JP4039586B2 - オルト−置換されたベンゾイルグアニジン、それらの製造方法、医薬または診断薬としてのそれらの使用およびそれらを含有する医薬 - Google Patents
オルト−置換されたベンゾイルグアニジン、それらの製造方法、医薬または診断薬としてのそれらの使用およびそれらを含有する医薬 Download PDFInfo
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Description
本発明は、式I
【化2】
のベンゾイルグアニジンおよびその医薬的に許容し得る塩に関するものである。
【0002】
上記式において、
R(1)は、H、F、Cl、Br、I、CN、NO2、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するアルキル、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するアルコキシ、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキル、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルコキシまたはXa−(CH2)b−(CF2)c−CF3〔式中、Xは、酸素、SまたはNR(5)であり、aは、0または1であり、bは、0、1または2であり、cは、0、1、2または3であり、R(5)は、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルまたは−CdH2dR(6)であり、dは、0、1、2、3または4であり、R(6)は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキル、フェニル、ビフェニリルまたはナフチル(芳香族基フェニル、ビフェニリルまたはナフチルは、置換されていないかまたはF、Cl、CF3、メチル、メトキシおよびNR(7)R(8)からなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であり、R(7)およびR(8)は、独立して、Hまたは1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルである〕であるか;または
R(1)は、−SR(10)、−OR(10)または−CR(10)R(11)R(12)〔式中、R(10)は、シクロアルキル環において3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する−CfH2f−シクロアルキルまたはフェニル(フェニルは、置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であり、そしてfは、0、1または2)であり、R(11)およびR(12)は、相互に独立して、R(10)として定義された通りであるかまたは水素または1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルである〕であるか;または
R(1)は、フェニル、ナフチル、ビフェニリルまたは環のC原子またはN原子を経て結合している1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を有するヘテロアリール(これらの基は、それぞれの場合において置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であるか;または
【0003】
R(1)は、−SR(13)、−OR(13)、−NHR(13)、−NR(13)R(14)、−CHR(13)R(15)、−C〔R(15)R(16)OH〕、−C≡CR(18)、−C〔R(19)〕=CHR(18)、または−C〔R(20)R(21)〕k−(CO)−〔CR(22)R(23)〕l−R(24)〔式中、kは、0、1、2、3または4であり、lは、0、1、2、3または4であり、R(13)およびR(14)は、同一または異なりて、−(CH2)g−(CHOH)h−(CH2)i−(CHOH)j−R(17)または−(CH2)g−O−(CH2−CH2O)h−R(24)であり、R(17)は、水素またはメチルであり、g、hおよびiは、同一または異なりて、0、1、2、3または4であり、jは、1、2、3または4であり、R(15)およびR(16)は、同一または異なりて、水素、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキルであるかまたはこれらが結合している炭素原子と一緒になって、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、R(18)は、フェニル(これは置換されていないかまたはF、Cl、CF3、メチル、メトキシおよびNR(25)R(26)からなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されておりそしてR(25)およびR(26)はHまたは1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルである)であるか、R(18)は、フェニルのように置換されていないかまたは置換されている1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を有するヘテロアリールであるか、R(18)は、置換されていないかまたは1〜3個のOHにより置換されている1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキルであるか、またはR(18)は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、R(19)、R(20)、R(21)、R(22)およびR(23)は、同一または異なりて、水素またはメチルであり、R(24)は、H、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキルまたは−CmH2m−R(18)であり、mは、1、2、3または4である〕であり;
