熱伝導性シート
本発明は、熱伝導性シート、詳しくは、パワーエレクトロニクス技術に好適に用いられる熱伝導性シートに関する。
近年、高輝度LEDデバイス、電磁誘導加熱デバイスなどでは、半導体素子により電力を変換・制御するパワーエレクトロニクス技術が採用されている。パワーエレクトロニクス技術では、大電流を熱などに変換するため、半導体素子に配置される材料には、高い放熱性(高熱伝導性)が要求されている。
例えば、窒化ホウ素フィラーおよびエポキシ樹脂を含有する熱伝導性シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
熱伝導性シートには、用途および目的によって、厚み方向に直交する直交方向(面方向)における高い熱伝導性が要求される場合もある。
また、特許文献1の熱伝導性シートを、半導体素子などの電子部品を被覆するように配置すると、熱伝導性シートにおいて、シートの柔軟性が低いため、半導体素子の角部に対応する部分にひび割れ(クラック)などの損傷を生じやすいという不具合がある。
本発明の目的は、面方向の熱伝導性および柔軟性に優れた熱伝導性シートを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、下記の第1発明群~第6発明群を含む。
(第1発明群)
熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子、および、ゴム成分を含有する熱伝導性組成物から形成される熱伝導性シートであって、前記熱伝導性シートにおける前記窒化ホウ素粒子の含有割合が、35体積%以上であり、前記熱伝導性シートの厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であることを特徴としている。
また、熱伝導性シートは、引張試験における前記直交方向の最大伸びが、101.7%以上であることが好適である。
また、熱伝導性シートは、前記熱伝導性組成物から前記窒化ホウ素粒子を除いたゴム含有組成物から形成されるゴム含有シートを周波数1Hzおよび昇温速度2℃/minの条件で昇温させたときの貯蔵剪断弾性率が、20~150℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、5.6×103~2×105Paであることが好適である。
また、熱伝導性シートは、前記熱伝導性シートを銅箔に接着した後、前記銅箔に対して90度で速度10mm/分で剥離したときの90度剥離接着力が、2N/10mm以上であることが好適である。
また、熱伝導性シートは、前記熱伝導性組成物がエポキシ樹脂組成物をさらに含有することが好適である。
(第2発明群)
熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤および硬化促進剤の少なくとも1種と、ゴム成分とを含有する熱伝導性組成物から形成される熱伝導性シートであって、前記熱伝導性シートにおける前記窒化ホウ素粒子の含有割合が、35体積%以上であり、前記熱伝導性シートの厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であり、前記熱伝導性組成物から前記窒化ホウ素粒子を除いたゴム含有組成物から形成されるゴム含有シートを周波数1Hzおよび昇温速度2℃/minの条件で昇温させたときの貯蔵剪断弾性率が、50~80℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、5.5×103~7.0×104Paであることを特徴としている。
また、熱伝導性シートでは、前記エポキシ樹脂が、常温液状エポキシ樹脂および常温固形エポキシ樹脂を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記硬化剤が、フェノール樹脂であることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記硬化促進剤が、イミダゾール化合物であることが好適である。
また、熱伝導性シートは、室温で30日保存した後のエポキシ反応率が、40%未満であることが好適である。
また、熱伝導性シートは、40~100℃の温度範囲で1日保存した後のエポキシの反応率が40%以上であることが好適である。
(第3発明群)
熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子および樹脂成分を含有し、前記窒化ホウ素粒子の含有割合が、60質量%以上であり、面方向における熱伝導率が、4W/m・K以上であり、40℃以上の温度領域において、350g/直径2cm以上となるタック力を有することを特徴としている。
また、熱伝導性シートは、90℃以下の温度領域において、1200g/直径2cm以上となるタック力を有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、60℃以下の温度領域において、50g/直径2cm以上となるタック力を有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、25℃以下の温度領域において、50g/直径2cm以下となるタック力を有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、前記樹脂成分が、エポキシ樹脂を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、前記樹脂成分が、ゴムを含有することが好適である。
また、熱伝導性シート形成用粒子集合物粉体は、窒化ホウ素粒子と、前記窒化ホウ素粒子の表面を被覆する樹脂成分とを備える樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有し、TOF-SIMS分析による樹脂寄与イオン種/窒化ホウ素寄与イオン種比率が、0.4以上であることを特徴としている。
また、熱伝導性シート形成用粒子集合物粉体の製造方法は、板状の窒化ホウ素粒子を空中で滞留させながら、前記窒化ホウ素粒子に樹脂成分を噴霧することにより、前記窒化ホウ素粒子と、前記窒化ホウ素粒子の表面を被覆する前記樹脂成分とを備える樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有する粒子集合物粉体を得る被覆工程を備えることを特徴としている。
また、熱伝導性シートの製造方法は、板状の窒化ホウ素粒子を空中で滞留させながら、前記窒化ホウ素粒子に樹脂成分を噴霧することにより、前記窒化ホウ素粒子と、前記窒化ホウ素粒子の表面を被覆する前記樹脂成分とを備える樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有する粒子集合物粉体を得る被覆工程、および、前記粒子集合物粉体を加熱しながらプレスすることにより、熱伝導性シートに成形する成形工程を備えることを特徴としている。
(第4発明群)
熱伝導性シートは、面方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であり、40℃以上の温度領域において、125%以上となる面方向の破断ひずみを有することを特徴としている。
また、熱伝導性シートでは、40℃未満の温度領域において、125%未満となる破断ひずみを有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、25℃以下の温度領域における面方向の破断ひずみが、125%未満であり、40℃以上100℃未満の温度領域において、125%以上となる面方向の破断ひずみを有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、60℃以上70℃未満の温度領域における面方向の破断ひずみが、125%以上であることが好適である。
また、熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、ゴムを含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、常温液状エポキシ樹脂、常温固形エポキシ樹脂およびフェノール樹脂を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、硬化促進剤をさらに含有することが好適である。
また、熱伝導性シートは、100℃以下で硬化可能であることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、絶縁破壊電圧が、10kV/mm以上であることが好適である。
(第5発明群)
熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有し、厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上である熱伝導層と、前記熱伝導層の少なくとも一方面に積層される接着剤層とを備えることを特徴としている。
また、熱伝導性シートでは、前記接着剤層が、0度以上の温度領域で650g/(直径1cm)以上のタック力を有し、感圧接着可能な粘接着剤層であることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記接着剤層が、ゴム成分を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記熱伝導層および前記接着剤層に含有されるゴム成分が、アクリルゴムを含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記接着剤層が、エポキシ樹脂、硬化剤、および、硬化促進剤をさらに含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記熱伝導層が、エポキシ樹脂、硬化剤、および、硬化促進剤をさらに含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記接着剤層の厚みが、50μm以下であることが好適である。
(第6発明群)
熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有し、厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上である熱伝導層と、前記熱伝導層の少なくとも一方面に積層される粘着剤層とを備えることを特徴としている。
また、熱伝導性シートでは、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤を含有することが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー原料を重合することにより得られるアクリル系ポリマーからなることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記粘着剤層が、基材フィルムと、前記基材フィルムの厚み方向一方面および他方面に積層される第1粘着剤層および第2粘着剤層とを備えていることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記粘着剤層の厚みが、100μm以下であることが好適である。
また、熱伝導性シートでは、前記熱伝導層が、エポキシ樹脂、硬化剤、および、硬化促進剤をさらに含有することが好適である。
本発明の熱伝導性シートは、厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であるので、厚み方向に対する直交方向の熱伝導性に優れている。そのため、直交方向の熱伝導性に優れる熱伝導性シートとして、種々の放熱用途に用いることができる。
また、本発明の熱伝導性シートは、ゴム成分を含有している。そのため、熱伝導性シートは、柔軟性に優れており、半導体素子などの電子部品を被覆するように配置しても、クラックなどの損傷を抑制することができる。その結果、放熱対象を確実に被覆することができ、放熱対象が発生する熱を窒化ホウ素粒子によって、より確実に伝導させることができる。
図1は、本発明の熱伝導性シートの第1実施形態の斜視図を示す。
図2は、図1に示す熱伝導性シートの製造方法を説明するための工程図を示す。
図3は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態の製造方法を説明するための工程図であって、図3Aは、プレスシートを複数個に分割する工程、図3Bは、分割シートを積層する工程を示す。
図4は、耐屈曲性試験のタイプIの試験装置(耐屈曲性試験前)の斜視図を示す。
図5は、耐屈曲性試験のタイプIの試験装置(耐屈曲性試験途中)の斜視図を示す。
図6は、実施例42~44および比較例6について、引張試験により得られた、熱伝導性シートの面方向の最大伸びA(%)を、熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合X(%)に対してプロットし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線およびその傾きを示す。
図7は、凹凸追従性試験に用いられる電子部品が実装された実装基板の模式図を示す。
図8は、凹凸追従性試験における試験方法を説明する断面図を示す。
図9は、本発明の熱伝導性シートの第3実施形態を製造する方法における被覆工程を説明する模式図を示す。
図10は、本発明の熱伝導性シートの第5実施形態の斜視図を示す。
図11は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態を説明する断面図であって、図11Aは、接着剤層が、熱伝導層の厚み方向一方面および他方面に積層されている実施形態を示し、 図11Bは、接着剤層が、ベース基材の厚み方向一方面および他方面に積層された基材付き接着剤層である実施形態を示す。
図12は、本発明の熱伝導性シートの第6実施形態の斜視図を示す。
図13は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態を説明する断面図であって、図13Aは、粘着剤層が、熱伝導層の厚み方向一方面および他方面に積層されている実施形態を示し、 図13Bは、粘着剤層が、基材フィルムと、基材フィルムの厚み方向一方面および他方面に積層される第1粘着剤層および第2粘着剤層とを備えている実施形態を示す。
発明の実施形態
以下、第1実施形態~第6実施形態において、本発明を具体的に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の熱伝導性シートは、窒化ホウ素粒子、および、ゴム成分を含有する。
具体的には、熱伝導性シートは、窒化ホウ素(BN)粒子と、ポリマーマトリクスとしてのゴム成分と、を含有している熱伝導性組成物から形成されている。
窒化ホウ素粒子は、板状(あるいは鱗片状)に形成されている。また、板状は、アスペクト比のある平板状の形状を少なくとも含んでいればよく、板の厚み方向から見て円板状、および、六角形平板状を含んでいる。また、板状は、多層に積層されていてもよく、積層されている場合には、大きさの異なる板状の構造を積層して段状になっている形状、および、端面が劈開した形状を含んでいる。また、板状は、板の厚み方向と直交する方向(面方向)から見て直線形状(図1参照)、さらには、直線形状の途中がやや屈曲する形状を含んでいる。窒化ホウ素粒子(図1の符号2参照)は、熱伝導性シートにおいて面方向(後述)に配向された形態でポリマーマトリクス(図1の符号3参照)中に分散されている。
窒化ホウ素粒子は、体積比で60%以上を占める粒子の長手方向長さ(板の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、また、例えば、通常、800μm以下である。
また、窒化ホウ素粒子の体積比で60%以上を占める粒子の厚み(板の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01μ以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下でもある。
また、窒化ホウ素粒子の体積比で60%以上を占める粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2以上、好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上であり、また、例えば、10,000以下、好ましくは、5,000以下、さらに好ましくは、2,000以下でもある。
窒化ホウ素粒子の形態、厚み、長手方向の長さおよびアスペクト比は、画像解析的手法により測定および算出される。例えば、SEM、X線CT、粒度分布画像解析法などにより求めることができる。
そして、窒化ホウ素粒子のレーザー回折・散乱法(レーザー回折式・粒度分布測定装置(SALD-2100、SHIMADZU))によって測定される体積平均粒子径は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、100μm以下である。
窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径が上記範囲を満たす場合は、上記範囲を外れる体積平均粒子径の窒化ホウ素粒子を同一体積%で混合した場合よりも熱伝導率がより良好となる。
また、窒化ホウ素粒子の嵩密度(JIS K 5101、見かけ密度)は、例えば、0.1g/cm3以上、好ましくは、0.15g/cm3以上であり、さらに好ましくは、0.2g/cm3以上であり、また、例えば、2.3g/cm3以下、好ましくは、2.0g/cm3以下、さらに好ましくは、1.8g/cm3以下、とりわけ好ましくは、1.5g/cm3以下でもある。
また、窒化ホウ素粒子は、市販品またはそれを加工した加工品を用いることができる。窒化ホウ素粒子の市販品としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT-110」、「PT-120」など)、電気化学工業社製のBN(例えば、「SPG」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP-1」など)、水島合金鉄社製の「HP-40」などが挙げられる。
また、熱伝導性シート(すなわち、熱伝導性組成物)は、上記した窒化ホウ素粒子以外に、他の無機微粒子を含んでいてもよい。他の無機微粒子としては、 無機材料としては、例えば、炭化物、窒化物(窒化ホウ素を除く)、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
窒化物(窒化ホウ素を除く)としては、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどが挙げられる。さらに、酸化物として、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などが挙げられる。
金属としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。さらに、金属としては、上記金属の炭化物、窒化物、酸化物なども挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
他の無機粒子は、例えば、難燃性能、畜冷性能、帯電防止性能、磁性、屈折率調節性能、誘電率調節性能などを有する機能性の粒子であってもよい。
これらの他の無機微粒子は、適宜の割合で、単独使用または2種以上併用することができる。
また、熱伝導性シートは、例えば、上記した窒化ホウ素粒子に含まれない微細な窒化ホウ素や異形状の窒化ホウ素粒子を含んでいてもよい。
ポリマーマトリクスは、窒化ホウ素粒子を分散できるもの、つまり、窒化ホウ素粒子が分散される分散媒体であり、ゴム成分を含有している。
ゴム成分は、ゴム弾性を発現するポリマーであって、例えば、エラストマーを含み、具体的には、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ビニルアルキルエーテルゴム、ポリビニルアルコールゴム、ポリビニルピロリドンゴム、ポリアクリルアミドゴム、セルロースゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、スチレン・イソブチレンゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。なお、ゴム成分は、その後の反応によってゴム弾性を発現するプレポリマーを含有している。
ゴム成分として、好ましくは、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴム、アクリルゴムが挙げられる。
ウレタンゴムは、ウレタン結合で連結された主鎖を含むウレタンオリゴマーである。また、ウレタンゴムは、主鎖の末端または途中に結合する反応性基を含む反応性ウレタンポリマーを含んでいる。
反応性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基などのビニル基(重合性基)を含有するビニル基含有基、例えば、エポキシ基(グリシジル基)、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。ウレタンゴムに含まれる反応性基として、好ましくは、ビニル基含有基、さらに好ましくは、アクリロイル基が挙げられる。
ウレタンゴムは、1種または2種以上の反応性基を含んでいてもよい。
2種の反応性基を含んでいる場合には、第1の反応性基としては、例えば、アクリロイル基が挙げられ、第2の反応性基としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
具体的には、ウレタンゴムとして、例えば、アクリレート変性ウレタンゴム、メタクリレート変性ウレタンゴム、エポキシ変性ウレタンゴムなどが挙げられ、好ましくは、アクリレート変性ウレタンゴムが挙げられる。
反応性ウレタンポリマーにおける平均反応性基数、具体的には、平均ビニル基数は、例えば、1~10である。
反応性ウレタンポリマーにおける反応性基当量、具体的には、ビニル基当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、200g/eq.以上、さらに好ましくは、500g/eq.以上であり、例えば、50,000g/eq.以下、好ましくは、20,000g/eq.以下、さらに好ましくは、10,000g/eq.以下である。
ウレタンゴムの重量平均分子量は、例えば、1,000以上、好ましくは、2,000以上、より好ましくは、2,000以上、さらに好ましくは、2,500以上であり、例えば、2,000,000以下、好ましくは、1,000,000以下、より好ましくは、500,000以下、さらに好ましくは、50,000以下、とりわけ好ましくは、10,000以下である。ウレタンゴムの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)は、GPCによって算出される。
ブタジエンゴムは、ポリブタジエンからなる主鎖を含んでいる。また、ブタジエンゴムは、主鎖の末端または途中に結合する上記した反応性基を含有する反応性ポリブタジエンを含んでいる。
反応性ポリブタジエンに含まれる反応性基として、好ましくは、エポキシ基が挙げられる。
具体的には、反応性ブタジエンとして、例えば、アクリレート変性ポリブタジエン、メタクリレート変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエンなどが挙げられ、好ましくは、エポキシ変性ポリブタジエンが挙げられる。
エポキシ変性ポリブタジエンのエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、130g/eq.以上、さらに好ましくは、150g/eq.以上であり、例えば、30,000g/eq.以下、好ましくは、20,000g/eq.以下、さらに好ましくは、10,000g/eq.以下である。
ブタジエンゴムの数平均分子量は、例えば、500g/eq.以上、好ましくは、1,000g/eq.以上、さらに好ましくは、2,000以上であり、例えば、3,000,000以下、好ましくは、2,000,000g/eq.以下、さらに好ましくは、1,000,000以下である。ブタジエンゴムの数平均分子量(標準ポリスチレン換算値)は、GPCによって算出される。
SBRは、スチレンとブタジエンとの共重合により得られる合成ゴムであり、例えば、スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。また、SBRは、上記した反応性基を含有する変性SBR、硫黄や金属酸化物などにより部分架橋されている架橋SBRなどを含んでいる。
SBRとして、好ましくは、変性SBR、具体的には、エポキシ変性SBRが挙げられる。
エポキシ変性SBRにおけるエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、200g/eq.以上、さらに好ましくは、250g/eq.以上であり、例えば、30,000g/eq.以下、好ましくは、20,000g/eq.以下、さらに好ましくは、10,000g/eq.以下である。
SBRのスチレン含量は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下である。
NBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合により得られる合成ゴムであり、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。
また、NBRは、例えば、上記した反応性基を含有する変性NBRや、硫黄や金属酸化物などにより部分架橋された架橋NBRなども含んでいる。
NBRとして、好ましくは、カルボキシ変性NBRが挙げられる。
スチレン・イソブチレンゴムは、スチレンとイソブチレンとの共重合により得られる合成ゴムであり、例えば、スチレン・イソブチレンランダム共重合体、スチレン・イソブチレンブロック共重合体などが挙げられ、好ましくは、スチレン・イソブチレンブロック共重合体が挙げられる。
また、スチレン・イソブチレンブロック共重合体としては、具体的には、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)が挙げられる。
スチレン・イソブチレンゴムにおけるスチレン含量は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下である。
また、スチレン・イソブチレンゴムの重量平均分子量は、例えば、1,000以上、好ましくは、5,000以上、さらに好ましくは、10,000以上であり、例えば、2,000,000以下、好ましくは、1,000,000以下、さらに好ましくは、500,000以下である。スチレン・イソブチレンゴムの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)は、GPCによって算出される。
アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーの重合により得られる合成ゴムである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルであって、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニルなどの、アルキル部分が炭素数1~10の直鎖状または分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、好ましくは、アルキル部分が炭素数2~8の直鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマーに対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、例えば、99質量%以下でもある。
モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと重合可能な共重合性モノマーを含むこともできる。
共重合性モノマーは、ビニル基を含有し、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマー、例えば、スチレンなどの芳香族ビニルモノマーなどが挙げられる。
共重合性モノマーの配合割合は、モノマーに対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、25質量%以下であり、例えば、1質量%以上でもある。
これら共重合性モノマーは、単独または2種以上併用することができる。
アクリルゴムは、接着力を増大させるために、主鎖の末端または途中に結合する官能基を含んでいてもよい。官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミド基などが挙げられ、好ましくは、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられる。
官能基がカルボキシル基の場合には、アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分の一部がカルボキシル基で置換された、カルボキシ変性アクリルゴムである。カルボキシ変性アクリルゴムの酸価は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上であり、また、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、50mgKOH/g以下である。
官能基がエポキシ基の場合には、アクリルゴムは、エポキシ基が側鎖に導入されたエポキシ変性アクリルゴムである。エポキシ変性アクリルゴムのエポキシ当量は、例えば、50eq./g以上、好ましくは、100eq./g以上であり、また、例えば、1,000eq./g以下、好ましくは、500eq./g以下でもある。
アクリルゴムの重量平均分子量は、例えば、10,000以上、好ましくは、50,000以上、より好ましくは、100,000以上であり、例えば、10,000,000以下、好ましくは、5,000,000以下、より好ましくは、3,000,000以下、さらに好ましくは、1,000,000以下である。アクリルゴムの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)は、GPCによって算出される。
アクリルゴムのガラス転移温度は、例えば、-100℃以上、好ましくは、-80℃以上、より好ましくは、-50℃以上、さらに好ましくは、-40℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、50℃以下、さらに好ましくは、40℃以下である。アクリルゴムのガラス転移温度は、例えば、JIS K7121-1987に基づいて測定される熱処理後の中間点ガラス転移温度または理論上の計算値によって算出される。JIS K7121-1987に基づいて測定される場合には、ガラス転移温度は、具体的には、示差走査熱量測定(熱流速DSC)において昇温速度10℃/分にて算出される。
