JP3679869B2 - 液晶マイクロカプセルおよびそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は液晶マイクロカプセルおよびそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報機器のディスプレイ用表示素子として、これまでに多くの液晶表示装置が提案されている。現在では、例えば特開昭47−11737号公報において開示されているTN(twisted nematic )モードおよび例えば特開昭60−107020号公報において開示されているSTN(super twisted nematic )モード等のネマティック液晶を使用するタイプの液晶表示装置が広く用いられている。TNモード、STNモードは、液晶分子の配列が素子内部で90°前後、あるいは260°前後にそれぞれ捻れた構造の初期状態をとる。素子に入射した光は、液晶分子が採る捻れ構造と複屈折とによって偏光状態が変化を受けた状態で出射する。
【0003】
このような液晶分子配列構造を有する液晶層を含む液晶セルに電界を印加すると、液晶分子は電解方向に再配列するために捻れ構造は解かれ、複屈折が失われて、入射光は偏光状態を変えることなく出射する。この原理を利用して、2枚の直線偏光子で液晶セルを挟んだ構造を採ることにより、電圧印加による液晶層の光学的性質が変化し、光の強度変化として観察される。TNモードおよびSTNモードの液晶表示装置は、このようにして明暗のコントラストを得ている。
【0004】
上記表示方式の液晶表示装置は、CRT(cathode ray tube)ディスプレイに比較して消費電力が著しく少なく、薄型表示パネルを実現できる長所があり、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等のOA用情報機器に広く用いられている。
【0005】
しかしながら、偏光子を用いるタイプは入射光を有効利用しているとは言い難い。実際に多くのディスプレイでは、液晶表示装置の後方に光源(バックライト)を付設して明るさを確保している。また、カラーフィルタを付設したタイプでは素子を透過する光がさらに減少し、結果として、より強力な光源が必要となる。光源の電力は、駆動回路を含む液晶表示装置の消費電力に匹敵するので、このように消費電力が大きい液晶表示装置は、電池での電力供給を行う携帯用ディスプレイに適さない。すなわち、液晶カラーディスプレイは勿論のこと、白黒ディスプレイにおいても、従来の表示方式では、より明るくすることと消費電力を低くすることが二率背反の関係にあり、バックライトを必要としない明るい表示方式の開発が切望されている。
【0006】
また、ディスプレイを見続けた場合の眼の疲労に関しても蛍光灯のバックライトは望ましくなく、反射型の明るいディスプレイが求められている。また、このようなバックライトを必要としない明るい表示方式のものは、投射型ディスプレイとして使用する場合でも、光透過率の高い表示方式の小型化、長寿命化、機器全体の節電に寄与する。
【0007】
このような要望に対して、偏光子を用いない液晶表示装置が提案されている。このようなものとして、White-Taylor型ゲスト・ホスト素子(J.Appl.Phys.vol.45,pp 4718-4723,1974)が挙げられる。このゲスト・ホスト素子は、カイラルネマティック相を示す液晶に2色性色素が混入された液晶材料を用いたものであり、この液晶分子および2色性色素分子が基板面に対してほぼ平行に配列された構造を有している。このゲスト・ホスト素子においては、電界を印加することによって、液晶分子の配列が変化し、2色性色素分子が向きを変えることにより光の透過率が変化する。この場合、液晶分子はカイラルネマティック相に起因する捻れ構造を採るため、色素による光吸収が効率よく起こる。したがって、この素子においては、原理的には偏光子なしでも高い表示コントラストが得られる。
【0008】
しかしながら、このゲスト・ホスト素子において高いコントラストを達成するためには、カイラルネマティック液晶の螺旋ピッチを光の波長オーダーにすることが必要となり、螺旋ピッチをその程度まで短くするとディスクリネーションラインが数多く発生し、表示品質が損なわれ、同時にヒステリシス現象が発現し、電界に対する応答も極端に遅くなる。したがって、TNモード、STNモードに比較した場合に実用性に乏しい。
【0009】
偏光子を用いない他の表示方式として、NCAP(Nematic Curvilinear Alighed Phase )もしくはPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)と称される表示方式がある。この表示方式は、高分子マトリクス中に誘電異方性が正のネマティック液晶を直径数μm程度の粒状(カプセル状)にして分散させたもの用いる方式である。この表示方式においては、液晶材料は常光での屈折率が高分子マトリクスの屈折率とほぼ同じで、異常光での屈折率が高分子マトリクスの屈折率と異なるものを選定して用いる。
【0010】
この表示方式において、初期の状態では、液晶粒中で液晶分子が歪んだ配列構造を採り、しかも液晶粒間での配列方向のばらつきによって大部分の液晶粒と高分子マトリクスとの間に屈折率の差が生じ、結果としてすりガラスのように光を散乱させる。これに充分な電圧を加えると、液晶粒中の液晶分子が再配列され、垂直に入射する光に対して液晶と高分子マトリクスの屈折率が等しくなる。その結果、液晶と高分子マトリクスとの間の界面における屈折および反射が無くなり、透明状態に変化する。なお、入射光は直線光である必要はない。
【0011】
この表示方式は、このような動作原理を使って表示するため、偏光子は不要であり、入射光も有効に活用でき、明るい表示となる。また、NCAPの中に二色性色素を混合させることにより、着色−消色変化を起させることができる。
【0012】
この表示方式の液晶表示素子は、ガラスセルに高分子マトリクス中に液晶を含む液晶材料を封入したり、ガラス基板に前記液晶材料を塗布することにより、容易に作製することができる。この場合、コントラストを高めるために、後工程において、ガラスセルにずれ応力を加えたり、高分子マトリクスを延伸して液晶を配向させる必要がある。また、対向電極を作製するために、導電性ポリマーフィルムでラミネートすることがある。このような場合には、材質が熱可塑性樹脂であるために、充分な強度を得ることができない。
【0013】
さらに、この表示方式は、透明−白濁モード変化や黒色の二色性色素を添加して行う白−黒モード変化には容易に対応できるが、カラー表示を行うためにはカラーフィルターを配置する必要がある。この場合、カラーフィルターを配置するために、この表示方式の液晶表示素子を反射型ディスプレイとして使用すると、表示が暗くなってしまう。
【0014】
そこで、カラー表示が可能な反射型ディスプレイに適した液晶表示素子として、異なった色のゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルを用いたものが開示されている(特開昭58−144885号公報)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
電圧駆動用の液晶材料として使用する場合の液晶マイクロカプセルには、製膜後の機械的熱的処理が必要であるために、機械的強度や熱的強度が必要であり、しかもピンホール等の欠陥がないことが要求される。しかしながら、従来の電圧駆動用の液晶マイクロカプセルは、これらの要求特性が不充分である。特に、疎水性の強いフッ素系液晶を用いる場合については問題である。
【0016】
一方、ゼラチン等の被膜中にコレステリック液晶を封入してなる液晶マイクロカプセルは液晶温度計等に広く用いられており、高い機械的強度および熱的強度を有し、ピンホールのないものである(特開昭45−30446号公報)。しかしながら、ゼラチン等で構成された被膜はイオン性を有するので、電圧保持率が低下し、TFT(薄膜トランジスタ)を用いたアクティブ駆動が困難となる。このため、前記液晶マイクロカプセルは電圧駆動用の液晶マイクロカプセルには使用できない。
【0017】
また、カラー表示用ゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルにおいては、被膜の材料に親水性の高い材料を用いると、二色性色素が被膜を染色してしまうという問題点もある。このように液晶マイクロカプセルの被膜が染色されると、電圧印加に対して応答不能となり、良好にカラー表示を行うことができない。
【0018】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、OA機器用の反射型ディスプレイに適した液晶マイクロカプセルおよびそれを用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、比較的液晶材料と相互作用が小さい炭素−炭素結合を主鎖とする高分子において、親水性の置換基が機械的強度を向上させる性質を有すること、疎水性の置換基が駆動電圧を低くすることに着目して鋭意研究を重ねた結果、炭素−炭素結合を主鎖とする高分子において親水性の置換基と疎水性の置換基を混在させることにより、反射型ディスプレイに適した特性を有する液晶マイクロカプセルを得ることができることを見出し本発明をするに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、親水性の置換基としてシアノ基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、疎水性の置換基としてハロゲン置換炭化水素基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを具備することを特徴とする液晶マイクロカプセルを提供する。
【0021】
また、本発明は、それぞれに透明電極を有する一対の基板と、前記透明電極が対向するように配置した前記一対の基板間に挟持された液晶層と具備し、前記液晶層は、上記の液晶マイクロカプセルを含むことを特徴とする液晶表示素子を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の液晶マイクロカプセルは、高分子被膜が親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなるものである。ここで、炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とは、不飽和二重結合や不飽和三重結合を有するビニルモノマー、ジエンモノマー、アセチレンモノマー、ジアセチレンモノマー等をいう。
【0023】
親水性の置換基を有する単量体と無置換もしくは疎水性の置換基を有する単量体を重合させることにより得られる共重合体は、親水性と疎水性のバランスがとれており、マイクロカプセルを製造する過程において疎水性である液晶滴と分散媒である水との間の界面に選択的に集まり、ピンホールのない緻密な被膜を形成する。
【0024】
また、この共重合体は一般にランダム共重合体である。親水性の置換基が多いポリマー鎖部分は水側に集まり、疎水性の置換基が多いポリマー鎖部分は液晶側に集まるようになるので、全体としては水−液晶界面において伸びきった状態ではなく、かなり屈曲した構造をとる。そのため、機械的な刺激や熱的な刺激に対してポリマー鎖の状態を変化させることにより対応することができ、これにより高い耐性が発揮される。なお、共重合体がブロック共重合体であっても同様に高い耐性が発揮される。
【0025】
また、この共重合体において、親水性の置換基が機械的強度に寄与し、疎水性の置換基が駆動電圧を低くすることに寄与するので、この共重合体を被膜とする液晶マイクロカプセルは、両者の特性を兼ね備えたものとなる。
【0026】
親水性の置換基としては、水酸基、炭素数3以下のアルコールのカルボン酸エステル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数3以下のアルキル基を有するアシル基、炭素数3以下のアルコールの炭酸エステル基、炭素数3以下のアミンのカルボン酸アミド基、第一級アミノ基、炭素数3以下の置換基を有する第二級アミノ基、または炭素数3以下のアルコキシル基等が挙げられる。
【0027】