2個の置換分R(2)およびR(3)の一方はヒドロキシルでありそして置換分R(2)およびR(3)の他方は、それぞれの場合において、R(1)として定義された通りであり;
R(4)は、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキル、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルコキシ、F、Cl、Br、I、または−(CH2)n−(CF2)o−CF3(式中、nは0または1でありそしてoは0または1である)である。
【0004】
R(1)が、H、F、Cl、Br、I、CN、NO2、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するアルキル、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するアルコキシ、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキル、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルコキシまたはXa−(CF2)c−CF3(式中、Xは酸素であり、aは0または1であり、cは、0、1、2または3である)であるか、または
R(1)が−SR(10)または−OR(10)〔式中、R(10)はシクロアルキル環において3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する−CfH2f−シクロアルキルまたはフェニル(フェニルは置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であり、fは0または1である〕であるか;または
R(1)が、フェニル、ナフチル、ビフェニリルまたは環のC原子またはN原子を経て結合しているヘテロアリール(これらの基は、置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であるか;または
【0005】
R(1)が、−SR(13)、−OR(13)、−NHR(13)、−NR(13)R(14)、−C≡CR(18)または−C〔R(19)〕=CHR(18)〔式中、R(13)およびR(14)は、同一または異なりて、−(CH2)g−(CHOH)h−(CH2)i−(CHOH)j−R(17)または−(CH2)g−O−(CH2−CH2O)h−R(24)であり、R(17)は、水素またはメチルであり、g、hおよびiは、同一または異なりて、0、1または2であり、jは、1または2であり、R(18)は、フェニル(これは置換されていないかまたはF、Cl、CF3、メチル、メトキシおよびNR(25)R(26)からなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されておりそしてR(25)およびR(26)は、Hまたは1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルである)であるか、R(18)は、フェニルのように置換されていないかまたは置換されている1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を有するヘテロアリールであるか、R(18)は、置換されていないかまたは1〜3個のOHにより置換されている1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキルであるか、またはR(18)は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、R(19)は、水素またはメチルである〕であり;
置換分R(2)およびR(3)の一方がヒドロキシルでありそして置換分R(2)およびR(3)の他方が、それぞれの場合において、R(1)として定義された通りであり;
R(4)が1または2個の炭素原子を有するアルキル、メトキシ、F、Cl、Br、CNまたは−(CH2)n−(CF2)o−CF3(式中、nは0または1でありそしてoは0または1である)である式Iの化合物およびその医薬的に許容し得る塩が好ましい。
【0006】
R(1)が、H、F、Cl、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキル、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルコキシ、5または6個の炭素原子を有するシクロアルキル、5または6個の炭素原子を有するシクロアルコキシまたはXa−(CF2)c−CF3(Xは酸素であり、aは0または1であり、cは0または1である)であるか;または