アクリルゴムの分解温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上であり、また、例えば、500℃以下、好ましくは、450℃以下でもある。
アクリルゴムの比重は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上であり、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.4以下でもある。
これらゴム成分は、単独使用または2種以上併用することができる。
なお、ゴム成分は、必要により、溶媒により溶解されたゴム成分溶液として調製して用いることができる。
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒などが挙げられる。
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ゴム成分をゴム成分溶液として調製する場合、ゴム成分の含有割合は、ゴム成分溶液に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。
また、ゴム成分は、重合開始剤と併用され、ゴム成分および重合開始剤を含有するゴム組成物として調製することもできる。
重合開始剤は、好ましくは、ゴム成分が重合性基を含有している場合に、ゴム成分に配合される。
これによって、ゴム成分の重合性基同士による重合反応を進行させて、ゴム成分がゴム弾性を確実に発現することができる。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などのラジカル重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、α-ケトール化合物、芳香族スルホニルクロリド化合物、光活性オキシム化合物、ベンゾイン化合物、ベンジル化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。
具体的には、ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
α-ケトール化合物としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム化合物としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。
また、ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられ、ベンジル化合物としては、例えば、ベンジルなどが挙げられ、ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
チオキサントン化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
α-アミノケトン化合物としては、2-メチル-1-フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(ヘキシル)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。
光重合開始剤として、好ましくは、チオキサントン化合物、α-アミノケトン化合物が挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどの有機過酸化物、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。
熱重合開始剤として、好ましくは、アゾ化合物が挙げられる。
これら重合開始剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
重合開始剤の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
また、ゴム成分の配合割合は、ポリマーマトリクスに対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.9質量%以下、さらに好ましくは、99質量%以下である。
ゴム組成物の配合割合は、ポリマーマトリクスに対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、さらに好ましくは、95質量%以下でもある。
また、ポリマーマトリクスは、ゴム成分の他に、エポキシ樹脂組成物を含有することもできる。
エポキシ樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物であって、好ましくは、エポキシ樹脂を含有し、さらに必要に応じて、硬化剤および/または硬化促進剤を含有している。
エポキシ樹脂は、常温において、常温液体、常温半固形および常温固形のいずれかの形態である。
具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など)、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂など)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族系エポキシ樹脂、例えば、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などのジシクロ環型エポキシ樹脂など)、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂、さらに好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。また、好ましくは、脂環式エポキシ樹脂も挙げられ、さらに好ましくは、ジシクロ環型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、エポキシ樹脂は、その分子構造の中に、液晶性の構造、結晶構造などを形成する分子構造を含んでいてもよい。このような分子構造としては、具体的には、メソゲン基などが挙げられる。
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
また、エポキシ樹脂は、エポキシ当量が、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、130g/eq.以上、さらに好ましくは、150g/eq.以上であり、例えば、10,000g/eq.以下、好ましくは、9,000g/eq.以下、より好ましくは、8,000g/eq.以下、さらに好ましくは、5,000g/eq.以下、とりわけ好ましくは、1,000g/eq.以下、最も好ましくは、500g/eq.以下でもある。
また、エポキシ樹脂が常温固形である場合には、軟化点が、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、130℃以下、好ましくは、90℃以下である。または、融点が、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、130℃以下、好ましくは、90℃以下である。
エポキシ樹脂が常温液体である場合には、粘度(25℃)が、例えば、100mPa・s以上、好ましくは、200mPa・s以上、さらに好ましくは、500mPa・s以上であり、また、例えば、1,000,000mPa・s以下、好ましくは、800,000mPa・s以下、さらに好ましくは、500,000mPa・s以下でもある。
また、エポキシ樹脂が半固形である場合には、150℃における粘度が、例えば、1mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上、さらに好ましくは、10mPa・s以上であり、また、例えば、10,000mPa・s以下、好ましくは、5,000mPa・s以下、さらに好ましくは、1,000mPa・s以下でもある。
エポキシ樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂組成物に対して、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下であり、さらに好ましくは、95質量%以下であり、また、例えば、10質量%以上でもある。
エポキシ樹脂のゴム成分に対する体積配合比(エポキシ樹脂の体積部数/ゴム成分の体積部数)は、例えば、0以上、好ましくは、0.01以上、さらに好ましくは、0.1以上、とりわけ好ましくは、0.2以上であり、例えば、99以下であり、好ましくは、90以下、さらに好ましくは、19以下、とりわけ好ましくは、8.5以下である。
硬化剤は、例えば、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、フェノール樹脂、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物などが挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノールなどのフェノール化合物および/またはα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどのナフトール化合物と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどのアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合または共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、例えば、フェノール化合物および/またはナフトール化合物とジメトキシパラキシレンまたはビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、例えば、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂、例えば、フェノール化合物および/またはナフトール化合物とジシクロペンタジエンから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、例えば、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂などのジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、例えば、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、例えば、テルペン変性フェノール樹脂、例えば、パラキシリレンおよび/またはメタキシリレン変性フェノール樹脂、例えば、メラミン変性フェノール樹脂などが挙げられる。好ましくは、フェノール・アラルキル樹脂が挙げられる。
フェノール樹脂の水酸基当量は、例えば、80g/eq.以上、好ましくは、90g/eq.以上、100g/eq.以上であり、また、例えば、2,000g/eq.以下、好ましくは、1,000g/eq.以下、さらに好ましくは、500g/eq.以下でもある。
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン、または、これらのアミンアダクトなど、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4-メチル-ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
硬化剤として、好ましくは、フェノール樹脂が挙げられる。
硬化促進剤は、例えば、加熱によりエポキシ樹脂の硬化を促進させることができる硬化促進剤(エポキシ樹脂硬化促進剤)であって、例えば、触媒としての役割を果たす。具体的には、例えば、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、有機ホスフィン化合物、ユリア化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、さらに好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール、例えば、2,4-ジアミノ-6-[2´-メチルイミダゾリル-(1´)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-[2´-メチルイミダゾリル-(1´)]-エチル -s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物などのイソシアヌル酸付加物などが挙げられる。
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
硬化剤および/または硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、さらに好ましくは、0.5質量部以上、とりわけ好ましくは、1質量部以上であり、例えば、500質量部以下、好ましくは、400質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下、とりわけ好ましくは、200質量部以下である。
なお、硬化剤および/または硬化促進剤は、必要により、溶媒により溶解および/または分散された溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製して用いることができる。
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒などが挙げられる。また、溶媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなどの水系溶媒も挙げられる。溶媒として、好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ケトンが挙げられる。
ポリマーマトリクスの配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下でもある。
ポリマーマトリクスの配合割合は、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクス(すなわち、熱伝導性組成物)の総量に対して、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、35質量%以下である。
また、窒化ホウ素粒子の質量基準の含有割合は、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、98質量%以下、好ましくは、96質量%以下、より好ましくは、94質量%以下、さらに好ましくは、93質量部%以下でもある。
なお、ポリマーマトリクスには、分散剤などの添加剤を含有させることもできる。
分散剤は、窒化ホウ素粒子の凝集または沈降を防止して、分散性を向上させるために、ポリマーマトリクスに必要により配合される。
分散剤としては、例えば、ポリアミノアマイド塩、ポリエステルなどが挙げられる。
分散剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
次に、第1実施形態の熱伝導性シートの一実施形態を製造する方法について、図1および図2を参照して説明する。
この方法では、まず、上記した各成分を上記した配合割合で配合して、攪拌混合することにより、熱伝導性組成物を調製する。
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合する。
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した熱伝導性組成物が溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
なお、撹拌混合において、必要に応じて、ハイブリッドミキサー、スリーワンモーターなどの撹拌装置を用いることもできる。
溶媒を用いて攪拌混合する場合には、攪拌混合の後、例えば、室温で、1~48時間放置することによって、溶媒を除去する。この際に、必要であれば、例えば、送風などにより乾燥させることもできる。また、例えば、室温および5分~48時間などの条件で、真空乾燥することによって溶媒を除去させることもできる。また、熱伝導性組成物および溶媒を含有するワニスを塗工機によりセパレータ上へ塗工し、乾燥器内でそのワニスを乾燥させることもできる。
その後、必要により、シート形状に成型するために、熱伝導性組成物を破砕することにより、粉末(熱伝導性組成物粉末)を得る。
次いで、この方法では、得られた熱伝導性組成物(熱伝導性組成物粉末、シートを含む、以下同様)を、熱プレスする。
具体的には、図2に示すように、熱伝導性組成物を、例えば、必要により、2枚の離型フィルム4を介して熱プレスする。
熱プレスの条件は、温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、170℃以下、好ましくは、150℃以下である。圧力は、例えば、0.5MPa以上、好ましくは、1MPa以上であり、例えば、100MPa以下、好ましくは、75MPa以下である。時間は、例えば、0.1分間以上、好ましくは、1分間以上であり、例えば、100分間以下、好ましくは、30分間以下である。
さらに好ましくは、熱伝導性組成物を真空熱プレスする。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、100Pa以下、好ましくは、50Pa以下であり、また、例えば、1Pa以上、好ましくは、5Pa以上である。温度、圧力および時間は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
なお、熱プレスにおいて、熱伝導性組成物を、離型フィルム4の上に載置した後、必要に応じて所望厚みのスペーサ(図2において図示せず)を熱伝導性組成物の周囲に枠状に配置することによって、スペーサと実質的に同一厚みの熱伝導性シート1を得ることができる。
また、熱プレスの前に、熱伝導性組成物を二本ロールなどにより圧延してシート状(プレシート)にすることもできる。この場合の圧延条件は、例えば、圧力は、0.1~8MPaであり、ロール温度は、60~150℃であり、ロールの回転速度は、0.5~10rpmまたは0.1~50m/minである。なお、ロールは、多段とすることもできる。
これにより、熱伝導性シート1を得ることができる。
熱伝導性シート1は、ポリマーマトリクス3がエポキシ樹脂組成物またはエポキシ基を含むゴム成分を含有する場合には、上記した熱プレスによって半硬化状態(Bステージ状態)のシートとして得られる。
さらに、ゴム組成物が熱重合開始剤を含有し、ゴム成分が重合性基を含有している場合には、熱重合開始剤によって、ゴム成分の重合性基が反応し、それによって、ゴム成分の架橋反応が進行する。
また、ゴム成分がカルボキシ変性NBRを含有していれば、加熱によって、カルボキシル基同士の脱水反応によって、架橋反応が進行する。
さらに、ゴム成分がエポキシ変性ポリブタジエンゴムおよび/またはエポキシ変性SBRを含有し、さらに、ポリマーマトリクスがエポキシ樹脂組成物を含有する場合には、加熱によって、エポキシ変性ポリブタジエンゴムおよび/またはエポキシ変性SBRのエポキシ基が、エポキシ樹脂のエポキシ基とともに、硬化剤によって架橋反応する。
一方、ゴム組成物が光重合開始剤を含有し、ゴム成分が重合性基を含有している場合には、熱伝導性シート1に、例えば、紫外線などのエネルギー線を照射する。エネルギー線の線量は、例えば、100J/m2以上、好ましくは、200J/m2以上、さらに好ましくは、500J/m2以上であり、例えば、10,000J/m2以下、好ましくは、8,000J/m2以下、さらに好ましくは、5,000J/m2以下である。そして、エネルギー線の照射に基づき、光重合開始剤によって、ゴム成分の重合性基が反応し、それによって、ゴム成分の架橋反応が進行する。
次いで、熱をかけて反応を促進することもできる。例えば、50~70℃(具体的には、60℃)の乾燥機に入れて、例えば、0.5~2時間(具体的には、1時間)処理することで、反応を促進してもよい。
なお、熱伝導性組成物から窒化ホウ素粒子を除いたゴム含有組成物(すなわち、ポリマーマトリクス)から形成されるゴム含有シートを周波数1Hzおよび昇温速度2℃/minの条件で昇温させたときの貯蔵剪断弾性率G´が、20~150℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において(特に、好ましくは80℃において)、例えば、5.6×103Pa以上、好ましくは、1×104Pa以上、より好ましくは、3×104Pa以上であり、また、例えば、2×105Pa以下、好ましくは、1×105Pa以下、さらに好ましくは、5×104Pa以下でもある。
貯蔵剪断弾性率を5.6×103Pa以上とすることにより、ゴム含有組成物に窒化ホウ素粒子を添加して得られる熱伝導性組成物から形成される熱伝導性シートを、実装基板に加熱接着する場合において、実装基板への凹凸追従性が向上し、また、熱伝導性シートに発生するひび割れを低減できる。一方、貯蔵剪断弾性率が2×105Pa以下とすると、実装基板への接着性がより一層良好となる。
このゴム含有シートの損失剪断弾性率G´´(測定条件は、貯蔵剪断弾性率と同一)は、20~150℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において(特に、好ましくは80℃において)、例えば、1×103Pa以上、好ましくは、5×103Pa以上、さらに好ましくは、1×104Pa以上であり、また、例えば、1×106Pa以下、好ましくは、1×105Pa以下、さらに好ましくは、5×104Pa以下でもある。
このゴム含有シートの複素剪断粘性率η*(測定条件は、貯蔵剪断弾性率と同一)は、20~150℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において(特に、好ましくは80℃において)、例えば、9×105mPa・s以上、好ましくは、1×106mPa・s以上、さらに好ましくは、5×106mPa・s以上であり、また、例えば、1×108mPa・s以下、好ましくは、1×107mPa・s以下、さらに好ましくは、7×106mPa・s以下でもある。
貯蔵剪断弾性率、損失剪断弾性率および複素剪断粘性率は、粘度・粘弾性測定装置(商品名HAAKE Rheo Stress 600、英弘精機社製)を用いて、JIS K 7244-10「プラスチック-動的機械特性の試験方法-第10部:平行平板振動レオメータによる複素せん断粘度」に準拠して測定される。
なお、第1実施形態の熱伝導性シートは、上記のポリマーマトリクスおよび必要に応じて溶媒を配合して上記範囲の弾性率のゴム含有組成物を調製し、次いで、そのゴム含有組成物にさらに窒化ホウ素粒子を配合して熱伝導性組成物を調製し、その熱伝導性組成物から熱伝導性シートを形成することもできる。
このようにして得られた熱伝導性シートの厚みは、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、800μm以下であり、通常、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、150μm以上、とりわけ好ましくは、200μm以上である。
また、熱伝導性シートにおける窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合(固形分、つまり、ポリマーマトリクスおよび窒化ホウ素粒子の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率)は、上記したように、35体積%以上(好ましくは、50体積%以上、より好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは、65体積%以上、とりわけ好ましくは、68体積%以上、最も好ましくは、75体積%以上)であり、通常、95体積%以下(好ましくは、90体積%以下、より好ましくは、85体積%以下、さらに好ましくは、80体積%以下)である。熱伝導性シートにおける窒化ホウ素粒子の質量基準の配合割合は、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、さらに好ましくは、60質量%以上、とりわけ好ましくは、65質量%以上、とりわけ好ましくは、75質量%以上であり、例えば、98質量%以下、好ましくは、96質量%以下、より好ましくは、94質量%以下、さらに好ましくは、93質量%以下である。
窒化ホウ素粒子の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子同士の熱伝導パスが形成されないため熱伝導性シートにおいて面方向PDの熱伝導性が低下する場合がある。また、窒化ホウ素粒子の含有割合が上記した範囲を超える場合には、熱伝導性シートが脆くなり、取扱性、段差追従性などが低下する場合がある。
そして、このようにして得られた熱伝導性シート1において、図1およびその部分拡大模式図に示すように、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが、熱伝導性シート1の厚み方向TDに交差(直交)する面方向PDに沿って配向している。
また、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが熱伝導性シート1の面方向PDに成す角度の算術平均の絶対値(窒化ホウ素粒子2の熱伝導性シート1に対する配向角度α)は、例えば、30度以下、好ましくは、25度以下、さらに好ましくは、20度以下であり、通常、0度以上である。
なお、窒化ホウ素粒子2の熱伝導性シート1に対する配向角度αは、熱伝導性シート1を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で、200個以上の窒化ホウ素粒子2を観察できる視野の倍率で写真撮影し、得られたSEM写真より、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDの、熱伝導性シート1の面方向PD(厚み方向TDに直交する方向)に対する傾斜角αを取得し、その平均値として算出される。
これにより、熱伝導性シートの面方向PDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、20W/m・K以上、最も好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
また、熱伝導性シートの面方向PDの熱伝導率は、ポリマーマトリクスがエポキシ樹脂を含有する場合には、後述する熱硬化(完全硬化)の前後において、実質的に同一である。
熱伝導性シートの面方向PDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向PDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向PDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
なお、熱伝導性シートの面方向PDの熱伝導率は、パルス加熱法により測定する。パルス加熱法では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA-447型」(NETZSCH社製)が用いられる。
また、熱伝導性シートの厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.3W/m・K以上、好ましくは、0.5W/m・K以上、より好ましくは、0.8W/m・K以上、さらに好ましくは、1W/m・K以上、とりわけ好ましくは、1.2W/m・K以上であり、また、例えば、20W/m・K以下、好ましくは、15W/m・K以下、より好ましくは、12W/m・K以下、さらに好ましくは、10W/m・K以下である。
なお、熱伝導性シートの厚み方向TDの熱伝導率は、パルス加熱法、レーザーフラッシュ法またはTWA法により測定する。パルス加熱法では、上記と同様のものが用いられ、レーザーフラッシュ法では、「TC-9000」(アルバック理工社製)が用いられ、TWA法では、「ai-Phase mobile」(アイフェイズ社製)が用いられる。
これにより、熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率の、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率に対する比(面方向PDの熱伝導率/厚み方向TDの熱伝導率)は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.8以上、さらに好ましくは、2以上、とりわけ好ましくは、3以上であり、通常、100以下、好ましくは、50以下である。
そして、熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸びは、好ましくは、101.7%以上、より好ましくは、101.9%以上、さらに好ましくは、102.0%以上、とりわけ好ましくは、102.2%以上であり、また、例えば、1000%以下でもある。
熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸びが上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸び(下記の方法によって実測される実測値)は、次のようにして測定する。
すなわち、Bステージ状態の熱伝導性シート1を短冊片に切り出し、これを引張試験機にセットし、速度5mm/分で、短冊片の長手方向に引っ張ったときの最大伸び(%)を実測値として測定する(引張試験)。
また、下記式(1)および(2)から、任意の窒化ホウ素粒子2の体積割合X%における熱伝導性シート1におけるポリマーマトリクス3の最大伸びZ%が推算値として簡易的に推算される。式(1)および(2)から推算される最大伸びZ%は、例えば、100.1%以上、好ましくは、100.5%以上、さらに好ましくは、100.8%以上、より好ましくは、101%以上であり、また、例えば、2000%以下でもある。
Y(%)=M(%)×eX×k (1)
Z(%)=Y(%)+100(%) (2)
k:定数
M:熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合が0%のときの、引張試験前の熱伝導性シート1の面方向PDの長さ100に対する熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸びの割合(以下、最大伸びの割合とする)、すなわち、熱伝導性シート1に占めるポリマーマトリクス3の体積割合が100%のときの最大伸びA(%)-100
A:熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸び(実測値)(%)
X:熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合(%)
Y:熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸び分(%)、つまり、引張試験前の熱伝導性シート1に対する最大伸び量の百分率
Z:計算から求まる、熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸び(推算値)(%)
最大伸び(推算値)Z%が上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
定数kは、図6が参照されるように、上記した引張試験により得られた、熱伝導性シート1の面方向PDの最大伸び(実測値)の割合、すなわち、最大伸びA(%)-100を、熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合X(%)に対してプロットし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線の傾きとして得られる。
定数kは、例えば、-0.1以上、好ましくは、-0.09以上、さらに好ましくは、-0.08以上、とりわけ好ましくは、-0.07以上であり、例えば、-0.001以下、好ましくは、-0.005以下、さらに好ましくは、-0.008以下、とりわけ好ましくは、-0.01以下である。
定数kが上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
また、熱伝導性シート1の破断時伸びC(%)は、上記した引張試験において実測値として測定され、具体的には、例えば、101.9%以上、好ましくは、102.0%以上、さらに好ましくは、103.0%以上であり、また、例えば、1000%以下でもある。
また、下記式(3)および(4)から、任意の窒化ホウ素粒子2の体積割合X%における熱伝導性シート1におけるポリマーマトリクス3の破断時伸びW%が推算値として簡易的に推算される。式(3)および(4)から推算される破断時伸びW%は、例えば、101%以上、好ましくは、101.3%以上、さらに好ましくは、101.7%以上であり、また、例えば、3000%以下でもある。
V(%)=N(%)×eX×L (3)
W(%)=V(%)+100(%) (4)
L:定数
N:熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合が0%のときの、引張試験前の熱伝導性シート1の面方向PDの長さ100に対する熱伝導性シート1の面方向PDの破断時伸びの割合(以下、破断時伸びの割合とする)、すなわち、熱伝導性シート1に占めるポリマーマトリクス3の体積割合が100%のときの破断時伸びC(%)-100
C:熱伝導性シート1の面方向PDの破断時伸び(実測値)(%)
X:熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合(%)
V:熱伝導性シート1の面方向PDの破断時伸び分(%)、つまり、引張試験前の熱伝導性シート1に対する破断時伸び量の百分率
W:計算から求まる、熱伝導性シート1の面方向PDの破断時伸び(推算値)(%)
破断時伸び(推算値)W%が上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
定数Lは、上記した引張試験により得られた、熱伝導性シート1の面方向PDの破断時伸び(実測値)の割合、すなわち、破断時伸びC(%)-100を、熱伝導性シート1に占める窒化ホウ素粒子2の体積割合X(%)に対してプロットし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線の傾きとして得られる。
定数Lは、例えば、-0.1以上、好ましくは、-0.09以上、さらに好ましくは、-0.08以上、とりわけ好ましくは、-0.07以上であり、例えば、-0.001以下、好ましくは、-0.005以下、さらに好ましくは、-0.01以下、とりわけ好ましくは、-0.03以下である。
定数Lが上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
熱伝導性シート1の引張弾性率は、例えば、5N/mm2以上、好ましくは、10N/mm2以上、より好ましくは、15N/mm2以上、さらに好ましくは、30N/mm2以上であり、例えば、3000N/mm2以下でもある。
熱伝導性シート1の引張弾性率が上記した範囲内であれば、半導体素子に対する配置時において、損傷を有効に防止することができる。
熱伝導性シート1の引張弾性率は、上記した引張試験により、測定される。
また、熱伝導性シート1は、JIS K 5600-5-1の円筒形マンドレル法に準拠する耐屈曲性試験において、下記の試験条件で評価したときに、例えば、破断が観察されない。
試験条件
試験装置:タイプI
マンドレル:直径10mm、または、直径5mm
屈曲角度:90度以上
熱伝導性シート1の厚み:0.3mm
図4は、耐屈曲性試験のタイプIの試験装置(耐屈曲性試験前)の斜視図、図5は、耐屈曲性試験のタイプIの試験装置(耐屈曲性試験途中)の斜視図を示す。
なお、タイプIの試験装置の斜視図を図4および図5に示し、以下に、タイプIの試験装置を説明する。
図4および図5において、タイプIの試験装置10は、第1平板11と、第1平板11と並列配置される第2平板12と、第1平板11および第2平板12を相対回動させるために設けられるマンドレル(回転軸)13とを備えている。
第1平板11は、略矩形平板状に形成されている。また、第1平板11の一端部(遊端部)には、ストッパ14が設けられている。ストッパ14は、第1平板11の表面に、第1平板11の一端部に沿って延びるように形成されている。
第2平板12は、略矩形平板状をなし、その1辺が、第1平板11の1辺(ストッパ14が設けられる一端部と反対側の他端部(基端部)の1辺)と隣接するように、配置されている。
マンドレル13は、互いに隣接する第1平板11および第2平板12の1辺に沿って延びるように形成されている。
このタイプIの試験装置10は、図4に示すように、耐屈曲性試験を開始する前には、第1平板11の表面と第2平板12の面とが面一とされる。
そして、耐屈曲性試験を実施するには、熱伝導性シート1を、第1平板11の表面と第2平板12の表面とに載置する。なお、熱伝導性シート1を、その1辺が、ストッパ14に当接するように載置する。
次いで、図5に示すように、第1平板11および第2平板12を、相対的に回動させる。具体的には、第1平板11の遊端部と第2平板12の遊端部とを、マンドレル13を中心として、所定の角度だけ、回動させる。詳しくは、第1平板11および第2平板12を、それらの遊端部の表面が近接(対向)するように、回動させる。
これによって、熱伝導性シート1は、第1平板11および第2平板12の回動に追従しながら、マンドレル13を中心に屈曲する。
好ましくは、熱伝導性シート1は、上記した試験条件において、直径5mmのマンドレル13を用いたときでも、破断が観察されない。
上記した直径5mmのマンドレル13を用いた耐屈曲性試験において熱伝導性シート1に破断が観察される場合には、熱伝導性シート1に優れた柔軟性を付与することができない場合がある。
なお、耐屈曲性試験には、Bステージ状態の熱伝導性シート1が用いられる。
また、この熱伝導性シート1は、JIS K 7171(2008年)に準拠する3点曲げ試験において、下記の試験条件で評価したときに、例えば、破断が観察されない。
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/分(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
評価方法:上記試験条件で試験したときの、試験片の中央部におけるクラックなどの破断の有無を目視にて観察する。
なお、3点曲げ試験には、半硬化状態の熱伝導性シート1が用いられる。
従って、この熱伝導性シート1は、上記した3点曲げ試験において破断が観察されないことから、段差追従性が優れている。なお、段差追従性とは、熱伝導性シート1を、段差のある設置対象に設けるときに、その段差に沿って密着するように追従する特性である。
なお、ポリマーマトリクスがエポキシ樹脂組成物を含有する場合には、貼着後、加熱により熱伝導性シート1を熱硬化させる(Cステージ状態とする)ことにより、放熱対象である半導体素子に接着される。
熱伝導性シート1を熱硬化させるには、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上より好ましくは、90℃以上、さらに好ましくは、150℃以上で、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下の温度で、例えば、10秒間以上、好ましくは、1分間以上、より好ましくは、5分間以上、さらに好ましくは、10分間以上で、例えば、10日間以下、好ましくは、7日間以下、より好ましくは、3日間以下、さらに好ましくは、2日間以下、とりわけ好ましくは、10時間以下の時間で、熱伝導性シート1を加熱する。
そして、熱伝導性シート1の銅箔に対する90度剥離接着力は、例えば、2N/10mm以上、好ましくは、2.2N/10mm以上、さらに好ましくは、2.4N/10mm以上、とりわけ好ましくは、2.6N/10mm以上であり、通常、30N/10mm以下である。
熱伝導性シート1の銅箔に対する90度剥離接着力が上記範囲に満たないと、被着体に対する接着力が低下する場合がある。
熱伝導性シート1の銅箔に対する90度剥離接着力は、次のようにして測定する。
すなわち、まず、Bステージ状態の熱伝導性シート1を適当なサイズに切り出して、それを、銅箔の粗面に接触するように重ね合わせることにより、銅箔積層シートを作製する。
なお、銅箔は、粗面を厚み方向一方側に有し、平坦面を厚み方向他方側に有しており、粗面の表面粗さRz(JIS B0601-1994に準拠する十点平均粗さ)は、5~20μmである。また、銅箔の厚みは、例えば、10~200μm、具体的には、70μmである。
次いで、作製した銅箔積層シートを真空熱プレス機中に配置し、例えば、圧力20~60MPaで、1~10分間熱プレスする。続いて、圧力を保持した状態で、例えば、80~180℃に昇温させて、1~60分間保持する。これによって、熱伝導性シート1を、BステージからCステージへ反応を促進させる。
その後、銅箔積層シートを、例えば、80~180℃の乾燥機に入れて、0.5~24時間静置して、熱伝導性シートを銅箔に接着させる。
次いで、銅箔積層シートを短冊片に切り出し、この短冊片を引張試験機にセットし、続いて、熱伝導性シートを、銅箔に対して90度の角度で、速度10mm/分で、短冊片の長手方向に剥離したときの90度剥離接着力を測定する。
そして、この熱伝導性シート1は、面方向PDの熱伝導率が、4W/m・K以上であるので、面方向PDの熱伝導性に優れている。そのため、面方向PDの熱伝導性に優れる熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。
また、この熱伝導性シート1は、ゴム成分を含有しているので、柔軟性に優れている。そのため、熱伝導性シート1を、半導体素子を被覆するように配置しても、ひび割れなどの損傷を防止することができる。
また、この熱伝導性シート1は、引張試験における面方向PDの最大伸びが、101.7%以上であるので、柔軟性がより一層優れている。そのため、熱伝導性シート1を、半導体素子を被覆するように配置しても、ひび割れなどの損傷を防止することができる。その結果、放熱対象を確実に被覆することができ、放熱対象が発生する熱を窒化ホウ素粒子2によって確実に伝導させることができる。
また、この熱伝導性シート1は、貯蔵剪断弾性率が、20~150℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度において(特に、80℃において)、5.6×103~2×105Paであるゴム含有シートを形成するゴム含有組成物に窒化ホウ素粒子を添加して得られる熱伝導性組成物から形成されている。そのため、電子部品が実装され、表面に凹凸がある実装基板に加熱接着する場合において、熱伝導性シートが適度な柔軟性をもって延びることができる。その結果、熱伝導性シートにひび割れの発生を低減させながら、その凹凸の表面に追従して熱伝導性シート1によって実装基板を被覆することができる。従って、実装基板と熱伝導性シートとの接触面積を大きくでき、実装基板が発生する熱を窒化ホウ素粒子によって、より効率的に伝導させることができる。
熱伝導性シート1が貼着または被覆される放熱対象としては、電子部品、それが基板に実装された実装基板などが挙げられる。
電子部品として、例えば、半導体素子(IC(集積回路)チップなど)、コンデンサ、コイル、抵抗器、発光ダイオードなどの電子素子が挙げられる。さらに、サイリスタ(整流器)、モータ部品、インバーター、送電用部品など、パワーエレクトロニクスに採用される電子部品なども挙げられる。基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、ガラス基板、PET基板、テフロン基板、セラミックス基板、ポリイミド基板などが挙げられる。
また、放熱対象として、例えば、LED放熱基板、電池用放熱材を挙げることもできる。
また、熱伝導性シート1は、例えば、電子部品を実装するための基板として用いることもできる。
熱伝導性シート1は、厚み方向の一方面または両面に、粘着剤層、接着剤層、離型フィルムなどを積層することもできる。
放熱対象の表面の凹凸の段差(例えば、電子部品の高さ)は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上であり、また、例えば、10mm以下、好ましくは、5mm以下、より好ましくは、2mm以下、さらに好ましくは、1mm以下である。
例えば、高さが200~900μmの電子部品が実装された実装基板を被覆する場合、好ましくは、例えば、厚み100μm以上(好ましくは、150μm以上、さらに好ましくは、200μ以上であり、また、例えば、1000μm以下)の熱伝導性シートを用いて、被覆する。この範囲とすることにより、熱伝導性シートを実装基板に被覆するときに、熱伝導性シートのひび割れの発生を低減できる。
なお、上記した第1実施形態では、必要に応じて、エネルギー線の照射を、熱プレスの後に実施しているが、その時期は特に限定されず、例えば、熱プレスの前に実施することもできる。
図3は、熱伝導性シートの他の実施形態の製造方法を説明するための工程図であって、図3Aは、プレスシートを複数個に分割する工程、図3Bは、分割シートを積層する工程を示す。
上記した図2の実施形態では、熱伝導性組成物を1回熱プレスして、熱伝導性シート1を得ているが、例えば、図2、図3Aおよび図3Bで示すように、熱プレスを複数回実施することもできる。
具体的には、図2で示すように、まず、熱伝導性組成物を1回熱プレスして得られた熱伝導性シート1をプレスシート1Aとし、続いて、図3Aに示すように、複数個(例えば、4個)に分割して、分割シート1Bを得る(分割工程)。プレスシート1Aの分割では、厚み方向に投影したときに複数個に分断されるように、プレスシート1Aをその厚み方向に沿って切断する。
次いで、図3Bに示すように、各分割シート1Bを、厚み方向に積層して、積層シート1Cを得る(積層工程)。
その後、図2に示すように、積層シート1Cを、熱プレス(好ましくは、真空熱プレス)する(熱プレス工程)。熱プレスの条件は、上記した熱伝導性組成物の熱プレスの条件と同様である。
その後、上記した分割工程(図3A)、積層工程(図3B)および熱プレス工程(図2)の一連の工程を、繰り返し実施する。繰返回数は、特に限定されず、窒化ホウ素粒子の分散状態に応じて適宜設定することができ、例えば、1回以上、好ましくは、2回以上であり、例えば、10回以下、好ましくは、7回以下である。
この方法によれば、熱伝導性シート1において窒化ホウ素粒子2をポリマーマトリクス3中に面方向PDに効率的に配向させることができる。
(第2実施態様)
第2実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態の熱伝導性シートに含まれる実施形態であって、第2実施形態の熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子と、ゴム成分と、エポキシ樹脂と、硬化剤および硬化促進剤の少なくとも1種と、を含有する熱伝導性組成物から形成される。すなわち、第2実施形態の熱伝導性シートを形成する熱伝導性組成物は、窒化ホウ素粒子と、ポリマーマトリクスとを含有し、そのポリマーマトリクスは、ゴム成分と、エポキシ樹脂と、硬化剤および硬化促進剤の少なくとも1種とを含有する。
窒化ホウ素粒子は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられる。窒化ホウ素粒子の配合割合も第1実施形態と同様である。
ゴム成分は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリルゴムが挙げられる。
ゴム成分の配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上、とりわけ好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、さらに好ましくは、50質量部以下、とりわけ好ましくは、30質量部以下でもある。
エポキシ樹脂は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられる。
エポキシ樹脂の配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下、とりわけ好ましくは、12質量部以下でもある。
エポキシ樹脂のゴム成分に対する体積配合比(エポキシ樹脂の体積部数/ゴム成分の体積部数)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、99以下、好ましくは、90以下、さらに好ましくは、20以下でもある。
エポキシ樹脂は、好ましくは、常温液状エポキシ樹脂および常温固形エポキシ樹脂を含有する。
常温液状エポキシ樹脂および常温固形エポキシ樹脂を含有する場合、それらの配合割合は、常温固形エポキシ樹脂100重量部に対して常温液体エポキシ樹脂が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、また、例えば、500質量部以下、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下でもある。10質量部以上とすることにより、仮接着性の点で良好である。一方、500質量部以下とすることにより、耐クラック性の点で良好である。
熱伝導性組成物が常温液状エポキシ樹脂および常温固形エポキシ樹脂を含有する場合、常温液状エポキシ樹脂は、好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂(より好ましくはビスフェノール系エポキシ樹脂)であり、常温固形エポキシ樹脂は、好ましくは、脂環式エポキシ樹脂(より好ましくは、ジシクロ環型エポキシ樹脂)である。
硬化剤は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられる。熱伝導性組成物が硬化剤を含有する場合、硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上、とりわけ好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、300質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下でもある。硬化剤の配合により、熱伝導性シートを低温加熱(例えば、40~100℃)で1日保存した場合にエポキシ基の反応率が40%以上にすることができる。
また、エポキシ樹脂のエポキシ基に対する硬化剤の当量は、例えば、0.5以上、好ましくは、1.3以上、より好ましくは、1.5以上、さらに好ましくは、2以上であり、また、例えば、10以下でもある。硬化剤当量を0.5以上とすることにより、硬化速度の点で良好である。一方、10以下とすることにより、保存安定性の点で良好である。
硬化促進剤は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、イミダゾール化合物、さらに好ましくは、イソシアヌル酸付加物が挙げられる。
熱伝導性組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下でもある。
第2実施形態における熱伝導性組成物は、好ましくは、硬化剤および硬化促進剤の両方を含有する。
上記で記載した配合割合以外の各種材料の配合割合は、第1実施形態の各種材料の配合割合と同様である。
第2実施形態の熱伝導性シートの製造方法は、上記した材料および配合割合において、第1実施形態において上記した製造方法と同様に実施される。
特に、第2実施形態の熱伝導性シートでは、好ましくは、まず上記成分のうち、窒化ホウ素粒子を除く成分(すなわち、ポリマーマトリクス、具体的には、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、ゴム成分など)を配合し、さらに溶媒を添加することにより、ゴム含有組成物を形成する。このときのゴム含有組成物の固形分量は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
そして、このゴム含有組成物では、ゴム含有組成物に含まれる溶媒を揮発させて形成されるゴム含有シートを周波数1Hzおよび昇温速度2℃/minの条件で昇温させたときの貯蔵剪断弾性率G´が、貼り付け温度(例えば、50~80℃、好ましくは、60~80℃、より好ましくは、70~80℃、とりわけ好ましくは、80℃)の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、5.5×103Pa以上、好ましくは、1×104Pa以上、より好ましくは、2×104Pa以上、さらに好ましくは、3×104Pa以上であり、また、例えば7.0×104Pa以下、好ましくは、6×104Pa以下、より好ましくは、5×104Pa以下、さらに好ましくは、4×104Pa以下でもある。
貼り付け温度における貯蔵剪断弾性率が5.5×103Pa未満であると、ゴム含有組成物に窒化ホウ素粒子を添加して得られる熱伝導性組成物から形成される熱伝導性シートを、実装基板に加熱接着する場合に、熱伝導性シートが柔らかすぎて熱伝導性シートにクラックが発生する場合がある。一方、貼り付け温度における貯蔵剪断弾性率が7.0×104Paを超過すると、熱伝導性シートが脆く、クラックが発生する場合がある。
なお、貼り付け圧力は、例えば、0.05kN以上、好ましくは、0.1kN以上であり、また、例えば、5kN以下、好ましくは、1kN以下でもある。
次いで、このようなゴム含有組成物に、窒化ホウ素粒子を上記の割合となるように配合し、熱伝導性組成物を得、この熱伝導性組成物を用いて、上記と同様の方法にして、第2実施形態の熱伝導性シートを製造する。
また、第2実施形態の熱伝導性シートにおける窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合(固形分、すなわち、熱伝導性組成物から溶媒が除去された成分に占める窒化ホウ素粒子の含有割合)は、35体積%以上であり、好ましくは、50体積%以上、より好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは、65体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。また、例えば、40質量%以上(好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、98質量%以下(好ましくは、96質量%以下、さらに好ましくは、93質量部%以下)でもある。
第2実施形態の熱伝導性シートは、エポキシ樹脂を含有するため、上記した熱プレスによって半硬化状態(Bステージ状態)のシートとして得られる。
そして、このようにして得られた熱伝導性シート1において、図1およびその部分拡大模式図に示すように、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが、熱伝導性シート1の厚み方向TDに交差(直交)する面方向PDに沿って配向している。配向度αは、第1実施形態の熱伝導性シートと同様である。
これにより、熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、さらに好ましくは、10W/m・K以上、とりわけ好ましくは、15W/m・K以上、最も好ましくは、20W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向PDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向PDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
また、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.3W/m・K以上、好ましくは、0.5W/m・K以上、より好ましくは、0.8W/m・K以上、さらに好ましくは、1W/m・K以上、とりわけ好ましくは、1.2W/m・K以上であり、また、例えば、20W/m・K以下でもある。
また、熱伝導性シート1の室温(例えば、30℃)で30日保存した後のエポキシ反応率は、例えば、40%未満、好ましくは、30%未満、さらに好ましくは、25%未満であり、また、例えば、0.1%以上でもある。
また、熱伝導性シート1を40~100℃(より具体的には、90℃)で1日保存した後のエポキシ反応率は、例えば、40%以上、好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは90%以上であり、また、例えば、100%以下でもある。
また、熱伝導性シート1を40~100℃(より具体的には、90℃)で1時間保存した後のエポキシ反応率は、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、さらに好ましくは、20%以上、また、例えば、60%以下でもある。
熱伝導性シート1のエポキシ反応率は、熱伝導性シートを10℃/minの速度で、窒素ガス雰囲気下、0℃から250℃まで昇温することにより、DSC曲線を得、その得られたDSC曲線より算出される発熱量から反応率を求めることができる。より詳細は、実施例にて説明する。
得られた熱伝導性シート1の絶縁破壊電圧(測定方法は後述する)は、例えば、10kV/mm以上であり、好ましくは、20kV/mm以上、より好ましくは、30kV/mm以上、さらに好ましくは、40kV/mm以上であり、また、例えば、100kV/mm以下でもある。
そして、この熱伝導性シート1は、被覆対象(例えば、後述する電子部品、電子部品が実装された実装基板など)に加熱により接着させる。被覆対象は、第1実施形態で挙げた被覆対象(放熱対象)と同様のものが挙げられる。
加熱温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上であり、また、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下、より好ましくは、150℃以下である。これにより、熱伝導性シート1内部のエポキシ樹脂などが反応し、熱伝導性シート1は被覆対象と強固に密着することができる。このとき、熱伝導性シート1は硬化状態(Cステージ状態)のシートとなる。
必要により、接着は、熱伝導性シート1および/または被覆対象を加熱押圧しながら実施することができる。
加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
また、圧力は、例えば、0.01MPa以上、好ましくは、0.02MPa以上であり、また、例えば、50MPa以下、好ましくは、10MPa以下でもある。
被覆対象の表面に凹凸などの段差が存在する場合、その被覆対象の段差の高さは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上であり、また、例えば、1cm以下、好ましくは、5mm以下、より好ましくは、2mm以下、とりわけ好ましくは、1mm以下である。
熱伝導性シート1の厚みをA、被覆対象の段差の高さをBとした場合、BとAとの比率(B/A)は、例えば、50以下、好ましくは、25以下、さらに好ましくは、10以下であり、また、例えば、0.005以上でもある。50以下とすることにより、熱伝導性シート1を被覆対象に密着させる場合に、クラックの発生を抑制することができる。
そして、この熱伝導性シート1は、熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率が、4W/m・K以上であるので、面方向PDの熱伝導性に優れている。そのため、面方向PDの熱伝導性に優れる熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。
また、この熱伝導性シート1は、窒化ホウ素粒子、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤およびゴム成分を含有する熱伝導性組成物から形成されている。そのため、より低い温度で、例えば、100℃以下で、実装基板に接着することができる。その結果、実装基板への熱負荷を低減することができる。
また、この熱伝導性シート1は、貼り付け温度における貯蔵剪断弾性率が5.5×103~7.0×104Paであるゴム含有シートを形成するゴム含有組成物に窒化ホウ素粒子を添加して得られる熱伝導性組成物から形成されている。そのため、熱伝導性シート1を、表面に凹凸がある被覆対象を被覆する場合、熱伝導性シート1が適度な柔軟性をもって延びることができる。その結果、熱伝導性シート1にクラックの発生を低減させながら、その凹凸の表面に追従して熱伝導性シート1で被覆対象を被覆することができる。従って、被覆対象と熱伝導性シート1との接触面積を大きくでき、被覆対象が発生する熱を窒化ホウ素粒子によって、より効率的に伝導させることができる。
