JP4280200B2 - 放熱材用樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、熱伝導性、柔軟性、成形性に優れた放熱材用樹脂組成物に関するものである。
柔軟性を有する樹脂に、例えばアルミナ、シリカ等の熱伝導性を高める熱伝導性充填剤を配合してなる樹脂組成物をシート状に成形したものは、例えば電気・電子部品等の発熱体と例えばヒートシンク、放熱フィン、金属放熱板等の放熱体の間に介在させ、電気・電子部品等の発熱を放熱させる用途、すなわち放熱材として用いられている。一般的に発熱体や放熱体の表面はは平滑でないことが多く、これらとの接触面積を多くして発熱体から放熱体への熱伝導効率を高めるために、これらの用途に用いられる樹脂には柔軟性が求められている。従来より柔軟性を有する樹脂としてシリコーンゴムやシリコーンゲルが用いられてきたが、これらの樹脂は価格が高価であること、硬化に時間がかかり生産性の劣ること、また、低分子量のシロキサン発生により電子部品の接点不良が起こる等問題があった。
上記の問題を解決するために、例えばアクリルゲル等の高分子ゲルと常温では固体ないしペースト状で加熱すると液体になる熱軟化剤と熱伝導性フィラーとを含む組成物が示されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら本発明者等が検討した結果、この特許文献1の組成物にはシリコーンゴムやシリコーンゲルが用いられていないため、低分子量のシロキサン発生による電子部品の接点不良問題については改良できたものの、得られた熱伝導性シートの柔軟性に劣ることが判明した。
特開2002−234952号公報
そこで本発明では、上記従来技術の問題を考慮して、熱伝導性、柔軟性、成形性に優れた放熱材料用の樹脂組成物の提供を課題として掲げている。
本発明は、油性物質と架橋重合体と熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤を必須成分として含有する放熱材用樹脂組成物であって、該油性物質が常温で液体であり、該油性物質が該架橋重合体中に保持されてゲル状樹脂を形成しているところに特徴を有している。なお、本発明における「重合体」は、二元はもとより、三元以上の多元共重合体も含む意味であり、「重合する」にも、二元以上の多元共重合体の合成のために「重合する」ことが含まれる。
上記架橋重合体は、重合性単量体(A)と架橋のための官能基を有する重合性単量体(B)とを共重合した重合体(P0)に、さらに(B)由来の官能基と反応し得る架橋剤を反応させて得られた架橋重合体(P1)か、重合性単量体(A)と重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する多官能重合性単量体(C)を共重合させて得られた架橋重合体(P2)のいずれかの架橋重合体が好ましい。
また、上記架橋重合体(P1)は、上記重合性単量体(B)として水酸基含有重合性単量体を用いて得られた重合体(P0)に対し、有機金属化合物と孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物の存在下で、イソシアナート基を有する架橋剤を反応させて得られたものであると、特に耐熱性が良好となるため、好ましい。
上記放熱材用樹脂組成物は、150℃で3時間保持された場合の質量減量率が5%以下であることが好ましい。また、シート状に成形されてなる樹脂組成物の場合は、例えば、熱伝導性シート等として好ましく用いられる。
なお、本発明には、上記油性物質と上記重合体(P0)とを含む放熱材用樹脂組成物用原料も含まれる。
本発明の放熱材用樹脂組成物は、常温で液体の油性物質と架橋重合体と熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤を必須成分として含有しており、常温で液体の油性物質が架橋重合体中に保持されてゲル状樹脂を形成している。このため、熱伝導性、柔軟性に優れた放熱材を得ることに成功した。従って、例えば、電気・電子部品等の発熱体と、例えばヒートシンク、放熱フィン、金属放熱板等の放熱体の間に介在させ、電気・電子部品等の発熱を放熱させるための放熱材として、あるいは他の用途にも使用可能な熱伝導性材料として用いることができる。
本発明の放熱材用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)は、常温で液体の油性物質と架橋重合体と熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤を必須成分として含有するものである。
常温で液体の油性物質(以下、単に油性物質という)とは、常圧、25℃の条件において液体であり油性(水と混ざらない性質を有する)のものであればよい。例えば、高級(炭素数5〜18)アルコール類、エステル類、エーテル類、パラフィン等の炭化水素、流動性パラフィン、塩素化パラフィン、プロセスオイル、脂肪油、フタル酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ゴム用可塑剤、液状ゴム、合成ゴム等が挙げられが、中でも、可塑剤が好ましい。さらに、これらの油性物質を使用するときは、2種以上を併用してもよい。
上記油性物質は、得られる樹脂組成物の柔軟性を長期にわたり安定的に発現させるために、耐熱性の高いものを使用することが好ましい。具体的には、油性物質を温度130℃で24時間保持した後の質量減量率(%)[=100×(保持前の質量−保持後の質量)/保持前の質量]が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下が最も好ましい。
