以下、本発明の実施形態について説明する。
〔放熱シート〕
本発明の一実施形態に係る放熱シートは、樹脂および熱伝導性フィラーを含有し、樹脂のガラス転移温度(Tg)が-90℃以上、0℃以下であり、熱伝導性フィラーの含有量が50質量%以上、96質量%以下であり、当該放熱シートの少なくとも一方の面(好ましくは両方の面)の算術平均粗さRa(μm)を当該放熱シートの厚さ(μm)で除した値が4%以下であるものである。
また、本発明の他の実施形態に係る放熱シートは、樹脂および熱伝導性フィラーを含有し、樹脂のガラス転移温度(Tg)が-90℃以上、0℃以下であり、熱伝導性フィラーの含有量が50質量%以上、96質量%以下であり、当該放熱シートの少なくとも一方の面(好ましくは両方の面)の十点平均粗さRz(μm)を当該放熱シートの厚さ(μm)で除した値が29%以下であるものである。
上記の物性および構成を有する放熱シートは、熱伝導性フィラーの含有量が多くても、表面平滑性が高く、樹脂が所定のガラス転移温度(Tg)を有することにより、十分な粘着力を発揮する。また、熱伝導性フィラーの含有量が多く、被着体との接触面積が大きく密着性も高いため、放熱性に優れる。
特に粘着力の観点から、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることを要し、-5℃以下であることが好ましく、特に-10℃以下であることが好ましい。また、上記ガラス転移温度(Tg)は、凝集力を高いものとする観点から、-90℃以上であることを要し、-60℃以上であることが好ましく、特に-35℃以上であることが好ましい。なお、樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法は、後述の試験例に示す通りである。また、ここでいう樹脂は、主として、後述する樹脂成分を硬化または架橋してなるものが該当する。
放熱性の観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、50質量%以上であることを要し、70質量%以上であることが好ましく、特に85質量%以上であることが好ましい。また、表面平滑性および粘着力の観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、96質量%以下であることを要し、92質量%以下であることが好ましく、特に88質量%以下であることが好ましい。
また、特に粘着力の観点から、算術平均粗さRa(μm)を厚さ(μm)で除した値は、4%以下であることを要し、3%以下であることが好ましく、特に2%以下であることが好ましい。当該値の下限値は、最も好ましくは0%であるが、通常は0.1%以上であることが好ましく、特に0.3%以上であることが好ましい。
同じく、特に粘着力の観点から、十点平均粗さRz(μm)を厚さ(μm)で除した値は、29%以下であることを要し、25%以下であることが好ましく、特に20%以下であることが好ましい。当該値の下限値は、最も好ましくは0%であるが、通常は1%以上であることが好ましく、特に4%以上であることが好ましい。
熱伝導率の再現性を高いものとする観点から、本実施形態に係る放熱シートの少なくとも一方の面(好ましくは両方の面)の算術平均粗さRaは、3.0μm以下であることが好ましく、特に2.0μm以下であることが好ましく、さらには1.1μm以下であることが好ましい。算術平均粗さRaの下限値は、最も好ましくは0μmであるが、通常は0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましい。
また、十点平均粗さRz(μm)を放熱シートの厚さ(μm)で除した値を前述の上限値内とする観点から、本実施形態に係る放熱シートの少なくとも一方の面(好ましくは両方の面)の十点平均粗さRzは、40μm以下であることが好ましく、さらに、熱伝導率の再現性を高いものとする観点を加味すると、30μm以下であることが好ましく、特に25μm以下であることが好ましく、さらには15μm以下であることが好ましい。十点平均粗さRzの下限値は、最も好ましくは0μmであるが、通常は1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。
なお、上記算術平均粗さRaおよびRzは、JIS B0601-1994に準拠して測定した値である。
本実施形態に係る放熱シートの厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには110μm以上であることが好ましい。放熱シートの厚さの下限値が上記であると、良好な粘着力を発揮しやすい。また、放熱性に優れた粒径を有する熱伝導性フィラーを、放熱シートの表面から突出させ難くして、放熱シートの表面平滑性を高く維持し易くすることができる。
また、本実施形態に係る放熱シートの厚さは、上限値として1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。放熱シートの厚さの上限値が上記であると、放熱性により優れたものとすることができる。なお、放熱シートは単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
本実施形態に係る放熱シートのステンレススチール(SUS304,#360研磨)に対する粘着力は、100mN/25mm以上であることが好ましい。これにより、発熱部材や伝熱部材に対して良好に密着し、優れた放熱性を発揮することができる。かかる粘着力は、本実施形態に係る放熱シートが前述した物性および構成を有することにより、達成可能である。
また、上記粘着力は50N/25mm以下であることが好ましく、特に20N/25mm以下であることが好ましく、さらには1N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも貼り直しが可能となる。本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る放熱シートが含有する樹脂の種類は、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系等のいずれであってもよいが、中でも上記物性を満たし易いアクリル系が好ましい。また、樹脂は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよい。さらに、樹脂は、硬化性の樹脂成分を硬化させたものであってもよいし、架橋性の樹脂成分を架橋させたものであってもよいし、非硬化または非架橋のものであってもよい。また、硬化性の樹脂成分は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。
本実施形態に係る放熱シートは、樹脂成分(A)と、熱伝導性フィラー(B)とを含有する放熱シート形成用組成物(以下「放熱シート形成用組成物C」という場合がある。)から得られるものであることが好ましい。特に、本実施形態に係る放熱シートは、活性エネルギー線硬化性の樹脂成分(A1)と、熱伝導性フィラー(B)と、好ましくはさらに光重合開始剤(C)とを含有する放熱シート形成用組成物(以下「放熱シート形成用組成物C1」という場合がある。)の活性エネルギー線硬化物(放熱シート形成用組成物C1を活性エネルギー線により硬化させたもの)であるか、架橋性の樹脂成分(A2)と、熱伝導性フィラー(B)と、好ましくはさらに架橋剤(D)とを含有する放熱シート形成用組成物(以下「放熱シート形成用組成物C2」という場合がある。)の架橋物(放熱シート形成用組成物C2を熱等により架橋させたもの)であることが好ましい。
