JP4030151B2 - ロボット用複合材リンクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材を使ったロボット用リンクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合材は軽い上に強度・剛性が高いものであり、繰り返し動作を伴う脚式ロボットの脚などに適用したときには、歩行エネルギーの消費量を低減することが可能であり、万一倒れたときの衝撃力も低くなるのでロボットを破損する可能性も少なくなるなど、利点が多い。さらにロボットの上体部に複合材を用いたときには、ロボット全体の重量が軽減されるので、脚などロボットを支える部分の関節モータを小型のものですませることができ、ロボットの軽量化に大きな貢献をするものであり、ロボットが小型・軽量になれば、必然的に歩行エネルギーも軽減されることになる。このような用途の複合材としては、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)に代表される繊維強化樹脂を主体としたものが有望である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
複合材から成るリンクがロボットに組み込まれて所期の性能を発揮するためには、リンクの関節部の寸法精度が充分に保証されていなければならない。この寸法が保証されていないと、脚式ロボットにおいては、うまく歩けないで倒れてしまうし、アームロボットにおいては対象物とハンドとの相対位置が狂ってうまく作業がこなせないことになる。
【0004】
ロボットのリンクは、その両端に関節部を持つものが多いが、そのようなリンクでは、両関節部間の回転軸の平行度と軸間距離、回転軸部の真円度、関節部において相手のリンクと接しながら運動する部分の平坦度や平行度などの寸法が設計寸法に保証される必要がある。また関節部が、相互に間隔をあけて対をなす一対のヨークを含む構造のものであるときには、各ヨークの同芯度または倒れなどの位置関係が保証項目に追加される。
【0005】
これらの寸法保証の必要がある箇所は、複合材のみでは高い寸法精度が得られないので、原則的には、複合材での成形が終了した時点で機械加工を施し、機械加工による精度保証を行うことになる。ここで「原則的には」としたのは、制御技術が進歩向上して多少の寸法誤差があっても所期の動作が得られるようになったときには、機械加工を省略できるからである。さて、複合材の成形時の変形が大きいほど、機械加工で削り取る削り代も予め大きく見積もらなければならない。一方、削り取る部分はできるだけ少なくしたいので、たとえばリンクの回転軸が収納される内部を機械加工するときには、その外部の加工は成形後には行いたくない。成形時の変形が大きいときで、削り代を大きく設定すると、外形寸法と削られ内形寸法との間に軸心ずれが起き、偏肉(一部の肉厚が設計寸法以下になってしまうこと)現象が起きる。したがって複合材のリンクを成形するとき、成形による歪みができるだけ少なくなる手法を採る必要があり、その際、上記のように関節部の寸法(当該関節部相互間の寸法も含むが)に着目して、その寸法誤差が最小となる手法を選ぶことが肝要である。その他の寸法は美観には影響を与えることはあってもロボット本来の機能にはそれほど大きな影響を与えることはない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、複合材によるロボット用リンクの製造方法に関し、複合材によるリンク製造時の関節部の寸法精度を所期の範囲に収めるための新規な方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一対の関節部間が、合成樹脂を主成分とする複合材を主要構成材とするとともに空洞を有する作動部で結ばれて成るロボット用複合材リンクを製造するにあたって、前記両関節部の一部を構成する関節部主体に嵌合する規制柱を有して両関節部主体相互の位置および方向を定める治具と、前記空洞の形状、位置および方向を定める成形用中子とを予め準備し、前記両関節部主体を作成する工程と、前記治具で前記両関節部主体相互の位置および方向を規制するとともに前記成形用中子を前記治具で支持した状態で前記複合材を前記両関節部主体に貼り付ける工程とを順次経過させる順次経過させることを特徴とする。
【0008】
このような方法によれば、作成した関節部主体を治具で規制した状態で複合材の貼りつけを行なうことにより、将来的には省略し得る可能性もある最終的な機械加工を行なう前の状態で、関節部の形状寸法をほぼ最終製品の寸法形状に近いものとすることができ、機械加工の工数低減を図ることが可能となるとともに、機械加工による偏肉も生じ難くなり、完成品の剛性、強度を高く維持することができるとともに2つの関節部間の軸間距離の寸法精度を高めることができ、また成形用中子で空洞の寸法精度を高め、貼りつけるべき複合材の形状を容易にかつ正確に定め、複合材の貼りつけ操作を効率的に行なうことができる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、前記関節部の一部を構成する関節部主体を軽合金で作成し、前記複合材を、前記関節部主体に接着可能な材料に選定することにより、貼りつけ作業の作業性を高めることができる。
【0010】
さらに請求項3記載の発明によれば、前記関節部主体が相互に間隔をあけて対をなすヨークであることにより、2つの関節部の回転軸の平行度を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明するが、例示する具体的実施例は最適な実施形態として2足歩行ロボットの脚部構造をとり、そのうちの人間のモモに相当するリンクについて例示する。