R(1)が−SR(10)または−OR(10)〔式中、R(10)は、4、5または6個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはフェニル(フェニルは、置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)である〕であるか;または
R(1)がキノリル、イソキノリルまたはピリジル〔これらの基は、環のC原子またはN原子を経て結合しておりそしてこれらの基は、置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換により置換されている〕であるか;または
R(1)が、フェニル(これは置換されていないかまたはF、Cl、CF3、CH3、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択された1〜3個の置換分により置換されている)であるか;または
R(1)が−C≡CR(18)(式中、R(18)は、フェニルまたは5または6個の炭素原子を有するシクロアルキルである)であり;
2個の置換分R(2)およびR(3)の一方がヒドロキシルでありそして置換分R(2)およびR(3)の他方がそれぞれの場合においてR(1)として定義された通りであり;
R(4)がメチル、メトキシ、F、ClまたはCF3である式Iの化合物およびその医薬的に許容し得る塩が非常に特に好ましい。
R(1)がH、F、Cl、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキル、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルコキシ、5または6個の炭素原子を有するシクロアルキル、5または6個の炭素原子を有するシクロアルコキシまたはCF3であり;
置換分R(2)およびR(3)の一方がヒドロキシルでありそして置換分R(2)およびR(3)の他方がそれぞれの場合においてR(1)として定義された通りであり;そして
R(4)がメチル、メトキシ、F、ClまたはCF3である式Iの化合物およびその医薬的に許容し得る塩が特に好ましい。
2,6−ジクロロベンゾイルグアニジン塩酸塩、3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイルグアニジン塩酸塩、4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルグアニジン塩酸塩、4−ヒドロキシ−2,5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩および4−ヒドロキシ−2−メチル−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩からなる群から選択された式Iの化合物が、特に好ましい。
【0007】
1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を有するヘテロアリールは、1個または2個以上のCH基がNによって置換されているおよび(または)少なくとも2個の隣接CH基がS、NHまたはOによって置換されている(5−員の芳香族環を形成する)フェニルまたはナフチルから誘導された基を意味するものと理解されるべきである。さらに、二環式基の縮合部位の1個または2個の原子はN原子であることができる(インドリジニルのように)。フラニル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、特に、フラニル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、ピリジル、インドリル、キノリルおよびイソキノリルが、特に1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を有するヘテロアリールであるとして考えられる。
【0008】
置換分R(1)〜R(4)の1個が1個または2個以上の不斉中心を含有する場合は、これらの中心はSまたはR配置にあることができる。化合物は、光学異性体として、ジアステレオマーとして、ラセミ体としてまたはこれらの混合物として存在することができる。
アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状であることができる。
【0009】
さらに、本発明は、式II
【化3】
(式中、R(1)〜R(4)は、上記した通りでありそしてLは、求核的に容易に置換することのできる脱離基である)の化合物をグアニジンと反応させることからなる化合物Iを製造する方法に関するものである。
【0010】
Lがアルコキシ基、好ましくはメトキシ基、フェノキシ基、フェニルチオ基、メチルチオ基または2−ピリジルチオ基、または窒素複素環、好ましくは1−イミダゾリルである式IIの活性化酸誘導体は、それ自体既知の方法で、基礎をなすカルボニルクロライド(式II、L=Cl)から有利に得られる。このカルボニルクロライドは、それ自体既知の方法で、例えば塩化チオニルを使用して、基礎をなすカルボン酸(式II、L=OH)から得ることができる。
【0011】