1.各成分
(1)樹脂成分(A1)
放熱シート形成用組成物C1が含有する活性エネルギー線硬化性の樹脂成分(A1)は、極性モノマーを含有することが好ましく、特に極性モノマーを20質量%以上含有することが好ましい。これにより、溶剤を使用しなくても、低粘度で、熱伝導性フィラー(B)の分散性が良く、塗工性に優れる。そのため、熱伝導性フィラー(B)を多量に配合しても、前述したパラメータが満たされ易く、もって十分な粘着力を発揮する放熱シートを得ることができる。
ここで、熱伝導性フィラー(B)が金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラーである場合には、当該熱伝導性フィラー(B)と極性モノマーとの組み合わせにより、当該熱伝導性フィラー(B)をより多く配合しても、溶剤なしで塗工性に優れ、前述したパラメータが満たされ易く、放熱性の効果は特に優れたものとなる。しかも、放熱シートを薄膜化(例えば100μm以下、特に40μm以下)した場合であっても、十分な粘着力が発揮される。
また、溶剤を使用しない放熱シート形成用組成物C1は、環境問題や作業環境対策の観点からも好ましいものである。ただし、本発明は、放熱シート形成用組成物C1に溶剤を添加して使用することを排除するものではない。
上記極性モノマーは、極性基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基およびアミド基から選らばれる少なくとも1種を含むモノマーであることが好ましく、特に、極性基とともに(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
かかる極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;N-メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類などが挙げられる。これらの極性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の中でも、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)であることが好ましい。水酸基含有モノマーによれば、熱伝導性フィラー(B)、特に金属酸化物又は水酸化金属からなる熱伝導性フィラー(B)との組み合わせにおいて、当該熱伝導性フィラー(B)の分散性が良く、また、得られる放熱シート形成用組成物C1の粘度を効果的に低減させることができる。
水酸基含有モノマーとしては、得られる放熱シートの算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzをより低減する観点から、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーであることが好ましく、上記の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。
なお、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル)の粘度は、一般的に500mPa・s以下であり、相当低い値を示す。
樹脂成分(A1)中における極性モノマーの割合は、得られる放熱シートの算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzをより低減する観点から、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、特に60質量%以上であることが好ましく、さらには80質量%以上であることが好ましい。樹脂成分(A1)中における極性モノマーの割合の上限値は100質量%である。
樹脂成分(A1)は、得られる放熱部材の粘着性、柔軟性などの他の特性を発現させるために、上記極性モノマー以外のモノマー(その他のモノマー)およびオリゴマーの少なくとも1種を含有してもよい。
上記のその他のモノマーとしては、前述した極性基を有しない(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下「(メタ)アクリロイル基含有モノマーM」という場合がある。)であることが好ましい。この(メタ)アクリロイル基含有モノマーMは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、形成される放熱性シートに柔軟性を付与する観点から、アルキル基の炭素数が1~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特に、種々の被着体に対する高粘着力発現の観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、もしくは2-エチルヘキシルアクリレートが好ましく挙げられる。
また、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとしては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリレート(脂環式構造含有(メタ)アクリレート)も好ましく挙げられる。脂環式構造含有(メタ)アクリレートは、脂環式構造が嵩高く、形成されるポリマー間に適切な距離を与え、得られる放熱部材に柔軟性を付与することができる。
脂環式構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性付与の観点から、ジシクロペンタニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、もしくはイソボルニルアクリレートが好ましい。
(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとして、上記の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、脂環式構造含有(メタ)アクリレートとを併用する場合、それらの質量比は、90:1~50:50であることが好ましく、特に90:10~60:40であることが好ましく、さらには80:20~70:30であることが好ましい。
上記オリゴマーは、前述した極性基を有するものであってもよいし、前述した極性基を有しないものであってもよい。
上記オリゴマーとしては、ラジカル重合性基を有する、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリブタジエン系、シリコーン系等のオリゴマーが挙げられる。これらの中でも、柔軟性付与および凝集力向上の観点から、ラジカル重合性基を有するウレタンオリゴマー(重合性ウレタンオリゴマー)が好ましい。
上記の粘度にするためにも、重合性ウレタンオリゴマーの重合平均分子量の上限値は、100,000以下であることが好ましく、特に50,000以下であることが好ましく、さらには20,000以下であることが好ましい。一方、重合性ウレタンオリゴマーの重合平均分子量の下限値は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、特に5,000以上であることが好ましく、さらには8,000以上であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
