層やプラスチック微球体表面との化学吸着が起こらず、液晶分子の配向状態に変化を生じさせない。その結果、光抜け等の現象も発生しない。
【0041】
上記式(1)及び/又は式(2)で表される官能基団を含む層の厚みは、0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
上述したように、上記官能基団を含む単量体とそのほかの単量体とを併用する場合もあるが、その際、上記官能基団を含む単量体の混合比率が低いと、上記官能基団の密度が低くなるので、上記官能基団を含む層の厚さを厚くする必要が生じ、一方、上記官能基団を含む単量体の混合比率が高いと、上記官能基団の密度が高くなるので、上記官能基団を含む層の厚さをより薄くすることができる。
【0042】
プラスチック微球体表面上に存在する上記式(1)及び/又は式(2)で表される官能基団の量は、既知の分析方法によって測定することができる。例えば、熱分解槽を装着したガスクロマトグラフィー質量分析計(熱分解GC−MS)を使用することにより測定が可能である。また、既知の条件で加水分解し、生成した有機酸やアルコールをGC−MS分析計や高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析する方法もある。この測定の際、感度を上げるために、トリメチルシリル化(TMS化)や蛍光物質によるラベル化を行うことも可能である。例えば、それぞれの定量値は、予め調製した既知濃度の標準溶液を測定して得られた検量線から算出される。これらの方法により得られた定量値を分析に要したスペーサの表面積で除すると、単位面積当たりの官能基団の量が得られる。
【0043】
上記液晶表示装置用スペーサを用いた本発明の液晶表示装置は、例えば、以下の方法により作製することができる。
まず、偏光シートが一面に設けられた2枚の透明基板の偏光シートが設けられた面と反対側の面に、SiO2 等からなる絶縁膜を形成し、絶縁膜の上にITO等からなる透明電極をフォトリソグラフィーによりパターンニングして形成する。その後、それぞれの透明電極上に、ポリイミド等からなる配向膜を形成する。
【0044】
次に、例えば、2枚の基板のうちの1枚の基板に本発明の液晶表示装置用スペーサを散布する。この場合、その散布個数は、基板1mm2 当たり10〜1000個が好ましく、50〜500個がより好ましい。基板1mm2 当たり10個未満であると、基板間の間隔保持性能が低下することがあり、一方、基板1mm2 当たり1000個を超えると、コントラストが低下することがある。
【0045】
その後、他方の基板の周辺にシール剤を用いて接着層を形成した後、液晶表示装置用スペーサを散布した基板と他方の基板とを配向膜が対向するように配置して貼り合わせ、更に液晶をこれら基板間に注入することにより液晶セルを作製し、該液晶セルに配線を設けることにより液晶表示装置を作製する。
【0046】
このようにして作製された上記液晶表示装置では、図1に示すように、偏光シート11が一面に設けられ、偏光シート11が設けられた面と反対の面に絶縁膜13、透明電極14及び配向膜15が順次積層された一対の透明基板12が、液晶表示装置用スペーサ17を介してその配向膜15同士が対向するように配置され、この液晶表示装置用スペーサ17及びシール材18により確保された空間に液晶16が封入されて構成されている。
【0047】
本発明の液晶表示装置は、上記した液晶表示装置用スペーサが使用されているため、液晶表示装置に通常の電圧を印加した際や高電圧を印加した後、又は、液晶表示装置に振動、衝撃を与えた後に発生する異常配向現象を防止することができ、高いコントラストを有し、高品質の表示性能を有する液晶表示装置となる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
参考例1
テトラメチロールメタントリアクリレート30重量部、ジビニルベンゼン70重量部及び過酸化ベンゾイル3重量部を混合し、これを濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液500重量部に投入してよく攪拌し、粒径が3〜10μmの微粒子が水溶液中に懸濁した状態とした。
この懸濁液を攪拌しながら、窒素雰囲気下、90℃で10時間懸濁重合を行い、反応後濾過により微球体のみを取り出して充分に水洗した後、湿式分級して透明プラスチック微球体(平均粒径:6.71μm、標準偏差:0.20μm)を得た。
【0050】
得られたプラスチック微球体10gをトルエン50mlに分散させた分散液に、トリエチルアミンを10g加え、メタクリル酸クロライド5gを攪拌しながら滴下させた後、30℃の水浴中で5時間攪拌した。その後、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンとメタノールで充分に洗浄した後、再度、トルエン50mlに分散させた。
【0051】
この懸濁液に、ステアリルメタクリレート、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(#400)メタクリレートをそれぞれ20g添加し、さらに過酸化ベンゾイル0.1gを加え、攪拌しながら70℃で10時間反応させた。