【0012】
図1ないし図8は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は歩行ロボットの脚部を斜め後方側から見たスケルトン図、図2は図1のモモリンクを脚部の外側から見た図、図3は図1のモモリンクを脚部の内側から見た図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図4の下部拡大図、図6は図4の6−6線断面図、図7はモモリンクの長手方向に沿う方向での金属材料および樹脂材料の体積分布を示す図、図8はモモリンクの製造工程での状態を示す縦断側面図である。
【0013】
先ず図1において、このロボットの腰11には、垂直軸12,12を介して左、右の脚L,Lが連結されており、両脚L,Lは、垂直軸12に連結される上部クロスジョイント13と、上部クロスジョイント13の下部に連結されるモモリンク14と、左右に延びる水平軸15まわりの自由度を有してモモリンク14の下端部に前後方向の自由度を有して連結されるスネリンク16と、該スネリンク16の下端部に下部クロスジョイント17を介して連結される足平18とでそれぞれ構成される。上部クロスジョイント13は、前後方向に延びる水平軸19と、左右方向に延びる水平軸20とを、それらの軸19,20を相互に直交させた配置で備えるものであり、モモリンク14の上端は、垂直軸線まわりの自由度、左右方向の自由度および前後方向の自由度を有して腰11に連結されることになる。またスネリンク16は水平軸15の軸線まわりの自由度すなわち前後方向の自由度を有してモモリンク14に連結される。さらに、下部クロスジョイント17は、左右方向に延びる水平軸21と、前後方向に延びる水平軸22とを、それらの水平軸21,22を相互に直交させた配置で備えるものであり、足平18は、前後方向の自由度および左右方向の自由度を有してスネリンク16の下端部に連結されることになる。
【0014】
かかる構成の歩行ロボットは、本出願人が先に提案した多くの出願明細書(たとえば特開平3−184782号等)に詳細に記述されているので、これ以上の説明を要しまい。
【0015】
図2、図3および図4を併せて参照して、本発明のリンクとしてのモモリンク14は、その上端の第1関節部23と、下端の第2関節部24と、両関節部23,24間を結ぶ作動部25とで構成されるものである。
【0016】
第1関節部23は、同軸上で相互に間隔をあけて対をなす一対の関節部主体としての外側ヨーク26および内側ヨーク27を備え、図1で示した上部クロスジョイント13における水平軸20まわりの自由度すなわち前後方向の自由度を実現するための図示しないモータや減速機を受け入れるべく構成されるものであり、両ヨーク26,27の下部は、複合材たとえばCFRPのプリプレグ(CFRPの原材料でシート状の形状をしており、低温で保管されていて柔らかいが、温度が高い状態では硬化することになり、焼成によりそれ自体で接着可能となる)から成る連結部28で連結される。
【0017】
外側ヨーク26は、アルミニウム合金やチタン合金等の軽金属から成る外側スリーブ29に、該外側スリーブ29と同一の軽金属から成るお碗形の外側カップ30が機械的に結合されて成り、また内側ヨーク27は、アルミニウム合金やチタン合金等の軽金属から成る内側スリーブ31に、該内側スリーブ31と同一の軽金属から成るお碗形の内側カップ32が機械的に結合されて成る。
【0018】
外側スリーブ29の軸方向中間部には外側方に張出す連結鍔部29aが一体に設けられており、また外側スリーブ29の軸方向一側(図4の右側)端部には外側方に張出すフランジ部29bが一体に設けられる。また内側スリーブ31の軸方向他側(図4の左側)端部には外側方に張出す連結鍔部31aが一体に設けられる。外側カップ30は、溶接またはロウ付けなどの公知の機械的結合構造により、外側スリーブ29の軸方向他端部外面および連結鍔部29aに結合され、また内側カップ32は、溶接またはロウ付けなどの公知の機械的結合構造により、内側スリーブ31の軸方向一端部外面および連結鍔部31aに結合される。
【0019】
第1関節部23に収納されたモータの出力は、減速機で拡大されて外側スリーブ29のフランジ部29bに連結され、さらに外側スリーブ29の連結鍔部29aから作動部25に駆動力が伝達されるものであり、外側スリーブ29と作動部25との間で駆動力が実質的に受渡しされる。すなわち外側ヨーク26は駆動力を実質的に受渡しする機能を果す。一方、内側ヨーク27はモータおよび減速機を支えている軸受を単に収納するのみで、回転トルクは伝えない構造となっている。またフランジ部29bには、前記減速機からの駆動力を伝達する部材を締結するための複数のねじ孔33…が周方向に間隔をあけて設けられている。
【0020】
図5を併せて参照して、第2関節部24は、同軸上で相互に間隔をあけて対をなす一対の関節部主体としての外側ヨーク34および内側ヨーク35を備え、図1で示したスネリンク16との間で水平軸15の軸線まわりの回転自由度を実現すべく、減速機41を受け入れ可能に構成されるものであり、両ヨーク34,35の上部は、複合材たとえばCFRPのプリプレグから成る連結部36で連結される。
【0021】
外側ヨーク34は、アルミニウム合金やチタン合金等の軽金属から成る外側スリーブ37に、該外側スリーブ37と同一の軽金属から成るお碗形の外側カップ38が機械的に結合されて成り、また内側ヨーク35は、アルミニウム合金やチタン合金等の軽金属から成る内側スリーブ39に、該内側スリーブ39と同一の軽金属から成るお碗形の内側カップ40が機械的に結合されて成る。
【0022】