重合性ウレタンオリゴマーは、多官能であることが好ましく、また、重合性ウレタンオリゴマーが有する重合性基は、末端、特に両末端に存在することが好ましい。当該重合性基の種類としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。すなわち、重合性ウレタンオリゴマーは、ウレタンアクリレート系オリゴマーであることが好ましい。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシ基末端を有する水添イソプレン、ヒドロキシ基末端を有する水添ブタジエンといった化合物と、ポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体でエステル化することにより得ることができる。
ウレタンアクリレート系オリゴマーの中でも、熱伝導性フィラー(B)の分散性の観点から、特にポリエーテルウレタンアクリレートが好ましい。
上記オリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記オリゴマーは、上記の(メタ)アクリロイル基含有モノマーMと併用することも好ましい。
樹脂成分(A1)が、極性モノマーと、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとを含有する場合、樹脂成分(A1)中における極性モノマーの割合は、20質量%以上であることが好ましく、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A1)中における(メタ)アクリロイル基含有モノマーMは、20質量%以上であることが好ましく、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましい。各成分が上記の割合であると、粘度を低く抑えつつ、粘着性および柔軟性を効果的に向上させることができる。
樹脂成分(A1)が、極性モノマーと、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMと、オリゴマーとを含有する場合、樹脂成分(A1)中における極性モノマーの割合は、20質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましく、さらには35質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましく、さらには50質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A1)中における(メタ)アクリロイル基含有モノマーMの割合は、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、70質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましく、さらには50質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A1)中におけるオリゴマーの割合は、1質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、50質量%以下であることが好ましく、特に40質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。各成分が上記の割合であると、粘度を低く抑えつつ、粘着性および柔軟性を効果的に向上させることができる。
放熱シート形成用組成物C1中における樹脂成分(A1)の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、特に8質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。これにより、放熱シート形成用組成物Cの粘度を低く維持して塗工性をより良好なものとすることができ、得られる放熱シートの表面平滑性をより向上させることができる。一方、樹脂成分(A1)の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。これにより、熱伝導性フィラー(B)の含有量を確保して、得られる放熱シートの放熱性を優れたものにすることができる。
(2)光重合開始剤(C)
樹脂成分(A1)が活性エネルギー線硬化性のものであり、その硬化のための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、放熱シート形成用組成物C1は、さらに光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(C)を含有することにより、樹脂成分(A1)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
このような光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
放熱シート形成用組成物C1中における光重合開始剤(C)の含有量は、樹脂成分(A1)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤(C)の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。
(3)樹脂成分(A2)
放熱シート形成用組成物C2が含有する架橋性の樹脂成分(A2)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含むことが好ましい。なお、本明細書において、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、後述する架橋剤(D)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(D)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する放熱シートが得られる。
上記反応性基含有モノマーとしては、前述した極性モノマーとして列挙したものを使用することができる。それらの中でも、粘着力および架橋剤(D)との反応性の観点から、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として40質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる放熱シートにおいて良好な架橋構造が形成され、所望の凝集力が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルまたは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましく、アクリル酸メチルまたはアクリル酸n-ブチルがさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99質量%以下含有することが好ましく、特に94質量%以下含有することが好ましく、さらには85質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを適宜含有してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待でき、耐久性に優れた放熱シートが得られ易い。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待でき、耐久性に優れた放熱シートが得られ易い。
