JP4008420B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、記録層が凹凸パターンで形成された磁気記録媒体の製造方法に関する。
従来、ハードディスク等の磁気記録媒体は、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により著しい面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されている。
しかしながら、ヘッドの加工限界、磁界の広がりに起因するサイドフリンジ、クロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による面記録密度の向上は限界にきているため、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、記録層を所定の凹凸パターンで形成してなるディスクリートトラックメディアやディスクリートビットメディア等の所謂パターンドメディアタイプの磁気記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、媒体表面が凹凸パターンであるとヘッド・スライダの浮上高さが不安定となり、記録・再生特性が悪化することがあるため、凹凸パターンの記録層上に非磁性材を成膜して凹部を充填し、記録層上の余剰の非磁性材を除去して表面を平坦化する必要がある。
記録層を凹凸パターンに加工する手法としてはドライエッチングの手法を利用しうる。又、非磁性材を成膜する手法としては半導体製造の分野で用いられているスパッタリング等の成膜技術を利用しうる。又、記録層上の余剰の非磁性材を除去して平坦化する手法についても半導体製造の分野で用いられているCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の加工技術を利用しうる。
特開平9−97419号公報
しかしながら、CMP法は、1〜2nm程度のナノオーダーで加工量(厚さ)を精密に制御することが困難であり、記録層の非磁性材を除去した後、更に非磁性材と共に記録層の一部を除去することで、両者の加工速度の差のために却って表面の段差が増加することがあった。
又、CMP法はウェットプロセスであるため、記録層の加工工程等のドライプロセスと組合わせると、被加工物の搬送等が煩雑となり、製造工程全体として効率が低下するという問題があった。
又、CMP法を用いると、スラリーが記録層と反応し、記録層の磁気特性が劣化しやすいという問題があった。更に、CMP法を用いるとスラリーの除去のために洗浄等に多大な時間、コストを要するという問題もあった。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、凹凸パターンで形成された記録層を有し、表面が充分に平坦で記録再生精度が良好な磁気記録媒体を効率良く製造できる磁気記録媒体の製造方法を提供することをその課題とする。
本発明は、平坦化工程でドライエッチングを用いると共に該ドライエッチングに対する非磁性材のエッチングレートと、記録層のエッチングレートと、が実質的に等しくなるようにエッチング条件を設定することで上記課題を解決したものである。ドライエッチングは、膜の突出した部位を他の部位よりも選択的に速く除去する傾向があるので平坦化効果が高く、更にCMP法よりも加工量の制御が容易であると共に、非磁性材のエッチングレートと、記録層のエッチングレートと、を実質的に等しくすることで、記録層上の非磁性材を完全に除去した後、非磁性材と共に記録層の一部を除去しても記録層の上面と、非磁性材の上面と、の段差が増加することを防止できる。
即ち、次のような本発明により、上記課題の解決を図ることができる。
(1)基板上に所定の凹凸パターンで形成された記録層上に非磁性材を成膜することにより前記凹凸パターンの凹部を充填する非磁性材充填工程と、前記記録層上の余剰の前記非磁性材をドライエッチングにより除去して表面を平坦化する平坦化工程と、を含み、該平坦化工程のドライエッチングに対する前記非磁性材のエッチングレートと、前記記録層のエッチングレートと、が実質的に等しくなるように加工条件の設定がなされたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2)前記ドライエッチングとしてイオンビームエッチングを用いると共に前記加工条件の設定として前記基板の表面に対するイオンビームの入射角が所定の範囲に制限されたことを特徴とする前記(1)の磁気記録媒体の製造方法。
(3)前記ドライエッチングの加工用ガスとして複数の種類のガスを含む混合ガスを用いると共に前記加工条件の設定として前記加工用ガスに含まれるガスの構成比率が所定の範囲に制限されたことを特徴とする前記(1)又は(2)の磁気記録媒体の製造方法。