【0052】
この後、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンにより充分に洗浄した後、真空乾燥器にて乾燥させることにより、液晶表示装置用スペーサ(平均粒径:6.95μm、標準偏差:0.22μm、表面処理層の厚み:約0.12μm)を得た。なお、粒径は、コールターカウンターを用いて測定した。
【0053】
得られた液晶表示装置用スペーサを熱分解GC−MSで分析したところ、官能基団(C1837−O−)は、スペーサの表面部分に25ng/m2 の密度で存在していた。
このスペーサを用いて、以下に示す方法により液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0054】
液晶表示装置の作製
まず、一対の透明ガラス板(150mm×150mm)の一面に、CVD法によりSiO2 膜を蒸着し、次に、SiO2 膜上の全面にスパッタリングによりITO膜を形成し、リソグラフィーによりパターンニングを行った。この上に市販のポリイミド配向膜(日産化学社製、サンエバー SE150)を配置し、焼成した後、ラビング処理を施し、一対の液晶表示装置用のガラス基板を作製した。
【0055】
次に、得られた液晶表示装置用スペーサを上記ガラス基板上に散布した後、スペーサが散布されたガラス基板とスペーサが散布されなかったガラス基板とを、そのラビング方向(ツイスト角)が240°になるように対向配置させ、液晶表示装置を作製した。
なお、ガラス基板周辺のシーリングは、市販のシール剤(三井東圧社製、ストラクトボンド XN−21−S)を用いて行い、一対の基板を対向配置した後、加熱圧着することにより、空セルを作製した。そして、この空セルに所定量のライカル剤を添加したSTN型液晶(メルク社製、ZLI−2293)を注入し、封口入口を接着剤で塞いで、液晶表示装置を作製した。
【0056】
液晶表示装置の性能評価
得られた液晶表示装置に4〜5Vの交流電圧を印加しながら、顕微鏡で光抜けの状態(初期状態)を観察した後、80Vの交流電圧を10秒間印加し、再度顕微鏡で光抜けの状態(高電圧印加後の状態)を観察した。また、この液晶表示装置を、一旦、120℃で1時間加熱した後、衝撃負荷を与えるべく、セルの中央を「勝沼式打診器」にて300回叩き、この後、光抜けの変化、液晶表示装置全面の表示ムラ等の変化を観察した。
【0061】
実施例
参考例1で得られた分級後のプラスチック微球体10gを0.1Nの硝酸水溶液50mlに分散させた分散液に、硝酸セリウム(IV)1gを加え、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gを添加した後、30℃の水浴中で5時間攪拌した。その後、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、メタノールで充分に洗浄し、真空乾燥器で充分に乾燥させた。
【0062】
次に、微粒子をトルエン50mlとトリエチルアミン10mlの混合溶媒に分散させ、この懸濁液にステアリン酸クロライド10gを攪拌下に滴下させ、このまま30℃で5時間反応させた。次に、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンとメタノールで充分に洗浄した後、真空乾燥器にて乾燥させることにより、液晶表示装置用スペーサ(平均粒径:6.81μm、標準偏差:0.22μm、表面処理層の厚み:約0.05μm)を得た。
【0063】
得られた液晶表示装置用スペーサを1NのNaOHを含有する50vol%メタノール水溶液に添加し、加熱して加水分解し、GC−MSで分析したところ、官能基団(C1735−CO−)は、スペーサの表面部分に11ng/m2 の密度で存在していた。
このスペーサを用いて、参考例1記載の液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0068】
実施例
ステアリン酸クロライドの代わりにラウリン酸クロライド10gを用いた以外は、実施例と同様に操作を行い、液晶表示装置用スペーサ(平均粒径:6.82μm、標準偏差:0.23μm、表面処理層の厚み:約0.06μm)を得た。
【0069】
得られた液晶表示装置用スペーサを、熱分解GC−MSで分析したところ、官能基団(C1225−O−)は、スペーサの表面部分に15ng/m2 の密度で存在していた。
このスペーサを用いて、参考例1記載の方法により液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0073】
比較例1
参考例1で得られたプラスチック微球体をそのまま用い、参考例1記載の方法により液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0074】
比較例2
参考例1で得られたプラスチック微球体をトルエン50mlとトリエチルアミン10mlとの混合溶媒に分散させ、この懸濁液にステアリン酸クロライド10gを攪拌下に滴下させ、このまま30℃で5時間反応させた。次に、微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンとメタノールで充分に洗浄した後、真空乾燥器にて乾燥させることにより、液晶表示装置用スペーサ(平均粒径:6.73μm、標準偏差:0.21μm、表面処理層の厚み:約0.01μm)を得た。