このような耐熱性に優れた油性物質は、芳香族環(特にベンゼン環)を有する液状可塑剤から選択されることが多く、例えば、フタル酸エステル類としては、フタル酸ジデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジドデシル等のフタル酸ジC8-15アルキルエステル類(好ましくはフタル酸ジC9-13アルキルエステル類)等が該当することが多い。またトリメリット酸エステル類としては、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル等のトリメリット酸トリC7-14アルキルエステル類(好ましくはトリメリット酸トリC8-12アルキルエステル類)等が該当することが多く、ピロメリット酸エステル類としては、ピロメリット酸テトラオクチル等のピロメリット酸テトラC6-13アルキルエステル類(好ましくはピロメリット酸テトラC7-10アルキルエステル類)等が該当することが多く、リン酸エステル類としては、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等のようなベンゼン環にC1-3アルキル基が置換していてもよいトリフェニルホスフェート類が該当することが多い。
耐熱性に優れた油性物質としては市販されているものを使用してもよく、例えば、フタル酸ジノルマルデシル[花王(株)製のビニサイザー105等]、フタル酸ジC10-12アルキル[花王(株)製のビニサイザー124等]、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルトリメリテート[花王(株)製のトリメックスT−08等]、トリメリット酸トリオクチル[旭電化工業(株)製のアデカサイザーC−8等]、トリメリット酸トリノルマルオクチル[花王(株)製のトリメックスN−08、トリメックスNew−NSK;旭電化工業(株)製のアデカサイザーC−880等]、トリメリット酸トリイソノニル[旭電化工業(株)製のアデカサイザーC−9N等]、トリメリット酸トリイソデシルトリメリテート[花王(株)製のトリメックスT−10;旭電化工業(株)製のアデカサイザーC−10等]、トリメリット酸混合アルコールエステル[旭電化工業(株)製のアデカサイザーC−79、アデカサイザーC−810等]、ピロメリット酸テトラオクチル[旭電化工業(株)製のアデカサイザーUL−80等]、ピロメリット酸混合アルコールエステル[旭電化工業(株)製のアデカサイザーUL−100等]、クレジルジフェニルホスフェート[味の素ファインテクノ(株)製のクロニテックスCDP等]、トリクレジルホスフェート[味の素ファインテクノ(株)製のクロニテックスTCP等]、トリキシレニルホスフェート[味の素ファインテクノ(株)製のクロニテックスTXP等]等が例示できる。これら耐熱性に優れた油性物質は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明の樹脂組成物は、油性物質が架橋重合体中に保持されてゲル状樹脂を形成しているが、この「ゲル状樹脂」状態とは、容器中に、(1)重合性単量体(A)と架橋のための官能基を有する重合性単量体(B)とを重合して得られた重合体(P0)と架橋剤と油性物質との混合物を充填し、重合体(P0)の(B)由来の官能基と架橋剤とを反応させ時に、容器の内容物(主として、油性物質と架橋重合体(P1)との混合物)の流動性がなくなってゲル状または固体状になった状態、(2)重合性単量体(A)と重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する多官能重合性単量体(C)と油性物質との混合物において、(A)と(C)を反応させた時に、容器の内容物(主として、油性物質と架橋重合体(P2)との混合物)の流動性がなくなってゲル状または固体状になった状態、いずれかの状態をいう。
本発明の組成物中の架橋重合体は、例えば従来公知の重合方法により得ることができるが、中でも、(1)ラジカル重合性不飽和基を分子内に1個有する重合性単量体(A)(以下、単に単官能単量体(A)という)と、分子内に架橋のための官能基とラジカル重合性不飽和基を1個有する単量体(B)(以下、単に官能基含有単量体(B)という)とを重合して重合体(P0)を得た後、この重合体(P0)の(B)由来の官能基と、この(B)由来の官能基と反応し得る架橋剤とを反応させて得られた架橋重合体(P1)であるか、(2)単官能単量体(A)とラジカル重合性不飽和基を分子内に少なくとも2個以上有する多官能重合性単量体(C)(以下、単に多官能単量体(C)という)を重合して得られた架橋重合体(P2)のいずれかが好ましい。また、これら架橋重合体(P1)と(P2)の混合物でもよい。なお、(B)由来の官能基とは、単官能単量体(A)と官能基含有単量体(B)との重合体(P0)中に含まれる(B)の官能基を示し、単官能単量体(A)は、(B)の有する架橋のための官能基を有さないものとする。
架橋重合体(P1)または(P2)の製造に用いられる単官能単量体(A)としては、ラジカル重合性不飽和基を分子内に1個有する単量体であれば特に限定されず、また、架橋重合体(P1)と(P2)の製造に用いられる単官能単量体(A)は同一でも異なっていてもよい。単官能単量体(A)は、樹脂組成物の硬化物の柔軟性が向上することから、アルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、i―ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、i−ミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、i−デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いる他、2種以上併用してもよい。
これらのアルキル基の炭素数が2〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、架橋重合体(P1)または(P2)を構成する単量体成分100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
架橋重合体(P1)の製造に用いられる官能基含有単量体(B)としては、分子内に架橋のための官能基とラジカル重合性不飽和基を1個有する単量体であればよい。官能基としては、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、ニトリル基、アミノ基、アミド基、無水カルボン酸基、エポキシ基、イソシアナート基が挙げられる。中でも、水酸基が好ましい。具体的な水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
