JP4000575B2 - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents
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Description
本発明の背景
本発明はカチオン電着塗料組成物、特に1コート仕上げまたは2コート仕上げに使用するカチオン電着塗料組成物に関する。
【0002】
電着法で形成した硬化塗膜には様々な原因で外観異常が発生する。その一つとして硬化前の電着塗膜に飛散した油滴の付着などにより生じた点々と存在するハジキと呼ばれるクレーターがある。このようなハジキ現象の発生防止には硬化前の電着塗膜表面部の粘性を高めるような成分を塗料へ添加することが有効であり、そのための添加剤がこれまで多く提案されている。
【0003】
塗膜表面に油滴などの異物の付着または塗料中に異物の存在などによるハジキとは全く別の原因で硬化塗膜に不規則な線状または筋状または縞状に局部的に集中したハジキやくぼみ(以下「線状へこみ」という。)が発生することがある。線状へこみは被塗物である金属素地にその原因がある。一般にこれら素地は電着塗装に先立って脱脂され、化成処理される。この脱脂工程において完全に脱脂されない区域が存在したり、脱脂液の乾燥過程で不規則な線状または縞状に残留物が沈着した場合、その上に形成された硬化塗膜に線状へこみが発生するものと推測されている。しかも金属素地面にそのような残留物の存在は肉眼では発見困難であり、塗装後はじめて判明する。
【0004】
このようにその発生原因が全く異なるため、これまで採られて来た油ハジキ等の防止対策は線状へこみには効果がないことは自明であろう。
【0005】
そこで本発明の課題は、線状へこみによる外観異常を防止できるカチオン電着塗料組成物、特に1コートまたは2コート仕上げ用のそのような塗料組成物を提供することである。
【0006】
本発明の開示
本発明のカチオン電着塗料組成物は、中和剤を含む水性媒体中に、ブロックポリイソシアネート硬化剤と共に分散された、
(a)アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂、
(b)イオン化基を持っているアクリル共重合体、
(c)アミノ基を有する親水性樹脂のシエルおよびゲル化疎水性樹脂のコアよりなる粒径1.0μm以下の樹脂微粒子
を含んでいる。
【0007】
前記イオン化基を持っているアクリル共重合体(b)は、アミノ基のようなカチオン化し得る基を持っている、アミン価10〜100および数平均分子量1,000〜50,000のアクリル共重合体か、またはカルボキシル基のようなアニオン化し得る基を持っている、酸価1〜50および数平均分子量1,000〜50,000のアクリル共重合体が好ましい。
【0008】
前記樹脂微粒子(c)は、シエルがカチオン電着塗料のバインダー樹脂として使用し得るアミノ基含有親水性樹脂であり、コアは自己架橋および/またはシエル部分の樹脂を架橋する疎水性樹脂か、またはエチレン性不飽和モノマーを親水性樹脂を乳化剤として使用して乳化重合して得られるエマルションでよい。
【0009】
本発明の塗料組成物は、固形分として、(a)成分60〜90重量部、(b)成分1〜20重量部、(c)成分1〜20重量部の割合で含んでいることが好ましい。
【0010】
好ましい具体例
(a)成分
アミン変性エポキシ系カチオン樹脂はカチオン電着塗料の分野では周知である。一般にこれらは分子内に複数のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ環を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環して製造される。出発樹脂の典型例は、ビスフェノールA,ビスフェノールF、ビスフェノールS,フェノールノボラック,クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物のエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。
【0011】
出発樹脂はアミンによるエポキシ環の開環反応の前に、2官能のポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオール,ビスフェノール類,2塩基性カルボン酸等を使用して鎖延長するか、またはアミンとの反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改善等を目的として、一部のエポキシ環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルのようなモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
【0012】
次にアミンとの反応によってエポキシ環を開環し、アミノ基が導入される。使用し得るアミンの例は、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩などの1級,2級または3級アミン酸塩である。アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンのようなケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミンもしばしば使用される。これらのアミンは残っているエポキシ環の全部を開環するようにエポキシ環に対してほぼ当量で反応させるのが好ましい。
【0013】
(b)成分
(b)成分はイオン化基としてアミノ基を有するアクリル共重合体、またはカルボキシル基を有するアクリル共重合体のいずれでもよい。