(4)前記非磁性材として前記ドライエッチングに対するエッチングレートが異なる複数の種類の材料を含む複合材料を用いると共に、前記加工条件の設定として前記複合材料に含まれる材料の構成比率が所定の範囲に制限されたことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかの磁気記録媒体の製造方法。
(5)前記非磁性材の成膜手法として該非磁性材の前記ドライエッチングに対するエッチングレートが成膜条件により変化する成膜手法を用い、前記加工条件の設定として前記成膜条件が調整されたことを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかの磁気記録媒体の製造方法。
(6)前記非磁性材充填工程は、前記基板にバイアスパワーを印加しつつ前記非磁性材を成膜する成膜手法を用いることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかの磁気記録媒体の製造方法。
尚、本出願において、「凹凸パターンで形成された記録層」とは、多数の記録要素に分割された記録層の他、一部が連続するように部分的に分割された記録層、螺旋状の渦巻き形状の記録層のように基板上の一部に連続して形成された記録層、凸部及び凹部双方が形成された連続した記録層、も含む意義で用いることとする。
又、本出願において「余剰の非磁性材」とは、記録層の上面よりも上側(基板と反対側)に存在する非磁性材という意義で用いることとする。
又、本出願において「エッチングレート」という用語は、エッチングによる単位時間当たりの加工量という意義で用いることとする。
又、本出願において「非磁性材のエッチングレートと、記録層のエッチングレートと、が実質的に等しい」とは、両者のエッチングレートの差が例えば10%以下程度の微小な範囲に収束するような場合を意味し、両者のエッチングレートの差が完全に0である場合に限定されない。
又、本出願において「イオンビームエッチング」という用語は、例えばイオンミリング等の、イオン化したガスを被加工体に照射して除去する加工方法の総称という意義で用いることとする。
又、本出願において「イオンビームの入射角」という用語は、イオンビームが被加工体の表面に対して入射する角度であって、被加工体の表面とイオンビームの平均的な照射方向とがなす角度という意義で用いることとする。例えば、イオンビームの中心軸が被加工体の表面と平行である場合、入射角は0°であり、イオンビームの中心軸が被加工体の表面と垂直である場合+90°である。
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magnet Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
本発明は、平坦化工程にドライエッチングを用いることで高い平坦化効果が得られ、更に非磁性材のエッチングレートと、記録層のエッチングレートと、が実質的に等しくなるようにエッチング条件を設定することで、記録層上の非磁性材を完全に除去した後、非磁性層と共に記録層の一部を除去しても記録層の上面と、非磁性材の上面と、の段差が増加することを防止できる。又、ドライエッチングを用いることで、スラリーの洗浄等が不要となり、更に他のドライプロセスと組合わせることで製造工程全体の効率を向上させることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の第1実施形態は、基板上に連続記録層等を形成してなる図1に示されるような被加工体の加工出発体に加工を施すことにより、連続記録層を所定の凹凸パターンで多数の記録要素に分割すると共に記録要素の間の凹部(凹凸パターンの凹部)に非磁性材を充填して図2に示されるような磁気記録媒体を製造する製造方法に関するものであり、非磁性材充填工程及び平坦化工程に特徴を有している。他の工程については従来と同様であるので説明を適宜省略することとする。
図1に示されるように、被加工体10の加工出発体は、ガラス基板12に、下地層14、軟磁性層16、配向層18、連続記録層20、第1のマスク層22、第2のマスク層24、レジスト層26がこの順で形成された構成とされている。
下地層14は、厚さが30〜200nmで、材料はTa(タンタル)、Cr(クロム)又はCr合金である。軟磁性層16は、厚さが50〜300nmで、材料はFe(鉄)合金又はCo(コバルト)合金である。配向層18は、厚さが3〜30nmで、材料はCr、非磁性のCoCr合金、Ti(チタン)、MgO(酸化マグネシウム)等である。連続記録層20は、厚さが5〜30nmで、材料はCoCr(コバルト−クロム)合金である。第1のマスク層22は、厚さが3〜50nmで、材料はTiN(窒化チタン)である。
