JP3995558B2 - タレット刃物台の工具選択動作の制御方法及び制御装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械における工具選択技術に関し、特に、任意の工具装着部に回転工具を装着可能なタレット刃物台の工具選択動作の制御方法に関する。さらに本発明は、そのような工具選択動作制御方法を実施するための制御装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、工作機械の分野では、複雑かつ多彩な形状の工作物を自動加工できるようにするために、バイト、ドリル、フライス等の多種類の工具を刃物台に交換可能に装備して、旋削加工、穴あけ加工、フライス加工等の多様な加工工程を実施可能とする複合機械化が進められている。また、そのような複合機械化された数値制御（ＮＣ）旋盤等の旋盤（本明細書で自動旋盤と総称する）においては、加工時間の短縮を図るべく、１つの旋盤機台に、それぞれが互いに異なる制御軸に沿って動作可能な１つ以上の主軸及び１つ以上の刃物台を集約的に搭載し、同一の被加工素材に対する異種（例えば外径削りと中ぐり）同時加工や、異なる被加工素材に対する同時加工を実施できるようにした多機能型の自動旋盤が、種々提案されている。
【０００３】
この種の多機能型自動旋盤に装備される刃物台として、複数の工具装着部を周方向へ割出角度毎に設けたタレットを備え、バイト等の旋削工具とフライス等の回転工具とをタレットの所望の工具装着部に選択的に装着できるタレット刃物台が周知である。このタレット刃物台は一般に、タレットを旋回割出運動（すなわち工具選択動作）させる割出駆動機構と、回転工具を回転運動（すなわち加工動作）させる回転駆動機構とを、互いに独立して備えている。しかし、タレットの旋回割出運動中にも回転工具が休止中の回転駆動機構に作用的に連結され続けることに起因して、旋回割出運動に伴い、回転工具が受動式に回転してしまう機械構成を有する場合がある。このような機械構成では、タレットの回転数と回転工具の回転数との関係が、回転駆動機構と回転工具との間に形成される歯車列の回転数比に依存して、一方が他方の整数倍にならないものも多い。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
前述したタレット刃物台には、例えば歯切り用のホブやポリゴン加工用のポリゴンカッタ等の、被加工素材を所定速度で回転させながら切削工程を遂行する回転工具を装着することができる。ここでタレット刃物台が、前述したようにタレットの回転数と回転工具の回転数とが非整数倍の関係にある機械構成を有する場合には、割出位置で１つの工作物の切削工程を実施した回転工具が次の工作物に対する同一切削工程で再び割出位置に配置されるまでの間に、タレットが同一方向への旋回割出運動の累積で１回転以上旋回すると、それら２度の割出位置で回転工具の刃の位置（すなわち回転運動の位相）が互いにずれることになる。その結果、ホブやポリゴンカッタによって切削加工された被加工素材は、切削工程完了時の切削部位（歯車の歯や多角柱の側面）の位置（座標）が、２度の切削工程で互いにずれて配置される場合がある。切削工程完了時の被加工素材の切削部位がこのように工程毎に位置ずれを生じていると、当該切削工程の次にフライス加工等の他の２次的加工工程を実施しようとする際に、その加工位置（座標）が被加工素材上で前の切削部位（歯車の歯や多角柱の側面）に対して相対的に変動し、目標の工作物が得られない結果となり得る。
【０００５】
このような懸念を排除するために、工作物の加工プログラムで使用する種々の工具をタレット刃物台に装着する際に、それら工具をタレットの順回転方向（例えば時計方向）に沿って加工工程順に並べて装着し、１つの工作物に対する加工プログラムが完了した後には、次の加工プログラムの段取りとしてタレットを逆回転させて最初の工具を選択するように、工具選択動作を制御する方策が考えられる。このようにすれば、タレットは同一方向への旋回割出運動の累積で１回転以上は旋回しないようになる。しかし、この方策では、同一工具を使う加工工程が加工プログラムに複数回含まれている場合に、タレットに累積１回転以上の旋回運動を生じさせないことを前提条件とすると、加工途中でもタレットを逆回転させなければならなくなる。その結果、加工プログラムが複雑になり、作業者の負担が増加する懸念がある。しかもこのとき、現在使用中の現選択工具と次に使用する次指定工具とが、タレットを順回転させれば１８０°以下の近回り動作で次指定工具を選択できる位置関係にあっても、敢えてタレット逆回転による１８０°超の遠回り動作を遂行しなければならない場合も生じる。その結果、加工プログラムのサイクル時間が徒に増加することが危惧される。