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、下限値として20万以上であることが好ましく、特に40万以上であることが好ましく、さらには50万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、得られる放熱シートの耐久性が優れたものとなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、上限値として200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる放熱シートの被着体への密着性が優れたものとなる。
なお、放熱シート形成用組成物C2において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(4)架橋剤(D)
架橋剤(D)は、放熱シート形成用組成物C2の加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる放熱シートの凝集力が向上し、耐久性が優れたものとなる。
上記架橋剤(D)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(D)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
放熱シート形成用組成物C2中における架橋剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。架橋剤(D)の含有量が上記範囲にあることで、得られる放熱シートが良好な凝集力を発揮し、耐久性により優れたものとなる。
(5)熱伝導性フィラー(B)
放熱シート形成用組成物Cは、熱伝導性フィラー(B)を含有する。本明細書における熱伝導性フィラーとは、高い熱伝導率を有するフィラーをいい、例えば、25℃における熱伝導率が10W/m・K以上のフィラーをいい、好ましくは20W/m・K以上のフィラーをいい、特に好ましくは30W/m・K以上のフィラーをいう。なお、熱伝導性フィラーの25℃における熱伝導率の上限値は限定されないものの、通常、300W/m・K以下である。
熱伝導性フィラー(B)の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化金属、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物、炭化ケイ素、炭化カルシウム等の炭化物、タルクなどが挙げられる。
上記の中でも、放熱性および樹脂成分(A)(特に極性モノマーを20質量%以上含有する樹脂成分(A1))に対する分散性の観点から、金属酸化物、水酸化金属または窒化物が好ましく、特に、金属酸化物または水酸化金属が好ましい。それらの中でも、放熱性および分散性に優れる酸化アルミニウム(アルミナ)が特に好ましい。また、酸化アルミニウムは、導電性を有しないことから、絶縁性が要求される用途のときには、その観点からも好ましい。なお、上記熱伝導性フィラー(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱伝導性フィラー(B)の形状としては、例えば、粒状、針状、板状、鱗片状、不定形等があり、粒状には、丸み状、真球状、多角形状等がある。なお、本明細書における「丸み状」とは、全体的に丸みを帯びた形状を意味し、球状、楕円球状、卵状等の形状を含むものであるが、必ずしも表面が曲面状のみの形状を意味するのではなく、表面に平面を有する形状をも含むものである。
熱伝導性フィラー(B)が金属酸化物または水酸化金属、特にアルミナからなる場合、上記の中でも、少なくとも丸み状または真球状の粒状フィラーを使用することが好ましく、粒状フィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することも好ましい。粒状フィラーと不定形フィラーとを組み合わせる場合、丸み状または真球状のフィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することが好ましく、特に丸み状のフィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することが好ましい。これらの場合、得られる放熱シートにおける熱伝導性フィラー(B)の充填率が向上し、放熱シートにおいて効率的な熱伝導経路が形成され、結果として、放熱シートがより優れた放熱性を有するものとなる。
一方、熱伝導性フィラー(B)が窒化物、特に窒化ホウ素からなる場合、上記の中でも、鱗片状フィラーを使用することが好ましい。
熱伝導性フィラー(B)の平均粒径は、目的とする放熱シートの厚さ未満であることが好ましい。これにより、放熱シートの表面から熱伝導性フィラー(B)が突出し難くなり、放熱シートの表面の平滑性がより高いものとなる。
熱伝導性フィラー(B)が粒状である場合、その平均粒径は、8μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには30μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。粒状フィラーの平均粒径が上記範囲にあることで、得られる放熱シートにおける熱伝導性フィラー(B)の充填率を高くすることができ、放熱性がより優れたものとなるとともに、放熱シートの表面平滑性をより向上させることができる。
熱伝導性フィラー(B)の形状が不定形である場合、その平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1.0μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、7μm以下であることが好ましく、特に4μm以下であることが好ましく、さらには2μm以下であることが好ましい。不定形フィラーの平均粒径が上記範囲にあることで、得られる放熱シートにおける熱伝導性フィラー(B)の充填率を高くすることができ、放熱性がより優れたものとなるとともに、放熱シートの表面平滑性、ひいては粘着力をより向上させることができる。
熱伝導性フィラー(B)の形状が鱗片状である場合、その平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには8μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、50μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには15μm以下であることが好ましい。鱗片状フィラーの平均粒径が上記範囲にあることで、得られる放熱シートにおける熱伝導性フィラー(B)の充填率を高くすることができ、放熱性がより優れたものとなるとともに、放熱シートの表面平滑性、ひいては粘着力をより向上させることができる。
なお、本明細書におけるフィラーの平均粒径とは、電子顕微鏡で無作為に選んだフィラー20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される粒径をいう。