親水性の置換基において炭素数3以下としているのは、これより炭素数が多いと親水性基として充分に作用しなくなるためである。したがって、炭素数が小さいほど親水性は強い。しかしながら、電圧保持率や駆動電圧を考慮すると、親水性が強すぎないことやプロトン解離性基を多く含まないことが必要となる。したがって、親水性の置換基としてより好ましいものは、メチルエステル基、エチルエステル基、アセチル基、プロパノイル基、炭酸メチルエステル基、炭酸エチルエステル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基である。
【0028】
また、疎水性の置換基としては、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、炭素数4以上のアルコールのカルボン酸エステル基、炭素数4以上のアルキル基を有するアシル基、炭素数4以上のアルコールの炭酸エステル基、炭素数4以上のアミンのカルボン酸アミド基、炭素数4以上のアルコキシル基、またはアルキル置換シロキサン等が挙げられる。
【0029】
疎水性の置換基において炭素数4以上としているのは、これより炭素数が少ないと疎水性基として充分に作用しなくなるためである。したがって、炭素数が大きいほど疎水性は強い。しかしながら、疎水性が強すぎると、マイクロカプセルの被膜を形成する時に、単量体が液晶滴と水の界面に移動することが困難になり、均一な被膜の形成が困難となる。なお、長鎖アルキル基のような柔軟性の高い基を有すると、形成された被膜のガラス転移温度が低くなり、熱的に弱くなる。したがって、疎水性の置換基としてより好ましいものは、イソブチルエステル基、t−ブチルエステル基、フェニルエステル基、イソブチル炭酸エステル基、t−ブチル炭酸エステル基、フェニル炭酸エステル基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基である。また、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエンも疎水基として好ましい。この場合、被膜としては機械的耐性、特にゴム弾性が付与される。
【0030】
なお、液晶マイクロカプセルにおいて、溶媒中での分散性を考慮すると、親水性の置換基が外側に位置し、疎水性の置換基が内側に位置することが好ましい。本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を含む単量体は、その単量体のホモポリマーの純水との静的接触角が45度未満であり、疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を含む単量体は、その単量体のホモポリマーの純水との静的接触角が45度以上であることが好ましい。
【0031】
親水性の置換基において、接触角が45度より大きいと親水性基として充分に作用しなくなる。したがって、接触角が小さいほど親水性は強い。しかしながら、電圧保持率や駆動電圧を考慮すると、親水性が強すぎないことも必要である。したがって、接触角として好ましいのは5〜30度である。
【0032】
疎水性の置換基において、接触角が45度未満であると疎水性基として充分に作用しなくなる。したがって、接触角が大きいほど疎水性は強い。しかしながら、疎水性が大きすぎると、マイクロカプセルの被膜を形成する時に単量体が液晶滴と水の界面に移動することが困難になり、均一な被膜の形成が困難になる。したがって、接触角として好ましいのは60〜90度である。
【0033】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいて、液晶化合物としては、フッ素系液晶、シアノ系液晶、エステル系液晶等を用いることができる。また、液晶化合物としては、屈折率異方性があり、電圧によって配向が変化するものであればどのようなもの良いが、好ましくはネマチック液晶、コレステリック液晶等である。特に、フッ素系のネマチック液晶が好ましい。なお、光散乱を電圧でON−OFFさせ、透明−白濁変化を起こさせるモードの場合には、被膜を構成する高分子材料の屈折率と電圧ON時の液晶化合物の屈折率とがほぼ一致するように材料を選択することが好ましい。
具体的には、下記一般式(1)〜(10)で表される各種液晶化合物単独およびこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
(式中、R′、Xはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルコキシアルキルシクロヘキシル基、アルキルシクロヘキシルフェニル基、シアノフェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロメチル基、フルオロメトキシ基、アルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルシクロヘキシルアルキル基、アルキルシクロヘキシルアルキル基、アルコキシアルコキシシクロヘキシルアルキル基、アルコキシフェニルアルキル基、アルキルシクロヘキシルフェニルアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子を示す。これらのアルキル鎖およびアルコキシ鎖中に光学活性中心を有しても良い。また、R′、X中のフェニル基またはフェノキシ基はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。また、各式中のフェニル基は一個または二個のフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。)
式中の液晶化合物はいずれも誘電異方性が正である。誘電異方性が負の液晶化合物は、全体として誘電異方性が正となるように誘電異方性が正の液晶化合物と混合して用いることができる。また、誘電異方性が負の液晶化合物は、適当な素子構成および駆動方式を選択することによりそのまま使用することができる。
【0036】
上記液晶化合物のうちで、特に、フッ素系液晶を主成分とした液晶材料を用いることが好ましい。フッ素系液晶は抵抗が高く、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス駆動に適している。しかも、フッ素系液晶は疎水性が極めて強いために、親水性の置換基を含む単量体と疎水性の置換基を含む単量体を用いた場合に、液晶滴と水との界面に共重合体が選択的に集まり、均一なカプセル壁(被膜)を形成することができる。
【0037】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、コントラストを向上させる目的およびカラー化の目的で液晶材料に二色性色素を加えても良い。その場合、二色性色素としては、液晶化合物には溶解するが、被膜を構成する高分子材料にあまり溶解したり、吸着しないものを用いる。
【0038】
二色性色素には一般に極性基を有しており、マイクロカプセルの被膜が親水性である場合には被膜は二色性色素によって染色され易く、ゲスト・ホスト液晶モードとして動作しなくなり、コントラストが低下する。しかしながら、本発明の液晶マイクロカプセルでは、マイクロカプセルの被膜の液晶側には疎水性の置換基が存在することになり、二色性色素により被膜が染色されることを防止することができるので、ゲスト・ホスト液晶にとって都合が良い。
【0039】
液晶材料に二色性色素を含有させる場合には、屈折率を考慮して被膜材料や液晶化合物を選択する必要がある。この材料の選び方は目的によって異なる。例えば、光散乱を利用してコントラストを上げる場合には、屈折率異方性の大きい液晶化合物を選択する。また、二色性色素の本来の色を示す場合には、屈折率異方性が小さく、被膜材料の屈折率に近い液晶化合物を選択する。
【0040】
二色性色素分子としては、例えば下記式(11)〜(19)に示すイエロー色素、式(20)〜(27)に示すマゼンタ色素、式(28)〜(31)に示すシアン色素が用いられる。
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
【0043】
【化5】
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
液晶材料に二色性色素を含有させる場合、液晶化合物に対する含有量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。二色性色素の重量比が小さすぎると、コントラストが充分に向上せず、二色性色素の重量比が大きすぎると、電圧印加時でも着色が残り、やはりコントラストが低下する。
【0049】
また、液晶材料に反射光の増白および紫外線吸収剤として蛍光色素を加えても良い。その場合、蛍光色素としては、被膜を構成する高分子材料には溶解し、液晶化合物にはあまり溶解しないものが好ましい。
【0050】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、被膜を構成する前記共重合体が架橋されていることが好ましい。共重合体が架橋されることにより被膜の耐性が一層向上する。架橋剤としては、不飽和炭素−炭素結合を二つ以上有するものであればいずれのものでも良い。架橋剤も液晶滴と水との界面に選択的に集まることが好ましいので、親水性の置換基を有する架橋剤が好ましく、アクリル酸エステル構造を有するものが特に好ましい。なお、架橋剤の含有量は単量体全量に対して0.01〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。架橋剤の含有量を調整して架橋度を制御することにより、マイクロカプセルの機械的、熱的性質を制御することができる。
【0051】
液晶マイクロカプセルは液晶を水中に分散させて製造される。液晶化合物に親水性の置換基を有する単量体のみを混合してマイクロカプセル化する場合や、疎水性の置換基を有する単量体のみを混合してマイクロカプセル化する場合には、液晶化合物と水との間の界面が不安定となる。この場合、液晶滴を安定に製造するために水中に界面活性剤を加える必要がある。しかしながら、界面活性剤は一般に電圧保持率を低下させ、耐熱性を低下させるために、できるだけその使用量の低減する必要がある。したがって、界面活性剤の使用を抑えた液晶マイクロカプセルの製造方法が望まれている。
【0052】
そこで、本発明においては、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体、並びに液晶化合物を含む水分散系において、単量体をラジカル重合させることにより液晶マイクロカプセルを得る方法を提供する。
【0053】
なお、水分散系において液晶化合物(A)、疎水性の置換基を有する単量体(B)、および親水性の置換基を有する単量体(C)の重量比は、液晶量が表示性能に与える影響をを考慮すると、A:B:C=1:0.01〜0.5:0.01〜0.5、好ましくは、A:B:C=1:0.03〜0.1:0.03〜0.1である。
【0054】
ラジカル重合は他の重合法と異なり、系内にイオン性不純物が混入しにくい。このため、高抵抗が必要とされる電圧駆動用の液晶マイクロカプセルに適している。また、本発明の方法は、縮合反応を利用したマイクロカプセル化方法と異なり、液晶側に疎水性の置換基が存在するので、水酸基やアミノ基等を有する二色性色素を用いても被膜が二色性色素により染色されることはない。
【0055】
また、上記方法は、親水性の置換基を有する単量体と疎水性の置換基を有する単量体の両者を液晶材料に適切に混合することにより、液晶化合物と水との間の界面を安定化させることができる。これにより、水中に加える界面活性剤の量を少なくすることができ、電圧保持率や耐熱性の低下を防止することができる。
【0056】
このように、上記マイクロカプセル化方法によれば、電圧駆動に適する液晶マイクロカプセルを極めて容易に得ることができる。すなわち、被膜の機械的および熱的耐性が高く、ピンホールがなく均一であり、フッ素系液晶やゲスト・ホスト液晶の電圧駆動に適する液晶マイクロカプセルを極めて容易に得ることができる。
【0057】
本発明の液晶表示素子は、それぞれに透明電極を有する一対の基板と、前記透明電極が対向するように配置した前記一対の基板間に挟持された液晶層と具備し、前記液晶層は、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを備えた液晶マイクロカプセルを含むことを特徴としている。
【0058】
この液晶表示素子において、液晶層に含まれる液晶マイクロカプセルは機械的および熱的耐性が高く、ピンホール等もなく均一である。このため、被膜に用いる高分子材料の量を減らすことができ、液晶の相対量を増やすことができる。