【０００６】
本発明の目的は、任意の工具装着部に回転工具を装着可能なタレット刃物台において、タレットに装着した工具の種類や回転工具による切削工程後の２次的加工工程の有無等の、加工プログラムの内容に応じて、タレットの工具選択動作を最適化でき、以って、加工プログラムの複雑化を回避して作業者の負担を軽減できるとともにサイクル時間の無用な増加を可及的に防止できる工具選択動作制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記したような工具選択動作制御方法を工作機械において実施するための制御装置を提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項１に記載の発明は、複数の工具装着部を周方向へ割出角度毎に設けたタレットを備え、タレットの旋回割出運動に伴い、任意の工具装着部に装着した回転工具が受動式に回転するタレット刃物台の、工具選択動作の制御方法であって、タレットの任意の工具装着部に装着した回転工具の回転運動の位相を、回転工具が割出位置に配置される度に同一位相になるように合わせるか否かを選択し、回転工具の回転運動の位相を合わせる場合は、タレットを、タレットの旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となるように旋回割出運動させ、回転工具の回転運動の位相を合わせない場合は、タレットを、タレットの個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となるように旋回割出運動させることを特徴とする工具選択動作制御方法を提供する。
【０００８】
請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の工具選択動作制御方法において、タレットの複数の工具装着部にそれぞれ、任意旋回方向に沿って昇順に並ぶツール番号が付され、タレットを１回転未満で旋回割出運動させるときには、タレットに装着した全ての工具のうち、現在使用している現選択工具の工具装着部のツール番号と、次に使用する次指定工具の工具装着部のツール番号とを比較して、旋回方向を決定する工具選択動作制御方法を提供する。
【０００９】
請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載の工具選択動作制御方法において、回転工具がホブである工具選択動作制御方法を提供する。
請求項４に記載の発明は、請求項１又は２に記載の工具選択動作制御方法において、回転工具がポリゴンカッタである工具選択動作制御方法を提供する。
【００１０】
請求項５に記載の発明は、請求項１〜４のいずれか１項に記載の工具選択動作制御方法を実施するための制御装置であって、タレットの任意の工具装着部に装着した回転工具がタレットの旋回割出運動により割出位置に配置されるときの、回転工具の回転運動の位相を、特定の位相に合わせるか否かを指示できるようにする入力部と、タレットの旋回割出運動を制御する駆動制御部と、入力部で回転工具の回転運動の位相を合わせるように指示されたときは、タレットの旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となるように、駆動制御部に旋回割出運動を制御させ、入力部で回転工具の回転運動の位相を合わせないように指示されたときは、タレットの個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となるように、駆動制御部に旋回割出運動を制御させる処理部とを具備することを特徴とする制御装置を提供する。