放熱シート形成用組成物C中における熱伝導性フィラー(B)の含有量は、放熱シート中における含有量と同じであり、前述した通りである。
(6)各種添加剤
放熱シート形成用組成物Cには、所望により、各種添加剤、例えば粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、防錆剤などを添加することができる。
2.放熱シート形成用組成物の調製
(1)放熱シート形成用組成物C1の調製
放熱シート形成用組成物C1は、樹脂成分(A1)としての各成分と、熱伝導性フィラー(B)とを混合するとともに、所望により光重合開始剤(C)および添加剤を加えることで製造することができる。
ここで、放熱シート形成用組成物C1は、極性モノマーを20質量%以上含有する樹脂成分(A1)と熱伝導性フィラー(B)との組み合わせにより、熱伝導性フィラー(B)を多量に含有しても、粘度が低く、塗工性に優れる。そのため、放熱シート形成用組成物C1は、溶剤等を添加することなく、そのまま塗布液として使用することができる。すなわち、上記の放熱シート形成用組成物C1は、溶剤を含有しないことが好ましい。これにより、塗布後における溶剤を揮発させる乾燥工程が不要となり、乾燥に伴う表面の荒れが防止され、高い平滑性、ひいては高い粘着力を有する放熱シートを得ることができる。
(2)放熱シート形成用組成物C2の調製
放熱シート形成用組成物C2は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤(D)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体の溶液に、架橋剤(D)、ならびに所望により希釈溶剤および添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された放熱シート形成用組成物C2を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された放熱シート形成用組成物C2の粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。なお、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、放熱シート形成用組成物C2がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、放熱シート形成用組成物C2は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
3.放熱シートの構成例
本実施形態に係る放熱シートは、一例として、2枚の剥離シートに挟持されてなる構成を有していることも好ましい。以下、図面を参照して説明する。
図1に示すように、一例としての本実施形態に係る放熱シート1の一方の面(図1では上側の面)には、第1の剥離シート11aが積層されており、放熱シート1の他方の面(図1では下側の面)には、第2の剥離シート11bが積層されている。各剥離シート11a,11bは、それらの剥離面が放熱シート1に接するように、放熱シート1に積層されている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
(1)放熱シート
本実施形態における放熱シート1は、前述した放熱シートであり、好ましくは、放熱シート形成用組成物Cから得られるものであり、特に好ましくは、放熱シート形成用組成物C1を活性エネルギー線硬化させてなるものであるか、放熱シート形成用組成物C2を架橋してなるものである。
放熱シートの厚さは前述した通りであるが、特に放熱シート形成用組成物C2から得られる放熱シート1の場合、その厚さの下限値は、110μm以上であることが好ましく、140μm以上であることがより好ましい。これにより、算術平均粗さRa(μm)を厚さ(μm)で除した値および十点平均粗さRz(μm)を厚さ(μm)で除した値が前述した範囲に入り易くなり、十分な粘着力が得られる。なお、当該厚さの上限値は、前述した通りである。
放熱シート1の23℃、50%RHにおける熱伝導率(ISO 22007-3に準じて測定した値)は、1.5W/m・K以上であることが好ましく、特に1.8W/m・K以上であることが好ましく、さらには2.0W/m・K以上であることが好ましい。これにより、放熱シート1は放熱性に優れるということができる。前述した放熱シート形成用組成物Cから得られる放熱シート1は、上記の熱伝導率を満たすことが可能である。なお、放熱シート1の23℃、50%RHにおける熱伝導率の上限値は特に限定されないが、通常は14W/m・K以下であることが好ましく、特に7W/m・K以下であることが好ましい。
また、放熱シート1の任意の10サンプルについて上記熱伝導率を測定して得られる最大値と最小値との差(幅)は、1.5W/m・K以下であることが好ましく、0.6W/m・K以下であることがより好ましく、特に0.4W/m・K以下であることが好ましく、さらには0.2W/m・K以下であることが好ましい。これによって、熱伝導率の再現性が良いということができる。
放熱シート形成用組成物C1から得られる放熱シート1は、23℃の酢酸エチルに24時間浸漬した後の残存率(溶剤浸漬後残存率)が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、特に94質量%以上であることが好ましく、さらには96質量%以上であることが好ましい。これにより、放熱シート1は凝集力の非常に高いものとなり、フィラー(B)が熱により配置を変えて放熱性に変化が生じるといった現象を有効に防止することができる。すなわち、繰り返し加熱の下でも熱伝導率の再現性がより優れたものとなる。なお、当該溶剤浸漬後残存率の上限値は、特に限定されないが、100質量%以下であることが好ましく、特に99質量%以下であることが好ましい。ここで、本明細書における放熱シートの溶剤浸漬後残存率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
(2)剥離シート
剥離シート11a,11bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シート11a,11bの剥離面(特に放熱シート1と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
剥離シート11a,11bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
4.放熱シートの製造
放熱シートの製造方法の一例として、図1に示される放熱シート1を製造する方法を説明する。
(1)放熱シート形成用組成物C1を使用する場合
放熱シート形成用組成物C1を使用する場合、放熱シート1の一製造例としては、一方の剥離シート11a(または11b)の剥離面に、放熱シート形成用組成物C1を塗工することで塗布層を形成する。次いで、当該塗布層に他方の剥離シート11b(または11a)の剥離面を重ね合わせて圧着する。その後、塗布層に対して所定量の活性エネルギー線を照射して放熱シート形成用組成物C1を硬化させ、放熱シート1を形成する。