第2のマスク層24は、厚さが3〜30nmで、材料はNi(ニッケル)である。レジスト層26は、厚さが30〜300nmで、材料はネガ型レジスト(NBE22A 住友化学工業株式会社製)である。
図2に示されるように、磁気記録媒体30は垂直記録型のディスクリートタイプの磁気ディスクで、記録層32は、前記連続記録層20を微細な間隔で多数の記録要素32Aに分割してなる凹凸パターンとされている。記録要素32Aは、具体的には、データ領域においてトラックの径方向に微細な間隔で同心円状に形成され、サーボ領域では所定のサーボ情報等のパターンで形成されている。又、記録要素32Aの間の凹部34には、非磁性材36が充填され、記録要素32A及び非磁性材36上に保護層38、潤滑層40がこの順で形成されている。
非磁性材36は、材料がSiO(二酸化ケイ素)である。保護層38は、厚さが1〜5nmで、材料はダイヤモンドライクカーボンと呼称される硬質炭素膜である。尚、本出願において「ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という)」という用語は、炭素を主成分とし、アモルファス構造であって、ビッカース硬度測定で200〜8000kgf/mm2程度の硬さを示す材料という意義で用いることとする。潤滑層40は、厚さが1〜2nmで、材料はPFPE(パーフロロポリエーテル)である。
次に、被加工体10の加工方法について、図3のフローチャートに沿って説明する。
まず、図1に示される被加工体10の加工出発体を加工し、連続記録層20を記録要素32Aに分割して記録層32を形成する(S102)。
被加工体10の加工出発体は、具体的にはガラス基板12に、下地層14、軟磁性層16、配向層18、連続記録層20、第1のマスク層22、第2のマスク層24をこの順でスパッタリング法により形成し、更にレジスト層26をスピンコート法で塗布することにより得られる。尚、ディッピング法によりレジスト層26を塗布してもよい。
この被加工体10の加工出発体のレジスト層26に転写装置(図示省略)を用いて、サーボ領域にコンタクトホールを含む所定のサーボパターンを、データ領域に径方向に微細な間隔で凹凸パターンをナノ・インプリント法により転写し、Oガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、凹凸パターンの凹部底面のレジスト層26を除去する。尚、レジスト層26を露光・現像して、凹凸パターンに加工してもよい。
次に、Ar(アルゴン)ガスを用いたイオンビームエッチングにより、凹部底面の第2のマスク層24を除去し、更にSF(6フッ化硫黄)ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、凹部底面の第1のマスク層22を除去する。これにより、凹部底面に連続記録層20が露出する。次に、COガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、凹部底面の連続記録層20を除去する。これにより、連続記録層20が多数の記録要素32Aに分割され、記録層32が形成される。次に、SFガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、記録要素32Aの上面に残存する第1のマスク層22を完全に除去し、凹凸パターンの記録層32が表面に形成された図4に示されるような被加工体10が得られる。
次に、バイアススパッタリング法により図5に示されるように、被加工体10にバイアスパワーを印加しつつSiO(非磁性材36)の粒子を被加工体10の表面に成膜し、記録要素32Aの間の凹部34を充填する(S104)。ここで、非磁性材36は記録要素32Aを完全に被覆するように成膜する。
この際、Ar等のスパッタリングガスがSiOのターゲットに衝突することによりSiOの粒子が飛散して被加工体10の表面に、記録要素の凹凸形状に倣って一様に堆積しようとするので、非磁性材36は表面が凹凸形状となる傾向がある。
一方、被加工体10にバイアスパワーを印加することにより、スパッタリングガスは被加工体10の方向に付勢されて堆積済みのSiOに衝突し、堆積済みのSiOの一部をエッチングする。このエッチング作用は、堆積済みのSiOのうち、突出した部分を他の部位よりも速く選択的に除去する傾向があるので、非磁性材36の表面の凹凸は次第に均される。尚、実際にはこれらの作用は同時に進行し、成膜作用がエッチング作用を上回ることで表面の凹凸が小さく抑制されつつ非磁性材36の成膜が進行する。
従って、非磁性材36は、図5に示されるように、表面の凹凸が抑制された形状で成膜される。
次に、図6に示されるように、イオンビームエッチングを用いて記録要素32Aの上面まで余剰の非磁性材36を除去し、記録要素32A及び非磁性材36の表面を平坦化する(S106)。ここではイオンビームエッチングの加工用ガスとしてArガスを用い、イオンビームの入射角を50°以上、且つ、60°以下の範囲に制限し、記録要素32Aの上面まで非磁性材36を除去する。このようにイオンビームの入射角を表面に対して垂直な方向から傾斜させることで、凹凸を均す効果を高めることができる。