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図１は、本発明に係る工具選択動作制御方法を好都合に実施できるタレット刃物台１０の構成を示す。このタレット刃物台１０は、ＮＣ旋盤等の自動旋盤に搭載可能な構成を有するものである。タレット刃物台１０は、刃物台本体１２と、刃物台本体１２に旋回可能に支持されるタレット１４と、旋回軸線１４ａを中心にタレット１４を旋回割出運動（すなわち工具選択動作）させる割出駆動機構１６と、タレット１４に装着した後述する回転工具を回転運動（すなわち加工動作）させる回転駆動機構１８とを備える。
【００１２】
タレット１４は、円柱又は角柱状の外形を有する中空の頭部２０と、頭部２０の軸線方向一端から軸線方向へ同心に延設される中空円筒状の軸部２２とを備える。タレット１４の頭部２０は、刃物台本体１２の前端面（図で右端）から外方へ突出して配置され、その外周面には、工具を装着する複数の工具装着部２４が所定の割出角度毎に設けられる。それら工具装着部２４には、バイト等の旋削工具２６やドリル、フライス等の回転工具２８を選択的に装着できる。また、タレット１４の軸部２２は、刃物台本体１２に貫通形成されたタレット受容空洞部３０に回転可能及び軸線方向移動可能に受容される。
【００１３】
割出駆動機構１６は、タレット１４を旋回させるサーボモータ３２と、タレット１４とサーボモータ３２との間に配置され、タレット１４をサーボモータ３２に解放可能に作用的に連結するクラッチ部３４と、クラッチ部３４を動作させるクラッチ駆動部３６と、刃物台本体１２とタレット１４との間に配置され、タレット１４を刃物台本体１２に離脱可能に係合させる係合部３８と、サーボモータ３２と係合部３８との間に配置され、サーボモータ３２の出力を係合部３８に伝達して係合部３８を動作させる出力伝達部４０とを備える。割出駆動機構１６においては、クラッチ駆動部３６によってクラッチ部３４が連結位置に置かれると、サーボモータ３２のトルクは、クラッチ部３４を介してタレット１４に伝達されると同時に、出力伝達部４０を介して係合部３８を離脱位置に移動させるように作用し、それによりタレット１４が旋回運動する。また、クラッチ駆動部３６によってクラッチ部３４が解放位置に置かれると、サーボモータ３２のトルクはタレット１４に伝達されなくなる一方で、サーボモータ３２が出力伝達部４０を介して係合部３８を係合位置に移動させるので、タレット１４が刃物台本体１２上で割出位置に固定される。
【００１４】
回転駆動機構１８は、タレット１４の軸部２２を貫通して回転可能及び軸線方向移動可能に受容される駆動軸４２と、タレット１４の頭部２０内で駆動軸４２に固定される駆動歯車４４と、駆動軸４２を回転駆動するサーボモータ４６とを備える。回転工具２８を専用のホルダ４８を介してタレット１４の所望の工具装着部２４に装着すると、回転工具２８に連結される被動歯車５０が、タレット頭部２０内に位置する駆動歯車４４に噛合し、それにより回転工具２８が、駆動軸４２を介してサーボモータ４６の出力軸に作用的に連結される。この状態で、サーボモータ４６が作動すると、回転工具２８が所定の回転数比で回転する。なお、図示のタレット刃物台１０では、タレット頭部２０内で軸線方向へ離間して一対の駆動歯車４４が設置されており、各工具装着部２４の軸線方向へ異なる２箇所に回転工具２８を装着できるようになっている。
【００１５】
上記構成を有するタレット刃物台１０では、タレット１４の割出駆動機構１６と、回転工具２８の回転駆動機構１８とが、互いに機能的に独立して装備されている。しかし、タレット１４が旋回割出運動する間に、所望の工具装着部２４に装着した回転工具２８は、被動歯車５０を介して、休止中の回転駆動機構１８に作用的に連結された状態を維持する。したがって、タレット１４が刃物台本体１２上で旋回割出運動すると、刃物台本体１２に対して静止状態にある駆動歯車４４上を、回転工具２８の被動歯車５０がタレット旋回運動に伴って転動することになり、結果として回転工具２８が受動式に回転する。この機械構成では、タレット１４の回転数と回転工具２８の回転数との関係が、回転駆動機構１８の駆動歯車４４と回転工具２８の被動歯車５０との歯数比に依存して、一方が他方の整数倍にならない場合がある。