式II(L=Cl)のカルボニルクロライドのほかに、式IIの他の活性化酸誘導体は、また、それ自体既知の方法で、基礎をなす安息香酸誘導体(式II、L=OH)から製造することもできる。例えば、L=OCH3である式IIのメチルエステルは、メタノール中のガス状HClで処理することによって得ることができ、L=1−イミダゾリルである式IIのイミダゾリドは、カルボニルジイミダゾールで処理することによって得ることができ〔Staab, Angew. Chem. Int. Ed. Engl.1,351-367 (1962)〕、混成無水物IIは、不活性溶剤中トリエチルアミンの存在下においてCl−COOC2H5または塩化トシルを使用して得ることができる。これらに加うるに、また、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはO−〔(シアノ(エトキシカルボニル)−メチレン)アミノ〕−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(“TOTU”)〔Weiss and Krommer,Chemiker Zeitung 98, 817 (1974)〕による安息香酸の活性化がある。式IIの活性化カルボン酸誘導体を製造する一連の適当な方法は、出所文献を引用してJ. March, Advanced Organic Chemistry, Third Edition (John Wiley & Sons,1985)の350頁に記載されている。
【0012】
式IIの活性化カルボン酸誘導体とグアニジンとの反応は、それ自体既知の方法で、プロトン性または非プロトン性の極性の不活性有機溶剤中で行われる。この点に関して、安息香酸メチル(式II、L=OMe)をグアニジンと反応させる場合は、20℃〜溶剤の沸騰温度の温度におけるメタノール、イソプロパノールまたはTHFが有利であることが証明された。化合物IIと塩でないグアニジンとの大部分の反応は、非プロトン性の不活性溶剤、例えばTHF、ジメトキシメタンまたはジオキサン中で有利に実施される。しかしながら、NaOHのような塩基を使用する場合は、化合物IIをグアニジンと反応させる場合に、水もまた溶剤として使用することができる。
【0013】
L=Clである場合は、反応は、ハロゲン化水素酸を除去する目的のために、酸捕捉剤の存在下、例えば過剰のグアニジンの形態において有利に実施される。
式IIの基礎となる安息香酸誘導体の若干は、既知でありそして文献に記載されている。式IIの未知の化合物は、文献から知られている方法を使用して製造することができる。得られた安息香酸は、上述した種々な方法の一つを使用して新規な化合物Iに変換する。
【0014】
2、3、4および5−位における若干の置換分の導入は、文献から知られている例えば有機スタンナン、有機ボロン酸または有機ボランまたは有機銅または有機亜鉛化合物とアリールハライドまたはアリールトリフレートのパラジウム−媒介クロス−カップリングの方法を使用して達成される。
一般に、ベンゾイルグアニジンIは弱塩基でありそして酸と結合して塩を形成することができる。すべての薬理学的に許容し得る酸との塩、例えばハライド特に塩酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、燐酸塩、メチルスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩、が酸付加塩として使用するのに適している。
【0015】
化合物Iは、置換されたアシルグアニジンである。
化合物Iと類似している化合物が、欧州公開明細書612 723 A1(HOE 93/F 054)から知られている。これらの開示された化合物は、すでにフェニル核における置換分としてヒドロキシル基を含有しているが、これらの化合物はオルト位に何れの置換分も含有していない。
新規な化合物は、Na+/H+交換の阻害において、並外れて高い活性度を示しそして水中の改善された溶解性を示す点において、既知化合物とは異なっている。
【0016】
既知の化合物と同様に、これらの新規な化合物は、望ましくないそして不利な塩利尿性(salidiuretic properties)を有しておらずそしてそれにもかかわらず、例えば酸素欠乏症候に関連して起こる疾患の治療に対して重要であるような非常に良好な抗不整脈性を有している。化合物の薬理学的性質の結果として、本発明の化合物は、心臓保護成分を有する抗不整脈薬剤として、梗塞の予防および治療に対しておよび狭心症の治療に対して顕著に適している。そして一方において、化合物は、また、虚血的に誘発される損傷の発生に関する、特に虚血的に誘発される心臓不整脈の引き金に関する病理生理学的プロセスを予防的な方法で阻止するかまたは強力に減少する。病理学的低酸素および虚血情況に対する化合物の保護作用のために、式Iの新規な化合物は、細胞のNa+/H+交換機構の阻害の結果として、虚血により起きるすべての急性または慢性損傷またはこれによって一次的または二次的に誘発される疾患の治療に対する薬剤として使用することができる。これは、外科手術介入に対する、例えば器官移植に関連する薬剤としての化合物の使用に関係する。この場合、化合物は、除去前および除去中の供与者の器官を保護するために、および例えば生理学的溶液による処理または該溶液中の貯蔵の場合そしてまた患者の体に移行する場合の除去された器官を保護するために使用することが可能である。化合物は、同様に、例えば心臓および末梢血管に対する血管形成外科手術介入を実施する場合に使用される保護作用を有する価値ある薬剤である。虚血的に誘発される損傷に対する化合物の保護作用に応じて、化合物は、また、神経系、特にCNSの虚血症を治療する薬剤として使用するのに適している。これに関連して、化合物は、例えば卒中および脳浮腫を治療するのに適している。これに加うるに、式Iの新規な化合物は、同様に、ショックの形態、例えばアレルギー性、心臓性、血液量不足および細菌性ショックを治療するのに適している。