更に、図7に示されるように、上記の範囲にイオンビームの入射角を制限することで同図中に符号Aを付した曲線で示されるSiO(非磁性材36)のエッチングレートと、同図中に符号Bを付した曲線で示されるCoCr合金(記録層32)のエッチングレートと、が実質的に等しくなるので、記録要素32A上の非磁性材36を除去した後、非磁性材36と共に記録要素32Aの一部を除去したとしても、記録要素32Aの上面と、非磁性材36の上面と、の段差が増加することがない。尚、図7は、成膜時のスパッタリングガスのガス圧を0.3Paに調節した場合の、SiOのエッチングレートを示す。
これにより、図8に示されるように、記録要素32A上の非磁性材36を完全に除去し、非磁性材36及び記録要素32Aの上面を充分に平坦化することができる。
尚、非磁性材充填工程(S104)においてバイアスパワーを印加することで非磁性材36は表面の凹凸が抑制されて成膜されているので、それだけ平坦化が容易である。
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により記録要素32A及び非磁性材36の上面に保護層38を形成する(S108)。更に、ディッピング法により保護層38の上に潤滑層40を塗布する(S110)。これにより、前記図2に示される磁気記録媒体30が完成する。
以上のように、バイアスパワーを印加して表面の凹凸を抑制しつつ非磁性材36を成膜し、更に、イオンビームエッチングを用いて、且つ、記録要素32A及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるようにイオンビームの入射角を制限することで記録要素32A及び非磁性材36の表面を所望のレベルまで確実に平坦化することができ、潤滑層40の表面も所望のレベルまで充分に平坦となる。従ってヘッド・スライダの安定した浮上特性が得られる。
尚、本第1実施形態において、スパッタリング法により非磁性材36を成膜しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばイオンビームデポジション等の他の成膜手法により、非磁性材36を成膜してもよい。この場合も、バイスパワーを印加することで表面の凹凸を抑制する効果が得られる。一方、平坦化工程(S106)で充分に表面を平坦化することができれば、バイスパワーを印加しない成膜手法を用いて非磁性材36を成膜してもよい。
又、本第1実施形態において、イオンビームエッチングの加工用ガスとしてArガスを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)等の他の不活性ガスやC(6フッ化エタン)、SF(6フッ化硫黄)、CF(4フッ化炭素)等のハロゲン系ガスを加工用ガスとして用いても良い。ハロゲン系ガスとしては、フッ素系ガスの他、塩素系ガスを用いることもできるが、残留した加工用ガスのクリーニングが容易であるという点で、フッ素系ガスを用いることが好ましい。
又、本第1実施形態において、イオンビームの入射角を50°以上、且つ、60°以下の範囲に制限しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、加工用ガスの種類、記録層32、非磁性材36の材質に応じて、イオンビームの入射角は記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるように適宜調整すればよい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態は、上記第1実施形態に対し、平坦化工程(S106)でイオンビームエッチングの加工用ガスとしてArガス及びC(6フッ化エタン)ガスの混合ガスを用いると共にイオンビームの入射角を約90°に設定し、加工用ガス中のArガスの流量比率を80%以上、且つ、90%以下の範囲に制限したものである。その他については前記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
加工用ガス中のArガスの流量比率に対するSiO(非磁性材36)のエッチングレートは図9中に符号Cを付した曲線のようになり、CoCr合金(記録層32)のエッチングレートは同図中に符号Dを付した曲線のようになる。
更に、図9に示されるように、上記の範囲に加工用ガス中のArガスの流量比率を制限することにより、非磁性材36のエッチッグレートと、記録層32のエッチングレートと、を実質的に等しくすることができ、記録要素32A上の非磁性材36を除去した後、非磁性材36と共に記録要素32Aの一部を除去したとしても、記録要素32Aの上面と、非磁性材36の上面と、の段差が増加することがない。