【００１６】
タレット刃物台１０には、例えば歯切り用のホブ５２（図２）やポリゴン加工用のポリゴンカッタ５４（図３）等の、被加工素材Ｗを所定速度で回転させながら切削工程を遂行する回転工具を装着することができる。ホブ５２は、専用のホルダ５６を介してタレット１４の所望の工具装着部２４に装着され、ホルダ５６に内蔵した動力伝達装置（図示せず）によりホブ５２に連結される被動歯車５８が、タレット頭部２０内の駆動歯車４４に噛合する。同様に、ポリゴンカッタ５４は、専用のホルダ６０を介してタレット１４の所望の工具装着部２４に装着され、ホルダ６０に内蔵した動力伝達装置（図示せず）によりポリゴンカッタ５４に連結される被動歯車６２が、タレット頭部２０内の駆動歯車４４に噛合する。
【００１７】
タレット刃物台１０にホブ５２を装着したときに、駆動歯車４４と被動歯車５８との歯数比に依存して、タレット１４の旋回割出運動の回転数とホブ５２の受動回転の回転数とが非整数倍の関係を呈する場合には、割出位置で１つの工作物の歯切り工程を実施したホブ５２が次の工作物に対する同じ歯切り工程で再び割出位置に配置されるまでの間に、タレット１４が旋回割出運動の累計で１回転以上旋回すると、それら２度の割出位置でホブ５２の刃６４の位置（すなわち回転運動の位相）が互いにずれることになる。その結果、ホブ５２によって歯切り加工された被加工素材は、歯切り工程完了時の工作物（歯車）の歯群の位置（座標）が、２度の歯切り工程で互いにずれて配置される場合がある。歯切り工程完了時の工作物の歯群がこのように工程毎に位置ずれを生じていると、この歯切り工程の次にフライス加工等の他の２次的加工工程を実施しようとする際に、その加工位置（座標）が工作物上で歯群に対して相対的に変動し、目標の工作物を完成できない結果となり得る。
【００１８】
同様に、タレット刃物台１０にポリゴンカッタ５４を装着したときに、駆動歯車４４と被動歯車６２との歯数比に依存して、タレット１４の旋回割出運動の回転数とポリゴンカッタ５４の受動回転の回転数とが非整数倍の関係を呈する場合には、割出位置で１つの工作物のポリゴン加工工程を実施したポリゴンカッタ５４が次の工作物に対する同じポリゴン加工工程で再び割出位置に配置されるまでの間に、タレット１４が旋回割出運動の累計で１回転以上旋回すると、それら２度の割出位置でポリゴンカッタ５４の刃６６の位置（すなわち回転運動の位相）が互いにずれることになる。その結果、ポリゴンカッタ５４によってポリゴン加工された被加工素材は、ポリゴン加工工程完了時の工作物（多角柱）の側面群の位置（座標）が、２度のポリゴン加工工程で互いにずれて配置される場合がある。ポリゴン加工工程完了時の工作物の側面群がこのように工程毎に位置ずれを生じていると、このポリゴン加工工程の次にフライス加工等の他の２次的加工工程を実施しようとする際に、その加工位置（座標）が工作物上で側面群に対して相対的に変動し、目標の工作物を完成できない結果となり得る。
【００１９】
このような懸念を排除するための、本発明の一実施形態による工具選択動作制御方法を、図４を参照して以下に説明する。なお、図示のフローチャートにおける各処理は基本的に、自動旋盤等の工作機械に付設される後述する制御装置の処理部（ＣＰＵ）が実行するものとする。制御装置の処理部は、タレット刃物台１０の複数の工具装着部２４に装着した工具の種類や、回転工具を含む場合の後述する位相合わせ作業の要否等の、予め作業者が制御装置の入力部を介して入力したデータを参照して、所要の処理を実行することができる。
【００２０】
まず、制御装置の処理部は、タレット刃物台１０の工具選択動作を制御するに際し、タレット１４の複数の工具装着部２４に装着した種々の工具に、回転工具（ドリル２８、ホブ５２、ポリゴンカッタ５４等）が含まれているか否かを判断する（ステップ１０１）。なお、予め入力したデータからこの判断ができない場合は、ステップ１０１を省略する。そして、回転工具が含まれている場合は、ステップ１０２で、タレット１４の任意の工具装着部２４に装着した回転工具２８、５２、５４の回転運動の位相を、回転工具５２、５４が割出位置に配置される度に同一位相になるように合わせるか否かを選択する。