【0075】
得られた液晶表示装置用スペーサを1NのNaOHを含有する50vol%メタノール水溶液に添加し、加熱して加水分解し、GC−MSで分析したところ、官能基団(C1837−CO−)は、スペーサの表面部分に0.8ng/m2 の密度で存在していた。
このスペーサを用いて、参考例1記載の方法により液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0076】
比較例3
参考例1で得られた分級後のプラスチック微球体10gをトルエン50mlに分散させた分散液に、トリエチルアミン10gを加え、メタクリル酸クロライド5gを攪拌しながら滴下させた後、このまま30℃の水浴中で5時間攪拌した。その後、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンとメタノールで充分に洗浄した後、再度、トルエン50mlに分散させた。
この懸濁液に、ステアリルメタクリレート1g、メチルメタクリレート20g、メトキシポリエチレングリコール(#400)メタクリレート20gを添加し、さらに過酸化ベンゾイル0.1gを加え、攪拌しながら70℃で10時間反応させた。
その後、得られた微粒子のみを濾過により取り出し、トルエンで充分に洗浄した後、真空乾燥器で充分に乾燥させることにより、液晶表示装置用スペーサ(平均粒径:6.87μm、標準偏差:0.22μm、表面処理層の厚み:約0.08μm)を得た。
【0077】
得られた液晶表示装置用スペーサを、熱分解GC−MSで分析したところ、官能基団(C1837−O−)は、スペーサの表面部分に0.5ng/m2 の密度で存在していた。
このスペーサを用いて、参考例1記載の方法により液晶表示装置を作製し、液晶表示装置の評価を行った。結果を下記の表1に示した。
【0078】
【表1】
Figure 0003848487
【0079】
表1に示した結果から明らかなように、比較例1〜3で得られた液晶表示装置用スペーサを用いた液晶表示装置に光抜け等の異常配向現象が発生しているのに対し、参考例1、及び実施例1、2で得られた液晶表示装置用スペーサは、高電圧を印加した後や、液晶表示装置に振動、衝撃を与えた後にも、光抜けや年輪等の液晶の異常配向現象は発生しなかった。
【0080】
【発明の効果】
本発明の液晶表示装置用スペーサは、上述の構成からなるので、上記スペーサを用いた液晶表示装置に通常の電圧を印加した際や高電圧を印加した後、液晶表示装置に振動、衝撃を与えた後等に発生する異常配向現象を防止することができ、高いコントラストを有する液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示装置用スペーサを用いた液晶表示装置を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
1 偏光シート
2 透明基板
3 絶縁膜
4 透明電極
5 配向膜
6 液晶
7 液晶表示装置用スペーサ
8 シール材
10 液晶表示装置

Claims (3)

  1. エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させることにより得られ、2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体反応物を少なくとも5重量%以上含むプラスチック微球体の表面に層が形成されており、
    前記層は、水酸基を有する重合性単量体を重合させた重合体でプラスチック微球体の表面を被覆することにより、もしくは水酸基を有する重合体をプラスチック微球体の表面にグラフト重合した後に重合鎖を炭素数4〜22のアルデヒドまたは酸クロライドと反応させることにより形成されており、
    前記層は、下記の式(1);
    1 −O− (1)
    (式中、R1 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団、及び/又は、下記の式(2);
    2 −CO− (2)
    (式中、R2 は、炭素数が4〜22の炭化水素基を表す)で表される官能基団を1ng/m2 以上の密度で含むことを特徴とする液晶表示装置用スペーサ。
  2. 2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体が、複数のメチロール基を有するメチロールアルキルの一部又は全部が(メタ)アクリル酸とエステルを形成しているメチロールアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート及びジアリルアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置用スペーサ。
  3. 請求項1又は2記載の液晶表示装置用スペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示装置。
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