以後、前記第1実施形態と同様に保護層38、潤滑層40を形成し、磁気記録媒体30が完成する。
尚、本第2実施形態において、加工用ガスとしてArガス及びCガスの混合ガスを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、SF、CF等の他のハロゲン系ガスとAr、Kr、Xe等の他の不活性ガスとの混合ガスを用いても良い。又、3種類以上のガスで加工用ガスを構成してもよい。
又、本第2実施形態において、イオンビームの入射角を約90°に設定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、イオンビームの入射角は、加工用ガスの種類、記録層32、非磁性材36の材質に応じて、記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるように適宜調整すればよい。
又、本第2実施形態において、加工用ガス中のArガスの流量比率を80%以上、且つ、90%以下の範囲に制限しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、加工用ガス中のガスの構成比率は、加工用ガスの種類、記録層32、非磁性材36の材質、イオンビームの入射角に応じて、記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるように適宜調整すればよい。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本第3実施形態は、上記第1実施形態に対し、平坦化工程(S106)でCO(一酸化炭素)ガス及びNH(アンモニア)ガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングを用い、非磁性材36の材料としてCOガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングに対するエッチングレートが異なるSiO及びC(炭素)を混合してなる複合材料を用いるようにし、且つ、複合材料中のSiOの体積の構成比率を約25%以上、且つ、35%以下に制限したものである。その他については前記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。複合材料中のSiOの体積の構成比率に対するSiO及びCの複合材料(非磁性材36)の平均的なエッチングレートは図10中に符号Eを付した曲線のようになる。尚、同様の加工条件におけるCoCr合金(記録層32)のエッチングレートを図10中に符号Fを付した直線で示す。
このように、COガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングを用いた場合も、反応ガスと、Cと、が化学反応してCが脆性化されるので、それだけエッチングレートを高めることができ、記録層と実質的に等しくなるようにエッチングレートを高めることができる。
又、図10に示されるように、複合材料中のSiOの体積の構成比率を上記の範囲に制限することにより、非磁性材36のエッチッグレートと、記録層32のエッチングレートと、を実質的に等しくすることができ、記録要素32A上の非磁性材36を除去した後、非磁性材36と共に記録要素32Aの一部を除去したとしても、記録要素32Aの上面と、非磁性材36の上面と、の段差が増加することがない。
以後、前記第1実施形態と同様に保護層38、潤滑層40を形成し、磁気記録媒体30が完成する。
尚、本第3実施形態において、非磁性材36の材料としてCOガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングに対するエッチングレートが異なるSiO及びC(炭素)を混合してなる複合材料を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、平坦化工程(S106)におけるエッチングレートが異なる材料であれば、他の非磁性材を含む複合材料を用いても良い。又、3種類以上の非磁性材で複合材料を構成してもよい。
又、本第3実施形態において、複合材料中のSiOの体積の構成比率を約25%以上、且つ、35%以下の範囲に制限しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複合材料中の非磁性材の構成比率は、加工用ガスの種類、記録層32、非磁性材36の材質に応じて、記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるように適宜調整すればよい。