【0014】
アミノ基含有アクリル共重合体は、(i)アミノ基含有アクリルモノマー、(ii)水酸基含有アクリルモノマー、および(iii )それ以外のエチレン性不飽和モノマーの共重合によって得られる。さらにアミノ基含有アクリルモノマーの代わりにエポキシ基含有アクリルモノマーを水酸基含有アクリルモノマーおよびその他のエチレン性不飽和モノマーと共重合し、得られた共重合体のエポキシ環をアミンで開環することにより得ることもできる。
【0015】
アミノ基含有アクリルモノマーの典型例は、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどである。
【0016】
水酸基含有アクリルモノマー(ii)はさまざまなものが使用できるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のようなアルキレンジオールのモノ(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0017】
また、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のような(メタ)アクリルアミド類も好ましく、さらにヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの反応生成物またはヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートと六員環カーボネートとの反応生成物も好適に使用できる。
【0018】
その他のエチレン性不飽和モノマーは、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
【0019】
線状へこみ以外のハジキ、へこみを防止するため他のエチレン性不飽和モノマーの一部として、エーテル基含有アクリルモノマーを使用するのが有効である。そのようなアクリルモノマーの例は、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレートなどである。
【0020】
別法として、水酸基を有するアクリルモノマーおよびその他のエチレン性不飽和モノマーと、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーを共重合させた後、エポキシ基に二級アミンを反応させてもよい。エポキシ基との反応に使用し得る二級アミンとしては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等の2級アミンであり、特に分子内にヒドロキシル基と2級アミノ基を有するアミンが好ましい。また、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンジケチミン化物や2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールのメチルイソブチルケトンモノケチミン化物等も使用できる。
【0021】
重合は常法により溶液重合法を使用して行うことができる。共重合体の数平均分子量は1,000〜50,000、好ましくは2,000〜20,000の範囲であり、場合によりドデシルメルカプタンやチオグリコール酸2−エチルヘキシルのような連鎖移動剤を使用して重合度を調節する。
【0022】
モノマー組成において、アミノ基含有アクリルモノマーまたはこれに代わるエポキシ基含有アクリルモノマーの割合は共重合体のアミン価10〜100meq/100gに相当する割合であり、水酸基含有モノマーの割合は共重合体の水酸基価が少なくとも50mgKOH/gであるような割合である。
【0023】
カルボキシル基を有するアクリル共重合体を(b)成分に使用することもできる。
【0024】
アクリル樹脂中へのカルボキシル基の導入方法としては、カルボキシル基を含有するモノマーをカルボキシル基を含有しないモノマーと共重合させることによってポリマー鎖中にランダムに導入する方法、水酸基を有するモノマーとカルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーとの共重合体と酸無水物とのハーフエステル化反応によってカルボキシル基を導入する方法、そして分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤を用いてアクリル樹脂を合成することによって分子の末端にカルボキシル基を導入する方法がある。以下、それぞれを共重合法、開環法、そして重合開始剤法として説明する。
【0025】
(1)共重合法
共重合させるためのカルボキシル基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびイタコン酸等が挙げられる。
【0026】
一方、カルボキシル基を含有しないモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアクリルモノマー、及びスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等の非アクリルモノマーを挙げることができる。
【0027】
また、カルボキシル基を含有しないモノマーとして、水酸基を含有するアクリルモノマーを併用することができる。水酸基を含有するモノマーとしては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、そしてヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの反応生成物又はヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートと六員環カーボネートとの反応生成物等を挙げることができる。