外側スリーブ37の軸方向中間部には外側方に張出す連結鍔部37aが一体に設けられており、連結鍔部37aに連なるフランジ部37bが、外側スリーブ37の軸方向一端部で厚肉となるようにして外側スリーブ37に一体に形成される。また内側スリーブ39の軸方向他端側(外側スリーブ37とは反対側)の端部には外側方に張出す連結鍔部39aが一体に設けられる。外側カップ38は、溶接またはロウ付けなどの公知の機械的結合構造により、外側スリーブ37の内側スリーブ39側の端部外面および連結鍔部37aに結合され、内側カップ40は、溶接またはロウ付けなどの公知の機械的結合構造により、内側スリーブ39の軸方向一端側(外側スリーブ37とは反対側)の端部外面に結合される。
【0023】
モモリンク14に対してスネリンク16を駆動させるモータ42は、図2に仮想線で示すように、作動部25の中間部に組付られるものであり、該モータ42の出力は仮想線で示すベルト43により、第2関節部24内に組み立てられる減速機41に伝達され、トルクが増幅されてスネリンク16に伝えられ、スネリンク16を前後方向に加・減速することになる。スネリンク16を駆動した反力はモモリンク14が負担しなければならないので、外側スリーブ37が備えるフランジ部37bには複数のねじ孔44…が設けられており、減速機41はそれらのねじ孔44…によりフランジ部37bに締結される。すなわち外側ヨーク34は、駆動力を実質的に受渡しする機能を果すものであり、内側ヨーク35は回転トルクを伝えない構造となっている。またフランジ部37bのねじ孔44…には、階段の昇降時に非常に大きなトルクが加わるので第2関節部24の強度、剛性はこのトルクを基準に設計されることになり、モモリンク14全体にも、この大きなトルクが作用することになる。
【0024】
第1および第2関節部23,24間を結ぶ作動部25の下部は、スネリンク16との干渉を避けつつ大きな回転角度を確保するために、該作動部25の上部と比べて細くくびれて形成されるものであり、このような形状が伝達トルクを低い応力のもとで伝えるには不向きであることが良く理解できよう。
【0025】
この作動部25は、基本的には複合材としてのCFRPで構成されるものであるが、第1および第2関節部23,24間の位置関係を定めるために、アルミニウム合金やチタン合金等の軽金属から成る一対の連結板45,46をも含むものであり、一方の連結板45は、第1関節部23の外側スリーブ29における連結鍔部29aと、第2関節部24の外側スリーブ37における連結鍔部37aとに、溶接またはロー付け等の機械的結合構造で結合され、また他方の連結板46は、第1関節部23の内側スリーブ31における連結鍔部31aと、第2関節部24の内側スリーブ39における連結鍔部39aとに、溶接またはロー付け等の機械的結合構造で結合される。一方の連結板45は、第1および第2関節部23,24に作用するトルクの軸線にほぼ直交する平面内で平板状に形成されて、第1および第2関節部23,24間を連結することになり、両連結板45,46は、作動部25の外形線に対応した形状に形成される。
【0026】
一方の前記連結板45は、その周辺部と、モータ42を収納すべく連結板45に設けられた開口部47とで略L字形に曲げられた断面形状を有しており、曲げに対する抵抗力を与えられる。このL字形断面は、後述するようにCFRPで周りを固められたとき、CFRPの断面係数を飛躍的に高めることになり、モモリンク14全体の剛性を非常に高くする。また連結板45には、モータ42を組み付けるためのねじ孔を備えるねじ部材48…や、連結板45の周縁部にあって図示しないベルトカバーを取り付けるためのねじ孔49…が加工されるべき厚みのある小片(図示せず)等が予め溶接またはロウ付けなどの機械的結合構造で結合されている。
【0027】
上記ねじ部材48…はCFRPを結合して焼成する際の歪みを回避するために、該ねじ部材48…の表面を連結板45よりも幾分飛び出させた状態で結合されており、焼成後に機械加工されて各ねじ部材48…の面が揃えられ、しかも第2関節部24のフランジ37bに対する高さが設計値に抑えられ、ベルトのアライメントが適正化される。
【0028】
連結板45には、上記の他にも、ロボット上体部から下部リンクに情報やエネルギーを伝達するための電線類を迎え入れるための孔50や、電線を束ねたハーネスを固定するためのねじ孔51…などが予め加工されている。また軽量化の観点から、連結板45には随所に肉抜き孔52,53等が設けられる。これらの肉抜き孔52,53等は、重量軽減に寄与する以外にも連結板45の表裏に張りつけられるプリプレグが肉抜き孔52,53等を通じて互いに強固に接着し、完成時の強度を一層高める働きも併せもつものである。
【0029】
他方の連結板46についても上記連結板45と同様で、図4に明示する如く、周辺部がL字型に曲げられて強度・剛性を高めており、肉抜き孔54が設けられ、必要に応じて電線を通すための孔55が設けられる。
【0030】
第2関節部24における外側ヨーク34および内側ヨーク35の内側には、図3および図5で明示するように、各スリーブ37,39および各カップ38,40と同一の金属材料から成る金属板を曲げ加工して成る接合板部56,57が、溶接またはロー付け等の機械的結合構造により結合される。
【0031】
また上記連結板45,46における第2関節部24側の端部は接合板部45a,46aとして機能するものであり、これらの接合板部45a,46aおよび前記接合板部56,57への各スリーブ37,39への結合部において連結鍔部37a,39aは、図5に詳しく描かれているように、接合板部45a,46a側を段階的に薄くするように形成されており、スリーブ37から作動部25へのトルクの伝達から見ると第2関節部24の中心から離れるにつれて金属部分の板厚が次第に先細りになっている。