架橋重合体(P1)は、まず、単官能含有単量体(A)と官能基含有単量体(B)とを重合して重合体(P0)を得て、次に、この重合体(P0)の有する(B)由来の官能基と反応し得る架橋剤を、重合体(P0)に反応させることにより得ることができる。
単官能単量体(A)と官能基含有単量体(B)とを重合する場合には、単官能単量体(A)と官能基含有単量体(B)との合計100モル%に対して、官能基含有単量体(B)の割合を0.01〜5モル%の範囲にすることが好ましく、0.1〜4モル%であることがより好ましく、0.3〜3モル%であることが最も好ましい。官能基含有単量体(B)が5モル%を超える場合、得られた樹脂組成物の柔軟性が低下することがあり、0.01モル%未満の場合は、油性物質が架橋重合体(P1)中に保持されずゲル状樹脂を形成しないことがある。
単官能単量体(A)と官能基含有単量体(B)との重合体(P0)のガラス転移点は0℃以下が好ましく、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。0℃を超えると得られた樹脂組成物の柔軟性が十分でない場合がある。なお、重合体(P0)のガラス転移点は、例えば、示差走査熱量計を用いて、常法により測定することができる。
重合体(P0)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)が5万〜200万の範囲内が好ましく、8万〜150万の範囲内がより好ましく、10万〜100万の範囲内であることが最も好ましい。Mwが5万未満であると、ゲル状樹脂を得るのに長時間を有したり、油性物質が架橋重合体(P1)中に保持されずゲル状樹脂が得られない場合がある。一方、Mwが200万を超えると、重合体(P0)と油性物質との混合物の粘度が高くなり、作業に支障をきたす場合がある。
重合体(P0)の有する(B)由来の官能基に反応させる架橋剤としては、分子内に架橋のための官能基を2個以上有し、ラジカル重合性不飽和基を有さない化合物であればよく、重合体(P0)が有する官能基、すなわち官能基含有単量体(B)の官能基の種類に応じて適宜選択される。例えば、官能基含有単量体(B)として、水酸基を有する単量体を使用した重合体(P0)の場合には、イソシアナート基を有する架橋剤を用いることが好ましく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、2,4−トルエンジイソシアナート等が挙げられる。架橋剤は、重合体(P0)の有する官能基1当量に対し、0.1当量以上(より好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは0.7当量以上)であって、2.0当量以下(より好ましくは1.8当量以下、さらに好ましくは1.5当量以下)が好ましい。
官能基含有単量体(B)の官能基と、架橋剤の官能基との好ましい組み合わせは、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基およびアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基と、無水カルボン酸基、エポキシ基、イソシアナート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基の組み合わせである。上記の組み合わせから、官能基含有単量体(B)と架橋剤を選択することにより、得られる架橋重合体(P1)の未反応の官能基を低減することができる。
特に好ましい組み合わせは、水酸基を有する官能基含有単量体(B)とイソシアナート基を有する架橋剤との組み合わせである。この組み合わせにより、より低温、短時間で未反応の官能基を低減することができ、経済性に優れる。
また、必要に応じて、架橋反応を促進するための架橋促進剤、架橋促進助剤を使用してもよい。特に、水酸基を有する官能基含有単量体(B)とイソシアナート基を有する架橋剤とを組み合わせるときは、架橋促進剤として有機金属化合物を用いて反応させることが好ましい。有機金属化合物としては、化学便覧応用編改訂3版(日本化学会編集 丸善株式会社発行)記載の周期律表において、3A〜7A、8、1B族に属する遷移金属元素および2B〜6Bに属する金属元素を有する有機金属化合物であればよく、反応時間、反応温度、樹脂組成物の組成等に応じて適宜選択される。中でも、錫、亜鉛、鉛の化合物が好ましく、錫化合物がより好ましい。これら有機金属化合物は、1種類のみ用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2エチルヘキサノエート)、ジヘキシル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジメチル錫ビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、オクチル酸錫等の有機錫化合物;ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキシル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛、2―エチルヘキシル鉛等の有機鉛化合物等が挙げられる。
さらに、これらの架橋促進剤と、孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物を、併用して架橋反応を行うことが望ましい。なぜなら、架橋重合体(P1)中に油性物質が保持されたゲル状樹脂を用いた熱伝導性シートを高温下で長時間保持する促進実験を行うとシート硬度が低下してしまうという現象が本発明者等によって見出され、この現象を抑制するには、前記有機金属化合物と、孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物とを併用するのが効果的であることも見出されたからである。シート硬度が低下するのは、油性物質によって膨潤している架橋重合体の分子鎖が、高温下に曝されて架橋結合が外れてしまうことによるものと考えられるが、金属原子と配位結合をし得る孤立電子対を有する化合物が存在していると、理由は明確ではないが、架橋結合の解離を防ぐことができた。この硬度低下防止機構は、熱伝導性シートのような無機充填材を含むゲル状樹脂だけでなく、無機充填材等を含まないゲル状樹脂においても同様に発揮された。よって、このようなポリウレタン系のゲル状樹脂を、高温下で用いる用途に適用する際には、耐熱性向上のために、有機金属化合物と孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物との存在下で、ウレタン化反応を行うとよい。
孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物としては、孤立電子対を有する窒素原子や酸素原子を分子中に有する化合物が望ましく、特に孤立電子対を有する原子を分子中に2個以上有する化合物が望ましい。具体的は、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルメタノールアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ヘキサメチルホスホルアミド等の3級アミン化合物や、アセチルアセトン等のケトン化合物が使用できる。これらは2種以上併用してもよい。
架橋促進剤である有機金属化合物の使用量は、重合体(P0)100質量部に対し、0.001〜3質量部が好ましく、有機金属化合物と、上記孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物との比率(質量比)は、1/1〜1/100が好ましい。
一方、架橋重合体(P2)の製造には、前記単官能単量体(A)と多官能単量体(C)が用いられる。この多官能単量体(C)としては、ラジカル重合性不飽和基を分子内に少なくとも2個以上有する単量体であればよく、中でも(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系多官能単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が好ましい。これらを使用するときは、2種以上を併用してもよい。
これら多官能単量体(C)は、単官能単量体(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましく、0.3〜3質量部であることが最も好ましい。多官能単量体量(C)が単官能単量体(A)100質量部に対して5質量部を超える場合、得られた樹脂組成物の柔軟性が低下することがあり、0.01質量部未満の場合は、油性物質が架橋重合体(P2)中に保持されずゲル状樹脂を形成しないことがある。
上記単官能単量体(A)と官能基含有単量体(B)との重合体(P0)、または、単官能単量体(A)と多官能単量体(C)からなる架橋重合体(P2)は、公知の重合開始剤を用いて、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法で重合することで得ることができる。中でも、油性物質存在下で重合を行う重合法を採用すれば、重合体(P0)または(P2)と油性物質との混合物を1工程で得られるため簡便で好ましい。もちろん、この混合物に別途、単量体や添加剤を加えて調整してもよい。
本発明の組成物における必須成分であるゲル状樹脂は、架橋重合体(P1)および/または(P2)(以下、これらを併せて単に「架橋重合体」という)の分子鎖網目の中に油性物質が保持されてなるものであるが、架橋重合体と油性物質の合計を100質量%としたとき、両者の比率は、架橋重合体:油性物質=10〜50:50〜90(質量%)が好ましく、20〜50:50〜80(質量%)がより好ましく、20〜45:55〜80(質量%)が最も好ましい。架橋重合体が10質量%未満、すなわち油性物質成分が90質量%を超えると、油性物質が架橋重合体中に十分に保持されずゲル状樹脂が得られない場合がある。その結果、例えば、熱伝導性充填剤との混練後シート状に押出して得た樹脂組成物にべたつきが発生したり、シートの表面平滑性の悪化が発生したり、樹脂と熱伝導性充填剤との分離が発生したりするので好ましくない。一方、架橋重合体が50質量%を超えると、すなわち常温で液体である油性物質が50質量%未満になると、得られる樹脂組成物の柔軟性が低下したり、重合体(P0)と油性物質との混合物の粘度が高くなり、作業性等が低下する場合がある。また、上記では、ゲル状樹脂が架橋重合体と油性物質との混合物であって他の成分を含まないものとして両者の好ましい比率を説明したが、例えば、後述する添加剤等を含んでいてももちろん構わない。
本発明の樹脂組成物には、架橋重合体と常温で液体の油性物質と共に、必須成分として、熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤が含まれる。具体的には、例えば、無機系充填剤(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化珪素等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭化珪素等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素等窒化物等)、金属系充填剤[銀、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル、錫、及びこれらの合金(例えば銅−錫合金等)等]、炭素質充填剤(カーボン、グラファイト等)等が挙げられる。高度な電気絶縁性が要求される分野には、無機系充填剤を使用することが望ましい。前記熱伝導性充填剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、使用する熱伝導性充填剤の熱伝導率は、その焼結品を用いて、京都電子工業社製のホットディスク法による熱伝導率測定装置:品番TPA−501を用いて測定することができる。