【0059】
本発明の液晶表示素子において、電極を有する基板上に液晶マイクロカプセルを水分散液から塗布すると、乾燥過程においてマイクロカプセル同士が融合し、多面体構造を持ったマイクロカプセルの密な集合体となる。すなわち、本発明の液晶表示素子では、マイクロカプセル同士を融着させることにより、多面体構造における空隙部を埋めるためにマイクロカプセルの被膜が平面方向(基板面に平行な方向)に引かれ、内部の液晶材料の体積を維持するために被膜は延びる。このため、被膜は基板面に平行な方向に延伸される。その結果、被膜内部の液晶は被膜が延伸された方向に配向することになり、層状に重なりあった各多面体構造体中の液晶は互いに配向をすることになる。
【0060】
また、本発明の液晶マイクロカプセルは、機械的および熱的耐性が高いので、マイクロカプセルを融着する際に、基板面に対して垂直な方向に圧力を印加することにより延伸作用をさらに大きくすることができる。また、この場合、基板面に平行な被膜面の面積が大きくなる。これにより、膜の欠陥を修復することができる。また、基板面に平行な方向にずれ応力を加えながらマイクロカプセルを融着することにより、ずれ応力を加えた方向に被膜は延伸される。すなわち、被膜内に包含された液晶をこの方向に配向させることができる。さらに、融着した後に、加熱や試薬を用いる方法により被膜を硬化させることにより、この融着後の構造をさらに安定に保持することができる。このように、液晶マイクロカプセルを基板に対してほぼ平行に配列した平面構造を採ることにより、電圧印加状態と無印加状態での屈折率の差をきわめて大きくすることができ、その結果、光散乱を強め、コントラストを大きくすることができる。
【0061】
液晶マイクロカプセルが基板に対してほぼ平行に配列する平面構造(積層構造も含む)を採る場合、液晶分子と接する透明被膜を構成する材料に長鎖アルキル基等を導入することにより、液晶分子の配向を基板表面に対してほぼ垂直にすることができる。また、液晶材料として、誘電異方性が負の液晶物質を用い、前記のように液晶分子の配向を基板表面に対してほぼ垂直にすることにより、電圧無印加時が無色のポジ表示を行うことができる。
【0062】
一方、通常の湾曲面を有するNCAP型液晶を用い、同量の高分子量を用いて前記と同様にして電極を有する基板上に液晶マイクロカプセルを塗布すると、液晶粒が不均一でかなり大きなものが含まれるようになる。また、マイクロカプセル間に透明の高分子材料がかなりの割合で存在することになり、これにより光散乱が弱くなり、コントラストが低下する。いわゆるPDLCにおいては高分子材料の量をきわめて少なくすることができるが、液晶分子の初期配向はランダムであり、配向を揃えることはきわめて困難である。
【0063】
通常、湾曲した高分子−液晶界面を有する、NCAPもしくはPDLCと呼ばれるものでは、液晶分子は湾曲面に沿った配向をとる。そのため、通常のTNセルやSTNセルのように液晶の常光屈折率と異常光屈折率の差を大きくすることができない。すなわち、電圧を印加して誘電異方性が正のネマチック液晶を立たせた場合には常光屈折率になるが、湾曲した高分子−液晶界面を有するものでは、電圧無印加状態において液晶分子が湾曲した界面に沿って配向するため、屈折率が常光屈折率と異常光屈折率の中間となってしまう。このため、コントラストが悪く、また光抜けが生じる。
【0064】
本発明は、二色性色素を含有した液晶材料を用いるゲスト・ホスト型液晶表示装置において特に効果がある。すなわち、二色性色素は、一般に液晶材料に溶解しにくい。特に、二色性色素は、電圧保持特性に優れるフッ素系液晶材料には溶解しにくい。二色性色素は、高分子材料にも溶解する性質があるので、被膜を構成する高分子材料の量を極めて少なくでき、液晶材料における二色性色素の量を相対的に多くすることができる。
【0065】
また、二色性色素は分子軸に対してのみ光吸収することができる。二色性色素を基板に対してほぼ平行に配置することにより、光吸収量を最大にすることができる。本発明の液晶表示素子においては、上述したように液晶分子を基板面に対してほぼ平行に配列させることが可能であり、二色性色素も液晶分子の配向に従って基板に対してほぼ平行に配列させることができる。
【0066】
本発明の液晶表示素子においては、液晶材料を被膜により包含してなる液晶マイクロカプセルを複数層で積層し、しかも上下で接する液晶マイクロカプセル中の液晶分子の配向が互いに異なるようにすることができる。こうすることにより、光散乱を強めたりすることができ、特に、液晶材料に二色性色素を含有させた場合には、異なる偏光成分の光吸収を可能とすることができる。そのため、偏光板を用いなくても高いコントラストを得ることが可能となり、反射型ディスプレイに好適となる。
【0067】
本発明の液晶表示素子においては、被膜を2種以上の透明高分子材料で構成しても良い。液晶材料の駆動電圧を低くするためには、液晶材料と接する被膜を構成する高分子材料と液晶材料との間の相互作用があまり大きくないことが必要となる。一方、被膜には、耐熱性や耐溶剤性、さらに好適な屈折率等の種々の特性が求められる。一つの高分子材料からなる被膜のみでこれらをすべて満足させることは一般に困難である。前記のように、被膜を2種以上の透明高分子材料で層状に構成することにより、これらの課題を解決することができる。
【0068】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(参考例1)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840(メルク社製、商品名)を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0069】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0070】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて図2に示すような液晶表示素子を作製した。
【0071】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測した。その結果を図1に示す。図1(A)は基板1の表面に対して垂直な方向から見た模式平面図であり、図1(B)は基板1の表面に対して平行な方向から見た模式断面図である。図1(A)から分かるように、それぞれの液晶マイクロカプセル2は互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、図1(B)から分かるように、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセル2の融合部分は基板1の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板1の表面に対してほぼ平行であった。
【0072】
また、図2に示すように、透明電極12を有するガラス基板11に挟持された液晶層13の厚みは10μmであった。この液晶表示素子は白色不透明であり、50Hzで12Vの交流電圧を印加すると透明となった。また、透過吸光度から求めたコントラスト比は23であった。
(比較例1)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー14重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0073】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0074】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0075】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、多くの液晶マイクロカプセルが壊れて、内部の液晶材料が漏れ出ていた。
(比較例2)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840を80重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレートモノマー14重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0076】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0077】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0078】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、多くの液晶マイクロカプセルが壊れて、内部の液晶材料が漏れ出ていた。
(実施例)
黒色二色性色素S−435(三井東圧社製、商品名)をフッ素系液晶Lixon−5065xx(チッソ社製、商品名)に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むアクリロニトリルモノマー7重量部、疎水性の置換基を含む2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0079】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0080】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして本発明の液晶表示素子を作製した。
【0081】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様であった。また、液晶層の厚さは11μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで12Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は3.5であった。
(比較例3)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695(メルク社製、商品名)に1重量%で溶解させたもの80重量部、ポリ(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート)15重量部をクロロホルムに溶解し、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極が液晶層と接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして液晶表示素子を作製した。
【0082】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶マイクロカプセルが一部壊れていた。
(参考例2)
黒色二色性色素S−435をフッ素系液晶Lixon−5065xxに1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むt−ブチルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌しながら、エマルジョン状の液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0083】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0084】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極が液晶層と接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして液晶表示素子を作製した。
【0085】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様であった。また、液晶層の厚さは11μmであり、液晶分子の配向は基板面に対してほぼ平行であった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は3.5であった。
(参考例3)