【0032】
作動部25は、複合材としてのCFRPから成るプリプレグ層が横断面矩形の筒状に形成されて成るものであり、連結板45,46の部分では、図5で明示するように、2枚のCFRPから成るプリプレグ層58,59が連結板45,46をサンドイッチ状に挟むようにして、連結板45,46に接着され、両連結板45,46の側縁間では両プリプレグ層58,59が相互に接着される。なお、図5ならびに後述の説明で参照する図6においては、発明の趣旨を良く理解してもらうために、CFRPの厚みのみ誇張して描かれている。
【0033】
而して各プリプレグ層58,59の外側ヨーク34への貼りつけ部において、それらのプリプレグ層58,59は外側ヨーク34に機械的に結合されている接合板部45a,46a,56,57に接着されるのであるが、スリーブ37から各接合板部45a,46a,56,57側に向うにつれて金属部分の板厚が次第に先細りになっている。すなわちCFRPがスリーブ37に結合された時点でみれば、金属の割合がスリーブ37の中心では高く、CFRPの割合がスリーブ37の中心から遠ざかるにつれて高くなるように設定されたことになる。なお、例示された金属形状は段階的にその厚みが変化しているが、より大きな荷重に対しては連続的に厚みを変える方がより望ましいことは言うまでもない。
【0034】
各プリプレグ層58,59は、1枚のプリプレグでも良いが、通常は繊維方向を異にする複数枚のプリプレグを積層して構成される。ところで、第2関節部24でのトルクはフランジ部37bへの減速機41の締結部から外側スリーブ37に伝わり、該外側スリーブ37から図2の点線60で示す箇所で、溶接等の機械的結合構造により前記トルクの多くの部分が連結板45に伝達される。この歴史ある機械的結合構造は強度的な解明が充分に進んでおり、且つ品質管理も行いやすい。溶接ラインである点線60の位置を決めるのは、伝達すべきトルクの大きさおよび連結板45の厚みであり、この部分における計算応力が設計基準値以下になるように、点線の半径は決められる。
【0035】
CFRPのプリプレグは通常織られる繊維の方向が揃えられており、本実施例の場合には、外側スリーブ37から作動部25に回転力(トルク)の形で荷重がかかるため、プリプレグ層58,59は、たとえば相互に直交する方向に配向されて織られたプリプレグを少なくとも一層含み、当該プリプレグの繊維が図2の61で示す方向、すなわち第2関節部24に作用するトルクの軸線に前記2方向をほぼ同一角度で交差せしめるように配向される。この配向によってトルクは繊維の張力の形で負担され、少ない層で大きなトルクを伝達できることになる。
【0036】
また前記プリプレグ層58,59は連結板45の周辺では連結板45の形状に合わせて曲げられ、図3に示すように、作動部25の側壁を構成するごとく成形される。
【0037】
外側カップ38および内側カップ40の外表面には前記プリプレグ層58,59に連なるプリプレグ層65,66が回り込んでおり、外側スリーブ37に伝達されたトルクの一部が作動部25に伝達されている。両プリプレグ層65,66のうち、プリプレグ層65は望ましくは3層から成るものであり、その3層のうち少なくとも一層はトルクの伝達に最適なように、外側カップ38の周方向(図5の67で示す方向)に沿って炭素繊維が作動部25の側面まで配向される。このプリプレグ層65の存在により外側スリーブ37に伝達されたトルクの一部は外側カップ38に伝えられ、そのカップ38から接着力によってプリプレグ層65に伝えられるが、トルクは有効に繊維に張力として伝わり、少ない層数のプリプレグ層65で大きなトルクの伝達を可能にする。これに対して内側カップ40の表面に張られるプリプレグ層66については、本実施例では内側スリーブ39がトルク伝達に寄与しないので、繊維方向をトルク伝達を目的として決める必要はない。また外側スリーブ37から作動部25への力の伝達をより確実なものにする意味で、外側カップ38および外側スリーブ37の結合体のまわりをCFRPが包み込むようにして成形されている。
【0038】
なお、第2関節部24において外側ヨーク34および内側ヨーク35間を連結する連結部36は、作動部25のプリプレグ層58,59に連なるプリプレグにより形成されている。
【0039】
このような第2関節部24および作動部25の連結構造は、第1関節部23および作動部25の連結部に適用されるものであり、第1関節部23および作動部25の連結構造についての説明を省略する。
【0040】
図6を併せて参照して、モモリンク14内に一旦迎え入れられた電線をスネリンク16側に導くための孔68が、一方の連結板45の内方側に配置された幾分厚めの金属板69に設けられており、この金属板69は金属から成る添え板70に溶接またはロウ付け等で結合される。しかも金属板69には電線を固定するためのねじ孔71…が穿設されている。この添え板70の表裏は、前記プリプレグ層58,59に連なるようにして接合板部56,57に接着される2層のプリプレグ層72,73で挟まれている。
【0041】
ところで、前記金属板69には電線を取り付ける作業に際して外力が加わる他にはこれといった外力は働かない。したがってねじ孔71…は小さく、かつ本数も少なくてすむ。また添え板70の表面積も、この意味では少なくて良いのだが、CFRPの板に剛性を持たせるために添え板70は図示のように細長く伸びて、この両側でCFRP層は互いに離反して焼成され、焼成後のこの部位の断面係数を高めるようになっている。さらに前記孔68およびねじ孔71…は、全体が組み立てられた後での加工がし難い奥深い位置にあるが、組み立て前にこれらの孔68,71…の機械加工を終了し、その後でプリプレグが焼成により貼りつけられる。
【0042】