【００２１】
回転工具２８、５２、５４の回転運動の位相合わせを行なう場合は、ステップ１０３で、タレット１４の旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となる「１回転未満制御」を実行し、１回転未満制御下でタレット１４に工具選択動作を行なわせる。また、装着工具に回転工具が含まれていない場合、及び回転工具が含まれていても回転運動の位相合わせを行なわない場合は、ステップ１０４で、タレット１４の個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となる「近回り制御」を実行し、近回り制御下でタレット１４に工具選択動作を行なわせる。
【００２２】
ステップ１０３の１回転未満制御を実行するときには、制御装置の処理部は、現在使用中の現選択工具と次に使用する次指定工具との相互位置関係を考慮して、タレット１４の旋回割出運動が同一旋回方向への累積で必ず３６０°未満になるように、旋回方向を適宜選定しながらタレット１４に工具選択動作を行なわせる。したがって、タレット１４の個々の旋回割出運動は、１８０°を超える遠回り動作となる場合がある。他方、ステップ１０４の近回り制御を実行するときには、制御装置の処理部は、現選択工具と次指定工具との相互位置関係に関わらず、タレット１４の個々の旋回割出運動が必ず１８０°以下の近回り動作となるように、旋回方向を適宜選定しながらタレット１４に工具選択動作を行なわせる。したがって、タレット１４の旋回割出運動は、同一旋回方向への累積で１回転以上になる場合がある。
【００２３】
このように、上記した工具選択動作制御方法においては、タレット１４の二通りの工具選択動作のいずれかを作業者が意図的に選択して指定できる。そして制御装置の処理部は、その指定に基づき、工具選択動作に際してのタレット１４の旋回方向を適宜選定する。したがって、上記工具選択動作制御方法によれば、加工プログラム上で工具指定に加えてタレット旋回方向を指定する必要が無くなり、加工プログラムが簡略化されて、作業者の負担が軽減される。また、タレット１４に装着した工具の種類や回転工具による切削工程後の２次的加工工程の有無等の、加工プログラムの内容に応じて、タレット１４の工具選択動作を最適化できるので、加工プログラムのサイクル時間の無用な増加を可及的に防止することができる。
【００２４】
上記した工具選択動作制御方法において、制御装置の処理部がタレット１４の旋回方向を選定する際には、タレット１４の複数の工具装着部２６にそれぞれ任意旋回方向に沿って昇順に並ぶツール番号を付し、それらツール番号の指示によって選択工具を指定できる制御（例えばＮＣ）方式を採用することが有利である。以下、図５及び図６を参照して、そのような制御方式を用いたタレット１４の旋回方向選定手順の一例として、１回転未満制御における旋回方向選定手順を説明する。
【００２５】
図５に示すように、タレット１４の複数の工具装着部２４には、軸線方向前端面（図１で右端面）１４ｂに向かって時計方向へ、昇順に並ぶツール番号Ｔ２０〜Ｔ２９が付されている。このタレット刃物台１０に対して１回転未満制御を実行する際には、図６に示すように、制御装置の処理部はまず、タレット１４に装着した全ての工具のうち、加工作業に使用している現選択工具の工具装着部２４のツール番号と、次に使用する次指定工具の工具装着部２４のツール番号とを比較して、両者の大小を判断する（ステップ１０５）。そして、現選択工具のツール番号が次指定工具のツール番号よりも大きい場合は、タレット１４を向かって時計方向β（すなわちツール番号が減少する方向）へ旋回させる（ステップ１０６）。また、現選択工具のツール番号が次指定工具のツール番号よりも小さい場合は、タレット１４を向かって反時計方向α（すなわちツール番号が増加する方向）へ旋回させる（ステップ１０７）。このような旋回方向選定手順により、タレット１４の旋回割出運動は同一旋回方向への累積で必ず３６０°未満になる。
【００２６】