塗布層に対する活性エネルギー線の照射は、一方の剥離シート11a(または11b)越しに行ってもよいし、両方の剥離シート11a,11b越しに行ってもよい。放熱シート形成用組成物C1を効率良く確実に硬化させるためには、両方の剥離シート11a,11b越しに活性エネルギー線を照射することが好ましい。
なお、第1の剥離シート11aと第2の剥離シート11bとの間における所望の位置(例えば、剥離シート11a,11bが長尺の場合、長手方向に沿った両端縁部;剥離シート11a,11bが矩形の場合、各辺の端縁部)には、所定の厚さを有するスペーサを介在させてもよい。その状態で、第1の剥離シート11a/放熱シート形成用組成物C1の塗布層/第2の剥離シート11bの積層体を圧着することにより、放熱シート形成用組成物C1の塗布層の厚さをスペーサの厚さに合わせることができ、所望の厚さの放熱シート1を容易に形成することが可能となる。
上記放熱シート形成用組成物C1を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~300mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~2000mJ/cm2であることが好ましく、100~1000mJ/cm2であることがより好ましく、200~600mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、1~1000krad程度が好ましい。活性エネルギー線の照射量が上記範囲にあることにより、放熱シート形成用組成物C1を効率良く硬化させることができる。
なお、放熱シート形成用組成物C1の硬化は、活性エネルギー線の照射および加熱処理により行うこともできるが、活性エネルギー線の照射のみを行うことが好ましい。これにより、放熱シート形成用組成物C1の塗布対象としての樹脂フィルム等の熱劣化、熱収縮等を防ぐことができる。また、加熱しないことにより、放熱シート形成用組成物C1中の揮発成分の加熱による消失を抑制することができる。
(2)放熱シート形成用組成物C2を使用する場合
放熱シート形成用組成物C2を使用する場合、放熱シート1の一製造例としては、一方の剥離シート11a(または11b)の剥離面に、放熱シート形成用組成物C2を塗工し、加熱処理を行って放熱シート形成用組成物C2を架橋(熱架橋)し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート11b(または11a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が放熱シート1となる。これにより、上記放熱シート1が得られる。
放熱シート形成用組成物C2の塗工方法は、放熱シート形成用組成物C1の塗工方法と同様である。
上記のように、放熱シート形成用組成物C2の架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した放熱シート形成用組成物C2の塗布層から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
加熱処理後、架橋反応を完遂させるために、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、放熱シート1が形成される。
〔放熱性装置〕
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る放熱性装置2は、発熱部材21と、伝熱部材22と、発熱部材21および伝熱部材22の間に設けられた放熱シート1とを備えている。
放熱シート1は、前述した実施形態に係る放熱シート1である。当該放熱シート1は、十分な粘着力を発揮するため、当該放熱シート1を介して発熱部材21と伝熱部材22とは固定されている。また、放熱シート1は、熱伝導性フィラーの含有量が多く、かつ、高い表面平滑性により被着体(発熱部材21および/または伝熱部材22)との接触面積が大きく密着性も高いため、放熱性に優れる。したがって、発熱部材21で発熱した熱は、放熱シート1を通って伝熱部材22に良好に熱伝導し、伝熱部材22から効率良く外部に放熱される。
本実施形態における発熱部材21は、所定の機能の発揮に伴い発熱するものの、温度上昇の抑制が要求される部材、あるいは当該部材が発熱した熱の流れを特定の方向に制御することが要求される部材などである。かかる発熱部材21としては、例えば、熱電変換デバイス、光電変換デバイス、大規模集積回路等の半導体デバイス、LED発光素子、光ピックアップ、パワートランジスタなどの電子デバイスや、モバイル端末、ウェアラブル端末等の各種電子機器、バッテリー、電池、モーター、エンジンなどが挙げられる。
本実施形態における伝熱部材22は、受熱した熱を放熱する部材、あるいは受熱した熱を別の部材に伝熱する部材などである。かかる伝熱部材22は、熱伝導性の高い材料、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、銅等の金属や、グラファイト、カーボンナノファイバーなどからなることが好ましい。伝熱部材22の形態としては、基板、筐体、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等のいずれであってもよく、特に限定されない。
放熱性装置2を製造するには、放熱シート1から一方の剥離シート11a(または11b)を剥離し、露出した放熱シート1の一方の面を発熱部材21に貼付する。次いで、発熱部材21に設けられた放熱シート1から他方の剥離シート11b(または11a)を剥離し、露出した放熱シート1の他方の面を、伝熱部材22に貼付する。また、放熱シート1の一方の面を伝熱部材22に貼付した後、放熱シート1の他方の面に発熱部材21を貼合してもよい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、放熱シート1に積層された剥離シート11a,11bのいずれか一方または両方は省略されてもよい。また、放熱性装置2における発熱部材21および伝熱部材22の形状は、図2に示されるものに限定されず、種々の形状であってもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.放熱シート形成用組成物の調製
樹脂成分(A1)としてのアクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部と、熱伝導性フィラー(B)としてのアルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS-400」;平均粒径35μmの丸み状フィラーと平均粒径1.5μm不定形フィラーとの混合品)400質量部と、光重合開始剤(C)としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部とを混合し、ディスパーにより1分間撹拌することで放熱シート形成用組成物を得た。
2.放熱シートの製造
上記工程1で得られた放熱シート形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第1の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751031」)の剥離処理面に、アプリケーターにより塗工した。