【0028】
(2)開環法
水酸基を有するモノマーとカルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーとの共重合体と酸無水物との開環反応を使用する。
【0029】
水酸基を有するモノマーはさまざまなものが使用できるが、例えば、(1)共重合法において既に説明した水酸基を含有するモノマーを使用することができる。この場合、水酸基を含有するモノマーのみではなく、カルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーを併用する。このカルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーもさまざまなものが使用できるが、例えば、(1)共重合法において既に説明したカルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーを使用することができる。
【0030】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水マレイン酸等が使用できる。
【0031】
(3)重合開始剤法
分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、7,7’−アゾビス(7−シアノカプリル酸)、6,6’−アゾビス(6−シアノ−6−シクロヘキシルカプロン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)、2,2’−アゾビス(2−エチル−4−メトキシ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−ベンジルプロピオン酸)等が挙げられる。また、これらカルボキシル基を有する重合開始剤とチオグリコール酸等のような分子内にカルボキシル基を有する連鎖移動剤を使用すれば、より効果的に末端にカルボキシル基を導入することができる。
【0032】
これらのカルボキシル基を有する重合開始剤はアミンで中和して使用するのが好ましく、特に第三アミンとともに使用することが好ましい。第三アミンとしては、ピリジン、イソキノリン、キノリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、α−ピコリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルモルホリン、N−エチル−3,5−ジメチルモルホリン等が使用できる。
【0033】
重合開始剤は一種類でもよいし、二以上の複数のものを適宜組み合わせて使用してもよい。重合開始剤の量はモノマー混合物に対して0.1〜15重量%が好ましい。
【0034】
用いるモノマーとしては、例えば(1)共重合法において既に説明したカルボキシル基も水酸基も含有しないモノマーを使用することができる。また、水酸基を含有するモノマー、例えば(1)共重合法において既に説明した水酸基を含有するアクリルモノマーを併用することができる。
【0035】
重合は常法による溶液重合法により、数平均分子量1,000〜50,000、好ましくは2,000〜20,000酸価1〜50、好ましくは3〜20のアクリル共重合体が得られるように行われる。分子量の調節はドデシルメルカプタンやチオグリコール酸2−エチルヘキシル等の連鎖移動剤を使用して行うこともできる。
【0036】
(c)成分
親水性樹脂と疎水性樹脂とのブレンドを水中において乳化すると、親水性樹脂のシエルと疎水性樹脂のコアよりなるエマルション粒子となる。この場合疎水性樹脂が加熱により自己架橋するか、または親水性樹脂と架橋反応する架橋樹脂であれば、エマルション粒子を加熱することによってコアの疎水性樹脂を三次元網目構造へ架橋することができる。
【0037】
この方法による樹脂微粒子の製造方法は本出願人の特開昭63−137972に開示されている。この方法は樹脂微粒子をカチオン電着塗料に使用し得るように、シエルとなる親水性樹脂としてカチオン電着塗料のバインダー樹脂、好ましくはアミン化ポリブタジエン樹脂を使用する。コアとなる疎水性樹脂は、エーテル化したメチロールフェノール類、好ましくはメチロールフェノールのフェノール性水酸基をグリシジルエーテルなどのモノエポキシドとの反応によりエーテル化したエーテル化メチロールフェノール類である。アミン化ポリブタジエン樹脂中に開環されないオキシラン環を含んでいれば、テトラブロモビスフェノールAを架橋剤として併用して用いることができる。エーテル化メチロールフェノール類の架橋反応は100℃以下で進行するので、エマルション粒子を水中において加熱することにより、コア樹脂の架橋を行うことができる。これ以上の詳細は特開昭63−137973号公報参照。
【0038】
コア−シエル構造の微小樹脂粒子は、カチオン電着塗料のバインダー樹脂を乳化剤または分散剤として使用し、エチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって製造することができる。この方法は本出願人の特開平4−293973に開示されている。
【0039】
それによると、本発明の(a)成分として使用するアミン変性エポキシ樹脂、または(b)成分として使用するアミノ基含有アクリル樹脂の水分散液中でエチレン性不飽和モノマーの乳化重合を行う。エチレン性不飽和モノマーとして多官能モノマー、例えば多価アルコール(メタ)アクリレートを用いると、コアが内部架橋した樹脂である樹脂微粒子を得ることができる。この方法のこれ以上の詳細は特開平4−293973号公報参照。
【0040】