また、この熱伝導性シート1は、常温液状エポキシ樹脂および常温固形エポキシ樹脂を含有する熱伝導性組成物から形成されているため、可撓性に優れる。
また、この熱伝導性シート1は、硬化剤としてフェノール樹脂を含有する熱伝導性組成物から形成されているため、低温接着性に優れる。
また、この熱伝導性シート1は、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を含有する熱伝導性組成物から形成されているため、低温接着性および保存安定性に優れる。
また、この熱伝導性シート1は、室温で30日保存した後のエポキシ反応率が、30%未満であるゴム含有シートを形成するゴム含有組成物に窒化ホウ素粒子が配合された熱伝導性組成物から形成されるため、熱伝導性シート1の保存安定性に優れる。
なお、従来からの課題として、熱伝導性シートには、用途および目的によって、厚み方向に直交する直交方向(面方向)における高い熱伝導性が要求される場合がある。また、凹凸の高さや形状が異なる電子部品(例えば、ICチップ、コンデンサ、コイル、抵抗器などの電子素子)が実装された実装基板に熱伝導性シートを被覆する場合、熱伝導性シートがその電子部品の上面や側面および基板表面の形状に沿ってシートのクラック(割れ)が発生することなく密着することにより、熱伝導性シートと電子部品や基板との接触面積を大きくすれば、より効率的に電子部品や基板から発生される熱を放熱させることが可能となる。従って、熱伝導性シートがクラックを発生させることなく実装基板の凹凸(電子部品等)の表面や側面に追従する性能(凹凸追従性)が要求されている。また、実装基板は、熱伝導性シートに密着させた後、加熱することにより、実装基板と接着させることができる。しかしながら、電子部品は熱に弱いため、熱伝導性シートには、より低い温度(例えば、100℃以下)で接着させることができる低温接着性能が要求されている。
そこで、第2実施形態の熱伝導性シートは、上記した通り、この課題を解決することができる。すなわち、第2実施形態は、熱伝導性に優れながら、クラックを抑制しつつ実装基板への凹凸追従性および低温接着性が良好な熱伝導性シートである。
(第3実施形態)
第3実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態の熱伝導性シートを一部に含むものであって、第3実施形態の熱伝導性シートは、窒化ホウ素粒子と、ポリマーマトリクスとしての樹脂成分とを含有している。
窒化ホウ素粒子は、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられる。窒化ホウ素粒子の配合割合も第1実施形態と同様である。
樹脂成分は、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれを含有することもでき、好ましくは、熱硬化性樹脂を含有する。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。樹脂成分がエポキシ樹脂を含有することにより、初期密着性に優れる。
これら熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
エポキシ樹脂としては、第1実施形態で上記としたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂、さらに好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。また、好ましくは、脂環式エポキシ樹脂も挙げられ、さらに好ましくは、ジシクロ環型エポキシ樹脂が挙げられる。
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、常温液状エポキシ樹脂と常温固形状エポキシ樹脂とを併用する。
常温液状エポキシ樹脂と常温固形状エポキシ樹脂とを併用する場合、その配合割合は、常温液状エポキシ樹脂100質量部に対して、常温固形状エポキシ樹脂は、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、300質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下でもある。
常温液状エポキシ樹脂と常温固形エポキシ樹脂とを併用する場合、常温液状エポキシ樹脂は、好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂(より好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂)であり、常温固形エポキシ樹脂は、好ましくは、脂環式エポキシ樹脂(より好ましくは、ジシクロ環型エポキシ樹脂)である。
樹脂成分には、好ましくは、エポキシ樹脂とともに、硬化剤を含有させる。
硬化剤としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、300質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下でもある。
樹脂成分には、硬化剤とともに、硬化促進剤を含有することもできる。
硬化促進剤としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であり、また、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下でもある。
樹脂成分は、好ましくは、ゴムを含有する。
ゴムとしては、上述したものと同様のものが挙げられ、好ましくは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリルゴムが挙げられる。樹脂成分が上記ゴムを含有することにより、凹凸追従性に優れる。
なお、ゴムをゴム溶液として調製する場合、ゴムの含有割合(固形分割合)は、ゴム溶液に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下でもある。
ゴムの配合割合は、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下でもある。
上記で記載した配合割合以外の各種材料の配合割合は、第1実施形態の各種材料の配合割合と同様である。
次に、第3実施形態の熱伝導性シートを製造する方法の一実施形態について、説明する。
第3実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態で挙げた製造方法と同様の製造方法により得られるが、好ましくは、窒化ホウ素粒子と、前記窒化ホウ素粒子の表面を被覆する樹脂成分とを備える樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有する粒子集合物粉体を製造する被覆工程、および、その製造された粒子集合物紛体をシート状に成形する工程により得られる。
粒子集合物粉体の製造方法は、例えば、真空乾燥法、真空撹拌乾燥法、噴霧乾燥法などが挙げられる。真空撹拌乾燥法としては、例えば、ナウタミキサ(ホソカワミクロン社)などを用いた方法が挙げられる。噴霧乾燥法としては、スプレードライヤー(日本ビュッヒ社)、アグロマスター(ホソカワミクロン社)、転動流動コーティング装置(パウレック社)などを用いた方法が挙げられる。第3実施形態では、好ましくは、噴霧乾燥法、さらに好ましくは、転動流動コーティング装置を用いた方法(転動流動層造粒法)が挙げられる。この転動流動層造粒法を用いて粒子集合物粉体を製造することにより、樹脂成分が均一に窒化ホウ素粒子に被覆した粒子集合物粉体を得ることができる。また、所望のタック力を有する熱伝導性シートを製造できる粒子集合物粉体をより確実に得ることもできる。
以下、図9を参照して、転動流動層造粒法を用いて、第3実施形態の粒子集合物粉体の製造方法を説明する。
転動流動層造粒法では、板状の窒化ホウ素粒子2を空中で滞留させながら、窒化ホウ素粒子2に、樹脂成分を噴霧することにより、樹脂成分が窒化ホウ素粒子2の表面に被覆した樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有する粒子集合物粉体を得る。
樹脂成分(ポリマーマトリクス3)は、好ましくは、溶媒に分散又は溶解させた液状組成物3a(ワニス)として用いる。すなわち、好ましくは、窒化ホウ素粒子2を空中で滞留させながら、液状組成物3aを窒化ホウ素粒子2に噴霧する。
溶媒としては、例えば、上記と同様の有機溶媒などが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素が挙げられ、さらに好ましくは、ケトンが挙げられる。これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
液状組成物3aの固形分量(固形分濃度)は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、8質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、とりわけ好ましくは、12質量%以上であり、また、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、20質量%以下でもある。
この工程では、例えば、図9に示す転動流動コーティング装置が用いられる。
転動流動コーティング装置30は、滞留部31と、供給部32とを備えている。
滞留部31は、チャンバー42と、チャンバー42に収納される撹拌翼33とを備える。
チャンバー42は、上下方向に延び、上端および下端が閉鎖される略円筒形状に形成されている。
チャンバー42の上端には、窒化ホウ素粒子2をチャンバー42内に留めるためのファブリックフィルター43が設けられている。また、チャンバー42の下端には、チャンバー42内の窒化ホウ素粒子2は通過させずにチャンバー42の下方から送風される気体46を通過させるためのメッシュ45が装着されている。気体46を下方から上方に向かってメッシュ45を通過してチャンバー42内に送風することにより、窒化ホウ素粒子2はその気体46により空気中に滞留(転動流動)させられるように構成されている。なお、転動流動コーティング装置30は、バッチ式であり、窒化ホウ素粒子2の投入は、チャンバー42を開放して実施される。
チャンバー42には、粒子集合物粉体をチャンバー42から取り出すための取出口(図示せず)が設けられている。
撹拌翼33は、チャンバー42の下部に設けられ、回転軸がチャンバー42の軸線と共通するように、回転可能に設けられている。
供給部32は、液状組成物3aを貯蔵し、チャンバー42の外側に配置される原料タンク36と、噴霧口37と、それらの途中に設けられるポンプ35とを備える。
噴霧口37は、チャンバー42内の下部に設けられている。噴霧口37は、圧縮空気送風機(図示せず)が接続されており、圧縮空気により、液状組成物3aをチャンバー42の内部に噴霧可能に構成されている。噴霧口37は、接続管47を介して、原料タンク36に接続されている。
ポンプ35は、接続管47の途中に設けられている。ポンプ35は、原料タンク36内の液状組成物3aを噴霧口37に供給するように、駆動する。
そして、この転動流動コーティング装置30を用いて、被覆工程を実施する。被覆工程を実施するには、まず、チャンバー42の内部に、板状の窒化ホウ素粒子を投入する。
次いで、所望の温度に加熱または冷却した気体46を下方からメッシュ45を通過してチャンバー42の内部に送風する。これにより、窒化ホウ素粒子2を空中に滞留させる。
気体46の温度(給気温度)は、例えば、0℃以上、好ましくは、5℃以上であり、より好ましくは、10℃以上であり、さらに好ましくは、20℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、60℃以下、さらに好ましくは、40℃以下でもある。
次いで、液状組成物3aを、ポンプ35の駆動によって、原料タンク36から接続管47を介して噴霧口37に供給し、噴霧口37から液状組成物3aをチャンバー42内に噴霧する。窒化ホウ素粒子2に対する液状組成物3aの噴霧量を、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上とし、また、例えば、500質量部以下、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下とする。
これにより、液状組成物3aは、窒化ホウ素粒子2に付着し、乾燥される。そして、窒化ホウ素粒子2の表面が樹脂成分で被覆された樹脂被覆窒化ホウ素粒子からなる粒子集合物粉体が得られる。つまり、樹脂被覆窒化ホウ素粒子は、板状の窒化ホウ素粒子2と、窒化ホウ素粒子2の表面を被覆する樹脂成分とを備える。
このようにして得られた粒子集合物粉体において、TOF-SIMS分析による樹脂寄与イオン種(C7H7
+)と窒化ホウ素寄与イオン種(B+)との比率(C7H7
+/B+)は、例えば、0.4以上、好ましくは、1.0以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、10以下でもある。この範囲とすることにより、タック力が優れた熱伝導性シートを製造することができる。
なお、TOF-SIMSによる分析は、装置として、TOF-SIMS(ION-TOF社製)を用いて、一次イオン:Bi3
2+、加圧電圧:25kV、測定面積:200μm角の条件で測定される。
粒子集合物粉体における窒化ホウ素粒子2に対する樹脂成分の被覆量(質量割合)としては、例えば、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、樹脂成分は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、25質量部以下である。
なお、この製造方法により製造される粒子集合物粉体は、窒化ホウ素粒子2の表面の全てが樹脂成分に被覆された完全被覆窒化ホウ素粒子を含有していてもよい。また、窒化ホウ素粒子2の表面の一部が樹脂成分に被覆され、残部が樹脂成分から露出する一部被覆窒化ホウ素粒子を含有していてもよい。
この製造方法では、処理の際に、チャンバー42の内部に公知の添加剤を適宜の割合で配合してもよい。また、液状組成物3aに、公知の添加剤を適宜の割合で配合してもよい。
なお、得られた粒子集合物粉体に公知の添加剤を適宜の割合で配合することにより、粒子集合物粉体を含有する粒子組成物を得ることもできる。粒子組成物における粒子集合物粉体の含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、85質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上であり、また、100質量%を下回る。
公知の添加剤としては、例えば、難燃剤、分散剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、フッ素系界面活性剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤、触媒、例えば、窒化ホウ素粒子以外の無機粒子などが挙げられる。
これら粒子集合物粉体および粒子組成物は、種々の用途に使用することができ、例えば、シート成形用途に使用することができる。より好ましくは、熱伝導性シートを成形する用途に、すなわち、熱伝導性シート成形用粒子集合物粉体、および、熱伝導性シート成形用組成物として使用することができる。
次いで、この方法では、得られた粒子集合物粉体を、熱プレスする。
具体的には、粒子集合物粉体(粒子集合物粉体をロール圧延処理した場合は、プレシート)を、プレス機により、熱プレスする。なお、熱プレス機は、加熱および移動可能な台座と、台座の上に間隔を隔てて対向配置された天板とを備えており、プレス時には、台座が天板まで移動可能なように構成されている。
そして、必要により2枚の離型フィルムの間に粒子集合物粉体を挟み、その粒子集合物粉体を、加熱された台座の上に載置し、次いで、台座を上方に移動させることにより、粒子集合物粉体を台座と天板とによって圧縮する。
熱プレスの条件は、加熱温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、170℃以下、好ましくは、150℃以下でもある。圧力は、例えば、0.5MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上であり、また、例えば、100MPa以下、好ましくは、75MPa以下、より好ましくは、50MPa以下でもある。プレス時間は、例えば、0.1分間以上、好ましくは、1分間以上であり、また、例えば、200分間以下、好ましくは、100分間以下、より好ましくは、30分間以下、さらに好ましくは、15分間以下でもある。
さらに好ましくは、粒子集合物粉体を真空熱プレスする。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、1Pa以上、好ましくは、5Pa以上であり、また、例えば、100Pa以下、好ましくは、50Pa以下であり、温度、圧力および時間は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
離型フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、例えば、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体など)からなるフッ素系フィルム、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)からなるオレフィン系樹脂フィルム、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)、例えば、上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙などの紙類、例えば、これらを複層化した複合体などが挙げられる。
離型フィルムの厚さは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、500μm以下である。
なお、熱プレスにおいて、必要に応じて所望厚みのスペーサを粒子集合物粉体の周囲に枠状に配置することによって、スペーサと実質的に同一厚みの熱伝導性シートを得ることができる。
なお、第3実施形態の製造方法では、好ましくは、熱プレスの前に、粒子集合物粉体を2本ロールなどにより圧延してシート状(プレシート)にする(ロール圧延工程)。
ロール圧延工程における圧延条件は、ロールの加熱温度が、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、80℃以下でもある。ロールの回転速度は、例えば、0.1rpm以上、好ましくは、0.5rpm以上であり、また、例えば、10rpm以下、好ましくは、5rpm以下でもある。
ロール圧延工程は、繰り返し実施してもよい。すなわち、粒子集合物粉体をロール圧延工程(1回目)によりプレシートに成形し、さらに、そのプレシートに、2回目以降のロール圧延工程を実施してもよい。ロール圧延工程の回数は、例えば、1回以上、好ましくは、2回以上であり、また、例えば、10回以下、好ましくは、5回以下でもある。ロール圧延工程の回数を調整することにより、熱伝導性シートのタック力や熱伝導率を調整することができる。
なお、ニ本ロールにおいては、2本のロールが、間隔(例えば、10~1000μm)を隔てて、各ロールの軸が並行するように、配置されている。なお、各ロールの上流側には、粒子集合物粉体を上記した間隔に案内するための板状のガイドがそれぞれ設けられている。各ガイドは、互いに間隔(例えば、1~50cm)を隔てて配置されている。
また、上記した各ロールの間隔には、2枚の離型フィルムを、粒子集合物粉体を挟み込むように、設けることもできる。
これにより、熱伝導性シート1を得ることができる。なお、第3実施形態では、粒子集合物粉体を用いて熱伝導性シートを製造しているが、粒子組成物を用いる場合も同様の条件にて製造することができる。
熱伝導性シート1は、樹脂成分がエポキシ樹脂またはエポキシ基を含むゴムを含有する場合には、上記した熱プレスによって半硬化状態(Bステージ状態)のシートとして得られる。
そして、このようにして得られた熱伝導性シート1において、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが、熱伝導性シート1の厚み方向TDに交差(直交)する面方向PDに沿って配向している。窒化ホウ素粒子2の配向角度αは、第1実施形態の熱伝導性シートと同様である。
窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが熱伝導性シート1の面方向PDに成す角度の算術平均の絶対値(熱伝導性シート1に対する)は、例えば、30度以下、好ましくは、25度以下、さらに好ましくは、20度以下であり、通常、0度以上である。
これにより、熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、20W/m・K以上、最も好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向PDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向PDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
また、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.3W/m・K、好ましくは、0.5W/m・K、より好ましくは、0.8W/m・K以上、さらに好ましくは、1W/m・K以上、とりわけ好ましくは、1.2W/m・K以上であり、また、例えば、20W/m・K以下である。
熱伝導性シート1は、ガラスエポキシ基板に対して、40℃以上(好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上)の温度領域で、350g/(直径2cm)以上、好ましくは、650g/(直径2cm)以上、より好ましくは1000g/(直径2cm)以上、さらに好ましくは、1300g/(直径2cm)以上、とりわけ好ましくは1500g/(直径2cm)以上、最も好ましくは2000g/(直径2cm)以上であり、また、例えば、50000g/(直径2cm)以下であるタック力を有する。40℃以上におけるタック力が上記範囲であることにより、熱伝導性シート1は、初期密着性に優れる。
また、熱伝導性シート1は、例えば、90℃の温度領域で、500g/(直径2cm)以上、好ましくは1200g/(直径2cm)以上、より好ましくは、1300g/(直径2cm)以上、さらに好ましくは1500g/(直径2cm)以上、とりわけ好ましくは2000g/(直径2cm)以上であり、例えば、50000g/(直径2cm)以下であるタック力を有する。さらに、例えば、60℃以下の温度領域で、50g/(直径2cm)以上、好ましくは60g/(直径2cm)以上、より好ましくは、100g/(直径2cm)以上、さらに好ましくは200g/(直径2cm)以上、とりわけ好ましくは650g/(直径2cm)以上のタック力を有する。さらに、例えば、25℃以下の温度領域で、50g/(直径2cm)以下、好ましくは30g/(直径2cm)以下、より好ましくは、20g/(直径2cm)以下、さらに好ましくは10g/(直径2cm)以下のタック力を有する。このような範囲におけるタック力を備えることにより、熱伝導性シート1は、常温での取扱い性に優れ、加温や加圧によって初期密着が可能なため、その後の硬化処理での接着性がより一層優れる。
タック力は、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)を用い、短針の先端(直径20mm)に熱伝導性シートの一方面を接着し、他方面をガラスエポキシ板に接着させ、次いで、熱電性シートとガラスエポキシ基板を引き剥がしたときの最大荷重を測定することにより、得られる。より詳細は、実施例にて後述される。
熱伝導性シート1の厚みは、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下、より好ましくは、500μm以下であり、また、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上である。
熱伝導性シート1における窒化ホウ素粒子2の質量基準の配合割合は、熱伝導性シートに対して、60質量%以上であり、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、75質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、93質量%以下、より好ましくは、90質量%以下である。
窒化ホウ素粒子2の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子同士の熱伝導パスが形成されないため熱伝導性シート1において面方向PDの熱伝導性が低下する場合がある。また、窒化ホウ素粒子2の含有割合が上記した範囲を超える場合には、熱伝導性シート1の成形性が低下する場合がある。
そして、この熱伝導性シート1は、板状の窒化ホウ素粒子を含有し、窒化ホウ素粒子ガラスの含有割合が、60質量%以上であり、面方向における熱伝導率が、4W/m・K以上である。そのため、面方向の熱伝導性に優れている。よって、面方向の熱伝導性に優れた熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。被覆対象は、第1実施形態で挙げた被覆対象(放熱対象)と同様のものが挙げられる。
また、この熱伝導性シート1では、40℃以上の温度領域において、350g/直径2cm以上となるタック力を有するため、初期接着性に優れる。
また、この熱伝導性シートは、エポキシ樹脂を含有する。そのため、被着体への初期接着性がより一層良好となる。
また、この熱伝導性シートは、ゴムを含有する。そのため、凹凸追従性に優れる。
また、熱伝導性シートを成形するための粒子集合物粉体は、窒化ホウ素粒子と、前記窒化ホウ素粒子の表面を被覆する樹脂成分とを備える樹脂被覆窒化ホウ素粒子を含有し、TOF-SIMS分析による樹脂寄与イオン種/窒化ホウ素寄与イオン種比率が、0.4以上である。そのため、初期接着力の優れた熱伝導性シートをより確実に製造することができる。
また、この粒子集合物粉体は、板状の窒化ホウ素粒子を空中で滞留させながら、窒化ホウ素粒子に樹脂成分を噴霧することにより製造される。そのため、初期接着力の優れた熱伝導性シートを形成できる粒子集合物粉体を確実に製造することができる。
また、この熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子を空中で滞留させながら、前記窒化ホウ素粒子に樹脂成分を噴霧することにより、粒子集合物粉体を得、次いで、その粒子集合物粉体を加熱しながらプレスすることにより製造される。そのため、初期接着力の優れた熱伝導性シートを得ることができる。
なお、従来からの課題として、熱伝導性シートの熱伝導性をより向上するためには、窒化ホウ素粒子の含有割合を増加させる方法が有効であるが、従来の製造方法で得られる熱伝導性シートでは、窒化ホウ素粒子の含有割合を増加させると、熱伝導性シートの表面に存在する樹脂(例えば、エポキシ樹脂)の割合が低下する。そのため、熱伝導性シートを電子部品などの被着物に貼着した初期において、熱伝導性シートは、被着物に対して接着しにくくなるという不具合がある。
そして、第3実施形態の熱伝導性シートは、上記した通り、この課題を解決することができる。すなわち、第3実施形態は、初期接着性に優れる熱伝導性シートである。
(第4実施形態)
第3実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態の熱伝導性シートを一部に含むものであって、第4実施形態の熱伝導性シートは、例えば、熱伝導性粒子とポリマーマトリクスとしての樹脂成分とを含有している。
熱伝導性粒子は、熱伝導性材料から粒子状に形成されており、そのような熱伝導性材料としては、例えば、無機材料が挙げられる。
無機材料としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。これら無機材料は、第1実施形態で上記した他の無機粒子(ただし、窒化ホウ素粒子も含める)と同様のものが挙げられる。
これら無機材料のうち、熱伝導性の観点から、好ましくは、窒化ホウ素を含む窒化物が挙げられ、さらに好ましくは、窒化ホウ素が挙げられる。
熱伝導性粒子の形状は、粒子状(粉末状)であれば特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状(あるいは鱗片状)であってもよい。好ましくは、板状である。
板状の窒化ホウ素としては、第1実施形態と同様のものが挙げられる。
樹脂成分は、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれを含有することもでき、好ましくは、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂としては、第3実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
樹脂成分は、好ましくは、エポキシ樹脂とともに、硬化剤を含有する。
硬化剤は、第1実施形態で挙げたものと同様のものが挙げられる。
硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、300質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下でもある。
また、エポキシ樹脂と硬化剤との組合せとしては、好ましくは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との組み合わせ、より好ましくは、常温液状エポキシ樹脂および常温固体樹脂とフェノール樹脂との組合せ、さらに好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂とフェノール樹脂、とりわけ好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂およびジシクロ環型エポキシ樹脂とフェノール・アラルキル樹脂との組合せである。これにより、熱伝導性シートは、40℃以上の温度領域において、125%以上となる破断ひずみをより確実に備えることとなり、クラックがより好適に抑制され、かつ凹凸追従性に優れる。
樹脂成分には、硬化剤とともに、硬化促進剤を含有することもできる。樹脂成分が、硬化促進剤(好ましくは、イミダゾール化合物)を含有することにより、低温硬化がより確実に可能となる。
硬化促進剤としては、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下でもある。