このようなモモリンク14において、作動部25の両端の第1および第2関節部23,24の構成要素であって駆動力を実質的に受渡しする外側ヨーク26,34が軽金属で形成され、作動部25が複合材たとえばCFRPから成るプリプレグ層58,59と、軽金属製の連結板45,46とで構成されており、作動部25は、図7で示すように、両関節部23,24から離れるにつれて、金属材料から成る部分の体積に対して、樹脂材料で構成される部分の体積の比が漸次大となるようにして形成される。したがって、金属材料が実質的に支配する領域と、樹脂材料が実質的に支配する領域との間に、金属材料および樹脂材料の占める体積が次第に変化する移行区間が設けられることになり、当該移行区間において、当該金属材料から当該樹脂材料との間に所要の駆動力の伝達に必要な結合力を確保することによって、必要な剛性を有して軽量化されたリンクとしてのモモリンク14を得ることが可能となる。
【0043】
しかも上記結合力を確保するにあたって、機械的な一体構造で外側ヨーク26,34に設けられた軽金属製の接合板部45a,56が、外側ヨーク26,34およびプリプレグ層58,59間での駆動力の伝達が可能な接着強度を確保し得る表面積を有するように形成され、それらの接合板部45a,56にプリプレグ層58,59が接着される。したがって、平準化された荷重の加わる部位に樹脂材料を主として用いることを可能とし、金属材料および樹脂材料の接合面積を重量の増加を抑えつつ拡大することで両者間の結合力を高めることが可能となる。すなわち重量が一定のときに表面積が最大となる形状は平板状であり、接着による結合力は接触面積に比例するから、重量を増やさずに結合力を高めるには接触部が板状であればよく、外側ヨーク26,34に機械的に一体化された接合板部45a,56にプリプレグ層58,59が接着されることにより、重量の増加を抑えつつ結合力を高めることができる。これにより、両関節部23,24からの大きな駆動力をプリプレグ層58,59に確実に伝達できるようになり、広範囲な自重・ペイロードの歩行ロボットの設計に対応することができる。
【0044】
また接合板部45aは、作動部25の一部を構成して、外側ヨーク26,34に機械的に結合される連結板45の一部であり、連結板45をたとえば圧延材のプレス成形品とすることにより、前記接触面積の確保が容易となる。
【0045】
さらに接合板部45aを形成する連結板45は、孔53の存在により外側ヨーク34からの距離が大となるのに応じて実質的な幅を狭くして形成されるものであり、金属材料および樹脂材料間で駆動力の受渡しが行なわれるにもかかわらず、接合部で応力の平準化を行うようにして応力集中発生による破損が生じることを防止することができ、軽量化を図ることも可能である。
【0046】
作動部25の一部を構成する連結板45,46は両外側ヨーク26,34間を連結するものであるので、モモリンク14の形成前に両外側ヨーク26,34を予め連結しておくことができ、製造工程での物流管理を簡素化することができるとともに、CFRPから成る部分を成形・焼成する際の製造工程を簡素化することができる。
【0047】
前記連結板45,46の形状は自由に設計可能であり、モモリンク14内に各種付属機器、たとえばモータ42や図示しないエンコーダ、配線、カプラー等を収納するようにした、所謂「外骨格」ロボットの設計に向いている。
【0048】
しかも連結板45,46は、第1および第2前記関節部23,24に作用するトルクの軸線にほぼ直交する平面内で平板状に形成されるものであり、軽量化を可能としつつ曲げモーメントによって連結板45,46が座屈することを防止してトルクの伝達が可能な構造を実現することができる。
【0049】
それに加えて、連結板45,46が、作動部25の外形線に対応して形成され、プリプレグ層58,59が連結板45,45に接着されるので、プリプレグ層58,59を接着する際の作業が容易となり、成形型も簡素なものですむ。
【0050】
さらに、連結板45,46の表裏両面にプリプレグ層58,59が接着されており、プリプレグ層58,59の接着後の焼成に伴なって生じる樹脂材料および金属材料の熱膨張差に伴なう熱歪みが相互に打消されることになり、焼成時の熱歪みによる変形力が金属製の連結板45,46の表裏に同じ方向に作用して歪みが抑えられる上に、金属材料の表面と樹脂材料の表面とが接触する面積を倍増して結合力を高めることができる。
【0051】
このようにして、作動部25の主要構成材料たるCFRPから成るプリプレグ層58,59が、第1および第2関節部23,24に接着されてモモリンク14が構成されるが、そのような接着による結合構造は、表面加工処理を不要として滑らかな表面を得ることができ、外観を優れたものとすることが可能であり、しかも型による焼成で接着可能であることから複雑な形状でも煩わしい作業を不要として結合可能である。
【0052】
ところで、プリプレグ層58,59は高強度であるCFRPから成るものであるために薄く設計することが可能であるが、この特性故に却って剛性が心配される場合も生ずる。たとえば実質的に平坦な広い面積を有する構造体では強度は充分にあるものの、ペコペコした剛性の低い部分が生ずる。この低剛性の部位に予想外の荷重が加わるとき、座屈破壊を生ずる危険性がある。この欠点を除くには、当該平面に適切な筋交いを入れることが有効である。筋交いを入れた状態では、あたかも障子における桟のように、この筋交いと薄いCFRPの皮とが強調して全体を強くする。この筋交いを単にFRPの肉厚を厚くする手法で達成すると、当該筋交いの形状や位置を正確に設定するために特別な治具や型が必要になる等、製造コストを押し上げることになる。しかるに、作動部25において一方の前記連結板45は、その周縁部および開口部47の部分でL字形に曲げられた断面形状を有しており、また他方の連結板46はその周縁部がL字型に曲げられており、そのようなL字形の筋交いの部分で、プリプレグ層58,59が相互に離反して焼成されることにより、当該部位の断面係数を増大させて剛性を高めることができ、前記連結板45,46をプレス加工によって曲げるだけで、両プリプレグ層58,59を離反させた筋交いの形状および設置位置を一層確実に安価に精度良く決めることができる。
