JP4009224B2 - 放熱材料用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、放熱用途に用いられる熱伝導性シートを得るための樹脂組成物に関し、より詳細には、熱伝導性、柔軟性、生産性、成形性に優れた熱伝導性シート、または硬化物を得ることのできる放熱材料用樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
柔軟性を有する樹脂に、例えばアルミナ、シリカなどの熱伝導性を高める無機充填剤を配合してなる樹脂組成物をシート状に成形したものは、例えば電気・電子部品などの発熱体と例えばヒートシンク、放熱フィン、金属放熱板等の放熱体の間に介在させ、電気・電子部品などの発熱を放熱させる用途に用いられている。一般的に発熱体や放熱体の表面はは平滑でないことが多く、これらとの接触面積を多くして発熱体から放熱体への熱伝導効率を高めるために、これらの用途に用いられる樹脂には柔軟性が求められている。従来より柔軟性を有する樹脂としてシリコーンゴムやシリコーンゲルが用いられてきたが、これらの樹脂は価格が高価であること、硬化に時間がかかり生産性の劣ること、また、低分子量のシロキサン発生により電子部品の接点不良が起こるなど問題があった。
【0003】
上記の問題を解決するために、炭素数2〜18のアルキル基を有するアクリル酸エステルモノマーを主成分とする重合性単量体に光重合開始剤と熱伝導性充填剤を含んだ非シリコン系の放熱材料用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この特許文献1では、シリコーンゴムやシリコーンゲルを用いていないために低分子量のシロキサン発生による電子部品の接点不良問題については改良できるものの、生産性や成形性等には全く考慮が払われていない。本発明者等が検討した結果、例えば熱伝導性シートの成形性に劣ることが判明した。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−155110号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、上記従来技術の問題を考慮して、熱伝導性、柔軟性に優れるだけでなく、例えば熱伝導性シートの生産性、成形性も良好な硬化物を効率よく得ることのできる放熱材料用樹脂組成物およびその硬化物の提供を課題として掲げている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、(メタ)アクリル系重合体10〜80質量%と重合性単量体20〜90質量%からなる(メタ)アクリル系樹脂と、熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤とを含むことを特徴とする放熱材料用樹脂組成物であるところに特徴を有している。
【0008】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、好ましくは0℃以下のガラス転移点を有する(メタ)アクリル系重合体と、アルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。
【0009】
また、上記放熱材料用樹脂組成物には、熱重合開始剤を含むことが好ましい。
【0010】
さらに本発明には、上記放熱材料用樹脂組成物を硬化させて得られる放熱材料硬化物も含まれる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の放熱材料用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)は、(メタ)アクリル系重合体10〜80質量%と重合性単量体(以下、単に単量体という)20〜90質量%からなる(メタ)アクリル系樹脂と、熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤を必須成分とするものである。
【0012】
(メタ)アクリル系重合体を得るには、例えば従来公知の重合方法により(メタ)アクリル系単量体を(共)重合することによって得ることができる。
【0013】
(メタ)アクリル系重合体の製造に用いられる単量体としては、従来公知の(メタ)アクリル系単量体が使用できるが、中でも、得られた樹脂組成物の硬化物の柔軟性が向上することからアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、i―ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、i−ミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、i―ノニル(メタ)アクリレート、i―デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i―ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いる他、2種以上併用してもよい。
【0014】
これらのアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体成分100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル系重合体のガラス転移点は0℃以下が好ましく、より好ましくは−30℃以下、更に好ましくは−40℃以下である。0℃を超えると得られた樹脂組成物の硬化物の柔軟性が十分でない場合がある。なお、(メタ)アクリル系重合体のガラス転移点は、示差走査熱量計を用いて、常法により測定することができる。
【0016】