負の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−2659(メルク社製、商品名)を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー3重量部、親水性の置換基を含むエチレングリコールジメタクリレート2重量部、疎水性の置換基を含むオクタデシルメタクリレートモノマー11重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これに界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0086】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径6μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0087】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で100℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0088】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶層の厚みは8μmであった。この液晶表示素子は透明であり、50Hzで10Vの交流電圧を印加すると白色不透明となった。
(参考例4)
黒色二色性色素S−435を負の誘電異方性を有するネマチック液晶Z−2659に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー3重量部、疎水性の置換基を含むジイソブチルフマレートモノマー11重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これに界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0089】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0090】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板を液晶層にアルミニウム反射電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で100℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0091】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板の表面に対してほぼ垂直であった。また、液晶層の厚みは9μmであった。この液晶表示素子は無色であり、50Hzで9.5Vの交流電圧を印加すると黒色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.6であった。
(参考例5)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むクロロプレンモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0092】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0093】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。次いで、液晶層にテフロン板を押し付けながら120℃でテフロン板を水平方向(基板面とほぼ平行な方向)に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外し、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。
【0094】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子はテフロン板をずらした方向に配向していた。また、液晶層の厚みは8μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.6であった。
(参考例6)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むt−ブチルメタクリレート7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0095】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径2μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0096】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて第1の液晶層(調光層)を形成した。次いで、第1の液晶層にテフロン板を押し付けながら120℃でテフロン板を水平方向(基板面とほぼ平行な方向)に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。
【0097】
得られた液晶マイクロカプセルの構造体(第1の液晶層)を顕微鏡で観察したところ、第1の液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、第1の液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子はテフロン板をずらした方向に配向していた。また、第1の液晶層の厚みは4μmであった。
【0098】
次に、黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含む酢酸ビニルモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むスチレンモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0099】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径2μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0100】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これを第1の液晶層上に塗布し、乾燥させて第2の液晶層(調光層)を形成した。次いで、第2の液晶層にテフロン板を押し付けながら90℃でテフロン板を第1の液晶層形成におけるずれ方向とほぼ直交する水平方向に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。
【0101】
得られた液晶マイクロカプセルの構造体(第1の液晶層)を顕微鏡で観察したところ、第2の液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、第2の液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子は基板面に対してほぼ平行であって、テフロン板をずらした方向に配向していた。したがって、第1の液晶層の液晶分子と第2の液晶層の液晶分子の配向方向はほぼ直交していた。また、液晶層全体の厚みは8μmであった。
【0102】
次いで、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と第2の液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は5.5であった。
(参考例7)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むエチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレート7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジアクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0103】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、細い液晶マイクロカプセルを除去し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径3μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0104】
次いで、この液晶マイクロカプセルとエポキシプレポリマー(エピコート)8重量部とを混合して、5重量%ゼラチン水溶液200重量部に撹拌しながら滴下して微小滴を形成させ、アミン系硬化剤の3重量部を50重量部の水に溶解してなる溶液を前記ゼラチン水溶液中に徐々に滴下しながら、約40℃で1時間撹拌を続けた。
【0105】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、細かい液晶マイクロカプセルを除去し、純水で3回洗浄した。このようにして、ビニル重合膜とエポキシ樹脂膜の2層構造の透明被膜で液晶材料を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0106】
得られた液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥し、これにテフロン板を押しつけて、120℃で2時間加熱密着させると同時にエポキシ樹脂を硬化させた。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。次いで、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。
【0107】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶層の厚みは10μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで10Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.2であった。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の液晶マイクロカプセルは、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを具備するので、被膜の機械的および熱的耐性が高く、ピンホールがなく均一である。これにより、フッ素系液晶やゲスト・ホスト液晶の電圧駆動に適するものである。
また、上記液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子は、明るい反射型ディスプレイに適したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の液晶表示素子における液晶マイクロカプセル構造体を示す模式平面図、(B)は本発明の液晶表示素子における液晶マイクロカプセル構造体を示す模式断面図。
【図2】本発明の液晶表示素子の概略を示す断面図。
【符号の説明】
1,11…ガラス基板、2…液晶マイクロカプセル、12…透明電極、13…液晶層。
【産業上の利用分野】
本発明は液晶マイクロカプセルおよびそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報機器のディスプレイ用表示素子として、これまでに多くの液晶表示装置が提案されている。現在では、例えば特開昭47−11737号公報において開示されているTN(twisted nematic )モードおよび例えば特開昭60−107020号公報において開示されているSTN(super twisted nematic )モード等のネマティック液晶を使用するタイプの液晶表示装置が広く用いられている。TNモード、STNモードは、液晶分子の配列が素子内部で90°前後、あるいは260°前後にそれぞれ捻れた構造の初期状態をとる。素子に入射した光は、液晶分子が採る捻れ構造と複屈折とによって偏光状態が変化を受けた状態で出射する。
【0003】
このような液晶分子配列構造を有する液晶層を含む液晶セルに電界を印加すると、液晶分子は電解方向に再配列するために捻れ構造は解かれ、複屈折が失われて、入射光は偏光状態を変えることなく出射する。この原理を利用して、2枚の直線偏光子で液晶セルを挟んだ構造を採ることにより、電圧印加による液晶層の光学的性質が変化し、光の強度変化として観察される。TNモードおよびSTNモードの液晶表示装置は、このようにして明暗のコントラストを得ている。