次に図７を参照して、上記した工具選択動作制御方法を工作機械において実施するための本発明の一実施形態による制御装置の構成を説明する。この制御装置は、例として、数値制御（ＮＣ）旋盤に装備されるＮＣ装置７０の構成を有するが、本発明はこれに限定されず、ＮＣ装置とは別の他の制御装置を使用することもできる。
【００２７】
ＮＣ装置７０は、入力部７２、表示部７４、処理部（ＣＰＵ）７６、記憶部（ＲＯＭ７８及びＲＡＭ８０）並びに駆動制御部８２を備える。入力部７２は、例えば数値キー付きのキーボード（図示せず）を有し、ＮＣ旋盤に装備したタレット刃物台１０等の種々の刃物台及び主軸（以下、可動構造体８４と総称する）の動作を制御するために必要なデータ（工具の選択、工作物の形状寸法、主軸回転数、工具の送り速度等）や、それらデータを含む各工具に関する加工プログラム（すなわちブロック列）が、入力部７２で入力される。表示部７４は、ＣＲＴ（ブラウン管）やＬＣＤ（液晶ディスプレイ）等の表示装置（図示せず）を有し、入力部７２で入力されたデータや加工プログラムを表示装置に表示したり、対話方式として表示装置上でシミュレーションしながらの自動プログラミングを可能にしたりする。
【００２８】
記憶部を構成するＲＯＭ７８には、可動構造体８４を駆動するための制御プログラムが予め格納されている。またＲＡＭ８０には、選択動作記憶領域８６等の、工具選択動作制御機能に関連する各種データの記憶領域が設けられている。さらに、入力部７２で入力された複数の工具に関連するデータやそれらを含む加工プログラムは、ＣＰＵ７６の指示によりＲＯＭ７８又はＲＡＭ８０に格納される。ＣＰＵ７６は、ＲＯＭ７８又はＲＡＭ８０に記憶した各種データや加工プログラム並びにＲＯＭ７８に格納された制御プログラムに基づいて、駆動制御部８２に作動指令を出力する。駆動制御部８２は、ＣＰＵ７６からの作動指令に従い、タレット刃物台１０の割出駆動源（サーボモータ）３２及び回転駆動源（サーボモータ）４６を含む種々の駆動機構８８をそれぞれに制御して、ＮＣ旋盤に設置した種々の可動構造体８４をそれぞれに作動させる。
【００２９】
表示部７４は、例えば図８に示すように、ＮＣ旋盤の機械構成を作業者が任意に追加、変更できるようにするための機械構成設定画面９０を表示できる。そして、この機械構成設定画面９０に、回転工具の回転運動の位相合わせ作業を実施するか否かを作業者が選択して指定できる指定欄９２を設けることができる。作業者は、表示部７４の表示装置に表示された機械構成設定画面９０において、タレット１４の任意の工具装着部２４に装着した回転工具がタレット１４の旋回割出運動により割出位置に配置されるときの、回転工具の回転運動の位相を、特定の位相に合わせるか否かを、指定欄９２により指示できる。なお、機械構成設定画面９０を含む種々の画面は、ＲＡＭ８０に予め格納される。
【００３０】
ＲＡＭ８０の選択動作記憶領域８６には、前述した１回転未満制御及び近回り制御の各々におけるタレットの工具選択動作の規則が予め格納される。ＣＰＵ７６は、入力部７２で回転工具の回転運動の位相を合わせるように指示されたときは、選択動作記憶領域８６に格納された１回転未満制御の工具選択動作規則を読み出して、例えば図６に示す演算を実行し、駆動制御部８２に、タレット１４の旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となる１回転未満制御指令を発する。またＣＰＵ７６は、入力部７２で回転工具の回転運動の位相を合わせないように指示されたときは、選択動作記憶領域８６に格納された近回り制御の工具選択動作規則を読み出して、駆動制御部８２に、タレット１４の個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となる近回り制御指令を発する。
【００３１】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、任意の工具装着部に回転工具を装着可能なタレット刃物台において、タレットに装着した工具の種類や回転工具による切削工程後の２次的加工工程の有無等の、加工プログラムの内容に応じて、タレットの工具選択動作を、旋回割出運動の累計で１回転以上は旋回しない動作と、個々の旋回割出運動が半回転以下となる動作とから適宜選択して実行できるようになる。したがって本発明によれば、加工プログラムの複雑化を回避して作業者の負担を軽減できるとともに、サイクル時間の無用な増加を可及的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る工具選択動作制御方法を適用可能なタレット刃物台の構成を例示する断面図である。