次いで、上記で得られた剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第2の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)とを、当該剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、ハンドローラー(1.25kg)を使用して圧着した。
その後、それぞれの側の剥離シート越しに、すなわち両面側から、塗布層に対し、それぞれ1回ずつ下記の条件で活性エネルギー線(紫外線)を照射して、放熱シート形成用組成物の塗布層を硬化させ、厚さ150μmの放熱シートを形成した。
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度180mW/cm2,光量230mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
〔実施例2〕
樹脂成分(A1)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル100質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例3〕
樹脂成分(A1)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル50質量部およびアクリル酸2-エチルヘキシル50質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例4〕
重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール1モルと、イソホロンジイソシアネート2モルと、アクリル酸2-ヒドロキシエチル2モルとを重合させ、ウレタンアクリレート系オリゴマーとしての、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンアクリレートを得た。
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンアクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定した標準ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
樹脂成分(A1)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル37質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル35質量部、アクリル酸イソボルニル12質量部、および上記で得られたポリエーテルウレタンアクリレート16質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例5〕
アルミナフィラーの配合量を667質量部に変更する以外、実施例2と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例6〕
熱伝導性フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS-40」;平均粒径28μmの丸み状フィラーと平均粒径1.5μm不定形フィラーとの混合品)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例7〕
熱伝導性フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「A20S」;平均粒径22μmの真球状フィラー)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例8〕
熱伝導性フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS50」;平均粒径10μmの丸み状フィラー)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例9〕
放熱シート形成用組成物を塗工するアプリケーターを調節することにより、得られる放熱シートの厚さを30μmとする以外、実施例8と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例10〕
熱伝導性フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラー400質量部に替えて、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製,製品名「UHP-2」;平均粒径10μmの鱗片状フィラー)57質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例11〕
窒化ホウ素フィラーの配合量を80質量部に変更する以外、実施例10と同様にして放熱シートを製造した。
〔実施例12〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n-ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部、およびアクリル酸20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を前述したGPC法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
2.放熱シート形成用組成物の調製
上記工程1で得られた樹脂成分(A2)としての(メタ)アクリル酸エステル重合体(固形分換算値:以下同様とする)100質量部と、架橋剤(D)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.7質量部と、熱伝導性フィラー(B)としてのアルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS-400」;平均粒径35μmの丸み状フィラーと平均粒径1.5μm不定形フィラーとの混合品)400質量部とを混合するとともに、メチルエチルケトンで希釈し、十分に撹拌して、固形分濃度50質量%の放熱シート形成用組成物を得た。
3.放熱シートの製造
上記工程2で得られた放熱シート形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第1の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751031」)の剥離処理面に、アプリケーターで塗布したのち、90℃で1分間、120℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。得られた塗布層付きの剥離シートにおける塗布層側の面と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第2の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)の剥離処理面とを貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、塗布層を架橋させて、厚さ220μmの放熱シートを形成した。
〔実施例13〕
熱伝導性フィラー(B)として、実施例12のアルミナフィラー400質量部に替えて、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製,製品名「UHP-2」;平均粒径10μmの鱗片状フィラー)57質量部を使用する以外、実施例12と同様にして放熱シートを製造した。