【0004】
上記表示方式の液晶表示装置は、CRT(cathode ray tube)ディスプレイに比較して消費電力が著しく少なく、薄型表示パネルを実現できる長所があり、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等のOA用情報機器に広く用いられている。
【0005】
しかしながら、偏光子を用いるタイプは入射光を有効利用しているとは言い難い。実際に多くのディスプレイでは、液晶表示装置の後方に光源(バックライト)を付設して明るさを確保している。また、カラーフィルタを付設したタイプでは素子を透過する光がさらに減少し、結果として、より強力な光源が必要となる。光源の電力は、駆動回路を含む液晶表示装置の消費電力に匹敵するので、このように消費電力が大きい液晶表示装置は、電池での電力供給を行う携帯用ディスプレイに適さない。すなわち、液晶カラーディスプレイは勿論のこと、白黒ディスプレイにおいても、従来の表示方式では、より明るくすることと消費電力を低くすることが二率背反の関係にあり、バックライトを必要としない明るい表示方式の開発が切望されている。
【0006】
また、ディスプレイを見続けた場合の眼の疲労に関しても蛍光灯のバックライトは望ましくなく、反射型の明るいディスプレイが求められている。また、このようなバックライトを必要としない明るい表示方式のものは、投射型ディスプレイとして使用する場合でも、光透過率の高い表示方式の小型化、長寿命化、機器全体の節電に寄与する。
【0007】
このような要望に対して、偏光子を用いない液晶表示装置が提案されている。このようなものとして、White-Taylor型ゲスト・ホスト素子(J.Appl.Phys.vol.45,pp 4718-4723,1974)が挙げられる。このゲスト・ホスト素子は、カイラルネマティック相を示す液晶に2色性色素が混入された液晶材料を用いたものであり、この液晶分子および2色性色素分子が基板面に対してほぼ平行に配列された構造を有している。このゲスト・ホスト素子においては、電界を印加することによって、液晶分子の配列が変化し、2色性色素分子が向きを変えることにより光の透過率が変化する。この場合、液晶分子はカイラルネマティック相に起因する捻れ構造を採るため、色素による光吸収が効率よく起こる。したがって、この素子においては、原理的には偏光子なしでも高い表示コントラストが得られる。
【0008】
しかしながら、このゲスト・ホスト素子において高いコントラストを達成するためには、カイラルネマティック液晶の螺旋ピッチを光の波長オーダーにすることが必要となり、螺旋ピッチをその程度まで短くするとディスクリネーションラインが数多く発生し、表示品質が損なわれ、同時にヒステリシス現象が発現し、電界に対する応答も極端に遅くなる。したがって、TNモード、STNモードに比較した場合に実用性に乏しい。
【0009】
偏光子を用いない他の表示方式として、NCAP(Nematic Curvilinear Alighed Phase )もしくはPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)と称される表示方式がある。この表示方式は、高分子マトリクス中に誘電異方性が正のネマティック液晶を直径数μm程度の粒状(カプセル状)にして分散させたもの用いる方式である。この表示方式においては、液晶材料は常光での屈折率が高分子マトリクスの屈折率とほぼ同じで、異常光での屈折率が高分子マトリクスの屈折率と異なるものを選定して用いる。
【0010】
この表示方式において、初期の状態では、液晶粒中で液晶分子が歪んだ配列構造を採り、しかも液晶粒間での配列方向のばらつきによって大部分の液晶粒と高分子マトリクスとの間に屈折率の差が生じ、結果としてすりガラスのように光を散乱させる。これに充分な電圧を加えると、液晶粒中の液晶分子が再配列され、垂直に入射する光に対して液晶と高分子マトリクスの屈折率が等しくなる。その結果、液晶と高分子マトリクスとの間の界面における屈折および反射が無くなり、透明状態に変化する。なお、入射光は直線光である必要はない。
【0011】
この表示方式は、このような動作原理を使って表示するため、偏光子は不要であり、入射光も有効に活用でき、明るい表示となる。また、NCAPの中に二色性色素を混合させることにより、着色−消色変化を起させることができる。
【0012】
この表示方式の液晶表示素子は、ガラスセルに高分子マトリクス中に液晶を含む液晶材料を封入したり、ガラス基板に前記液晶材料を塗布することにより、容易に作製することができる。この場合、コントラストを高めるために、後工程において、ガラスセルにずれ応力を加えたり、高分子マトリクスを延伸して液晶を配向させる必要がある。また、対向電極を作製するために、導電性ポリマーフィルムでラミネートすることがある。このような場合には、材質が熱可塑性樹脂であるために、充分な強度を得ることができない。
【0013】
さらに、この表示方式は、透明−白濁モード変化や黒色の二色性色素を添加して行う白−黒モード変化には容易に対応できるが、カラー表示を行うためにはカラーフィルターを配置する必要がある。この場合、カラーフィルターを配置するために、この表示方式の液晶表示素子を反射型ディスプレイとして使用すると、表示が暗くなってしまう。
【0014】
そこで、カラー表示が可能な反射型ディスプレイに適した液晶表示素子として、異なった色のゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルを用いたものが開示されている(特開昭58−144885号公報)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
電圧駆動用の液晶材料として使用する場合の液晶マイクロカプセルには、製膜後の機械的熱的処理が必要であるために、機械的強度や熱的強度が必要であり、しかもピンホール等の欠陥がないことが要求される。しかしながら、従来の電圧駆動用の液晶マイクロカプセルは、これらの要求特性が不充分である。特に、疎水性の強いフッ素系液晶を用いる場合については問題である。
【0016】
一方、ゼラチン等の被膜中にコレステリック液晶を封入してなる液晶マイクロカプセルは液晶温度計等に広く用いられており、高い機械的強度および熱的強度を有し、ピンホールのないものである(特開昭45−30446号公報)。しかしながら、ゼラチン等で構成された被膜はイオン性を有するので、電圧保持率が低下し、TFT(薄膜トランジスタ)を用いたアクティブ駆動が困難となる。このため、前記液晶マイクロカプセルは電圧駆動用の液晶マイクロカプセルには使用できない。
【0017】
また、カラー表示用ゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルにおいては、被膜の材料に親水性の高い材料を用いると、二色性色素が被膜を染色してしまうという問題点もある。このように液晶マイクロカプセルの被膜が染色されると、電圧印加に対して応答不能となり、良好にカラー表示を行うことができない。
【0018】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、OA機器用の反射型ディスプレイに適した液晶マイクロカプセルおよびそれを用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、比較的液晶材料と相互作用が小さい炭素−炭素結合を主鎖とする高分子において、親水性の置換基が機械的強度を向上させる性質を有すること、疎水性の置換基が駆動電圧を低くすることに着目して鋭意研究を重ねた結果、炭素−炭素結合を主鎖とする高分子において親水性の置換基と疎水性の置換基を混在させることにより、反射型ディスプレイに適した特性を有する液晶マイクロカプセルを得ることができることを見出し本発明をするに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、親水性の置換基としてシアノ基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、疎水性の置換基としてハロゲン置換炭化水素基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを具備することを特徴とする液晶マイクロカプセルを提供する。
【0021】
また、本発明は、それぞれに透明電極を有する一対の基板と、前記透明電極が対向するように配置した前記一対の基板間に挟持された液晶層と具備し、前記液晶層は、上記の液晶マイクロカプセルを含むことを特徴とする液晶表示素子を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の液晶マイクロカプセルは、高分子被膜が親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなるものである。ここで、炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とは、不飽和二重結合や不飽和三重結合を有するビニルモノマー、ジエンモノマー、アセチレンモノマー、ジアセチレンモノマー等をいう。
【0023】
親水性の置換基を有する単量体と無置換もしくは疎水性の置換基を有する単量体を重合させることにより得られる共重合体は、親水性と疎水性のバランスがとれており、マイクロカプセルを製造する過程において疎水性である液晶滴と分散媒である水との間の界面に選択的に集まり、ピンホールのない緻密な被膜を形成する。
【0024】
また、この共重合体は一般にランダム共重合体である。親水性の置換基が多いポリマー鎖部分は水側に集まり、疎水性の置換基が多いポリマー鎖部分は液晶側に集まるようになるので、全体としては水−液晶界面において伸びきった状態ではなく、かなり屈曲した構造をとる。そのため、機械的な刺激や熱的な刺激に対してポリマー鎖の状態を変化させることにより対応することができ、これにより高い耐性が発揮される。なお、共重合体がブロック共重合体であっても同様に高い耐性が発揮される。
【0025】
また、この共重合体において、親水性の置換基が機械的強度に寄与し、疎水性の置換基が駆動電圧を低くすることに寄与するので、この共重合体を被膜とする液晶マイクロカプセルは、両者の特性を兼ね備えたものとなる。
【0026】
親水性の置換基としては、水酸基、炭素数3以下のアルコールのカルボン酸エステル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数3以下のアルキル基を有するアシル基、炭素数3以下のアルコールの炭酸エステル基、炭素数3以下のアミンのカルボン酸アミド基、第一級アミノ基、炭素数3以下の置換基を有する第二級アミノ基、または炭素数3以下のアルコキシル基等が挙げられる。
【0027】
親水性の置換基において炭素数3以下としているのは、これより炭素数が多いと親水性基として充分に作用しなくなるためである。したがって、炭素数が小さいほど親水性は強い。しかしながら、電圧保持率や駆動電圧を考慮すると、親水性が強すぎないことやプロトン解離性基を多く含まないことが必要となる。したがって、親水性の置換基としてより好ましいものは、メチルエステル基、エチルエステル基、アセチル基、プロパノイル基、炭酸メチルエステル基、炭酸エチルエステル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基である。
【0028】
また、疎水性の置換基としては、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、炭素数4以上のアルコールのカルボン酸エステル基、炭素数4以上のアルキル基を有するアシル基、炭素数4以上のアルコールの炭酸エステル基、炭素数4以上のアミンのカルボン酸アミド基、炭素数4以上のアルコキシル基、またはアルキル置換シロキサン等が挙げられる。
【0029】
疎水性の置換基において炭素数4以上としているのは、これより炭素数が少ないと疎水性基として充分に作用しなくなるためである。したがって、炭素数が大きいほど疎水性は強い。しかしながら、疎水性が強すぎると、マイクロカプセルの被膜を形成する時に、単量体が液晶滴と水の界面に移動することが困難になり、均一な被膜の形成が困難となる。なお、長鎖アルキル基のような柔軟性の高い基を有すると、形成された被膜のガラス転移温度が低くなり、熱的に弱くなる。したがって、疎水性の置換基としてより好ましいものは、イソブチルエステル基、t−ブチルエステル基、フェニルエステル基、イソブチル炭酸エステル基、t−ブチル炭酸エステル基、フェニル炭酸エステル基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基である。また、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエンも疎水基として好ましい。この場合、被膜としては機械的耐性、特にゴム弾性が付与される。