(メタ)アクリル系重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算での重量平均分子量が1万〜100万の範囲内が好ましく、3万〜80万の範囲内がより好ましく、5万〜50万の範囲内であることが最も好ましい。重量平均分子量が1万未満であると、得られた樹脂組成物の硬化物の耐溶剤性や耐熱性などの性能が低下し、一方、重量平均分子量が100万を超えると、得られる(メタ)アクリル樹脂の粘度が高くなり作業性に支障をきたす場合がある。
【0017】
本発明の(メタ)アクリル系重合体は、上記(メタ)アクリル系単量体を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法で(共)重合することで得ることができる。塊状重合法においては、重合を途中で停止させる部分重合法を採用すれば、重合体と単量体成分との混合物が1工程で得られ、(メタ)アクリル系樹脂としてそのまま利用できるため簡便で好ましい。もちろん、この混合物に別途単量体を加えて調整してもよい。また、溶液重合法、乳化重合法においては、(メタ)アクリル系重合体の重合を完了させた後、水分や溶剤等を単量体に置換して(メタ)アクリル系樹脂を調整しても構わない。
【0018】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂の第2の必須成分である重合性単量体は、ラジカル重合性二重結合を1個有する単量体であれば特に限定されないが、中でも(メタ)アクリル系重合体の製造に用いられる単量体で例示したアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0019】
これらのアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、重合性単量体成分100質量%中、80質量%以上とすることが好ましい。
【0020】
また、必要に応じて、1分子中にラジカル重合性二重結合を分子内に2個以上有する単量体(以下、多官能単量体という)を用いることもできる。多官能単量体の使用によって、さらに耐熱性や耐薬品性、クリープ特性に優れた硬化物が得られるので、硬化物の要求性能に応じて使用の有無を決定すればよい。多官能単量体の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。多官能単量体量が5質量部を超える場合は、得られた樹脂組成物の硬化物の柔軟性が低下する場合がある。
【0021】
多官能単量体の具体例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9ナノンジオール(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル系多官能単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらを使用するときは、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物の主成分である(メタ)アクリル系樹脂は、上述の(メタ)アクリル系重合体が10〜80質量%、単量体成分が20〜90質量%からなるものである。より好ましい比率は、(メタ)アクリル系重合体が15〜70質量%、単量体成分が30〜85質量%、最も好ましい比率は、(メタ)アクリル系重合体が30〜60質量%、単量体成分が40〜70質量%である。(メタ)アクリル系重合体が10質量%未満、すなわち単量体成分が90質量%を超えると、無機充填剤との混練後、例えばシート状へのプリフォーム時や、成形時において樹脂と無機充填剤との分離が発生するため好ましくなく、(メタ)アクリル系重合体が80質量%を超える、すなわち単量体成分が20質量%未満になると、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて作業性の低下や、例えば、プリフォーム時に得られたシートの表面平滑性の悪化や、成形時の表面平滑性の悪化が起こるために好ましくない。
【0023】
また、本発明では、説明の便宜上、(メタ)アクリル系樹脂が(メタ)アクリル系重合体と重合性単量体成分とからなり、他の成分を含まないものとして定義したが、例えば、後述する添加剤等を含んでいてももちろん構わない。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、(メタ)アクリル系樹脂と共に、熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤が含まれる。具体的には、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらを使用するときは、2種以上を併用してもよい。使用する無機充填剤の熱伝導率は、その焼結品を用いて、京都電子工業社製のホットディスク法による熱伝導率測定装置 品番TPA−501を用いて測定することができる。
これらの熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、100〜1500質量部含まれることが好ましく、200〜1300質量部含まれることがより好ましい。これらの無機充填剤は、(メタ)アクリル系樹脂に対する充填量が多いほど、得られる樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が高くなり放熱性能としては向上するが、一方で、得られる樹脂組成物の硬化物の柔軟性は低下するので、例えば、硬化物に要求される熱伝導率や使用する(メタ)アクリル系樹脂の柔軟性により充填量を調整することが好ましい。
【0025】
上記無機充填剤は、必要に応じて、樹脂組成物中における分散性を高めたり、充填量を上げるために、シラン処理等により表面処理が行われてもよい。