樹脂成分は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の他に、熱伝導性シートの凹凸追従性の観点から、好ましくは、ゴムを含有する。
ゴムとして、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられ、好ましくは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリルゴムが挙げられる。
ゴムをゴム溶液として調製する場合、ゴムの配合割合(固形分割合)は、ゴム溶液に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下でもある。
ゴムの配合割合は、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下でもある。
また、樹脂成分は、例えば、難燃剤、分散剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、フッ素系界面活性剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で含有することもできる。
樹脂成分の配合割合は、熱伝導性粒子100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、25質量部以下である。
上記で記載した配合割合以外の各種材料の配合割合は、第1実施形態の各種材料の配合割合と同様である。
次に、第4実施形態の熱伝導性シートの一実施形態を製造する方法について、説明する。
第4実施形態の熱伝導性シートの製造方法は、第1実施形態で上記したものと同様の製造方法が挙げられる。
なお、第4実施形態では、転動流動造粒法によって、熱伝導性組成物を調製することもできる。
具体的には、熱伝導性粒子(好ましくは、板状の窒化ホウ素粒子)を空中で滞留させながら、熱伝導性粒子に、樹脂成分を噴霧することにより、樹脂成分が熱伝導性粒子の表面に被覆した樹脂被覆熱伝導性粒子を含有する熱伝導性組成物を得る。このような転動流動造粒法により熱伝導性組成物を調製することにより、粉末の表面が樹脂成分で覆われるため、樹脂の特性を発現しやすくなり、具体的には、熱伝導性シートの加温時の伸びが良好になるため、凹凸追従性が良好となる。
樹脂成分は、好ましくは、溶媒に分散又は溶解させた液状組成物(ワニス)として用いる。すなわち、好ましくは、熱伝導性粒子を空中で滞留させながら、液状組成物を熱伝導性粒子に噴霧する。
溶媒や液状組成物は、第3実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
転動流動造粒法における装置(図9に示す転動流動コーティング装置)および条件などは、第3実施形態に挙げられた装置や条件と同様である。
次いで、この方法では、転動流動造粒法によって、得られた熱伝導性組成物を熱プレスする。熱プレスにおける装置や条件などは、第3実施形態に挙げられた装置や条件と同様である。
そして、好ましくは、熱プレスの前に、熱伝導性組成物を2本ロールなどにより圧延してシート状(プレシート)にする(ロール圧延工程)。
ロール圧延工程は、第3実施形態で上記したロール圧延工程と同様のものである。ロール圧延工程の回数を調整することにより、熱伝導性シートの破断ひずみや熱伝導率を調整することができる。
これにより、図1に示されるように、熱伝導性シート1を得ることができる。
熱伝導性シート1は、樹脂成分がエポキシ樹脂またはエポキシ基を含むゴムを含有する場合には、上記した熱プレスによって半硬化状態(Bステージ状態)のシートとして得られる。
そして、このようにして得られた熱伝導性シート1において、好ましくは、熱伝導性粒子(好ましくは、板状の窒化ホウ素粒子2)の長手方向LDが、熱伝導性シート1の厚み方向TDに交差(直交)する面方向PDに沿って配向している。熱伝導性粒子の配向角度αは、第1実施形態の窒化ホウ素粒子2の配合角度αと同様である。
熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、20W/m・K以上、最も好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
熱伝導性シート1の面方向PDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向PDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向PDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
また、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.3W/m・K以上、好ましくは、0.5W/m・K以上、より好ましくは、0.8W/m・K以上、さらに好ましくは、1W/m・K以上、とりわけ好ましくは、1.2W/m・K以上であり、また、通常、20W/m・K以下である。
また、このようにして得られた熱伝導性シート1は、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上80℃未満、特に好ましくは、60℃以上70℃未満)の温度領域において、125%以上となる熱伝導性シート1の面方向PD(厚み方向と直交する方向)の破断ひずみを有する。好ましくは、140%以上、より好ましくは、150%以上、さらに好ましくは、160%以上、とりわけ好ましくは、170℃以上、最も好ましくは、180%以上であり、また、例えば、1000%以下である面方向PDの破断ひずみを有する。面方向PDの破断ひずみが40℃以上の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、熱伝導性シート1が十分に伸びることができるため、凹凸追従性に優れる。
好ましくは、上記の温度領域全範囲にわたって、面方向PDの破断ひずみが、125%以上である。すなわち、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上80℃未満、特に好ましくは、60℃以上70℃未満)の温度領域における面方向PDの破断ひずみが、好ましくは、125%以上、より好ましくは、140%以上、さらに好ましくは、150%以上、とりわけ好ましくは、160%以上、とりわけ好ましくは、170℃以上、最も好ましくは、180%以上である。また、例えば、1000%以下である。この範囲とすることにより、凹凸追従性を確実に向上させることができる。
また、熱伝導性シート1は、40℃未満(好ましくは、0℃以上40℃未満、より好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域において、好ましくは、125%未満となる面方向PDの破断ひずみを有する。好ましくは、120%未満、より好ましくは、110%未満、さらに好ましくは、115%未満であり、また、例えば、100%以上でもある。面方向PDの破断ひずみが40℃未満の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、常温における熱伝導性シートの厚みを確実に維持できるため、常温における熱伝導性シート1の取扱い性に優れる。
さらには、25℃以下(好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域における面方向PDの破断ひずみが、好ましくは、125%未満、より好ましくは、120%未満、さらに好ましくは、110%未満、とりわけ好ましくは、115%未満であり、また、例えば、100%以上でもある。面方向PDの破断ひずみが上記の範囲を満たす場合、すなわち、上記の温度領域全範囲において熱伝導性シート1が125%以上の面方向PDの破断ひずみを有さない場合、熱伝導性シート1の取扱い性はさらに向上する。
なお、熱伝導性シート1の面方向PDの破断ひずみは、恒温槽付属の万能引張圧縮試験(TG-10kN、ミネベア社製、ロードセルTT3D-1kN)により測定することができる。より詳細は、実施例にて後述する。
熱伝導性シート1は、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上80℃未満、さらに好ましくは、60℃以上70℃未満)の温度領域において、好ましくは、400N/mm2以下となる面方向PDの弾性率を有する。好ましくは、300N/mm2以下、より好ましくは、200N/mm2以下、さらに好ましくは、180N/mm2以下、とりわけ好ましくは、120N/mm2以下、最も好ましくは、70N/mm2以下となり、また、例えば、1N/mm2以上の面方向PDの弾性率を有する。面方向PDの弾性率が40℃以上の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、シートが十分に伸びる適度な固さとなるため、凹凸追従性に優れる。
熱伝導性シート1を面方向に引っ張った場合における面方向PDの弾性率は、特に好ましくは、上記の温度領域全範囲にわたって、400N/mm2以下である。すなわち、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上80℃未満、さらに好ましくは、60℃以上70℃未満)の全温度領域における面方向PDの弾性率は、好ましくは、300N/mm2以下、より好ましくは、200N/mm2以下、さらに好ましくは、180N/mm2以下、とりわけ好ましくは、120N/mm2以下、最も好ましくは、70N/mm2以下である。また、例えば、1N/mm2以上である。この範囲とすることにより、凹凸追従性を確実に向上させることができる。
熱伝導性シート1において、25℃以下(好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域における面方向PDの弾性率は、好ましくは、500N/mm2以上、より好ましくは、700N/mm2以上、さらに好ましくは、800N/mm2以上、とりわけ好ましくは、1000N/mm2以上であり、また、例えば、100000N/mm2以下でもある。面方向PDの弾性率が上記の範囲を満たす場合、常温(例えば、25℃)における熱伝導性シートの厚みを確実に維持できるため、常温における熱伝導性シート1の取扱い性に優れる。
なお、熱伝導性シート1の面方向PDの弾性率は、恒温槽付属の万能引張圧縮試験(TG-10kN、ミネベア社製、ロードセルTT3D-1kN)により測定することができる。
また、熱伝導性シート1は、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上80℃未満、特に好ましくは、60℃以上70℃未満)の温度領域において、1.5mm/(200μm)以上となる熱伝導性シート1の厚み方向TDの伸びを有する。好ましくは、1.6mm/(200μm)以上、より好ましくは、1.7mm/(200μm)以上、さらに好ましくは、1.8mm/(200μm)以上、とりわけ好ましくは、1.9mm/(200μm)以上、最も好ましくは、2.0mm/(200μm)以上であり、また、例えば、5.0mm/(200μm)以下である厚み方向TDの伸びを有する。厚み方向TDの伸びが40℃以上の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、熱伝導性シート1が十分に伸びることができるため、凹凸追従性に優れる。
好ましくは、上記の温度領域全範囲にわたって、厚み方向TDの伸びが、1.0mm/(200μm)以上である。すなわち、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上100℃未満、さらに好ましくは、60℃以上90℃未満、とりわけ好ましくは、70℃以上90℃未満、)の温度領域における厚み方向TDの伸びが、好ましくは、1.0mm/(200μm)以上、より好ましくは、1.4mm/(200μm)以上、さらに好ましくは、1.5mm/(200μm)以上、とりわけ好ましくは、1.6mm/(200μm)以上、とりわけ好ましくは、1.7mm/(200μm)以上、最も好ましくは、2.0mm/(200μm)以上である。また、例えば、5.0mm/(200μm)以下である。この範囲とすることにより、凹凸追従性を確実に向上させることができる。
また、熱伝導性シート1は、40℃未満(好ましくは、0℃以上40℃未満、より好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域において、好ましくは、1.6mm/(200μm)未満となる厚み方向TDの伸びを有する。好ましくは、1.3mm/(200μm)未満、より好ましくは、1.1mm/(200μm)未満、さらに好ましくは、1.01mm/(200μm)未満であり、また、例えば、0.01mm/(200μm)以上でもある。厚み方向TDの伸びが40℃未満の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、常温における熱伝導性シートの厚みを確実に維持できるため、常温における熱伝導性シート1の取扱い性に優れる。
さらには、25℃以下(好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域における厚み方向TDの伸びが、好ましくは、1.5mm/(200μm)未満、より好ましくは、1.3mm/(200μm)未満、さらに好ましくは、1.1mm/(200μm)未満、とりわけ好ましくは、1.01mm/(200μm)未満であり、また、例えば、0.01mm/(200μm)以上でもある。厚み方向TDの伸びが上記の範囲を満たす場合、すなわち、上記の温度領域全範囲において熱伝導性シート1が1.5mm/(200μm)以上の厚み方向TDの伸びを有さない場合、熱伝導性シート1の取扱い性はさらに向上する。
なお、熱伝導性シート1の厚み方向TDの伸びは、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)により測定することができる。より詳細は、実施例にて後述する。
また、熱伝導性シート1は、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上100℃未満、さらに好ましくは、60℃以上100℃未満、とくに好ましくは、70℃以上90℃未満)の温度領域において、好ましくは、11MPa以下となる厚み方向TDの弾性率を有する。好ましくは、5MPa以下、より好ましくは、2MPa以下、さらに好ましくは、1.5MPa以下、とりわけ好ましくは、1.0MPa以下となり、また、例えば、0.3MPa以上の厚み方向TDの弾性率を有する。厚み方向TDの弾性率が40℃以上の少なくともいずれかの温度範囲内において上記の範囲を満たす場合、シートが十分に伸びる適度な固さとなるため、凹凸追従性に優れる。
熱伝導性シート1を厚み方向に短針を突き刺した場合における厚み方向TDの弾性率は、特に好ましくは、上記の温度領域全範囲にわたって、11MPa以下である。すなわち、40℃以上(好ましくは、40℃以上100℃未満、より好ましくは、50℃以上100℃未満、さらに好ましくは、60℃以上100℃未満、とくに好ましくは、70℃以上90℃未満)の全温度領域における厚み方向TDの弾性率は、好ましくは、9MPa以下、より好ましくは、7MPa以下、さらに好ましくは、3MPa以下、とりわけ好ましくは、2MPa以下、最も好ましくは、1.1MPa以下である。また、例えば、0.3MPa以上である。この範囲とすることにより、凹凸追従性を確実に向上させることができる。
熱伝導性シート1において、25℃以下(好ましくは、0℃以上25℃以下)の温度領域における厚み方向TDの弾性率は、好ましくは、4MPa以上、より好ましくは、7MPa以上、さらに好ましくは、8MPa以上、とりわけ好ましくは、10MPa以上であり、また、例えば、100MPa以下でもある。厚み方向TDの弾性率が上記の範囲を満たす場合、常温(例えば、25℃)における熱伝導性シートの厚みを確実に維持できるため、常温における熱伝導性シート1の取扱い性に優れる。
なお、熱伝導性シート1の厚み方向に短針を突き刺した場合の厚み方向TDの弾性率は、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)により測定することができる。
熱伝導性シート1は、好ましくは、低温で硬化可能である。すなわち、熱伝導性シート1は、低温度で加熱することにより、完全硬化状態(Cステージ状態)となる。硬化可能な温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、90℃以下であり、また、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上である。加熱時間は、例えば、3分間以上、好ましくは、5分間以上であり、また、例えば、100時間以下、好ましくは、80時間以下、より好ましくは、50時間以下、さらに好ましくは、25時間以下でもある。熱伝導性シートを低温硬化可能とすることにより、被覆対象に熱伝導性シート1を被覆し、熱伝導性シート1を熱硬化させる場合に、被覆対象に対する熱負荷が抑制される。
熱伝導性シート1の厚みは、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下、より好ましくは、500μm以下であり、通常、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上である。
また、熱伝導性シート1における熱伝導性粒子の質量基準の配合割合は、熱伝導性シート1に対して、例えば、60質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、75質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、98質量%以下、好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、90質量以下である。
熱伝導性粒子の配合割合が上記した範囲に満たす場合には、熱伝導性粒子同士の熱伝導パスがより形成されるため、熱伝導性シート1において面方向PDの熱伝導性が良好となる。また、熱伝導性シート1の成形性も良好となる。
熱伝導性シート1の絶縁破壊電圧(測定方法は後述する)は、例えば、10kV/mm以上であり、好ましくは、20kV/mm以上、より好ましくは、30kV/mm以上、さらに好ましくは、40kV/mm以上であり、また、例えば、200kV/mm以下でもある。
そして、この熱伝導性シート1は、面方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であるため、面方向の熱伝導性に優れている。そのため、面方向の熱伝導性に優れる熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。
また、この熱伝導性シート1では、40℃以上の温度領域において、125%以上となる破断ひずみを有するため、凹凸追従性に優れる。
この熱伝導性シート1が貼着または被覆する対象は、第1実施形態で挙げた被覆対象(放熱対象)と同様のものが挙げられる。
なお、従来からの課題として、熱伝導性シートには、用途および目的によって、面方向における高い熱伝導性が要求される場合もある。また、熱伝導性シートは、表面に凹凸(電子部品)がある実装基板に対して使用され、その場合には、熱伝導性シートの表面にクラック(ひび割れ)が発生することなく凹凸の表面や側面に追従する性能(凹凸追従性)が要求されている。
そして、第4実施形態の熱伝導性シートは、上記した通り、この課題を解決することができる。すなわち、第4実施形態は、面方向の熱伝導性および凹凸追従性に優れる熱伝導性シートである。
(第5実施形態)
第5実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態の熱伝導性シートを一部に含むものであって、第5実施形態の熱伝導性シートは、熱伝導層(図10の符号1a参照)と、その熱伝導層の少なくとも一方面に積層される接着剤層(図10の符号5参照)とを備える。
熱伝導層は、シート形状に形成されており、窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有している。熱伝導層は、例えば、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
窒化ホウ素粒子としては、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
ゴム成分としては、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられ、好ましくは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリルゴムが挙げられる。
ゴム成分の配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、さらに好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは、15質量部以下でもある。
熱伝導層には、樹脂、好ましくは、エポキシ樹脂を含有することもできる。
エポキシ樹脂としては、第1実施形態で上記したものと同様のモノが挙げられ、好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂、さらに好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、とりわけ好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。また、好ましくは、脂環式エポキシ樹脂も挙げられ、さらに好ましくは、ジシクロ環型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂の配合割合は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、さらに好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは、10質量部以下でもある。
エポキシ樹脂のゴム成分に対する体積配合比(エポキシ樹脂の体積部数/ゴム成分の体積部数)は、例えば、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、99以下、好ましくは、90以下、さらに好ましくは、19以下でもある。
熱伝導層には、エポキシ樹脂とともに硬化剤を含有することもできる。
硬化剤としては、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられ、好ましくは、イミダゾール化合物、より好ましくは、イソシアヌル酸付加物が挙げられる。
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であり、また、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下でもある。
上記で記載した配合割合以外の各種材料の配合割合は、第1実施形態の各種材料の配合割合と同様である。
熱伝導層の製造方法は、第1実施形態で上記した製造方法と同様の製造方法が挙げられる。
そして、このようにして得られた熱伝導層1aにおいて、図10およびその部分拡大模式図に示すように、窒化ホウ素粒子2の長手方向LDが、熱伝導層1a(つまり、熱伝導性シート1)の厚み方向TDに交差(直交)する面方向PDに沿って配向している。窒化ホウ素粒子の配向角度αは、第1実施形態と同様である。
これにより、熱伝導層1aの面方向PDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、さらに好ましくは、10W/m・K以上、とりわけ好ましくは、15W/m・K以上、最も好ましくは、20W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。熱伝導層1aの面方向PDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向PDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向PDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
また、熱伝導層1aの厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.5W/m・K、好ましくは、0.8W/m・K以上、さらに好ましくは、1W/m・K以上であり、また、例えば、15W/m・K以下、好ましくは、12W/m・K以下、さらに好ましくは、10W/m・K以下である。
得られた熱伝導層1aの厚みは、例えば、2000μm以下、好ましくは、800μm以下、さらに好ましくは、600μm以下、とりわけ好ましくは、400μm以下であり、また、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上でもある。
接着剤層5は、図1に示すように、熱伝導層1aの下面全面に形成されている。
接着剤層5は、加熱により接着剤層内の成分が硬化することにより、接着剤層と、それに接触する被覆対象との接着力を高める層である。また、例えば、上記接着剤層は、常温で付着力があり、仮固定ができてもよく、また、常温では付着力が無くとも、加熱により接着剤層が一旦溶融して付着力を発現してもよい。
接着剤層5は、例えば、ゴム成分を含有している。ゴム成分を含有することにより、接着剤層5における被覆対象への凹凸追従性を向上させることができる。
ゴム成分は、熱伝導層1aのゴム成分と同様のものが挙げられる。好ましくは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、SBR、NBR、スチレン・イソブチレンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリルゴム、NBRが挙げられる。
特に、これらのゴム成分は、熱伝導層1aのゴム成分と同様に、官能基を含んでいてもよい。官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミド基などが挙げられ、好ましくは、カルボキシル基、エポキシ基、より好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。粘着剤層6がこのようなゴム成分を含有することにより、常温(25℃)での仮固定性などが良好となる。
接着剤層5におけるゴム成分の配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下でもある。
接着剤層5には、必要に応じて、樹脂成分(好ましくは、エポキシ樹脂)を含有することができる。さらには、硬化剤および/または硬化促進剤を含有することもできる。好ましくは、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含有する。これらを含有することにより、例えば、常温で被覆対象に仮固定することができ、かつ、低温(例えば、100℃以下での加熱)で被覆対象に接着することができる。
エポキシ樹脂は、熱伝導層1aのエポキシ樹脂と同様のものが挙げられ、好ましくは、芳香族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、さらに好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂が挙げられる。
接着剤層5におけるエポキシ樹脂の配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、98質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下でもある。
硬化剤としては、熱伝導層1aの硬化剤と同様のものが挙げられ、好ましくは、フェノール・アラルキル樹脂が挙げられる。
接着剤層5における硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、さらに好ましくは、100質量部以下でもある。
硬化促進剤としては、熱伝導層1aの硬化促進剤と同様のものが挙げられ、好ましくは、イミダゾール化合物、さらに好ましくは、イソシアヌル酸付加物が挙げられる。
接着剤層5における硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下でもある。
接着剤層5は、そのほか、熱伝導層1aにおいて必要に応じて添加される重合開始剤、分散剤、難燃付与剤、レベリング剤、粘着付与剤、無機粒子などの添加剤を含有することもできる。
次に、接着剤層5を形成する方法について、説明する。
この方法では、まず、上記した各成分を上記した配合割合で配合して、攪拌混合することにより、接着剤組成物を調製する。
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合する。
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した硬化剤が溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
この接着剤組成物の固形分量は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、40質量%以下でもある。
次いで、アプリケータなどにより、離型フィルムに接着剤組成物を塗布する。
塗布するときの接着剤層の厚み(乾燥前)は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下でもある。
次いで、乾燥機で、溶媒を除去することにより、離型フィルムに積層された接着剤層を得ることができる。
乾燥温度は、例えば、常温以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下でもある。
乾燥時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、2時間以下でもある。
これにより、離型フィルムの上に形成された接着剤層5を得ることができる。
このようにして得られた接着剤層5の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、30μm以下であり、また、例えば、100nm以上、好ましくは、1μm以上でもある。
接着剤層5は、好ましくは、被覆対象に接触させる初期において感圧により接着可能な感圧性の粘着性を有する接着剤層(粘接着剤層)である。