【0030】
なお、液晶マイクロカプセルにおいて、溶媒中での分散性を考慮すると、親水性の置換基が外側に位置し、疎水性の置換基が内側に位置することが好ましい。本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を含む単量体は、その単量体のホモポリマーの純水との静的接触角が45度未満であり、疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を含む単量体は、その単量体のホモポリマーの純水との静的接触角が45度以上であることが好ましい。
【0031】
親水性の置換基において、接触角が45度より大きいと親水性基として充分に作用しなくなる。したがって、接触角が小さいほど親水性は強い。しかしながら、電圧保持率や駆動電圧を考慮すると、親水性が強すぎないことも必要である。したがって、接触角として好ましいのは5〜30度である。
【0032】
疎水性の置換基において、接触角が45度未満であると疎水性基として充分に作用しなくなる。したがって、接触角が大きいほど疎水性は強い。しかしながら、疎水性が大きすぎると、マイクロカプセルの被膜を形成する時に単量体が液晶滴と水の界面に移動することが困難になり、均一な被膜の形成が困難になる。したがって、接触角として好ましいのは60〜90度である。
【0033】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいて、液晶化合物としては、フッ素系液晶、シアノ系液晶、エステル系液晶等を用いることができる。また、液晶化合物としては、屈折率異方性があり、電圧によって配向が変化するものであればどのようなもの良いが、好ましくはネマチック液晶、コレステリック液晶等である。特に、フッ素系のネマチック液晶が好ましい。なお、光散乱を電圧でON−OFFさせ、透明−白濁変化を起こさせるモードの場合には、被膜を構成する高分子材料の屈折率と電圧ON時の液晶化合物の屈折率とがほぼ一致するように材料を選択することが好ましい。
具体的には、下記一般式(1)〜(10)で表される各種液晶化合物単独およびこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
(式中、R′、Xはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルコキシアルキルシクロヘキシル基、アルキルシクロヘキシルフェニル基、シアノフェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロメチル基、フルオロメトキシ基、アルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルシクロヘキシルアルキル基、アルキルシクロヘキシルアルキル基、アルコキシアルコキシシクロヘキシルアルキル基、アルコキシフェニルアルキル基、アルキルシクロヘキシルフェニルアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子を示す。これらのアルキル鎖およびアルコキシ鎖中に光学活性中心を有しても良い。また、R′、X中のフェニル基またはフェノキシ基はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。また、各式中のフェニル基は一個または二個のフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。)
式中の液晶化合物はいずれも誘電異方性が正である。誘電異方性が負の液晶化合物は、全体として誘電異方性が正となるように誘電異方性が正の液晶化合物と混合して用いることができる。また、誘電異方性が負の液晶化合物は、適当な素子構成および駆動方式を選択することによりそのまま使用することができる。
【0036】
上記液晶化合物のうちで、特に、フッ素系液晶を主成分とした液晶材料を用いることが好ましい。フッ素系液晶は抵抗が高く、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス駆動に適している。しかも、フッ素系液晶は疎水性が極めて強いために、親水性の置換基を含む単量体と疎水性の置換基を含む単量体を用いた場合に、液晶滴と水との界面に共重合体が選択的に集まり、均一なカプセル壁(被膜)を形成することができる。
【0037】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、コントラストを向上させる目的およびカラー化の目的で液晶材料に二色性色素を加えても良い。その場合、二色性色素としては、液晶化合物には溶解するが、被膜を構成する高分子材料にあまり溶解したり、吸着しないものを用いる。
【0038】
二色性色素には一般に極性基を有しており、マイクロカプセルの被膜が親水性である場合には被膜は二色性色素によって染色され易く、ゲスト・ホスト液晶モードとして動作しなくなり、コントラストが低下する。しかしながら、本発明の液晶マイクロカプセルでは、マイクロカプセルの被膜の液晶側には疎水性の置換基が存在することになり、二色性色素により被膜が染色されることを防止することができるので、ゲスト・ホスト液晶にとって都合が良い。
【0039】
液晶材料に二色性色素を含有させる場合には、屈折率を考慮して被膜材料や液晶化合物を選択する必要がある。この材料の選び方は目的によって異なる。例えば、光散乱を利用してコントラストを上げる場合には、屈折率異方性の大きい液晶化合物を選択する。また、二色性色素の本来の色を示す場合には、屈折率異方性が小さく、被膜材料の屈折率に近い液晶化合物を選択する。
【0040】
二色性色素分子としては、例えば下記式(11)〜(19)に示すイエロー色素、式(20)〜(27)に示すマゼンタ色素、式(28)〜(31)に示すシアン色素が用いられる。
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
【0043】
【化5】
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
液晶材料に二色性色素を含有させる場合、液晶化合物に対する含有量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。二色性色素の重量比が小さすぎると、コントラストが充分に向上せず、二色性色素の重量比が大きすぎると、電圧印加時でも着色が残り、やはりコントラストが低下する。
【0049】
また、液晶材料に反射光の増白および紫外線吸収剤として蛍光色素を加えても良い。その場合、蛍光色素としては、被膜を構成する高分子材料には溶解し、液晶化合物にはあまり溶解しないものが好ましい。
【0050】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいては、被膜を構成する前記共重合体が架橋されていることが好ましい。共重合体が架橋されることにより被膜の耐性が一層向上する。架橋剤としては、不飽和炭素−炭素結合を二つ以上有するものであればいずれのものでも良い。架橋剤も液晶滴と水との界面に選択的に集まることが好ましいので、親水性の置換基を有する架橋剤が好ましく、アクリル酸エステル構造を有するものが特に好ましい。なお、架橋剤の含有量は単量体全量に対して0.01〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。架橋剤の含有量を調整して架橋度を制御することにより、マイクロカプセルの機械的、熱的性質を制御することができる。
【0051】
液晶マイクロカプセルは液晶を水中に分散させて製造される。液晶化合物に親水性の置換基を有する単量体のみを混合してマイクロカプセル化する場合や、疎水性の置換基を有する単量体のみを混合してマイクロカプセル化する場合には、液晶化合物と水との間の界面が不安定となる。この場合、液晶滴を安定に製造するために水中に界面活性剤を加える必要がある。しかしながら、界面活性剤は一般に電圧保持率を低下させ、耐熱性を低下させるために、できるだけその使用量の低減する必要がある。したがって、界面活性剤の使用を抑えた液晶マイクロカプセルの製造方法が望まれている。
【0052】
そこで、本発明においては、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体、並びに液晶化合物を含む水分散系において、単量体をラジカル重合させることにより液晶マイクロカプセルを得る方法を提供する。
【0053】
なお、水分散系において液晶化合物(A)、疎水性の置換基を有する単量体(B)、および親水性の置換基を有する単量体(C)の重量比は、液晶量が表示性能に与える影響をを考慮すると、A:B:C=1:0.01〜0.5:0.01〜0.5、好ましくは、A:B:C=1:0.03〜0.1:0.03〜0.1である。
【0054】
ラジカル重合は他の重合法と異なり、系内にイオン性不純物が混入しにくい。このため、高抵抗が必要とされる電圧駆動用の液晶マイクロカプセルに適している。また、本発明の方法は、縮合反応を利用したマイクロカプセル化方法と異なり、液晶側に疎水性の置換基が存在するので、水酸基やアミノ基等を有する二色性色素を用いても被膜が二色性色素により染色されることはない。
【0055】
また、上記方法は、親水性の置換基を有する単量体と疎水性の置換基を有する単量体の両者を液晶材料に適切に混合することにより、液晶化合物と水との間の界面を安定化させることができる。これにより、水中に加える界面活性剤の量を少なくすることができ、電圧保持率や耐熱性の低下を防止することができる。
【0056】
このように、上記マイクロカプセル化方法によれば、電圧駆動に適する液晶マイクロカプセルを極めて容易に得ることができる。すなわち、被膜の機械的および熱的耐性が高く、ピンホールがなく均一であり、フッ素系液晶やゲスト・ホスト液晶の電圧駆動に適する液晶マイクロカプセルを極めて容易に得ることができる。
【0057】
本発明の液晶表示素子は、それぞれに透明電極を有する一対の基板と、前記透明電極が対向するように配置した前記一対の基板間に挟持された液晶層と具備し、前記液晶層は、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを備えた液晶マイクロカプセルを含むことを特徴としている。
【0058】
この液晶表示素子において、液晶層に含まれる液晶マイクロカプセルは機械的および熱的耐性が高く、ピンホール等もなく均一である。このため、被膜に用いる高分子材料の量を減らすことができ、液晶の相対量を増やすことができる。
【0059】
本発明の液晶表示素子において、電極を有する基板上に液晶マイクロカプセルを水分散液から塗布すると、乾燥過程においてマイクロカプセル同士が融合し、多面体構造を持ったマイクロカプセルの密な集合体となる。すなわち、本発明の液晶表示素子では、マイクロカプセル同士を融着させることにより、多面体構造における空隙部を埋めるためにマイクロカプセルの被膜が平面方向(基板面に平行な方向)に引かれ、内部の液晶材料の体積を維持するために被膜は延びる。このため、被膜は基板面に平行な方向に延伸される。その結果、被膜内部の液晶は被膜が延伸された方向に配向することになり、層状に重なりあった各多面体構造体中の液晶は互いに配向をすることになる。
【0060】
また、本発明の液晶マイクロカプセルは、機械的および熱的耐性が高いので、マイクロカプセルを融着する際に、基板面に対して垂直な方向に圧力を印加することにより延伸作用をさらに大きくすることができる。また、この場合、基板面に平行な被膜面の面積が大きくなる。これにより、膜の欠陥を修復することができる。また、基板面に平行な方向にずれ応力を加えながらマイクロカプセルを融着することにより、ずれ応力を加えた方向に被膜は延伸される。すなわち、被膜内に包含された液晶をこの方向に配向させることができる。さらに、融着した後に、加熱や試薬を用いる方法により被膜を硬化させることにより、この融着後の構造をさらに安定に保持することができる。このように、液晶マイクロカプセルを基板に対してほぼ平行に配列した平面構造を採ることにより、電圧印加状態と無印加状態での屈折率の差をきわめて大きくすることができ、その結果、光散乱を強め、コントラストを大きくすることができる。