【図２】回転工具の一例としてのホブを、図１のタレット刃物台に装着した状態で示す図で、（ａ）部分切欠側面図、及び（ｂ）部分切欠正面図である。
【図３】回転工具の一例としてのポリゴンカッタを、図１のタレット刃物台に装着した状態で示す図で、（ａ）部分切欠側面図、及び（ｂ）部分切欠正面図である。
【図４】本発明の一実施形態による工具選択動作制御方法を示すフローチャートである。
【図５】図４の工具選択動作制御方法を適用するタレットを例示する図である。
【図６】図４の工具選択動作制御方法における１回転未満制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図７】図４の工具選択動作制御方法を実行可能な本発明の一実施形態による制御装置の構成を示すブロック図である。
【図８】図７の制御装置の表示部に表示される画面を例示する図である。
【符号の説明】
１０…タレット刃物台
１４…タレット
２４…工具装着部
３２、４６…サーボモータ
５２…ホブ
５４…ポリゴンカッタ
７０…ＮＣ装置
７２…入力部
７４…表示部
７６…ＣＰＵ
７８…ＲＯＭ
８０…ＲＡＭ
８２…駆動制御部

Claims (5)

1. 複数の工具装着部を周方向へ割出角度毎に設けたタレットを備え、該タレットの旋回割出運動に伴い、任意の該工具装着部に装着した回転工具が受動式に回転するタレット刃物台の、工具選択動作の制御方法であって、
   前記タレットの任意の前記工具装着部に装着した前記回転工具の回転運動の位相を、該回転工具が割出位置に配置される度に同一位相になるように合わせるか否かを選択し、
   前記回転工具の回転運動の位相を合わせる場合は、前記タレットを、該タレットの旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となるように旋回割出運動させ、
   前記回転工具の回転運動の位相を合わせない場合は、前記タレットを、該タレットの個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となるように旋回割出運動させること、
   を特徴とする工具選択動作制御方法。
2. 前記タレットの前記複数の工具装着部にそれぞれ、任意旋回方向に沿って昇順に並ぶツール番号が付され、該タレットを前記１回転未満で旋回割出運動させるときには、該タレットに装着した全ての工具のうち、現在使用している現選択工具の該工具装着部の該ツール番号と、次に使用する次指定工具の該工具装着部の該ツール番号とを比較して、旋回方向を決定する、請求項１に記載の工具選択動作制御方法。
3. 前記回転工具がホブである請求項１又は２に記載の工具選択動作制御方法。
4. 前記回転工具がポリゴンカッタである請求項１又は２に記載の工具選択動作制御方法。
5. 請求項１〜４のいずれか１項に記載の工具選択動作制御方法を実施するための制御装置であって、
   前記タレットの任意の前記工具装着部に装着した前記回転工具が該タレットの旋回割出運動により割出位置に配置されるときの、該回転工具の回転運動の位相を、特定の位相に合わせるか否かを指示できるようにする入力部と、
   前記タレットの旋回割出運動を制御する駆動制御部と、
   前記入力部で前記回転工具の回転運動の位相を合わせるように指示されたときは、前記タレットの旋回割出運動が同一旋回方向への累積で１回転未満となるように、前記駆動制御部に該旋回割出運動を制御させ、前記入力部で前記回転工具の回転運動の位相を合わせないように指示されたときは、前記タレットの個々の旋回割出運動がいずれの旋回方向でも半回転以下となるように、前記駆動制御部に該旋回割出運動を制御させる処理部と、
   を具備することを特徴とする制御装置。

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