これら熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤は、ゲル状樹脂100質量部に対して、100〜1500質量部含まれることが好ましく、200〜1300質量部含まれることがより好ましい。これらの熱伝導性充填剤は、ゲル状樹脂に対する充填量が多いほど、得られる樹脂組成物の熱伝導率が高くなり放熱性能が向上する。しかし、一方で、得られる樹脂組成物の柔軟性が低下する傾向にあるので、例えば、要求される熱伝導率や使用するゲル状樹脂の柔軟性により充填量を調整することが好ましい。上記熱伝導性充填剤は、必要に応じて、組成物中における分散性を高めたり、充填量を上げるために、シラン処理等により表面処理が行われてもよい。また、上記熱伝導性充填剤の形状としては、球状、繊維状、鱗片状、平面状、破砕状、不定形状等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物(放熱材)は、長期にわたって柔軟性を安定的に発現するものであることが望ましい。長期柔軟性を保持しているかどうかの判断は、樹脂組成物を150℃に加熱されたオーブンで3時間保持したときの質量減量率(%)[=100×(保持前の質量−保持後の質量)/保持前の質量]を目安にすることができ、この質量減量率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが最も好ましい。
本発明の樹脂組成物は、従来公知の混練機を用いて得ることができる。例えば、ミキサー、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、加圧型ニーダー、二軸混練機等の連続混練機等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、必要に応じて、混練の際には、装置内を減圧して組成物中に含まれる空気を除去したり、加熱や加圧しながら行ってもかまわない。また、本発明の樹脂組成物は混練したものをそのまま用いることもできるし、混練後、例えば後述の成形方法によって得られた成形体としても使用可能である。
本発明の樹脂組成物は所望の形状に成形することができ、その形状、成形方法は特に限定されるものではない。例えば、射出成形金型やバッチ式金型に上記樹脂組成物を投入し、所望の形状に成形しても良く、押出し機や注型等の方法によりシート状に成形しても良い。シート状のものは、熱伝導性シートとして有用である。
また、油性物質を架橋重合体中に行き渡らせてゲル状樹脂形成を促進させて本発明の樹脂組成物を調製するのと、樹脂組成物を所望の形状へと成形する工程を同時に行うために、加熱しながら成形を行うことも可能である。さらに、また、所望の形状へ成形し、その後に加熱または熟成(室温での長時間保存)し、油性物質を架橋重合体中に行き渡らせてゲル状樹脂を形成させ、本発明の樹脂組成物を得ても良い。
架橋剤を用いて前記重合体(P0)を架橋させて、ゲル状樹脂として架橋重合体(P1)を得るタイプの樹脂組成物においては、重合体(P0)と架橋剤を一緒に配合し、未成形のまま保存して置くと、室温でも架橋反応が進行してゲル化が進み、その後の成形が困難になることがあるので、樹脂組成物用の原料を何種類かの成分毎に分けて保存(あるいは移送等)、架橋反応を行う前にこれらの原料を混合することが望ましい。架橋反応の進行を抑制するためには、重合体(P0)と架橋剤とを別々に保存すればよい。架橋反応のし易さや作業性の点では、油性物質と重合体(P0)とを第1原料とし、架橋剤を含む第2原料と、熱伝導性充填材を含む第3原料としておき、成形前にこれら第1〜第3原料を混合して本発明の樹脂組成物を調製することが望ましい。なお、架橋促進剤や孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物は、それぞれ、第1原料、第2原料のいずれかまたは両方に配合しておくとよいし、第2〜第3原料に油性物質が含まれていても構わない。
また、本発明の樹脂組成物には、得られる樹脂組成物の強度や取り扱い性等を高めるために、樹脂、無機繊維または有機繊維等を樹脂組成物の表面に含浸または付着させてもよい。
本発明の樹脂組成物には、成形材料分野等で従来公知の、例えば、強化繊維、無機・有機充填材、重合開始剤、重合禁止剤、低収縮化剤、離型剤、増粘剤、泡消剤、揺変化剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、カップリング剤、顔料、染料、磁性体、帯電防止剤、電磁波吸収剤、ペースト状オイル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、高級脂肪油、熱軟化剤等、本発明の目的を阻害しない限りは、いずれも使用可能である。
添加量の目安としては、本発明の目的に反しない程度の量が好ましく、具体的には、ゲル状樹脂100質量部に対し、添加剤の合計として1000質量部以下とするのが望ましい。より好ましい添加量の上限値は900質量部、さらに好ましい上限値は800質量部である。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお実施例および比較例において特に断らない限り「部」とあるのは「質量部」、「%」とあるのは「質量%」である。
実施例1
温度計、撹拌機、ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた容器に、2―エチルヘキシルアクリレート39.7部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3部(全重合性単量体中の水酸基含有単量体(B)を1モル%に設定)、常温で液体である油性物質としてフタル酸エステル系可塑剤50部(花王製;商品名「ビニサイザー124」)を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル0.05部、上記フタル酸エステル系可塑剤10部(上記「ビニサイザー124」)を混合したものを滴下ロートに仕込み、2時間かけて滴下した。さらにアゾイソブチロニトリル0.02部を添加して、90℃に昇温し3時間重合を行った。重合完了前に上記油性物質をさらに60部添加して空気を吹き込み、系を冷却して重合を終了させた。1モル%の水酸基を含有するアクリル系重合体とフタル酸エステル系可塑剤との混合物(以下、アクリル樹脂No.1という)が得られた。ガスクロマトグラフィー(GC)による残存2−エチルヘキシルアクリレートは0.1%であり、アクリル樹脂No.1中の1モル%水酸基含有アクリル系重合体は24.8%であった。