【0026】
また、上記無機充填剤の形状としては、球状、繊維状、鱗片状、平面状、破砕状、不定形状などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤を含むことにより、該樹脂組成物を速く硬化させることができ、生産性が向上するので好ましい。
【0028】
重合開始剤としては、例えば、従来公知の熱重合開始剤、光開始剤等を用いることができる。例えば熱により樹脂組成物を硬化させる場合には熱重合開始剤を、また、例えば紫外線により硬化させる場合には光開始剤を用いて硬化させればよく、硬化方法により、適宜、選択することができる。中でも、熱により樹脂組成物を硬化させる方が使用する硬化装置が簡便で、コスト的にも優れており、熱重合開始剤を用いて樹脂組成物を硬化させることがより好ましい。
【0029】
熱重合開始剤としては、例えば、従来公知のアゾ系開始剤や有機過酸化物等が使用できる。有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、1,1―ジ−t―ブチルパーオキシ3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、t−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート等のアルキルパーエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6―ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン等のパーカーボネート類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらを使用するときは、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、これらの熱重合開始剤の作用を促進するための公知の硬化促進剤、硬化促進助剤を使用してもよい。
【0031】
これらの熱重合開始剤は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し0.1〜5質量部、硬化促進剤は(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し0.05〜3質量部、硬化促進助剤は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し0.05〜2質量部が好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、得られる樹脂組成物の硬化物の柔軟性をさらに向上させる場合は、可塑剤、軟化剤、熱軟化剤等を添加することが好ましい。可塑剤、軟化剤、熱軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、ペースト状オイル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動性パラフィン、高級アルコール、脂肪油、塩素化パラフィン、フタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、液状ゴム、合成ゴム、ゴム用可塑剤等の従来公知のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの可塑剤、軟化剤、熱軟化剤等を使用するときは、2種以上を併用してもよく、得られる樹脂組成物の硬化物の柔軟性を長期にわたり安定的に発現させるために、耐熱性や耐寒性の高いものを使用することが好ましい。これらの可塑剤、軟化剤、熱軟化剤等は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して5〜100質量部添加することが好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、従来公知の混練機を用いて得ることができる。例えば、ミキサー、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、加圧型ニーダー、二軸混練機等の連続混練機等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、必要に応じて、混練の際には、装置内を減圧、脱気してもかまわない。
【0034】
本発明の樹脂組成物を硬化させることで、放熱材料硬化物を得ることができる。また、該樹脂組成物は所望の形状に硬化させることができ、その形状、硬化方法、硬化装置は特に限定されるものではない。例えば、放熱材料硬化物は、射出成形金型やバッチ式金型に上記樹脂組成物を投入し所望の形状に硬化させて得ても良く、押出し機や注型などの方法によりシート状に成形し、その後硬化させて得ても良い。硬化温度は、例えば、使用する熱重合開始剤の10時間半減期温度を目安にすると良い。使用する熱重合開始剤の10時間半減期温度よりも10〜50℃高い温度で硬化させることで、硬化速度が速くなり生産性を向上させることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の強度等を高めるために、樹脂または無機繊維、有機繊維等を、硬化物の表面に、含浸または付着させてもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、成形材料分野等で従来公知の、例えば、強化繊維、無機・有機充填材、重合禁止剤、低収縮化剤、離型剤、増粘剤、泡消剤、揺変化剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、カップリング剤、顔料、染料、磁性体、帯電防止剤、電磁波吸収剤、他の熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート)等、本発明の目的を阻害しない限りは、いずれも使用可能である。