【0061】
液晶マイクロカプセルが基板に対してほぼ平行に配列する平面構造(積層構造も含む)を採る場合、液晶分子と接する透明被膜を構成する材料に長鎖アルキル基等を導入することにより、液晶分子の配向を基板表面に対してほぼ垂直にすることができる。また、液晶材料として、誘電異方性が負の液晶物質を用い、前記のように液晶分子の配向を基板表面に対してほぼ垂直にすることにより、電圧無印加時が無色のポジ表示を行うことができる。
【0062】
一方、通常の湾曲面を有するNCAP型液晶を用い、同量の高分子量を用いて前記と同様にして電極を有する基板上に液晶マイクロカプセルを塗布すると、液晶粒が不均一でかなり大きなものが含まれるようになる。また、マイクロカプセル間に透明の高分子材料がかなりの割合で存在することになり、これにより光散乱が弱くなり、コントラストが低下する。いわゆるPDLCにおいては高分子材料の量をきわめて少なくすることができるが、液晶分子の初期配向はランダムであり、配向を揃えることはきわめて困難である。
【0063】
通常、湾曲した高分子−液晶界面を有する、NCAPもしくはPDLCと呼ばれるものでは、液晶分子は湾曲面に沿った配向をとる。そのため、通常のTNセルやSTNセルのように液晶の常光屈折率と異常光屈折率の差を大きくすることができない。すなわち、電圧を印加して誘電異方性が正のネマチック液晶を立たせた場合には常光屈折率になるが、湾曲した高分子−液晶界面を有するものでは、電圧無印加状態において液晶分子が湾曲した界面に沿って配向するため、屈折率が常光屈折率と異常光屈折率の中間となってしまう。このため、コントラストが悪く、また光抜けが生じる。
【0064】
本発明は、二色性色素を含有した液晶材料を用いるゲスト・ホスト型液晶表示装置において特に効果がある。すなわち、二色性色素は、一般に液晶材料に溶解しにくい。特に、二色性色素は、電圧保持特性に優れるフッ素系液晶材料には溶解しにくい。二色性色素は、高分子材料にも溶解する性質があるので、被膜を構成する高分子材料の量を極めて少なくでき、液晶材料における二色性色素の量を相対的に多くすることができる。
【0065】
また、二色性色素は分子軸に対してのみ光吸収することができる。二色性色素を基板に対してほぼ平行に配置することにより、光吸収量を最大にすることができる。本発明の液晶表示素子においては、上述したように液晶分子を基板面に対してほぼ平行に配列させることが可能であり、二色性色素も液晶分子の配向に従って基板に対してほぼ平行に配列させることができる。
【0066】
本発明の液晶表示素子においては、液晶材料を被膜により包含してなる液晶マイクロカプセルを複数層で積層し、しかも上下で接する液晶マイクロカプセル中の液晶分子の配向が互いに異なるようにすることができる。こうすることにより、光散乱を強めたりすることができ、特に、液晶材料に二色性色素を含有させた場合には、異なる偏光成分の光吸収を可能とすることができる。そのため、偏光板を用いなくても高いコントラストを得ることが可能となり、反射型ディスプレイに好適となる。
【0067】
本発明の液晶表示素子においては、被膜を2種以上の透明高分子材料で構成しても良い。液晶材料の駆動電圧を低くするためには、液晶材料と接する被膜を構成する高分子材料と液晶材料との間の相互作用があまり大きくないことが必要となる。一方、被膜には、耐熱性や耐溶剤性、さらに好適な屈折率等の種々の特性が求められる。一つの高分子材料からなる被膜のみでこれらをすべて満足させることは一般に困難である。前記のように、被膜を2種以上の透明高分子材料で層状に構成することにより、これらの課題を解決することができる。
【0068】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(参考例1)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840(メルク社製、商品名)を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0069】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0070】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて図2に示すような液晶表示素子を作製した。
【0071】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測した。その結果を図1に示す。図1(A)は基板1の表面に対して垂直な方向から見た模式平面図であり、図1(B)は基板1の表面に対して平行な方向から見た模式断面図である。図1(A)から分かるように、それぞれの液晶マイクロカプセル2は互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、図1(B)から分かるように、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセル2の融合部分は基板1の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板1の表面に対してほぼ平行であった。
【0072】
また、図2に示すように、透明電極12を有するガラス基板11に挟持された液晶層13の厚みは10μmであった。この液晶表示素子は白色不透明であり、50Hzで12Vの交流電圧を印加すると透明となった。また、透過吸光度から求めたコントラスト比は23であった。
(比較例1)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー14重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0073】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0074】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0075】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、多くの液晶マイクロカプセルが壊れて、内部の液晶材料が漏れ出ていた。
(比較例2)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−1840を80重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレートモノマー14重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これにポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0076】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0077】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で120℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0078】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、多くの液晶マイクロカプセルが壊れて、内部の液晶材料が漏れ出ていた。
(実施例)
黒色二色性色素S−435(三井東圧社製、商品名)をフッ素系液晶Lixon−5065xx(チッソ社製、商品名)に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むアクリロニトリルモノマー7重量部、疎水性の置換基を含む2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0079】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0080】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして本発明の液晶表示素子を作製した。
【0081】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様であった。また、液晶層の厚さは11μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで12Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は3.5であった。
(比較例3)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695(メルク社製、商品名)に1重量%で溶解させたもの80重量部、ポリ(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート)15重量部をクロロホルムに溶解し、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極が液晶層と接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして液晶表示素子を作製した。
【0082】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶マイクロカプセルが一部壊れていた。
(参考例2)
黒色二色性色素S−435をフッ素系液晶Lixon−5065xxに1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むt−ブチルメタクリレートモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌しながら、エマルジョン状の液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0083】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0084】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極が液晶層と接触するようにして熱ローラでラミネートした。このようにして液晶表示素子を作製した。
【0085】
得られた液晶表示素子を顕微鏡観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様であった。また、液晶層の厚さは11μmであり、液晶分子の配向は基板面に対してほぼ平行であった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は3.5であった。
(参考例3)
負の誘電異方性を有するネマチック液晶ZLI−2659(メルク社製、商品名)を80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー3重量部、親水性の置換基を含むエチレングリコールジメタクリレート2重量部、疎水性の置換基を含むオクタデシルメタクリレートモノマー11重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これに界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0086】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径6μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0087】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上にあらかじめ透明電極を設けたガラス基板を液晶層に透明電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で100℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0088】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶層の厚みは8μmであった。この液晶表示素子は透明であり、50Hzで10Vの交流電圧を印加すると白色不透明となった。