又、本第3実施形態において、平坦化工程(S106)においてCOガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層32、非磁性材36の材質に応じて、C、SF6、CF等のハロゲン系ガスを反応性ガスとする反応性イオンエッチングや、反応性イオンビームエッチングを用いても良い。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本第4実施形態は、上記第1実施形態に対し、平坦化工程(S106)におけるイオンビームの入射角を約90°に設定すると共に非磁性材充填工程(104)における成膜条件としてスパッタリングガスのガス圧を0.7〜0.8Pa、又は1.4〜1.5Paの範囲に制限したものである。その他については前記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。イオンビームの入射角が90°の場合、成膜時のスパッタリングガスのガス圧に対するSiO(非磁性材36)のエッチングレートは図11中に符号Gを付した曲線のようになる。尚、同様の加工条件におけるCoCr合金(記録層32)のエッチングレートを図11中に符号Hを付した直線で示す。
イオンビームの入射角を約90°に設定しても、図11に示されるように、スパッタリングガスのガス圧を0.7〜0.8Pa、又は1.4〜1.5Paの範囲に制限することで、非磁性材36のエッチッグレートと、記録層32のエッチングレートと、を実質的に等しくすることができる。従って、記録要素32A上の非磁性材36を除去した後、非磁性材36と共に記録要素32Aの一部を除去したとしても、記録要素32Aの上面と、非磁性材36の上面と、の段差が増加することがない。
以後、前記第1実施形態と同様に保護層38、潤滑層40を形成し、磁気記録媒体30が完成する。
尚、本第4実施形態において、イオンビームの入射角を約90°に設定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、イオンビームの入射角は、加工用ガスの種類、記録層32、非磁性材36の材質やその成膜条件に応じて、記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが実質的に等しくなるように適宜調整すればよい。
又、本第4実施形態において、平坦化工程(S106)においてArガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングや他のドライエッチングを平坦化工程(S106)で用いてもよい。
又、本第4実施形態において、非磁性材36の成膜条件としてスパッタリングガスのガス圧を調整しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、平坦化工程(S106)における記録層32及び非磁性材36のエッチングレートを実質的に等しくできれば、例えば、スパッタリングガスの種類等の他の成膜条件を調整してもよい。
又、前記第1〜第4実施形態において、第1のマスク層22、第2のマスク層24、レジスト層26を連続記録層20に形成し、3段階のドライエッチングで連続記録層20を分割しているが、連続記録層20を所望の凹凸パターンに加工できれば、レジスト層、マスク層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。
又、前記第1〜第4実施形態において、記録層32(連続記録層20)の材料はCoCr合金であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、鉄族元素(Co、Fe(鉄)、Ni)を含む他の合金、これらの積層体等の他の材料の記録要素で構成される磁気記録媒体の加工のためにも本発明を適用可能である。
又、前記第1〜第4実施形態において、非磁性材36の材料はSiOであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の酸化物、TiN(窒化チタン)等の窒化物、Ta(タンタル)、TaSi、Si等の他の非磁性材を用いてもよい。
又、前記第1〜第4実施形態において、連続記録層20の下に下地層14、軟磁性層16、配向層18が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、連続記録層20の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、下地層14、軟磁性層16、配向層18のうち一又は二の層を省略してもよい。又、各層が複数の層で構成されていてもよい。又、基板上に連続記録層を直接形成してもよい。