そして、熱伝導性シート1を得るには、熱伝導層1aおよび接着剤層5を用意し、接着剤層5を熱伝導層1aの表面に積層する。
より具体的には、例えば、接着剤層5と熱伝導層1aとを平面視で同一になるように重ね合わせ、厚み方向内側に向かって ハンドローラーなどにより圧力を均一に加える。
なお、このとき、好ましくは、加温しながら積層する。例えば、加温温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
これにより、熱伝導性シート1を得ることができる。
熱伝導性シート1は表面に積層された接着剤層5を有し、好ましくは、被覆対象に接触させる初期において感圧により接着可能な感圧性の粘着性を有する。
具体的には、熱伝導性シート1の接着剤層5の仮固定における剥離接着力が、例えば、ガラスエポキシ基板に対して、例えば、0℃以上、好ましくは、0℃~50℃、より好ましくは、10℃~40℃、さらに好ましくは、20℃~30℃、とりわけ好ましくは25℃の温度領域で、100g/(直径1cm)以上、好ましくは、300g/(直径1cm)以上、より好ましくは500g/(直径1cm)以上、さらに好ましくは、650g/(直径1cm)以上であり、また、例えば、20000g/(直径1cm)以下、より好ましくは、10000g/(直径1cm)以下であるタック力を有する。0℃~50℃におけるタック力が100g/(直径1cm)以上であることにより、熱伝導性シート1の接着剤層5が被覆対象に対して適度に滑りにくくなり、仮固定が容易となる。一方、20000g/(直径1cm)以下とすることにより、接着剤層5と被覆対象とを容易に引き剥がすことができる。
さらに、熱伝導性シート1は、ガラスエポキシ基板に対して、0℃以上、(好ましくは、20℃以上、より好ましくは、40℃以上、さらに好ましくは、60℃以上)の温度領域で、650g/(直径1cm)以上、好ましくは、900g/(直径1cm)以上、より好ましくは1000g/(直径1cm)以上、さらに好ましくは、1200g/(直径1cm)以上、とりわけ好ましくは1500g/(直径1cm)以上であり、また、例えば、20000g/(直径1cm)以下、より好ましくは、10000g/(直径1cm)以下であるタック力を有する。0℃以上におけるタック力が上記範囲であることにより、熱伝導性シート1は、仮接着性に優れる。
また、熱伝導性シート1は、例えば、ガラスエポキシ基板に対して、70℃の温度領域で、650g/(直径1cm)以上、好ましくは、1000g/(直径1cm)以上、より好ましくは1500g/(直径1cm)以上であり、また、例えば、20000g/(直径1cm)以下、より好ましくは、10000g/(直径1cm)以下であるタック力を有する。70℃におけるタック力が上記範囲であることにより、熱伝導性シート1は、仮接着性に優れる。
熱伝導性シート1は、仮接着性に優れているため、仮接着した後に部品を別の場所へ運搬する際の振動や、他の部品との接触に対しても剥がれることなく、被着対象に仮接着させることができる。
なお、タック力は、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)を用い、その短針の先端(直径10mm)に熱伝導性シート1の熱伝導層1a側を固定し、接着剤層5をガラスエポキシ板に押下接触させ、次いで、熱伝導性シート1の接着剤層5とガラスエポキシ基板とを引き剥がしたときの最大荷重を測定することにより、得られる。より詳細は、実施例にて後述する。
熱伝導性シート1の絶縁破壊電圧(測定方法は後述する)は、例えば、10kV/mm以上であり、好ましくは、30kV/mm以上、より好ましくは、50kV/mm以上、さらに好ましくは、60kV/mm以上であり、また、例えば、200kV/mm以下でもある。このような範囲の絶縁破壊電圧を備える熱伝導性シート1を用いれば、電子部品の配線をまたいで使用することができる。
熱伝導性シート1を、接着剤層5と被覆対象の表面とが接触するように、被覆対象に接触させ、加熱により接着剤層5を熱硬化させる(Cステージ状態とする)ことにより、熱伝導性シート1と被覆対象とを接着させることができる。
接着剤層5を熱硬化させるには、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、60℃以上、さらに好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下、より好ましくは、150℃以下、さらに好ましくは、120℃以下の温度で、例えば、10秒間以上、好ましくは、1分間以上、さらに好ましくは、5分間以上、また、例えば、10日間以下、好ましくは、7日間以下、さらに好ましくは、3日間以下の時間で、熱伝導性シートを加熱する。
そして、この熱伝導性シート1は、熱伝導層1aの面方向PDの熱伝導率が、4W/m・K以上であるので、面方向PDの熱伝導性に優れている。そのため、面方向PDの熱伝導性に優れる熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。
また、熱伝導性シート1は、窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有している。そのため、熱伝導性シート1を、表面に凹凸がある被覆対象に被覆する場合、その凹凸の表面に追従して熱伝導性シート1および接着剤層5がともに伸びることにより、熱伝導性シート1で覆いきれない隙間を接着剤層5で包埋できるので、被覆対象としての放熱対象を確実に被覆することができ、放熱対象が発生する熱を窒化ホウ素粒子によって、より確実に伝導させることができる。
また、熱伝導性シート1は、接着剤層5を備えているため、表面の凹凸の高さが異なる放熱対象に熱伝導性シート1を被覆した後も、放熱対象と熱伝導性シート1とが剥離しにくい。その結果、剥離による熱の伝導性能の劣化を抑止できる。
また、接着剤層5が粘接着剤層であるため、被覆対象に仮固定することができる。そのため、熱伝導性シート1と被覆対象とを位置決めし、仮固定後に再度剥離して位置決めし直すことができる。その結果、リワーク性に優れる。
また、接着剤層5がゴム成分を含有するため、より確実に、被覆対象の凹凸に追従して被覆することができる。
また、接着剤層5が、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含有するため、熱伝導性シートと被覆対象とを加熱により接着するときに、より低い温度で接着することができる。このため、被覆対象への熱による損傷を低減することができる。
この熱伝導性シート1が貼着または被覆する対象は、第1実施形態で挙げた被覆対象(放熱対象)と同様のものが挙げられる。
なお、第5実施形態は、接着剤層5が熱伝導層1aの厚み方向一方面に積層されているが、図11Aが参照されるように、接着剤層5を熱伝導層1aの厚み方向一方面および他方面に積層することもできる。
また、図11Bが参照されるように、接着剤層5を、ベース基材7の厚み方向一方面および他方面に接着剤層5が積層された基材付き接着剤層8に変更することもできる。これにより、熱伝導性シートの強度を向上させることができる。
ベース基材7は、例えば、その表面が離型処理されていない平板状のシートである。
ベース基材7の材料は、例えば、PETなどの離型フィルムの基材と同様のものが挙げられる。
ベース基材7の膜厚は、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下でもある。
また、図1および図3A、図3Bには図示していないが、熱伝導性シートの最表面の少なくとも一方面には、離型フィルムが積層されていてもよい。
なお、従来からの課題として、熱伝導性シートには、用途および目的によって、厚み方向に直交する直交方向(面方向)における高い熱伝導性が要求される場合もある。また、凹凸の高さや形状が異なる電子部品(例えば、ICチップ、コンデンサ、コイル、抵抗器などの電子素子)が実装された実装基板に熱伝導性シートを被覆する場合、熱伝導性シートがその電子部品の上面や側面および基板表面の形状に沿って隙間なく密着することにより、熱伝導性シートと電子部品や基板との接触面積を大きくすれば、より効率的に電子部品や基板から発生される熱を放熱させることが可能となる。従って、熱伝導性シートが実装基板の凹凸(電子部品等)の表面や側面に追従する性能(凹凸追従性)が要求されている。さらには、表面に凹凸がある実装基板では、熱伝導性シートが実装基板に密着しても、剥離しやすいという不具合が生じる。
そして、第5実施形態の熱伝導性シートは、上記した通り、この課題を解決できる。すなわち、第5実施形態は、熱伝導性に優れながら、実装基板への凹凸追従性が優れ、剥離しにくい熱伝導性シートである。
(第6実施形態)
第6実施形態の熱伝導性シートは、第1実施形態の熱伝導性シートを一部に含むものであって、第6実施形態の熱伝導性シートは、熱伝導層(図12の符号1a参照)と、その熱伝導層の少なくとも一方面に積層される粘着剤層(図12の符号6参照)とを備える。
熱伝導層は、シート形状に形成されており、窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有している。熱伝導層は、例えば、第1実施形態で上記したものと同様のものが挙げられ、より好ましくは、第5実施形態で上記したものと同様のものが挙げられる。
熱伝導層の製造方法は、第1実施形態で上記した製造方法と同様の製造方法が挙げられる。
粘着剤層6は、図12に示すように、熱伝導層1aの下面全面に形成されている。
粘着剤層6は、被覆対象に接触させる初期において感圧により接着が可能な感圧接着剤層であり、タック性(粘着性)を有している。
粘着剤層6は、好ましくは、アクリル系粘着剤を含有している。アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー原料を重合することにより得られるアクリル系ポリマーからなる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの、アルキル部分が炭素数1~20の直鎖状または分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、好ましくは、アルキル部分が炭素数2~10の直鎖状または分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、適宜、単独または併用して用いられる。
併用する場合は、例えば、アルキル部分が炭素数2~5のアクリル酸アルキルエステルと炭素数6~10のアクリル酸アルキルエステルとの組み合わせが挙げられる。
また、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー原料に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、85質量%以上含有され、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.5質量%以下含有される。
また、モノマー原料には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーを含有させることができる。
そのような共重合可能なモノマーとして、例えば、官能基を含有する官能基含有モノマーなどが挙げられる。
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチルなどの水酸基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有モノマー、その他、(メタ)アクリロニトリル、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロドリンなどが挙げられる。
これら官能基含有モノマーは、適宜、単独または併用して用いられる。また、これら官能基含有モノマーの含有割合は、モノマー原料に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、50,000以上、好ましくは、100,000以上であり、また、例えば、5,000,000以下、好ましくは、3,000,000以下である。重量平均分子量は、GPC(標準ポリスチレン換算)によって算出される。
アクリル系ポリマーは、例えば、公知のラジカル重合によって重合される。
ラジカル重合に使用される重合開始剤は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどのアゾ系開始剤、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせなどのレドックス系開始剤などが挙げられる。
これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、これら重合開始剤の配合割合は、モノマー原料100質量部に対して、例えば、0.005~1質量部である。
アクリル系ポリマーの重合には、必要に応じて、連鎖移動剤や架橋剤などの添加剤を適宜配合することができる。
粘着剤層6におけるアクリル系粘着剤の含有割合は、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上、とりわけ好ましくは、95質量%以上であり、また、例えば、通常100質量%以下でもある。
粘着剤層は、フィラーを含有することもできる。
フィラーとしては、例えば、球状、板状、鱗状、針状などの無機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、炭化ケイ素などの炭化物、例えば、窒化ケイ素などの窒化物(窒化ホウ素を除く)、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)などの酸化物、例えば、銅、銀などの金属、例えば、カーボンブラックなどの炭素系粒子が挙げられる。好ましくは、シリカである。
これらの無機微粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
粘着剤層6におけるフィラーの含有割合は、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下であり、また、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上でもある。
粘着剤層6は、上記のほかに、分散剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、フッ素系界面活性剤、可塑剤、充填材、老化防止剤、着色剤などの公知の添加剤を含有することもできる。
粘着剤層6の製造方法について説明する。
まず、アクリル系粘着剤を有機溶媒に配合し、溶解させることにより粘着剤組成物(ワニス)を調製し、必要に応じてフィラー、添加剤などを更に添加する。この粘着剤組成物を、アプリケータなどにより離型フィルムの表面に塗布し、その後、常圧乾燥または真空(減圧)乾燥により、溶媒を留去させることにより、粘着剤層が得られる。
有機溶媒としては、熱伝導層1aの製造方法における有機溶媒と同様のものが挙げられる。
この粘着剤組成物の固形分量は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下でもある。
乾燥温度は、例えば、常温以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下でもある。
乾燥時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、5分間以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、2時間以下でもある。
これにより、離型フィルムの上に形成された粘着剤層6を得ることができる。
このようにして得られた粘着剤層6の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、1μm以上でもある。
そして、粘着剤層6と熱伝導層1aとを平面視で同一になるように重ね合わせ、厚み方向内側に向かって ハンドローラーなどにより圧力を均一に加える。
これにより、熱伝導性シート1を得ることができる。
熱伝導性シート1の絶縁破壊電圧(測定方法は後述する)は、例えば、10kv/mm以上であり、好ましくは、20kv/mm以上、より好ましくは、30kv/mm以上、さらに好ましくは、40kv/mm以上、とりわけ好ましくは、50kv/mm以上であり、また、例えば、100kv/mm以下でもある。
熱伝導層1aの厚みと粘着剤層6の厚みとの比は、例えば、熱伝導層/粘着剤層が2/1~500/1(好ましくは、5/1~50/1)である。
そして、この熱伝導性シート1は、熱伝導層1aの面方向PDの熱伝導率が、4W/m・K以上であるので、面方向PDの熱伝導性に優れている。そのため、面方向PDの熱伝導性に優れる熱伝導性シート1として、種々の放熱用途に用いることができる。
また、熱伝導性シート1は、窒化ホウ素粒子およびゴム成分を含有している。そのため、熱伝導性シート1を、表面に凹凸がある被覆対象に被覆する場合、その凹凸の表面に追従して熱伝導性シート1が伸び、熱伝導性シート1にひび割れ(クラック)の発生を低減できる。その結果、被覆対象としての放熱対象を確実に被覆することができ、放熱対象が発生する熱を窒化ホウ素粒子によって、より確実に伝導させることができる。
また、熱伝導性シート1は、粘着剤層6を備えているため、粘着剤層を備えているため、実装基板に対して接着性に優れる。そのため、熱伝導性シートは、実装基板から剥離しにくい。また、リワーク性も良好である。
また、粘着剤層6が、アクリル系粘着剤層であり、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー原料を重合することにより得られるアクリル系ポリマーからなるため、熱伝導性シート1の接着性がより優れる。
特に、熱伝導性シート1がゴム成分を含有し、粘着剤層6を備えるため、熱伝導性シート1を表面に凹凸のある放熱対象に被覆する際に、例えば、60~100℃の温度下で、凹凸追従性が確実に向上すると同時に、さらに、密着性が向上し、熱伝導性シートと放熱対象とが強固に接着する。
この熱伝導性シート1が貼着または被覆する対象は、第1実施形態で挙げた被覆対象(放熱対象)と同様のものが挙げられる。
なお、上記した実施形態は、粘着剤層6が熱伝導層1aの厚み方向一方面に積層されているが、図13Aが参照されるように、粘着剤層6を熱伝導層1aの厚み方向一方面および他方面に積層することもできる。
また、図13Bが参照されるように、粘着剤層6が、基材フィルム9と、基材フィルム9の厚み方向一方面および他方面(両面)に積層される第1粘着剤層6aおよび第2粘着剤層6bとを備えることもできる。これにより、熱伝導性シート1の強度を向上させることができる。
第1粘着剤層6aおよび第2粘着剤層6bの成分は、上記した粘着剤層6と同一の成分であり、好ましくは、アクリル系粘着剤を含有する。アクリル系粘着剤は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー原料を重合することにより得られるアクリル系ポリマーからなる。
基材フィルム9は、例えば、その表面が離型処理されていない平板状のシートである。
基材フィルム9の材料は、離型フィルムの材料と同様のものが挙げられる。
基材フィルム9の膜厚は、例えば、10μm以下、好ましくは、1μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上でもある。
第1粘着剤層および第2粘着剤層のそれぞれの膜厚は、例えば、100μm以下、好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上でもある。
基材フィルム9の両面に第1粘着剤層6aおよび第2粘着剤層6bが積層されている場合の膜厚の合計は、例えば、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下でもある。
また、図1および図3A、図3Bには図示していないが、熱伝導性シートの最表面の少なくとも一方面には、離型フィルムが積層されていてもよい。
なお、従来からの課題として、熱伝導性シートには、用途および目的によって、厚み方向に直交する直交方向(面方向)における高い熱伝導性が要求される場合もある。また、凹凸の高さや形状が異なる電子部品(例えば、ICチップ、コンデンサ、コイル、抵抗器などの電子素子)が実装された実装基板に熱伝導性シートを被覆する場合、熱伝導性シートが、シート表面にクラック(ひび割れ)を発生させることなく、その電子部品の上面や側面および基板表面の形状に沿って密着することにより、熱伝導性シートと電子部品や基板との接触面積を大きくすれば、より効率的に電子部品や基板から発生される熱を放熱させることが可能となる。従って、熱伝導性シートが実装基板の凹凸(電子部品等)の表面や側面に追従する性能(凹凸追従性)が要求されている。さらには、表面に凹凸がある実装基板では、熱伝導性シートが実装基板に密着しても、剥離しやすいという不具合が生じる。
そこで、第6実施形態の熱伝導性シートは、上記した通り、この課題を解決することができる。すなわち、第6実施形態は、熱伝導性に優れながら、クラックを抑制しつつ実装基板への凹凸追従性が優れ、剥離しにくい熱伝導性シートである。
以下に実施例、参考例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例、参考例および比較例に限定されない。
以下に示す実施例の数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限または下限値)に代替することができる。
次に第1実施形態に対応する実施例および比較例として、実施例1~65および比較例1~10を挙げて説明する。
実施例1および2
表1の配合処方に準拠して、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクスを配合して攪拌し、固形分の混合物(熱伝導性組成物)を調製した。
次いで、得られた混合物を粉砕機で10秒間破砕し、微細化した混合物粉末(熱伝導性組成物粉末)を得た。
次いで、得られた混合物粉末を真空加熱プレス機にセットした。
具体的には、まず、真空加熱プレス機の熱板の上に、表面がシリコーン処理された離型フィルムを配置し、その離型フィルムの上に混合物粉末1gを盛った。次いで、離型フィルムの上に、厚み200μmの真鍮製のスペーサーを、混合物粉末を囲むように、枠状に配置した。次いで、そのスペーサーおよび混合物粉末の上に、表面がシリコーン処理された離型フィルムを配置した。これによって、混合物粉末を2つの離型フィルムの間に厚み方向で挟み込んで、真空加熱プレス機にセットした。
次いで、10Paの真空雰囲気下、60MPaで、15分間、80℃で熱プレスすることにより、厚み200μmの熱伝導性シートを得た(図2参照)。
次いで、熱プレスした熱伝導性シートに、3,000mJ/cm2の線量で紫外線を照射した。
これによって、Bステージ状態の熱伝導性シートを得た。なお、得られた熱伝導性シートは、ゴム弾性を有していた。
次いで、Bステージ状態の熱伝導性シートを150℃の乾燥機に入れて、60分間加熱することにより、熱硬化させた。これによって、Cステージ状態の熱伝導性シートを得た。
実施例3~10、14~21、24~26、29~32および37~57ならびに比較例1~9
表1~10の配合処方に準拠して、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクスの配合量を変更し、熱プレスした熱伝導性シートに紫外線を照射しなかった以外は、実施例1および2と同様の方法により、Bステージ状態の熱伝導性シートを得た。
次いで、Bステージ状態の熱伝導性シートを150℃の乾燥機に入れて、60分間加熱することにより、熱硬化させた。これによって、Cステージ状態の熱伝導性シートを得た。
実施例11~13、22、23、27、28および33~36
表2、表4、表5および表6の配合処方に準拠して、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクスの配合量を変更し、熱プレスした熱伝導性シートに紫外線を照射しなかった以外は、実施例1および2と同様の方法により、熱伝導性シートを得た。なお、得られた熱伝導性シートは、ゴム弾性を有していた。
次いで、熱伝導性シートを150℃の乾燥機に入れて、60分間加熱した。
実施例58~61
表11の配合処方に準拠し、各成分を混合し、撹拌し、続いて、真空乾燥することにより、混合物を得た。
2本のロールにて用意し、ロール間に片面が処理されたセパレータを設置し、ロールの回転速度を1.0rpmに調整して、上記で得られた混合物を2本のロールにて、圧延することにより、プレシートを得た。
次いで、得られたプレシートを加熱プレス機にて、10Paの真空雰囲気下、60MPa、70℃で10分間プレシートを熱プレスすることにより、実施例58~61の熱伝導性シートを得た。得られた熱伝導性シートは、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。熱伝導性シートの厚みは、実施例58では266μm、実施例59では269μm、実施例60では273μm、実施例61では309μmであった。
実施例62~63
表11の配合処方に準拠し、各成分を混合し、撹拌し、続いて、真空乾燥することにより、混合物を得た。
次いで、得られた混合物を加熱プレス機にて、10Paの真空雰囲気下、60MPa、70℃で15分間プレシートを熱プレスすることにより、実施例62~63の熱伝導性シートを得た。得られた熱伝導性シートは、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。熱伝導性シートの厚みは、実施例62では289μm、実施例63では355μmであった。
実施例64
表12の配合処方に準拠して、まずエポキシ樹脂およびゴム成分を配合した。これに、MEKを添加して、超音波洗浄機で溶解させた。次いで、表12の配合処方に準拠して、さらに硬化剤および窒化ホウ素粒子を添加することにより、固形分70質量%の混合物(熱伝導性組成物)を得た。
次いで、塗工台に離型フィルムを載せ、所定の間隔を開けて厚み800μmのスペーサを離型フィルムの両端に設置し、スペーサの上面にマスキングテープを貼り、スペーサと塗工台とを固定した。次に、混合物にMEKを添加して混合物の粘度を調節し、離型フィルムの上に、粘度調節された混合物をアプリケータにて塗布した。塗布後、乾燥機に入れ、70℃で10分間加熱した後、再度、乾燥機に入れ、80℃で10分間加熱し、厚み480μmの熱伝導性シートを得た。
次いで、得られた熱伝導性シートを10cm×10cmに切り出した。SUS板の上に載置されている離型フィルムの上に、所定の間隔を開けて厚み200μmのスペーサを設置した。切り出した熱伝導性シートをその離型フィルムの上に載せ、次いで、その熱伝導性シートの上に、さらに別の離型フィルムおよびSUS板を順次載せて、熱伝導性シートを1対の離型フィルムおよびSUS板で挟み込んだ。
その後、この熱伝導性シートを、80℃に設定した真空プレス機に入れ、5分間真空引きした後、60MPa、10分間プレスした後、室温になるまで放置した。
これにより、厚さ220μmの熱伝導性シートを得た。なお、得られた熱伝導性シートは、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。
実施例65
表12の配合処方に準拠して、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクスの配合量を変更した以外は、実施例64と同様にして、実施例65の、厚さ210μmの熱伝導性シートを得た。なお、得られた熱伝導性シートは、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。
比較例10
表12の配合処方に準拠して、窒化ホウ素粒子およびポリマーマトリクスの配合量を変更した以外は、実施例64と同様にして、厚さ230μmの熱伝導性シートを得た。
(評価)
(1)熱伝導率測定
作製した熱伝導性シート(エポキシ基を含有した混合物(および実施例23)に関しては、Bステージ状態)(実施例11~13、22、27、28および33~36については、80℃で加熱後)について、熱伝導率を測定した。
すなわち、厚み方向(TD)における熱伝導率、および面方向(SD)における熱伝導率を、キセノンフラッシュアナライザー「LFA-447型」(NETZSCH社製)を用いるパルス加熱法により測定した。
A. 厚み方向の熱伝導率(TC1)
各実施例および各比較例において得られた熱伝導性シートを、1cm×1cmの正方形に切り出して切片を得、切片の表面(厚み方向一方面)にカーボンスプレー(カーボンのアルコール分散溶液)を塗布して乾燥し、かかる部分を受光部とし、裏面(厚み方向他方面)にカーボンスプレーを塗布して、これを検出部とした。
次いで、受光部に、キセノンフラッシュによりエネルギー線を照射して、検出部の温度を検出することによって、厚み方向の熱拡散率(D1)を測定した。得られた熱拡散率(D1)から、次式によって、熱伝導性シートの厚み方向の熱伝導率(TC1)を求めた。
TC1=D1×ρ×Cp
ρ : 熱伝導性シートの25℃における密度
Cp : 熱伝導性シートの比熱(実質的に0.9)
B. 面方向の熱伝導率(TC2)
各実施例および各比較例において得られた熱伝導性シートを、直径2.5cmの円形に切り出して、得た切片にマスクをした後、カーボンスプレーを塗布して乾燥し、かかる部分を受光部とした。また、裏面も同様にマスクをした後、(厚み方向他方面)にカーボンスプレーを塗布して乾燥し、かかる部分を検出部とした。
次いで、受光部に、キセノンフラッシュによりエネルギー線を照射して、検出部の温度を検出することによって、面方向の熱拡散率(D2)を測定した。得られた熱拡散率(D2)から、次式によって、熱伝導性シートの面方向の熱伝導率(TC2)を求めた。
TC2=D2×ρ×Cp
ρ : 熱伝導性シートの25℃における密度
Cp : 熱伝導性シートの比熱(実質的に0.9)
その結果を表1~表12に示す。
(2)引張試験
作製した熱伝導性シート(エポキシ基を含有した混合物(および実施例23)に関しては、Bステージ状態)(実施例11~13、22、27、28および33~36については、80℃で加熱後)を、1×4cmの短冊片に切り出し、この短冊片を引張試験機にセットした。続いて、短冊片を速度5mm/分で、短冊片の長手方向に引っ張ったときの引張弾性率N/mm2、最大伸びA%および破断時伸びC%をそれぞれ測定し、実測値として得た。
その結果を、表1~表12に示す。
また、任意の窒化ホウ素粒子2の体積割合X%における熱伝導性シートにおけるポリマーマトリクスの最大伸びZ%は、下記式(1)および(2)から推算値として簡易的に推算した。
Y(%)=M(%)×eX×k (1)
Z(%)=Y(%)+100(%) (2)