【0053】
ところで、ロボットの一部を構成するモモリンク14として必要なことは、上端の第1関節部23の回転軸線すなわち水平軸20(図1参照)の軸線と、下端の第2関節部24の回転軸線すなわち水平軸15(図1参照)の軸線との間の軸間距離が正確に保証されており、両軸20,15の倒れ(平行度)が基準値以下にできていること、ならびにヨーク26,27;34,35同士の左右のズレ(たとえば図4において、上端側のヨーク26,27に対して下端側のヨーク34,35が右または左にずれていること)が基準値以下に納まっていることである。これらの条件が守られないときは、ロボットの歩行が著しく困難になり、最悪の場合には歩行ができなくなる。
【0054】
このような精度保証は、樹脂を成形するときの歪みを考慮すれば、関節部に多少の削り代ろをつけておき、樹脂成形が終了したあとで機械加工を施して所要の精度に仕上げることが現在の制御技術レベルでは合理的である。各ヨーク26,27;34,35の内部を機械加工することで、水平軸15,21の軸間距離と平行度が保証され、各ヨーク26,27;34,35の軸方向両端面を機械加工することで、ヨーク26,27;34,35同士の左右のずれの精度、ならびに水平軸15,21に対する直角度が守られる。
【0055】
ここで複合材を貼りつけてモモリンク14を形成したときの形状寸法精度を高く維持することができたときは、機械加工を行った後も各ヨーク26,27;34,35の肉厚は均一に成形され、各ヨーク26,27;34,35の剛性・強度は設計値に納まることになるが、逆に複合材貼りつけ時の形状の狂いが大きいときは、機械加工を行ったときの肉厚が不均一になり、甚だしいときは一部の肉が欠損することも予想される。不均一な肉厚になっても強度・剛性値を設計値に抑えるためにはヨーク26,27;34,35の外側にも駄肉を付けることになるが、これでは高価なCFRPを使ってまで軽量化を行なう目的にそぐわない。これはヨーク内部の機械加工の話であるが、ヨーク端面についても同じことが言える。したがって複合材貼りつけ時の歪みを最小にする手法および安価に成形できる手法の開発が必要であり、本発明に従えば、図8で示すようにして、CFRPの貼りつけが行なわれる。
【0056】
図8において、治具751 には、第1関節部23の関節部主体である外側および内側ヨーク26,27と、第2関節部24の関節部主体である外側および内側ヨーク34,35とが、成形時の都合を考慮して横に寝かされた姿勢で取付けられる。すなわち外側ヨーク26,34が連結板45を介して連結された状態で治具751 に取付けられ、内側ヨーク27,35は連結板46を介して連結された状態で治具751 に取付けられる。
【0057】
この際、第1関節部23側の両ヨーク26,27におけるスリーブ29,31、ならびに第2関節部24側の両ヨーク34,35におけるスリーブ37,39の内面側は、複合材の貼りつけにより連結部28,36および作動部25を形成した後に、スリーブ29,31;37,39を同芯として必要な機械精度を保証するとともに、対をなすスリーブ29,31;37,39同士の平行度および軸間距離が設計値となるべくして必要な機械精度を保証するために機械加工が施されるものであり、機械加工を施すための駄肉を有するように形成されている。またスリーブ29のフランジ部29b、ならびにスリーブ37のフランジ部37bは、複合材の貼りつけにより連結部28,36および作動部25を形成した後に、CFRPの焼成に起因した歪みを機械加工によって削り落として必要な精度に仕上げられるものであり、前記歪みが生じることを考慮して、幾分駄肉をつけて形成されている。
【0058】
治具751 は、下部治具板761 と、該下部治具板761 の上方に配置される上部治具板77と、ヨーク26,27に嵌合されて両治具板761 ,77間に設けられる規制柱78と、ヨーク34,35に嵌合されて両治具板761 ,77間に設けられる規制柱79と、規制柱78を囲繞してヨーク26および下部治具板761 間に配置されるスペーサ80と、規制柱78の中間部を囲繞してスペーサ26,27間に配置されるスペーサ81と、規制柱79を囲繞してヨーク34および下部治具板761 間に配置されるスペーサ82と、規制柱79の中間部を囲繞してスペーサ34,35間に配置されるスペーサ83とを備え、規制柱78,79の上部には、ヨーク27,35の上端に係合する環状の規制段部78a,79aが設けられる。
【0059】
また両ヨーク26,27間ならびに両ヨーク34,35間で規制柱78,79の中間部は、手を入れ易くして複合材の貼りつけを容易とするために、えぐられており、スペーサ81,83も規制柱78,79のえぐりに対応する部分がえぐられている。
【0060】
ところで、モモリンク14は、その内部にモータを受け入れるスペースや電線およびそのカプラーを収納するための空洞を有するものであり、その空洞空間の寸法を精度よく確保するために分解可能な成形用中子851 が、下部治具板761 に固着された治具台86に載せられて、連結板45に設けられている開口部47に挿入される。この成形用中子851 は、リンク成形後に分解して取り除かれるものであり、石膏等で作られることによって破壊により分解可能なものであってもよく、また分解を想定した組み立て式のものであってもよい。