又、前記第1〜第4実施形態において、磁気記録媒体30はデータ領域において記録要素32Aがトラックの径方向に微細な間隔で並設された垂直記録型のディスクリートタイプの磁気ディスクであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録要素がトラックの周方向(セクタの方向)に微細な間隔で並設された磁気ディスク、トラックの径方向及び周方向の両方向に微細な間隔で並設された磁気ディスク、凹凸パターンが形成された連続記録層を有するパームタイプの磁気ディスク、トラックが螺旋形状をなす磁気ディスクの製造についても本発明は当然適用可能である。又、面内記録型の磁気ディスクにも本発明は適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等ディスク形状以外の凹凸パターンの記録層を有する他の磁気記録媒体の製造に対しても本発明を適用可能である。
上記第1実施形態のとおり、磁気記録媒体30を作製した。具体的には、記録層32を下記の凹凸パターンで形成した。
ピッチ : 150nm
凸部の幅 : 95nm
凹部の幅 : 55nm
凹凸 段差 : 20nm
次に、非磁性材充填工程(S104)で下記のような条件設定を行い、非磁性材36を約40nmの膜厚に成膜し、非磁性材36で凹部34を充填した。尚、ここで示した非磁性材36の膜厚は、成膜された非磁性材36の表面における最も突出した部位と、記録層32の上面との距離である。
投入パワー :500W
Arガス圧 :0.3Pa
バイアスパワー :250W
次に、平坦化工程(S106)で下記のような条件設定を行い、記録要素32A上の非磁性材36を完全に除去した。この際、バラツキの範囲内で、部分的に記録層もわずかにエッチングされた。尚、この加工条件における非磁性材36(SiO)、記録要素32Aのエッチングレートはいずれも約370Å/minである。
Arガス流量 :11sccm
ガス圧 :0.05Pa
ビーム電圧 :500V
ビーム電流 :500mA
サプレッサー電圧:400V
イオンビーム入射角:+55°
平坦化工程(S106)後、記録層32及び非磁性材36の表面をAFM(Atomic Force Microscope)により観察したところ、以下のような結果だった。尚、下記に示す平均段差は、記録要素32A上面と非磁性材36上面の平均段差である。
算術平均粗さRa :0.41nm
最大高さRmax :4.02nm
平均段差 :0.0nm
上記第2実施形態のとおり、平坦化工程(S106)でイオンビームエッチングの加工用ガスとしてArガス及びC(6フッ化エタン)ガスの混合ガスを用いた。尚、他の条件については実施例1と同様とした。平坦化工程(S106)の条件は下記のように設定した。本実施例2の加工条件における非磁性材36(SiO)、記録要素32Aのエッチングレートはいずれも約260Å/minである。
Ar+Cガス流量 :11sccm
加工用ガス中のArガスの流量比率:約83%
ガス圧 :0.05Pa
ビーム電圧 :500V
ビーム電流 :500mA
サプレッサー電圧 :400V
イオンビーム入射角 :+90°
平坦化工程(S106)後、記録層32及び非磁性材36の表面をAFMにより観察したところ、以下のような結果だった。
算術平均粗さRa :0.46nm
最大高さRmax :4.19nm
平均段差 :0.0nm
[比較例1]
上記実施例1に対し、イオンビームの入射角を約90°とした。他の条件は総て実施例1と同様とした。本比較例1の加工条件における非磁性材36のエッチングレートは約250Å/min、記録層32のエッチングレートは約310Å/minである。
平坦化工程(S106)後、記録層32及び非磁性材36の表面をAFMにより観察したところ、以下のような結果だった。
算術平均粗さRa :0.67nm
最大高さRmax :6.65nm
平均段差 :1.2nm
記録層32及び非磁性材36のエッチングレートを等しくした実施例1及び実施例2は、記録層32及び非磁性材36のエッチングレートが異なる比較例1よりも、表面が平坦で良好であった。
上記第3実施形態のとおり、平坦化工程(S106)でCOガス及びNHガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングを用いると共に非磁性材36の材料としてSiO及びCを混合してなる複合材料を用いた。複合材料中のSiOの体積の構成比率は約30%とした。尚、他の工程については実施例1と同様とした。平坦化工程(S106)の条件は下記のように設定した。本実施例3の加工条件における非磁性材36(SiO+C)、記録要素32Aのエッチングレートはいずれも約160Å/minである。
CO+NHガス流量 :100sccm
反応ガス中のCOガスの流量の比率:約12.5%
ガス圧 :1.0Pa
投入電力 :1000W
基板バイアス電力 :5.7W/cm
平坦化工程(S106)後、記録層32及び非磁性材36の表面をAFMにより観察したところ、以下のような結果だった。