k:定数
M:熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合が0%のときの熱伝導性シートの面方向の最大伸び分(%)
X:熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合(%)
Y:熱伝導性シートの面方向の最大伸び分(%)
Z:計算から求まる、熱伝導性シートの面方向の最大伸び(推算値)(%)
定数kは、上記した引張試験により得られた、熱伝導性シートの面方向の最大伸びA(%)を、熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合X(%)に対してプロットし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線の傾きとして得た。
その結果を、表8~表10に示す。
実施例42~44および比較例6について、上記プロットをし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線およびその傾きを、図6に示す。
また、任意の窒化ホウ素粒子2の体積割合X%における熱伝導性シートにおけるポリマーマトリクスの破断時伸びW%は、下記式(3)および(4)から推算値として簡易的に推算した。
V(%)=N(%)×eX×L (3)
W(%)=V(%)+100(%) (4)
L:定数
N:熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合が0%のときの熱伝導性シートの面方向の破断時伸び分(%)
X:熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合(%)
V:熱伝導性シートの面方向の破断時伸び分(%)
W:計算から求まる、熱伝導性シートの面方向の破断時伸び(推算値)(%)
定数Lは、上記した引張試験により得られた、熱伝導性シートの面方向の破断時伸びC(%)を、熱伝導性シートに占める窒化ホウ素粒子の体積割合X(%)に対してプロットし、プロットした点から最小二乗法で算出した直線の傾きとして得た。
その結果を、表8~表10に示す。
(3)耐屈曲性(柔軟性)試験
作製した熱伝導性シート(エポキシ樹脂を含有した混合物に関しては、Bステージ状態の熱伝導性シート)について、JIS K 5600-5-1耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に準拠する耐屈曲性試験を実施した。
具体的には、下記の試験条件にて、各熱伝導性シートの耐屈曲性(柔軟性)を評価した。
試験条件
試験装置:タイプI
マンドレル:直径10mm、または、直径5mm
そして、Bステージ状態の各熱伝導性シートを、0度を超過し、180度以下の屈曲角度で屈曲させ、熱伝導性シートに破断(損傷)を生ずる試験装置のマンドレルの直径から、以下のように評価した。
その結果を、表1~表12に示す。
◎:直径5mmのマンドレルで屈曲しても、破断を生じなかった。
○:直径10mmのマンドレルで屈曲しても破断は生じないが、直径5mmのマンドレルで屈曲すると、破断を生じた。
×:直径10mmのマンドレルで屈曲すると、破断を生じた。
(4)段差追従性(3点曲げ)試験
作製した熱伝導性シート(エポキシ樹脂を含有した混合物に関しては、Bステージ状態の熱伝導性シート)について、下記試験条件における3点曲げ試験を、JIS K7171(2008年)に準拠して、実施することにより、段差追従性を下記の評価基準に従って評価した。
その結果を表1~表12に示す。
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/min(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
(評価基準)
◎:破断が観察されなかった。
×:破断が観察された。
(5)90度剥離接着力試験
各実施例および各比較例の混合物粉末1gを、2つの離型フィルムで挟み込んで、真空加熱プレス機にセットした。なお、離型フィルムは、一方は表面がシリコーン処理されており、シリコーン処理された面で混合物粉末を挟み込んでセットした。
次いで、10Paの真空雰囲気下、60MPaで、10分間、80℃で熱プレスして、混合物粉末を圧延した。
次いで、両面の離型フィルムを熱伝導性シートの表面から引き剥がし、熱伝導性シートの表面を、表面粗さRz:12μm、厚み70μmの銅箔(GTS-MP、古河電工社製)の粗面(JIS B0601(1994年)に準拠)に接触するように重ね合わせることにより、銅箔で挟んだ銅箔積層シートを作製した。作製した銅箔積層シートを真空加熱プレス機にセットした。
次いで、30MPaで、9分間、150℃に昇温してプレスして、熱伝導性シートを圧延密着させつつ、さらに30MPaで10分間保持することで、熱伝導性シートを、BステージからCステージへ反応を促進させた。(実施例11~13、22、27、28、および33~36については、エポキシ基を含有せず、エポキシ基由来の反応性は無かった。また、実施例23はBステージのままであった。)その後、熱伝導性シートを真空加熱プレス機から取り出し、150℃の乾燥機に入れて1時間静置し、熱伝導性シートを銅箔に接着させた。
次いで、得られた熱伝導性シートを1×4cmの短冊片に切り出し、この短冊片を引張試験機にセットした。続いて、短冊片を、銅箔に対して90度の角度で、速度10mm/分で、短冊片の長手方向に剥離したときの90度剥離接着力をそれぞれ測定した。
その結果を表1~表12に示す。
(6)凹凸追従性試験(実装基板)
図7が参照されるように、基板20(ガラスエポキシ基板、Top Line社製)に下記の電子部品21(電子部品a~e)が実装された模擬実装基板22を用意した。
電子部品a:縦7mm、横7mm、高さ900μm
電子部品b:縦1.8mm、横3.3mm、高さ300μm
電子部品c:縦0.15mm、横0.15mm、高さ200μm
電子部品d:縦3mm、横3mm、高さ700μm
電子部品e:縦5mm、横5mm、高さ800μm
なお、電子部品bは、抵抗器(縦0.5m、横1.0mm)が直列に3個並んだ直列回路が並列に3列並んだチェイン回路(抵抗器合計9個、各抵抗器の間隔0.15mm)である。また、電子部品dは、小型電子部品が4個互いに間隔を隔てて配列された部品である。
図8が参照されるように、内部の温度が70℃である乾燥機内に、有底円筒形状の下金型23および上金型24(底面の面積12.56cm2)を入れ、しばらく放置した。その後、厚み5mmのスポンジ25(シリコーンゴムスポンジシート、オーヨー社製)を下金型23の内底面に設置し、しばらく放置して、下金型23、上金型24およびスポンジ25を70℃に加熱した。さらに、70℃のホットプレートまたは恒温槽内の底面に、剥離紙を配置し、その上に各実施例および各比較例の熱伝導性シート1を配置し、30秒間接触させることにより、70℃に加熱した。次いで、そのスポンジ25の上に、各実施例または各比較例の熱伝導性シート1(2cm×2cmに切断)を設置し、その熱伝導性シート1の上に、電子部品21が下面となるように(すなわち、電子部品21が熱伝導性シート1と接触するように)実装基板22を設置した。その後、その実装基板22の上に、加熱された上金型24と、2~4kgとなる重りを上金型24の上に静置した。1~5分後に、これらを乾燥機から取り出して、重りおよび上金型24を取り除き、熱伝導性シート1を電子部品21の凹凸に追従させた実装基板22を下金型23から取り出した。
この実装基板22について、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間(距離1.75mm)の基板表面に接触しており、かつ、熱伝導性シート1にクラックの発生が確認できなかった場合を○と評価し、熱伝導性シート1と実装基板22の部品aと部品bとの間の基板表面に接触していなかった場合、または、熱伝導性シート1と実装基板22の部品aと部品bとの間の基板表面に接触しているが、熱伝導性シート1にクラックの発生が確認できた場合を×と評価した。
また、熱伝導性シート1に生じたクラックの数を測定した。なお、熱伝導性シート1のクラックの数は、1本の筋(クラック)ごとに数え、その縦筋および横筋が連続している場合はそれぞれ独立して数えた。すなわち、L字型のクラックの場合は2と数え、コの字型のクラックの場合は3と数えた。
それらの結果を表12に示す。
(7)弾性率試験
表12の配合処方において、窒化ホウ素粒子以外の成分(すなわち、エポキシ樹脂、ゴム成分、および、硬化剤)を配合して、ゴム含有組成物を調製した後、このゴム含有組成物にさらにMEKを添加して、実施例64における弾性率測定用組成物(固形分30質量%)を調製した。
実施例65についても同様にして、実施例65における弾性率測定用組成物(固形分30質量%)を調製した。
比較例10についても同様にして、比較例10における弾性率測定用組成物(固形分30質量%)を調製した(ただし、ゴム成分は含有していない)。
弾性率測定用組成物(ワニス)を離型フィルムAの上に滴下し、アプリケータを用いて塗布した。次に、この組成物が塗布された離型フィルムAを乾燥機内部に入れ、80℃で10分間乾燥させることにより、表面が乾燥した乾燥塗膜が形成されたシートを得た。さらに、乾燥塗膜の上に離型フィルムBを積層し、ローラで押圧することにより、離型フィルムBを乾燥塗膜に貼り付けた。次いで、離型フィルムAを乾燥塗膜から剥がし、再度乾燥機内部に乾燥塗膜を入れ、80℃で10分間乾燥させることにより、乾燥塗膜シートを得た。
このシートを複数枚に切り取り、切り取ったシートの乾燥塗膜同士を重ね合わせ、次いで、真空プレス機と厚さ250μmのスペーサを用いて圧延することにより、厚さ250μmの乾燥塗膜が積層されたゴム含有シート(弾性率測定用シート)を得た。
各実施例および各比較例用の弾性率測定用シートのそれぞれを粘度・弾性率測定装置(レオメータ、商品名HAAKE Rheo Stress 600、英弘精機社製)内部に設置し、測定範囲20~150℃、昇温速度2.0℃/minおよび周波数1Hzの条件にて、JISK7244プラスチック-動的機械特性の試験方法の方法に準拠して測定した。
このときの80℃における貯蔵剪断弾性率G´、損失剪断弾性率G´´および複素剪断粘性率η*の結果を表12に示す。
次に、第2実施形態に対応する実施例として、実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aを挙げて説明する。
(実施例1a)
表13の配合処方(ワニス成分)にて、各成分を配合し、ハイブリッドミキサーにて10分間攪拌し、実施例1aの白濁分散状態の固形分25質量%のワニス(ゴム含有組成物)を調製した。
次いで、得られたワニスに、固形分量で70体積%となるように窒化ホウ素粒子を添加し、撹拌した後、真空乾燥によりMEKを揮発させて、熱伝導性組成物粉末を得た。
次いで、得られた熱伝導性組成物粉末を二本ロール(加熱温度70℃、回転速度1.0rpm)により、離型フィルムとしてポリエステルフィルム(商品名「SG-2」、PANAC社製)を用い、圧延し、プレシートを成形した。
プレシートを真空加熱プレス機で、70℃、5分間、50Pa以下で真空乾燥させ、次いで、60MPaで10分間加圧プレスを実施した後、除圧し、室温まで放冷することにより、実施例1aの熱伝導性シートを得た。厚みは、256μmであった。また、Bステージ状態であった。
(実施例2a~5a)
ワニスの配合処方を表13に示す配合処方に変更した以外は、実施例1aと同様にして、実施例2a~5aのワニスを各々調製した。このワニスを使用し、表13および表14に示す配合割合で窒化ホウ素粒子を配合した以外は、実施例1aと同様にして、熱伝導性シートを得た。
(参考例1aおよび比較例2a~4a)
ワニスの配合処方を表14に示す配合処方に変更した以外は、実施例1aと同様にして、参考例1aおよび比較例2a~4aのワニスを各々調製した。このワニスを使用し、表14に示す配合割合で窒化ホウ素粒子を配合した以外は、実施例1aと同様にして、熱伝導性シートを得た。
(評価)
(1a)熱伝導率測定
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aの熱伝導性シートの熱伝導率を、上記(1)熱伝導性率測定と同様の方法に従い、測定した。
その結果を表13および表14に示す。
(2a)弾性率測定(貯蔵剪断弾性率G´)
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aで調製したワニスに、必要に応じてMEKをさらに添加し、固形分25質量%の弾性率測定用のワニスを調製した。
この弾性率測定用のワニス(固形分25質量%)を使用した以外は、上記(7)弾性率測定と同様の方法に従い、厚さ250μmのゴム含有シート(弾性率測定用シート)を得て、そのゴム含有シートの貯蔵剪断弾性率G´を測定した。(なお、比較例2aおよび3aのワニスについては、ゴム非含有シートであった。)
このときの各貼り付け温度(50~80℃)における貯蔵剪断弾性率G´の結果を表13および表14に示す。
(3a)室温保存におけるエポキシ反応率測定(保存安定性)
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aで作製した熱伝導性シートについて、その作製した当日の熱伝導性シートをサンプル(当日)とした。また、各実施例および各参考例で作製した熱伝導性シートについて、30℃で30日間保存した熱伝導性シートをサンプル(室温保存後)とした。これらのサンプル(当日)およびサンプル(室温保存後)のそれぞれについてDSC測定により反応熱を解析した。
具体的には、各々のサンプル5~15mgを、DSC(「Q-2000:TA」Instruments社製)のアルミ製容器内に収容してクリンプした。次いで、10℃/minの速度で、窒素ガス雰囲気下、0℃から250℃まで昇温することにより、DSC曲線を得た。そして、このDSC曲線より算出される発熱量からエポキシ反応率を求めた。すなわち、DSC曲線において、サンプル(当日)の発熱ピークの面積と、サンプル(室温保存後)の発熱ピークの面積とを比較計算することにより、エポキシ反応率を算出した。
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aのサンプル(室温保存後)のエポキシ反応率が40%未満であった場合を〇と評価し、40%以上であった場合を×と評価した。
この結果を表13および表14に示す。
(4a)90℃保存におけるエポキシ反応率測定(硬化性)
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aで作製した熱伝導性シートについて、90℃で1日保存した熱伝導性シートをサンプル(90℃保存後)とした。
サンプル(当日)の反応率およびサンプル(90℃保存後)の反応率のそれぞれについて上記(3a)室温保存におけるエポキシ反応率測定と同様にDSC測定を実施し、エポキシ反応率を算出した。
この結果を表13および表14に示す。
(5a)絶縁破壊電圧測定
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aで作製した熱伝導性シートについて、絶縁破壊電圧を、JISC 2110に準拠して以下の方法で測定した。
実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aの熱伝導性シートを10cm角に切り取り、150℃の乾燥器で2時間保存することで硬化させてCステージ状態の熱伝導性シートを、サンプルとした。このサンプルを空気中、常温の条件下で絶縁破壊電圧測定を実施した。具体的には、サンプルの上下に球体の電極を当てて、500gの荷重をかけ、さらに、昇圧速度を0.5kv/secの速度で昇圧させ、サンプルが破壊された時点の電圧を絶縁破壊電圧として測定した。測定結果を1mmの厚みで換算して、下記のように評価した。
絶縁破壊電圧が40kV/mm以上あれば○、40kV/mm以下であれば×とした。
その結果を表13および表14に示す。
(6a)凹凸追従性試験
上記(6)と同様の実装基板22(図7参照)を用意した。
盤面の温度が所定の貼り付け温度(表13および表14記載)に加熱された精密加熱加圧装置に、電子部品が上面となるように実装基板22を設置し、その実装基板22上に実施例1a~5a、参考例1aおよび比較例2a~4aの熱伝導性シート1を設置(すなわち、電子部品22が熱伝導性シート1と接触するように)し、さらにその上に厚み5mmのスポンジ25(商品名シリコーンゴムスポンジシート、オーヨー社製)設置し、しばらく放置した。その後、所定の圧力(表13および表14記載)で1分間加圧することで実装基板22に熱伝導性シート1を貼りつけた。
この熱伝導性シート1が貼着された実装基板22について、熱伝導性シート1が実装基板22の基板20表面に接触し、かつ、電子部品21の側面にも接触している場合を◎と評価し、熱伝導性シート1が実装基板22の基板20表面に接触しているが、電子部品21の側面に接触していない場合を○と評価し、熱伝導性シート1が実装基板22の電子部品21に接触しているが、基板20に接触していない場合を×と評価した。
また、熱伝導性シート1に生じたクラックの有無を判定した。クラックがない場合は○、ひび割れがある場合は△、シートの破断がある場合は×とした。
それらの結果を表13および表14に示す。
(7a)低温接着性試験
上記(6a)凹凸追従性試験で得られた熱伝導性シートが密着させた実装基板について、さらに90℃にて1時間加熱し、熱伝導性シートを実装基板に接着させた。
熱伝導性シート1が実装基板から剥がす際に、削り取らないと剥がれなかった場合をまる◎、熱伝導性シート1を割ることによって剥がせた場合を○、熱伝導性シート1が形状を保ったまま剥がれた場合を×と評価した。
その結果を表13および表14に示す。
次に、第3実施形態に対応する実施例および比較例として、実施例1b~8bおよび比較例1bを挙げて説明する。
実施例1b
・被覆工程
表15に記載の配合処方にて、各成分を配合し、撹拌することにより、液状組成物3a(ワニス)を調製した。
図9の転動流動コーティング装置(「MP-01」、パウレック社製)の給気温度を25℃に調整した後に、チャンバー42の内部に、窒化ホウ素粒子600gを投入口から投入した。空気46をチャンバー42の下方から上方に向かって送風(給気)して、攪拌翼33を回転させることで窒化ホウ素粒子2を転動流動させながら、調製した液状組成物3a(1143g)を噴霧口37から噴霧した。液速度6~8g/minで液状組成物3a(1143g)をチャンバー42の内部に163分間かけて供給し、窒化ホウ素粒子2に液状組成物3aを付着させた。さらに、10分間、25℃で空気を送風することにより、窒化ホウ素粒子2に付着した液状組成物3aを乾燥させた。その後、窒化ホウ素粒子2を取出口から取り出した。
これにより、窒化ホウ素粒子2の表面に樹脂成分が被覆された樹脂被覆窒化ホウ素粒子からなる粒子集合物粉体 (平均粒子径294μm)を得た。
窒化ホウ素粒子2と樹脂成分との質量割合は、窒化ホウ素粒子/樹脂成分=82/18であった。
・成形工程
2本のロールを用意し、2本のロールの間隔を450μmに設定し、各ロールの温度を70℃に昇温し、各ガイドの間隔を12cmに調節した。次いで、ロール間に片面が処理されたセパレータ(ポリエステルフィルム、商品名「パナピールTP-03」、PANAC社製、厚み188μm)を設置し、ロールの回転速度を1.0rpmに調整して、上記で得られた粒子集合物粉体を2本のロールのニップ部分に投入し、圧延(ロール圧延工程)を実施することにより、プレシート(厚み225μm)を得た。
次いで、得られたプレシートを加熱プレス機に設置した。
具体的には、まず、真空加熱プレス機の台座(70℃に加熱)の上に、シリコーンゴムを配置した。次いで、シリコーンゴムの上に離型フィルム(ポリエステルフィルム、商品名「SG2」、PANAC社製、50μm)を配置し、その離型フィルムの上に、上記プレシートを配置した。次いで、プレシートの上に、さらに離型フィルムおよびシリコーンゴムを順に配置した。
次いで、押圧板を下方に移動させて、10Paの真空雰囲気下、60MPa、70℃で10分間プレシートを熱プレスすることにより、厚み207μmの熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
実施例2b~5b
表15に記載の配合割合で液状組成物を調製した以外は、実施例1bと同様にして熱伝導性シート1を得た。
実施例6b
実施例1bと同様にして、粒子集合物粉体を得た。
2本のロールを用意し、2本のロールの間隔を450μmに設定し、各ロールの温度を70℃に昇温し、各ガイドの間隔を12cmに調節した。次いで、ロール間に片面が処理されたセパレータ(ポリエステルフィルム、商品名「パナピールTP-03」、PANAC社製、厚み188μm)を設置し、ロールの回転速度を1.0rpmに調整し、得られた粒子集合物粉体を2本のロールのニップ部分に投入し、ロール圧延工程を実施することにより、プレシートAを成形した。
次いで、このプレシートAを2枚重ねて、このプレシートAを再び2本のロール(加熱温度70℃、回転速度1.0rpm)の間隔に投入することにより、ロール圧延工程を実施した。このプレシートAに対するロール圧延工程を合計4回繰り返すことで、プレシートBを成形した。
次いで、このプレシートBを10cm角に切り抜いて、実施例1bと同様の条件で、真空加熱プレス機に設置し、熱プレスすることにより、熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
実施例7b
実施例5bと同様にして、粒子集合物粉体を得た。得られた粒子集合物粉体を用いた以外は、実施例6bと同様にして、熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
実施例8b
表15に記載の配合処方にて、各成分を配合し、撹拌し、真空乾燥することにより、粒子集合物粉体を得た。
この粒子集合物粉体を用いた以外は、実施例1bと同様にして、熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
比較例1b
表15に記載の配合処方にした以外は、実施例8bと同様にして、熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
(評価)
(1b)面方向の熱伝導率
実施例1b~8bおよび比較例1bの熱伝導性シートの熱伝導率を、上記(1)熱伝導性率測定と同様の方法に従い、測定した。
その結果を表16に示す。
(2b)タック力測定試験
熱伝導性シート1のタック力を測定した。
実施例1b~8bおよび比較例1bにおいて得られた熱伝導性シート1を、直径25mmの円形に切り出して、切片を得た。その切片を、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)の短針の先端(直径20mm)に貼り付けた。テクスチャーアナライザーの付属恒温装置により雰囲気温度を任意の温度に設定した。一方、短針の落下位置に、ガラスエポキシ基板(Top Line社製)を固定した。
次いで、短針をゆっくり落下させ、ガラスエポキシ基板に熱伝導性シート1を、4kgの荷重にて10秒間接触させた。その後、10mm/sで短針を引き上げて、熱伝導性シート1とガラスエポキシ基板とを引き剥がした。このときに必要な最大荷重を測定した。
その結果を表16に示す。
(3b)TOF-SIMS分析
実施例2b~4bおよび実施例8bにおいて得られた粒子集合物粉体について、TOF-SIMSによる分析を実施し、樹脂寄与イオン種(C7H7
+)と窒化ホウ素寄与イオン種(B+)との比率(C7H7
+/B+)を測定した。
なお、装置として、TOF-SIMS(ION-TOF社製)を用いて、一次イオン:Bi3
2+、加圧電圧:25kV、測定面積:200μm角の条件で測定した。
その結果を表16に示す。
(4b)凹凸追従性試験
実施例1b~8bおよび比較例1bにおいて得られた熱伝導性シート1について、60~90℃にて、凹凸追従性試験を実施した。
具体的には、乾燥機(図8参照)内部の温度を60~90℃に設定し、熱伝導性シート1の加熱温度を60~90℃に変更した以外は、上記(6)凹凸追従性試験と同様にして、熱伝導性シート1を電子部品21の凹凸に追従させた実装基板22(図7参照)を下金型23から取り出した。
この実装基板22について、上記試験で実施した温度条件において、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間(距離1.75mm)の基板表面に接触し、かつ、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損が認められなかった場合を○と評価した。また、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間の基板表面に接触していなかった場合、または、熱伝導性シート1が実装基板22の部品aと部品bとの間の基板表面に接触していた場合であっても、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損が認められた場合を×と評価した。
この結果を表16に示す。
(5b)初期接着性試験
上記凹凸追従性試験において得られた、熱伝導性シート1が凹凸の表面に追従させた実装基板22を、30cmの高さから落下させる試験を10回繰り返し、下記のように評価した。
評価:〇 熱伝導性シートが実装基板から剥がれなかった。
評価:△ 4回~10回の落下試験で熱伝導性シートが実装基板から剥がれなかった。
評価:× 1~3回の落下試験で熱伝導性シートが実装基板から剥がれた。
(6b)加熱接着性試験
上記凹凸追従性試験において得られた、熱伝導性シート1が凹凸の表面に追従させた実装基板22を、さらに150℃にて2時間加熱させ、熱伝導性シート1を実装基板22に加熱接着させた。
次いで、加熱接着された実装基板22を、30cmの高さから落下させる試験を10回実施し、熱伝導性シート1が実装基板22から剥がれなかった場合を〇と評価し、剥がれた場合を×と評価した。
その結果を表16に示す。
(7b)90度剥離試験
実施例1b~8bおよび比較例1bの熱伝導性シートの表面を、表面粗さRz:12μm、厚み70μmの銅箔(GTS-MP、古河電工社製)の粗面(JIS B0601(1994年)に準拠)に接触するように重ね合わせることにより、銅箔で挟んだ銅箔積層シートを作製した。作製した銅箔積層シートを真空加熱プレス機に設置した。
次いで、実施例1b~7bの熱伝導性シートについては、真空引き後、90℃、30MPaで、5分間プレスして、熱伝導性シートを圧延密着させた。圧延密着後、銅箔積層シートを90℃で24時間、または、150℃で1時間保持することで、熱伝導性シート1を、BステージからCステージへ反応を促進させ、熱伝導性シート1を銅箔に接着させた。
一方、実施例8bおよび比較例1bの熱伝導性シートについては、30MPaで、9分間かけて150℃まで昇温しながらプレスして、熱伝導性シートを圧延密着させつつ、さらに30MPaで10分間保持することにより、熱伝導性シートを、BステージからCステージへ反応を促進させた。その後、熱伝導性シートを真空加熱プレス機から取り出し、150℃の乾燥機に入れて1時間静置し、熱伝導性シートを銅箔に接着させた。
次いで、上記で得られた銅箔積層シートを1cm×4cmの短冊片に切り出し、この短冊片を引張試験機(SHIMAZU社製、商品名AGS-J)に設置した。続いて、短冊片を、銅箔に対して90度の角度で、速度10mm/分で、短冊片の長手方向に剥離したときの90度剥離接着力をそれぞれ測定した。
その結果を表16に示す。
次に、第4実施形態に対応する実施例および比較例として、実施例1c~8cおよび1cを挙げて説明する。
実施例1c
表17に記載の配合処方にて、各成分を配合し、撹拌し、続いて、真空乾燥することにより、熱伝導性組成物を得た。
2本のロールを用意し、2本のロールの間隔を450μmに設定し、各ロールの温度を70℃に昇温し、各ガイドの間隔を12cmに調節した。次いで、ロール間に片面が処理されたセパレータ(ポリエステルフィルム、商品名「パナピールTP-03」、厚み188μm、PANAC社製)を設置し、ロールの回転速度を1.0rpmに調整して、上記で得られた熱伝導性組成物を2本のロールのニップ部分に投入し、圧延(ロール圧延工程)を実施することにより、プレシート(厚み225μm)を得た。
次いで、得られたプレシートを加熱プレス機に設置した。
具体的には、まず、真空加熱プレス機の台座(70℃に加熱)の上に、シリコーンゴムを配置した。次いで、シリコーンゴムの上に離型フィルム(ポリエステルフィルム、商品名「SG2」、PANAC社製、50μm)を配置し、その離型フィルムの上に、上記プレシートを配置した。次いで、プレシートの上に、さらに離型フィルムおよびシリコーンゴムを順に配置した。
次いで、台座を上方に移動させて、10Paの真空雰囲気下、60MPa、70℃で15分間プレシートを熱プレスすることにより、熱伝導性シート1を得た。
得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
実施例2c~8c
上記実施例1b~7bで得られた熱伝導性シートを、それぞれ実施例2c~8cの熱伝導性シートとして用意した。
比較例1c
表17に記載の配合割合で液状組成物を調製した以外は、実施例2cと同様にして、比較例1cの熱伝導性シート1を得た。得られた熱伝導性シート1は、Bステージ状態であった。
(評価)
(1c)熱伝導率測定
実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートの熱伝導率を、上記(1)熱伝導性率測定と同様の方法に従い、測定した。
その結果を表18に示す。
(2c)面方向PDの破断ひずみ
下記の方法により、実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートの各温度における破断ひずみを測定した。
具体的には、万能引張圧縮試験器(TG-10kN、ミネベア社製、ロードセルTT3D-1kN)の恒温槽内の温度を所定の温度(表19に記載)に設定し、30分間放置することで恒温槽内の温度を上記所定の温度で安定させた。次に、作製した熱伝導性シートを、1×4cmの短冊片に切り出し、この短冊片をチャック部に紙を挟んで引張試験機にセットした。次いで、サンプルをセットした後、上記所定の温度で安定するまで5分間放置した。
続いて、短冊片を速度5mm/分で、短冊片の長手方向に引っ張ったときの破断ひずみを測定した。
この結果を表19に示す。
(3c)面方向PDの弾性率
上記(2c)破断ひずみと同様の方法により、実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートの各温度における弾性率を測定した。
この結果を表20に示す。