【0017】
式Iの新規な化合物は、また、特に、細胞の増殖、例えば線維芽細胞増殖および血管の平滑筋細胞の増殖に対して強力な阻害作用を示す。このために、式Iの化合物は、細胞増殖が一次的または二次的原因を構成する疾患に使用するための価値ある治療剤として適しており、そしてそれ故に、抗アテローム性動脈硬化症剤としておよび糖尿病後発合併症、癌疾患、線維症疾患、例えば肺線維症、肝線維症または腎線維症、および器官の肥大および過形成、特に前立腺の過形成または肥大に対する剤として使用することができる。
【0018】
新規な化合物は、多数の疾患(本態性高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病など)において、容易に測定することができる例えば赤血球、血小板または白血球においても上昇する細胞のナトリウム/プロトン交互輸送機構(Na+/H+交換体)の有効な阻害剤である。それ故に、新規な化合物は、例えば特定の形態の高血圧症そしてまたアテローム性動脈硬化症、糖尿病、増殖性疾患などを確認および鑑別する診断剤として使用される簡単な且つ顕著に良好な科学的道具(tool)として使用するのに適している。これに加うるに、式Iの化合物は、高血圧の発生、例えば本態性高血圧の発生を予防する予防的治療に適している。
【0019】
これに関連して、化合物Iを含有する薬剤は、経口的、非経口的、静脈内的、直腸的または吸入によって投与することができそして好ましい投与方法は、疾患の特定の臨床像に依存する。これに関連して、化合物Iは、家畜医薬およびヒト医薬の両方において、単独でまたは医薬補助物質と一緒に使用することができる。
専門的知識を基にして、当業者は、望ましい医薬処方に適している補助物質に精通している。例えば、溶剤、ゲル化剤、坐剤基剤、錠剤補助物質および他の活性化合物賦形剤のほかに、抗酸化剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、矯味剤、防腐剤、可溶化剤、または染料を使用することができる。
【0020】
経口的使用、形態に対しては、活性化合物を、添加剤、例えばこの目的に適した担体物質、安定剤または不活性希釈剤と混合しそして慣用方法を使用して、錠剤、被覆錠剤、硬質ゼラチンカプセルまたは水性、アルコール性または油性溶液のような適当な投与形態にする。例えば、アラビアゴム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カリウム、ラクトース、グルコースまたは殿粉、特にとうもろこし殿粉を、不活性賦形剤として使用することができる。これに関連して、製造は、乾式顆粒としてまたは湿式顆粒として行うことができる。適当な油状担体物質または溶剤の例は、植物または動物油、例えばヒマワリ油またはタラ肝油である。
【0021】
皮下または静脈内投与に対しては、活性化合物を、必要に応じてこの目的に対して適当である物質、例えば可溶化剤、乳化剤または他の補助物質と一緒に、溶液、懸濁液またはエマルジョンにする。適当な溶剤の例は、水、生理食塩水またはアルコール、例えばエタノール、プロパノールまたはグリセロール、およびさらにまた、糖溶液、例えばグルコースまたはマンニトール溶液、または上述した種々の溶剤からなる混合物である。
【0022】
医薬的に無害の溶剤、例えば特にエタノールまたは水または溶剤の混合物中の式Iの活性化合物の溶液、懸濁液またはエマルジョンは、例えばエーロゾルまたはスプレーの形態で投与される医薬処方として使用するのに適している。
必要である場合は、処方は、また、他の医薬補助物質、例えば界面活性剤、乳化剤および安定剤そしてまた発射ガスを含有することもできる。このような製剤は、慣用的に、約0.1〜10重量%、特に約0.3〜3重量%の濃度の活性化合物を含有する。
【0023】
投与される式Iの活性化合物の投与量および投与の頻度は、使用される化合物の作用の強度および作用期間に依存し、そしてまた、これらは、処理される疾患の性質および重篤度および処理される哺乳動物の性別、年令、体重および個々の応答に依存する。
平均して、体重約75kgの患者の場合における式Iの化合物の一日当たりの投与量は、体重1kg当たり少なくとも0.001mg/kg、好ましくは0.01mg/kg〜せいぜい10mg/kg、好ましくは1mg/kgである。疾患の急性の発生の場合においては、例えば心筋梗塞にかかった直後においては、例えば一日当たり4回分までの用量のより高いそして特により多い頻度の投与量が必要である。特に、例えば集中治療の梗塞患者の場合においては、静脈内使用の場合において一日当たり200mgまでが必要である。
【0024】
略号のリスト
MeOH メタノール
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
RT 室温