ブロックイソシアネート硬化剤
塗料分野において活性水素含有基を有するバインダー樹脂の硬化剤としてブロックポリイソシアネートを使用することは周知である。ポリイソシアネートとして、TDI,XDI,MDIのような芳香族ポリシアネート、HMDIのような脂肪族ポリイソシアネートも使用し得るが、耐食性および非黄変性の理由で、本発明にあってはIPDI,水添MDI,NBDI(ノルボルナンジイソシアネート)、それらの二量体および三量体、およびトリメチロールプロパンなどの脂肪族多価アルコールとの付加物など脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0041】
イソシアネート基をブロックするため公知のブロック剤、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、シクロヘキサール等のアルコール類;フェノール、ニトロフェノール、クレゾール、ノニルフェノール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等のオキシム類、カプロラクタムなどのラクタム類などを使用することができる。ラクタム類、オキシム類が好ましい。
【0042】
塗料組成物
塗料組成物は、固形分として、(a)成分60〜90重量部、(b)成分1〜20重量部、(c)成分1〜20重量部の割合で含むのがよい。(b)成分および(c)成分を併用して始めて線状へこみの防止に有効になる。しかしながらそれらは添加剤であるから、あまり多く添加すると主体の(a)成分の性能が十分に発揮されない。
【0043】
塗料化は、(a)成分、(b)成分および硬化剤と酸を含む水性媒体中に分散してメインエマルションをつくり、このメインエマルションへ(c)成分および顔料分散ペーストを加えて塗料とするのが好ましい。
【0044】
中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸および有機酸である。その量は少なくとも20%,好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
【0045】
硬化剤の量はバインダー樹脂中の活性水素含有基と反応して所望の性能を発揮する硬化塗膜を与えるのに必要な量でなければならず、固形分としてバインダー樹脂:硬化剤の比で表わして、一般に95:5〜45:55,好ましくは85:15〜70:30の範囲である。
【0046】
電着塗料は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。その量はブロックポリイソシアネート化合物の0.1〜10重量%が通常である。
【0047】
電着塗料は、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料、塩基性ケイ酸鉛、リンモリブデン酸アルミ等の防錆顔料、カオリン、クレー、タルク等の体質顔料のほか、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0048】
以下の製造例および実施例は、限定ではなく例示目的のみで与えられる。これらにおいて「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。
【0049】
製造例1 顔料ペースト
エポキシ系4級アンモニウム塩型顔料分散樹脂(固形分50%)19.1部、二酸化チタン30.4部、カオリン14.0部、塩基性珪酸鉛1.4部、カーボンブラック0.9部、イオン交換水34.3部の混合物をサンドグラインドミルで分散し、粒度10μm以下まで粉砕した顔料ペースト(固形分56%)を調製した。
【0050】
製造例2 ポリウレタン架橋剤
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、メチルイソブチルケトン56部で希釈した後ジブチルスズジラウレート0.2部を加え、50℃に昇温後、メチルエチルケトオキシム17部を樹脂温度が70℃を超えないように加えた。赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保持し、その後、n−ブタノール43部で希釈した。
【0051】
製造例3
攪拌器、温度計、デカンター、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器にブチルセロソルブ1500部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ120°Cに昇温し、メタクリル酸メチル627部、メタクリル酸ラウリル191部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル182部、アクリル酸−2−メトキシエチル300部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル200部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50部の混合物を3時間かけて等速滴下した。滴下終了後3時間さらに120°Cで反応後冷却しアミノ基含有アクリル共重合体を得た。得られた樹脂は不揮発分50%で数平均分子量10000であった。アミン価47
【0052】
製造例4