(参考例4)
黒色二色性色素S−435を負の誘電異方性を有するネマチック液晶Z−2659に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー3重量部、疎水性の置換基を含むジイソブチルフマレートモノマー11重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合して溶解し、これに界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合させた。
【0089】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0090】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。さらに、液晶層上に、あらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板を液晶層にアルミニウム反射電極が接触するようにして重ね、これをポリアミド製の袋に入れ、袋内を減圧し、その状態で100℃に加熱し、2枚のガラス基板を加熱密着させて液晶表示素子を作製した。
【0091】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子の配向は基板の表面に対してほぼ垂直であった。また、液晶層の厚みは9μmであった。この液晶表示素子は無色であり、50Hzで9.5Vの交流電圧を印加すると黒色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.6であった。
(参考例5)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むクロロプレンモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、非イオン性界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0092】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0093】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に10重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて液晶層(調光層)を形成した。次いで、液晶層にテフロン板を押し付けながら120℃でテフロン板を水平方向(基板面とほぼ平行な方向)に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外し、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。
【0094】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観測したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子はテフロン板をずらした方向に配向していた。また、液晶層の厚みは8μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.6であった。
(参考例6)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むt−ブチルメタクリレート7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0095】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径2μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0096】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これをあらかじめアルミニウム反射電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥させて第1の液晶層(調光層)を形成した。次いで、第1の液晶層にテフロン板を押し付けながら120℃でテフロン板を水平方向(基板面とほぼ平行な方向)に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。
【0097】
得られた液晶マイクロカプセルの構造体(第1の液晶層)を顕微鏡で観察したところ、第1の液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、第1の液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子はテフロン板をずらした方向に配向していた。また、第1の液晶層の厚みは4μmであった。
【0098】
次に、黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含む酢酸ビニルモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むスチレンモノマー7重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0099】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径2μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0100】
次いで、この液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これを第1の液晶層上に塗布し、乾燥させて第2の液晶層(調光層)を形成した。次いで、第2の液晶層にテフロン板を押し付けながら90℃でテフロン板を第1の液晶層形成におけるずれ方向とほぼ直交する水平方向に僅かにずらした。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。
【0101】
得られた液晶マイクロカプセルの構造体(第1の液晶層)を顕微鏡で観察したところ、第2の液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、第2の液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶分子は基板面に対してほぼ平行であって、テフロン板をずらした方向に配向していた。したがって、第1の液晶層の液晶分子と第2の液晶層の液晶分子の配向方向はほぼ直交していた。また、液晶層全体の厚みは8μmであった。
【0102】
次いで、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と第2の液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで9Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は5.5であった。
(参考例7)
黒色二色性色素S−435を液晶ZLI−1695に1重量%で溶解させたもの80重量部、親水性の置換基を含むエチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性の置換基を含むイソブチルメタクリレート7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジアクリレート1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、界面活性剤3重量部、純水300重量部と共にホモジナイザーで乳化した後、回転数500rpmで撹拌し、上記液晶組成物を85℃で1時間重合した。
【0103】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、細い液晶マイクロカプセルを除去し、純水で3回洗浄した。このようにして、透明被膜で液晶組成物を包含してなる外径3μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0104】
次いで、この液晶マイクロカプセルとエポキシプレポリマー(エピコート)8重量部とを混合して、5重量%ゼラチン水溶液200重量部に撹拌しながら滴下して微小滴を形成させ、アミン系硬化剤の3重量部を50重量部の水に溶解してなる溶液を前記ゼラチン水溶液中に徐々に滴下しながら、約40℃で1時間撹拌を続けた。
【0105】
次いで、この液晶組成物を目の大きさが1μm角であるフィルターで濾過し、細かい液晶マイクロカプセルを除去し、純水で3回洗浄した。このようにして、ビニル重合膜とエポキシ樹脂膜の2層構造の透明被膜で液晶材料を包含してなる外径4μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0106】
得られた液晶マイクロカプセルを10%イソプロピルアルコール水に5重量%で分散させ、これをあらかじめ透明電極を設けたガラス基板表面に塗布し、乾燥し、これにテフロン板を押しつけて、120℃で2時間加熱密着させると同時にエポキシ樹脂を硬化させた。その後、室温にまで冷却した後、テフロン板を外した。次いで、あらかじめ透明電極を設けた高分子フィルムを透明電極と液晶層が接触するようにしてラミネートした。このようにして液晶表示装置を作製した。
【0107】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、液晶層の構造は参考例1と同様に、それぞれの液晶マイクロカプセルは互いに融合しており、その融合部分は直線の多面体構造となっていた。また、液晶層の厚さ方向における液晶マイクロカプセルの融合部分は基板の表面に対してほぼ平行であった。また、液晶マイクロカプセルはまったく壊れておらず、液晶層の厚みは10μmであった。この液晶表示素子は黒色であり、50Hzで10Vの交流電圧を印加すると無色となった。また、反射濃度計で測定したコントラスト比は4.2であった。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の液晶マイクロカプセルは、親水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、無置換もしくは疎水性の置換基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを具備するので、被膜の機械的および熱的耐性が高く、ピンホールがなく均一である。これにより、フッ素系液晶やゲスト・ホスト液晶の電圧駆動に適するものである。
また、上記液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子は、明るい反射型ディスプレイに適したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の液晶表示素子における液晶マイクロカプセル構造体を示す模式平面図、(B)は本発明の液晶表示素子における液晶マイクロカプセル構造体を示す模式断面図。
【図2】本発明の液晶表示素子の概略を示す断面図。
【符号の説明】
1,11…ガラス基板、2…液晶マイクロカプセル、12…透明電極、13…液晶層。
Claims (4)
- 親水性の置換基としてシアノ基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体と、疎水性の置換基としてハロゲン置換炭化水素基を有する炭素−炭素不飽和結合を有する単量体とを含む複数の単量体を重合させてなる高分子被膜と、前記高分子被膜中に封入された液晶材料とを具備することを特徴とする液晶マイクロカプセル。
- 前記液晶材料がフッ素系液晶を主成分とする請求項1記載の液晶マイクロカプセル。
- 前記液晶材料が二色性色素を含有する請求項1記載の液晶マイクロカプセル。
- それぞれに透明電極を有する一対の基板と、前記透明電極が対向するように配置した前記一対の基板間に挟持された液晶層と具備し、前記液晶層は、請求項1に記載の液晶マイクロカプセルを含むことを特徴とする液晶表示素子。
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