EA 酢酸エチル(EtOAc)
m.p. 融点
THF テトラヒドロフラン
eq. 当量
【0025】
実験の部
ベンゾイルグアニジン(I)を製造する一般的プロトコール
変形方法A:安息香酸(II、 L=OH)から。
式IIの安息香酸誘導体1.0当量を、無水のTHF(5ml/ミリモル)に溶解または懸濁しそしてそれから、カルボニルジイミダゾール1.1当量を加える。RTで2時間撹拌した後に、グアニジン5.0当量を、反応溶液に導入する。この混合物を一夜撹拌した後に、THFを減圧下(回転蒸発器)で留去し、水を加え、混合物のpHを2N HClで6〜7に調節しそして相当するベンゾイルグアニジン(式I)を濾去する。この方法で得られたベンゾイルグアニジンは、水性、メタノール性またはエーテル性塩酸または他の医薬的に許容し得る酸で処理することによって、相当する塩に変換することができる。
【0026】
ベンゾイルグアニジン(I)を製造する一般的プロトコール
変形方法B:安息香酸アルキル(II、 L=O−アルキル)から。
式IIの安息香酸アルキル1.0当量およびグアニジン(遊離塩基)5.0当量をTHFに溶解または懸濁しそして変換が完了するまで(薄層クロマトグラフィーにより監視)(典型的反応時間2〜5時間)、加熱沸騰する。溶剤を減圧下(回転蒸発器)で留去しそして残留物を、EAにとりそしてこの溶液をNaHCO3の溶液で3回洗浄する。それから、それをNa2SO4上で乾燥しそして溶剤を真空中で留去し、残留物を、適当な溶離剤、例えば5:1のEA/MeOHを使用してシリカゲル上でクロマトグラフィー処理する。
(塩形成:変形方法A参照)。
【0027】
実施例1
2−クロロ−4−ヒドロキシベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の結晶。
融点247℃。
変形方法Aによって、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸から製造した。
【0028】
実施例2
2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−ヨードベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の結晶。
融点246〜247℃。
【0029】
合成方法:
(a) RTでそして24時間の塩化アセチル10当量の存在下におけるメタノール(過剰)によるエステル化によって、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸から2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メチルを製造した。水性処理後、結晶化をエーテル/シクロヘキサンから行った。
無色の結晶。
融点128〜130℃。
(b) RTで1.5時間の半濃厚氷酢酸中酢酸ナトリウム10当量の存在下におけるN−クロロスクシンイミド1.1当量および沃化カリウム2.1当量の混合物との反応によって、(a)から2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−ヨード安息香酸メチルを製造した。水性処理および9:1のシクロヘキサン/酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィー処理によって、無色の固体として所望の生成物を得た。
融点191〜192℃。
そしてまた、融点131〜132℃の無色の固体として2−クロロ−4−ヒドロキシ−3,5−ジヨード安息香酸メチルを得た。
(c) 変形方法Bによって、2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−ヨード安息香酸メチル(2b参照)から、2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−ヨードベンゾイルグアニジン塩酸塩を得た。
【0030】
実施例3
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3,5−ジヨードベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の固体。
融点205〜210℃(分解)。
方法Bによって、2−クロロ−4−ヒドロキシ−3,5−ジヨード安息香酸メチル(2b参照)から製造した。
【0031】
実施例4
2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の固体。
無定形。(M+H)+:282。
【0032】
合成方法:
(a) 80℃でそして3時間のDMF中における炭酸カリウムの存在下における臭化ベンジル1.1当量との反応によって、2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−ヨード安息香酸メチルから2−クロロ−4−ベンジルオキシ−5−ヨード安息香酸メチルを製造した。水性処理後、再結晶をイソプロパノールから行った。
無色の結晶。
融点102〜108℃。
(b) 沃化銅(I)の存在下においてN−メチル−2−ピロリジノン中でトリフルオロ酢酸カリウム2当量と一緒に160℃で5時間加熱することによって、4(a)から2−クロロ−4−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチル安息香酸メチルを製造した。水性処理および9:1のシクロヘキサン/酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィー処理によって、無色の結晶を得た。