得られたアクリル樹脂No.1の25℃での粘度は1980mPa・sであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた重合体の分子量は、質量平均分子量Mwが50.6万、数平均分子量Mnが20.1万であった。また、示差走査熱量計を用いて、常法により測定した1モル%水酸基含有アクリル系重合体のガラス転移点温度は、−64℃であった。また、上記フタルエステル酸系可塑剤を、130℃のオーブン中で24時間保持した場合の質量減量率は0.43%であった。
次に、アクリル樹脂No.1を100部と、架橋剤としてのイソホロンジイソシアナート0.26部(アクリル樹脂No.1中の水酸基量と当モルのイソシアナート量である)、架橋促進剤としてのジブチル錫ジラウレート0.1部、熱伝導率が30W/m・Kである酸化アルミニウム1300部(昭和電工製;品番AS−40)を、加圧型ニーダーを用いて25℃で30分間、混練した。その後、押出し機を用いて2枚のPETフィルムの間に1mm厚み設定で押し出して、シート状の放熱材用樹脂組成物を得た。次に、得られたシート状の放熱材用樹脂組成物を室温で24時間放置し、組成物中の水酸基とイソシアナート基との反応を完結させた。このときの得られた放熱材用シート(熱伝導性シート)は、ベタツキがなく、用いたフタル酸エステル系可塑剤が架橋重合体中に保持されゲル状樹脂となっていた。また、使用した熱伝導性充填剤との分離がなく均一であり、泡もなく表面平滑性が良好なシートが得られた。つまりシートの成形性は良好であった。
次に、得られたシートの熱伝導率を京都電子工業製:迅速熱伝導率計:品番QTM−500により測定した。得られたシートの熱伝導率は3.2W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。
次に、得られたシートの柔軟性を評価するため、JIS K6253に記載のデュロメータ硬さ試験(タイプA試験)を高分子計器株式会社製アスカーゴム硬度計A型を用いて25℃で実施した。硬度計の押針を試料中心に押し出し、その加圧面を試料に密着させて1秒以内の最大指示値を硬度として採用した。また、試料はシートを10mm厚になるように積層したものを用いた。なお、硬度の値は小さいほど柔軟性に富んでいることを示す。この例で得られたシートのゴム硬度は60であった。
次に得られたシートの長期柔軟性を測定するために、150℃のオーブン中に3時間保持した。この場合の質量減量率は、0.7%であった。よって、得られたシートは長期柔軟性も有していた。
実施例2
実施例1の酸化アルミニウムを熱伝導率が50W/m・Kである窒化ホウ素250部(共立マテリアル社製;品番BN−100)に変更した以外、実施例1と同様にして放熱材用シートを得て、種々の評価を行った。得られたシートはベタツキがなく用いたフタル酸エステル系可塑剤が架橋重合体中に保持されゲル状樹脂となっていた。また、使用した熱伝導性充填剤との分離がなく均一であり、泡もなく表面平滑性が良好なシートが得られた。つまりシートの成形性は良好であった。このシートの熱伝導率は3.5W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。また、実施例1と同様にしてアスカーゴム硬度計A型を用いて測定したゴム硬度は20であった。得られたシートの長期柔軟性を評価した結果、質量減量率は、0.8%であり、長期柔軟性を有していた。
実施例3
実施例1の酸化アルミニウムを熱伝導率が120W/m・Kである窒化アルミニウム700部(東洋アルミニウム社製;品番R−15)に変更した以外、実施例1と同様にして放熱材用シートを得て、種々の評価を行った。得られたシートはベタツキがなく用いたフタル酸系可塑剤が架橋重合体中に保持されゲル状樹脂となっていた。また、使用した熱伝導性充填剤との分離がなく均一であり、泡もなく表面平滑性が良好なシートが得られた。つまりシートの成形性は良好であった。このシートの熱伝導率は3.9W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。アスカーゴム硬度計A型を用いて測定したゴム硬度は45であった。得られたシートの長期柔軟性を評価した結果、質量減量率は、0.6%であり、長期柔軟性を有していた。
実施例4
ラウリルメタクリレート39部、多官能単量体(C)としてのポリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学社製;商品名「ライトエステル9EG」)1部、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート2部(化薬アクゾ社製;商品名「カヤエステルAN」)、フタル酸エステル系可塑剤60部(花王製;商品名「ビニサイザー124」)、酸化アルミニウム1300部(昭和電工製;品番AS−40)を、加圧型ニーダーを用いて常温で30分間混練した。次に、実施例1と同様にして押出し機を用いて2枚のPETフィルムの間に1mm厚み設定で押し出して、シート状の放熱材用樹脂組成物を得た。次に、得られたシートを120℃で30分間加熱炉に入れて重合架橋反応を完結させた。この放熱材用シートの評価を実施例1と同様に行った。得られたシートは、使用した熱伝導性充填剤との分離がなく均一でベタツキがなく、また泡もなく表面平滑性が良好なシートが得られた。つまりシートの成形性は良好であった。シートの熱伝導率は3.1W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。また、アスカーゴム硬度計A型を用いて測定したゴム硬度は、62であった。得られたシートの長期柔軟性を評価した結果、質量減量率は0.8%であり、長期柔軟性を有していた。
比較例1