【0061】
この成形用中子851 によって確保されるスペースは、モータや、電線およびそのカプラー等を収納するだけのスペースを確保するものであればよく、不必要なスペースまで確保するのは、成形用中子851 を複雑にして製造時のコストを押し上げるので、モモリンク14の内部を、公知のように内部をハニカム構造体62,63,64…、若しくはロハセル等の軽量材料で充填することが可能である。すなわち連結板45の内側には、当該板45の折り曲げ高さに相当する厚さのハニカム構造体62が、図5で示すようにセルを向けて配置される。このハニカム構造体62を使う理由はもう一つある。それは、前述のように連結板45にはねじ部材48…が結合されているので、そのねじ部材48…が連結板45から内方に飛び出ていることになる。もしハニカム構造体62によって、前記雄型とのプリプレグ層59との間の空隙が埋められていなければ、焼成後に成形用中子851 を取り除くことが著しく困難となるのであり、ハニカム構造体62の厚みは当該ねじ部材48…の長さと同じか、これよりやや厚い寸法が選ばれ、焼成後の型の抜き取りを容易にしている。また外側カップ38と接合板部56とで囲まれる空間にもハニカム構造体63が設置され、成形用中子851 を必要以上に複雑な形状にする必要をなくしている。同じことは反対側の連結板46についても言える。ここではかなりの広い範囲にわたってハニカム構造体64が埋められ、成形用中子851 を簡潔な形状とすることに寄与している。これらのハニカム構造体62,63,64は、成形されたリンクの剛性を高める役割も担うことは言うまでもない。また各ハニカム構造体62〜64の内面側にプリプレグ層67が貼りつけられるようにしてもよい。
【0062】
このようにして治具751 により、第2関節部24における両ヨーク34,35に対する第1関節部23における両ヨーク26,27の位置および方向が定められるとともに、第1関節部23における両ヨーク26,27に対する第2関節部24における両ヨーク34,35の位置および方向が定められ、さらにモモリンク14が備える空洞の形状、位置および方向が成形用中子851 で規制されることになり、その状態で、治具751 および成形用中子851 で貼りつけるべき形状を定めたプリプレグを各ヨーク26,27,34,35に必要枚数だけ貼り付けてリンクの形状を作り上げる。
【0063】
その後オーブンにより、温度管理をした上で高温焼成し、その後、放置冷却することによりモモリンク14の機械加工前の形状が形成されることになる。この高温焼成時に空気の混入を避け、樹脂内部の接着が良好に保たれるためにリンク全体を樹脂などのフィルムで包み、外側から圧力を加えて強固に樹脂を押さえ込みながら焼成するのであるが、この手法は公知、公用に供されているので、当該分野の技術者にこれ以上の説明は要しまい。前述の通り、プリプレグは高温処理されて硬化するので、成形時の温度は高い。この高温のためにモモリンク14を規制している治具751 も熱膨張係数に応じて伸びることになる。したがって治具751 の材質はリンクの熱膨張係数と概ね等しいものを選ぶ方がよく、下部および上部治具板761 ,77は望ましくはCFRPで作られたもの、または鉄などの比較的熱膨張係数の小さなものが選ばれる。また例示のモモリンク14のように、第1および第2関節部23,24が軽金属から成る連結板45,46で連結されている場合には、軽合金の熱膨張係数とCFRPのそれとがかなり異なるので、プリプレグの選定は比較的低温で硬化するものが選ばれ、かつ焼成温度も低く設定する。現在低温焼成用のプリプレグとしては120℃の低温で焼成可能なものが既に市販されている。
【0064】
このようにして、治具751 によりヨーク26,27;34,35を規制した状態でプリプレグの貼りつけを行なうようにしたことにより、最終的な機械加工を行なう前の状態で、関節部の形状寸法をほぼ最終製品の寸法形状に近いものとすることができ、機械加工の工数低減を図ることが可能となるとともに、機械加工による偏肉も生じ難くなり、完成品の剛性、強度を高く維持することができ、本実施例のように最終の組み立て形状が複雑であって最終工程での機械加工を著しく困難にする箇所がある場合に、特に有効である。
【0065】
また複合材であるプリプレグが、高温焼成によりそれ自体で接着可能なものであるので、複合材の貼りつけにあたって接着剤を用いることが不要となり、貼りつけ作業の作業性を高めることができる。但し、強度をより高めたいときには接着剤を用いるようにしてもよく、高温焼成による接着と、接着剤を用いた接着とを併用するようにしてもよい。
【0066】
しかもヨーク26,27;34,35の位置および方向が、それぞれ相手のヨーク34,35;26,27に対して規制されることになるので、対をなす2組のヨーク26,27;34,35の軸間距離および平行度等の寸法精度を高めることができる。
【0067】
さらに貼りつけるべきプリプレグの形状は、治具751 および成形用中子851 で定まるので、貼りつけるべきプリプレグの形状を容易にかつ正確に定め、貼りつけ操作を効率的に行なうことができる。
【0068】
また治具751 による規制時に、各ヨーク26,27,34,35におけるスリーブ29,31,37,39の内面側が幾分駄肉をつけて形成されるものであることにより、治具751 における両規制柱78,79を単純な形状とすることができる。すなわち機械加工後の形状に対応した削り代を設定したのでは、両規制柱78,79も複雑な形状に形成せざるを得ないが、単純な駄肉をつけて各スリーブ29,31,37,39の内面側が形成されることにより、両規制柱78,79を単純な形状とすることが可能となるのである。
【0069】