算術平均粗さRa :0.48nm
最大高さRmax :4.68nm
平均段差 :0.0nm
上記第4実施形態のとおり、平坦化工程(S106)におけるイオンビームの入射角を約90°に設定すると共に非磁性材充填工程(104)における成膜条件としてスパッタリングガスのガス圧を0.75Paとした。尚、他の工程については実施例1と同様とした。本実施例4における非磁性材36(SiO)、記録要素32Aのエッチングレートはいずれも約310Å/minである。
平坦化工程(S106)後、記録層32及び非磁性材36の表面をAFMにより観察したところ、以下のような結果だった。
算術平均粗さRa:0.59nm
最大高さRmax :5.11nm
平均段差 :0.0nm
実施例1〜4では、いずれも記録層32上の非磁性材36が完全に除去され、記録層32も僅かにエッチングされていると考えられるが、上記のように磁気記録媒体の表面を充分に平坦化することができた。
本発明は、例えば、ディスクリートメディア、パターンドメディア等の記録層が凹凸パターンで形成された磁気記録媒体を製造するために利用することができる。
本発明の第1実施形態に係る被加工体の加工出発体の構造を模式的に示す側断面図 同被加工体を加工して得られる磁気記録媒体の構造を模式的に示す側断面図 同磁気記録媒体の製造工程の概要を示すフローチャート 表面に記録要素が形成された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図 記録要素上に非磁性材が成膜され、凹部が非磁性材で充填された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図 前記被加工体の平坦化工程を模式的に示す側断面図 同平坦化工程における加工用ガスとしてArガスを用いた場合のイオンビームの入射角とエッチングレートとの関係を示すグラフ 平坦化工程後の前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図 本発明の第2実施形態における加工用ガスとしてArガス及びCガスの混合ガスを用いた場合の加工用ガス中のArガスの比率とエッチングレートとの関係を示すグラフ 本発明の第3実施形態における複合材料中のSiOの比率とエッチングレートとの関係を示すグラフ 本発明の第4実施形態における非磁性材の成膜時のガス圧力とエッチングレートとの関係を示すグラフ
符号の説明
10…被加工体
12…ガラス基板
14…下地層
16…軟磁性層
18…配向層
20…連続記録層
22…第1のマスク層
24…第2のマスク層
26…レジスト層
30…磁気記録媒体
32…記録層
32A…記録要素
34…凹部
36…非磁性材
38…保護層
40…潤滑層
S102…記録層加工工程
S104…非磁性材充填工程
S106…平坦化工程
S108…保護層形成工程
S110…潤滑層形成工程

Claims (4)

  1. 基板上に所定の凹凸パターンで形成された記録層上に非磁性材を成膜することにより前記凹凸パターンの凹部を充填する非磁性材充填工程と、前記記録層上の余剰の前記非磁性材をドライエッチングにより除去して表面を平坦化する平坦化工程と、を含み、該平坦化工程のドライエッチングに対する前記非磁性材のエッチングレートと、前記記録層のエッチングレートと、が実質的に等しくなるように加工条件の設定がなされ、前記非磁性材として前記ドライエッチングに対するエッチングレートが異なる複数の種類の材料を含む複合材料を用いると共に、前記加工条件の設定として前記複合材料に含まれる材料の構成比率が所定の範囲に制限されたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記ドライエッチングとしてイオンビームエッチングを用いると共に前記加工条件の設定として前記基板の表面に対するイオンビームの入射角が所定の範囲に制限されたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、
    前記ドライエッチングの加工用ガスとして複数の種類のガスを含む混合ガスを用いると共に前記加工条件の設定として前記加工用ガスに含まれるガスの構成比率が所定の範囲に制限されたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  4. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記非磁性材充填工程は、前記基板にバイアスパワーを印加しつつ前記非磁性材を成膜する成膜手法を用いることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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