【0037】
添加量の目安としては、本発明の目的に反しない程度の量が好ましく、具体的には、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、添加剤の合計として1000質量部以下とするのが望ましい。より好ましい添加量の上限値は900質量部、さらに好ましい上限値は800質量部である。これらの添加剤は、(メタ)アクリル系樹脂に混合して樹脂組成物とすることもできるし、予め(メタ)アクリル系樹脂に混合して使用することもできる。
【0038】
【実施例】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお実施例および比較例において特に断らない限り「部」とあるのは「質量部」、「%」とあるのは「質量%」である。
【0039】
合成例1(アクリル系樹脂Aの合成)
温度計、撹拌機、ガス導入管および還流冷却器を備えた容器に、ラウリルメタクリレート100部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、連鎖移動剤としてのメルカプトプロピオン酸0.2部と重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル0.01部を添加して、窒素雰囲気下で3.0時間塊状重合を行った。重合完了前に、空気を吹き込むのと同時に重合禁止剤ハイドロキノンを0.1部加えた後、系を冷却して重合を途中で終了させた。得られたアクリル系樹脂Aの中の重合体成分であるポリラウリルメタクリレートは50.0%、重合性単量体成分であるラウリルメタクリレートは50.0%であった。得られたアクリル系樹脂Aの25℃での粘度は、4980mPa・sであった。アクリル系樹脂Aの中の重合体成分であるポリラウリルメタクリレートは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した分子量が、重量平均分子量Mw=13.6万、数平均分子量Mn=5.8万であり、示差走査熱量計を用い常法により測定したガラス転移点温度が、−65℃であった。
【0040】
合成例2(アクリル系樹脂Bの合成)
温度計、撹拌機、ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた容器に、2―エチルヘキシルアクリレート40部、トルエン50部、連鎖移動剤としてのα―メチルスチレン0.3部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル0.05部、トルエン10部を混合したものを滴下ロートに仕込み、2時間かけて容器内に滴下した。更にアゾイソブチロニトリル0.01部を添加して、90℃に昇温し3時間重合を行った。重合完了前に、空気を吹き込み、系を冷却して重合を終了させた。次に、系内を減圧にしてトルエンを留去し、固形状の重合体を得た。
【0041】
得られた重合体を50部、重合性単量体として2―エチルヘキシルアクリレート50部、重合禁止剤ハイドロキノン0.05部を混合し、アクリル系樹脂Bを得た。
得られたアクリル系樹脂Bの25℃での粘度は4280mPa・sであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた重合体の分子量は、重量平均分子量Mwが10.6万、数平均分子量Mnが5.1万であった。また、示差走査熱量計を用いて、常法により測定した重合体のガラス転移点温度は、−60℃であった。
【0042】
実施例1
アクリル系樹脂A100部、熱重合開始剤として10時間半減期温度が95℃であるt−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート2部(化薬アクゾ社製;商品名「カヤエステルAN」)、熱伝導率が30W/m・kである酸化アルミニウム1300部(昭和電工社製;品番AS−40)を、加圧型ニーダーを用いて混練した。その後、押出し機を用いて2枚のPETフィルムの間に1mm厚み設定で押し出して、シート状の放熱材料用樹脂組成物を得た。得られたシート状の放熱材料用樹脂組成物を下記基準で評価を行い、結果を表1に示した。
【0043】
次に、得られたシート状の放熱材料用樹脂組成物の周囲に、シリコン製の厚み1mmのスペーサーを取り付け、該シートを120℃に加熱された平板金型の上に20分間、10kg/cmの圧力でプレス成形した。得られたシート状硬化物を、下記基準で評価を行い、結果を表1に示した。
【0044】
[プリフォーム性]
得られた放熱材料用樹脂組成物を押出し機を用いて2枚のPETフィルムの間に1mm厚み設定で押し出したときに、得られるシートの表面状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
<表面状態>
○;アクリル系樹脂と無機充填剤の分離がなく、均一なシートが得られた。
×;アクリル系樹脂と無機充填剤の分離が発生し、不均一なシートが得られた。
<泡の存在>
○;泡の存在がなく、シート表面の凹凸がなく表面性が良好である。
×;泡が存在し、シート表面に凹凸が発生した。
【0045】
[成形性]
シート状の放熱材料用樹脂組成物を上記成形条件で成形したとき、得られたシート状硬化物の表面状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
○;シート表面の凹凸や欠陥がなく、表面性が良好である。
×;シート表面の凹凸が発生した。または、アクリル樹脂と無機充填剤の分離が発生し、不均一なシートが得られた。
【0046】
[熱伝導性]