図9は本発明の第2実施例を示すものであり、上記第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0070】
上記第1実施例では、第1および第2関節部23,24間を連結する軽金属製の連結板45,46が、焼成時に熱膨張によって伸変形をし、この変形をCFRPが押さえ込むために内部に残留応力ができてモモリンク14の強度を低下させるおそれがあるので、この第2実施例は、連結板45,46を省くことによって問題を解消しようとするものである。
【0071】
治具752 には、相互に分離した状態に在るヨーク26,27,34,35が取付けられ、ヨーク26,34間には、モータを収納・固定するための開口部47を有する中間金属板45′が両ヨーク26,34とは分離して配置される。また成形用中子852 が、治具752 の下部治具板762 に複数の規制ピン84,84…により固定的に位置決めされて前記中間金属板45′を支持する下部中子87と、前記中間金属板45′の開口部47に挿通される部分を有して前記下部中子87上に配置されるとともに下部中子87との相対位置が複数の位置決めピン89,89…で規制される上部中子88とを有するように構成される。このような成形用中子852 を用いることにより、成形用中子852 自体および中間金属板45′の位置と方向とが規制され、したがってモモリンク全体の中間部の形状が決まってくる。このように金属製の連結板45,46を省くことで、熱による変形または残留応力の発生を効果的に予防できる。この手法はロボットの体重が比較的重たくて、脚に発生する応力が高い場合に有効である。
【0072】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0073】
たとえば、上記実施例では、複合材としてCFRPのプリプレグを用いたが、炭素の短繊維を混入した複合材にも本発明を適用できることは言うまでもなく、その際、接着剤を用いて複合材を貼りつけるようにしてもよい。また軽金属の使用箇所も、実施例に例示の関節部に限定されるべきではなく、たとえば体重の軽い軽荷重のロボットの場合にはねじ部材等の極く一部のみを金属とすればよく、残りの殆どの部位を同じ材料の半焼成品で置き換えることができる。CFRPの技術に精通している技術者には、必要に応じて半焼成品で概略の形状を作り上げ、これらを組み合わせた後、本格的に高温焼成する製造方法は公知である。
【0074】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、機械加工の工数低減を図ることが可能となるとともに、機械加工による偏肉も生じ難くなり、完成品の剛性、強度を高く維持することができるとともに2つの関節部間の軸間距離の寸法精度を高めることができ、また成形用中子で空洞の寸法精度を高め、貼りつけるべき複合材の形状を容易にかつ正確に定め、複合材の貼りつけ操作を効率的に行なうことができる。
【0075】
また請求項2記載の発明によれば、貼りつけ作業の作業性を高めることができる。
【0076】
さらに請求項3記載の発明によれば、2つの関節部の回転軸の平行度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 歩行ロボットの脚部を斜め後方側から見たスケルトン図である。
【図2】 図1のモモリンクを脚部の外側から見た図である。
【図3】 図1のモモリンクを脚部の内側から見た図である。
【図4】 図2の4−4線断面図である。
【図5】 図4の下部拡大図である。
【図6】 図4の6−6線断面図である。
【図7】 モモリンクの長手方向に沿う方向での金属材料および樹脂材料の体積分布を示す図である。
【図8】 モモリンクの製造工程での状態を示す縦断側面図である。
【図9】 第2実施例の図8に対応した図である。
【符号の説明】
14・・・モモリンク
23,24・・・関節部
25・・・作動部
26,34・・・関節部主体としての外側ヨーク
27,35・・・関節部主体としての内側ヨーク
751 ,752 ・・・治具
78,79・・・規制柱
851 ,852 ・・・成形用中子
Claims (3)
- 一対の関節部(23,24)間が、合成樹脂を主成分とする複合材を主要構成材とするとともに空洞を有する作動部(25)で結ばれて成るロボット用複合材リンク(14)を製造するにあたって、前記両関節部(23,24)の一部を構成する関節部主体(26,27;34,35)に嵌合する規制柱(78,79)を有して両関節部主体(26,27;34,35)相互の位置および方向を定める治具(75 1 ,75 2 )と、前記空洞の形状、位置および方向を定める成形用中子(85 1 ,85 2 )とを予め準備し、前記両関節部主体(26,27;34,35)を作成する工程と、前記治具(75 1 ,75 2 )で前記両関節部主体(26,27;34,35)相互の位置および方向を規制するとともに前記成形用中子(85 1 ,85 2 )を前記治具(75 1 ,75 2 )で支持した状態で前記複合材を前記両関節部主体(26,27;34,35)に貼り付ける工程とを順次経過させることを特徴とするロボット用複合材リンクの製造方法。
- 前記関節部主体(26,27,34,35)を軽合金で作成し、前記複合材を、前記関節部主体(26,27,34,35)に接着可能な材料に選定することを特徴とする請求項1項記載のロボット用複合材リンクの製造方法。
- 前記関節部主体(26,27;34,35)が同軸上で相互に間隔をあけて対をなすヨークであることを特徴とする請求項1または2項記載のロボット用複合材リンクの製造方法。
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