攪拌器、温度計、デカンター、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器にブチルセロソルブ1050部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ120°Cに昇温し、メタクリル酸メチル347部、アクリル酸−n−ブチル258部およびメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル394部の混合物およびアゾビスシアノ吉草酸15部を含む水溶液を3時間かけて等速滴下した。滴下終了後3時間さらに120°Cで反応後冷却しカルボキシル基含有アクリル樹脂を得た。得られた樹脂は不揮発分50%で数平均分子量8000および酸価5であった。
【0053】
製造例5 (a)成分プラス(b)成分含有メインエマルション
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器にエポキシ当量(以下、「EE」という。)が950のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製エポトートYD−014)950部をメチルイソブチルケトン237.5部と共に100°Cに加熱し完全に溶解させた。次いで、N−メチルエタノールアミン60部、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン73%メチルイソブチルケトン溶液73部を添加しこの混合物を120°Cで1時間保温しカチオン性樹脂を得た。このカチオン性樹脂1320部に、製造例2のポリウレタン架橋剤570部、製造例3のアミノ含有アクリル樹脂90部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル100部を混合し、氷酢酸34部、イオン交換水479部の混合液中に加え十分攪拌した後、さらにイオン交換水2215部をゆっくりと加えた。次いで、これを固形分36%になるまで減圧下で有機溶媒と水を除去しメインエマルションを得た。
【0054】
製造例6 同前
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器にエポキシ当量(以下、「EE」という。)が950のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製エポトートYD−014)950部をメチルイソブチルケトン237.5部と共に100°Cに加熱し完全に溶解させた。次いで、N−メチルエタノールアミン60部、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン73%メチルイソブチルケトン溶液73部を添加しこの混合物を120°Cで1時間保温しカチオン性樹脂を得た。このカチオン性樹脂1320部に、製造例2のポリウレタン架橋剤570部、製造例4のカルボキシル基含有アクリル樹脂90部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル100部を混合し、氷酢酸34部、イオン交換水479部の混合液中に加え十分攪拌した後、さらにイオン交換水2215部をゆっくりと加えた。次いで、これを固形分36%になるまで減圧下で有機溶媒と水を除去しメインエマルションを得た。
【0055】
製造例7 乳化重合用カチオン樹脂分散液
製造例5において、製造例3のアミノ基含有アクリル樹脂90部を270部に変更したこと以外は製造例5に同じ。
【0056】
製造例8 比較例用メインエマルション
製造例5において、製造例3のアミノ基含有アクリル樹脂を加えなかったことを除き製造例5に同じ。
【0057】
製造例9 ゲル粒子エマルション
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器に、製造例7のカチオン性樹脂分散液12.6部と、氷酢酸0.27部と、脱イオン水120部とを仕込み、75℃に昇温した。これに下記組成、
2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチルイソブチルアミジン) 0.5部
氷酢酸 0.23部
脱イオン水 20部
よりなる開始剤溶液(A)20.73部を仕込み、メタクリル酸メチル10部を5分かけて滴下し、さらに製造例7の樹脂分散液37.8部、氷酢酸0.81部、脱イオン水103.49部および下記組成、
スチレン 12部
n−ブチルアクリレート 10部
メタクリル酸メチル 52.5部
グリシジルメタクリレート 2部
プラクセルFM−1(ダイセル社製) 3.5部
ネオペンチルグリコールジメタクリレート 10部
よりなるモノマー混合液(B)90部との懸濁液を40分かけて滴下し、1時間攪拌を続けて反応を終了した。得られた架橋樹脂エマルションの粒子径は78nmで、固形分濃度は36%であった。
【0058】
製造例10 ゲル粒子エマルション
アミン化ポリブタジエン樹脂:
日石ポリブタジエンB−2000(数平均分子量2,000,1,2結合65%)を過酢酸を用いてエポキシ化し、オキシラン酸素含有量6.4%のエポキシ化ポリブタジエンを製造した。このエポキシ化ポリブタジエン1000gおよびエチルセロソルブ354gを2Lオートクレープに仕込んだ後、ジメチルアミン62.1gを加え、150℃で5時間反応させた。未反応アミンを留去してアミン化ポリブタジエン樹脂溶液を製造した。このもののアミン価は120ミリモル/100g(固形分)であって、不揮発分75%
β−ヒドロキシフェノールエーテル化合物:
タマノール722 *1) 60部
ブチルグリシジルエーテル *2) 23部
n−ブタノール 10部
メトキシブタノール 10部
ジメチルベンジルアミン 0.4部
*1)荒川化学工業(株)製,レゾール型フェノール樹脂
*2)東都化成(株)製,モノエポキシ化合物