〔比較例1〕
放熱シート形成用組成物を塗工するアプリケーターを調節することにより、得られる放熱シートの厚さを100μmとする以外、実施例12と同様にして放熱シートを製造した。
〔比較例2〕
放熱シート形成用組成物を塗工するアプリケーターを調節することにより、得られる放熱シートの厚さを50μmとする以外、実施例13と同様にして放熱シートを製造した。
〔試験例1〕(ガラス転移温度の測定)
実施例および比較例で使用または調製した樹脂成分(A1)(A2)を当該実施例および比較例と同様にして硬化または架橋させた樹脂について、そのガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製,製品名「DSC Q2000」)によって、昇温・降温速度20℃/分で測定した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(粘度の評価)
実施例および比較例で調製した放熱シート形成用組成物について、その粘度が製造ラインにおいて撹拌混合が可能な程度に低い(〇)か、当該撹拌混合に適しない程度に高い(×)かを、撹拌棒を使用して判断した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(塗工性の評価)
実施例および比較例で調製した放熱シート形成用組成物をアプリケーターにより塗工したときの状況を判断するとともに、アプリケーターにより塗工して得られた塗布層に、スジがないかどうかを目視により判断した。そして、以下の基準に基づいて塗工性を評価した。結果を表1に示す。
○:スジが無く均一な面が形成された。
△:スジが発生した。
×:放熱シート形成用組成物の粘度が高く塗工できなかった。
〔試験例4〕(溶剤浸漬後残存率の測定)
実施例1~11で得られた放熱シートを40mm×40mmのサイズに裁断し、両面の剥離シートを剥がして、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、放熱シートのみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた放熱シートを、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後、放熱シートを取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、放熱シートのみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。溶剤浸漬後残存率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、放熱シートの溶剤浸漬後残存率を導出した。結果を表1に示す。
〔試験例5〕(表面粗さの測定)
実施例および比較例で得られた放熱シートの両面(第1の剥離シート側の面/第2の剥離シート側の面)の算術平均粗さRa(μm)および十点平均粗さRz(μm)を、触針式表面粗さ計(ミツトヨ社製,製品名「SURF TEST SV-3000」)を用いて、JIS B0633:2001に準拠して、それぞれ10サンプルずつ測定した。そして、それらの平均値を、各例のRa、Rzとして表1に示す。なお、表中、上段の値は第2の剥離シート側の面の表面粗さであり、下段の値は第1の剥離シート側の面の表面粗さである。
また、上記で得られた算術平均粗さRa(μm)を放熱シートの厚さ(μm)で除した値、および上記で得られた十点平均粗さRz(μm)を放熱シートの厚さ(μm)で除した値を、各面について算出した。結果を表1に示す。なお、表中、上段の値は第2の剥離シート側の面の値であり、下段の値は第1の剥離シート側の面の値である。
〔試験例6〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた放熱シートから第2の剥離シートを剥がし、露出した面を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:25μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。そして、当該サンプルから第1の剥離シートを剥がし、露出した面を、ステンレススチール板(SUS304,#360研磨)に貼付した。
貼付後1分以内に、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、それぞれ10サンプルずつ測定を行った。また、粘着力の測定は、放熱シートの両面について行った。
測定の結果、全てのサンプルについて粘着力が100mN/25mm以上であった場合を粘着力良好(○)、粘着力が100mN/25mm未満であったサンプルが1つでもあった場合を粘着力不良(×)と判断した。結果を表1に示す。なお、表中、上段の値は第2の剥離シート側の面の結果であり、下段の値は第1の剥離シート側の面の結果である。
上記の粘着力が100mN/25mm以上あれば、LED発光素子がアルミニウム板上で横ずれすることを防止することができ、また、LED発光素子とアルミニウム板との密着性が向上し、熱伝導性を高めることができる。
〔試験例7〕(熱伝導率の測定)
実施例および比較例で得られた放熱シートについて、熱拡散率・熱伝導率測定装置(アイフェイズ社製,製品名「ai-phase mobile」)を使用し、ISO 22007-3に準拠して熱伝導率(W/m・K)の測定を行った。なお、測定は、それぞれ10サンプルについて行い、それらの最大値、最小値、および最大値と最小値との差(幅)を求めた。結果を表1に示す。
〔試験例8〕(放熱性の評価)
試験例7において測定した熱伝導率が最大値を示した各例に係る放熱部材のサンプルから10mm×25mmの大きさの放熱部材を切り出し、これをサンプルとした。厚さ1mmのアルミニウム板(パルテック社製,製品名「アルミニウム合金板 A1050P」)の上に上記サンプルを載置し、さらに当該サンプルの上にLED発光素子(IPF社製LEDヘッドランプバルブ「H4 24V 6500K 34VHLB」から取り外したLED発光素子)を載置した。
次いで、上記LED発光素子に電圧24V、電流3Aの電気を通して当該LED発光素子を発光させた。それと同時に、アルミニウム板の下方5mmの位置から、空冷ファン(Nidec社製,製品名「D02X-05TS1 02」)によって当該アルミニウム板を冷却した。そして、発光から210秒後における上記LED発光素子の温度を、上記LED発光素子の上方35cmの位置からサーモカメラ(テストー社製,製品名「testo 870-1 サーモグラフィー」)によって測定した。その測定温度が80℃以下であれば、放熱性に優れているということができる。結果を表1に示す。
また、比較例3として、アルミニウム板の上にLED発光素子を直接載置し、上記と同様にしてLED発光素子の温度を測定した。
表1から分かるように、実施例で製造した放熱シートは、良好な粘着力を有するとともに、表面平滑性が高く、熱伝導性・放熱性に優れていた。また、実施例で製造した放熱シートは、熱伝導性についてロット間誤差が少なく、再現性に優れていた。さらに、実施例で製造した放熱シートは、溶剤浸漬後残存率が高く、繰り返し加熱の下での熱伝導率の再現性に優れるものであった。