融点126〜127℃。
【0033】
(c) 塩形成なしに方法Bによって、4(b)から2−クロロ−4−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジンを製造した。
無色の結晶。
融点180℃。
(d) パラジウム/炭素を使用した水素添加およびその後の塩酸塩形成によって4(c)から2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩を製造した。
無色の固体。
無定形。(M+H)+:282℃。
【0034】
実施例5
4−ヒドロキシ−2,5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の結晶。
融点211℃。
【0035】
合成方法:
(a) 上昇した温度(180℃)でそして5時間の反応時間を使用する以外は同様なトリフルオロメチル化によって、4(b)から4−ベンジルオキシ−2,5−トリフルオロメチル安息香酸メチルを製造した。
無色の結晶。
融点116℃。
(b) 一般的プロトコールによって、5(a)から4−ベンジルオキシ−2,5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩を製造した。
無色の結晶。
融点221℃。
(c) RTでメタノール中における10%パラジウム/炭素上の水素添加によって、5(b)から4−ヒドロキシ−2,5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩を製造した。
【0036】
実施例6
4−ヒドロキシ−2−メチル−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩
無色の固体。
【0037】
合成方法:
(a) 触媒量の酢酸パラジウム(II)および沃化銅(I)の存在下においてDMF中で80℃で撹拌することによるメチル亜鉛クロライド(塩化亜鉛(II)/THF複合体による金属交換反応によってメチルマグネシウムクロライドから製造)1.2当量とのクロス−カップリングによって、2−クロロ−4−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチル安息香酸メチル(4b)から2−メチル−4−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチル安息香酸メチルを製造した。
無色の結晶。
融点105℃。
(b) 一般的プロトコールによって、6(a)から4−ベンジルオキシ−2−メチル−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩を製造した。
無色の結晶。
融点255℃。
(c) 5(c)と同様にして、6(b)から4−ヒドロキシ−2−メチル−5−トリフルオロメチルベンゾイルグアニジン塩酸塩を製造した。
【0038】
薬理学的データ:
ウサギの赤血球のNa+/H+交換体の阻害
Na+/H+交換を活性化しそしてそれによって、Na+/H+交換による赤血球へのNa+流入をフレーム測光法を使用して測定することを可能にするために、ニュージーランド白色ウサギ(Ivanovas)に6週間2%のコレステロールを含有する標準食飼を与えた。血液を、耳動脈からとり出しそしてヘパリンカリウムの25IUを加えることによって非凝血性にした。それぞれの試料の一部を、遠心分離によるヘマトクリットの二重測定に対して使用した。それぞれの場合において、100μlのアリコートを赤血球中の当初Na+含量を測定するために使用した。
【0039】
アミロリド−感受性ナトリウム流入を測定するために、それぞれの血液試料100μlを、それぞれの場合において、高滲透圧塩/スクロース培地(ミリモル/リットル:NaCl 140、KCl 3、スクロース150、ウアバイン0.1、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン20)の5ml中でpH7.4および37℃でインキュベートした。その後、赤血球を氷冷MgCl2/ウアバイン溶液(ミリモル/リットル:MgCl2 112、ウアバイン0.1)で3回洗浄しそして蒸留水2.0ml中で溶血した。細胞内のナトリウム含量をフレーム測光法によって測定した。
【0040】
Na+の正味の流入は、当初のナトリウム値およびインキュベーション後の赤血球のナトリウム含量の間の差から計算した。アミロリド−阻害ナトリウム流入は、アミロリド3×10-4モル/リットルを使用しておよび使用しないでインキュベーションした後の赤血球のナトリウム含量の差から得られた。同じ操作を、本発明の新規な化合物の場合において使用した。
【0041】
結果
Claims (3)
- 心筋梗塞、狭心症、心臓の虚血状態またはアテローム性動脈硬化症の治療のための医薬であって、請求項1記載の式Iの化合物の有効含量を含む医薬。
- 請求項1記載の式Iの化合物からなる細胞のNa+/H+交換体の阻害剤。
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