温度計、撹拌機、ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた容器に、2―エチルヘキシルアクリレート39.7部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3部(全単量体中の水酸基含有単量体(B)を1モル%に設定)、トルエン50部、連鎖移動剤としてのα−メチルスチレン0.3部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル0.05部、トルエン10部を混合したものを滴下ロートに仕込み、2時間かけて滴下した。さらにアゾイソブチロニトリル0.01部を添加して、90℃に昇温し3時間重合を行った。重合完了前に、空気を吹き込み、系を冷却して重合を終了させた。次に、系内を減圧にしてトルエンを留去して、固形状の1モル%水酸基を含有する重合体を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた重合体のMwは10.6万、Mnは5.1万であった。また、示差走査熱量計を用いて、常法により測定した重合体のガラス転移点温度は、−60℃であった。
次に、得られた重合体100部、架橋剤としてのイソホロンジイソシアナート0.65部(水酸基量と当モルのイソシアナート量である)、架橋促進剤としてのジブチル錫ジラウレート0.3部、熱軟化剤として融点が47℃であるパラフィン25部(日本精蝋社製;品番パラフィンワックス115)と、熱伝導率が30W/m・Kである酸化アルミニウム1300部(昭和電工製;品番AS−40)を、加圧型ニーダーを用いて50℃で30分間、混練した。その後、押出し機を用いて2枚のPETフィルムの間に1mm厚み設定で押し出して、シート状の放熱材用樹脂組成物を得た。次に、得られたシート状の放熱材用樹脂組成物を室温で24時間放置し、組成物中の水酸基とイソシアナート基との反応を完結させた。このとき得られたシートを実施例1と同様にして評価を行った。
得られたシートは樹脂と使用した熱伝導性充填剤の分離がなく均一であったが、表面に凹凸や泡が存在し、表面平滑性に劣っていた。つまりシートの成形性は良くなかった。熱伝導率は3.1W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。また、アスカーゴム硬度計A型を用いて25℃でゴム硬度を測定したところ、測定限界である100を超えてしまい、測定不能であったため、50℃で測定した。その結果、このシートの50℃でのゴム硬度は65であった。よって、得られたシートは柔軟性に劣っていることが判明した。さらに、得られたシートの長期柔軟性を評価した結果、質量減量率は0.9%で長期柔軟性を有していたが、測定後のシートには膨れが多数発生していた。
実施例5
温度計、撹拌機、ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた容器に、2−エチルヘキシルアクリレート38.81部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.04部(全重合性単量体中の水酸基含有単量体(B)を4モル%に設定)、油性物質としてトリメリット酸エステル系可塑剤50部(旭電化工業社製;商品名「アデカサイザーC880」)、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.15部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。
75℃に昇温し、重合開始剤としてのジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.1部と上記油性物質10部(上記「アデカサイザーC880」)を混合したものを滴下ロートに仕込み、1.5時間かけて滴下した。さらに重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.03部を添加して、90℃に昇温し2時間重合を行った。
重合完了前に上記油性物質(上記「アデカサイザーC880」)を60部添加し、空気を吹き込み、系を冷却して重合を終了させて、4モル%水酸基含有アクリル系重合体と油性物質との混合物(以下、アクリル樹脂No.2という)を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)による残存2−エチルヘキシルアクリレートは0.1%であり、アクリル系樹脂No.2中における4モル%水酸基含有重合体は24.8%であった。得られたアクリル系樹脂No.2の25℃での粘度は2400mPa・Sであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した重合体のMwは37.5万、Mnは9.3万であった。また、示差走査熱量計を用いて、常法により測定した重合体のガラス転移点温度は、−58℃であった。
また、油性物質として使用したトリメリット酸エステル系可塑剤(上記「アデカサイザーC880」)を、130℃に加熱されたオーブン中で24時間保持した後の質量減量率は0.07%であった。
上記アクリル樹脂No.2を100部と、架橋促進剤としてのジブチル錫ジラウレート0.06部、泡消剤0.1部(ビックケミー社製;商品名「A−515」)、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアナート0.57部(重合体中の水酸基量と当モルのイソシアナート量)、熱伝導率が30W/m・kである酸化アルミニウム600部(昭和電工社製;品番AS−40)を、新東科学社製のスリーワンモーター(品番600G)により、回転速度300rpmで5分間、均一に混練した。
次に、得られた樹脂組成物を真空度が0.09MPaに設定された減圧デシケーター中に10分間静置して脱泡し、離型処理を施したPETフィルム上に厚みが1mmになるよう設定されたバーコーターにて塗布した。これらの塗布物を100℃で2時間加熱し、該組成物中の水酸基を有する重合体とヘキサメチレンジイソシアナートとを反応させ、放熱材用シートを得た。得られたシートはべたつきが無く、油性物質が架橋重合体中に保持されたゲル状樹脂となっていた。また、使用した熱伝導性充填剤との分離がなく均一で、泡のなく表面平滑性が良好なシートが得られた。つまりシートの成形性は良好であった。シートの熱伝導率は1.8W/m・Kであり、高い熱伝導率を有していた。
また130℃の高温下に長時間(100,500,1000時間)曝されたときのシートの耐熱性評価として、硬度変化と質量減量率(前記の通り)を測定し、表1にその結果を示した。硬度は、上記厚さ1mmのシートを厚さ10mmになるように積層したものを測定サンプルとし、JIS K7312の7に記載の硬さ試験タイプCに準じ、高分子計器株式会社製アスカーゴム硬度計C型を用いて25℃で測定した。硬度計の押針を試料中心に押し出し、その加圧面を試料に密着させて1秒以内の最大指示値を硬度として採用した。