(4c)凹凸追従性/クラック耐性
実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シート1について、表18に記載の温度にて、凹凸追従性試験を実施した。
すなわち、乾燥機(図8参照)内部の温度を60℃または70℃に設定し、熱伝導性シート1の加熱温度を60℃または70℃に変更した以外は、上記(6)凹凸追従性試験と同様にして、熱伝導性シート1を電子部品21の凹凸に追従させた実装基板22(図7参照)を下金型23から取り出した。
この実装基板22について、熱伝導性シート1が実装基板22の部品aと部品bとの間(距離1.75mm)の基板表面と接触し、かつ、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損が発生していなかった場合を○と評価し、熱伝導性シート1と実装基板22の部品aと部品bの間の基板表面が接触していなかった場合、または、または、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間の基板表面との接触が認められたが、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損が生じた場合を×と評価した。
この結果を表18に示す。
(5c)針刺し試験
下記の方法で、針刺し試験を実施した。
実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートを、3cm×3cmの正方形に切り出して、切片を得た。その切片を、テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)、英弘精機株式会社製)の針刺し試験用の台に取り付けた。テクスチャーアナライザーの付属恒温装置により雰囲気温度を任意の温度に設定した。
次いで、円柱形状(直径5mm)の短針を10mm/sで落下させて、熱伝導性シートを突き刺して破るときの破断時のシートの厚み方向TDの伸び(mm)を測定し、シートの厚み200μmあたりの厚み方向TDの伸び(mm/シートの厚み200μm)として算出した。また、熱伝導性シートを突き刺して破るときの破断時の厚み方向TDの弾性率(MPa)も測定した。
この結果をそれぞれ表21および表22に示す。
(6c)絶縁破壊電圧測定
実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートの絶縁破壊電圧を、(5a)絶縁破壊電圧測定と同様の方法にて測定し、下記のように評価した。
× : 10kV/mm未満
△ : 10kV/mm以上 40kV/mm未満
○ : 40kV/mm以上 50kV/mm未満
◎ : 50kV/mm以上
この結果を表18に示す。
(7c)低温硬化試験
実施例1c~8cおよび比較例1cの熱伝導性シートについて、その作製した時点の熱伝導性シートをサンプル(硬化前)とした。また、 実施例1c~8cおよび比較例1cで作製した熱伝導性シートについて、90℃の温度下で24時間保存した熱伝導性シートをサンプル(硬化後)とした。これらのサンプル(硬化前)およびサンプル(硬化後)のそれぞれについてDSC測定により反応熱を解析した。
具体的には、各々のサンプル10~20mgを、DSC(「Q-2000:TA」Instruments社製)のアルミ製容器内に収容してクリンプした。次いで、5℃/minの速度で、窒素ガス雰囲気下、0℃から250℃まで昇温することにより、DSC曲線を得た。そして、このDSC曲線より算出される発熱量からエポキシ反応率を求めた。すなわち、DSC曲線において、サンプル(硬化前)の80~200℃における発熱ピークの面積と、サンプル(硬化後)の発熱ピークの面積とを比較計算することにより、エポキシ反応率を算出した。
サンプル(硬化後)の反応率が90%以上であれば〇、90%未満であれば×と評価した。
この結果を表18に示す。
次に、第5実施形態に対応する実施例および比較例として、実施例1d~7dおよび比較例1d~3dを挙げて説明する。
(熱伝導層の作製)
表23に示す配合処方にて、各成分を配合して攪拌し、真空乾燥することにより、熱伝導性組成物の混合物を調製した。
次いで、得られた混合物を粉砕機で10秒間破砕し、微細化した混合物粉末を得た。
次いで、得られた混合物粉末を二本ロールにセットした。
具体的には、まず、二本ロールのロールを70℃に加熱した。次いで、ロールの間に、離形処理面が内側になるようにセパレータ(ポリエステルフィルム、商品名「パナピールTP-03」、PANAC社製)をはさみ、上記で得た熱伝導性組成物の混合物粉末をセパレータ間にセットした。0.3m/minの速度で処理することで、プレシートを得た。
次いで、得たプレシートを10cm角に切り出し、真空加熱プレス機にセットした。
具体的には、まず、真空加熱プレス機の熱板の上に、厚さ1mmのシリコーンゴムを配置した。さらに、表面がシリコーン処理された離型フィルムを配置し、その離型フィルムの上に、上記で作製したプレシートを配置した。次いで、離型フィルムの上に、厚み200μmの真鍮製のスペーサーを、プレシートを囲むように、枠状に配置した。次いで、そのスペーサーおよびプレシートの上に、表面がシリコーン処理された離型フィルムを配置し、さらに厚さ1mmのシリコーンゴムを配置した。これによって、プレシートを2つの離型フィルムの間に厚み方向で挟み込んで、真空加熱プレス機にセットした。
次いで、10Paの真空雰囲気下、60MPaで、10分間、70℃で熱プレスすることにより、両面が離型フィルムに挟まれた、厚み176μmの熱伝導層を得た。
なお、得られた熱伝導層は、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。
また、必要な場合に応じて、Bステージ状態の熱伝導層を150℃の乾燥機に入れて、60分間加熱することにより、熱硬化させた。これによって、Cステージ状態の熱伝導層を得た。
(接着剤層の作製)
表23に示す配合処方の混合物を、アセトンおよびMEKの混合溶媒に添加し、固形分15質量%の混合液を調製した。
次いで、アプリケータにて、離型フィルムの上に、膜厚(乾燥前)が50~100μmとなるように塗布した。その後、乾燥機にて50℃で10分間乾燥し、さらに70℃で10分間乾燥させて、溶媒を除去して、離型フィルム上に積層された接着剤層(膜厚9μm)を得た。
得られた接着剤層は、Bステージ状態であり、常温でタック感を有していた。
(実施例1d)
上述で得られた接着剤層を12cm角に切り出した。次いで、熱伝導層の一方面の離型フィルムを剥離し、熱伝導層の表面(剥離面)と接着剤層の表面(離型フィルムが積層されている面とは反対側の面)とを70℃に加温されたホットプレート上に配置し10秒静置し、ハンドローラーで貼り合せ、押圧することにより、両面が離型フィルムに挟まれた、実施例1dの熱伝導性シートを得た。
(実施例2d~7d)
熱伝導層および接着剤層の配合処方を表23に記載の配合処方とした以外は、同様にして、実施例2d~7dの熱伝導性シートを得た。
(比較例1d)
熱伝導層の配合処方を表23に記載の配合処方とした以外は、同様にして、熱伝導層を得た。これを比較例1dの熱伝導性シートとした。
(比較例2d)
熱伝導層の配合処方を表23に記載の配合処方とした以外は、同様にして、熱伝導層を得た。これを比較例2dの熱伝導性シートとした。
(比較例3d)
熱伝導層および接着剤層の配合処方を表23に記載の配合処方とした以外は、同様にして熱伝導性シートを得た。これを比較例3dの熱伝導性シートとした。
(評価)
(1d)熱伝導率測定
実施例1d~7dおよび比較例1d~3dで作製された熱伝導性層(Bステージ状態)の熱伝導率を、上記(1)熱伝導性率測定と同様の方法に従い、測定した。
その結果を表23に示す。
(2d)タック力測定試験
熱伝導性シート1のタック力を測定した。
実施例1d~7dおよび比較例1d~3dにおいて得られた熱伝導性シート1を、直径10mmの円形に切り出した。テクスチャーアナライザー(圧縮-引張試験、商品名「テクスチャーアナライザー(TA.XTPL/5)」、英弘精機株式会社製)の短針の先端(直径10mm)に、切り出した熱伝導性シート1の熱伝導層1a側を、接着剤層5が下側になるように、固定した。一方、ガラスエポキシ基板(Top Line社製)を短針の落下位置(テクスチャーアナライザーの台座)に固定した。なお、これらの固定には、両面接着テープ(日東電工社製、「No.500」)を用いた。
テクスチャーアナライザーの付属恒温装置により雰囲気温度を任意の温度(25℃、70℃)に設定した。次いで、短針をゆっくり落下させ、ガラスエポキシ基板に熱伝導性シート1の接着剤層5を、1kgの荷重にて10秒間接触させた。その後、10mm/sで短針を引き上げて、熱伝導性シート1とガラスエポキシ基板とを引き剥がした。このときに必要な最大荷重を測定した。
その結果を表23に示す。
(3d)凹凸追従性/クラック耐性試験
実施例1d~7bおよび比較例1d~3dにおいて得られた熱伝導性シート1について、60および70℃にて、凹凸追従性試験を実施した。
具体的には、乾燥機(図8参照)内部の温度を60および70℃に設定し、熱伝導性シート1の加熱温度を60および70℃に変更した以外は、上記(6)凹凸追従性試験と同様にして、熱伝導性シート1を電子部品21の凹凸に追従させた実装基板22(図7参照)を下金型23から取り出した。なお、熱伝導性シート1は、その接着剤層5が電子部品21と接触するように、乾燥機内に設置した。
この実装基板22について、上記試験で実施したいずれかの温度条件において、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間(距離1.75mm)における基板表面に接触し、かつ、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損がなかった場合を○と評価した。また、熱伝導性シートが、実装基板22の部品aと部品bの間における基板表面と接触しなかった場合、または、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間における基板表面と接触していた場合でも、熱伝導性シート1の外観にクラックや破損があった場合を×と評価した。
この結果を表23に示す。
(4d)仮接着性試験
凹凸追従性試験で得られた、実施例1d~7dおよび比較例1d~3dの熱伝導性シート1が密着した実装基板22を室温に戻し、図7の実装基板22の電子部品21(a)の天井部、およびガラスエポキシ基板20に密着した熱伝導性シート1を、2mm角に井型に切り込みを入れて、高さ30cmのところから実装基板22を落下させた。
凹凸追従性/クラック耐性試験において〇と評価され、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれなかった場合を〇と評価し、電子部品21(a)の天井部の井型に切り込みを入れたシートのみが剥がれた場合を△と評価し、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれた場合を×と評価し、凹凸追従性/クラック耐性試験に×と評価され、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれなかった場合を×△と評価した。
その結果を表23に示す。
(5d)接着性試験
凹凸追従性試験で得られた、実施例1d~7dおよび比較例1d~3dの熱伝導性シート1が密着した実装基板22について、さらに90℃にて1日間加熱し、熱伝導性シートと実装基板とを接着させた。
凹凸追従性/クラック耐性試験において〇と評価され、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれなかった場合を〇と評価し、電子部品21(a)の天井部の井型に切り込みを入れたシートのみが剥がれた場合を△と評価し、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれた場合を×と評価し、凹凸追従性/クラック耐性試験に×と評価され、シートまたは井型に切り込みを入れたシート部位が剥がれなかった場合を×△と評価した。
その結果を表23に示す。
(6d)滑落試験/落下試験
実施例1d~7dおよび比較例1d~3dの熱伝導性シート1の接着剤層5表面をガラスエポキシ基板に常温または70℃にて接触させることにより、仮固定を試みた。
具体的には、ガラスエポキシ基板(Top Line社製)上に2cm角の熱伝導性シート1を配置し、常温で1kgの荷重にて圧着して仮固定を実施した。この常温で仮固定されたガラスエポキシ基板を逆さにした際に、熱伝導性シート1がガラスエポキシ基板から滑落しなかった場合を〇と評価した。
上記常温での仮固定においてガラスエポキシ基板から滑落した熱伝導性シート1について、常温から70℃に変更して仮固定を再度実施した後、ガラスエポキシ基板を1mの高さから3回落下させた。このとき、熱伝導性シート1がガラスエポキシ基板から剥離しなかった場合を△と評価し、剥離した場合を×と評価した。
その結果を表23に示す。
(7d)絶縁破壊電圧測定
実施例1d~7dおよび比較例1d~3dの熱伝導性シートの絶縁破壊電圧を、(5a)絶縁破壊電圧測定と同様の方法にて測定し、下記のように評価した。
× : 30kv/mm 未満
○ : 30kv/mm 以上 50kv/mm未満
◎ : 50kv/mm 以上
その結果を表23に示す。
次に、第6実施形態に対応する実施例、参考例および比較例として、実施例1e~7e、参考例1eおよび比較例2eを挙げて説明する。
(実施例1e)
表24に示される配合量となるように、まず、エポキシ樹脂およびアクリルゴム15質量%MEK溶液を秤量し、これにMEKを添加して超音波洗浄機にて相溶させた。その後、硬化剤、硬化促進剤および窒化ホウ素粒子を順次混合し、減圧乾燥によりMEKを揮発させ、粉砕機にて粉砕することにより、熱伝導性組成物粉末を得た。
次いで、得られた熱伝導性組成物粉末を二本ロール(加熱温度70℃、回転速度1.0rpm)により、離型フィルムとしてポリエステルフィルム(商品名「SG-2」、PANAC社製)を用い、圧延し、プレシートを成形した。
プレシートを真空加熱プレス機で、70℃、5分間で真空乾燥させ、次いで、60MPaで10分間加圧プレスを実施した後、除圧し、室温まで放冷することにより、熱伝導層を得た。厚みは、200μmであった。
なお、得られた熱伝導層は、Bステージ状態であり、ゴム弾性を有していた。
次いで、粘着剤層として、離型フィルム(厚さ75μm、ポリエステルフィルム)の上に、アクリル粘着剤層(厚さ2μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、基材フィルム(厚さ1μm、ポリエステルフィルム)、および、アクリル粘着剤層(厚さ2μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が順次積層されている粘着剤層シート(極薄両面接着テープ No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm、熱伝導率0.10W/m・k)を用意した。このアクリル粘着剤層シートの上に、ローラーを用いて、上記で得た熱伝導層を貼着させることにより、実施例1eの熱伝導性シートを得た。
(実施例2e)
粘着剤層シートを、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ、No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm)の代わりに、離型フィルム(厚さ75μm、ポリエステルフィルム)の上に、アクリル粘着剤層(厚さ4.5μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、基材フィルム(厚さ1μm、ポリエステルフィルム)、および、アクリル粘着剤層(厚さ4.5μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が順次積層されている粘着剤層シート(極薄両面接着テープ No.5601、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は10μm、熱伝導率0.10W/m・k)を用意した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱伝導性シートを作製した。
(実施例3e)
粘着剤層シートを、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ、No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm)の代わりに、離型フィルム(厚さ75μm、ポリエステルフィルム)の上に、アクリル粘着剤層(厚さ14.5μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、基材フィルム(厚さ1μm、ポリエステルフィルム)、および、アクリル粘着剤層(厚さ14.5μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が順次積層されている粘着剤層シート(極薄両面接着テープ No.5603、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は30μm、熱伝導率0.10W/m・k)を用意した以外は、実施例1eと同様にして、実施例3eの熱伝導性シートを作製した。
(実施例4e)
熱伝導性組成物を表24に示す配合処方に変更した以外は、実施例1eと同様にして、実施例4eの熱伝導性シートを作製した。
(実施例5e)
粘着剤層シートを、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ、No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm)の代わりに、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ No.5601、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は10μm)を用意した以外は、実施例4eと同様にして、実施例5eの熱伝導性シートを作製した。
(実施例6e)
粘着剤層シートを、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ、No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm)の代わりに、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ No.5603、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は30μm)を用意した以外は、実施例4eと同様にして、実施例6eの熱伝導性シートを作製した。
(実施例7e)
粘着剤層シートを、粘着剤層シート(極薄両面接着テープ、No.5600、日東電工社製、離型フィルムを除いた層厚は5μm)の代わりに、アクリル粘着剤層(厚さ5μm、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)を用意した以外は、実施例1eと同様にして、実施例7eの熱伝導性シートを作製した。
(参考例1e)
粘着剤層シートを貼着しなかった以外は実施例1eと同様にした以外は、参考例1eの熱伝導性シートを作製した。つまり、実施例1eで作製した熱伝導層のみを参考例1eの熱伝導性シートとした。
(比較例2e)
熱伝導性組成物を表24に示す配合処方に変更した以外は、実施例1eと同様にして、比較例2eの熱伝導性シートを作製した。
(評価)
(1e)熱伝導率測定
実施例1e~7e、参考例1eおよび比較例2eの熱伝導層の熱伝導率を、上記(1)熱伝導性率測定と同様の方法に従い、測定した。
その結果を表24に示す。
(2e)凹凸追従性試験(80℃)
実施例1e~7e、参考例1eおよび比較例2eにおいて得られた熱伝導性シート1について、80℃にて、凹凸追従性試験を実施した。
具体的には、乾燥機(図8参照)内部の温度を80℃に設定し、熱伝導性シート1の加熱温度を80℃に変更し、乾燥機内部の熱伝導性シート1の静置時間を60分に変更した以外は、上記(6)凹凸追従性試験と同様にして、熱伝導性シート1を電子部品21の凹凸に貼着させた実装基板22(図7参照)を下金型23から取り出した。なお、熱伝導性シート1は、その粘着剤層6が電子部品21と接触するように、乾燥機内に設置した。
この実装基板22について、熱伝導性シート1が、実装基板22の部品aと部品bとの間(距離1.75mm)の基板表面に接触しており、かつ、熱伝導性シート1にクラックの発生が認められなかった場合を合格とした。一方、熱伝導性シート1と、実装基板22の表面(部品aと部品bとの間)に隙間が生じていた場合、または、熱伝導性シート1が、実装基板22の表面(部品aと部品bとの間)に接触していたが、部品aの角に接触している1箇所以外においても、熱伝導性シート1にクラックの発生が認められた場合を不合格とした。
実施例1e~7eb、参考例1eおよび比較例2eの熱伝導性シート1をそれぞれ3枚ずつ用意して、この凹凸追従性試験を3回実施した結果、3回とも合格であった場合を○と評価し、2回合格であった場合を△と評価し、3回とも不合格であった場合を×と評価した。
それらの結果を表24に示す。
(3e)剥離強度試験(80℃)
上記(2e)の凹凸追従性試験(80℃)で得られた、熱伝導性シートが貼着された実装基板について、微少部切削装置(SAICAS、ダイプラウインテス社製)を用いて、剥離強度を測定した。まず、熱伝導性シートが貼着された実装基板をSAICASに設置し、電子部品に密着していない箇所の(すなわち、直接基板に密着している箇所の)熱伝導性シートの上に、幅1mmのダイヤモンド刃先の切り刃を押し当て、水平/垂直成分速度一定(水平=10μm・s-1、垂直=1μm・s-1)でシート内部へ斜め方向に切り込み(斜め方向切り込み段階)、粘着剤層シートと基板との界面付近から水平に切り込んだ(水平方向切り込み段階)。刃にかかる水平/垂直方向の力をロードセルで検出し、同時に試料表面と刃の垂直方向位置の高低差を変位センサーで検出して切り込み深さとして測定した。
測定により、水平方向切り込み段階で、熱伝導性シートと基板との剥離を確認した場合を○と評価し、斜め方向切り込み段階で、熱伝導性シートと基板との剥離を確認した場合を△と評価し、切り刃を熱伝導性シートに押し当てた直後に、熱伝導性シートと基板との剥離を確認した場合を×と評価した。
それらの結果を表24に示す。
(4e)絶縁破壊電圧測定
実施例1e~7e、参考例1eおよび比較例2eで作製した熱伝導性シートの絶縁破壊電圧を、(5a)絶縁破壊電圧測定と同様の方法にて測定し、下記のように評価した。
× : 10kV/mm未満
△ : 10kV/mm以上 40kV/mm未満
○ : 40kV/mm以上
それらの結果を表24に示す。
表1~12および表15~24における各成分中の数値は、特段の記載がない場合には、g数を示す。表13および表14における各成分中の数値は、質量部を示す。
また、表中、各成分の略称について、以下にその詳細を記載する。
・PT-110:商品名、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(レーザー回折・散乱法)45μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
・MGZ-3:商品名、水酸化マグネシウム、平均粒子径0.1μm、堺化学工業社製
・EXA-4850-1000:商品名「エピクロンEXA-4850-1000」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量310~370g/eq.、常温液体、粘度(25℃)100,000mPa・s、DIC社製
・EXA-4850-150:商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量410~470g/eq.、常温液体、粘度(25℃)15,000mPa・s、DIC社製
・EG-200:商品名「オグソールEG-200」、フルオレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量292g/eq.、常温半固形、大阪ガスケミカルズ社製
・YSLV-80XY:商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~210g/eq.、常温固形、融点75~85℃、新日鐵化学社製
・EPPN:商品名「EPPN-501HY」、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量163~175g/eq.、常温固形、軟化点57~63℃、日本化薬社製
・HP-7200:商品名「エピクロンHP-7200」、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量254~264g/eq.、常温固形、軟化点56~66℃、DIC社製
・1002:商品名「JER1002」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量600~700g/eq.、常温固形、軟化点78℃、三菱化学社製
・1256:商品名「JER1256」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量7500~8500g/eq.、常温固形、軟化点85℃、三菱化学社製
・MEH-7800-S:商品名、フェノール・アラルキル樹脂、硬化剤、水酸基当量173~177g/eq.、明和化成社製
・MEH-7800-SS:商品名、フェノール・アラルキル樹脂、硬化剤、水酸基当量173~177g/eq.、明和化成社製
・2P4MHZ-PW:商品名「キュアゾール2P4MHZ-PW」、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、イミダゾール化合物、硬化促進剤、四国化成社製
・2MAOK-PW:商品名、2,4-ジアミノ-6-[2´-メチルイミダゾリル-(1´)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、硬化促進剤、四国化成社製、分解点(融点)260℃
・Sylgard 184:商品名、シリコーン樹脂、東レ・ダウコーニング社製
・Art-333MEK75%溶液:商品名「アートレジンUN-333」、アクリレート変性ウレタンゴム、溶媒:メチルエチルケトン、ゴム組成物の含有割合75質量%、平均ビニル基数:2、ビニル基当量2500g/eq.、重量平均分子量5,000、根上工業社製
・Art-5507MEK70.6%溶液:商品名「アートレジンUN-5507」、アクリレート変性ウレタンゴム、溶媒:メチルエチルケトン、ゴム組成物の含有割合70.6質量%、平均ビニル基数:2、ビニル基当量1100g/eq.、重量平均分子量17,000、根上工業社製
・XER-32C:商品名、カルボキシ変性NBR、JSR社製
・1072J:商品名「Nipol 1072J」、カルボキシ変性NBR、日本ゼオン社製
・DN631:商品名「Nipol DN631」、カルボキシ変性NBR、日本ゼオン社製
・SIBSTAR:商品名「SIBSTAR 072T」、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)、カネカ社製
・BR-1220:商品名「Nipol BR-1220」、変性ポリブタジエンゴム、日本ゼオン社製
・PB3600:商品名「エポリード PB3600」、エポキシ変性ポリブタジエン、数平均分子量5900、ダイセル化学工業社製
・AT501:商品名「エポフレンド AT501」、エポキシ変性SBR、スチレン含量40質量%、ダイセル化学工業社製
・SG-P3MEK15%溶液:商品名「テイサンレジン SG-P3」、エポキシ変性したアクリル酸エチル-アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体、溶媒:メチルエチルケトン、ゴム組成物の含有割合15質量%、重量平均分子量850,000、エポキシ当量210eq./g、理論ガラス転移温度12℃、ナガセケムテックス社製
・SG-280TEAトルエン/酢酸エチル15%溶液:商品名「テイサンレジン SG-280TEA」、溶媒:トルエン/酢酸エチル、ゴム組成物の含有割合15質量%、カルボキシ変性したアクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体、重量平均分子量900,000、酸価30mgKOH/g、理論ガラス転移温度-29℃、ナガセケムテックス社製
・SG-80H MEK18%溶液:商品名「テイサンレジン SG-80H」、エポキシ変性したアクリル酸エチル-アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体、溶媒:メチルエチルケトン、ゴム組成物の含有割合18質量%、重量平均分子量350,000、エポキシ当量0.07eq./kg、理論ガラス転移温度11℃、ナガセケムテックス社製
・LA2140e:商品名「クラリティ LA2140e」、メタクリル酸メチル-アクリル酸n-ブチル-メタクリル酸メチルブロック共重合体、クラレ社製
・LA2250:商品名「クラリティ LA2250」、メタクリル酸メチル-アクリル酸n-ブチル-メタクリル酸メチルブロック共重合体、クラレ社製
・AR31:商品名「Nipol AR31」、アクリルゴム、ガラス転移温度-15℃、分解温度300℃、ムーニー粘度40ML1+4(100℃)、比重1.10、日本ゼネオン社製
・イルガキュア907:商品名、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、α-アミノケトン系化合物、光重合開始剤、長瀬産業社製
・DETX-S:商品名「カヤキュアDETX-S」、2,4-ジメチルチオキサントン、チオキサントン化合物、光重合開始剤、長瀬産業社製
・AIBN:2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル、アゾ化合物、熱重合開始剤
・STN:商品名ルーセンタイトSTN、合成スメクタイト、コープケミカル社製
・BYK-2095:商品名「DISPER BYK-2095」、ポリアミノアマイド塩およびポリエステルの混合物、分散剤、ビックケミー・ジャパン社製
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
産業上の利用分野
本発明の熱伝導性シートは、各種の工業製品に適用することができ、例えば、電子部品、電子部品が基板に実装された実装基板などに貼着または被覆する放熱シートなどが挙げられる。