京都電子工業製 迅速熱伝導率計 品番QTM−500により測定した。
【0047】
[柔軟性]
JIS K6253に準じ、上島製作所製アスカーゴム硬度計A型を用いて測定した。
得られた数値は、小さいほど柔軟性に富んでいる。
【0048】
実施例2
アクリル系樹脂A100部、多官能単量体としてのポリエチレングリコールジメタクリレート1部(共栄社化学社製;商品名「ライトエステル9EG」)、熱重合開始剤として10時間半減期温度が95℃であるt−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート2部(化薬アクゾ社製;商品名「カヤエステルAN」)、酸化アルミニウム1300部(昭和電工製;品番AS−40)を、加圧型ニーダーを用いて混練した以外、実施例1同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0049】
実施例3
酸化アルミニウムを熱伝導率が50W/m・kである窒化ホウ素250部(共立マテリアル社製;品番BN−100)に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0050】
実施例4
酸化アルミニウムを熱伝導率が120W/m・kである窒化アルミニウム700部(東洋アルミニウム社製;品番R−15)に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及び硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0051】
実施例5
アクリル系樹脂A100部を、アクリル樹脂系A70部、フタル酸系可塑剤30部(花王製;商品名「ビニサイザー124」)に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0052】
実施例6
アクリル系樹脂A100部を、アクリル系樹脂A70部、重合性単量体である2―エチルヘキシルアクリレート30部に変更した以外、実施例2と同様にして放熱材料用樹脂組成物、及び硬化物そのを得た。評価結果を表1に示した。
【0053】
実施例7
アクリル系樹脂A100部を、アクリル系樹脂A70部、重合性単量体であるn―ブチルアクリレート30部に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
実施例8
アクリル系樹脂A100部をアクリル系樹脂B100部に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0054】
比較例1
アクリル系樹脂A100部を、重合性単量体2―エチルヘキシルアクリレート100部(すなわち必須成分である(メタ)アクリル系重合体を含まない)に変更した以外、実施例2と同様にしてシート状放熱材料用樹脂組成物、及びその硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0055】
なお、表1で用いた略号は、以下の意味である。
2EHA:2―エチルヘキシルアクリレート
BA:n―ブチルアクリレート
9EG:ポリエチレングリコールジメタクリレート 共栄社化学社製;商品名「ライトエステル9EG」
【0056】
【表1】
Figure 0004009224
【0057】
表1から明らかなように、本発明例は、熱伝導性、柔軟性に優れるだけでなく、例えば熱伝導性シートの生産性、成形性も良好な硬化物を効率よく得ることができる。一方、重合性単量体のみを用いた比較例では、実施例に比べて劣っていることが明らかとなった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物およびその硬化物は、(メタ)アクリル系重合体10〜80質量%と重合性単量体20〜90質量%からなる(メタ)アクリル系樹脂と、熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤を含み、熱伝導性、柔軟性に優れるだけでなく、例えば熱伝導性シートの生産性、成形性も良好な硬化物を効率よく得ることに成功した。従って、例えば、電気・電子部品などの発熱体と例えばヒートシンク、放熱フィン、金属放熱板等の放熱体の間に介在させ、電気・電子部品などの発熱を放熱させる用途に用いることができる。

Claims (4)

  1. (メタ)アクリル系重合体15〜60質量%と重合性単量体85〜40質量%からなる(メタ)アクリル系樹脂と、熱伝導率が20W/m・K以上である無機充填剤を含む放熱材料用樹脂組成物であって、
    上記無機充填剤は、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムのうちのいずれか1種以上であり、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、700〜1500質量部含むものであり、さらに、熱重合開始剤として有機過酸化物を含むものであることを特徴とする放熱材料用樹脂組成物。
  2. 上記(メタ)アクリル系重合体が0℃以下のガラス転移点を有し、上記重合性単量体がアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1記載の放熱材料用樹脂組成物。
  3. 上記熱重合開始剤は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の放熱材料用樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材料用樹脂組成物から得られることを特徴とする放熱材料硬化物。
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