初期硬度と、130℃に加熱されたオーブン中で100時間、500時間、1000時間放置した後の硬度の測定結果から硬度変化を算出し、表1に初期硬度の値と硬度変化をて示した。硬度変化のマイナスは柔らかくなっていることを示す。硬度変化、質量減量率が小さければ、シートの耐熱性が良好であることを示し、長期間安定した放熱特性を発揮できる。なお、この耐熱性評価は、前記実施例1〜4および比較例1についても行い、結果を表1に併記した。
実施例6
実施例5において、架橋促進剤であるジブチル錫ジラウレート0.06部を0.01部にし、孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物として、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(東ソー株式会社製;「TOYOCAT−MR」)0.1部用いた以外は、実施例5と同様にして、放熱材用シートを得た。シートの成形性は実施例5と同様に良好であり、熱伝導率は1.8W/m・Kであった。耐熱性評価結果を表1に示した。
実施例7
実施例6において、孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物をN,N,N’−トリメチルアミノエチルメタノールアミン(東ソー株式会社製;「TEDA−RX5」)0.5部に変えた以外は、実施例6と同様にして放熱材用シートを得た。シートの成形性は実施例6と同様に良好であり、熱伝導率は1.9W/m・Kであった。耐熱性評価結果を表1に示した。
実施例8
実施例6において、孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物をヘキサメチルホスホルアミド0.5部に変えた以外は、実施例6と同様にして放熱材用シートを得た。シートの成形性は実施例6と同様に良好であり、熱伝導率は1.7W/m・Kであった。耐熱性評価結果を表1に示した。
実施例9
実施例6において、孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物をアセチルアセトン0.5部に変えた以外は、実施例6と同様にして放熱材用シートを得た。シートの成形性は実施例6と同様に良好であり、熱伝導率は1.7W/m・Kであった。耐熱性評価結果を表1に示した。
参考例1
実施例6において、酸化アルミニウムを配合しなかった以外は実施例6と同様にして、シートの成形を行った。シートの成形性は実施例6と同様に良好であった。無機充填材を配合していないため、熱伝導率は0.2W/m・Kであった。また、シートの硬度は柔らかすぎるため、前出のアスカー硬度計C型ではなく、アスカー硬度計F型(高分子計器株式会社製)を用いて硬度測定を行った。耐熱性評価結果から、ゲル状樹脂の硬度低下が抑制されていることがわかった。
Figure 0004280200
上記実施例および比較例から明らかなように、本発明例は、熱伝導性、柔軟性、成形性に優れた放熱材用の樹脂組成物を効率よく得ることができる。一方、常温で液体である油状物質を用いずに熱軟化剤を用いた比較例では、実施例に比べて劣っていることが明らかとなった。また、孤立電子対を有する原子を分子内に有する化合物を用いたことで、ゲル状樹脂の硬度低下が抑制できた。
本発明によれば、熱伝導性、柔軟性に優れた放熱材を得ることに成功した。従って、例えば、電気・電子部品等の発熱体と、例えばヒートシンク、放熱フィン、金属放熱板等の放熱体の間に介在させ、電気・電子部品等の発熱を放熱させるための放熱材用として有用である。また、他の熱伝導性材料途にも応用が可能である。

Claims (7)

  1. 油性物質と架橋重合体と熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性充填剤を必須成分として含有する放熱材用樹脂組成物であって、該油性物質が常温で液体であり、該油性物質が該架橋重合体中に保持されてゲル状樹脂を形成することを特徴とする放熱材用樹脂組成物。
  2. 上記架橋重合体が、重合性単量体(A)と架橋のための官能基を有する重合性単量体(B)とを共重合して重合体(P0)を得て、この重合体(P0)に対し、さらに重合性単量体(B)由来の官能基と反応し得る架橋剤を反応させて得られた架橋重合体(P1)であって、(A)と(B)の合計量に対して(B)の割合が0.01〜5モル%である請求項1に記載の放熱材用樹脂組成物。
  3. 上記架橋重合体(P1)が、上記重合性単量体(B)として水酸基含有重合性単量体を用いて得られた重合体(P0)に対し、有機金属化合物と孤立電子対を有する原子を分子中に有する化合物との存在下で、イソシアナート基を有する架橋剤を反応させて得られた架橋重合体(P1)である請求項2に記載の放熱材用樹脂組成物。
  4. 上記架橋重合体が、重合性単量体(A)と重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する多官能重合性単量体(C)を共重合させて得られた架橋重合体(P2)であって、(C)が(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である請求項1に記載の放熱材用樹脂組成物。
  5. 上記放熱材用樹脂組成物を、150℃で3時間保持した場合の質量減量率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放熱材用樹脂組成物。
  6. シート状に成形されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の放熱材用樹脂組成物。
  7. 請求項2または3に記載の放熱材用樹脂組成物の原料であって、上記油性物質と、上記重合性単量体(A)と上記重合性単量体(B)とを重合して得られた上記重合体(P0)とを含むことを特徴とする放熱材用樹脂組成物用原料。
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