反応容器にタマノール722を60部仕込み、n−ブタノール10部とメトキシブタノール10部とを加え、さらにブチルグリシジルエーテル23部を加える。これを均一にかきまぜながら100℃まで昇温したところで、ジメチルベンジルアミン0.4gを添加する。発熱に注意しながら100℃に保温し、十分な攪拌状態で3時間経過した後、反応生成物のグリシジル基含有量を測定したところ、仕込み量に対して5%以下となっていたので冷却した。得られた化合物の分析の結果フェノール性OH基が消失し、メチロール基と2級アルコール基を有するβ−ヒドロキシフェノールエーテル化合物を得た。
アミン化ポリブタジエン66.7部へ、β−ヒドロキシフェノールエーテル化合物62.5部、さらに氷酢酸1.8部を加え、十分に攪拌する。これに脱イオン水を加えて乳化し、さらに脱イオン水を追加しながら減圧下で溶剤を除去し、樹脂エマルションを得た。その一部をとり、100倍量のテトラヒドロフランへ加えたところ透明に溶解した。次に樹脂エマルションを55℃で7日間保温し、冷却してカチオン性ゲル微粒子分散液を得た。このものはテトラヒドロフラン中に透明に溶解せず、白濁した。粒径120nm
【0059】
実施例1〜4および比較例1〜3
製造例5および6のエマルションそれぞれへ、製造例9または10のゲル化粒子エマルションを表1に示した固形分比率になるように混合し、さらに顔料/樹脂比率が20/80となり、かつ固形分濃度が20%になるように製造例1の顔料分散ペーストおよび脱イオン水を加え、実施例のカチオン電着塗料とした。比較例の塗料は、製造例5のエマルションへゲル粒子エマルションを添加しないか、または製造例8のエマルションへゲル粒子エマルションを添加したことを除き、実施例の塗料と同様に調製した。
【0060】
得られたカチオン電着塗料について、以下の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
塗膜の平滑性および線状へこみ試験方法
ステンレスビーカーに脱イオン水で100倍に希釈した化成処理用脱脂液(日本ペイント社製サーフクリーナー250)を貯えマグネチックスターラー攪拌しながら、プレス油(SP=8.2)を10ppmの濃度になるよう添加した。
【0062】
さらに1時間攪拌した後、リン酸亜鉛処理鋼板を30秒間浸漬し引き上げた後、室温にて風乾する。
【0063】
リン酸亜鉛処理鋼板の上半分が乾いたら、所定のカチオン電着塗料に浸漬し焼付後の膜厚が20μになるような電圧で電着塗装を行い、160℃で15分間焼き付けた。得られた塗膜について評価を行った。
【0064】
上塗り密着性
電着塗装鋼板上にアルキッド系上塗り塗料(日本ペイント社製オルガセレクトシルバー)を乾燥膜厚25−30μの膜厚になるようスプレー塗装し、140℃で20分焼き付けた。室温で24時間放置後2mm×2mmのゴバン目100個をナイフでカットし、その表面に粘着テープを張り付け急激に剥離した後の塗面に残ったゴバン目の数で評価した。100/100を良好とした。
【0065】
【表1】
Claims (7)
- 中和剤を含む水性媒体中に、ブロックポリイソシアネート硬化剤と共に分散された、
(a)固形分として、アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂60〜90重量部、
(b)固形分として、数平均分子量1,000〜50,000およびアミン価10〜100を有するアミノ基含有アクリル共重合体1〜20重量部、
(c)固形分として、乳化剤としてシエルとなるアミノ基を有する親水性樹脂の存在下、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合して得られるゲル化疎水性樹脂のコアを含む粒径1.0μm以下のエマルション1〜20重量部、を含み、これにより金属素地の不完全な脱脂に起因する1コート仕上げまたは2コート仕上げの電着塗膜において線状へこみの発生が防止できることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。 - 前記乳化剤は、(a)成分と(b)の混合物である請求項1のカチオン電着塗料組成物。
- (a)成分と(b)成分の合計固形分に対する(c)成分固形分の比が90:10未満である請求項1または2のカチオン電着塗料。
- 脱脂を含む化成処理された鋼板を陰極として、請求項1ないし3のいずれかのカチオン電着塗料を電着塗装し、焼付け硬化することを特徴とする電着塗装方法。
- アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂とブロックポリイソシアネート硬化剤を含んでいるカチオン電着塗料組成物の電着塗装に際し、アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂固形分60〜90重量部あたり、数平均分子量1,000〜50,000およびアミン価10〜100を有するアミノ基含有アクリル共重合体を固形分と1〜20重量部と、乳化剤としてシエルとなるアミノ基を有する親水性樹脂の存在下、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合して得られるゲル化疎水性樹脂のコアを含む粒径1.0μm以下のエマルションを固形分として1〜20重量部を添加することを特徴とるす電着塗装した焼付塗膜の線状へこみを防止する方法。
- 前記乳化剤は、前記アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂と、前記アミノ基含有アクリル共重合体との混合物である請求項5の方法。
- 前記アミン変性ポリフェノールエポキシ樹脂と前記アミノ基含有アクリル樹脂の合計固形分に対する前記エマルションの固形分の比が90:10未満である請求項4または5の方法。
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